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特許拒絶査定不服審判

2023-008256

吸収層を後処理する方法

審判番号
2023-008256
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-515617
請求日
2023年05月19日
審決日
2024年07月01日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】中建材玻璃新材料研究院集▲団▼有限公司
  • 【請求人代理人】TRY国際弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 松川 直樹
  • 審判官 吉野 三寛
分類
P18 .113-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-515617号「吸収層を後処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年3月26日国際公開、WO2020/057484号、令和4年1月6日国内公表、特表2022-501825号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)9月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年(平成30年)9月22日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。 令和3年 5月19日 :翻訳文の提出 令和4年 5月19日付け:拒絶理由通知書 同年 8月24日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月27日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 同年12月 5日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 1月16日付け:令和4年12月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定 同年 5月19日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年5月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定[補正の却下の決定の結論] 令和5年5月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により請求項1の記載は、次のとおり補正されることになる(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 入射光を電流に光電変換するための吸収層を後処理する方法であって、 担体上にカルコゲン含有吸収層を提供するステップ; 後処理層を前記吸収層の表面上に適用するステップ、ここで、前記後処理層は、金属カルコゲニド、金属カルコゲニドの酸素化合物、及び金属カルコゲニドの水素-酸素化合物からなる群から選択される少なくとも1つの後処理材料を含む;及び 前記少なくとも1つの後処理材料を前記吸収層中に熱拡散するステップ、を含み、 前記後処理材料は、表面の追加の清浄化の有無にかかわらず、1)前記吸収層のアルカリ不動態化のためのアルカリ金属の供給源としての、及び、2)前記吸収層の表面終端のための硫化物の供給源としての、後処理後の表面S相関ラマンシグナルの増加を伴う二重の機能を有し、 前記少なくとも1つの後処理材料の前記吸収層への拡散が、真空環境において行われる、 方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 入射光を電流に光電変換するための吸収層を後処理する方法であって、 担体上にカルコゲン含有吸収層を提供するステップ; 後処理層を前記吸収層の表面上に適用するステップ、ここで、前記後処理層は、金属カルコゲニド、金属カルコゲニドの酸素化合物、及び金属カルコゲニドの水素-酸素化合物からなる群から選択される少なくとも1つの後処理材料を含む;及び 前記少なくとも1つの後処理材料を前記吸収層中に熱拡散するステップ、を含み、 前記後処理材料は、表面の追加の清浄化の有無にかかわらず、1)前記吸収層のアルカリ不動態化のためのアルカリ金属の供給源としての、及び、2)前記吸収層の表面終端のための硫化物の供給源としての、後処理後の表面S相関ラマンシグナルの増加を伴う二重の機能を有する、 方法。