特許無効審判
2022-800069
照明装置
- 審判番号
- 2022-800069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2017-228865
- 登録番号
- 6813851
- 請求日
- 2022年07月27日
- 審決日
- 2024年02月05日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニック 株式会社
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 【請求人代理人】日野 康彦
- 【請求人代理人】速見 禎祥
- 【被請求人】井澤 佑斗
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1113.113-ZDA(H05B) / P1113.121-ZDA(H05B) / P1113.851-ZDA(H05B) / P1113.857-ZDA(H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法64条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第134条の2第1項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6813851号発明「照明装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6813851号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第6813851号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。
特許第6813851号の請求項2に記載された発明についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6813851号(以下「本件特許」という。)は、平成29年11月29日の出願であって、令和2年12月22日に特許権の設定登録されたものである。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 7月27日 本件無効審判請求
同年 9月 1日差出 被請求人より審判事件答弁書の提出
同年12月 6日付け 審理事項通知
令和 5年 1月26日 請求人より口頭審理陳述要領書の提出
同年 2月 7日差出 被請求人より口頭審理陳述要領書の提出
同年 2月16日 口頭審理
同年 3月30日付け 審決の予告
同年 5月29日差出 被請求人より訂正請求書・答弁書の提出
同年 7月14日 請求人より審判事件弁駁書の提出
第2 訂正について
1 訂正事項
令和5年5月29日差出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる」と記載されているのを、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「覚醒度合生体情報取得部は、
デスクワーク作業効率の低下、運転中の居眠、疲労による運動能力の低下、対話における適切な言葉の選択効率の低下、のいずれか一以上を測定する効率・能率測定手段を有し、
調節部は測定された値に応じて発光量比を変化させる効率・能率依存発光量比調節手段を有する請求項1に記載の照明装置若しくはディスプレイ。」と記載されているのを、
「赤色光を発光する赤色発光手段と、
青色光を発光する青色発光手段と、
緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、
人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、
覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部と、
を有し、
覚醒度合生体情報取得部は、
デスクワーク作業効率の低下、運転中の居眠、疲労による運動能力の低下、対話における適切な言葉の選択効率の低下、のいずれか一以上を測定する効率・能率測定手段を有し、
調節部は測定された値に応じて発光量比を変化させる効率・能率依存発光量比調節手段を有する照明装置若しくはディスプレイ。」に訂正する。
2 訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の「前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる」事項について、「前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」と具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)には、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
メラトニンは動物、植物が有するホルモンのひとつであり、メラトニンの分泌が睡眠促進などの生体リズムの調整に関与している。そして、ヒトにおいてメラトニンは脳に存在する内分泌器である松果体により生成させる。メラトニンの分泌は日中の日射しを受けることで抑制され、暗くなるにつれて分泌量が増える。分泌されるメラトニンが脈拍、体温、血圧などを低下させることで睡眠が促される。
