審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2018-700763

有機エレクトロルミネッセンス素子、電子デバイス、発光装置及び発光材料

審判番号
2018-700763
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-531833外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年09月20日
審決日
2019年09月20日
公報発行日
2020年02月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.536-ZAA(H05B) / P1651.537-ZAA(H05B) / P1651.121-ZAA(H05B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6304255号発明「有機エレクトロルミネッセンス素子、電子デバイス、発光装置及び発光材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6304255号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~8〕について訂正することを認める。 特許第6304255号の請求項1~8に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6304255号の請求項1~8に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)8月14日(優先権主張平成25年8月16日)に特許出願され、平成30年3月16日にその特許権の設定登録がされ、平成30年4月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成30年9月20日に特許異議申立人 神保良男(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年12月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成31年3月6日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)があり、本件訂正請求に対して異議申立人から平成31年4月17日に意見書が提出されたものである。 その後、令和元年6月17日付けで取消理由<決定の予告>が通知されたが、その指定期間内に特許権者からの意見書の提出はなされなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第6304255号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものである。 2 請求項1~6に係る訂正 (1)訂正の内容 請求項1~6に係る訂正の訂正内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、100nm以下であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。」 と記載されているのを、 「 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、下記測定条件(1)下で、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、下記測定条件(2)下で、100nm以下であり、 前記蛍光発光性化合物が、(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。」 に訂正し、かつ、 「(一般式(I)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101~R104は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。)」 と記載されているのを、 「(一般式(I)中、X101は、NR101、を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101及びR104は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。) 測定条件(1):明細書に記載した有機EL素子1-1の作製方法と同じ方法で作製した有機EL素子を5Vで駆動し、外部量子効率測定装置を用いて積分球により、室温で外部取出し効率(EQE)を測定し、前記有機EL素子の膜厚情報と光学定数を用いて、解析ソフトにてモード解析を実施し、有機EL素子内部から素子外部に放出される光の割合から光取り出し効率(OC)を算出し、前記測定及び前記解析によって得られる前記EQE及び前記OCに基づき、内部量子効率を算出する。 測定条件(2):蛍光発光性化合物のジクロロメタン溶液を調製の上、分光蛍光光度計を用いて室温状態で測定する。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「(一般式(II)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。R101~R103は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 と記載されているのを、 「(一般式(II)中、X101は、NR101を表す。R101は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【0011】に、 「前記有機層のうち少なくとも1層が、蛍光発光性化合物及びホスト化合物を含有し、 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、100nm以下であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。」 と記載されているのを、 「 前記有機層のうち少なくとも1層が、蛍光発光性化合物及びホスト化合物を含有し、 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、下記測定条件(1)下で、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、下記測定条件(2)下で、100nm以下であり、 前記蛍光発光性化合物が、(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。」 に訂正し、かつ、 「(一般式(I)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101~R104は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。)」 と記載されているのを 「(一般式(I)中、X101は、NR101、を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101及びR104は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。) 測定条件(1):明細書に記載した有機EL素子1-1の作製方法と同じ方法で作製した有機EL素子を5Vで駆動し、外部量子効率測定装置を用いて積分球により、室温で外部取出し効率(EQE)を測定し、前記有機EL素子の膜厚情報と光学定数を用いて、解析ソフトにてモード解析を実施し、有機EL素子内部から素子外部に放出される光の割合から光取り出し効率(OC)を算出し、前記測定及び前記解析によって得られる前記EQE及び前記OCに基づき、内部量子効率を算出する。 測定条件(2):蛍光発光性化合物のジクロロメタン溶液を調製の上、分光蛍光光度計を用いて室温状態で測定する。」 に訂正する。 エ 訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0012】に、 「(一般式(II)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。R101~R103は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 と記載されているのを、 「(一般式(II)中、X101は、NR101を表す。