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記少なくとも1つの後処理材料を前記吸収層中に熱拡散するステップ」が、「真空環境において行われる」ものに限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下、この日を「本願の優先日」という。)前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開平8-102546号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、化合物半導体薄膜の製造方法に関する。さらに詳しくは、エネルギー変換効率の高い太陽電池の光吸収層などに有用な半導体薄膜の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】Ib族、IIIa族とVIa族元素からなる化合物半導体薄膜(カルコパイライト構造半導体薄膜)であるCuInSe2を光吸収層に用いた薄膜太陽電池は高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化がないという利点を有していることが報告されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ソーダライムガラスからのNaの拡散は、CuInSe2の成膜温度によって制御できると考えられる。しかしながら、制御可能な温度範囲の問題がある。結晶性の良好なCuInSe2を作製するには500℃以上の成膜温度を必要とする。一方、ソーダライムガラスの軟化温度は570℃であり、600℃以上となると亀裂が生じる場合がある。従って、制御可能な温度範囲は500~600℃の範囲内であることから、成膜温度によってNaの拡散量を精密に制御することは困難である。また、太陽電池に使用する場合、ガラス上に電極(主にMo膜)を形成する必要がある。この電極膜が障害となり、Naの拡散量を減少させる。また、電極膜の厚みによりNaの拡散量が異なるため、再現性や膜面内の不均一性が問題となる。以上より、ソーダライムガラス中のNaをCuInSe2成膜中に自然拡散させる方法では、制御性が劣り、高品質で太陽電池に適した導電率を有するCuInSe2膜を再現性よく均一に作製することは困難である。 【0004】また、600℃以上の高温で結晶性に優れたカルコパイライト薄膜を形成し、より高い変換効率が得られる太陽電池を作製するためにはアルミナや金属フィルムを基板として用いる必要がある。また、使用範囲の広い柔軟性のある太陽電池を作製するためにはポリイミド等の有機フィルムを基板として用いる必要がある。これらの基板上に作製したカルコパイライト薄膜にIa族元素を注入することは、太陽電池の効率向上のためには有効である。ソーダライムガラス以外の基板を用いる場合、Na等のIa族元素をカルコパイライト薄膜に添加する方法としては前記したホルツ等のNaのイオン注入以外には報告されていない。イオン注入法には膜面内の注入元素の分布やイオンによる膜の損傷等の問題がある。従って、Ia族元素を有効にかつ制御良く添加する方法が必要となる。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明は、Ib族とIIIa族とVIa族元素からなる化合物半導体薄膜にIa族とVIa族元素からなる化合物を混入させる半導体薄膜の製造方法を提供する。 【0006】本発明では、Ia族とVIa族元素からなる化合物を混入させる方法として4つの方法がある。第1の発明は、基体上にIb族とIIIa族とVIa族元素からなる化合物半導体薄膜を堆積する際に、Ia族とVIa族元素からなる化合物を同時に堆積する方法である。 【0007】第2の発明は、基体上にIb族とIIIa族とVIa族元素からなる化合物半導体薄膜を堆積した後に、前記薄膜上にIa族とVIa族元素からなる化合物薄膜を堆積する方法である。 【0008】第3の発明は、基体上にIa族とVIa族からなる化合物薄膜を堆積した後に、前記薄膜上にIb族とIIIa族とVIa族元素からなる化合物半導体薄膜を堆積する方法である。 【0009】第4の発明は、Ib族とIIIa族とVIa族元素からなる化合物半導体薄膜とIa族とVIa族元素からなる化合物薄膜を交互に少なくとも2層以上堆積する方法である。 【0010】また、第1~4の発明法で成膜した後に熱処理することが好ましく、さらには、VIa族元素を含む雰囲気中で熱処理することが好ましい。また、Ia族とVIa族元素からなる化合物としては、Li2S、Li2Se、Na2S、Na2Seからなる群の内の少なくとも一つから構成されることが好ましい。 【0011】さらに、本発明では、前記の半導体薄膜を光吸収層に用いた太陽電池を提供する。 【0012】 【作用】Li、Na、K等のIa族元素のみからなるアルカリ金属は、水分や酸素と激しく反応するため取り扱いに注意を要する。