【0003】
このようにメラトニンの分泌は光の影響を受けるのであるが、とくに波長が約460 nmから480nmの主に青色の光によってメラトニンの分泌が抑制されることが知られている。したがって、この波長の青色光を夕方以降も受けてメラトニンの分泌が抑制されることで、夜間になっても眠気が誘発されず睡眠不足や睡眠障害をもたらすおそれがある。また、単に睡眠不足や睡眠障害をもたらすだけでなく、体内時計の周期を狂わすことで、健康などに諸々の悪影響を及ぼしかねない。とくに現代人においては夜間においても照明装置が発する光を浴びながら生活することが常であり、体内時計の乱調のリスクが日常的に存在していると言える。
【0004】
メラトニンの分泌に青色の光が影響を及ぼすことに鑑み、体内リズムを好ましく調整するための技術として、例えば、青色発光体の発光強度を調整することで使用者の生体リズムを調整して、かつ色温度を略一定に保ち白色光を形成する光源に係る技術がある(特許文献1)。」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術は光源の色温度を略一定にすることで、色温度の変化によりもたらされる使用者の違和感を防止することができるというメリットがある。しかし、メラトニンの分泌を促すために青色発光体の発光強度を弱めつつ色温度を略一定にしようとする場合、青色発光体の発光強度のみならず緑色発光体及び赤色発光体の発光強度をも弱めることになるため光源による明るさも低下することになる。したがって、明るさを維持することが求められる照明装置に係る技術を適用することはできない。」
「【0009】
また、赤色光を発光する赤色発光手段と、青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部と、を有する照明装置を提供する。」
「【0044】
本実施形態における調節部0203は、覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる機能を果たす。例えば、取得した生体情報に基づき覚醒度合の低下が認められた場合には、青色発光手段の発光量比を高めることで覚醒を促すといった具合である。」
「【0048】
上述の通り、実施形態1及び2にて説明した本照明装置は計時や覚醒度合に関する生体情報に応じて赤色、青色、緑色の三つの発光手段の発光量の総和を一定にしたままそれぞれの発光量比を変化させることが可能である。したがって、時刻に応じて変化する発光量比を適宜設定したり、照射を受ける者の生体情報に応じて発光量比を調節するなどにより、本照明装置による光の照射を受ける対象に対して様々影響を及ぼすことが可能である。以下に例示する。」
本件特許の解決しようとする課題は、段落【0006】によれば、特許文献1に開示されている技術は、メラトニンの分泌を促すために青色発光体の発光強度を弱めつつ色温度を略一定にしようとする場合、明るさも低下することになることから、明るさを維持することが求められる照明装置に係る技術を適用することはできないというものである。そして、当該課題を解決するため、本件特許は、段落【0009】に記載されるように「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部」との構成を有するものである。そして、この構成において、覚醒度合に関する生体情報に応じてどの発光手段の発光量を増加させるかは特段の特定がないところ、赤色、青色、緑色のうちから任意の発光手段の発光量比を増加させるものを含んでいるものといえる。
ここで、段落【0002】~【0004】には、青色の光によってメラトニンの分泌が抑制されることが示され、段落【0006】からは、従来技術においては、メラトニンの分泌を促すために青色発光体の発光強度を弱めることが読み取れるものの、本件特許が、メラトニンの分泌を促すことや、メラトニンの分泌量を調整すること自体を目的とした発明でないことは、段落【0006】、【0009】の記載から明らかである。
そして、段落【0044】には、覚醒度合の低下が認められた場合には、青色発光手段の発光量比を高めることで覚醒を促すことが記載されているものの、段落【0048】には、「照射を受ける者の生体情報に応じて発光量比を調節することなどにより、本照明装置による光の照射を受ける対象に対して様々影響を及ぼすことが可能である」と記載されており、後者の記載からは、それぞれの発光手段の発光量比を変化させることは、照射対象の覚醒を促すことを目的とするものに限られるものではなく、また、具体的に、青色発光手段の発光量比を高めることに限られるものでもないものと理解できる。
そうすると、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部」として、赤色発光手段、青色発光手段、緑色発光手段のうちから、青色発光手段、緑色発光手段を採り上げて、「青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」とすることは、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであって、新規事項を追加するものとはいえない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、「前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる」という発明特定事項を、より具体的に「前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定としたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」と限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
