2023-701217
アルミニウム合金材の製造方法及びアルミニウム合金材
- 審判番号
- 2023-701217
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-018609外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7275336
- 請求日
- 2023年11月17日
- 審決日
- 2024年03月29日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社UACJ
- 【権利者代理人】弁理士法人あしたば国際特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 神戸製鋼所
- 【異議申立人代理人】池田 義典
- 分類
- P1651.113-Y (C22C) / P1651.121-Y (C22C) / P1651.537-Y (C22C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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特許7275336号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、令和 4年 2月 9日を出願日とする出願であって、令和 5年 5月 9日にその特許権の設定登録がなされ、同年 5月17日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、同年11月17日に、その請求項1~11(全請求項)に係る特許に対して、特許異議申立人である株式会社神戸製鋼所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、これらを「本件特許発明1」~「本件特許発明11」という。また、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】0.50~1.20質量%のSi、0.05~1.00質量%のFe、0.12~1.00質量%のCu、0.60~1.80質量%のMn、及び0.11~0.60質量%のZnを含有し、Mg含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金部Aを有するアルミニウム合金材の製造方法であり、0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて、0.50~1.20質量%のSi、0.05~1.00質量%のFe、0.12~1.00質量%のCu、0.60~1.80質量%のMn、及び0.11~0.60質量%のZnを含有し、Mg含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるアルミニウム合金鋳塊Aを鋳造する鋳造工程を有し、5%NaClに酢酸を添加してpH3に調整した液に浸漬し、参照電極をAg/AgClとして自然電極電位を測定したときの該アルミニウム合金部Aの 自然電極電位が-670(mV vs Ag/AgCl)以上であること、続きを表示(全29行)を特徴とするアルミニウム合金材の製造方法。【請求項2】前記鋳造工程を行い得られる前記アルミニウム合金鋳塊Aを心材用のアルミニウム合金鋳塊として用い、1又は2の皮材用のアルミニウム合金鋳塊と組み合わせて、アルミニウム合金クラッド材を得ることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項3】前記皮材用のアルミニウム合金鋳塊が、2.50~13.00質量%のSi及び0.05~1.00質量%のFeを含有し、Zn含有量が5.50質量%以下、Mn含有量が1.00質量%以下、Cu含有量が1.00質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%、V含有量が0.30質量%以下、Sr含有量が0.10質量%以下、Na含有量が0.10質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるろう材用アルミニウム合金鋳塊B、又は0.50~6.00質量%のZn、0.05~1.50質量%のSi、及び0.05~2.00質量%のFeを含有し、Mg含有量が3.00質量%以下、Mn含有量が1.80質量%以下、Cu含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる犠牲陽極材用アルミニウム合金鋳塊Cであることを特徴とする請求項2記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項4】前記アルミニウム合金クラッド材が、ろう材/中間層材/心材/ろう材又は犠牲陽極材の順に積層されている4層材のアルミニウム合金クラッド材であり、心材用のアルミニウム合金鋳塊として、前記心材用アルミニウム合金鋳塊Aを用い、ろう材用のアルミニウム合金鋳塊として、前記ろう材用アルミニウム合金鋳塊Bを用い、犠牲陽極材用のアルミニウム合金鋳塊として、前記犠牲陽極材用アルミニウム合金鋳塊Cを用い、中間層材用のアルミニウム合金鋳塊と組み合わせて、前記アルミニウム合金クラッド材を得ること、を特徴とする請求項3記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項5】前記アルミニウム合金クラッド材が、ろう材/中間層材/心材/中間層材/ろう材の順に積層されている5層材のアルミニウム合金クラッド材であり、心材用のアルミニウム合金鋳塊として、前記心材用アルミニウム合金鋳塊Aを用い、ろう材用のアルミニウム合金鋳塊として、前記ろう材用アルミニウム合金鋳塊Bを用い、中間層材用のアルミニウム合金鋳塊と組み合わせて、前記アルミニウム合金クラッド材を得ること、を特徴とする請求項3記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項6】前記中間層材用のアルミニウム合金鋳塊が、0.05~1.50質量%のSi、及び0.05~2.00質量%のFeを含有し、Zn含有量が6.00質量%以下、Mn含有量が1.80質量%以下、Cu含有量が1.00質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる中間層材用アルミニウム合金鋳塊Dであることを特徴とする請求項4又は5記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項7】0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて、前記皮材用のアルミニウム合金鋳塊を鋳造する工程を有することを特徴とする請求項2~6いずれか1項記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