特許拒絶査定不服審判
2023-015265
接合システムおよび接合方法
- 審判番号
- 2023-015265
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-173723
- 請求日
- 2023年09月11日
- 審決日
- 2024年09月11日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ボンドテック株式会社
- 【請求人代理人】龍竹 史朗
- 【請求人】須賀 唯知
- 【請求人代理人】龍竹 史朗
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 松永 稔
- 審判官 三浦 みちる
- 分類
- P18 .575-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-173723「接合システムおよび接合方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月11日出願公開、特開2022- 3713〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)11月14日(優先権主張 平成30年8月31日、平成30年10月31日)を国際出願日とする特願2020-540018号の一部を、令和3年10月25日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年11月24日 :手続補正書の提出
令和4年12月21日付け:拒絶理由通知書
令和5年 2月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 6月13日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年 9月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年9月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年9月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正後の請求項8の記載は、次のとおりである。(下線部は、手続補正書の記載のとおりである。)
「 【請求項8】
第1被接合物に、同一面内に材料が異なる複数種類の領域が形成された接合面を有する第2被接合物を接合する接合システムであって、
少なくとも前記第2被接合物を含む対象物を支持する対象物支持部と、前記対象物に対して窒素の粒子ビームを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させる粒子ビーム源と、前記第2被接合物の接合面に対してラジカルを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させるラジカル源と、を有し、同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される窒素の粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面の、前記複数種類の領域それぞれにおいてエッチングされることにより生じる粒子が他の領域への付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記ラジカル源から照射されるラジカルにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行することにより前記第2被接合物の接合面が親水化される活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記第2被接合物の接合面が活性化された前記第2被接合物の接合面における前記複数種類の領域を前記第1被接合物の接合面に面接触させることにより前記第2被接合物を前記第1被接合物に親水化接合する接合装置と、を備え、
前記対象物支持部は、前記対象物における第2被接合物の前記接合面を含む複数種類の材料から形成された部分を前記粒子ビーム源側に露出させた姿勢で前記対象物を支持する、
接合システム。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年2月20日に提出された手続補正書の、特許請求の範囲の請求項8の記載は次のとおりである。
「 【請求項8】
第1被接合物に、同一面内に材料が異なる複数種類の領域が形成された接合面を有する第2被接合物を接合する接合システムであって、
少なくとも前記第2被接合物を含む対象物を支持する対象物支持部と、前記対象物に対して窒素の粒子ビームを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させる粒子ビーム源と、前記第2被接合物の接合面に対してラジカルを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させるラジカル源と、を有し、前記粒子ビーム源から照射される窒素の粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行した後、前記ラジカル源から照射されるラジカルにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行する活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記第2被接合物の接合面が活性化された前記第2被接合物の接合面における前記複数種類の領域を前記第1被接合物の接合面に面接触させることにより前記第2被接合物を前記第1被接合物に親水化接合する接合装置と、を備え、
前記対象物支持部は、前記対象物における第2被接合物の前記接合面を含む複数種類の材料から形成された部分を前記粒子ビーム源側に露出させた姿勢で前記対象物を支持する、
接合システム。」
2 補正の適否
(1) 新規事項の追加について
ア 当初明細書等の記載
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には次の記載がある。(下線は強調のために当審において付加した。)
「【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るチップ接合システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るチップ接合システムは、基板上にチップを実装するシステムである。ここで、基板が、第1被接合物に相当し、チップが、第2被接合物に相当する。チップとしては、例えばダイシングされた基板から供給される半導体チップである。また、チップとしては、その基板に接合される接合面に絶縁体材料のみが露出したチップまたは絶縁体材料と導電性材料とが露出したチップが挙げられる。ここで、絶縁体材料としては、例えばSiO2、Al2O3等の酸化物、SiN、AlN等の窒化物、SiONのような酸窒化物、或いは樹脂が挙げられる。また、導電性材料としては、Si、Ge等の半導体材料、Cu、Al、はんだ等の金属が挙げられる。つまり、チップは、その接合面に互いに材料が異なる複数種類の領域が形成されたものであってもよい。具体的には、チップが、その接合面に電極と絶縁膜とが設けられたものであり、絶縁膜が、SiO2、Al2O3等の酸化物またはSiN、AlN等の窒化物から形成されているものであってもよい。このチップ接合システムは、基板におけるチップが実装される実装面とチップの接合面とについて活性化処理を行った後、チップを基板に接触、または加圧して接合する。その後、または同時に加熱することにより、チップを基板に強固に接合する。