R101は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 に訂正する。 オ 訂正事項5 願書に添付した明細書の段落【0217】~【0221】の【表2-1】~【表2-5】の素子番号1-31、1-57、1-69、1-103、1-104、1-117、1-122、1-127、1-128、1-135、1-138、1-139、1-164、1-166、1-203、1-205~1-208、1-212、1-216について、備考欄に、 「本発明」 と記載されているのを、 「参考例」 に訂正する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1~6〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てである、請求項〔1~6〕について行われたものである。 (2)訂正の目的の適否 ア 訂正事項1による訂正は、(a)蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(b)蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(c)蛍光発光性化合物について、(c-1)「(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって」、(c-2)「熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物」とする限定を付加する訂正と、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、(d-1)X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、(d-2)R101及びR104が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、(d-3)Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正からなるものである。 したがって、訂正事項1による訂正のうち、上記(a)及び(b)は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。また、上記(c)及び(d)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 イ 訂正事項2による訂正は、ホスト化合物について、一般式(II)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、R101が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定するものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 ウ 訂正事項3~5による訂正は、上記訂正事項1及び訂正事項2に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の記載の整合を図るために訂正するものである。 したがって、訂正事項3~5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。 エ 以上より、請求項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものである。 (3)新規事項の有無 ア 訂正事項1 まず、訂正事項1による訂正のうち、(c)蛍光発光性化合物について、(c-1)「(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物」とする訂正と、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、(d-1)X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除く訂正は、蛍光発光性化合物又はホスト化合物について、その一部を除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 次に、訂正事項1による訂正のうち、その余のものについて検討すると、願書に添付した明細書の段落【0058】に、「蛍光発光性化合物の内部量子効率の算出は、蛍光発光性化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、文献(A.Chutinan,K.Ishihara,T.Asano,M.Fujita,and S.Noda,″Theoretical Analysis on Light-Extraction Efficiency of Organic Light-Emitting Diodes using FDTD and Mode-Expansion Methods,″Organic Electronics,vol.6,pp.3-9(2005).)の記載を参考に以下の方法により実施することができる。」、「具体的には、有機EL素子を5Vで駆動した場合に、外部量子効率測定装置を用いて積分球により、室温で外部取り出し効率(以下EQE)を測定することができる。」、「そして、有機EL素子の膜厚情報と光学定数を用いて解析ソフトにてモード解析を実施し、有機EL素子内部から素子外部に放出される光の割合、すなわち光取り出し効率(以下OC)を算出することができる。」、「外部量子効率(EQE)は内部量子効率(以下IQE)と光取り出し効率(OC)の積で表現できる(式(A)参照)。」、「本発明では、測定及び解析によって得られるEQE及びOCを式(A)に適用し、有機EL素子の蛍光発光性化合物の内部量子効率を算出することができる。」と記載されている。そして、段落【0199】に「≪有機EL素子1-1の作製≫」として、「陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。」と記載され、段落【0200】に「この透明支持基板上に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用いて3000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、層厚20nmの第1正孔輸送層を設けた。」と記載され、段落【0201】に、「この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方モリブデン製抵抗加熱ボートにα-NPD(4,4′-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにH-159を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに比較化合物(4CzIPN)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにBCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)を200mg入れ真空蒸着装置に取り付けた。」と記載され、段落【0203】に「次いで真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α-NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、前記正孔注入層上に蒸着し30nmの正孔輸送層を設けた。」と記載され、段落【0204】に「更にH-159の入った前記加熱ボートと比較化合物の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で、前記正孔輸送層上に共蒸着し40nmの発光層を設けた。」と記載され、段落【0205】に「更にBCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、前記正孔阻止層上に蒸着し30nmの電子輸送層を設けた。」と記載され、段落【0206】に「引き続き、陰極バッファー層としてフッ化リチウム0.5nmを蒸着し、更にアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子1-1を作製した。」