項8】0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて、前記ろう材用アルミニウム合金鋳塊Bを鋳造する工程を有することを特徴とする請求項3~6いずれか1項記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項9】0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて、前記犠牲陽極材用アルミニウム合金鋳塊Cを鋳造する工程を有することを特徴とする請求項3~6いずれか1項記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項10】0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて、前記中間層材用のアルミニウム合金鋳塊を鋳造する工程を有することを特徴とする請求項4~6いずれか1項記載のアルミニウム合金材の製造方法。【請求項11】0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて、前記中間層材用アルミニウム合金鋳塊Dを鋳造する工程を有することを特徴とする請求項6記載のアルミニウム合金材の製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、次の甲第1号証~甲第9号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲9」という。)を提出し、以下の特許異議申立理由を主張している。
(証拠方法)
1 申立理由1(新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項4~11に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項3~5に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び甲3~5、8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項6~11に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明及び甲3~5、8~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
(1)本件特許の請求項1に係る発明はアルミニウム合金部Aの自然電極電位を規定しているが、心材の電位が-670mV以上であれば必要な耐食性が得られるかは不明であり、請求項1に係る発明の課題を解決できるか不明である。
よって、本件特許の請求項1と、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許の請求項2~11に係る特許は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えており、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の実施例には、本件特許の請求項1に記載された、Mg、Cr、Ti、Zr、Vのいずれかを含有する構成は記載されていない。また、本件明細書の実施例において、ろう付け性が優れることについて何ら実証されていない。
よって、本件特許の請求項1と、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許の請求項2~11に係る特許は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えており、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
上記申立理由1~3はいずれも採用できない。その理由は以下のとおりである。
1 申立理由1(新規性・進歩性)
(1)甲1の記載
甲1には次の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を表し、甲号証に記載された発明の認定に関連する箇所には、当審で下線を付した。以下、同じ。
ア 「【請求項1】少なくとも心材アルミニウム合金板とアルミニウム合金犠牲防食材とをクラッドし、ろう付けによって熱交換器とされるアルミニウム合金積層板であって、前記心材アルミニウム合金板が、質量%で、Si:0.2~1.5%、Cu:0.05~1.2%、Mn:0.3~1.8%、Ti:0.03~0.3%を各々含有するとともに、Fe:1.0%以下に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成を有し、この心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率が10%以上であることを特徴とする、疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。【請求項2】前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Cr:0.03~0.3%、Zn:0.2~1.0%、Zr:0.03~0.3%のうちの1種または2種以上を含有する請求項1に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。【請求項3】前記積層板における心材アルミニウム合金板が、更に、Mgを0.5質量%以下に規制した請求項1または2に記載の疲労特性に優れたアルミニウム合金積層板。」
イ「【0030】
(積層板)
本発明の積層板は、熱交換器に組み立てられる前に、先ず、図1に示すアルミニウム合金積層板1として、予め製造される。この積層板1は、ろう付けされる場合には、心材アルミニウム合金板2の一方の面にアルミニウム合金犠牲防食材(板)3と、他面にアルミニウム合金ろう付け材(板)4とをクラッドしたブレージングシートとして構成される。
【0031】
上記心材アルミニウム合金板2は、後述する特徴的な組織や組成の3000系アルミニウム合金からなる。また、上記ブレージングシートとしては、この心材2の内側である冷媒に常時触れている側(図1の上側)には、後述する犠牲防食材(犠材、内張材、皮材)3として、例えば、Al-Zn組成のJIS7000系などのアルミニウム合金がクラッドされる。更に、心材2の外側(図1の下側)には、例えば、Al-Si組成のJIS4000系などのアルミニウム合金ろう材4がクラッドされる。
・・・
【0034】
これらブレージングシートは、均質化熱処理を施した心材アルミニウム合金板(鋳塊)の片面に、犠牲防食材(板)やろう材(板)を重ね合わせて熱間圧延し、次いで冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を順に施して、H14調質材などのシートを製造する。ここで、均質化熱処理を熱間圧延前に実施しても良い。」