従って、カルコパイライト構造半導体薄膜にIa族元素を添加する場合は、取扱が比較的簡単なIa族とVIa族の化合物(以下Ia-VIa化合物と記す)を用いることが有効である。ここで、化合物のVIa族元素はカルコパイライト構造半導体薄膜の構成元素の一つであるため、膜中に混入しても格子欠陥や不純物欠陥が生じるといった問題はない。 【0013】まず、第1の発明のような、カルコパイライト構造半導体薄膜を堆積する際に、同時にIa-VIa化合物を堆積する方法では、Ia族元素を膜中に均一に分布させることが可能とある。この時、Ia-VIa化合物の蒸発量あるいは蒸着速度により膜中のIa族の量を制御することができる。 【0014】次に、第2~4の発明は、カルコパイライト構造半導体薄膜の断面方向にIa族元素を任意に分布させる方法である。太陽電池の光吸収層内でpn接合面から離れるにつれキャリア濃度が増加する分布を与えると、キャリア濃度差による内部電界が生じる。光励起された少数キャリアはこの内部電界により移動しpn接合面へと収集され外部へ取り出される。このような電界によるキャリアの移動では、拡散による移動に比べ、光吸収層内での再結合確率が大幅に減少するため多くの光電流が得られることになる。キャリア濃度の分布は、ほぼ不純物の分布に対応する。従って、カルコパイライト薄膜中に不純物であるIa族元素を分布させることにより、キャリア濃度分布による内部電界を誘起させることが可能となる。 【0015】第2、第3の発明は、それぞれpn接合を形成した後と形成する前に、キャリア濃度分布を与える方法として有効である。具体的には、第2の方法は、透明電極上のn形窓層にp形のカルコパイライト構造半導体薄膜を形成して構成されるスーパストレイト形太陽電池に対して有効であり、第3の発明は、基板上の金属電極上にp形カルコパイライト構造半導体薄膜を形成した後にn形窓層を形成して構成されるサブストレイト形太陽電池に対して有効である。また、第4の発明は、スーパストレイト形及びサブストレイト形に関わらずカルコパイライト構造半導体薄膜中に任意のキャリア濃度分布を形成することが可能である。 【0016】また、第1~4までの発明において、Ia-VIa化合物を含むカルコパイライト構造半導体薄膜を堆積した後に熱処理することにより、カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素の欠損箇所にIa族元素が埋まり、格子欠陥によるキャリアの捕獲を減少させることになる。従って、キャリア濃度が増加する。さらに、第2と第3の発明においては、Ia-VIa化合物膜のカルコパイライト構造半導体薄膜中への拡散を生じさせるために熱処理が必要となる。以上の熱処理においてカルコパイライト構造半導体薄膜からのVIa族元素の脱離を防ぐためにはVIa族元素を含む雰囲気中で行う方法が有効である。 【0017】カルコパイライト構造半導体薄膜中に添加するIa族元素としては、イオン半径が小さく拡散速度が速いLiあるいはNaが特に有効である。従って、本発明においてはLi及びNaの硫化物またはセレン化物であるLi2S、Li2Se、Na2S、Na2Seが適当である。特に、Li2S及びNa2Sは毒性がなく、取り扱いが容易である。 【0018】本発明を用いるとIa族元素の混入によりキャリア濃度及び分布を制御することが可能となるため、光励起されたキャリアを効率よく取り出すことができ太陽電池の変換効率が向上する。 【0019】 【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。 (実施例1)図1は本発明の1実施例を示すカルコパイライト構造半導体薄膜の製造に用いる装置の模式図である。ここで、カルコパイライト構造半導体薄膜としてCuInSe2膜を作製した。真空容器1の中にある蒸着源2、3、4にはそれぞれCuInSe2の構成元素であるCu、In、Seを入れ同時に蒸発させた。各蒸着源の典型的温度は、Cu、In、Seに対し、それぞれ1200℃、870℃、180℃である。また、蒸着源5にはIa-VIa化合物であるNa2Seを入れ蒸発させた。基板6としてはアルミナ板を用いた。また、蒸着中はヒータ7により基板を750℃に保持した。今回、Na2Seの蒸着源の温度を変えた5種類の膜を作製した。蒸着源の温度が高いほどNa2Seの蒸発速度が速くなり、膜中に含まれるNa量が増加することになる。図2にNa2Seの蒸着源の温度に対する導電率の変化を示す。図の左端に白丸印でNa2Seを蒸着せず同様な条件で作製した膜の導電率を表わす。図2からNa2Seの蒸着源の温度の上昇に従い導電率が増加していることがわかる。つまり、膜中のNa量の増加により低抵抗化することがわかる。蒸着源の温度1000℃で作製した膜は、Naが混入していない膜より約2桁導電率が上昇している。この膜の膜中のNaの分布を2次イオン質量分析法(SIMS)で測定した。結果を図3に示す。ここで、実線が本実施例で作製した膜のNaの分布を表わしている。