・・・(中略)・・・
【0027】
粒子ビーム源61は、例えば高速原子ビーム(FAB、Fast Atom Beam)源であり、放電室612と、放電室612内に配置される電極611と、ビーム源駆動部613と、窒素ガスを放電室612内へ供給するガス供給部614と、を有する。放電室612の周壁には、中性原子を放出するFAB放射口612aが設けられている。放電室612は、炭素材料から形成されている。ここで、放電室612は長尺箱状であり、その長手方向に沿って複数のFAB放射口612aが一直線上に並設されている。ビーム源駆動部613は、放電室612内に窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生部(図示せず)と、電極611と放電室612の周壁との間に直流電圧を印加する直流電源(図示せず)と、を有する。ビーム源駆動部613は、放電室612内に窒素ガスのプラズマを発生させた状態で、放電室612の周壁と電極611との間に直流電圧を印加する。このとき、プラズマ中の窒素イオンが、放電室612の周壁に引き寄せられる。このとき、FAB放射口612aへ向かう窒素イオンは、FAB放射口612aを通り抜ける際、FAB放射口612aの外周部の、炭素材料から形成された放電室612の周壁から電子を受け取る。そして、この窒素イオンは、電気的に中性化された窒素原子となって放電室612外へ放出される。但し、窒素イオンの一部は、放電室612の周壁から電子を受け取ることができず、窒素イオンのまま放電室612の外へ放出される。
【0028】
ここで、粒子ビーム源61は、シートTEに貼着された少なくとも1つのチップCPそれぞれの接合面CPfのうちの少なくとも1つを含む仮想平面S1に対する粒子ビームの入射角度が30度以上80度以下となるように設定されている。即ち、粒子ビームの照射軸J1と仮想平面S1の法線方向N1とのなす角度(入射角度)θ1が、30度以上80度以下となるように設定されている。また、粒子ビームの入射角度θ1は、図6に示すように、隣り合うチップCPの間の間隔をL1とし、チップCPの厚さをT1とすると、下記式(1)の関係式が成立するように設定されている。
【0029】
【数1】
[図:0001416109000001.jpg]
【0030】
これにより、粒子ビームが直接シートTEに照射されることが抑制される。従って、粒子ビームがシートTEに照射されることに起因したシートTEからの不純物の発生が抑制されるので、シートTEから発生した不純物によるチップCPの接合面CPfの損傷が抑制されるという利点がある。
【0031】
ビーム源搬送部63は、長尺でありチャンバ64に設けられた孔64aに挿通され一端部で粒子ビーム源61を支持する支持棒631と、支持棒631の他端部で支持棒631を支持する支持体632と、支持体632を駆動する支持体駆動部633と、を有する。また、ビーム源搬送部63は、チャンバ64内の真空度を維持するためにチャンバ64の孔64aの外周部と支持体632との間に介在するベローズ634を有する。支持体駆動部633は、図5の矢印AR31に示すように、支持体632を支持棒631がチャンバ64内へ挿脱される方向へ駆動することにより、図5の矢印AR32に示すようにチャンバ64内において粒子ビーム源61の位置を変化させる。ここで、ビーム源搬送部63は、粒子ビーム源61を、その複数のFAB放射口612aの並び方向に直交する方向へ移動させる。
【0032】
ところで、粒子ビーム源61は、前述のように、一直線上に並設された複数のFAB放射口612aを有する。そして、粒子ビーム源61は、複数のFAB放射口612aの並び方向に直交する方向へ移動される。これにより、粒子ビームが照射される領域の形状は、矩形状となる。これに対して、複数のチップCPが、平面視円形の基板(図示せず)をダイシングしたものである場合、シートTEにおける平面視円形の領域に貼着された状態となっている。従って、シートTEに貼着された複数のチップCP全体に粒子ビームを照射しようとすすると、粒子ビームが照射される領域を複数のチップCPが貼着された平面視円形の領域を含む矩形状の領域に設定する必要がある。この場合、前述のカバー622が無い構成では、シートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠112に粒子ビームが照射されることになりシートTEからの不純物が発生し易くなる。これに対して、本実施の形態では、カバー622がシートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠112を覆っている。これにより、シートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠112へ照射される粒子ビームが遮断され、シートTEまたは保持枠112からの不純物の発生が抑制される。
【0033】
ラジカル源67は、プラズマ室671と、ガラス窓674と、トラップ板675と、導波管673と、マグネトロン672と、を有するICP(Inductively Coupled Plasma)ICPプラズマ源を採用してもよい。プラズマ室671は、ガラス窓674を介して導波管673に接続されている。また、ラジカル源67は、プラズマ室671内へ供給管676を介して窒素ガスを供給するガス供給部677を有する。マグネトロン672で生成されるマイクロ波は、導波管673を通じてプラズマ室671内へ導入される。マグネトロン672としては、例えば周波数2.45GHzのマイクロ波を生成するものを採用することができる。この場合、マグネトロン672からプラズマ室671へ供給される電力は、例えば2.5kWに設定される。そして、プラズマ室671内に窒素ガスが導入された状態で、導波管673からマイクロ波が導入されると、マイクロ波によりプラズマ室671内にプラズマPLMを形成する。トラップ板675は、プラズマPLM中に含まれるイオンをトラップし、ラジカルのみをチャンバ64内へダウンフローさせる。また、即ち、プラズマ室671でプラズマが発生し、プラズマに含まれるラジカルのみがプラズマ室671の下方へダウンフローする。
・・・(中略)・・・
【0036】