ウ「【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。表1に示すA~Jの組成のAl合金心材2を有する積層板(ブレージングシート)1を作成して、心材2部分の組織を調査した。更に、この積層板1を、ろう付けを模擬して、600℃の温度に3分間ろう付け相当の加熱、保持を実施した後、平均冷却速度100℃/分で冷却し、このろう付け相当加熱後の積層板の心材部分の組織を調査した。また、この加熱後の積層板1の機械的な特性と、疲労特性を測定、評価した。これらの結果を表2、3に示す。
【0070】
(積層板の製造)
積層板の製造は以下の通りとした。表1に示すA~Jの組成の3000系Al合金組成を溶解、鋳造してAl合金心材鋳塊を製造とした。この心材鋳塊の一方の面に、Al-1質量%Zn組成からなるJIS7072アルミニウム合金板を犠牲防食材3として、他面にAl-10質量%Si組成からなるJIS4045アルミニウム合金板をろう付け材4として、各々クラッドした。
【0071】
このクラッド材を、均熱処理した後、熱間圧延、荒鈍処理、中間焼鈍を施しながらの冷間圧延、最終焼鈍の製造工程で、H14調質材の積層板とした。各例とも共通して、積層板(ブレージングシート)1は、心材アルミニウム合金板2の板厚が0.16mmであり、この心材の各々の面に、それぞれ積層されたろう材4、犠牲防食材3ともに、その厚さは20~30μmの範囲とした。
【0072】
そして、この素材クラッド材から、この積層板を製造するに際して、表2に示すように、各例とも、熱延板(熱間圧延上がりの板)の厚みt(mm)と、冷間圧延工程における、中間焼鈍前の前半の冷間圧延における圧下率を変え、Al-Mn系の心材アルミニウム合金板の集合組織における、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を制御した。また、この前半の冷間圧延における圧下率と同時に、中間焼鈍温度、中間焼鈍後の後半の冷間圧延における圧下率を、表2に示すように、変えて、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を制御した。
【0073】
即ち、発明例では、圧延方向に対して45°方向のCube方位の面積率を10%以上に発達させるために、前半の冷間圧延における圧下率を90%以上高くした。このため、各例とも、前半の冷間圧延における圧下率と後半の冷間圧延における圧下率、中間焼鈍温度などが各々異なる。
【0074】
なお、積層板を製造するための、上記した冷間圧延条件以外の、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延、最終焼鈍の製造工程や各工程条件は、常法により作成し、各例とも同じとした。均熱処理は40℃/hrの昇温速度で加熱した上で、均熱を450℃で4時間行い、その後熱間圧延を行った。中間焼鈍は280℃、3時間保持で行い、その後仕上げ圧延を行い、積層板の素材を得た。この積層板素材をに600℃、3分のろう付相当加熱を施し、ろう付後の疲労特性評価に供試した。」
エ「【0087】
【表1】
[図:0001409155000001.jpg]
【0088】
【表2】
[図:0001409155000002.jpg]
」
オ「【図1】
[図:0001409155000003.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
上記(1)で摘記した事項、特に請求項1~3、表1の発明例Jに基づく表2の発明例10、表1の発明例Mに基づく表2の発明例13によれば、甲1には次の発明(以下、それぞれ、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
「質量%で、Si:0.8%、Cu:0.5%、Mn:1.8%、Ti:0.1%を各々含有するとともに、Fe:0.1%に規制し、更に、質量%で、Zn:0.2%を含有し、Mgを0.3%に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成のAl合金を溶解、鋳造してAl合金心材鋳塊を製造し、この心材鋳塊の一方の面に、Al-1質量%Zn組成からなるJIS7072アルミニウム合金板を犠牲防食材として、他面にAl-10質量%Si組成からなるJIS4045アルミニウム合金板をろう付け材として、各々クラッドし、このクラッド材を、均熱処理した後、熱間圧延、荒鈍処理、中間焼鈍を施しながらの冷間圧延、最終焼鈍を施し、H14調質材の積層板とする、アルミニウム合金積層板の製造方法であって、製造された積層板(ブレージングシート)は、心材アルミニウム合金板の板厚が0.16mmであり、この心材の各々の面に、それぞれ積層されたろう材、犠牲防食材ともに、その厚さは20~30μmの範囲であって、均熱処理は、40℃/hrの昇温速度で加熱した上で、均熱を450℃で4時間行い、熱間圧延は、常法により行い、熱延板の厚みを6mmとし、中間焼鈍を施しながらの冷間圧延は、中間焼鈍前の前半の冷間圧延における圧下率(前半冷延圧下率)が96%、中間焼鈍は280℃、3時間保持で行い、中間焼鈍後の後半の冷間圧延における圧下率(仕上冷延圧下率)が12%であり、最終焼鈍は、常法により行う、アルミニウム合金積層板の製造方法。」(甲1発明1)
「質量%で、Si:0.8%、Cu:0.5%、Mn:1.4%、Ti:0.1%を各々含有するとともに、Fe:0.1%に規制し、更に、質量%で、Cr:0.3%、Zn:0.2%、Zr:0.3%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成のAl合金を溶解、鋳造してAl合金心材鋳塊を製造し、この心材鋳塊の一方の面に、Al-1質量%Zn組成からなるJIS7072アルミニウム合金板を犠牲防食材として、他面にAl-10質量%Si組成からなるJIS4045アルミニウム合金板をろう付け材として、各々クラッドし、このクラッド材を、均熱処理した後、熱間圧延、荒鈍処理、中間焼鈍を施しながらの冷間圧延、最終焼鈍を施し、H14調質材の積層板とする、アルミニウム合金積層板の製造方法であって、製造された積層板(ブレージングシート)は、心材アルミニウム合金板の板厚が0.16mmであり、この心材の各々の面に、それぞれ積層されたろう材、犠牲防食材ともに、その厚さは20~30μmの範囲であって、均熱処理は、40℃/hrの昇温速度で加熱した上で、均熱を450℃で4時間行い、熱間圧延は、常法により行い、熱延板の厚みを6mmとし、中間焼鈍を施しながらの冷間圧延は、中間焼鈍前の前半の冷間圧延における圧下率(前半冷延圧下率)が96%、中間焼鈍は280℃、3時間保持で行い、中間焼鈍後の後半の冷間圧延における圧下率(仕上冷延圧下率)が12%であり、最終焼鈍は、常法により行う、アルミニウム合金積層板の製造方法。」(甲1発明2)
