特許拒絶査定不服審判
2019-005402
発光装置の製造方法
- 審判番号
- 2019-005402
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-185185外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月23日
- 審決日
- 2019年12月11日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】寺谷 英作
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-185185号「発光装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月21日出願公開、特開2016-58614号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月11日の出願であって、平成30年2月13日付けで拒絶理由が通知され、同年3月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年2月25日付けで前記平成30年9月26日付け手続補正が却下されるとともに、拒絶査定がなされ(発送 同年3月5日)、それに対して、平成31年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成31年4月23日になされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月23日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、補正前(平成30年3月8日付け手続補正書により補正されたもの)の特許請求の範囲の請求項1ないし9につき、
「【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた発光素子と、
前記発光素子を封止する第一封止層と、
前記第一封止層の上方に設けられた第二封止層と、
前記第一封止層と前記第二封止層との間に設けられた、蛍光体を含有する蛍光体層とを備え、
前記蛍光体層は、前記第一封止層及び前記第二封止層のいずれよりも前記蛍光体の濃度が高く、
前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、メチル系のシリコーン樹脂である
発光装置。
【請求項2】
前記第一封止層は、前記蛍光体を含有する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第一封止層は、フィラーを含有し、
前記第二封止層は、前記フィラーを含有しない
請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第一封止層と、前記第二封止層とは、同一の樹脂材料からなる
請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
さらに、前記発光素子に接続される給電用のワイヤを備え、
前記第一封止層は、前記ワイヤをさらに封止する
請求項1~4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
さらに、前記発光素子を囲むように設けられたダム材を備え、
前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層は、前記ダム材によって囲まれた領域に形成される
請求項1~5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発光装置を備える照明装置。
【請求項8】
基板上に発光素子を実装する実装ステップと、
前記発光素子を封止する第一封止層を形成する第一形成ステップと、
前記第一封止層の上に蛍光体を含有する蛍光体層を形成し、かつ、前記蛍光体層の上に第二封止層を形成する第二形成ステップとを含み、
前記蛍光体層は、前記第一封止層及び前記第二封止層のいずれよりも前記蛍光体の濃度が高く、
前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、メチル系のシリコーン樹脂である
発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第二形成ステップにおいては、前記蛍光体を含有した透光性を有する樹脂を前記第一封止層の上に塗布し、塗布された前記樹脂内において前記蛍光体を沈降させることにより、前記蛍光体層及び前記第二封止層を形成する
請求項8に記載の発光装置の製造方法。」
とあったものを、補正前の請求項1ないし7を削除するとともに、補正前の請求項8を
「【請求項1】
基板上に発光素子を実装する実装ステップと、
前記発光素子を封止する第一封止層を形成する第一形成ステップと、
前記第一封止層の上に蛍光体を含有する蛍光体層を形成し、かつ、前記蛍光体層の上に第二封止層を形成する第二形成ステップとを含み、
前記蛍光体層は、前記第一封止層及び前記第二封止層のいずれよりも前記蛍光体の濃度が高く、
前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、メチル系のシリコーン樹脂であり、一括して硬化される
