特許異議申立
2023-700100
光学フィルムおよび画像表示装置
- 審判番号
- 2023-700100
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-035426
- 登録番号
- 7119424
- 請求日
- 2023年02月01日
- 審決日
- 2023年12月15日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
- 【権利者代理人】横田 修孝
- 【権利者代理人】榎 保孝
- 【権利者代理人】大森 未知子
- 【異議申立人】平居 博美
- 【異議申立人】上吉原 宏
- 【異議申立人】白田 耕二
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 井口 猶二
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.113-YAA(H05B) / P1651.121-YAA(H05B) / P1651.536-YAA(H05B) / P1651.537-YAA(H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の3第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7119424号発明「光学フィルムおよび画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7119424号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-20〕、21、22、23について訂正することを認める。
特許第7119424号の請求項1ないし2、4ないし8、10ないし17及び19ないし23に係る特許を維持する。
特許第7119424号の請求項3、9及び18に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7119424号の請求項1~20に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成30年2月28日の出願(先の出願に基づく優先権主張 平成29年3月2日 平成29年3月29日)であって、令和4年8月8日にその特許権の設定登録がされたものである。
本件特許について、令和4年8月17日に特許掲載公報が発行されたところ、その発行の日から6月以内である、令和5年2月1日に特許異議申立人 平居 博美(以下「異議申立人A」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされ、令和5年2月14日に特許異議申立人 上吉原 宏(以下「異議申立人B」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされ、令和5年2月16日に特許異議申立人 白田 耕二(以下「異議申立人C」という。)から請求項1~3、6~15及び17~20に対して特許異議の申立てがされた。異議申立人A~Cの特許異議の申立ては、特許法120条の3第1項の規定により、異議2023-700100号事件として併合して審理されることとなったところ、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 5月19日付け:取消理由通知書
令和 5年 7月21日 :意見書(特許権者)の提出
令和 5年 7月21日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和 5年 9月 6日 :意見書(異議申立人A)の提出
令和 5年 9月15日 :意見書(異議申立人C)の提出
なお、令和5年7月21日に提出された訂正請求があった旨の通知に対して、異議申立人Bは、意見書を提出しなかった。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7119424号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~23について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、下線は当合議体が付与したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。」と記載されているのを、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第1の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下であり、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下であり、
前記光学フィルムにおいて、前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、光学フィルム。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接に引用する請求項2、4~8、10、19及び20も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光学フィルム」と記載されているのを、
「請求項1または2に記載の光学フィルム」に訂正する(請求項4を直接又は間接に引用する請求項5~8、10、19及び20も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光学フィルム」と記載されているのを、
「請求項1、2、4または5に記載の光学フィルム」に訂正する(請求項6を直接又は間接に引用する請求項7、8、10、19及び20も同様に訂正する。)。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光学フィルム」と記載されているのを、
「請求項1、2、4ないし7のいずれか一項に記載の光学フィルム」に訂正する(請求項8を直接又は間接に引用する請求項10、19及び20も同様に訂正する。)。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1ないし9のいずれか一項に記載の光学フィルム」と記載されているのを、
「請求項1、2、4ないし8のいずれか一項に記載の光学フィルム」に訂正する(請求項10を直接又は間接に引用する請求項19及び20も同様に訂正する。)。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
光透過性基材と、
前記光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層と、
前記光透過性基材の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層と、を備え、
前記光学フィルムの表面および裏面の表面抵抗値が、それぞれ1012Ω/□以下であり、
前記第1の帯電防止層および前記第2の帯電防止層の膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下である、光学フィルム。」と記載されているのを、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
光透過性基材と、
前記光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層と、
前記光透過性基材の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層と、を備え、
前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材であり、
前記光学フィルムの表面および裏面の表面抵抗値が、それぞれ1012Ω/□以下であり、
前記第1の帯電防止層および前記第2の帯電防止層の膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下である、光学フィルム。」に訂正する(請求項11を直接又は間接に引用する請求項12~17、19、及び20も同様に訂正する。)。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項18を削除する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項19に
「前記表示素子よりも観察者側に配置された請求項1ないし18のいずれか一項に記載の光学フィルムと、」と記載されているのを、
「前記表示素子よりも観察者側に配置された請求項1、2、4ないし8、10ないし17のいずれか一項に記載の光学フィルムと、」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20も同様に訂正する。)。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項4に
「 前記樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層をさらに備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光学フィルム。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、
前記樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層と、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。」を、新たな請求項21とする。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項4に
「 前記樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層をさらに備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光学フィルム。」とあり、特許請求の範囲の請求項5に
「前記第2の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下である、請求項4に記載の光学フィルム」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、
前記樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層と、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第2の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下であり、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。」を、新たな請求項22とする。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項17に
「 前記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が3mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、請求項11ないし16のいずれか一項に記載の光学フィルム。」とあるうち、請求項11を引用するものについて、独立形式に改め、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
光透過性基材と、
前記光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層と、
前記光透過性基材の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層と、を備え、
前記光学フィルムの表面および裏面の表面抵抗値が、それぞれ1012Ω/□以下であり、
前記第1の帯電防止層および前記第2の帯電防止層の膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下であり、
前記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が3mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、光学フィルム。」を、新たな請求項23とする。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「第1の光学調整層」について、「膜厚が、30nm以上200nm以下であり」と限定するものである。また、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「光学フィルム」について、「前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない」と限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項3及び9には、それぞれ、「前記第1の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下である」及び「前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない」と記載されている。また、本件特許の願書に添付した明細書の【0010】及び【0153】には、上記請求項3と同趣旨の記載があり、本件特許の願書に添付した明細書の【0017】及び【0035】には、上記請求項9と同趣旨の記載がある。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
請求項2、4~8、10、19及び20についてみても、同じである。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、これらの訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことが明らかである。よって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
請求項2、4~8、10、19及び20についてみても、同じである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号が掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項2による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、上記訂正事項2に係る訂正により特許請求の範囲の請求項3が削除されたことに伴い、訂正前の請求項4が引用する請求項3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項3による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、上記訂正事項2に係る訂正により特許請求の範囲の請求項3が削除されたことに伴い、訂正前の請求項6が引用する請求項3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項4による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、上記訂正事項2に係る訂正により特許請求の範囲の請求項3が削除されたことに伴い、訂正前の請求項8が引用する請求項3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項5による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項9を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号が掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項6による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、上記訂正事項2及び6に係る訂正により特許請求の範囲の請求項3及び9が削除されたことに伴い、訂正前の請求項10が引用する請求項3及び9を削除する訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項7による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項8による訂正は、特許請求の範囲の請求項11に記載された「光透過性基材」について、「ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材であり」と限定するものである。