と記載されているから、(a)蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 さらに、願書に添付した明細書の段落【0057】に、「蛍光発光性化合物の発光スペクトルの測定は、蛍光発光性化合物のジクロロメタン溶液を調整の上、日立分光蛍光光度計F-4000を用いて室温で測定し、発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅を得ることができる。」と記載されているから、(b)蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 また、願書に添付した明細書の段落【0044】には、「上記のような問題を解決するためには、TADF材料の発光スペクトル形状をシャープ化し、発光極大波長と発光スペクトルの立ち上がり波長の差を小さくすることが必要となる。そのためには、基本的には一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化を小さくすることにより達成することが可能である。」、「また、ホスト化合物への逆エネルギー移動を抑制するためには、TADF材料の三重項励起状態の存在時間(励起子寿命)を短くすることが効果的である。それを実現するには、基底状態と三重項励起状態との分子構造変化を小さくすること、及び、禁制遷移をほどくのに好適な置換基や元素を導入することなどの対策を講じることで、問題点を解決することが可能である。」と記載されているから、(c)蛍光発光性化合物について、(c-2)「熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物」であるとする限定を付加する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 そして、願書に添付した明細書の段落【0080】に、「R101~R104で各々表される置換基としては、例えば、直鎖又は分岐アルキル基(例えば、・・・等)、アルケニル基(例えば、・・・等)、アルキニル基(例えば、・・・等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいう。例えば、・・・)、芳香族複素環基(例えば、・・・)、・・・が挙げられる。」と記載されており、段落【0082】に、「一般式(I)において、Ar101及びAr102により表される芳香環としては、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が挙げられる。」と記載されているから、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、(d-2)R101及びR104が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、(d-3)Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 イ 訂正事項2 訂正事項2による訂正のうち、(a)ホスト化合物について、一般式(II)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除く訂正は、ホスト化合物について、その選択肢の一部を除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 また、願書に添付した明細書の段落【0080】には、「R101~R104で各々表される置換基としては、例えば、直鎖又は分岐アルキル基(例えば、・・・)、・・・、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいう。例えば、・・・)、芳香族複素環基(例えば、・・・)、・・・等が挙げられる。」と記載されている。さらに、段落【0082】には、「一般式(I)において、Ar101及びAr102により表される芳香環としては、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が挙げられる。」と記載されている。そうすると、訂正事項2による訂正のうち、(b)一般式(II)で表される構造における、R101が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 ウ 訂正事項3~5 訂正事項3~5による訂正は、明細書の記載について、訂正事項1及び訂正事項2と同様に訂正するものであるから、前記ア及びイで述べたのと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 エ むすび 以上のとおりであるから、請求項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1 訂正事項1による訂正は、(a)蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率について、明示されていなかった測定条件を明らかにするにとどまる訂正と、(b)蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅について、明示されていなかった測定条件を明らかにするにとどまる訂正と、(c)蛍光発光性化合物について、「(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物」であるとする限定を付加する訂正と、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、R101及びR104が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正からなるものである。 したがって、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2 訂正事項2による訂正は、ホスト化合物について、一般式(II)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、R101が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定するものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項3~5 訂正事項3~5による訂正は、上記訂正事項1及び訂正事項2に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の記載の整合を図るにとどまる訂正である。 したがって、訂正事項3~5による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ むすび 以上のとおりであるから、請求項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 3 請求項7~8に係る訂正 (1)訂正の内容 請求項7~8に係る訂正の訂正内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 ア 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に 「 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、100nm以下であり、かつ、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする発光材料。」 と記載されているのを、 「 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、下記測定条件(1)下で、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、下記測定条件(2)下で、100nm以下であり、 前記蛍光発光性化合物が、(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする発光材料。」 に訂正し、かつ、 「(一般式(I)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101~R104は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。)」 と記載されているのを、 「(一般式(I)中、X101は、NR101を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101及びR104は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。) 