点線、破線、一点鎖線については後述する。参照のためInの分布も示している。実線で示すNaの結果とInの分布の比較からNaが膜中に均一に分布していることがわかる。 【0020】以上から、本実施例の方法を用いると、Naが膜中に均一に分布し、Na2Seの蒸着源の温度(蒸発速度)によりCuInSe2膜の導電率の制御が可能となる。 【0021】なお、ここでは、カルコパイライト構造半導体薄膜であるCuInSe2を形成する方法として、構成元素であるCu、In、Seの3元同時蒸着を用いたが、2元化合物であるCu2SeとIn2Se3の同時蒸着やCuInSe2化合物の蒸着を用いても同様な結果が得られている。 【0022】(実施例2)図4は本発明の他の実施例を示すカルコパイライト構造半導体薄膜の製造工程の一部の略示断面図である。ここで、基板6としてアルカリ金属を含まないガラスを用いた。このガラス上に太陽電池のn形窓層8となるCdS膜を堆積した後に、カルコパイライト構造半導体薄膜9であるCuInSe2膜を形成した。その上にIa-VIa化合物膜10であるNa2Sを堆積した。その後、空気中において300℃で1時間熱処理を行い、Na2SをCuInSe2膜中に拡散させた。CdSとCuInSe2膜の膜厚はそれぞれ0.05、2.0μmである。ここで、Na2Sの膜厚を0.01~0.10μmまで変化させた試料を作製した。図5にNa2Sの膜厚に対するCuInSe2膜の導電率の変化を示す。図5にはNa2S膜を堆積していない膜の導電率を白丸印で示している。Na2Sの膜厚の増加に従い導電率が増加していることがわかる。Na2Sの膜厚が0.05μmの試料のNaのSIMS分布を図3の点線に示す。膜表面にNaが高濃度に存在し、膜厚0.5μmから急に減少している。これから、膜表面の導電率が膜中より高くなっていることが推測される。導電率の変化に対しキャリア濃度がほぼ対応することから、膜表面近傍と膜中とのキャリア濃度の違いによる内部電界が生じていると考えられる。 【0023】次に、図4の試料の構成に対し、ガラスとCdS膜の間に電極となる透明導電膜ITO/ZnO積層膜を挿入し、膜厚0.05μmのNa2S膜を前記と同様な条件で拡散した後に電極となるAu膜を形成した構成のスーパーストレイト形太陽電池を作製した。比較のために同様な構成でNa2S膜を堆積していない太陽電池も作製した。AM1.5の100mW/cm2の光を照射して電圧-電流特性を測定した結果、短絡光電流がNa2Sを堆積していない太陽電池では32.2mA/cm2であったのに対し、本実施例の素子では38.7mA/cm2であった。Na2S膜の拡散により電流が約2割増加したことがわかる。これは、SIMS結果から考えられるキャリア濃度の分布によって生じた内部電界によりAu電極付近(SIMS分布ではCuInSe2表面付近)で励起された光キャリアを有効に取り出せるためと考えられる。 【0024】以上より、本実施例はIa-VIa化合物の膜厚によりカルコパイライト構造半導体薄膜の導電率制御ができ、膜表面から膜中へとIa族元素が減少する分布を形成することが可能である。このようなIa族元素の分布によるキャリア濃度の変化はスーパーストレイト形太陽電池の効率向上に有効である。」 イ 引用文献1の記載から当業者が把握できる事項 実施例2に記載されたカルコパイライト半導体薄膜の製造工程は、「カルコパイライト半導体薄膜9であるCuInSe2膜」を形成した上に「Ia-VIa化合物膜10であるNa2S」を堆積している(【0022】)ことから、【0007】の「第2の発明」(基体上にIb族とIIIa族とVIa族元素からなる化合物半導体薄膜を堆積した後に、前記薄膜上にIa族とVIa族元素からなる化合物薄膜を堆積する方法)に対応するものである。 そして、当該「第2の発明」では、(i)カルコパイライト構造半導体薄膜を堆積した後に熱処理することにより、カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素の欠損箇所にIa族元素が埋まり、格子欠陥によるキャリアの捕獲を減少させることになり、従って、キャリア濃度が増加するものであり、さらに、(ii)カルコパイライト構造半導体薄膜中への拡散を生じさせるために熱処理が必要となるが、以上の熱処理においてカルコパイライト構造半導体薄膜からのVIa族元素の脱離を防ぐためにはVIa族元素を含む雰囲気中で行う方法が有効であるとされる(【0016】)ところ、実施例2においては、(i)の「Ib族元素の欠損箇所にIa族元素が埋まり」は「Cuの欠損箇所にNaが埋まり」の意味と理解でき、(ii)の「VIa族元素の脱離を防ぐためにはVIa族元素を含む雰囲気中で行う」は「Seの脱離を防ぐためにはSを含む雰囲気中で行う」の意味と理解できる。 