したがって、訂正事項8による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の有無
訂正事項8は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項18には、「前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材である」と記載されている。また、本件特許の願書に添付した明細書の【0026】にも、上記請求項18と同趣旨の記載がある。
したがって、訂正事項8による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
請求項12~17、19、及び20についてみても、同じである。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項8は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、これらの訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しないことが明らかである。よって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
請求項12~17、19、及び20についてみても、同じである。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項18を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号が掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項9による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(10)訂正事項10
訂正事項10は、上記訂正事項2、6及び9に係る訂正により特許請求の範囲の請求項3、9及び18が削除されたことに伴い、訂正前の請求項19が引用する請求項3、9及び18を削除する訂正である。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項10による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(11)訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるので、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項11による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(12)訂正事項12
訂正事項12は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項4を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるので、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項12による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(13)訂正事項13
訂正事項13は、訂正前の請求項17の記載が訂正前の請求項11の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるので、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項13による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
(14)一群の請求項
請求項2、4~8、10、19及び20は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項1によって連動して訂正される関係にあることから、請求項1、2、4~8、10、19及び20は、一群の請求項を構成する。
また、請求項12~17、19及び20は、請求項11を直接又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項8によって連動して訂正される関係にあることから、請求項11~17、19及び20は、一群の請求項を構成する。
そして、前者の一群の請求項と後者の一群の請求項は、ともに請求項19及び20を介して一体として特許請求の範囲の全部を形成するように連関している関係にあることから、結局、請求項1、2、4~8、10、12~17、19及び20は、全体として特許法施行規則45条の4に規定される一群の請求項を形成するといえる。
したがって、本件訂正のうち、訂正事項1~訂正事項10による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である請求項1、2、4~8、10、19及び20に対してされたものである。
また、訂正後の請求項21~23については、引用関係の解消を目的とする訂正であって、請求人は、訂正後の請求項21~23について、これらの請求項についての訂正が認められる場合には、上記請求項1、2、4~8、10、12~17、19及び20の一群の請求項とは別の訂正単位とすることを求めていることから、訂正後の請求項21~23については、それぞれ別の訂正単位とする。
(15)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~20〕、21、22、23について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の請求項1、2、4~8、10~17及び19~23に係る発明(以下、項番に従って「本件特許発明1」などといい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、4~8、10~17及び19~23に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第1の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下であり、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下であり、
前記光学フィルムにおいて、前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、光学フィルム。
【請求項2】
前記第1の光学調整層の屈折率が、前記樹脂基材の屈折率よりも低く、かつ前記機能層の屈折率よりも高い、請求項1に記載の光学フィルム。」
「【請求項4】
前記樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層をさらに備える、請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記第2の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下である、請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記樹脂基材における前記第1の面側とは反対側の第2の面側に設けられた膜厚が50μm以上300μm以下の樹脂層をさらに備え、前記光学フィルムにおける25℃、500Hz以上1000Hz以下の周波数域での剪断貯蔵弾性率G´が、200MPaを超え1200MPa以下であり、かつ前記光学フィルムにおける25℃、500Hz以上1000Hz以下の周波数域での剪断損失弾性率G´´が、3MPa以上150MPa以下である、請求項1、2、4または5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記第3の光学調整層が、前記樹脂基材と前記樹脂層との間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接している、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記光学フィルムのイエローインデックスが、15以下である、請求項1、2、4ないし7のいずれか一項に記載の光学フィルム。」
「【請求項10】
前記光学フィルムにおいて、前記機能層が外側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が30mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、請求項1、2、4ないし8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
光透過性基材と、
前記光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層と、
前記光透過性基材の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層と、を備え、
前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材であり、
前記光学フィルムの表面および裏面の表面抵抗値が、それぞれ1012Ω/□以下であり、
前記第1の帯電防止層および前記第2の帯電防止層の膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下である、光学フィルム。
【請求項12】
前記光学フィルムのイエローインデックスが、15以下である、請求項11に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記第1の帯電防止層が、帯電防止性ハードコート層である、請求項11または12に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記第1の帯電防止層における前記光透過性基材側とは反対側に設けられた光学調整層をさらに備える、請求項11ないし13のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項15】
前記光透過性基材と前記第1の帯電防止層との間に設けられたハードコート層をさらに備える、請求項11ないし14のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項16】
23℃、相対湿度50%の環境下で、前記光学フィルムの表面より50mmの距離から10kVの電圧を印加したときの前記光学フィルムの前記表面における飽和帯電圧の絶対値が、0kVを越える、請求項11ないし15のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項17】
前記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が3mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、請求項11ないし16のいずれか一項に記載の光学フィルム。」
「【請求項19】
表示素子と、
前記表示素子よりも観察者側に配置された請求項1、2、4ないし8、10ないし17のいずれか一項に記載の光学フィルムと、
を備えることを特徴とする、折り畳み可能な画像表示装置。
【請求項20】
前記表示素子が、有機発光ダイオード素子である、請求項19に記載の画像表示装置。
【請求項21】
画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、
前記樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層と、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。
【請求項22】
画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、
前記樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層と、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第2の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下であり、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。
【請求項23】
画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
光透過性基材と、
前記光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層と、
前記光透過性基材の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層と、を備え、
前記光学フィルムの表面および裏面の表面抵抗値が、それぞれ1012Ω/□以下であり、
前記第1の帯電防止層および前記第2の帯電防止層の膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下であり、
前記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が3mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、光学フィルム。」
第4 異議申立人が提出した証拠
1 異議申立人Aが提出した証拠
甲第1号証:国際公開第2017/014198号(以下「甲A1」という。)
甲第2号証:国際公開第2008/041506号(以下「甲A2」という。)
甲第3号証:特開2016-60117号公報(以下「甲A3」という。)
甲第4号証:特開2014-46608号公報(以下「甲A4」という。)
甲第5号証:特開2016-165709号公報(以下「甲A5」という。)
甲第6号証:特開2015-104691号公報(以下「甲A6」という。)
甲第7号証:特開2013-195550号公報(以下「甲A7」という。)
甲第8号証:特開2015-71309号公報(以下「甲A8」という。)
甲第9号証:特開2016-68293号公報(以下「甲A9」という。)
甲第10号証:特開2016-185632号公報(以下「甲A10」という。)
2 異議申立人Bが提出した証拠
甲第1号証:国際公開第2012/066743号(以下「甲B1」という。)
甲第2号証:特開2006-142544号公報(以下「甲B2」という。)
甲第3号証:特開2016-90728号公報(以下「甲B3」という。)
甲第4号証:特開2016-60833号公報(以下「甲B4」という。)
甲第5号証:特開2003-334891号公報(以下「甲B5」という。)
甲第6号証:特開2002-329598号公報(以下「甲B6」という。)
甲第7号証:特開2000-347003号公報(以下「甲B7」という。)