次に、本実施の形態に係るチップ接合システム1の動作について図8乃至図12を参照しながら説明する。なお、基板WT、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112は、搬出入ユニット80から投入されるものとする。まず、チップ接合システム1は、図8に示すように、搬出入ユニット80から投入された基板WTを活性化処理装置60へ投入することにより基板WTの実装面WTfに対して活性化処理を施す基板実装面活性化工程を実行する(ステップS1)。ここで、活性化処理装置60は、まず、支持部62に基板WTの実装面WTfが鉛直下方を向く姿勢で支持させた状態で、粒子ビーム源61から窒素原子を含む粒子ビームを実装面WTfへ照射させる。このとき、粒子ビーム源61への供給電力は、例えば1kV、100mAに設定されている。また、粒子ビーム源61の放電室612内へ導入される窒素ガスの流量は、例えば100sccmに設定される。そして、粒子ビーム源61から基板WTの実装面WTfへ粒子ビームが照射しつつ、粒子ビーム源61を1.2乃至14.0mm/secの速度で1往復させる。次に、活性化処理装置60は、枠保持部621に保持された基板WTを反転させることにより、基板WTの実装面WTfが鉛直上方を向く姿勢にする。そして、活性化処理装置60は、ラジカル源67により基板WTの実装面WTfに窒素ラジカルを照射する。ここで、ラジカル源67においてマグネトロン672からプラズマ室671へ供給される電力は、例えば2.5kWに設定される。なお、ラジカル源67が、前述のガラス窓674上に設けられた平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源とを備える構成である場合、高周波電源からプラズマ室671へ供給される電力は、例えば250Wに設定される。また、プラズマ室671内へ導入される窒素ガスの流量は、例えば100sccmに設定される。更に、基板WTの実装面WTfへのラジカルの照射を継続する時間は、例えば15secに設定される。例えは、基板WTの実装面WTfとチップCPの接合面CPfとの両方に、金属の電極と絶縁膜とが設けられている場合、基板WTの実装面WTfに粒子ビームを照射することが好ましい。
【0037】
次に、チップ接合システム1は、活性化処理装置60から活性化処理が施された基板WTを、洗浄装置85へ投入して、基板WTの実装面WTfを水洗浄する水洗浄工程を実行する(ステップS2)。ここで、洗浄装置85は、ステージ852に基板WTが支持された状態でステージ駆動部853によりステージ852を回転させつつ、洗浄ヘッド851から水を基板WTに向けて吐出することにより基板WTを水洗浄する。これにより、基板WTの実装面WTfに水酸基(OH基)または水分子が比較的多く付着した状態となる。
・・・(中略)・・・
【0044】
その後、チップ接合システム1は、ステージ315を駆動するとともにボンディング部33を回転させることにより、チップCPと基板WTとの相対的な位置ずれを補正するアライメントを実行する。そして、チップ接合システム1は、ヘッド33Hを上昇させることにより、チップCPを基板WTに接合する。ここにおいて、基板WTの実装面WTfとチップCPの接合面CPfとは、水酸基(OH基)を介して親水化接合した状態となる。」
イ 当審の判断
上記記載によると、当初明細書等(段落0037、0044参照。)において、「親水化」とは「水酸基(OH基)または水分子が比較的多く付着した状態」とすることを意味し、洗浄装置85における水洗浄工程により行われる処理といえる。
そして、当初明細書等において、洗浄装置85における水洗浄工程は、活性化処理装置60と同一のチャンバ内での処理とはいえず、また、当初明細書等には、窒素の粒子ビームによる活性化処理と、ラジカルによる活性化処理とを実行する同一のチャンバ内で、さらに親水化を行うことは何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、本件補正後の請求項8の「同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される窒素の粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面の、前記複数種類の領域それぞれにおいてエッチングされることにより生じる粒子が他の領域への付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記ラジカル源から照射されるラジカルにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行することにより前記第2被接合物の接合面が親水化される活性化処理装置」との事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項といえる。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
ウ 請求人の主張
請求人は「補正後の請求項8は、補正前の請求項8について「同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される窒素の粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面の、前記複数種類の領域それぞれにおいてエッチングされることにより生じる粒子が他の領域への付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記ラジカル源から照射されるラジカルにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行することにより前記第2被接合物の接合面が親水化される活性化処理装置」と補正したものである。これらの補正は、当初明細書の段落[0010]、[0027]乃至[0033]および[0037]の記載を根拠とするものであり、新規事項を追加するものではない。」(審判請求書13ページ6~14行)と主張する。
しかしながら、上記イのとおり、本件補正後の請求項8の上記事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項といえるから、請求人の主張は採用できない。
(2) 独立特許要件
上記(1)のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないが、仮に、当該要件を満たすとして、検討を進める。
本件補正は、本件補正前の請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記粒子ビーム源から照射される窒素の粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行した後、前記ラジカル源から照射されるラジカルにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行する活性化処理装置」について、「同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される窒素の粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面の、前記複数種類の領域それぞれにおいてエッチングされることにより生じる粒子が他の領域への付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記ラジカル源から照射されるラジカルにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行することにより前記第2被接合物の接合面が親水化される活性化処理装置」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項8に記載された発明と本件補正後の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項8に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の記載のとおりのものである。
イ 引用文献2の記載、及び引用発明
(ア) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で、引用文献2として引用された特開2015-211130号公報には、次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために当審において付加した。)