さらに、当該「第2の発明」では、Ia族元素の混入によりキャリア濃度及び分布を制御することが可能となるため、光励起されたキャリアを効率よく取り出すことができ太陽電池の変換効率が向上するとされる(【0018】)ところ、実施例2においては、「Ia族元素の混入」は「Naの混入」の意味と理解できる。 ウ 引用発明の認定 前記ア及びイからみて、引用文献1には、実施例2における、CuInSe2膜(カルコパイライト半導体薄膜9)の上にNa2S(Ia-VIa化合物膜10)を堆積し、その後、熱処理を行って、Na2SをCuInSe2膜中に拡散させる方法(【0022】)について、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに引用発明の認定に用いた段落番号等を括弧内に記載してある。)。 「基板6としてアルカリ金属を含まないガラスを用い、 このガラス上に太陽電池のn形窓層8となるCdS膜を堆積した後に、カルコパイライト構造半導体薄膜9であるCuInSe2膜を形成し、 その上にIa-VIa化合物膜10であるNa2Sを堆積し、その後、空気中において300℃で1時間熱処理を行い、Na2SをCuInSe2膜中に拡散させる方法であって、(【0022】) Ia-VIa化合物(Na2S)を含むカルコパイライト構造半導体薄膜(CuInSe2膜)を堆積した後に熱処理することにより、カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素(Cu)の欠損箇所にIa族元素(Na)が埋まり、格子欠陥によるキャリアの捕獲を減少させることになり、従って、キャリア濃度が増加し、さらに、Ia-VIa化合物膜(Na2S)のカルコパイライト構造半導体薄膜(CuInSe2膜)中への拡散を生じさせるために熱処理が必要となるが、以上の熱処理においてカルコパイライト構造半導体薄膜(CuInSe2膜)からのVIa族元素(Se)の脱離を防ぐためにはVIa族元素(S)を含む雰囲気中で行う方法が有効であり、(【0016】、前記イ) Ia族元素(Na)の混入によりキャリア濃度及び分布を制御することが可能となるため、光励起されたキャリアを効率よく取り出すことができ太陽電池の変換効率が向上する、(【0018】、前記イ) 方法。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)本件補正発明の「入射光を電流に光電変換するための吸収層を後処理する方法であって、」との発明特定事項について 引用発明の「カルコパイライト構造半導体薄膜9であるCuInSe2膜」は、本件補正発明の「吸収層」に相当することが明らかである。そして、当該「CuInSe2膜」が本件補正発明でいう「入射光を電流に光電変換するための」ものであることも明らかである。 また、引用発明の方法は、「CuInSe2膜を形成し」た後、「空気中において300℃で1時間熱処理を行い、Na2SをCuInSe2膜中に拡散させる方法」であるところ、当該方法は、本件補正発明の「吸収層を後処理する方法」に相当する。 したがって、引用発明は本件補正発明の上記発明特定事項を満たしている。 (イ)本件補正発明の「担体上にカルコゲン含有吸収層を提供するステップ」との発明特定事項について 引用発明の「基板6」は、本件補正発明の「担体」に相当する。また、引用発明の「CuInSe2膜」(本件補正発明の「光吸収層」に相当。)は、「Se」がカルコゲンであることから、本件補正発明の「カルコゲン含有吸収層」に相当する。 そして、引用発明は、「基板6としてアルカリ金属を含まないガラスを用い、このガラス上に」「カルコパイライト構造半導体薄膜9であるCuInSe2膜を形成」しているから、本件補正発明でいう「担体上にカルコゲン含有吸収層を提供するステップ」を備えている。 したがって、引用発明は本件補正発明の上記発明特定事項を満たしている。 (ウ)本件補正発明の「後処理層を前記吸収層の表面上に適用するステップ、ここで、前記後処理層は、金属カルコゲニド、金属カルコゲニドの酸素化合物、及び金属カルコゲニドの水素-酸素化合物からなる群から選択される少なくとも1つの後処理材料を含む」との発明特定事項について 引用発明は、「CuInSe2膜」の「上にNa2Sを堆積」するものであるところ、当該「Na2S」を「堆積し」た構造は、「層」を構成していると解される。そして、当該「Na2S」は、「CuInSe2膜中に拡散させ」られることから、本件補正発明の「後処理材料」に相当し、当該「Na2S」を「堆積し」た構造は、本件補正発明の「後処理層」に相当する。また、当該「Na2S」を「堆積し」た構造が、本件補正発明でいう「前記吸収層の表面上に適用するステップ」を経た後に形成されていることは、明らかである。 加えて、当該「Na2S」は、本件補正発明の「金属カルコゲニド」に含まれることから、引用発明は、本件補正発明でいう「前記後処理層は、金属カルコゲニド、金属カルコゲニドの酸素化合物、及び金属カルコゲニドの水素-酸素化合物からなる群から選択される少なくとも1つの後処理材料を含む」ものといえる。 