また、訂正事項2は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは明らかである。
(3)請求人の主張について
ア 請求人の主張の概要
請求人は、訂正請求に関して、令和5年7月14日付け審判事件弁駁書の6.(1)において、概ね以下のように主張する。
訂正事項1における「青色発光手段の発光量比を増加させる」について、被請求人は、根拠として段落【0053】を挙げているけれども、同段落には、野菜や穀類の花芽の形成を促進させるために青色発光手段の発光量比を増加させることが開示されているにすぎず、「人の覚醒度合に関する生体情報に応じて」青色発光手段の発光量比を増加させることについては何ら記載されていない。
また、訂正事項1における「緑色発光手段の発光量比を増加させる」について、被請求人は、根拠として段落【0033】を挙げているけれども、訂正事項1は緑色発光手段のみの発光量比を増加させることも含まれるところ、同段落に記載されているのは、「赤色と緑色」による発光量比を70パーセントから90パーセントまで漸増するように発光量比を変化させることであり、緑色のみの発光量比を変化させることについては開示されていない。また、同段落には、時間に応じて発光手段の発光量比を変化させることが記載されているにすぎず、「人の覚醒度合に関する生体情報に応じて」青色発光手段の発光量比を増加させることについては何ら記載されていない。
以上より、訂正事項1による請求項1の訂正は、特許明細書等の範囲内においてしたものとはいえない。
イ 当審の判断
訂正事項1による訂正が、特許明細書等の範囲内においてしたものであることは、上記(1)イで検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
3 一群の請求項
本件訂正前の請求項2は、本件訂正前の請求項1を引用しているところ、請求項1、2は、一群の請求項であり、訂正事項1、2に係る請求項1、2についての訂正は、当該一群の請求項1、2に対して請求されたものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
赤色光を発光する赤色発光手段と、
青色光を発光する青色発光手段と、
緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、
人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、
覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるための調節部と、
を有する照明装置若しくはディスプレイ。
【請求項2】
赤色光を発光する赤色発光手段と、
青色光を発光する青色発光手段と、
緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、
人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、
覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部と、
を有し、
覚醒度合生体情報取得部は、
デスクワーク作業効率の低下、運転中の居眠、疲労による運動能力の低下、対話における適切な言葉の選択効率の低下、のいずれか一以上を測定する効率・能率測定手段を有し、
調節部は測定された値に応じて発光量比を変化させる効率・能率依存発光量比調節手段を有する照明装置若しくはディスプレイ。」
第4 請求人の主張の概要
1 請求人は、「特許第6813851号発明の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、甲第1号証~甲第5号証を添付した令和4年7月27日付けの審判請求書、甲第6号証~甲第12号証を添付した令和5年1月26日付けの口頭審理陳述要領書、令和5年7月14日付けの審判事件弁駁書を提出し、以下の無効理由1~11により、本件発明1及び2に係る特許は、無効とすべきものであると主張する(以下、甲第1号証~甲第12号証をそれぞれ「甲1」~「甲12」という。)。
(1)甲1を主引用文献とする無効理由
ア 本件発明1に対して
無効理由1:本件発明1は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、本件発明1に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由2:本件発明1は、甲1に記載された発明から容易に発明することができたものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由3:本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~甲4に示される周知技術から容易に発明することができたものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