甲第8号証:特開2016-206400号公報(以下「甲B8」という。)
甲第9号証:国際公開第2017/014198号(異議申立人Bが提出した甲第9号証は、異議申立人Aが提出した甲第1号証であり、以下、同じく「甲A1」という。)
甲第10号証:特開平11-70606号公報(以下「甲B10」という。)
甲第11号証:特表2015-527461号公報(以下「甲B11」という。)
3 異議申立人Cが提出した証拠
甲第1号証:特開2016-27405号公報(以下「甲C1」という。)
甲第2号証:「光学フィルム最新動向~要求特性と製造・評価技術」、株式会社情報機構、2006年9月15日発行、273頁~281頁(以下「甲C2」という。)
甲第3号証:特開2015-182273号公報(以下「甲C3」という。)
甲第4号証:特開2017-33032号公報(以下「甲C4」という。)
甲第5号証:特開2010-231212号公報(以下「甲C5」という。)
甲第6号証:特開2015-132691号公報(以下「甲C6」という。)
甲第7号証:特開2013-174856号公報(以下「甲C7」という。)
甲第8号証:特開2011-93290号公報(以下「甲C8」という。)
第5 取消しの理由の概要
令和5年5月19日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。なお、本件特許の請求項に係る発明は、いずれも本件訂正前のものである。
理由1:(新規性)本件特許の請求項1、3、8~13、16、19及び20に係る発明は、最先の先の出願(以下「先の出願」という。)前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~3、6~16、19及び20に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
記
1 理由2(進歩性)について甲A1を主引例とした場合
本件特許の請求項1~3、8~10、19及び20に係る発明は、甲A1に記載された発明及び甲B7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件特許の請求項6~10、19及び20に係る発明は、甲A1に記載された発明並びに甲B7及び甲A3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 理由1(新規性)及び2(進歩性)について甲B1を主引例とした場合
本件特許の請求項1、3、8、19及び20に係る発明は、甲B1に記載された発明であるか、あるいは、甲B1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項2に係る発明は、甲B1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項6~8、19及び20に係る発明は、甲B1に記載された発明及び甲A3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 理由1(新規性)及び2(進歩性)について甲B2を主引例とした場合
本件特許の請求項11~13、16及び19に係る発明は、甲B2に記載された発明であるか、あるいは、甲B2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項14~16、19及び20に係る発明は、甲B2に記載された発明並びに甲B6及び甲B7に記載された事項のいずれかに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 理由1(新規性)及び2(進歩性)について甲C7を主引例とした場合
本件特許の請求項1、3、8、19及び20に係る発明は、甲C7に記載された発明であるか、あるいは、甲C7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項2に係る発明は、甲C7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項6~8、19及び20に係る発明は、甲C7に記載された発明及び甲A3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 理由1(新規性)及び2(進歩性)について甲C8を主引例とした場合
本件特許の請求項1、3、8、19及び20に係る発明は、甲C8に記載された発明であるか、あるいは、甲C8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項2に係る発明は、甲C8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項6~8、19及び20に係る発明は、甲C8に記載された発明及び甲A3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 令和5年5月19日付け取消理由通知書についての当合議体の判断
1 理由2(進歩性)について甲A1を主引例とした場合
(1)甲A1の記載
甲A1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体にて付与したものであり、甲A1発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「技術分野
[0001]本発明は、光学部材用積層体、及び、画像表示装置に関する。
・・・省略・・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0008]本発明は、上記現状に鑑みて、優れた硬度、透明性及び耐久折り畳み性能を有する光学部材用積層体、及び、折り畳み式画像表示装置を提供することを目的とするものである。
課題を解決するための手段
[0009]第一の本発明は、光学部材の表面材として用いられ、基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有する光学部材用積層体であって、20mmの間隔で上記光学部材用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないことを特徴とする光学部材用積層体である。
また、第二の本発明は、光学部材の表面材として用いられ、基材フィルムと少なくとも1層の樹脂硬化層とを有する光学部材用積層体であって、上記基材フィルムの上記樹脂硬化層側界面付近に溶出性層が形成されており、上記樹脂硬化層中に、上記溶出性層から溶出した上記基材フィルムを構成する材料成分が含有されており、上記基材フィルムは、ポリイミドフィルム、又は、アラミドフィルムであることを特徴とする光学部材用積層体である。
[0010]本発明の光学部材用積層体は、3mmの間隔で光学部材用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないことが好ましい。
・・・省略・・・
[0011]また、上記本発明の光学部材用積層体を用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置もまた、本発明の一つである。
[0012]
・・・省略・・・
上記光学部材としては特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、フィールドエミッションディスプレイ、タッチパネル等が挙げられる。
・・・省略・・・
[0048]本発明の積層体は、単官能モノマーの硬化層を更に有することが好ましい。
上記単官能モノマーの硬化層は、上記基材フィルムの樹脂硬化層側に有することが好ましい。
また、上記単官能モノマーの硬化層は、上記基材フィルムと後述する樹脂硬化層との間に有していてもよく、上記樹脂硬化層が後述する第一のハードコート層と第二ハードコート層とを有する場合、該第一のハードコート層と第二ハードコート層との間に有してもよいが、極めて優れた干渉縞防止性を付与する観点から、上記基材フィルムと後述する樹脂硬化層との間に有するのがより好ましい。
上記単官能モノマーの硬化層は、上述した干渉縞防止性能を付与するための層である。
本発明の積層体において、上記単官能モノマーの硬化層を形成する際に、後述する単官能モノマーの硬化層用組成物中の単官能モノマー成分が、上記基材フィルム等を溶解することにより、該基材フィルムの溶解部分の屈折率が段階的に変化し、界面反射を抑制することができるので、極めて優れた干渉縞防止性能を付与することができる。
[0049]上記単官能モノマーの硬化層の厚さとしては、0.5~8μmであることが好ましい。0.5μm未満であると、上述した干渉縞防止性能を充分に付与できないことがあり、8μmを超えると、充分な鉛筆硬度を付与できないことがある。
上記単官能モノマーの硬化層の厚さのより好ましい範囲は、1~5μmであり、更に好ましくは、1~3μmである。
なお、上記単官能モノマーの硬化層の厚さは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
・・・省略・・・
発明の効果
[0121]本発明の積層体は、上述した構成からなるものであるため、優れた硬度、透明性及び耐久折り畳み性能を有するものとなる。
このため、本発明の積層体は、曲面ディスプレイや、曲面を有する製品の表面保護フィルム、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして好適に使用することができる。」
イ 「[0125](実施例1)
基材フィルムとして、厚さ30μmのポリイミドフィルム(ポリイミド1、ネオプリムL-3450、三菱ガス化学社製)を準備し、該基材フィルムの一方の面上に、下記組成のハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。
次いで、形成した塗膜に対して、70℃1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を空気中にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜をハーフキュアーさせて厚さ15μmの第一ハードコート層を形成した。
次いで、第一ハードコート層上に、下記組成のハードコート層用組成物Aを塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、70℃1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を酸素濃度が200ppm以下の条件下にて積算光量が200mJ/cm2になるように照射して塗膜を完全硬化させることにより、厚さ5μmの第二ハードコート層を形成し、積層体を製造した。
[0126](ハードコート層用組成物1)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 25質量部
ジペンタエリスリトールEO変性ヘキサアクリレート(A-DPH-6E、新中村化学社製) 25質量部
異型シリカ微粒子(平均粒子径25nm、日揮触媒化成社製) 50質量部(固形換算)
光重合開始剤(Irg184) 4質量部
フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2質量部(固形換算)
溶剤(MIBK) 150質量部
なお、得られた第一ハードコート層のマルテンス硬さは、830MPaであった。
[0127](ハードコート層用組成物A)
ウレタンアクリレート(UX5000、日本化薬社製) 25質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 50質量部
多官能アクリレートポリマー(アクリット8KX-012C、大成ファインケミカル社製) 25質量部(固形換算)
防汚剤(BYKUV3500、ビックケミー社製) 1.5質量部(固形換算)
光重合開始剤(Irg184) 4質量部
溶剤(MIBK) 150質量部
なお、得られた第二ハードコート層のマルテンス硬さは、500MPaであった。
・・・省略・・・
[0172](耐久折り畳み試験)
実施例、比較例及び参考例に係る積層体を、30mm×100mmの長方形にカットして作製したサンプルを、サンプルの30mmの辺が固定される向きで、耐久試験機(DLDMLH-FU、ユアサシステム機器社製 面状体U字折り返し試験)に曲げR半径が1.5mm(直径3.0mm)となるようにして取り付けた。サンプルのハードコート層が形成された側の面が内側となるように全面を180°折り畳む試験を10万回(ストローク±30mm、試験速度60r/min)行い、以下の基準にて評価した。
○:サンプルに割れが生じていない
×:サンプルに割れが生じた
・・・省略・・・
[0184]
[表5]
[図:0001407813000001.jpg]
[0185](実施例43~56、比較例17、参考例14~20)
表5に示した組成及び厚みの条件となるよう変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
なお、基材フィルムの一方の面上に、下記組成の単官能モノマーの硬化層用組成物aを塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜に対して、70°1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を空気中にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜をハーフキュアーさせて表5に示した厚さの単官能モノマーの硬化層を形成した。
[0186](単官能モノマーの硬化層用組成物a)
アクリロイルモルホリン(ACMO、興人フィルムケミカルズ社製) 100質量部
光重合開始剤(Irg184) 4質量部
フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.1質量部(固形換算)
溶剤(MIBK) 75質量部
溶剤(MEK) 75質量部
※
[0192][表6]
[図:0001407813000002.jpg]
[0193]
表6に示したように、実施例43~56に係る積層体は、耐久折り畳み性能、鉛筆硬度及び耐擦傷性に優れていた。
また、実施例に係る積層体では、折り畳んでも屈曲部における干渉縞が観察されず、折り畳むことによる動く干渉縞も観察されなかった。
一方、参考例14、16、17に係る積層体は、単官能モノマーの硬化層を有しないので、干渉縞防止性能に劣っていた。また、参考例15では単官能モノマー層を有するが、膜厚が薄いため干渉縞が観察された。
また、比較例17に係る積層体では、第一ハードコート層と第二ハードコート層との密着性が悪いために、耐久折り畳み性に劣っていた。
また、第一ハードコート層が厚すぎた参考例18、第二ハードコート層を形成しなかった参考例19、第二ハードコート層が厚すぎた参考例20に係る積層体では、上記耐久折り畳み試験を裏面が外側となるように行った場合には割れが生じていなかったが、表面が外側となるように行った場合に割れが生じてしまった。また、第二ハードコート層を形成しなかった参考例19では、耐擦傷性も劣っていた。
また、参考例18~20に係る積層体においては、単官能モノマーの硬化層が好適に形成されていたため、折り畳んでも屈曲部における干渉縞が観察されず、折り畳むことによる動く干渉縞も観察されなかった。」
(2)甲A1発明
甲A1の[0011]には、「また、上記本発明の光学部材用積層体を用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置もまた、本発明の一つである。」と記載されていることから、実施例として記載された積層体が「折り畳み式画像表示装置」に用いられるものであることは明らかである。
また、甲A1の[0125]及び[0185]の記載と[0184]の表5の記載も参酌すると、実施例47の「積層体」は、基材フィルムと、基材フィルム上に単官能モノマーの硬化層と、単官能モノマーの硬化層上に第一ハードコート層と、第一ハードコート層上に第二ハードコート層を形成したものといえる。