発光装置の製造方法。」
に補正する内容を含むものである(下線は請求人が付したものに基づいて当審が付したものであって、補正箇所を示すものである。補正後の請求項1を以下「本願補正発明」という。)。
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項8において「前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、メチル系のシリコーン樹脂である」とあったものに対して、「一括して硬化される」との限定を付加するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記「1」において、本件補正後の請求項1として記載したとおりの次のとおりものと認める(A~Fは、本願補正発明を分説するために当審で付した。)。
「【請求項1】
A 基板上に発光素子を実装する実装ステップと、
B 前記発光素子を封止する第一封止層を形成する第一形成ステップと、
C 前記第一封止層の上に蛍光体を含有する蛍光体層を形成し、かつ、前記蛍光体層の上に第二封止層を形成する第二形成ステップとを含み、
D 前記蛍光体層は、前記第一封止層及び前記第二封止層のいずれよりも前記蛍光体の濃度が高く、
E 前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、メチル系のシリコーン樹脂であり、一括して硬化される
F 発光装置の製造方法。」
(2)引用文献の記載
ア 原査定の拒絶理由に(引用文献2として)引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開2009-94351号公報(以下「引用文献1」という。)には、下記の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびその製造方法に係り、特に半導体発光素子の発光出力を色変換層により波長変換する構造を有する発光装置および色変換層の形成方法に関するもので、例えば白色発光装置に使用されるものである。
(イ)「【0019】
<第1の実施形態>
図1(a)、(b)は、本発明の発光装置の第1の実施形態を概略的に示す斜視図および側面図である。図2(a)乃至(c)は、本発明の発光装置の製造方法の第1の実施形態において一部を取り出して側断面を概略的に示す工程説明図である。
【0020】
以下、製造工程を説明する。まず、図1(a)、(b)に示すように、素子載置部20aの周辺に、導電性細線をボンディング可能なリードフレーム51,52が配設された支持体20を製作しておく。
(・・・途中省略・・・)
【0024】
次に、図2(a)に示すように、支持体20の素子載置部に、発光面側である上面に一対の電極(アノード電極およびカソード電極)を有する発光素子(本例ではLED素子)10の下面側を例えばAgペースト導電性接着剤を用いてダイボンディングにより固着する。本例では、発光素子10として、InGaAlN系の窒化物半導体からなるLED素子を用いている。この後、LED素子上面の一対の電極と一対の内部リードとの間をそれぞれ導電性細線(通常、Auワイヤ)60によりボンディングする。
【0025】
次に、支持体20上の少なくともLED素子10およびAuワイヤ60の全部を覆うように、液状のシリコーン樹脂などのような第1の透光性部材70aを注入し、これを硬化させることにより第1の透光性封止層70とする。あるいは、第1の透光性部材70aを半硬化状態にし、次の工程に移り、最終的に第1の透光性部材70aを硬化させて第1の透光性封止層70とする。
【0026】
なお、第1の透光性部材70aを任意の形状(本例では断面が台形状)に硬化または半硬化させるために、支持体20上でLED素子10およびAuワイヤの周辺を囲むようにカップ部(図示せず)を配設したり、支持体20上へ着脱自在な型(図示せず)を用いるようにしてもよい。
【0027】
次に、図2(b)に示すように、第1の透光性部材70aと同様の透明樹脂からなる第2の透光性部材80aを、硬化状態または半硬化状態の第1の透光性部材70a上を覆うように塗布、滴下などにより配置する。この際、第2の透光性部材80a中には、LED素子10から放出される光をLED素子10の発光色とは異なる波長の光に変換する波長変換物質(例えば蛍光物質91)を予め含ませておく。
【0028】
そして、図2(c)に示すように、蛍光物質91を沈降堆積させることによって、第1の透光性封止層70上を覆う色変換層90を含む第2の透光性封止層80を形成する。
(・・・途中省略・・・)
【0031】
前記した色変換層90の形成工程において、蛍光物質91の沈降の可否および所要時間は、蛍光物質91の平均粒径や第2の透光性部材80aの粘度に依存し、色変換層90の厚みは、出力光の色味に影響する。具体例として、蛍光物質91の平均粒径は10~20um、第2の透光性部材80aの粘度は500pcs~5000pcsのものを用い、蛍光部材91の沈降の所要時間が例えば10分から10時間の範囲内となるように設定することが好ましい。
【0032】
なお、発光素子10として例えば青色LED素子を用い、蛍光部材91として例えばYAG蛍光体を用いる場合には、青色LED素子10の発光出力がYAG蛍光体によって黄色光に変換され、青色光と黄色光との混色である白色光が出力する。」