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクスの分野では、デバイス実装の更なる高密度化と効率化が求められている。そこで、既に半導体集積回路や電気配線が形成された基板を他の同様の基板と接合する3次元実装と呼ばれる接合技術が注目を集めている。この方法により、COC(チップオンチップ)、COW(チップオンウエハ)、WOW(ウエハオンウエハ)とチップレベルからウエハレベルまでの3次元実装があるが、、ウエハオンウエハ(WOW、Wafer-On-Wafer)またはウエハレベルパッケージング(WLP、Wafer-Level Packaging)呼ばれるような、より面積の大きいウエハに適用することで、ウエハの面に垂直方向に電気素子や回路を積層することが可能になる。また、ウエハの面方向に一度に、片方の基板上に形成された電気回路または電気配線を、他の基板上の対応する電気回路または電気配線と接合することができる。したがって、この技術により、半導体集積回路の3次元実装と製造方法の効率化との両方が同時に可能になる。
【0003】
ウエハの表面には上記電気回路等と電気的に接続された、または、接続される金属領域が設けられており、接合工程でこれらの金属領域間で電気的接続が確立されることで、ウエハ間での電気的接続が確立される。一般的に、接合工程においては、まず、接合されるウエハの、対応する金属領域間で、ウエハ面方向の位置合わせがなされる。次に、金属領域が互いに接触するようにウエハ同士が近づけられ、さらにウエハ面垂直方向に力が加えられる。そして、比較的高温に加熱されることにより、金属領域間で原子の拡散が生じて電気的接続が確立される。また、隣り合う電極と電極間は電極間のショートを避けるために絶縁層で埋められているのが一般的である。この絶縁層部分は酸化膜や窒化膜、樹脂層等が一般的に用いられ、電極の接合と同時にこの絶縁層を接合することが好ましい。特に、この酸化膜や窒化膜は数千度の高温下でないと拡散接合しないため、低温で接合する手法として接合表面にOH基を付着させ親水化して水を介在させながら接合し、比較的低温下で加熱して水分子を除去して強固な共有結合に変遷する方式が用いられることが多い。
【0004】
ところで、高温下での接合は、薄いウエハや熱膨張率が異なる異種材料間での接合には不向きである。そこで、特許文献1では、金属領域を接合面に有するウエハを接合する際に、金属領域に表面活性化処理および親水化処理を行った後に、金属領域同士が接触するようにウエハの接合面同士を貼り合わせて加熱することにより、比較的低温にてウエハを接合する技術が提案されている。
・・・(中略)・・・
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板接合装置であって、真空チャンバと、前記真空チャンバ内において、第1基板の第1接合面および第2基板の第2接合面を活性化させる表面活性化処理部と、前記表面活性化処理部による活性化後に、親水化処理がそれぞれ行われた前記第1接合面と前記第2接合面とを接触させ、前記第1基板および前記第2基板を互いに対して押圧することにより、前記第1基板と前記第2基板とを仮接合し、仮接合後の前記第1基板と前記第2基板とを離間させ、真空中において前記第1接合面と前記第2接合面とを接触させて前記第1基板と前記第2基板とを接合する基板接合機構とを備える。
・・・(中略)・・・
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願において、ウエハ(以下、「基板」という。)は、板状の半導体を含むが、これに限定されない。「基板」は、半導体以外にも、ガラス、セラミックス、金属、プラスチック等の材料、または、これらの材料のうち複数の材料を利用した複合材料により形成されてもよい。基板の材料には、剛性が高い材料も低い材料も含まれる。「基板」は、円形、長方形等の種々の形状に形成される。
【0025】
上記基板は、例えば、接合面に金属領域が形成された基板でもよく、あるいは、接合面に金属領域等が設けられないベアガラスやベアSi基板でもよい。接合面に金属領域が設けられた一対の基板が、貼り合わせにより接合される場合、例えば、一方の基板の金属領域と他方の基板の金属領域とは、互いに対応する位置関係を有するように形成されている。双方の基板の金属領域同士が接合されることにより、基板間で電気的接続が確立され、所定の機械的強度が得られる。また、接合面には、接合に寄与しない金属領域があってもよく、他の基板の非金属領域と接合される金属領域があってもよい。
【0026】
また、「基板」は、複数のチップが2次元的に配置された集合体、例えばウエハからダイシングされ粘着シート上に配置されたものも含む。さらには、「基板」は、1つのチップまたは複数の層のチップが接合されることで形成されたチップと基板とを含む構造体も含む。ここで「チップ」とは、半導体部品を含む成型加工半導体の板状部品、パッケージされた半導体集積回路(IC)等の電子部品等を示す広い概念の用語として与えられる。「チップ」には、一般に「ダイ」と呼ばれる部品や、基板よりも寸法が小さくて、複数個を当該基板に接合できるほどの大きさを有する部品または小型の基板も含まれる。また、電子部品以外に、光部品、光電子部品、機械部品も「チップ」に含まれる。
【0027】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板接合装置100の構成を示す正面図である。図1では、基板接合装置100の内部の概略構造を示す。なお、以下の各図においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示す。なお、Z方向を便宜上、上下方向とも呼ぶが、Z方向は必ずしも上下方向に一致する必要はない。
【0028】
基板接合装置100は、真空チャンバ200と、基板支持部400と、位置測定部500と、表面処理部600と、コントローラ700とを備える。基板支持部400は、被接合物である基板301,302を互いに対向させて支持し、両基板301,302の相対的な位置決めを行う。位置測定部500は、基板301,302の相対的位置関係を測定する。表面処理部600は、Z方向において互いに対向して支持された基板301,302の表面に対して表面処理を行う。以下、基板301,302をそれぞれ、「第1基板301」および「第2基板302」とも呼ぶ。図1では、第1基板301が第2基板302の下方((-Z)側)に配置されるが、第1基板301は第2基板302の上方((+Z)側)に配置されてもよい。コントローラ700は、上述の各構成と接続され、これらの構成からの情報を受信し、演算し、各構成に指令を出すように、プログラムを搭載するコンピュータである。
【0029】
真空チャンバ200は、基板支持部400の後述のステージ401,402と表面処理部600とを収容する。また、真空チャンバ200は、内部を真空引きするための真空引き部として、真空ポンプ201を備える。当該真空ポンプ201は、排気管202と排気弁203とを介して真空チャンバ200内の気体を外部に排出するように構成されている。
【0030】
真空ポンプ201の吸引動作に応じて真空チャンバ200内の圧力が低減(減圧)されることにより、真空チャンバ200内の雰囲気は真空または低圧状態にされる。また、排気弁203は、その開閉動作と排気流量の調整動作とによって、真空チャンバ200内の真空度を制御および調整することができる。