イ 本件発明2に対して
無効理由4:本件発明2は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、本件発明2に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由5:本件発明2は、甲1に記載された発明から容易に発明することができたものであり、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由6:本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲1~甲4に示される周知技術から容易に発明することができたものであり、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由7:本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲5に記載された技術的事項から容易に発明することができたものであり、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)甲2を主引用文献とする無効理由
ア 本件発明1に対して
無効理由8:本件発明1は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、本件発明1に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由9:本件発明1は、甲2に記載された発明から容易に発明することができたものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由10:本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1~甲4に示される周知技術から容易に発明することができたものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
イ 本件発明2に対して
無効理由11:本件発明2は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項又は甲5に記載された技術的事項から容易に発明することができたものであり、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
2 請求人が証拠方法として提出した甲1~甲12は、以下のとおりである。
甲1 :特開2009-266484号公報
甲2 :国際公開第2010/123031号
甲3 :特開2007-294143号公報
甲4 :特開2006-252944号公報
甲5 :特開2017-158811号公報
甲6 :特開2016-213364号公報
甲7 :特開2007-147621号公報
甲8 :特開2013-257982号公報
甲9 :特開2016-96935号公報
甲10:特開2008-186914号公報
甲11:特開2014-220312号公報
甲12:特開2012-89367号公報
第5 被請求人の主張の概要
被請求人は、
「一、 特許6813851号(以下「本件特許」という)の登録を維持する旨の審決を求める。
二、 本件審判の審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」
とし、令和4年9月1日差出の審判事件答弁書、乙第1号証を添付した令和5年2月7日差出の口頭審理陳述要領書、令和5年5月29日差出の訂正請求書及び答弁書を提出し、請求人の主張する上記無効理由1~11は、いずれも理由がない旨主張する。
被請求人が証拠方法として提出した乙第1号証(以下「乙1」という。)は、以下のとおりである。
乙1:ウシオ電機株式会社の公表するホームページの「光量」の項目
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_ka/quantity_of_light.html
第6 各甲号証の記載事項等
1 甲1
(1)記載事項
甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【背景技術】
【0002】
人の代表的な生体リズムである睡眠と覚醒のリズムには、脳の松果体から分泌されるホルモンであるメラトニンの分泌が大きく寄与していることが知られている。メラトニンは、一般に、夜間の就寝2時間位前から睡眠前半の時間帯に大量に分泌され、この分泌により体温の低下及び入眠が促されると考えられている。このメラトニンの分泌は光刺激が人の網膜上の光受容体に与えられることにより抑制されることが知られており、例えば、非特許文献1にて報告されている(図29参照)。図29は、夜間の受光によるメラトニンの分泌抑制の波長特性を示す図である。図29の横軸は波長(nm)を、縦軸はメラトニンの分泌抑制の相対感度を夫々示しており、図に示す如く、特に464nm近傍の波長域の光がメラトニンの分泌抑制に対して支配的であることがわかる。
【0003】