さらに、甲A1の[0193]の記載と[0192]の表6の記載も参酌すると、実施例47の耐久折り畳み試験ではサンプルに割れが生じていないことが理解できる。
そうしてみると、甲A1には、実施例47の「光学部材用積層体」として、次の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されている。なお、「積層体」を「光学部材用積層体」に用語を統一して用いた。
「 基材フィルムとして、厚さ30μmのポリイミドフィルムを準備し、該基材フィルムの一方の面上に、基材フィルムの一方の面上に、厚さ0.5μmの単官能モノマーの硬化層を形成し、単官能モノマー硬化層上に、厚さ3μmの第一ハードコート層を形成し、第一ハードコート層上に、厚さ2μmの第二ハードコート層を形成した、折り畳み式画像表示装置に用いられる光学用積層体であって、
光学部材用積層体を、30mm×100mmの長方形にカットして作製したサンプルを、サンプルの30mmの辺が固定される向きで、耐久試験機に曲げR半径が1.5mm(直径3.0mm)となるようにして取り付け、サンプルのハードコート層が形成された側の面が内側となるように全面を180°折り畳む試験を10万回行い、サンプルに割れが生じていない、光学用積層体。」
(3)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲A1発明を対比する。
(ア)樹脂基材
甲A1発明は、「基材フィルムとして、厚さ30μmのポリイミドフィルムを準備し、該基材フィルムの一方の面上に、基材フィルムの一方の面上に、厚さ0.5μmの単官能モノマーの硬化層を形成し、単官能モノマー硬化層上に、厚さ3μmの第一ハードコート層を形成し、第一ハードコート層上に、厚さ2μmの第二ハードコート層を形成した」ものである。
上記構成からみて、甲A1発明の「基材フィルム」は、本件特許発明1の「樹脂基材」に相当する。
また、甲A1発明の「ポリイミド」は、本件特許発明1の「ポリイミド系樹脂」に相当する。そうしてみると、甲A1発明の「基材フィルム」は、本件特許発明1の「樹脂基材」の「ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる」との要件を満たす。
(イ)機能層
上記(ア)の構成からみて、甲A1発明の「第一ハードコート層」及び「第二ハードコート層」は、本件特許発明1の「機能層」に相当する。
また、甲A1発明の「第一ハードコート層」及び「第二ハードコート層」は、「基材フィルム」の第1の面側に設けられたといえる。そうしてみると、甲A1発明の「第一ハードコート層」及び「第二ハードコート層」は、本件特許発明1の「機能層」の「前記樹脂基材の第1の面側に設けられた」との要件を満たす。
(ウ)第1の光学調整層
上記(ア)の構成からみて、甲A1発明の「単官能モノマーの硬化層」は、本件特許発明1の「第1の光学調整層」に相当する(当合議体注:このことは甲A1の[0048]の記載からも確認できる。)。
また、甲A1発明の「単官能モノマーの硬化層」は、「基材フィルム」と「第一ハードコート層」の間に設けられ、かつ及び「第一ハードコート層」に隣接したといえる。そうしてみると、甲A1発明の「単官能モノマーの硬化層」は、本件特許発明1の「第1の光学調整層」の「前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した」との要件を満たす。
(エ)光学フィルム
上記(ア)~(ウ)を総合すると、甲A1発明の「光学部材用積層体」は、本件特許発明1の「光学フィルム」に相当する。また、甲A1発明の「光学部材用積層体」は、本件特許発明1の「光学フィルム」の「画像表示装置に用いられる折り畳み可能な」との要件を満たす。
さらに、上記(ア)の構成からみて、甲A1発明の「光学部材用積層体」は、「基材フィルム」と、「単官能モノマー硬化層」と、「第一ハードコート層」と、「第二ハードコート層」と、を備えるといえる。そうしてみると、甲A1発明の「光学部材用積層体」は、本件特許発明1の「光学フィルム」の「樹脂基材と」、「機能層と」、「第1の光学調整層と」「を備え」との要件を満たす。
(オ)折り畳む試験
甲A1発明は、「光学部材用積層体を、30mm×100mmの長方形にカットして作製したサンプルを、サンプルの30mmの辺が固定される向きで、耐久試験機に曲げR半径が1.5mm(直径3.0mm)となるようにして取り付け、サンプルのハードコート層が形成された側の面が内側となるように全面を180°折り畳む試験を10万回行い、サンプルに割れが生じていない」ものである。
甲A1発明の「光学部材用積層体」のサンプルは、R半径が1.5mm(直径3.0mm)、全面を180°折り畳む試験を10万回行っても割れが生じないのであるから、間隔が直径3.0mmよりも大きい10mmとなるように180℃折り畳む試験を10万回よりも少ない1万回行った場合でも、割れや破断は生じないといえる。
そうしてみると、甲A1発明の「光学部材用積層体」は、本件特許発明1の「光学フィルム」の「前記光学フィルムにおいて、前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない」との要件を満たす。
イ 一致点及び相違点
上記アによると、本件特許発明1と甲A1発明は、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、を備え、
前記光学フィルムにおいて、前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない、光学フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A-1>
「第1の光学調整層」について、本件特許発明1は、「膜厚が、30nm以上200nm以下であ」るのに対して、甲A1発明の「単官能モノマー硬化層」の膜厚は、「0.5μm」である点。
<相違点A-2>
本件特許発明1は、「前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下であ」るのに対して、甲A1発明は、そもそも第3の光学調整層がなく、このように特定されていない点。
ウ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点A-1について検討する。
甲A1の[0048]及び[0049]には、それぞれ、「・・・上記単官能モノマーの硬化層は、上述した干渉縞防止性能を付与するための層である。本発明の積層体において、上記単官能モノマーの硬化層を形成する際に、後述する単官能モノマーの硬化層用組成物中の単官能モノマー成分が、上記基材フィルム等を溶解することにより、該基材フィルムの溶解部分の屈折率が段階的に変化し、界面反射を抑制することができるので、極めて優れた干渉縞防止性能を付与することができる。」及び「上記単官能モノマーの硬化層の厚さとしては、0.5~8μmであることが好ましい。0.5μm未満であると、上述した干渉縞防止性能を充分に付与できないことがあり、8μmを超えると、充分な鉛筆硬度を付与できないことがある。上記単官能モノマーの硬化層の厚さのより好ましい範囲は、1~5μmであり、更に好ましくは、1~3μmである。」と記載されている(当合議体注:下線は当合議体にて付与した。)。
上記記載から、単官能モノマーの硬化層の厚さは、0.5~8μmであり、甲A1の実施例においても、実施例47の単官能モノマーの硬化層の厚さが下限の0.5μmである。そうすると、甲A1発明の「単官能モノマーの硬化層」の厚さを0.5μmよりも薄くすることに阻害要因があるといえる。たしかに、薄膜化は一般的な課題であり、数十nm~数百nm程度の膜厚の光学調整層が周知技術であるものの、阻害要因があることから、たとえ当業者といえども、甲A1発明における「単官能モノマーの硬化層」の厚さを0.5μmよりも薄くすることには至らない。
そうしてみると、たとえ当業者といえども、上記相違点A-1に係る本件特許発明1の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
エ 異議申立人の主張
異議申立人Aは、令和5年9月6日提出の意見書6頁において、「当業者であれば甲第5~7号証に記載される周知の課題も考慮して、「干渉を抑制し且つ薄膜化」を達成することを目的に、甲A1に記載された発明に甲第4号証の構成(中間層の屈折率1.57~1.70、厚み62~115nm)を適用することには容易に想到できるものであり、そこに阻害要因は存在しない。」(当合議体注:「甲第4号証」~「甲第7号証」は、それぞれ、「甲A4」~「甲A7」であり、以下も同様である。)と主張している。また、異議申立人Cは、令和5年9月15日提出の意見書3頁において、「訂正後の請求項1に係る発明は、甲A1に記載された発明と甲C7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」と主張している。
しかしながら、上記ウで述べたとおりであり、異議申立人A及びCの上記主張は、採用できない。
オ 本件特許発明1についての小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、たとえ当業者といえども、本件特許発明1は、甲A1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件特許発明2、4~8、10及び19~20
本件特許発明2、4~8、10及び19~20は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明2、4~8、10及び19~20も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲A1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)本件特許発明21
ア 対比、一致点及び相違点
本件特許発明21と甲A1発明を対比すると、本件特許発明21と甲A1発明は、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、を備える、光学フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A-3>
本件特許発明21は、「前記樹脂基材と前記の第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層」「を備え」るのに対して、甲A1発明は、そもそも第2の光学調整層がなく、このように特定されていない点。
<相違点A-4>
本件特許発明21は、「前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下であ」るのに対して、甲A1発明は、そもそも第3の光学調整層がなく、このように特定されていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点A-3について検討する。
甲A1の[0048]には、「・・・上記単官能モノマーの硬化層は、上述した干渉縞防止性能を付与するための層である。本発明の積層体において、上記単官能モノマーの硬化層を形成する際に、後述する単官能モノマーの硬化層用組成物中の単官能モノマー成分が、上記基材フィルム等を溶解することにより、該基材フィルムの溶解部分の屈折率が段階的に変化し、界面反射を抑制することができるので、極めて優れた干渉縞防止性能を付与することができる。」と記載されている。そして、甲A1において、基材フィルムとハードコート層との間に単官能モノマーの硬化層以外の層を設けた実施例は記載されていない。
上記記載から、甲A1発明において、「基材フィルム」と「単官能モノマーの硬化層」との間に光学調整層をさらに備えるという動機付けはない。また、甲A1発明において、「基材フィルム」と「単官能モノマーの硬化層」との間に光学調整層をさらに備えることを伺わせる甲号証は提示されておらず、また、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、たとえ当業者といえども、上記相違点A-3に係る本件特許発明21の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
ウ 本件特許発明21についての小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、たとえ当業者といえども、本件特許発明21は、甲A1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(6)本件特許発明22
ア 対比、一致点及び相違点
本件特許発明22と甲A1発明を対比すると、本件特許発明22と甲A1発明は、
「 画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、を備える、光学フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A-5>
本件特許発明22は、「前記樹脂基材と前記の第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層」「を備え」、「前記第2の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下であ」るのに対して、甲A1発明は、そもそも第2の光学調整層がなく、このように特定されていない点。
<相違点A-6>
本件特許発明22は、「前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下であ」るのに対して、甲A1発明は、そもそも第3の光学調整層がなく、このように特定されていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点A-5について検討すると、上記相違点A-5は、上記相違点A-3と同様の構成を含むものであるから、上記(5)イで述べた理由と同様の理由により、たとえ当業者といえども、上記相違点A-5に係る本件特許発明22の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
ウ 本件特許発明22についての小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、たとえ当業者といえども、本件特許発明22は、甲A1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(7)他の実施例について
他の実施例を甲A1発明とした場合であっても同様である。
(8)小括
本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は、たとえ当業者といえども、甲A1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
2 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について甲B1を主引例とした場合
(1)甲B1の記載
甲B1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体にて付与したものであり、甲B1発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、ハードコートフィルム及び画像表示装置に関し、耐久試験後のブロッキングと可とう性の改良を図ったハードコートフィルム及び画像表示装置に関する。
背景技術
・・・省略・・・
[0003] しかしながら、前述した基材フィルムにポリエステル系フィルムを用いる場合に、干渉色むらやハードコート層と基材フィルムとの層間密着で問題点があった。