【0031】
真空ポンプ201は、真空チャンバ200内の気圧を1Pa(パスカル)以下にする能力を有する。真空ポンプ201は、以下で説明する表面処理部600が作動する前のバックグラウンド圧力を、1×10-2Pa(パスカル)以下にする能力を有することが好ましい。真空ポンプ201は、表面処理部600の後述するライン式粒子ビーム源601が1eVから2keVの運動エネルギーを有する粒子(エネルギー粒子)を放射する場合には、1×10-5Pa(パスカル)以下にする能力を有することが好ましい。
【0032】
これにより、ライン式粒子ビーム源601による基板301,302の表面活性化処理の際に、雰囲気中に存在する不純物の量を低減させ、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着等を防止することができる。さらに、ライン式粒子ビーム源601は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、比較的高い真空度では、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層の除去および新生表面のアモルファス化を行い、基板301,302の表面を活性化することができると考えられる。
【0033】
真空ポンプ201の作動により比較的高い真空に引くことで、粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質が効率良く雰囲気(真空チャンバ200)外へと排気される。すなわち、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率良く排気される。
・・・(中略)・・・
【0052】
表面処理部600は、表面活性化処理部610と、親水化処理部620とを備える。表面活性化処理部610として、例えば、イオンや中性原子等の粒子ビーム源、あるいは、プラズマ源を採用することができる。これにより、基板301,302の接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせ、表面層を除去することができる。
・・・(中略)・・・
【0058】
図2は、表面活性化処理部610の斜視図である。図1および図2に示す例では、表面活性化処理部610は、ライン式粒子ビーム源601と、遮蔽部材602と、ビーム源移動機構603とを備える。ビーム源移動機構603は、ライン式粒子ビーム源601と遮蔽部材602とを、基板301,302の接合面(すなわち、表面活性化処理の対象となる対象面)に略平行に移動する。ビーム源移動機構603は、ライン式粒子ビーム源601および遮蔽部材602を、基板301,302の間の空間へと挿入し、また、当該空間から退避させる。また、ビーム源移動機構603は、ライン式粒子ビーム源601および遮蔽部材602を、ライン式粒子ビーム源601等のライン方向(X方向)周りに揺動する。
【0059】
図2に示すように、ライン式粒子ビーム源601は、ライン方向または長手方向がX方向に平行になるように配置されている。ライン式粒子ビーム源601は、中性原子である粒子に所定の運動エネルギーを与え、当該粒子を基板301,302の接合面に向けて放射する。遮蔽部材602は、長方形の板状に形成され、ライン式粒子ビーム源601のライン方向と平行に、X方向と平行になるように配置されている。遮蔽部材602の長手方向の長さは、ライン式粒子ビーム源601の長手方向の長さとほぼ同じである。
・・・(中略)・・・
【0090】
ライン式粒子ビーム源601としては、例えば、高速原子ビーム源(FAB:Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、典型的には、希ガスのプラズマを発生させ、このプラズマに電界をかけて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。例えば、希ガスとしてアルゴン(Ar)が利用される場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1W(ワット)から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。例えば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物等(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
【0091】
ライン式粒子ビーム源601として、例えば、イオンである粒子を基板301,302の接合面に向けて放射するイオンビーム源(イオンガン)が利用されてもよい。当該イオンビーム源は、例えば110V、3Aで稼動し、アルゴン(Ar)を加速して基板301,302の接合面に600秒ほど照射するように使用されてもよい。また、他の条件として、加速電圧1.5kV~2.5kV,電流350mA~400mAを採用してもよく、さらに他の条件として、加速電圧1.0kV~2.0kV,電流300mA~500mAを採用してもよい。イオンビーム源として、冷陰極型、熱陰極型、PIG(Penning Ionization Gauge)型、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型の粒子ビーム源、あるいは、クラスターイオン源などが採用されうる。
【0092】
ライン式粒子ビーム源601から基板の接合面に粒子ビームを照射することにより、表面活性化処理を行うことができる。表面活性化処理により、基板の接合面同士を常温または非加熱で固相接合させることができる。
【0093】
ライン式粒子ビーム源601によるその他のビーム照射条件として、真空チャンバ200内のバックグラウンド圧力を10-6Pa(パスカル)の状態から、ガスとしてArを100sccmの流量で流し、真空チャンバ200内の圧力を10-3Pa(パスカル)以下として、ライン式粒子ビーム源601を2kV、20mAで作動し、ライン式粒子ビーム源601の基板301,302に対するスキャン速度を10mm/sとすることもできる。上述の各ビーム照射条件は、例示を目的とするものであり、これに限定されない。ビーム照射条件は、各装置構成、ビーム照射条件、基板等の処理対象の物性等に応じて適宜変更することができる。
【0094】
表面活性化処理部610では、プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。この場合、基板301,302の接合面に対して交番電圧を印加することにより、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させる。そして、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速することにより、当該粒子に所定の運動エネルギーを与える。プラズマは数Pa(パスカル)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができる。このため、真空システムを簡素化することができるとともに、真空引き等の工程を短縮化することができる。
【0095】
上述のプラズマ発生装置は、例えば、100Wで稼動してアルゴン(Ar)のプラズマを発生させ、当該プラズマを基板301,302の接合面に600秒ほど照射させるように使用されてもよい。