したがって、引用発明は本件補正発明の上記発明特定事項を満たしている。 (エ)「前記少なくとも1つの後処理材料を前記吸収層中に熱拡散するステップ、を含み、」との発明特定事項について 引用発明の「Na2S」(本件補正発明の「後処理材料」に相当。)は、CuInSe2膜の上に堆積された後に熱処理を行うことでCuInSe2膜中に拡散させられることから、引用発明は、本件補正発明でいう「前記少なくとも1つの後処理材料を前記吸収層中に熱拡散するステップ、を含」んでいることになる。 したがって、引用発明は本件補正発明の上記発明特定事項を満たしている。 (オ)本件補正発明の「前記後処理材料は、表面の追加の清浄化の有無にかかわらず、1)前記吸収層のアルカリ不動態化のためのアルカリ金属の供給源としての、及び、2)前記吸収層の表面終端のための硫化物の供給源としての、後処理後の表面S相関ラマンシグナルの増加を伴う二重の機能を有し、」との発明特定事項について 引用発明の「Na2S」(本件補正発明の「後処理材料」に相当。)は、「空気中において300℃で1時間熱処理」を行うことによって、「CuInSe2膜中に拡散させ」られるものであって、この「熱処理」により、「カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素(Cu)の欠損箇所にIa族元素(Na)が埋まり、格子欠陥によるキャリアの捕獲を減少させることになり、従って、キャリア濃度が増加」するものであり、さらに、この「熱処理」において「カルコパイライト構造半導体薄膜(CuInSe2膜)からのVIa族元素(Se)の脱離を防ぐためにはVIa族元素(S)を含む雰囲気中で行う方法が有効」とされるものであるが、本件補正発明の上記発明特定事項を満たしているかは不明である。 (カ)本件補正発明の「前記少なくとも1つの後処理材料の前記吸収層への拡散が、真空環境において行われる、」との発明特定事項について 引用発明は、「空気中において300℃で1時間熱処理を行い、Na2SをCuInSe2膜中に拡散させる」ものであるから、本件補正発明と引用発明は、「前記少なくとも1つの後処理材料の前記吸収層への拡散が、」所定の「環境において行われる」点で共通するが、所定の環境が、本件補正発明は「真空環境」であるのに対し、引用発明は「空気中」の環境である。 イ 前記アによれば、本件補正発明と引用発明は、以下の点で一致し、以下の点で一応相違するか、又は相違する。 【一致点】 「入射光を電流に光電変換するための吸収層を後処理する方法であって、 担体上にカルコゲン含有吸収層を提供するステップ; 後処理層を前記吸収層の表面上に適用するステップ、ここで、前記後処理層は、金属カルコゲニド、金属カルコゲニドの酸素化合物、及び金属カルコゲニドの水素-酸素化合物からなる群から選択される少なくとも1つの後処理材料を含む;及び 前記少なくとも1つの後処理材料を前記吸収層中に熱拡散するステップ、を含み、 前記少なくとも1つの後処理材料の前記吸収層への拡散が、所定の環境において行われる、 方法。」 【相違点1】 「前記後処理材料」が、本件補正発明は、「表面の追加の清浄化の有無にかかわらず、1)前記吸収層のアルカリ不動態化のためのアルカリ金属の供給源としての、及び、2)前記吸収層の表面終端のための硫化物の供給源としての、後処理後の表面S相関ラマンシグナルの増加を伴う二重の機能を有」しているのに対し、引用発明は、「空気中において300℃で1時間熱処理」を行うことによって、「CuInSe2膜中に拡散させ」られるものであって、この「熱処理」により、「カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素(Cu)の欠損箇所にIa族元素(Na)が埋まり、格子欠陥によるキャリアの捕獲を減少させることになり、従って、キャリア濃度が増加」するものであり、さらに、この「熱処理」において「カルコパイライト構造半導体薄膜(CuInSe2膜)からのVIa族元素(Se)の脱離を防ぐためにはVIa族元素(S)を含む雰囲気中で行う方法が有効」とされるものである点。 【相違点2】 「少なくとも1つの後処理材料の前記吸収層への拡散が」「行われる」所定の環境が、本件補正発明は「真空環境」であるのに対して、引用発明は「空気中」の環境である点。 (4)判断 ア 相違点1について (ア)相違点1に係る本件補正発明の構成(以下「本件構成」という。)は、「前記後処理材料」が「表面の追加の清浄化の有無にかかわらず」「二重の機能」を有することを特定するものである。しかるに、本件構成は、あくまで「前記後処理材料」の機能を特定することから、本件構成が本件補正発明に特定されたことによっては、本件補正発明が対象とする「方法」について、「表面の追加の清浄化」という工程が行われることも行われないことも特定されていないと解される。 