[0004] 干渉色むらは、ポリエステル系フィルムの面方向屈折率が一般的に1.66程度あり、ハードコートフィルムのハードコート層に好適に用いられる紫外線硬化型アクリル系樹脂層の屈折率が一般的に1.5程度であり、この屈折率差により、ポリエステル系フィルムと紫外線硬化型アクリル系樹脂層との界面で干渉が生じ、干渉による色ムラが発生する。この干渉色ムラは、ハードコートフィルムが透明で、太陽光や白熱灯より三波長蛍光灯という特殊な蛍光灯下で感知されるため、改良要望があった。更にハードコート層と基材フィルムとの層間密着性は、特に携帯電話などが用いられる浴室や高温多湿地域を想定した
耐湿条件で劣化が顕著であった。(当合議体注:改行は原文のママ)
・・・省略・・・
発明の概要
[0008] 従って本発明の目的は、耐久試験後のブロッキングと可とう性の改良を図ったハードコートフィルム、及び画像表示装置を提供することにある。
[0009] 本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
[0010] 1.アクリル樹脂系フィルム、ポリプロピレン樹脂系フィルム、シクロオレフィン樹脂系フィルム、及びポリエステル樹脂系フィルムから選択される少なくとも1種の基材フィルムの両面に易接着層を有し、該易接着層の少なくとも一方の面にハードコート層が積層されたハードコートフィルムにおいて、該易接着層がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂から選択される少なくとも1種を含有し、かつ該ハードコート層が、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体を含有することを特徴とするハードコートフィルム。」
イ 「発明を実施するための形態
・・・省略・・・
[0022] 本発明者は前記課題に対して鋭意検討を重ね、ハードコート層と基材フィルムとの層間密着性や干渉色むら防止するのに、ハードコート層と基材フィルムの間に設けられる易接着層を特定の樹脂組成物で構成し、更にハードコート層に活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を用いることで、易接着層とハードコート層の各表面エネルギーをコントロールし、易接着層とハードコート層とが親和性の低い状態を形成することで、耐久試験後のブロッキング性に良好な性能が得られること、更にハードコートフィルムを前記構成とすることで、耐久試験後もハードコートフィルムの弾性が劣化せずに、良好な可とう性が得られることを見出し本発明に至ったものである。
・・・省略・・・
[0079] 前記した基材フィルムの中では、耐熱性や機械強度、寸法安定性、及び本発明の目的効果がより良好に発揮される点から、ポリエステル樹脂系フィルムが好ましい。
・・・省略・・・
[0105] <易接着層>
(樹脂)
次に易接着層について説明する。本発明に係る易接着層は、基材フィルムとハードコート層との層間密着を向上させる為に設けられる層を表しており、具体的には、基材フィルムとハードコート層が直接接着した場合よりもJISK 5400(JIS K5600)に準拠するクロスカット法で定義される密着評価での密着性を向上させるという機能を有する層を表し、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂からなる群から選択される樹脂を少なくとも1種含有することを特徴としている。
・・・省略・・・
[0116] (その他添加剤)
易接着層を形成するための水系乳化物等に、必要に応じて架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤の例として、メラミン系、オキサゾリン系、アルデヒド、N-メチロール化合物、ジオキサン誘導体、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール、ジアルデヒド澱粉、イソシアネート系化合物、シランカップリング剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。架橋剤の添加量は、親水性樹脂全量に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。易接着層を形成するための水系乳化物等には、さらに、必要に応じて、アミノ基含有樹脂等の他の樹脂成分、界面活性剤、すべり剤、染料、紫外線吸収剤、マット剤(シリカ、コロイダルシリカなど、平均粒径は0.005~3μmが好ましい)、防腐剤、増粘剤、造膜助剤、帯電防止剤、抗酸化剤などを添加してもよい。
・・・省略・・・
[0121] 易接着層/基材フィルム/易接着層/ハードコート層/低屈折率層
易接着層/基材フィルム/易接着層/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
・・・省略・・・
[0137] <画像表示装置>
本発明のハードコートフィルムは、画像表示装置に使用することで、視認性(クリア性)に優れた性能が発揮される点で好ましい。画像表示装置としては、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置または、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ等が挙げられる。これら画像表示装置の中でもタッチパネルを含む液晶表示装置のタッチパネル用部材に本発明のハードコートフィルムを用いた場合、高い視認性、及びペン入力に対する耐久性(摺動による傷等)に優れる点で好ましい。」
ウ 「[0140] 実施例1
<易接着層付き基材フィルム1の作製>
フィラーを含まないポリエチレンテレフタレートを280℃で溶融押出し、静電印加された20℃のキャストドラム上にキャストし無延伸シートを作製した。このシートを100℃で予熱し、この温度にてロール延伸で長手方向に3倍延伸した。この後、濃度4.5%に調整した易接着層水系塗料1を上記のシート両面に塗布した。塗布後、120℃で幅方向に3.5倍延伸し、220℃で熱処理した。熱処理後、両端部に幅10mm、平均高さ5μmのナーリング加工を施して巻き取り、幅1.5m、長さ6000m、150nmの易接着層が両面に形成された厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである易接着層付き基材フィルム1を得た。
[0141](易接着層水系塗料1)
下記材料を攪拌、混合し、純水で固形分濃度が4.5%となるように調整して、ポリエステル樹脂の水系乳化物を得た。
[0142] Tgが120℃、ソディウム・スルホネート・イソフタル酸のモル比率7/50のポリエステル樹脂(X) 19質量部
Tgが80℃、トリメリット酸のモル比率12/50のポリエステル樹脂(Y) 45質量部
メラミン樹脂 27質量部
オキサゾリン基含有ポリマー(架橋剤、日本触媒社製) 7質量部
粒径150nmのコロイダルシリカ 2質量部
[0143] <易接着層付き基材フィルム2の作製>
基材フィルム1の作製において、易接着層の膜厚が150nmとなるように易接着層水系塗料2の塗布量を調整し、更に易接着層水系塗料1を易接着層水系塗料2に変更した以外は同様にして、易接着層付き基材フィルム2を得た。
・・・省略・・・
[0166] <ハードコートフィルム1の作製>
上記作製した基材フィルム1上に、下記のハードコート層組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、押し出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度80℃、減率乾燥区間温度80℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.3J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚8μmのハードコート層1を形成して巻き取り、ロール状のハードコートフィルム1を作製した。
[0167] (ハードコート層組成物1)
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布組成物1とした。
[0168] ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート
65質量部
(NKエステルA-TMM-3L、新中村化学工業(株)製)
トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート 35質量部
(NKエステルA-9300、新中村化学工業(株)製)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
ポリエーテル変性シリコーン(KF-614A、信越化学工業社製)
2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 20質量部
メチルエチルケトン 70質量部
・・・省略・・・
[0182] b.可とう性
(耐久性試験)
上記作製したハードコートフィルム1~14を、各10cm×10cmサイズで切り出し、屋外での使用を想定してサイクルサーモ(-40℃・30分放置、次いで85℃・30分放置を交互に500サイクル)に投入後、80℃相対湿度90%の恒温槽で500時間保存した。
[0183] 耐久性試験後の各ハードコートフィルム1~14を23℃55%RHの雰囲気下で12時間調湿後、JIS K5600-5-1に準拠する方法で、タイプ1の試験装置を用いて円筒型マンドレル法により可とう性を評価した。マンドレルの直径の数値が低い程、可とう性に優れることを示す。
・・・省略・・・
[0187]
[表1]
[図:0001407813000003.jpg]
」
(2)甲B1発明
甲B1の[0137]には、「本発明のハードコートフィルムは、画像表示装置に使用する」と記載されていることから、実施例として記載されたハードコートフィルムが「画像表示装置」に使用されるものであることは明らかである。
また、甲B1の[0143]等の記載を参酌すると、[0140]における易接着層の厚みが150nmであることは明らかである。
そうしてみると、甲B1には、実施例1の「ハードコートフィルム1」として、次の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されている。
「 幅1.5m、長さ6000m、厚さ150nmの易接着層が両面に形成された厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである易接着層付き基材フィルム1を得て、
上記作製した基材フィルム1上に、下記のハードコート層組成物1を濾過したものを、塗布し、乾燥の後、塗布層を硬化させ、ハードコート層1を形成して巻き取り、作製した、画像表示装置に使用する、ロール状のハードコートフィルム1。
ここで、基材フィルム1は、フィラーを含まないポリエチレンテレフタレートを280℃で溶融押出し、静電印加された20℃のキャストドラム上にキャストし無延伸シートを作製し、このシートを100℃で予熱し、この温度にてロール延伸で長手方向に3倍延伸し、この後、濃度4.5%に調整した易接着層水系塗料1を上記のシート両面に塗布し、塗布後、120℃で幅方向に3.5倍延伸し、220℃で熱処理し、熱処理後、両端部に幅10mm、平均高さ5μmのナーリング加工を施して巻き取ったものである。
易接着層水系塗料1は、下記材料を攪拌、混合し、純水で固形分濃度が4.5%となるように調整して、ポリエステル樹脂の水系乳化物を得たものである。
Tgが120℃、ソディウム・スルホネート・イソフタル酸のモル比率7/50のポリエステル樹脂(X) 19質量部
Tgが80℃、トリメリット酸のモル比率12/50のポリエステル樹脂(Y) 45質量部
メラミン樹脂 27質量部
オキサゾリン基含有ポリマー(架橋剤、日本触媒社製) 7質量部
粒径150nmのコロイダルシリカ 2質量部
また、ハードコート層組成物1は、下記材料を攪拌、混合したものである。
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート 65質量部
(NKエステルA-TMM-3L、新中村化学工業(株)製)
トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート 35質量部
(NKエステルA-9300、新中村化学工業(株)製)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
ポリエーテル変性シリコーン(KF-614A、信越化学工業社製)
2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 20質量部
メチルエチルケトン 70質量部」
(3)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲B1発明を対比する。
(ア)樹脂基材
甲B1発明は、「易接着層が両面に形成された厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである易接着層付き基材フィルム1を得て、上記作製した基材フィルム1上に」「ハードコート層1を形成して」「作製した、画像表示装置に使用する、ロール状のハードコートフィルム1」である。
上記構成からみて、甲B1発明の「基材フィルム1」は、本件特許発明1の「樹脂基材」に相当する。
また、甲B1発明の「ポリエチレンテレフタレート」は、本件特許発明1の「ポリエステル系樹脂」に相当する。そうしてみると、甲B1発明の「基材フィルム1」は、本件特許発明1の「樹脂基材」の「ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる」との要件を満たす。
(イ)機能層
上記(ア)の構成からみて、甲B1発明の「ハードコート層1」は、本件特許発明1の「機能層」に相当する。
また、甲B1発明の「ハードコート層1」は、「基材フィルム1」の第1の面側に設けられたといえる。そうしてみると、甲B1発明の「ハードコート層1」は、本件特許発明1の「機能層」の「前記樹脂基材の第1の面側に設けられた」との要件を満たす。
(ウ)第1の光学調整層
上記(ア)の構成からみて、甲B1発明の「基材フィルム1」の一方の面に形成された「易接着層」は、「基材フィルム1」と「ハードコート層1」の間に設けられ、かつ「ハードコート層1」に隣接したといえる。また、その組成及び配置から、甲B1発明の「基材フィルム1」の一方の面に形成された「易接着層」は、光学調整層として機能するといえる。
そうしてみると、甲B1発明の「基材フィルム1」の一方の面に形成された「易接着層」は、本件特許発明1の「第1の光学調整層」に相当する。また、甲B1発明の「基材フィルム1」の一方の面に形成された「易接着層」は、本件特許発明1の「第1の光学調整層」の「前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した」及び「膜厚が、30nm以上200nm以下であり」との要件を満たす。
(エ)第3の光学調整層
上記(ア)の構成からみて、甲B1発明の「基材フィルム1」の他方の面に形成された「易接着層」は、「基材フィルム1」における第1の面とは反対側の第2の面に設けられたといえる。
そうしてみると、甲B1発明の「基材フィルム1」の他方の面に形成された「易接着層」は、本件特許発明1の「第3の光学調整層」に相当する。また、甲B1発明の「基材フィルム1」の他方の面に形成された「易接着層」は、本件特許発明1の「第3の光学調整層」の「前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた」及び「膜厚が、30nm以上1μm以下であり」との要件を満たす。
(オ)光学フィルム
上記(ア)~(エ)を総合すると、甲B1発明の「ハードコートフィルム1」は、本件特許発明1の「光学フィルム」に相当する。
また、甲B1発明の「ハードコートフィルム1」は、「画像表示装置に使用する」ものである。そうしてみると、甲B1発明の「ハードコートフィルム1」は、本件特許発明1の「光学フィルム」の「画像表示装置に用いられる」との要件を満たす。