近年、住宅、オフィス、病院等の室内の照明に用いられる照明装置として、明るく周囲を照らす視認性のみではなく、このような光が生体リズムに与える影響を考慮した生体リズム調整の機能を有することが望まれており、464nm近傍の波長域の光を発するように構成された照明装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された照明装置は、メラトニンの分泌を抑制すべく、相関色温度が6000K以上であり、また床面での平均照度が2000ルクス以上である光を照射することが可能なように構成してある。このように高相関色温度、換言すると464nm近傍の波長域の分光成分を多く含む高照度の照明光を起床後の被照射者に照射することにより、メラトニンの分泌抑制の効果を高くすることができ、覚醒レベルを昼間の安定した状態に早く変移させることができる。」
「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人の瞼の光透過率は光の波長により異なっており、例えば非特許文献2の論文にて報告されている(図30参照)。図30は、瞼の光透過率の波長特性を示す図である。図30の横軸は波長(nm)を、縦軸は瞼の光透過率(%)を夫々示しており、図中の黒菱形は新生児の瞼の光透過率を、白抜き四角は成人の瞼の光透過率を夫々示している。図30により580nm以下の波長域の光は瞼をほとんど透過しないことがわかる。
【0006】
特許文献1の照明装置のようにメラトニンの分泌抑制の効果が高い464nm近傍の波長域の光を用いても、被照射者が閉眼状態にある場合は、図30に示すように瞼の光透過率が低いため、瞼を透過する光量が少なく被照射者の網膜上の光受容体に光刺激を殆ど与えることができないから、メラトニンの分泌抑制の効果が十分得られないという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、被照射者の眼の開閉状態の如何に関わらず、被照射者に光刺激を付与して被照射者の覚醒を効果的に促すことができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る照明装置は、複数の光源を備える照明装置において、前記複数の光源は、580nm以上の波長域である第1の波長域の分光成分を有する光を発する第1の光源と、580nm以下の波長域である第2の波長域の分光成分を有する光を発する第2の光源とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、580nm以上の波長域である第1の波長域の分光成分を有する光を発する第1の光源と、580nm以下の波長域である第2の波長域の分光成分を有する光を発する第2の光源とを備えており、瞼の光透過率が580nm以下の波長域において低く、580nm以上の波長域において高くなるから、例えば、被照射者が閉眼状態にあるときに瞼の光透過率の高い波長域の光を発する第1の光源を点灯させ、開眼状態にあるときにメラトニンの分泌抑制の効果の高い波長域の光を発する第2の光源を点灯させることにより、被照射者の眼の開閉状態の如何に関わらず、被照射者に光刺激を付与して被照射者の覚醒を効果的に促すことが可能となる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る照明装置10の構成を示す模式図であり、図2は、本実施の形態に係る照明装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0044】
図中1は、光源部であり、光源部1は、閉眼状態の被照射者に光刺激を与えるべく、第1の波長域の分光成分を有する光を発する第1の光源11と、開眼状態の被照射者に光刺激を与えるべく、前記第1の波長域と異なる第2の波長域の分光成分を有する光を発する第2の光源12と、第1の光源11及び第2の光源12を支持する板状の支持部材13とを備えている。なお、これら第1の光源11及び第2の光源12は、例えば、LED素子と、該LED素子を封止し、蛍光体が分散された封止樹脂と、入力端子及び出力端子とを備えてなる表面実装型LEDである。
【0045】
まず、第1の光源11及び第2の光源12の選定の考え方について説明する。瞼の光透過率は、前述した非特許文献2に記載されている図30に示す波長特性を有する。例えば、成人の瞼の光透過率が、580nm以下の波長域において約3%以下である一方、580nm以上の波長域では波長に比例して単調増加し、波長700nmにおいて14.5%であるという結果が得られている。
【0046】
この図からわかるように、人の瞼の光透過率が低い波長域は580nm以下であるから、閉眼状態の被照射者に光刺激を与える第1の光源11として、580nm以下の波長域である第2波長域(図30中に(2)にて示す波長域)の分光成分ができるだけ含まれていない、580nm以上の波長域である第1波長域(図30中に(1)にて示す波長域)の分光成分が多く含まれる光を発する光源を用いることが好ましい。また、580nm以上の波長域では波長に比例して単調増加していることから700nm近傍(例えば、650~750nm)の波長域の分光成分が多く含まれる光を発する光源を第1の光源11として用いることがより望ましい。
【0047】