【0096】
表面活性化処理部610では、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子やイオン以外に、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。粒子ビームには、アルゴン(Ar)等の不活性ガス以外に、例えば、窒素、酸素または水が粒子ビームとして用いられてもよい。
【0097】
図1に示す基板接合装置100では、表面活性化処理部610による基板301,302の表面活性化処理が終了すると、親水化処理部620による親水化処理が行われる。これにより、清浄化または活性化された基板301,302の接合面に水酸基(OH基)が結合されると考えられる。さらには、水酸基(OH基)が結合された接合面上に水分子が付着する。
【0098】
基板301,302の親水化処理は、表面活性化された接合面に水を供給することにより行われる。当該水の供給は、上記表面活性化された接合面の周りの雰囲気に、水(H2O)を導入することで行うことができる。水は、気体状で(ガス状で、または、水蒸気として)導入されても、液体状(霧状)で導入されてもよい。さらに、接合面に対する親水化処理の他の態様として、ラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよい。接合面に対する親水化処理の方法はこれらに限定されない。
・・・(中略)・・・
【0110】
図1に示す例では、基板301,302に対する表面活性化処理と親水化処理とは、1つの真空チャンバ200内にて連続して行われる。したがって、表面活性化処理された基板301,302の接合面を大気に曝すことなく、当該接合面の親水化処理を行うことができる。これにより、基板301,302の接合面の望ましくない酸化や、接合面への不純物等の付着を防止することができる。また、親水化処理をより容易に制御することができ、表面活性化処理の後に親水化処理を続けて効率良く実行することができる。」
「【図1】
[図:0001416109000002.jpg]
」
(イ) 引用発明
a 段落0025、0028の記載を踏まえると、被接合物である第1基板301、第2基板302は、接合面に金属領域が形成されているといえる。
b 段落0059の記載から、ライン式粒子ビーム源601は、中性原子である粒子を第1基板301、及び第2基板302の接合面に向けて放射するものである。
そして、図1からは、基板支持部400が、第2基板302の接合面をライン式粒子ビーム源601側に露出させた姿勢で、第2基板302を支持していることが見て取れる。
また、上記aによれば、第2基板302の接合面は金属領域を含んでいるといえる。
そうすると、基板支持部400は、第2基板302の接合面を含む金属領域をライン式粒子ビーム源601側に露出させた姿勢で、第2基板302を支持するものといえる。
c 上記a、bを踏まえると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内は引用元の段落番号等を示す。なお、「基板301,302」との記載は、段落0028の記載に基づき「第1基板301、第2基板302」と認定した。)
「真空チャンバと、前記真空チャンバ内において、第1基板の第1接合面および第2基板の第2接合面を活性化させる表面活性化処理部と、前記表面活性化処理部による活性化後に、親水化処理がそれぞれ行われた前記第1接合面と前記第2接合面とを接触させ、前記第1基板および前記第2基板を互いに対して押圧することにより、前記第1基板と前記第2基板とを仮接合し、仮接合後の前記第1基板と前記第2基板とを離間させ、真空中において前記第1接合面と前記第2接合面とを接触させて前記第1基板と前記第2基板とを接合する基板接合機構とを備える基板接合装置(段落0008)であって、
真空チャンバ200と、基板支持部400と、表面処理部600とを備え、
基板支持部400は、被接合物である第1基板301、第2基板302を互いに対向させて支持し(段落0028)、
第1基板301、第2基板302は、接合面に金属領域が形成され(上記a)、
表面処理部600は、表面活性化処理部610と、親水化処理部620とを備え(段落0052)、
表面活性化処理部610は、ライン式粒子ビーム源601を備え(段落0058)、
ライン式粒子ビーム源601から基板の接合面に粒子ビームを照射することにより、表面活性化処理を行うことができ(段落0092)、
表面活性化処理部610では、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子やイオン以外に、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよく、粒子ビームには、アルゴン(Ar)等の不活性ガス以外に、例えば、窒素、酸素または水が粒子ビームとして用いられてもよく(段落0096)、
表面活性化処理部610による第1基板301、第2基板302の表面活性化処理が終了すると、親水化処理部620による親水化処理が行われ、これにより、清浄化または活性化された第1基板301、第2基板302の接合面に水酸基(OH基)が結合され(段落0097)、第1基板301、第2基板302の親水化処理は、ラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよく(段落0098)、
真空ポンプ201の作動により比較的高い真空に引くことで、粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質が効率良く雰囲気(真空チャンバ200)外へと排気され、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率良く排気され(段落0033)、
第1基板301、第2基板302に対する表面活性化処理と親水化処理とは、1つの真空チャンバ200内にて連続して行われ(段落0110)、
基板支持部400は、第2基板302の接合面を含む金属領域をライン式粒子ビーム源601側に露出させた姿勢で、第2基板302を支持する(上記b)、
基板接合装置。」
ウ 対比
本件補正発明と、引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明の「被接合物である第1基板301、第2基板302」は、本件補正発明の「第1被接合物」、「第2被接合物」とそれぞれ対応する。
そうすると、「被接合物である第1基板301、第2基板302」についての「前記第1接合面と前記第2接合面とを接触させて前記第1基板と前記第2基板とを接合する基板接合機構とを備える基板接合装置」である引用発明は、「第1被接合物に、接合面を有する第2被接合物を接合する接合システム」といえる点で、本件補正発明と共通する。
(イ) 活性化処理装置について
a 粒子ビーム源
引用発明の「ライン式粒子ビーム源601」は、「基板の接合面に粒子ビームを照射することにより、表面活性化処理を行」い、「基板の接合面」は第2基板302の第2接合面を含むから、「前記対象物に対して粒子ビームを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させる粒子ビーム源」といえる点で、本件補正発明の「粒子ビーム源」と共通する。
b 対象物支持部