さらに、上記(ア)の構成からみて、甲B1発明の「ハードコートフィルム1」は、「基材フィルム1」と、「基材フィルム1」の一方の面に形成された「易接着層」と、「ハードコート層1」と、を備えるといえる。そうしてみると、甲A1発明の「光学部材用積層体」は、本件特許発明1の「光学フィルム」の「樹脂基材」と、「機能層」と、「第1の光学調整層」と「第3の光学調整層」と、「を備え」との要件を満たす。
イ 一致点及び相違点
上記アによると、本件特許発明1と甲B1発明は次の点で一致する。
「 画像表示装置に用いられる光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、を備え、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第1の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下であり、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B-1>
本件特許発明1は、「折り畳み可能な」ものであって、「前記光学フィルムにおいて、前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない」ものであるのに対して、甲B1発明は、このように特定されていない点。
ウ 相違点についての判断
上記相違点B-1について検討する。
甲B1には、可とう性の改良を目的として([0008])、実施例においても、円筒型マンドレル法による可とう性に優れることが示されている([0182]及び[0187])。
しかしながら、甲B1には、上記相違点B-1に係る折り畳む試験を行った場合に割れ又は破断が生じないとの技術思想は記載されていない。また、甲B1発明の「基材フィルム1」、「易接着層」及び「ハードコート層1」の膜厚及び組成は、上記(2)の甲B1発明のとおりであって、甲B1発明の膜厚から、甲B1発明が上記相違点B-1に係る折り畳む試験を行った場合に割れ又は破断が生じないとの蓋然性が高いとはいえない。
そうしてみると、上記相違点B-1は、実質的な相違点である。
また、甲B1発明において、上記相違点B-1に係る折り畳む試験を行った場合に割れ又は破断が生じないとすることを伺わせる甲号証は提示されておらず、また、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、たとえ当業者といえども、上記相違点B-1に係る本件特許発明1の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
エ 異議申立人の主張
異議申立人Aは、令和5年9月6日提出の意見書9~10頁において、「甲B1の実施例として記載された「ハードコートフィルム1」及び「ハードコートフィルム3」~「ハードコートフィルム5」は、ハードコート層の膜厚が8μm(段落166)と薄く・・・易接着層の膜厚も150nm(段落140)と薄い・・・ものであり、本件特許発明の樹脂層に相当する層を有していない。そうすると、このように薄い層から構成される甲B1に開示されたハードコートフィルム1、3~5は、訂正発明1で規定される折り畳み性を有する蓋然性が高いものである。」と主張している。
また、異議申立人Cは、令和5年9月15日提出の意見書2頁において、「甲B1に記載の発明の評価に甲A1(甲第4号証)に記載の折り曲げ試験方法を適用することに困難性はない。」及び「甲B1に記載の発明は、層構成と第1及び第3の光学調整層に相当する層の厚みが訂正前の請求項1に係る発明と類似しているから、甲B1に記載の発明も訂正前の請求項9の発明特定事項を充足する蓋然性が高い。」と主張している。
しかしながら、異議申立人Aの上記主張は、甲B1発明の厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを考慮に入れていないものであり、上記相違点B-1に係る折り畳み試験を行った場合に割れ又は破断が生じないという蓋然性が高いとはいえない。その余の点は上記ウで述べたとおりであり、異議申立人A及びCの上記主張は、採用できない。
オ 本件特許発明1についての小括
したがって、本件特許発明1は、甲B1発明であるとはいえず、また、他の相違点について検討するまでもなく、たとえ当業者といえども、甲B1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件特許発明2、4~8、10及び19~20
本件特許発明2、4~8、10及び19~20は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明2、4~8、10及び19~20も、本件特許発明1と同じ理由により、甲B1発明であるとはいえず、また、当業者であっても、甲B1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)本件特許発明21
ア 対比、一致点及び相違点
本件特許発明21と甲B1発明を対比すると、本件特許発明21と甲B1発明は、
「 画像表示装置に用いられる光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、を備え、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。」の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点B-2>
本件特許発明21は、「前記樹脂基材と前記の第1の光学調整層のあいだに設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層」「を備え」るのに対して、甲B1発明は、そもそも第2の光学調整層がなく、このように特定されていない点。
イ 相違点についての判断
上記相違点B-2について検討する。
甲B1には、「干渉色むらやハードコート層と基材フィルムとの層間密着で問題点」([0003])を解決するために、「・・・基材フィルムの両面に易接着層を有し、該易接着層の少なくとも一方の面にハードコート層が積層されたハードコートフィルムにおいて、該易接着層がポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂から選択される少なくとも1種を含有し、かつ該ハードコート層が、活性エネルギー線硬化型イソシアヌレート誘導体を含有する」([0010])ことが記載されていることから、甲B1発明において、「基材フィルム」と「易接着層」との間に光学調整層を設ける動機付けはない。また、甲B1発明において、「基材フィルム」と「易接着層」との間に光学調整層を設けることを伺わせる甲号証は提示されておらず、また、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、上記相違点B-2は実質的な差異であり、また、たとえ当業者といえども、上記相違点B-2に係る本件特許発明21の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
ウ 本件特許発明21についての小括
したがって、本件特許発明21は、甲B1発明であるとはいえず、また、他の相違点について検討するまでもなく、たとえ当業者といえども、甲B1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(6)本件特許発明22
ア 対比、一致点及び相違点
本件特許発明22と甲B1発明を対比すると、本件特許発明22と甲A1発明は、
「 画像表示装置に用いられる光学フィルムであって、
ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂からなる樹脂基材と、
前記樹脂基材の第1の面側に設けられた機能層と、
前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層と、を備え、
前記樹脂基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に設けられた第3の光学調整層と、を備え、
前記第3の光学調整層の膜厚が、30nm以上1μm以下である、光学フィルム。」の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点B-3>
本件特許発明22は、「前記樹脂基材と前記の第1の光学調整層のあいだに設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層」「を備え」、「前記第2の光学調整層の膜厚が、30nm以上200nm以下であ」るのに対して、甲B1発明は、そもそも第2の光学調整層がなく、このように特定されていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点B-3について検討すると、上記相違点B-3は、上記相違点B-2と同様の構成を含むものであるから、上記(5)イで述べた理由と同様の理由により、たとえ当業者といえども、上記相違点B-3に係る本件特許発明22の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
ウ 本件特許発明22についての小括
したがって、たとえ当業者といえども、本件特許発明22は、甲B1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(7)他の実施例について
他の実施例を甲B1発明とした場合であっても同様である。
(8)小括
本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は、甲B1に記載された発明であるとはいえず、また、たとえ当業者といえども、甲B1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
3 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について甲B2を主引例とした場合
(1)甲B2の記載
甲B2の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体にて付与したものであり、甲B2発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に外部粒子を含まない二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、(A)アクリル系樹脂 60~90質量部(B)帯電防止剤 10~40質量部(C)架橋剤 1~30質量部(D)一次粒径が40~100nmの粒子 1~5質量部から構成される帯電防止層を、インラインコート法により30~60nmの厚さで積層したことを特徴とする帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性二軸延伸ポリエステルに関し、さらに詳しくは、光学フィルム用基材や工程紙として満足しうる帯電防止性、光学特性、平滑性、耐熱性等を有する光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルに関する。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0006】
本発明は、帯電防止層を構成する物質と組成比、帯電防止層の膜厚を好適に限定することで、特に光学フィルム用基材や工程紙として満足しうる帯電防止性、光学特性、耐熱性等を有する光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。
・・・省略・・・
【0012】
かかる用途に用いられる場合、二軸延伸ポリエステルフィルム自体やそれを用いた各種加工時に塵埃が付着することは好ましくなく、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面には帯電防止層を設置する必要がある。帯電防止層の表面比抵抗は、10の13乗台Ω/□以下が好ましく、より好ましくは10の11乗台Ω/□、更に好ましくは10の9乗台Ω/□以下である。表面比抵抗は後述のとおり、帯電防止剤の種類、帯電防止層の膜厚、組成配合比などを本発明の範囲とすることで達成することができる。」
ウ 「【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
(実施例1)
実質的に添加外部粒子を含有しないb値が4.0のPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸フィルムを85℃に加熱して長手方向に3.2倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。このフィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、両面に後述の塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=75/25/5/2.5(固形質量部)で構成される帯電防止層形成用水分散液を塗布した。塗布された1軸延伸フィルムをクリップで把持して予熱ゾーンに導き、100℃で乾燥、引き続き連続的に120℃の加熱ゾーンで幅方向に3.4倍延伸し、続いて230℃の加熱ゾーンで20秒間熱処理を施し、160℃~60℃で幅方向に4%弛緩処理して結晶配向の完了した表1に示す帯電防止性二軸延伸PETフィルム(ベースの厚み100μm、帯電防止層の厚み50nm)を作成した。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、外観、取り扱い性を表1に示すが、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0036】
(実施例2)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B2/架橋剤C1/粒子D2=80/20/5/4(固形質量部)、帯電防止層の厚みを60nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0037】
(実施例3)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/塗液E1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D3=65/25/10/5/2.5(固形質量部)、帯電防止層の厚みを30nmとした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、若干接着性と帯電防止性が低く、薄いムラ感、薄い黄味感があったものの、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして適していた。
【0038】
(実施例4)
帯電防止層形成用水分散液を塗液A1/帯電防止剤B1/架橋剤C1/粒子D1=60/40/1/2.5(固形質量部)とした以外は実施例1と同様にした。得られた帯電防止性二軸延伸PETフィルムの特性、性能等を表1に示すが、ブロッキング開始温度が若干低く、薄いムラ感があったものの、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルムとして適していた。
・・・省略・・・
【0052】
[図:0001407813000004.jpg]
」
(2)甲B2発明
甲B2の【0012】、【0035】及び【0052】の記載から、甲B2の実施例1の二軸延伸ポリエステルフィルムは、両面に帯電防止層が設置され、帯電防止層は、膜厚50nm、表面比抵抗3.5×109である。
そうしてみると、甲B2には、実施例1の「二軸延伸ポリエステルフィルム」として、次の発明(以下「甲B2発明」という。)が記載されている。
「 二軸延伸ポリエステルフィルムの両面に、膜厚50nm、表面比抵抗3.5×109の帯電防止層を設置した、光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム。」
(3)本件特許発明11
ア 対比
本件特許発明11と甲B2発明を対比する。