(ウ)図1、2は次のとおりである。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「a 支持体20の素子載置部に、発光面側である上面に一対の電極を有する発光素子(本LED素子)10の下面側をAgペースト導電性接着剤を用いてダイボンディングにより固着するステップ(【0024】)、
b 次に、支持体20上のLED素子10およびAuワイヤ60の全部を覆うように、液状のシリコーン樹脂などのような第1の透光性部材70aを注入し、第1の透光性部材70aを半硬化状態にするステップ(【0025】)、
c 次に、第1の透光性部材70aと同様の透明樹脂からなる第2の透光性部材80aを、半硬化状態の第1の透光性部材70a上を覆うように塗布、滴下などにより配置し、この際、第2の透光性部材80a中には、LED素子10から放出される光をLED素子10の発光色とは異なる波長の光に変換する波長変換物質(蛍光物質91)を予め含ませておくステップ(【0027】)、
d そして、蛍光物質91を沈降堆積させることによって、第1の透光性封止層70上を覆う色変換層90を含む第2の透光性封止層80を形成するステップ(【0028】)、
e 最終的に第1の透光性部材70aを硬化させて第1の透光性封止層70とするステップ(【0025】)、を含む、
f 発光装置および色変換層の形成方法(【0001】)。」
イ 原査定の拒絶理由に(引用文献7として)引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献である国際公開第2013/137436号(以下「引用文献2」という。)には、下記の事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明の実施形態は、黄色発光する蛍光体、蛍光体の製造方法および発光装置に関する。」
(イ)「[0079] 発光部に用いられる透明樹脂硬化物は、透明樹脂、すなわち透明性の高い樹脂を硬化させたものである。透明樹脂としては、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂よりもUV耐性が高いため好ましい。また、シリコーン樹脂のうちでは、ジメチルシリコーン樹脂が、UV耐性が高いためさらに好ましい。」
ウ 原査定の拒絶理由に(引用文献8として)引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開2014-82527号公報(以下「引用文献3」という。)には、下記の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光モジュールに関し、特に発光素子とその発光素子が発する光を波長変換して出射する光波長変換部材を備える発光モジュールに関する。」
(イ)「【0039】
蛍光体ペーストを生成するにあたって、まず第1蛍光体と第2蛍光体とを重量比2:1で混合し、混合蛍光体をジメチルシリコーン樹脂によるバインダー材料に1.8vol%になるように配合した。これを10ccの軟膏容器に3g以上5g以下充填し、自公転ミキサー(クラボウ製マゼルスター)を用いて公転1200、自転400回転で90秒間混合することにより、蛍光体ペーストを作製した。」
(3)対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「支持体20の素子載置部に、発光面側である上面に一対の電極を有する発光素子(本LED素子)10の下面側をAgペースト導電性接着剤を用いてダイボンディングにより固着するステップ」(構成a)は、引用発明の「支持体20」及び「ダイボンディングにより固着する」ことが、本件補正発明の「基板」及び「実装する」ことにそれぞれ相当するから、本件補正発明の「基板上に発光素子を実装する実装ステップ」(構成A)に相当する。
(イ)引用発明の「次に、支持体20上のLED素子10およびAuワイヤ60の全部を覆うように、液状のシリコーン樹脂などのような第1の透光性部材70aを注入し、第1の透光性部材70aを半硬化状態にするステップ」(構成b)は、引用発明の「LED素子10およびAuワイヤ60の全部を覆うように」「第1の透光性封止層70」が形成されるステップであるといえるから、本件補正発明の「前記発光素子を封止する第一封止層を形成する第一形成ステップ」(構成B)に相当する。
(ウ)引用発明の「第1の透光性部材70aと同様の透明樹脂からなる第2の透光性部材80aを、半硬化状態の第1の透光性部材70a上を覆うように塗布、滴下などにより配置し、この際、第2の透光性部材80a中には、LED素子10から放出される光をLED素子10の発光色とは異なる波長の光に変換する波長変換物質(蛍光物質91)を予め含ませてお」き「蛍光物質91を沈降堆積させることによって、第1の透光性封止層70上を覆う色変換層90を含む第2の透光性封止層80を形成する」ものであることに照らせば、「蛍光物質91」及び蛍光物質91を沈降堆積させた「色変換層90」が、本件補正発明の「蛍光体」及び「蛍光体を含有する蛍光体層」にそれぞれ相当するといえる。