(3)本件特許発明1について
ア 甲1発明1との対比
まず、本件特許発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア)甲1発明1の「Al合金心材鋳塊」から得られた「心材アルミニウム合金板」は、本件特許発明1の「アルミニウム合金部A」に相当する。甲1発明1の「アルミニウム合金積層板」は、本件特許発明1の「アルミニウム合金材」に相当する。
(イ)甲1発明1の「Al合金心材鋳塊」から得られた「心材アルミニウム合金板」は、技術常識に照らして、「Al合金心材鋳塊」と同一の組成を有するものと解されるから、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」の組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金部A」の成分組成を対比すると、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」のSi、Fe、Cu、Mn、Zn、Mg、Tiの含有量の値は、本件特許発明1における「アルミニウム合金部A」のSi、Fe、Cu、Mn、Zn、Mg、Tiの含有量の数値範囲に包含される。
甲1の表1において、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」のCr、Zrの含有量が「-」であることは「検出限界以下」を示すから、Cr、Zrは存在しないか、不可避不純物として含むものと認められ、技術常識に照らして、いずれも0.30質量%を超えることはないと考えられる。そうすると、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」のCr、Zrの含有量は、本件特許発明1における「アルミニウム合金部A」のCr含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下であることに相当する。
また、Vは甲1の表1に記載されておらず、存在しないか、不可避不純物として含むものと認められるから、同様に、本件特許発明1における「アルミニウム合金部A」のV含有量が0.30質量%以下であることに相当する。
そして、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」の「残部がAlおよび不可避的不純物からなる」ことは、本件特許発明1における「アルミニウム合金部A」の「残部アルミニウム及び不可避的不純物からなる」ことに相当する。
そうすると、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」の組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金部A」の成分組成は、一致する。
(ウ)甲1発明1の「Al合金心材鋳塊」の組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金鋳塊A」の成分組成を対比すると、上記(イ)と同様であり、甲1発明1の「Al合金心材鋳塊」の組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金鋳塊A」の成分組成は、一致する。
(エ)甲1発明1の「Al合金を溶解、鋳造してAl合金心材鋳塊を製造」する工程は、本件特許発明1の「アルミニウム合金鋳塊Aを鋳造する鋳造工程」に相当する。
(オ)本件特許発明1と甲1発明1とは、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点1>
「0.50~1.20質量%のSi、0.05~1.00質量%のFe、0.12~1.00質量%のCu、0.60~1.80質量%のMn、及び0.11~0.60質量%のZnを含有し、Mg含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金部Aを有するアルミニウム合金材の製造方法であり、0.50~1.20質量%のSi、0.05~1.00質量%のFe、0.12~1.00質量%のCu、0.60~1.80質量%のMn、及び0.11~0.60質量%のZnを含有し、Mg含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるアルミニウム合金鋳塊Aを鋳造する鋳造工程を有する、アルミニウム合金材の製造方法。」
<相違点1-1>
本件特許発明1は、「0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて」、アルミニウム合金鋳塊Aを鋳造するのに対し、甲1発明1は、Al合金を溶解、鋳造してAl合金心材鋳塊を製造する際に、スクラップを用いるか否か不明である点。
<相違点1-2>
本件特許発明1は、「5%NaClに酢酸を添加してpH3に調整した液に浸漬し、参照電極をAg/AgClとして自然電極電位を測定したときの該アルミニウム合金部Aの自然電極電位が-670(mV vs Ag/AgCl)以上である」のに対し、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」は自然電極電位が不明である点。
イ 相違点についての検討
(ア)事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。
まず、相違点1-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1において、「心材アルミニウム合金板」の自然電極電位を測定することについての直接的な記載や、これを示唆するような記載は見当たらない。
また、いずれの証拠を参照しても、甲1発明1の「心材アルミニウム合金板」について、「5%NaClに酢酸を添加してpH3に調整した液に浸漬し、参照電極をAg/AgClとして自然電極電位を測定したときの」「自然電極電位」(以下、「本件自然電極電位」という。)が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であると断定できるものはなく、本願出願時の技術常識を考慮しても、そうしたことが自明であるともいえないから、上記相違点1-2は実質的な相違点である。
(イ)したがって、上記相違点1-2は実質的な相違点であるから、上記相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(ウ)次に、相違点1-2の容易想到性について検討する。
上記(1)に摘記した箇所を含め、甲1の記載事項を参照しても、自然電極電位を測定することについての直接的な記載や、これを示唆するような記載は見当たらない以上、さらに甲2~7の記載を考慮したとしても、甲1発明1における「心材アルミニウム合金板」について、本件自然電極電位を「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」とすることが動機付けられるとはいえない。