そして、本件構成における「後処理材料」が有する「二重の機能」は、「後処理材料」が「前記吸収層中に熱拡散」されることによって奏されると解されるところ、「表面の追加の清浄化」は、「吸収層の表面上に存在する後処理材料(すなわち、非拡散後処理材料)」を除去するものである(本件補正後の本願の発明の詳細な説明及び図面(以下「本件補正明細書等」という。)の【0048】)ことから、当該「表面の追加の清浄化」によって「二重の機能」の発現に由来する「前記吸収層中に熱拡散」された物質が除去されることはないのであり、そのため、当該「表面の追加の清浄化」が行われるか否かにより、当該「二重の機能」が奏されたり奏されなかったりすることもない。換言すれば、吸収層中に熱拡散されることによって当該「二重の機能」を奏するような「後処理材料」であれば、「表面の追加の清浄化」が行われようが行われまいが、当該「二重の機能」を奏するし、その逆も成り立つ。 このように、本件構成のうち「表面の追加の清浄化の有無にかかわらず」との特定は、「表面の追加の清浄化」という工程が行われることも行われないことも特定しておらず、「前記後処理材料」が「二重の機能」を有することに対して追加的な限定を行うものともいえないことから、実質的には意味を持たないと解するのが相当である。 (イ)前記(ア)によれば、引用発明の「Na2S」(本件補正発明の「後処理材料」に相当。)が、相違点1に係る本件補正発明の構成(本件構成)を満たしているか否かは、当該「Na2S」が、「1)前記吸収層のアルカリ不動態化のためのアルカリ金属の供給源としての」「機能」(以下「本件アルカリ金属供給源機能」という。)と「2)前記吸収層の表面終端のための硫化物の供給源としての、後処理後の表面S相関ラマンシグナルの増加を伴う」「機能」(以下「本件硫化物供給源機能」という。)を有しているか否かによって判断すれば足りることになるので、以下検討する。 a 引用発明の「Na2S」が本件アルカリ金属供給源機能を有しているか 引用発明では、当該「Na2S」のうち「Na」について、「空気中において300℃で1時間熱処理」により、「カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素(Cu)の欠損箇所にIa族元素(Na)が埋まり、格子欠陥によるキャリアの捕獲を減少させることになり、従って、キャリア濃度が増加」するとされている。そうすると、当該「Na2S」が、本件アルカリ金属供給源機能のうち、「アルカリ金属の供給源」としてのものに該当することは明らかである。 また、本件アルカリ金属供給源機能のうち、「前記吸収層のアルカリ不動態化のための」ものに該当するかについても、「吸収層のアルカリ不動態化」とは、アルカリ金属の添加によって生じる結晶粒界及び/又は電気的に活性な欠陥の不動態化を意味する(本件補正明細書等の【0042】)のであり、引用発明でも、「カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素(Cu)の欠損箇所にIa族元素(Na)が埋ま」るのであるから、これに該当するといえる。 したがって、引用発明の「Na2S」は、本件アルカリ金属供給源機能を有している。 b 引用発明の「Na2S」が本件硫化物供給源機能を有しているか (a)引用発明では、当該「Na2S」のうち「S」について、「空気中において300℃で1時間」の「熱処理」において「カルコパイライト構造半導体薄膜(CuInSe2膜)からのVIa族元素(Se)の脱離を防ぐためにはVIa族元素(S)を含む雰囲気中で行う方法が有効」とされている。このように、引用発明では、「熱処理」による「CuInSe2膜」からの「Se」の脱離が、「S」を含む雰囲気においては、防がれるとされるところ、その際においては、「CuInSe2膜」における「Se」の表面欠陥を「S」が終端するという現象が生じていると解される。すなわち、表面に欠陥(表面欠陥)が存在することが技術常識に照らして当然であることから、引用発明の「CuInSe2膜」にも、表面欠陥が存在し、それには、当然、「Se」の表面欠陥も含まれる。そして、引用発明では、「Na2S」が、上記のとおり、「空気中において300℃で1時間熱処理」を行うことによって、「CuInSe2膜中に拡散させ」られるものであるから、「S」も当該「CuInSe2膜」中に拡散すると解するのが自然であるし、このことは、本件補正明細書等の【0046】に「少なくとも1つの後処理材料の吸収層への拡散は、例えば、後処理層が300℃~700℃の範囲の温度で高温基板(吸収層を有する担体)上に適用される場合、カルコゲン含有雰囲気又はカルコゲン非含有雰囲気、特に不活性ガス中で起こる」と記載されている一方で、引用発明における「熱処理」温度も上記のとおり「300℃」であることからも首肯できる。