また、「色変換層90を含む第2の透光性封止層80」のうち、「色変換層90」を除いた部分(以下「色変換層90部分を除く第2の透光性封止層80」という。)が、本件補正発明の「第二封止層」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「次に、第1の透光性部材70aと同様の透明樹脂からなる第2の透光性部材80aを、半硬化状態の第1の透光性部材70a上を覆うように塗布、滴下などにより配置し、この際、第2の透光性部材80a中には、LED素子10から放出される光をLED素子10の発光色とは異なる波長の光に変換する波長変換物質(蛍光物質91)を予め含ませておくステップ」(構成c)、及び、「そして、蛍光物質91を沈降堆積させることによって、第1の透光性封止層70上を覆う色変換層90を含む第2の透光性封止層80を形成するステップ」(構成d)は、本件補正発明の「前記第一封止層の上に蛍光体を含有する蛍光体層を形成し、かつ、前記蛍光体層の上に第二封止層を形成する第二形成ステップ」(構成C)に相当する。
(エ)引用発明の「第2の透光性封止層80」は、塗布、滴下などにより配置する際に第2の透光性部材80a中に波長変換物質(蛍光物質91)を予め含ませておき(構成c)、蛍光物質91を沈降堆積させることによって、第1の透光性封止層70上を覆う色変換層90を含む第2の透光性封止層80を形成する(構成d)ものであるから、色変換層90は、色変換層90部分を除く第2の透光性封止層80よりも波長変換物質(蛍光物質91)の濃度が高いことは明らかである。
また、引用発明の「第1の透光性封止層70」は、液状のシリコーン樹脂などのような第1の透光性部材70aを注入し、第1の透光性部材70aを半硬化状態にし、次の工程に移る(構成b)ものであって、第2の透光性部材80a中の蛍光物質91を沈降堆積させる際には、第1の透光性封止層70まで、蛍光物質91が沈降しないか、あるいは、沈降するとしてもその濃度が、色変換層90の波長変換物質(蛍光物質91)の濃度より低いことは明らかである。
したがって、引用発明の構成bないしdにより形成される色変換層90は、第1の透光性封止層70、及び、色変換層90部分を除く第2の透光性封止層80のいずれよりも波長変換物質(蛍光物質91)の濃度が高いと認められるから、本件補正発明の「前記第一封止層及び前記第二封止層のいずれよりも前記蛍光体の濃度が高」い「蛍光体層」(構成D)に相当する。
(オ)引用発明の「第1の透光性封止層70」は「液状のシリコーン樹脂などのような第1の透光性部材70aを注入し、第1の透光性部材70aを半硬化状態にし、次の工程に移」(構成b)るものであり、「色変換層90を含む第2の透光性封止層80」は「第1の透光性部材70aと同様の透明樹脂からなる第2の透光性部材80aを半硬化状態の第1の透光性部材70a上を覆うように塗布、滴下などにより配置し」(構成c)たものであるから、「第1の透光性封止層70」及び「色変換層90を含む第2の透光性封止層80」は、いずれも構成する透光性樹脂材料がシリコーン樹脂であると認められる。
したがって、引用発明における「第1の透光性封止層70」及び「色変換層90を含む第2の透光性封止層80」を構成する透光性樹脂材料がシリコーン樹脂であることは、本件補正発明の「前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、メチル系のシリコーン樹脂であり、一括して硬化される」(構成E)ことと、「前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、シリコーン樹脂である」(以下「構成E´」という。)点で一致する。
(カ)引用発明の「発光装置および色変換層の形成方法」(構成e)は、本件補正発明の「発光装置の製造方法」(構成F)に相当する。
(キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、本願補正発明と引用発明は、
「A 基板上に発光素子を実装する実装ステップと、
B 前記発光素子を封止する第一封止層を形成する第一形成ステップと、
C 前記第一封止層の上に蛍光体を含有する蛍光体層を形成し、かつ、前記蛍光体層の上に第二封止層を形成する第二形成ステップとを含み、
D 前記蛍光体層は、前記第一封止層及び前記第二封止層のいずれよりも前記蛍光体の濃度が高く、
E´ 前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、シリコーン樹脂である
F 発光装置の製造方法。」
の点で一致し、以下の各点で相違するものと認められる。
<相違点1>
第一封止層、第二封止層及び蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料が、本願補正発明では、「メチル系のシリコーン樹脂」であるのに対し、引用発明は、「シリコーン樹脂」である点。
<相違点2>
第一封止層、第二封止層及び蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料が、本願補正発明では、「一括して硬化される」のに対し、引用発明は、このように特定されない点。
イ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