(ア)光透過性基材
甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、光学用であるから、技術的にみて光透過性であるといえる。
そうしてみると、甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本件特許発明11の「光透過性基材」に相当する。
(イ)第1の帯電防止層及び第2の帯電防止層
甲B2発明は、「二軸延伸ポリエステルフィルム」の第1の面側に設けられた「帯電防止層」及び「二軸延伸ポリエステルフィルム」の第1の面側とは反対側の第2の面側に設けられた「帯電防止層」を具備するといえる。
これに対して、本件特許発明11において、「光透過性基材」のいずれの面を第1の面側とするか、第2の面側とするかは任意である。また、同様に、本件特許発明11において、「帯電防止層」のいずれを第1とするか第2とするかは任意である。
そうしてみると、甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」の第1の面側に設けられた「帯電防止層」は、本件特許発明11の「第1の帯電防止層」に相当し、甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本件特許発明11の「第1の帯電防止層」の「前記光透過性基材の第1の面側に設けられた」との要件を満たす。
また、甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」の第1の面側とは反対側に設けられた「帯電防止層」は、本件特許発明11の「第2の帯電防止層」に相当し、甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本件特許発明11の「第2の帯電防止層」の「前記光透過性基材の第1の面側とは反対側の面に設けられた」との要件を満たす。
さらに、甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルムの両面に」「設置した」、「帯電防止層」は、本件特許発明11の「第1の帯電防止層」及び「第2の帯電防止層」の「膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下である」との要件を満たす。
(ウ)光学フィルム
上記(ア)及び(イ)を総合すると、甲B2発明の「光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本件特許発明11の「光学フィルム」に相当する。
また、甲B2発明の「二軸延伸ポリエステルフィルムの両面に」「表面比抵抗3.5×109の帯電防止層を設置した」ものであるから、甲B2発明の「光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム」の表面及び裏面の表面比抵抗も「帯電防止層」の表面比抵抗である。
そうしてみると、甲B2発明の「光学用帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本件特許発明11の「光学フィルム」1012Ω/□以下であり」との要件を満たす。
イ 一致点及び相違点
上記アによると、本件特許発明11と甲B2発明は、
「 光学フィルムであって、
光透過性基材と、
前記光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層と、
前記光透過性基材の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層と、を備え、
前記光学フィルムの表面および裏面の表面抵抗値が、それぞれ1012Ω/□以下であり、
前記第1の帯電防止層および前記第2の帯電防止層の膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下である、光学フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B-4>
本件特許発明11は、「画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルム」であるのに対して、甲B2発明は、画像表示装置に用いられ、折り畳み可能であるかどうかが、一応明らかでない点。
<相違点B-5>
本件特許発明11は、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材であ」るのに対して、甲B2発明は、「二軸延伸ポリエステルフィルム」である点。
ウ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点B-5について検討する。
甲B2には、「帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム」(【請求項1】及び【0001】等)を前提とした発明が記載されているのであって、実施例においてもポリエステルフィルムが記載されていて、甲B2には、「帯電防止性二軸延伸ポリエステルフィルム」以外のフィルムを用いることは記載も示唆もない。また、甲B2発明に、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物からなる基材を用いることを伺わせる記載は、いずれの甲号証にもなく、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、上記相違点B-5は実質的な相違点である。また、たとえ当業者といえども、上記相違点B-5に係る本件特許発明11の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
エ 本件特許発明11についての小括
したがって、本件特許発明11は、甲B2発明であるとはいえず、また、他の相違点について検討するまでもなく、たとえ当業者といえども、本件特許発明11は、甲B2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件特許発明12~17、19及び20
本件特許発明12~17、19及び20は、本件特許発明11の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明12~17、19及び20も、本件特許発明11と同じ理由により、甲B2発明であるとはいえず、また、当業者であっても、甲B2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)本件特許発明23
ア 対比、一致点及び相違点
本件特許発明23と甲B2発明を対比すると、本件特許発明23と甲B2発明は、
「 光学フィルムであって、
光透過性基材と、
前記光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層と、前記光透過性基材の前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層と、を備え、
前記光学フィルムの表面および裏面の表面抵抗値が、それぞれ1012Ω/□以下であり、
前記第1の帯電防止層および前記第2の帯電防止層の膜厚が、それぞれ40nm以上90nm以下である、光学フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B-6>
本件特許発明23は、「画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルム」であるのに対して、甲B2発明は、画像表示装置に用いられ、折り畳み可能であるかどうかが、一応明らかでない点。
<相違点B-7>
本件特許発明23は、「前記光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が3mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない」のに対して、甲B2発明は、このように特定されていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点B-7について検討する。
甲B2には、上記相違点B-7に係る構成について、記載も示唆もない。甲B2発明において、上記相違点B-7に係る構成とすることを伺わせる甲号証は提示されておらず、また、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、たとえ当業者といえども、上記相違点B-7に係る本件特許発明23の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
ウ 本件特許発明23についての小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、たとえ当業者といえども、本件特許発明23は、甲B2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(6)他の実施例について
他の実施例を甲B2発明とした場合であっても同様である。
(7)小括
本件特許発明11~17、19、20及び23は、甲B2に記載された発明であるとはいえず、また、たとえ当業者といえども、甲B2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
4 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について甲C7を主引例とした場合
(1)本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20
ア 判断
甲C7における「ポリエステル基材」、「ハードコート層」及び「プライマー層」の組成及び厚さについての記載から、甲C7に記載された「光学積層体」が、本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20に係る「前記光学フィルムにおいて、前記機能層が内側となり、かつ前記光学フィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を1万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じない」構成(以下「構成A」という。)となる蓋然性が高いとはいえない。また、甲C7には、構成Aは、記載も示唆もされておらず、甲C7に記載された「光学積層体」において、構成Aを適用することを伺わせる甲号証も提示されておらず、「光学積層体」において、構成Aを適用することが周知技術であるともいえない。
そうしてみると、本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20と甲C7に記載された「光学積層体」とは、少なくとも構成Aで相違し、また、たとえ当業者といえども、甲C7に記載された「光学積層体」に基づいて構成Aとすることが容易に想到し得たとはいえない。
イ 異議申立人の主張
異議申立人Aは、令和5年9月6日提出の意見書14頁において、「甲C7の実施例1、2、11から把握される光学積層体は、訂正発明1で規定される折り畳み性を有する蓋然性が高いものである。・・・仮に相違するとしても、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。」と主張している。
また、異議申立人Cは、令和5年9月15日提出の意見書1~2頁において、「甲C7又は甲C8に記載の発明の評価に甲A1(甲第4号証)に記載の折り曲げ試験方法を適用することに困難性はない。」及び「甲C7又は甲C8に記載の発明は、層構成と第1及び第3の光学調整層に相当する層の厚みが訂正前の請求項1に係る発明と類似しているから、甲C7又は甲C8に記載の発明も訂正前の請求項9の発明特定事項を充足する蓋然性が高い。」と主張している。
しかしながら、上記2(3)ウ及び上記アで述べたとおりであり、異議申立人A及びCの上記主張は、採用できない。
(2)本件特許発明21及び22
甲C7に記載された「光学積層体」において、「ポリエステル基材」と「プライマー層」との間に光学調整層を設ける動機付けはない。また、甲C7に記載されたにおいて、「ポリエステル基材」と「プライマー層」との間に光学調整層を設けることを伺わせる甲号証は提示されておらず、また、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、本件特許発明21及び22と甲C7に記載された「光学積層体」とは、少なくとも「樹脂基材と前記第1の光学調整層の間に設けられ、かつ前記樹脂基材に隣接した第2の光学調整層」「を備え」た構成(以下「構成B」という。)の点で相違し、たとえ当業者といえども、構成Bとすることが容易に想到し得たとはいえない。
(3)小括
したがって、本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は、甲C7に記載された発明であるとはいえず、また、たとえ当業者といえども、甲C7に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
5 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について甲C8を主引例とした場合
(1)本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20
ア 判断
甲C8における「ポリエステルフィルム」、「ハードコート層」、「易接着層(C層)」及び「易接着層(D層)」の組成及び厚さについての記載から、甲C8に記載された「積層ポリエステルフィルム」が、構成Aとなる蓋然性が高いとはいえない。また、甲C8には、構成Aは、記載も示唆もされておらず、甲C8に記載された「積層ポリエステルフィルム」において、構成Aを適用することを伺わせる甲号証も提示されておらず、構成Aを適用することが周知技術であるともいえない。
そうしてみると、本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20と甲C8に記載された「積層ポリエステルフィルム」とは、少なくとも構成Aで相違し、また、たとえ当業者といえども、甲C8に記載された「積層ポリエステルフィルム」に基づいて構成Aとすることが容易に想到し得たとはいえない。
イ 異議申立人の主張
異議申立人Aは、令和5年9月6日提出の意見書18頁において、「甲C8の実施例1~4に開示される積層ポリエステルフィルム」は、訂正発明1で規定される折り畳み性を有する蓋然性が高いものである。・・・仮に相違するとしても、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない。」と主張している。
また、異議申立人Cは、令和5年9月15日提出の意見書1~2頁において、「甲C7又は甲C8に記載の発明の評価に甲A1(甲第4号証)に記載の折り曲げ試験方法を適用することに困難性はない。」及び「甲C7又は甲C8に記載の発明は、層構成と第1及び第3の光学調整層に相当する層の厚みが訂正前の請求項1に係る発明と類似しているから、甲C7又は甲C8に記載の発明も訂正前の請求項9の発明特定事項を充足する蓋然性が高い。」と主張している。
しかしながら、上記2(3)ウ及び上記アで述べたとおりであり、異議申立人A及びCの上記主張は、採用できない。
(2)本件特許発明21及び22
甲C8に記載された「積層ポリエステルフィルム」において、「ポリエステルフィルム」と「易接着層(C層)」との間に光学調整層を設ける動機付けはない。また、甲C8に記載されたにおいて、「ポリエステルフィルム」と「易接着層(C層)」との間に光学調整層を設けることを伺わせる甲号証は提示されておらず、また、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、本件特許発明21及び22と甲C8に記載された「積層ポリエステルフィルム」とは、少なくとも構成Bの点で相違し、たとえ当業者といえども、構成Bとすることが容易に想到し得たとはいえない。
(3)小括