引用発明の「基板支持部400」は、「第2基板302の接合面を含む金属領域をライン式粒子ビーム源601側に露出させた姿勢で、第2基板302を支持する」から、「前記対象物における第2被接合物の前記接合面を前記粒子ビーム源側に露出させた姿勢で前記対象物を支持する」「少なくとも前記第2被接合物を含む対象物を支持する対象物支持部」といえる点で、本件補正発明の「対象物支持部」と共通する。
c 親水化処理
(a) 引用発明のライン式粒子ビーム源601による「粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質」は、「前記粒子ビーム源から照射される粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面においてエッチングされることにより生じる粒子」といえる。
そして、引用発明において、「真空ポンプ201の作動により比較的高い真空に引くことで、粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質が効率良く雰囲気(真空チャンバ200)外へと排気され、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率良く排気され」るから、引用発明の「表面活性化処理」は、「前記粒子ビーム源から照射される粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面においてエッチングされることにより生じる粒子の付着を低減するような活性化処理」といえる。
(b) 引用発明においては、「表面活性化処理部610による第1基板301、第2基板302の表面活性化処理が終了すると、親水化処理部620による親水化処理が行われ」、「第1基板301、第2基板302に対する表面活性化処理と親水化処理とは、1つの真空チャンバ200内にて連続して行われ」る。
(c) そうすると、引用発明は、「同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面においてエッチングされることにより生じる粒子の付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記第2被接合物の接合面が親水化される」点で本件補正発明と共通する。
d 小括
引用発明の「表面処理部600」は、ライン式粒子ビーム源601を備える「表面活性化処理部610」及び「親水化処理部620」を備えるものである。
そして、上記a~cによると、引用発明の「基板支持部400」及び「表面処理部600」は、「少なくとも前記第2被接合物を含む対象物を支持する対象物支持部と、前記対象物に対して粒子ビームを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させる粒子ビーム源を有し、同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面においてエッチングされることにより生じる粒子の付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記第2被接合物の接合面が親水化される」点で、本件補正発明の「活性化処理装置」と共通する。
(ウ) 接合装置
引用発明の「前記表面活性化処理部による活性化後に、親水化処理がそれぞれ行われた前記第1接合面と前記第2接合面とを接触させ、前記第1基板および前記第2基板を互いに対して押圧することにより、前記第1基板と前記第2基板とを仮接合し、仮接合後の前記第1基板と前記第2基板とを離間させ、真空中において前記第1接合面と前記第2接合面とを接触させて前記第1基板と前記第2基板とを接合する基板接合機構」は、「前記活性化処理装置により前記第2被接合物の接合面が活性化された前記第2被接合物の接合面を前記第1被接合物の接合面に面接触させることにより前記第2被接合物を前記第1被接合物に親水化接合する接合装置」である点で本件補正発明と共通する。
(エ) 一致点・相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明は、次の点で一致し、相違する。
a 一致点
「第1被接合物に、接合面を有する第2被接合物を接合する接合システムであって、
少なくとも前記第2被接合物を含む対象物を支持する対象物支持部と、前記対象物に対して粒子ビームを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させる粒子ビーム源を有し、同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面においてエッチングされることにより生じる粒子の付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記第2被接合物の接合面が親水化される活性化処理装置と、
前記活性化処理装置により前記第2被接合物の接合面が活性化された前記第2被接合物の接合面を前記第1被接合物の接合面に面接触させることにより前記第2被接合物を前記第1被接合物に親水化接合する接合装置と、を備え、
前記対象物支持部は、前記対象物における第2被接合物の前記接合面を前記粒子ビーム源側に露出させた姿勢で前記対象物を支持する、
接合システム。」
b 相違点1
本件補正発明の、第2被接合物が有する接合面が、「同一面内に材料が異なる複数種類の領域が形成された」ものであるのに対し、引用発明の、第2基板302の接合面が、「金属領域が形成され」ているものの、「同一面内に材料が異なる複数種類の領域が形成され」ていると特定されていない点。
このことに起因して、
(a) 本件補正発明の「対象物支持部」が、「第2被接合物の前記接合面を含む複数種類の材料から形成された部分」を粒子ビーム源側に露出させた姿勢で対象物を支持するものであるのに対し、引用発明の「基板支持部400」が、「第2基板302の接合面を含む金属領域」、すなわち金属から形成された部分をライン式粒子ビーム源601側に露出させた姿勢で、第2基板302を支持するものであり、
(b) 本件補正発明の、粒子ビームによりエッチングされることにより生じる粒子が、第2被接合物の接合面の、「前記複数種類の領域それぞれにおいて」エッチングされることにより生じる粒子であって、本件補正発明の「活性化処理」が、粒子ビームによりエッチングされることにより生じる粒子が「他の領域へ」の付着を低減するような処理であるのに対し、
引用発明の、「粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質」が、第2基板302の接合面に形成された金属領域において生じるものであって、引用発明の「表面活性化処理」が、「真空ポンプ201の作動により比較的高い真空に引くことで、粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質が効率良く雰囲気(真空チャンバ200)外へと排気され、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率良く排気され」るものであり、
(c) 本件補正発明の親水化接合が、「前記活性化処理装置により前記第2被接合物の接合面が活性化された前記第2被接合物の接合面における前記複数種類の領域を前記第1被接合物の接合面に面接触させる」ことによりなされているのに対し、引用発明の親水化接合が、表面活性化処理部による活性化後に、親水化処理が行われた第2基板の第2接合面における金属領域を、第1基板の第1接合面に接触させることによりなされる点。
c 相違点2