引用文献2に「シリコーン樹脂のうちでは、ジメチルシリコーン樹脂が、UV耐性が高いためさらに好ましい」(上記「(2)」「イ」「(イ)」)、あるいは、引用文献3に「蛍光体ペーストを生成するにあたって、まず第1蛍光体と第2蛍光体とを重量比2:1で混合し、混合蛍光体をジメチルシリコーン樹脂によるバインダー材料に1.8vol%になるように配合した」(上記「(2)」「ウ」「(イ)」)と記載されているとおり、発光装置の封止層に用いられるシリコーン樹脂としてメチル系のシリコーン樹脂は周知の素材である。
そして、引用発明を実施するに当たり、種々あるシリコーン樹脂の中から、メチル系のシリコーン樹脂を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。
(イ)上記相違点2について検討する。
引用発明は、「そして、蛍光物質91を沈降堆積させることによって、第1の透光性封止層70上を覆う色変換層90を含む第2の透光性封止層80を形成するステップ」(構成d)において、「第2の透光性封止層80」をどの段階で硬化するのか特定しないが、引用発明が「発光装置の製造方法」である以上、「第2の透光性封止層80」は硬化されるべきものであることは明らかである。
これに対して、引用発明は、「第1の透光性部材70aを半硬化状態にし」(構成b)、「第2の透光性部材80aを、半硬化状態の第1の透光性部材70a上を覆うように塗布、滴下などにより配置し」(構成c)、「蛍光物質91を沈降堆積させることによって、第1の透光性封止層70上を覆う色変換層90を含む第2の透光性封止層80を形成」し(構成d)、「最終的に第1の透光性部材70aを硬化させて第1の透光性封止層70とする」(構成e)ステップからなるところ、構成eにおいて、同じシリコーン樹脂からなる「第1の透光性部材70a」を硬化させるわけであるから、同じタイミングで「第2の透光性部材80a」も硬化させていると解することが自然である。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点2が相違点であるとしても、「第1の透光性部材70a」と「第2の透光性部材80a」を、一括して硬化させることは、発明を実施するに際して当業者が適宜なし得る事項にすぎないから、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。
(ウ)以上(ア)及び(イ)の検討によれば、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張
(ア)審判請求人は、審判請求書の「【請求の理由】」、「3.本願発明が特許されるべき理由」、「(b)本願発明と引用発明との対比」において下記のとおり主張する。
「補正の却下の決定において、・・・
そうすると、補正後の請求項1の「前記第一封止層、前記第二封止層、及び、前記蛍光体層のそれぞれを構成する透光性樹脂材料は、メチル系のシリコーン樹脂であり、一括して硬化される」構成については、引用文献1には記載も示唆もされていないということができます。他の引用文献についても同様です。したがって、引用文献1-8に基づいて、補正後の請求項1の上記構成に想到することは当業者であっても容易ではありません。このような構成によれば、第一封止層及び蛍光体層の間に界面が形成されにくく、光取出し効率を向上する効果が得られます(明細書の段落0054)。」
(イ)しかしながら、上記「ア」「(イ)」で検討したように、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本件補正発明に対応する本件補正前の発明は、平成30年3月8日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項8に係る発明であるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、本件補正前のものとして示した請求項8として記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物2、7、8に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものを含む。
刊行物2.特開2009-094351号公報
刊行物7.国際公開第2013/137436号
刊行物8.特開2014-082527号公報
3 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶理由で引用された、引用文献1ないし3(それぞれ、上記刊行物2、7、8に相当する。)、及び、その記載事項は、前記「第2」[理由]「2」「(2)」「ア」ないし「ウ」のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記「第2」[理由]「2」で検討した本願補正発明から、「一括して硬化される」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」[理由]「2」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定を省いた本願発明も引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-005402