測定条件(1):明細書に記載した有機EL素子1-1の作製方法と同じ方法で作製した有機EL素子を5Vで駆動し、外部量子効率測定装置を用いて積分球により、室温で外部取出し効率(EQE)を測定し、前記有機EL素子の膜厚情報と光学定数を用いて、解析ソフトにてモード解析を実施し、有機EL素子内部から素子外部に放出される光の割合から光取り出し効率(OC)を算出し、前記測定及び前記解析によって得られる前記EQE及び前記OCに基づき、内部量子効率を算出する。 測定条件(2):蛍光発光性化合物のジクロロメタン溶液を調製の上、分光蛍光光度計を用いて室温状態で測定する。」 に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に 「(一般式(II)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。R101~R103は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 と記載されているのを、 「(一般式(II)中、X101は、NR101を表す。R101は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 に訂正する。 ウ 訂正事項8 願書に添付した明細書の段落【0017】に、 「 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、100nm以下であり、かつ、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする発光材料。」 と記載されているのを、 「 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、下記測定条件(1)下で、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、下記測定条件(2)下で、100nm以下であり、 前記蛍光発光性化合物が、(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする発光材料。」 に訂正し、かつ、 「(一般式(I)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101~R104は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。)」 と記載されているのを 「(一般式(I)中、X101は、NR101を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101及びR104は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。) 測定条件(1):明細書に記載した有機EL素子1-1の作製方法と同じ方法で作製した有機EL素子を5Vで駆動し、外部量子効率測定装置を用いて積分球により、室温で外部取出し効率(EQE)を測定し、前記有機EL素子の膜厚情報と光学定数を用いて、解析ソフトにてモード解析を実施し、有機EL素子内部から素子外部に放出される光の割合から光取り出し効率(OC)を算出し、前記測定及び前記解析によって得られる前記EQE及び前記OCに基づき、内部量子効率を算出する。 測定条件(2):蛍光発光性化合物のジクロロメタン溶液を調製の上、分光蛍光光度計を用いて室温状態で測定する。」 に訂正する。 エ 訂正事項9 願書に添付した明細書の段落【0018】に、 「(一般式(II)中、X101は、NR101、酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103を表す。R101~R103は、各々水素原子又は置換基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 と記載されているのを、 「(一般式(II)中、X101は、NR101を表す。R101は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 に訂正する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔7~8〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てである、請求項〔7~8〕について行われたものである。 (2)訂正の目的の適否 ア 訂正事項6による訂正は、(a)蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(b)蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(c)蛍光発光性化合物について、(c-1)「(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって」、(c-2)「熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物」であるとする限定を付加する訂正と、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、(d-1)X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、(d-2)R101及びR104が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、(d-3)Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正からなるものである。 したがって、訂正事項6による訂正のうち、上記(a)及び(b)は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。また、上記(c)及び(d)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 イ 訂正事項7による訂正は、ホスト化合物について、一般式(II)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、R101が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定するものである。 したがって、訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 ウ 訂正事項8及び訂正事項9による訂正は、上記訂正事項6及び訂正事項7に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の記載の整合を図るために訂正するものである。 したがって、訂正事項8及び訂正事項9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。 エ 以上より、請求項7~8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものである。 (3)新規事項の有無 ア 訂正事項6 まず、訂正事項6による訂正のうち、(c)蛍光発光性化合物について、(c-1)「(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物」とする訂正と、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、(d-1)X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除く訂正は、蛍光発光性化合物又はホスト化合物について、その一部を除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 次に、訂正事項6による訂正のうち、その余のものについて検討すると、願書に添付した明細書の段落【0044】、【0057】、【0058】、【0080】、【0082】、【0199】~【0201】、【0203】~【0206】には、前記2(3)アにおいて指摘した事項が記載されているから、訂正事項6のうち、(a)蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(b)蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(c)蛍光発光性化合物について、(c-2)「熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物」であるとする限定を付加する訂正と、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、(d-2)R101及びR104が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、(d-3)Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。 