そうすると、甲1発明1において、上記相違点1-2に係る発明特定事項を備えようすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(エ)したがって、上記相違点1-1、及び本件特許発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 甲1発明2との対比
次に、本件特許発明1と甲1発明2とを対比すると、上記アと同様に、両者は、少なくとも、相違点1-2と同様の相違点で相違するところ、この相違点については、上記イで述べたのと同様の理由により、実質的な相違点であり、また、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 申立人の主張について
(ア)上記相違点1-2に関して、申立人は、特許異議申立書34~36ページにおいて、
a 「アルミニウム合金部A」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であることは、本件特許発明1に記載されている組成を有することで得られる構成である、
b 甲1の【0071】に記載の製法と本件明細書の【0092】に記載の製法は実質的に同じであるところ、本件明細書の【0092】には、各処理の具体的な条件が記載されていないことから、「アルミニウム合金部A」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であることは、製造方法によって左右される構成ではないとも考えられる、
c 甲6及び甲7に示されるように、甲1に記載の製法で製造した発明例J及び発明例Mの組成を有するアルミニウム合金板(犠牲防食材の化学組成、クラッド率、および板厚について、本件明細書の実施例に準じた構成を採用)について、本件明細書の【0093】に記載された手順で自然電極電位を測定したところ、「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」を満たしている、
と述べ、甲1発明1、2は、「心材アルミニウム合金板」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」を満たしている蓋然性が極めて高く、相違点1-2は実質的な相違点ではないと主張している。
(イ)しかし、申立人が主張するように、「アルミニウム合金部A」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であることが、製法によっては左右されず、本件特許発明1に記載されている組成を有してさえいれば得られるものであるかどうかは、不明である。また、本件明細書に記載の製法と甲1に記載の製法とは、大枠として一致するものの、申立人も自認するように、本件明細書【0092】には詳細な条件の記載はなく、一方、甲1にも、溶湯温度やどのような熱履歴で熱間圧延や最終焼鈍を行ったかといった詳細な条件の記載はないから、両者の製法が一致するということはできない。そして、詳細な条件によって、心材アルミニウム合金板の中央部の状態(本件明細書【0093】)も異なると推測されるから、組成や大枠の製法が一致するからといって、甲1発明1、2における「心材アルミニウム合金板」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」になると断定することまではできない。
(ウ)また、甲1発明1、2における「心材アルミニウム合金板」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であるというためには、甲1発明1、2のアルミニウム合金積層板を正確に再現し、その再現されたアルミニウム合金積層板における「心材アルミニウム合金板」の本件自然電極電位を測定し、実際に「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であるかどうかを確認する必要があると解される。
しかし、申立人は、上記(ア)cのとおり、「甲1に記載の製法で製造した」と述べるものの、上記(イ)で述べたとおり、そもそも、甲1には、アルミニウム合金積層板の製法について詳細な条件の記載がないから、甲1発明1、2のアルミニウム合金積層板を正確に再現しようにも、再現できないことは明らかである。しかも、上記(ア)cのとおり、「犠牲防食材の化学組成、クラッド率、および板厚について、本件明細書の実施例に準じた構成を採用」していることから、そもそも、甲1発明1、2のアルミニウム合金積層板を再現したものとはいえない。また、甲6、甲7にも測定に用いたサンプルの製法の記載がないため、甲6、甲7において、甲1発明1、2のアルミニウム合金積層板を正確に再現したサンプルを用いて測定したのかどうか不明といわざるを得ない。よって、甲1発明1、2における「心材アルミニウム合金板」と、甲6、甲7において測定に用いたサンプルとが同等のものであるとはいえない。
(エ)以上によれば、甲6、甲7の測定結果に基づいて、甲1発明1、2における「心材アルミニウム合金板」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であるということはできない。
(オ)したがって、申立人の上記(ア)の主張は採用できない。
(4)本件特許発明2~11について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1に記載された発明とはいえないし、本件特許発明2は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲2~9までの記載事項を考慮したとしても、甲1発明において、上記相違点1-2に係る発明特定事項を備えようすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件特許発明3は、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された事項に基いて、本件特許発明4~11は、甲1に記載された発明及び甲2~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)小括
したがって、申立理由1によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(新規性・進歩性)
(1)甲2の記載
甲2には次の記載がある。