このような第1の光源11に好適に用いることができる光源の例を図3及び図4に示す。図3及び図4は、LEDの発光スペクトルを示す図であり、横軸に波長(nm)を、縦軸に相対強度を夫々示している。図3に示す光源は、ピーク波長が700nmの光を発するLEDであり、580nm以上の波長の分光成分のみを含む光を発する。図4に示す光源は、405nm紫光源と、3波長蛍光材料とを備えてなる白色LEDであり、ピーク波長が660nm近傍の光を発する。」
「【0053】
以上述べた如く、第1の光源11として、700nm近傍の波長域の分光成分が多く含まれる光を発する光源、又は580~630nmの波長域の分光成分が多く含まれる光を発する光源であることが望ましい。このような光源を第1の光源11として用いることにより、光源からの光は閉眼状態の被照射者の瞼を透過して網膜上の光受容体に光刺激を与えることができ、被照射者の開眼を促して被照射者の眼を覚まさせることができる。
【0054】
一方、開眼状態の被照射者に光刺激を与える第2の光源12として、前述した如く、第1の波長域と異なる第2の波長域、即ち580nm以下の波長域の分光成分を有する光を発する光源が好ましく、開眼状態の被照射者に効果的に光刺激を与えるという観点から、メラトニンの分泌抑制の効果が高い波長域の分光成分を有する光を発する光源がより望ましい。メラトニンの分泌抑制の波長特性は、前述した非特許文献1に記載の図29の如く、464nmの波長のときにメラトニンの分泌抑制の相対感度が最大になることから、開眼状態の被照射者への光刺激を与える第2の光源12として、464nm近傍(例えば、430~490nm)の波長域に分光成分が多く含まれる光源が好適である。
【0055】
このような第2の光源12に用いることができる光源の例を図8に示す。図8は、LEDの発光スペクトルを示す図であり、横軸に波長(nm)を、縦軸に相対強度を夫々示している。図8に示す光源は、青色LEDと、蛍光材料とを備えてなる疑似白色LEDであり、638nm以上の波長域の分光成分をほとんど含まず、ピーク波長が463nm近傍の光を発する光源であり、第2の光源12として好適に用いることができる。前述した図7に示す7種類のLEDのうち、発光色がロイヤルブルー、ブルー、シアン及びグリーンのLEDは、580nm以下の波長域に分光成分が多く含まれる光源であり、第2の光源12として用いることができる。特に、発光色がブルー及びロイヤルブルーのLEDは、メラトニンの分泌抑制の相対感度が最大になる464nm近傍の波長域に分光成分が多く含まれる光源であり、第2の光源12として好適に用いることができる。
【0056】
以上述べた如く、第2の光源12として、464nm近傍の波長域の分光成分が多く含まれる光を発する光源であることが望ましい。このような光源を第2の光源12として用いることにより、光源からの光は開眼状態の被照射者の網膜上の光受容体に光刺激を与えてメラトニンの分泌を効果的に抑制することができ、被照射者を速やかに覚醒させることができる。」
「【0059】
また、光源制御部3には、被照射者の眼の開閉状態を検出する検出器6が接続してあり、検出器6は、光源制御部3による動作指令信号に応じて被照射者の眼の開閉状態を検出し、検出された被照射者の眼の開閉状態を光源制御部3に与える。検出器6は、被照射者を撮影する撮像部61と、該撮像部61を制御する撮像制御部62と、撮像部61により撮影された画像を解析する画像信号解析部63とを備えてなる。光源制御部3は、信号受信部4に与えられた入力装置5の検出器動作スイッチからの入力信号がオン信号である場合、撮像制御部62に撮像開始の動作指令信号を与える。撮像制御部62は、与えられた動作指令信号に応じて撮像部61を動作させる。」
「【0062】
画像信号解析部63は、撮像制御部62により与えられた画像情報に基づいて、顔画像をエッジ処理等を行うことにより被照射者の眼の特徴を抽出して、必要に応じて被照射者の人数及び/又は顔の向き等を解析したのちに、被照射者の上瞼及び下瞼間の間隔、眼の瞳の面積、又は眼の面積比(=眼の上半分の面積/眼の全体面積)等により開眼の度合いを求める。この開眼の度合いを求める際に、まばたき動作による誤差を低減するため、画像情報に時間変化を含めた動画情報を用いて情報の平均化等を行うことにより開眼の度合いを求める方がより好ましい。画像信号解析部63は、求めた開眼の度合いを用いて被照射者が開眼状態か閉眼状態かを判定し、判定された結果を、必要に応じて変調等を行ったのち、センサ信号として無線又は有線により光源制御部3に与える。」
「【0064】
光源制御部3は、入力装置5により与えられた入力信号及び画像信号解析部63により与えられたセンサ信号に基づいて光量情報記憶部7により読込まれた第1の光源11及び第2の光源12夫々の光量情報の初期設定値を補正する。光源制御部3は、初期設定値又は補正された光量情報の設定値に基づいて光源調光用信号を生成し、生成された光源調光用信号に応じて第1の光源11及び第2の光源12夫々を駆動制御する。第1の光源11及び第2の光源12は光源調光用信号に応じた輝度にて夫々発光する。光源調光用信号は、光源として用いられているLEDの電流-輝度特性に従った電流信号であり、例えば、アナログ電流信号、パルス幅変調信号等の信号である。」
「【0074】
図10は、車両に搭載された本実施の形態に係る照明装置10の配置構成を示す模式図である。被照射者が一人のみであり、その被照射者が覚醒状態を維持したい場合への適用例である。被照射者の眼の開閉状態を示す情報を検出する検出器6は、撮像部61により運転者の顔面部を撮影することが可能なように、図示しない車両の運転席の前方に設けられた車載機器操作パネル100の上部の適宜の位置に設けてある。光源部1は、車両用操舵装置のステアリングホイール101のハブ101aに設けてあり、光源部1から出射される光が運転者の顔面に照射されるように適宜角度調整がなされている。入力装置5は、ステアリングホイール101の円環状のリム101bに設けてある。