イ 訂正事項7 訂正事項7による訂正のうち、(a)ホスト化合物について、一般式(II)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除く訂正は、ホスト化合物について、その選択肢の一部を除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 また、願書に添付した明細書の段落【0080】、【0082】には、前記2(3)アにおいて指摘した事項が記載されているから、訂正事項7のうち、(b)一般式(II)で表される構造における、R101が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 ウ 訂正事項8及び訂正事項9 訂正事項8及び訂正事項9による訂正は、訂正事項6及び訂正事項7による訂正に伴い、明細書の記載の整合を図るにとどまる訂正であるから、訂正事項8及び訂正事項9による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは、明らかである。 エ むすび 以上のとおりであるから、請求項7~8に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項6 訂正事項6による訂正は、(a)蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(b)蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅について、明示されていなかった測定条件を明らかにする訂正と、(c)蛍光発光性化合物について、「(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物」であるとする限定を付加する訂正と、(d)ホスト化合物について、一般式(I)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、R101及びR104が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定する訂正からなるものである。 したがって、訂正事項6による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項7 訂正事項7による訂正は、ホスト化合物について、一般式(II)で表される構造から、X101が、「酸素原子、硫黄原子、CR102R103又はSiR102R103」である場合を除き、R101が表す置換基を、「直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定し、Ar101及びAr102が表す芳香環を、各々「芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基」に限定するものである。 したがって、訂正事項7による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項8及び訂正事項9 訂正事項8及び訂正事項9による訂正は、上記訂正事項6及び訂正事項7に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の記載の整合を図るにとどまる訂正である。 したがって、訂正事項8及び訂正事項9による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ むすび 以上のとおりであるから、請求項7~8に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~8〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正は、前記第2のとおり、認められることになったので、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」~「本件特許発明8」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 なお、請求項1には、「一般式(I)中、X101は、NR101、を表す。」と下付の句読点を含む記載があるが、「一般式(I)中、X101は、NR101を表す。」の誤記と認められる。 「【請求項1】 陽極と陰極に挟まれた少なくとも1層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、 前記有機層のうち少なくとも1層が、蛍光発光性化合物及びホスト化合物を含有し、 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、下記測定条件(1)下で、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、下記測定条件(2)下で、100nm以下であり、 前記蛍光発光性化合物が、(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 【化1】 (一般式(I)中、X101は、NR101を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101及びR104は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。) 測定条件(1):明細書に記載した有機EL素子1-1の作製方法と同じ方法で作製した有機EL素子を5Vで駆動し、外部量子効率測定装置を用いて積分球により、室温で外部取出し効率(EQE)を測定し、前記有機EL素子の膜厚情報と光学定数を用いて、解析ソフトにてモード解析を実施し、有機EL素子内部から素子外部に放出される光の割合から光取り出し効率(OC)を算出し、前記測定及び前記解析によって得られる前記EQE及び前記OCに基づき、内部量子効率を算出する。 測定条件(2):蛍光発光性化合物のジクロロメタン溶液を調製の上、分光蛍光光度計を用いて室温状態で測定する。 【請求項2】 前記一般式(I)で表される構造を有するホスト化合物が、下記一般式(II)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。 【化2】 (一般式(II)中、X101は、NR101を表す。R101は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。) 【請求項3】 前記ホスト化合物が、カルバゾール骨格を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。 【請求項4】 前記有機層のうち少なくとも一つの層が、発光層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。 【請求項5】 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が具備されていることを特徴とする電子デバイス。 【請求項6】 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が具備されていることを特徴とする発光装置。 【請求項7】 蛍光発光性化合物とホスト化合物を含有する発光材料であって、 前記蛍光発光性化合物の電気的励起での内部量子効率が、下記測定条件(1)下で、50%以上であり、 前記蛍光発光性化合物の室温での発光スペクトルにおける発光極大波長の発光帯の半値幅が、下記測定条件(2)下で、100nm以下であり、 前記蛍光発光性化合物が、(4s,6s)-2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル(4CzIPN)以外の化合物であって、熱活性型遅延蛍光を発光しかつ前記4CzIPNより一重項励起状態及び三重項励起状態の分子構造の変化及び基底状態と三重項励起状態との分子構造変化が小さい化合物であり、 前記ホスト化合物が、下記一般式(I)で表される構造を有し、かつ、 前記蛍光発光性化合物から蛍光発光させることを特徴とする発光材料。 