ア 「[図:0001409155000004.jpg](第1頁)(当審訳:(発明の背景)現在使用されている高強度、高耐食性長寿命アルミニウム・ブレージング・シート製品は、典型的には低レベルの鉄(Fe)とシリコン(Si)の特徴とアルミニウム製熱交換器(素管)の冷媒または冷媒を輸送するチューブが生成される。ブレージングシートは、典型的には、コア合金と少なくとも1つのクラッディング層を含む。素管用途のコア合金中のFeレベルを意図的に低く維持されるポストろう付けされた状態で良好な耐食性を得ることができる。素管材料の製造は、アルミニウム・ブレージング・シートスクラップ材料の有意な再使用を許可しない、高品位な一次アルミニウムの使用を要求する。ブレージングシートを製造する際に、大量のろう付けシートスクラップが利用可能となる。このスクラップは、上記合金元素、特にシリコン、銅(Cu)、鉄の有意なレベルを含んでいる。これらの合金元素は、スクラップの再利用、特に長寿命コア合金の新たなブレージングシートの生成を制限する。)」
イ 「[図:0001409155000005.jpg](第4頁)(当審訳:ここで、(Al、Fe、Mn)及び(Al、Fe、Mn、Si)の金属間化合物を含むクロムを含むアルミニウム合金シートを製造するため、ブレージングシートスクラップの量が装入物を準備するために添加される全金属の少なくとも25重量%である。)」
ウ 「[図:0001409155000006.jpg](第11頁)(当審訳:本発明を、以下の非限定的な、図1a-1l及び図2によりさらに説明する。図1a-1lは、本発明に従って製造することができるアルミニウム合金製ブレージングシートの構成の数を示している。図1a-1l上の標識を必要としない図1a-1l上の互いに異なる層は、図2の対応する層と同じように見えるように概略的に示されている。図2は、以下のことを表す各層を、以下に表されるA,B,C及びDとして、ラベリングを行う。A:コア合金B:Al-Siクラッド層C:インターライナーD:水側ライナー)」
エ 「[図:0001409155000007.jpg][図:0001409155000008.jpg](第11~12頁)(当審訳:(実施例)本発明を、以下の非限定的な、実施例によってさらに説明する。これらの結果が、コア合金の化学組成及び異なるクラッドシステムの構成が記載されている、表1及び図1Aに示されている。表1及び表1Aの列2は、ブレージングシートは、本発明(“I”)、又は比較例(“C”)かどうかを示す。水側ライナーの組成と剥離ライナー合金(該当する場合)は、表3に示されている。表1の列3のように、コア合金を製造するために使用されたスクラップの量を、表2の列3に記載されている。表2から、比較例において、コア合金を製造するために使用するスクラップの量は10%未満である場合、ろう付け後の特性の点で劣ったものと性能を示していることを明確にすることができる。クロムの添加と組み合わせてスクラップを使用することにより、比較例に比べて優れた特性が得られることが明らかである。)」
オ 「[図:0001409155000009.jpg][図:0001409155000010.jpg]」
(第12~13頁)
カ 「[図:0001409155000011.jpg](第15頁)(当審訳:第2列:C:比較例、I:実施例(★)ろう付けクラッド(両面)(★★)インナーライナー(両面)(★★★)ろう付け率(両面)(★★★★)インナーライナー率(両面)(★★★★★)均質比:610℃で12時間)」
キ 「[図:0001409155000012.jpg]」
(第16頁)
ク 「[図:0001409155000013.jpg][図:0001409155000014.jpg](第17頁)続きを表示(全21行)(当審訳:請求項1.以下のステップを含む、ろう付けを目的としたアルミニウムクラッド合金シート製品の製造方法。a.装入物からコア合金インゴットを鋳造するステップであって、装入物は一定量のブレージングシートスクラップを使用して製造され、コア合金は重量%で以下を含む:Fe:0.06-0.60%、Si:0.4-1.3%、Cu:0.1-1.2%、Mg:≦0.25%、Mn:0.5-1.5%、Zn:≦0.25%、Ti:≦0.2%、Cr:0.05-0.2%、Zr:≦0.2%、任意選択で、Sn<0.25%、V<0.25%、In<0.20%を含み、その他の元素は、それぞれ最大で0.05%、合計は最大0.15%であり、残部はアルミニウムからなる;b.コア合金の少なくとも片面を3~25%のクラッド率でAl-Si合金でクラッディングする;c.熱間圧延の前に、クラッドコア合金を400℃~530℃の予熱温度で1~25時間予熱する;d.熱間圧延する;e.最終的な厚さに冷間圧延する;ここで、(Al、Fe、Mn)および(Al、Fe、Mn、Si)の金属間化合物を含有するクロムを含むアルミニウム合金シートを製造するため、ブレージングシートスクラップの量が、装入物を準備するために添加される全金属の少なくとも25重量%である。」
ケ 「[図:0001409155000015.jpg](当審訳:図2)」
(2)甲2に記載された発明
上記(1)で摘記した事項、特に請求項1、表1の発明例14、表1Aの発明例14によれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下のステップを含む、ろう付けを目的としたアルミニウムクラッド合金シート製品の製造方法。a.装入物からコア合金インゴットを鋳造するステップであって、装入物は一定量のブレージングシートスクラップを使用して製造され、コア合金は重量%で以下を含む:Mg:0.16%、Si:0.91%、続きを表示(全14行)Mn:0.65%、Fe:0.28%、Cu:0.35%、Zn:0.16%、Ti:0.08%、Cr:0.07%、Zr:0.08%、残部はアルミニウムからなる;b.コア合金の一方の面を10.0%のクラッド率でAA4045でクラッディングし、他方の面を7.0%のクラッド率でWL4でクラッディングする;ここで、ブレージングシートスクラップの量が、装入物を準備するために添加される全金属の50重量%である。」
(3)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「コア合金」は、本件特許発明1の「アルミニウム合金部A」に相当する。甲2発明の「アルミニウムクラッド合金シート製品」は、本件特許発明1の「アルミニウム合金材」に相当する。
(イ)甲2発明の「コア合金」の化学組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金部A」の成分組成を対比すると、甲2発明の「コア合金」のSi、Fe、Cu、Mn、Zn、Mg、Cr、Ti、Zrの含有量の値は、本件特許発明1における「アルミニウム合金部A」のSi、Fe、Cu、Mn、Zn、Mg、Cr、Ti、Zrの含有量の数値範囲に包含される。
また、Vは甲2の表1に記載されておらず、存在しないか、不可避不純物として含むものと認められるから、本件特許発明1における「アルミニウム合金部A」のV含有量が0.30質量%以下であることに相当する。
そして、甲2発明の「コア合金」において、不可避不純物を含むことは技術常識から明らかなので、甲2発明の「残部はアルミニウムからなる」ことは、本件特許発明1における「アルミニウム合金部A」の「残部アルミニウム及び不可避的不純物からなる」ことに相当する。