本件補正発明の「粒子ビーム源」が、「窒素の」粒子ビームを照射し、活性化処理が「窒素の」粒子ビームにより実行されるのに対し、引用発明において表面活性化に用いられる粒子ビームとして、「アルゴン(Ar)等の不活性ガス以外に、例えば、窒素、酸素または水」が用いられる点。
d 相違点3
本件補正発明が「前記第2被接合物の接合面に対してラジカルを照射することにより前記第2被接合物の接合面を活性化させるラジカル源」を有し、前記第2被接合物の接合面の親水化が、「前記ラジカル源から照射されるラジカルにより前記第2被接合物の接合面の活性化処理を実行することにより」なされるのに対し、引用発明の第2基板の接合面の親水化処理が、「ラジカルやイオン化されたOHなどを付着させ」ることによりなされる点。
エ 相違点の判断
(ア) 相違点1
引用文献2の段落0002~0003の記載によると、接合の対象物であるウエハの表面には、電気的に接続される金属領域、すなわち電極が設けられ、隣り合う電極と電極間は酸化膜、窒化膜、樹脂層等の絶縁層で埋められているのが一般的である。
そうすると、引用発明の、金属領域が形成された第2基板302の接合面について、金属とは異なる材料である酸化膜、窒化膜、樹脂層等の領域を形成し、「同一面内に材料が異なる複数種類の領域が形成された」ものとすることは、当業者が容易に想到し得る事項といえ、その際に、「基板支持部400」は、第2基板302の接合面を含む複数種類の材料から形成された部分をライン式粒子ビーム源601側に露出させた姿勢で、第2基板302を支持するものとなり、「粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質」は、前記複数の領域それぞれにおいてエッチングされることにより生じる粒子となる。
また、引用発明の「表面活性化処理」は、「真空ポンプ201の作動により比較的高い真空に引くことで、粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質が効率良く雰囲気(真空チャンバ200)外へと排気され、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率良く排気され」るものであるから、基板表面の表面層から除去された物質が「他の領域へ」の付着を低減するような処理となり、加えて、親水化接合は、第2基板302の接合面が、活性化された第2基板302の接合面における複数種類の領域を、第1基板302の接合面に面接触することによりなされることとなる。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。
(イ) 相違点2
引用発明において、表面活性化に用いられる粒子ビームとして、例示された「窒素」を用い、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。
(ウ) 相違点3
引用発明の親水化処理を、例示された、ラジカルOHを第2基板302の接合面に付着させることによって行うことは当業者が容易に想到し得る事項であり、その際に、引用発明の基板接合装置において、第2基板302の接合面に対してラジカルOHを照射するラジカル源を有するようにすることは、当業者が実施に際して当然行い得る事項である。
そうすると、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。
オ 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
カ 請求人の主張
請求人は、「但し、引用文献2には、粒子ビーム源601を用いて、基板301、302の接合面に粒子ビームを照射することにより表面活性化処理を行った後、同一の真空チャンバ200内において、基板301、302の接合面にラジカルを照射することについては何ら開示も示唆もされていない。なお、引用文献2の段落[0100]および図1には、ガス供給源621が、キャリアガスと水との混合ガス(水分子を含むガス)を、ガス導入部623を介して真空チャンバ200内へと供給することは記載されているが、真空チャンバ200内にラジカル源を設けることについては何ら開示も示唆もされていない。」(審判請求書17ページ6~14行)と主張する。
しかしながら、上記(2)イ(ア)のとおり、引用文献2には、段落0058に「表面活性化処理部610は、ライン式粒子ビーム源601と、遮蔽部材602と、ビーム源移動機構603とを備える。」、段落0092に「ライン式粒子ビーム源601から基板の接合面に粒子ビームを照射することにより、表面活性化処理を行うことができる。」、段落0097に「表面活性化処理部610による基板301,302の表面活性化処理が終了すると、親水化処理部620による親水化処理が行われる。」、段落0098に「接合面に対する親水化処理の他の態様として、ラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよい。」、及び、段落0110に「基板301,302に対する表面活性化処理と親水化処理とは、1つの真空チャンバ200内にて連続して行われる。」との記載がある。
そして、上記(2)ウ(イ)cのとおり、引用発明は、「同一のチャンバ内において、前記粒子ビーム源から照射される粒子ビームにより前記第2被接合物の接合面においてエッチングされることにより生じる粒子の付着を低減するような活性化処理を実行した後、前記第2被接合物の接合面が親水化される」点で本件補正発明と共通し、また、上記(2)エ(ウ)のとおり、引用発明において、親水化処理を、例示された、ラジカルOHを第2基板302の接合面に付着させることによって行うこと、及び、その際に、第2基板302の接合面に対してラジカルOHを照射するラジカル源を設けることは、当業者が容易に想到し得る事項といえるから、請求人の主張は採用できない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしたものであるとしても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年9月11日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~44に係る発明は、令和5年2月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~44に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項8に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項8に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1~2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は、上記第2[理由]2(2)イ(ア)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2(2)で検討した本件補正発明から、「活性化処理装置」についての、「同一のチャンバ内において」、「前記複数種類の領域それぞれにおいてエッチングされることにより生じる粒子が他の領域への付着を低減するような」、「前記第2被接合物の接合面が親水化される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-015265