したがって、本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は、甲C8に記載された発明であるとはいえず、また、たとえ当業者といえども、甲C8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 取消しの理由を通知しなかった異議申立人の主張の概要
令和5年5月19日付け取消理由通知書により特許権者に通知しなかった異議申立人の主張概要は、次のとおりのものである。なお、異議申立書における本件特許の請求項に係る発明は、いずれも本件訂正前のものである。
1 異議申立人Aの主張の概要
(1)異議申立書おける主張の概要
(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
記
「折り畳み可能な光学フィルム」、「第3の光学調整層」及び「折り畳み試験の合否」が明確でないので、本件特許の請求項1~20に係る発明は、明確でない。
(2)令和5年9月6日提出の意見書における主張の概要
(実施可能要件)本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法36条4項1号の規定を満たしていない。
(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
記
本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は、「第1の光学調整層の屈折率」、「層間の屈折率差」及び「折り畳み性」について、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているので、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、また、本件特許発明1、2、4~8、10、19~22は、「第1の光学調整層の屈折率」、「層間の屈折率差」及び「折り畳み性」について、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているので、発明の詳細な説明に記載したものでない。
2 異議申立人Bの主張の概要
(進歩性)本件特許の請求項に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(実施可能要件)本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項に係る特許を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法36条4項1号の規定を満たしていない。
(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
記
(1)進歩性
本件特許の請求項1~10、19及び20に係る発明は、甲B7に記載された発明及び甲3、5、8~10に記載された事項のいずれかを適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)実施可能要件
本件特許の請求項1及び11における「折り畳み可能な」、本件特許の請求項6における「剪断貯蔵弾性率」及び「剪断損失弾性率」、及び本件特許の請求項9及び10における「折り畳み試験」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項1~20に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
(3)サポート要件
本件特許の請求項1及び11における「樹脂基材」、本件特許の請求項1における「機能層」の厚み、及び本件特許の請求項1には「樹脂層」が記載されていないことについて、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているので、本件特許の請求項1~20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
3 異議申立人Cの主張の概要
(1)異議申立書における主張の概要
(進歩性)本件特許の請求項に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
記
ア 進歩性
本件特許の請求項1~3、8~10、19及び20に係る発明は、甲C1、甲C5及び甲C6のいずれかに記載された発明及び甲C1~5のいずれかに記載された事項を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件特許の請求項11~15及び17~20に係る発明は、甲C1及び甲C5~8のいずれかに記載された発明及び甲C1~5のいずれかに記載された事項を適用して当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ サポート要件
本件特許の請求項6における「剪断貯蔵弾性率」及び「剪断損失弾性率」並びに請求項9及び10における「折り畳み試験」について、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるので、本件特許の請求項6~10、19及び20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)令和5年9月15日提出の意見書における主張の概要
(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
記
本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20は、「樹脂基材」の材質や厚みが記載されていないために、発明の詳細な説明に記載したものでない。
第8 取消しの理由を通知しなかった異議申立人の主張についての判断
1 異議申立人Aの主張
(1)異議申立書における明確性要件について
本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22は、「画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルム」であるところ、折り畳み可能であること及び折り畳みの合否は、画像表示装置として実用可能な程度であるかどうかであると理解できる。また、本件特許発明の「第3の光学調整層」について、本件特許明細書に記載されている、光透過率を向上する機能(【0162】)や色味を調整する機能(【0165】)を有すればよいことが理解できる。
そうしてみると、本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22は、明確である。
(2)令和5年9月6日提出の意見書におけるサポート要件について
本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22の課題は、「干渉縞が発生しにくい折り畳み可能な光学フィルム、これを備えた画像表示装置を提供することを目的とする」(本件特許明細書の【0007】)ものである。そして、本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22は、「画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルム」であるところ、「樹脂基材」、「機能層」、「第1の光学調整層」及び「第3の光学調整層」を具備するものである。
これに対して、本件特許明細書には、「樹脂基材」については【0061】~【0113】に、「機能層」については【0114】~【0150】に、「第1の光学調整層」については【0151】~【0155】、及び「第3の光学調整層」については【0162】~【0166】に、それぞれ記載されている。また、本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22対応する実施例としては、実施例A2、A23及びA24として記載されている。
そうしてみると、当業者であれば、本件特許明細書の上記記載に基づいて、実施例A2、A23及びA24から各層の屈折率や膜厚を調整することなどして本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22に拡張ないし一般化することは可能である。
したがって、本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は、発明の詳細な説明に記載したものである。
2 異議申立人Bの主張
(1)進歩性について
甲B7の緩衝層は、その文言どおり緩衝層であって、干渉等の光学的に調整する機能を有するとはいえず、甲B7には、本件特許発明1、2、4~8、10、19~22に係る「前記樹脂基材と前記機能層の間に設けられ、かつ前記機能層に隣接した第1の光学調整層」が記載されていないので、主引例たる適格性を有しない。
そうしてみると、本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は、たとえ当業者といえども、甲B7に記載された発明及び甲3、5及び8~10に記載された事項のいずれかを適用して当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)実施可能要件について
本件特許明細書には、「樹脂基材」については【0061】~【0113】に、「機能層」については【0114】~【0150】に、「第1の光学調整層」については【0151】~【0155】、及び「第3の光学調整層」については【0162】~【0166】に、それぞれ記載されている。また、本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22対応する実施例としては、実施例A2、A23及びA24として記載されている。
そうしてみると、当業者であれば、本件特許明細書の上記記載に基づいて、実施例A2、A23及びA24から各層の屈折率や膜厚を調整することなどして、本件特許発明の「折り畳み可能な光学フィルム」であって、本件特許発明1、2、4~8、10、19、20及び23の「折り畳み試験」の要件を満たすようにすることは、実施できるものである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
(3)サポート要件について
本件特許発明の課題は、「折り畳み可能な光学フィルム、これを備えた画像表示装置を提供することを目的とする」(本件特許明細書の【0007】)ものである。そして、本件特許発明は、「画像表示装置に用いられる折り畳み可能な光学フィルム」であるところ、本件特許発明1、2、4~8、10及び19~22は「樹脂基材」及び「機能層」を具備するものであり、本件特許発明11~17、19、20及び23は「光透過性基材」及び「帯電防止層」を具備するものである。
これに対して、本件特許明細書には、「樹脂基材」については【0061】~【0113】に、「機能層」については【0114】~【0150】に、「光透過性基材」については【0234】~【0235】、及び「帯電防止層」については【0236】~【0256】に、それぞれ記載されている。また、本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22に対応する実施例としては、実施例A2、A23及びA24として記載され、本件特許発明11~17、19、20及び23に対応する実施例としては、実施例B1~B3として記載されている。
そうしてみると、当業者であれば、本件特許明細書の上記記載に基づいて、実施例A2、A23及びA24から各層の屈折率や膜厚を調整するなどして本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22にまで拡張ないし一般化することは可能であり、また、実施例B1~B3から各層の屈折率や膜厚を調整するなどして本件特許発明11~17、19、20及び23にまで拡張ないし一般化することは可能である。
したがって、本件特許発明1、2、4~8、10~17及び19~23は、発明の詳細な説明に記載したものである。
3 異議申立人Cの主張
(1)異議申立書における進歩性について
ア 本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22
甲C1、甲C5及び甲C6のいずれにも、構成A及び構成Bについて記載も示唆もない。そして、甲C1、甲C5及び甲C6のいずれかに記載された発明において、構成A及び構成Bを適用することを伺わせることはいずれの甲号証にも記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、本件特許発明1~2、4~8、10及び19~22は、たとえ当業者といえども、甲C1、甲C5及び甲C6のいずれかに記載された発明並びに甲C1~5のいずれかに記載された事項を適用して容易に発明をすることができたとはいえない。
イ 本件特許発明11~17、19、20及び23
甲C1の【0058】に、甲C7の【0042】に、甲C8の【0070】に、プライマー層や易接着層の成分として「帯電防止剤」が例示されていることにとどまる。また、甲C5には、反射防止フィルムの表面に帯電防止性を付与するために高屈折率層に帯電防止性を付与したものが記載され(【0050】及び【0057】等)、甲C6には、帯電防止性ハードコートフィルムが記載されている(【0011】等)。しかしながら、光透過性基材の第1の面側に設けられた第1の帯電防止層及び光透過性基材の第1の面側とは反対側の第2の面側に設けられた第2の帯電防止層を備える構成は、甲C1及び甲C5~8のいずれにも記載されていない。
そうしてみると、甲C1及び甲C6~8は主引例たる適格性を有するとはいえない。
したがって、本件特許発明11~17、19、20及び23は、たとえ当業者といえども、甲C1及び甲C5~8のいずれかに記載された発明並びに甲C1~5のいずれかに記載された事項を適用して容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)異議申立書におけるサポート要件について
本件特許明細書には、「樹脂基材」については【0061】~【0113】に、「機能層」については【0114】~【0150】に、「光学調整層」については【0151】~【0188】に、及び「樹脂層」については【0198】~【0211】に、それぞれ記載されている。また、本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20に対応する実施例としては、実施例A2、A23及びA24として記載されている。
そうしてみると、当業者であれば、本件特許明細書の上記記載に基づいて、実施例A2、A23及びA24から各層の屈折率や膜厚を調整するなどして本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20に拡張ないし一般化することは可能である。
したがって、本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)令和5年9月15日提出の意見書におけるサポート要件について
上記(2)で示した理由と同様の理由により、本件特許発明1、2、4~8、10、19及び20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
第9 むすび
本件特許1、2、4~8、10~17及び19~23は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1、2、4~8、10~17及び19~23を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求により、請求項3、9及び18は削除されたから、本件特許3、9及び18についての特許異議の申立ての対象は存在しないこととなった。
したがって、本件特許3、9及び18についての特許異議の申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700100