そうすると、甲2発明の「コア合金」の化学組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金部A」の成分組成は、一致する。
(ウ)甲2発明の「コア合金インゴット」の化学組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金鋳塊A」の成分組成を対比すると、上記(イ)と同様であり、甲2発明の「コア合金インゴット」の化学組成と、本件特許発明1の「アルミニウム合金鋳塊A」の成分組成は、一致する。
(エ)甲2発明の「装入物からコア合金インゴットを鋳造するステップ」は、本件特許発明1の「アルミニウム合金鋳塊Aを鋳造する鋳造工程」に相当する。
(オ)甲2発明において、「ブレージングシートスクラップの量が、装入物を準備するために添加される全金属の50重量%である」ことは、本件特許発明1の「クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用い」ることと、「スクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用い」る限りにおいて共通する。
(カ)本件特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点2>
「0.50~1.20質量%のSi、0.05~1.00質量%のFe、0.12~1.00質量%のCu、0.60~1.80質量%のMn、及び0.11~0.60質量%のZnを含有し、Mg含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金部Aを有するアルミニウム合金材の製造方法であり、スクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて、0.50~1.20質量%のSi、0.05~1.00質量%のFe、0.12~1.00質量%のCu、0.60~1.80質量%のMn、及び0.11~0.60質量%のZnを含有し、Mg含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなるアルミニウム合金鋳塊Aを鋳造する鋳造工程を有する、アルミニウム合金材の製造方法。」
<相違点2-1>
スクラップが、本件特許発明1では、「0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり」、「クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップ」であるのに対し、甲2発明では、「ブレージングシートスクラップ」であり、「クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップ」であるか不明であり、化学組成も明らかでない点。
<相違点2-2>
本件特許発明1は、「5%NaClに酢酸を添加してpH3に調整した液に浸漬し、参照電極をAg/AgClとして自然電極電位を測定したときの該アルミニウム合金部Aの自然電極電位が-670(mV vs Ag/AgCl)以上である」のに対し、甲2発明の「コア合金」は自然電極電位が不明である点。
イ 相違点についての検討
(ア)事案に鑑み、上記相違点2-2について検討する。
まず、相違点2-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲2において、「コア合金」の自然電極電位を測定することについての直接的な記載や、これを示唆するような記載は見当たらない。
また、いずれの証拠を参照しても、甲2発明の「コア合金」について、本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」であると断定できるものはなく、本願出願時の技術常識を考慮しても、そうしたことが自明であるともいえないから、上記相違点2-2は実質的な相違点である。
(イ)したがって、上記相違点2-2は実質的な相違点であるから、上記相違点2-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
(ウ)次に、相違点2-2の容易想到性について検討する。
上記(1)に摘記した箇所を含め、甲2の記載事項を参照しても、自然電極電位を測定することについての直接的な記載や、これを示唆するような記載は見当たらない以上、さらに甲3~5の記載を考慮したとしても、甲2発明における「コア合金」について、本件自然電極電位を「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」とすることが動機付けられるとはいえない。
そうすると、甲2発明において、上記相違点2-2に係る発明特定事項を備えようすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(エ)したがって、上記相違点2-1、及び本件特許発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(オ)申立人は特許異議申立書46ページにおいて、同34~36ページと同様の趣旨の説明をして、甲2発明は、「コア合金」の本件自然電極電位が「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」を満たしている蓋然性が極めて高く、相違点2-2は実質的な相違点とはならない旨を主張しているが、この主張についても、上記1(3)エにおいて示したのと同じ理由から、採用できない。
(4)本件特許発明2~11について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2に記載された発明とはいえないし、本件特許発明2は、甲2に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、甲2~9までの記載事項を考慮したとしても、甲2発明において、上記相違点2-2に係る発明特定事項を備えようすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、本件特許発明3~5は、甲2に記載された発明及び甲3~5、8に記載された事項に基いて、本件特許発明6~11は、甲2に記載された発明及び甲3~5、8~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)小括
したがって、申立理由2によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(サポート要件)
(1)本件特許発明の解決しようとする課題は、「クラッド材の製造工程中に生じた屑や廃棄されたアルミニウム製熱交換器を、熱交換器用材料の原料として用い、且つ、ろう付性及びろう付後の耐食性に優れたアルミニウム合金材を製造する方法を提供すること」(【0010】)であると認められる。