以上のように、引用発明では、「空気中において300℃で1時間」の「熱処理」において、「CuInSe2膜」における「Se」の表面欠陥を「Na2S」に由来する「S」が終端するという現象が生じているといえることから、当該「Na2S」は、本件硫化物供給源機能のうち、「前記吸収層の表面終端のための」ものに該当するといえる。 また、本件硫化物供給源機能のうち「後処理後の表面S相関ラマンシグナルの増加を伴う」ものに該当するかについても、当該シグナルの増加は、吸収層の表面近傍のS元素の量が、Sを含む後処理材料の吸収層への熱拡散により増加すれば、当然に満たされることになることから、これに該当するといえる。 (b)仮に、前記(a)のように、引用発明で「空気中において300℃で1時間」の「熱処理」において、「CuInSe2膜」における「Se」の表面欠陥を「Na2S」に由来する「S」が終端するという現象が生じているとはいえないとしても、引用発明は、「熱処理」により、「カルコパイライト構造半導体薄膜中のIb族元素(Cu)の欠損箇所にIa族元素(Na)が埋まり、格子欠陥によるキャリアの捕獲を減少させることになり、従って、キャリア濃度が増加」するものであり、さらに、この「熱処理」において「カルコパイライト構造半導体薄膜(CuInSe2膜)からのVIa族元素(Se)の脱離を防ぐためにはVIa族元素(S)を含む雰囲気中で行う方法が有効」とされるものであることから、その効果をさらに得るようにするために、堆積させる「Na2S」の量を増加させるようにすることは、当業者が適宜なし得たことであり、このようにすることにより、必然的に、「Na2S」のうちの「S」が、本件硫化物供給源機能でいう「吸収層の表面終端」を行い、「後処理後の表面S相関ラマンシグナルの増加を伴う」ものとなると考えられる。 c 以上によれば、相違点1は実質的でないか、仮に実質的であるとしても、当業者が適宜至ることができる程度のものにすぎない。 イ 相違点2について 引用発明は、「300℃で1時間熱処理を行い、Na2SをCuInSe2膜中に拡散させる」ことを空気中で行っている。 ここで、熱拡散処理を行う際に、外部環境からの汚染を防ぐために、真空中で行うことは周知技術であると認められる。すなわち、例えば、特開平7-183247号公報の【0052】・【0053】では、拡散工程あるいはアニール工程を行う際に、酸素による汚染(酸化)を防ぐために真空中で行うことが記載されているし、特開2004-281525号公報の【0008】・【0010】・【0020】・【0022】・【0046】では、低温拡散炉における熱処理を行う際に、大気雰囲気下での酸素による汚染(酸化)を防ぐために、同一真空雰囲気下で行うことで、大気雰囲気での作業者の介在を排除し、バリアメタル層表面が汚染したり自然酸化膜が堆積することもないと記載されている。 そして、引用発明においても、外部環境からの汚染を防ぐことは当然の課題であることから、当該課題を解決するために上記周知技術を採用して、相違点2に係る本願発明の構成に至ることは、当業者にとって容易である。 ウ 本件補正発明の効果について 本件補正発明の奏する作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び前記周知技術に基づいて当業者が予測することができなかった顕著なものということはできない。 (5)請求人の主張 請求人は、引用文献1には、相違点2に係る本件補正発明の構成(後処理材料の吸収層への拡散を真空環境で行うこと)が開示されておらず、そのような構成により、バッファ層への水酸化物又は追加の酸素の混入が防止されるとともに、バッファ層の堆積を、吸収層の表面Ga空乏化をもたらすCBDではなく、スパッタリングによって実現できるような効果を奏する旨主張する。 しかしながら、請求人が主張する効果は、いずれもバッファ層に係るものであるところ、本件補正発明には、バッファ層が特定されていないから、請求人の主張は、請求項の記載に基づくものではなく採用できない。 (6)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年8月24日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、又は、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記少なくとも1つの後処理材料の前記吸収層への拡散が、真空環境において行われる」との限定事項を削除したものである。 そうすると、前記第2の[理由]2(4)アを踏まえると、本願発明は引用発明であるし、また、仮にそうではないとしても、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-008256

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