【化3】 (一般式(I)中、X101は、NR101を表す。y1~y8は、各々CR104又は窒素原子を表す。R101及びR104は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n101及びn102は各々0~4の整数を表すが、R101が水素原子の場合は、n101は1~4を表す。) 測定条件(1):明細書に記載した有機EL素子1-1の作製方法と同じ方法で作製した有機EL素子を5Vで駆動し、外部量子効率測定装置を用いて積分球により、室温で外部取出し効率(EQE)を測定し、前記有機EL素子の膜厚情報と光学定数を用いて、解析ソフトにてモード解析を実施し、有機EL素子内部から素子外部に放出される光の割合から光取り出し効率(OC)を算出し、前記測定及び前記解析によって得られる前記EQE及び前記OCに基づき、内部量子効率を算出する。 測定条件(2):蛍光発光性化合物のジクロロメタン溶液を調製の上、分光蛍光光度計を用いて室温状態で測定する。 【請求項8】 前記一般式(I)で表される構造を有するホスト化合物が、下記一般式(II)で表される構造を有することを特徴とする請求項7に記載の発光材料。 【化4】 (一般式(II)中、X101は、NR101を表す。R101は、各々水素原子又は直鎖又は分岐アルキル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、また互いに結合して環を形成してもよい。Ar101及びAr102は、各々芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n102は各々0~4の整数を表す。)」 第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要 令和元年6月17日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 1 実施可能要件 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が本件特許発明1~8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 2 サポート要件 本件特許は、本件特許発明1~8が、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえず、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 3 明確性 本件特許は、本件特許発明1~8の記載は、明確であるということができず、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 4 進歩性 本件特許発明1~8は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先権主張の日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 甲第1号証:Hiroki Uoyama et al., Highly efficient organic light-emitting diodes from delayed fluorescence, NATURE, vol.492, p.234-238, 2012/12/13 甲第2号証:特開2011-54931号公報 甲第3号証:特開2013-8806号公報 甲第4号証:国際公開第2013/081088号 甲第5号証:特開2013-77834号公報 (1)甲第1号証 ア 請求項1について/甲第1,5号証 イ 請求項7について/甲第1,5号証 ウ 請求項2,8について/甲1~5号証 エ 請求項3について/甲第1~5号証 オ 請求項4について/甲第1~5号証 カ 請求項5,6について/甲第1~5号証 (2)甲第3号証 ア 請求項1,3,4,7について/甲第3,5号証 イ 請求項2,8について/甲第3,5号証 ウ 請求項5,6について/甲第3,5号証 (3)甲第4号証 ア 請求項1,4,7について/甲第4,5号証 イ 請求項2,3,8について/甲第4,5号証 ウ 請求項5,6について/甲第4,5号証 第5 当審の判断 令和元年6月17日付けで通知した取消理由に対し、特許権者は指定期間内に応答をしなかった。 そして、前記第4に記載した取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1~8に係る特許は、この取消理由によって取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2018-700763

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決287件(コニカミノルタ株式会社、神保 良男)
  • 2025-700198異議申立 / 2026-02-25 / 訂正認容放射線撮影システム、放射線撮影方法及びプログラム
    同じ当事者: コニカミノルタ株式会社
  • 2023-701026異議申立 / 2025-05-27 / 請求成立(取消)用紙処理装置
    同じ当事者: コニカミノルタ株式会社
  • 2023-700397異議申立 / 2024-08-27 / 訂正認容画像検査装置、画像検査システム、画像検査方法および画像検査プログラム
    同じ当事者: コニカミノルタ株式会社
  • 2023-701090異議申立 / 2024-08-26 / 請求成立(取消)構造体の製造方法
    同じ当事者: コニカミノルタ株式会社
  • 2023-701117異議申立 / 2024-07-31 / 訂正認容プラント管理方法、プラント管理装置およびプラント管理プログラム
    同じ当事者: コニカミノルタ株式会社
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2020-701013異議申立 / 2021-08-20 / 訂正認容セラミックスヒータ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2019-017495拒絶査定不服審判 / 2020-09-29 / 請求不成立有機電子装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2016-700169異議申立 / 2017-09-01 / 請求成立(取消)点灯制御回路及びその点灯制御回路を用いた照明灯及びその照明灯を用いた照明器具
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-010105拒絶査定不服審判 / 2024-05-13 / 請求不成立インク組成物
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-800069無効審判 / 2024-02-05 / 請求不成立照明装置
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)431件(121・H05B、536・H05B、537・H05B)
  • 2024-700459異議申立 / 2026-01-22 / 訂正認容深いHOMO(最高被占分子軌道)発光体デバイス構造
    共通の審決分類: 121・H05B、536・H05B、537・H05B
  • 2024-700995異議申立 / 2025-10-31 / 訂正認容照明装置
    共通の審決分類: 121・H05B、536・H05B、537・H05B
  • 2024-701175異議申立 / 2025-10-03 / 訂正認容有機EL表示素子用封止剤及びトップエミッション型有機EL表示素子
    共通の審決分類: 121・H05B、536・H05B、537・H05B
  • 2024-700600異議申立 / 2024-09-17 / 維持照明器具
    共通の審決分類: 121・H05B、536・H05B、537・H05B
  • 2023-700100異議申立 / 2023-12-15 / 訂正認容光学フィルムおよび画像表示装置
    共通の審決分類: 121・H05B、536・H05B、537・H05B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存