(2)そして、本件明細書には次の記載がある。
ア「【0036】
アルミニウム合金部A及びアルミニウム合金鋳塊Aは、Mgを含有してもよい。Mgは、Mg2Siの析出により強度を向上させる。アルミニウム合金部A及びアルミニウム合金鋳塊AのMg含有量は、0.50質量%以下(0.00質量%を含む)、好ましくは0.10~0.40質量%である。Mg含有量が、0.50質量%を超えるとろう付が困難となる場合がある。」
イ「【0090】
本発明のアルミニウム合金材の製造方法では、本発明のアルミニウム合金材の製造方法を行い得られるアルミニウム合金材のSi、Cu及びZnの含有量を調節することにより、アルミニウム合金廃材を、鋳造原料に10.0質量%、好ましくは10.0~50.0質量%配合させても、ろう付性及びろう付後の耐食性に優れたアルミニウム合金材が得られるので、アルミニウム新地金の使用に由来するCO2排出量を削減することができる。更に詳細に説明すると、本発明のアルミニウム合金材の製造方法では、本発明のアルミニウム合金材の製造方法を行い得られるアルミニウム合金材のSi含有量を0.50~1.20質量%、好ましくは0.50~1.00質量%、より好ましくは0.65~1.00質量%と多くし、且つ、Zn含有量を0.11~0.60質量%、好ましくは0.20~0.60質量%と多くした上で、Cu含有量を0.12~1.00質量%、好ましくは0.20~0.90質量%と規定することにより、ろう付後のアルミニウム合金材の耐食性を制御し、得られるアルミニウム合金材の優れたろう付性及びろう付後の耐食性を維持しつつ、鋳造原料への10.0質量%、好ましくは10.0~50.0質量%のアルミニウム合金廃材の配合を可能としている。」
(3)上記(2)で摘記した記載事項を含む、本件明細書の記載(【0011】、【0024】、【0028】~【0040】、【0090】~【0099】、表1~4)によれば、上記(1)の課題は、アルミニウム合金部Aを有するアルミニウム合金材の製造方法において、
ア アルミニウム合金部Aを、「0.50~1.20質量%のSi、0.05~1.00質量%のFe、0.12~1.00質量%のCu、0.60~1.80質量%のMn、及び0.11~0.60質量%のZnを含有し、Mg含有量が0.50質量%以下、Cr含有量が0.30質量%以下、Ti含有量が0.30質量%以下、Zr含有量が0.30質量%以下、V含有量が0.30質量%以下であり、残部アルミニウム及び不可避的不純物」(以下、「本件成分組成」という。)からなるものとし、
イ 「0.50質量%以上のSi、0.10質量%以上のFe、0.10質量%以上のCu、0.50質量%以上のMn、0.05質量%以上のMg、及び0.10質量%以上のZnからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用いて」、本件成分組成からなるアルミニウム合金からなるアルミニウム合金鋳塊Aを鋳造し、
ウ アルミニウム合金部Aについて、「5%NaClに酢酸を添加してpH3に調整した液に浸漬し、参照電極をAg/AgClとして自然電極電位を測定したときの」「自然電極電位」を「-670(mV vs Ag/AgCl)以上」とする、
ことによって、解決できることが理解できる。
(4)そうすると、本件特許の請求項1に係る発明は、上記(3)イの成分組成を有する「アルミニウム合金からなり、クラッド材が用いられている自動車用熱交換器のスクラップ及び/又は自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップを10.0質量%以上含有する鋳造原料を用い」るという発明特定事項、「アルミニウム合金部A」が、「Mg含有量が0.50質量%以下」であることを含む上記(3)アの本件成分組成からなるものという発明特定事項、「5%NaClに酢酸を添加してpH3に調整した液に浸漬し、参照電極をAg/AgClとして自然電極電位を測定したときの該アルミニウム合金部Aの自然電極電位が-670(mV vs Ag/AgCl)以上である」という発明特定事項を有していることから、上記(1)の課題、すなわち、「クラッド材の製造工程中に生じた屑や廃棄されたアルミニウム製熱交換器を、熱交換器用材料の原料として用い」、且つ、「ろう付性」及び「ろう付後の耐食性に優れた」「アルミニウム合金材を製造する方法」を提供するという課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものといえる。
(5)したがって、本件特許の請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~11に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして、発明の詳細な説明の記載により上記課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(6)申立人は、特許異議申立書の53~54ページにおいて、クラッド材の耐食性は、心材及び犠牲材の電位差と、犠牲材の構成と、クラッド率とによって定まるため、心材の組成及び電位のみを規定しても耐食性が良好とはいえず、アルミニウム合金部Aの自然電極電位が-670(mV vs Ag/AgCl)以上であるという規定だけでは、本件特許発明の課題を解決できるか不明である旨を主張している。
しかし、申立人が指摘するように、心材及び犠牲材の電位差、犠牲材の構成、クラッド率によって、その程度に差はあるとしても、心材の自然電極電位が特定の値より高ければ、低い場合と比べて、耐食性は一定程度保たれていると理解できるから、この主張は採用できない。
(7)また、申立人は、特許異議申立書の54ページにおいて、本件明細書には、Mg、Cr、Ti、Zr、Vのいずれかを含有する実施例が記載されていないと主張するが、本件特許発明が上記(3)、(4)で述べた発明特定事項を有することで、上記(1)の課題は解決できると理解できるから、この主張も採用できない。
(8)さらに、申立人は、特許異議申立書の55ページにおいて、本件明細書の実施例において、ろう付性が優れることについて何ら実証されていないと主張する。
しかし、本件特許発明が上記(3)、(4)で述べた発明特定事項を有することで、上記(1)の課題が解決できると理解できる。一方、本件特許の請求項1に規定されたアルミニウム合金部Aの成分組成では、実際にろう付性に優れるとはいえないことを示す具体的根拠はない。よって、申立人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~11に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできず、また、他に本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701217