【0075】
図11は、車両に搭載された本実施の形態に係る照明装置10の点灯及び光量の制御過程を示すタイミングチャートの一例である。図11(a)は第1の光源11を、図11(b)は第2の光源12を、図11(c)は第1の光源11及び第2の光源12からなる光源部1を夫々示しており、図11(a)(b)(c)の横軸は時刻を、縦軸は光量を夫々示している。光源制御部3は、入力装置5により与えられた電源スイッチからの入力信号が消灯であるとき、第1の光源11及び第2の光源12を消灯し、電源スイッチからの入力信号が点灯であるとき、第1の光源11及び第2の光源12を光源調光用信号に応じて点灯する。光源制御部3に画像信号解析部63により与えられるセンサ信号は、被照射者である運転者が閉眼状態又は閉眼状態であることを示す信号である。光源制御部3は、センサ信号が閉眼状態を示す信号であるとき、第2の光源12の光量を一定に保ちつつ、第1の光源11の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させるようにしてある。
【0076】
以上のように照明装置10の点灯制御を行うことにより、被照射者である運転者が閉眼状態にあるときに、瞼の光透過率の高い光を発する第1の光源11の光量を増加させているから、瞼を透過して閉眼状態の運転者の網膜上の光受容体に付与される光刺激量が多くなる。この結果、閉眼状態の運転者は、眼を閉じた状態においても光刺激を感じてしまうため、該光刺激により開眼状態へと誘導されることになり、閉眼状態の運転者の開眼を効果的に促すことができる。第2の光源12の光量を一定に保持しており、運転者が閉眼状態になったときに、第1の光源11及び第2の光源12両方の光量を増加するよりも低消費電力にて、効率よく開眼を促すことができる。
【0077】
図12は、会議室内に設置された本実施の形態に係る照明装置10の配置構成を示す模式図である。被照射者が複数(被照射者1、被照射者2、被照射者3)おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合への適用例である。被照射者の眼の開閉状態を示す情報を検出する検出器6は、会議室のテーブル102の天板上面の略中央に設けてある。撮像部61により複数の被照射者全員の少なくとも顔面部を撮像すべく、撮像部61は、魚眼レンズのような広角レンズを用いた光学部材を備えていることが好ましい。なお、必要に応じて複数の撮像部を適宜配置するように構成してもよい。光源部1は、天井103に設けてあり、入力装置5は、検出器6と共にテーブル102の天板上面の略中央に設けてある。撮像部61は、撮像素子により取得された被照射者全員の少なくとも顔面部を含む画像情報を、撮像制御部62を介して画像信号解析部63に与える。画像信号解析部63は、各被照射者の開眼の度合いを求め、開眼状態か閉眼状態かを判定して、判定結果である各被照射者のセンサ信号を光源制御部3に与える。
【0078】
図13は、会議室内に設置された本実施の形態に係る照明装置10の点灯及び光量の制御過程を示すタイミングチャートの一例である。図13(a)は第1の光源11を、図13(b)は第2の光源12を、図13(c)は第1の光源11及び第2の光源12からなる光源部1を夫々示しており、図13(a)(b)(c)の横軸は時刻を、縦軸は光量を夫々示している。光源制御部3は、入力装置5により与えられた電源スイッチからの入力信号が消灯であるとき、第1の光源11及び第2の光源12を消灯し、電源スイッチからの入力信号が点灯であるとき、第1の光源11及び第2の光源12を光源調光用信号に応じて点灯する。光源制御部3に画像信号解析部63により与えられるセンサ信号は、複数の被照射者(被照射者1、被照射者2、被照射者3)夫々が閉眼状態又は閉眼状態であることを示す信号である。光源制御部3は、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第1の光源11の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させるようにしてある。即ち、第1の光源11の光量の増加分だけ、第2の光源12の光量を減少させるようにしてある。
【0079】
以上のように照明装置10の点灯制御を行うことにより、少なくとも一人の被照射者が閉眼状態にあるときに、瞼の光透過率の高い光を発する第1の光源11の光量を増加させているから、瞼を透過して閉眼状態の被照射者の網膜上の光受容体に付与される光刺激量が多くなる。この結果、本例の被照射者1及び被照射者2の如く閉眼状態である被照射者は、眼を閉じた状態においても強い光刺激を感じてしまうため、その光刺激により開眼状態へと誘導されることになり、閉眼状態の被照射者の開眼を効果的に促すことができる。
【0080】
また、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保持しており、開眼状態の被照射者には、第1の光源11及び第2の光源12から出射され混光された後の総光量に応じた光が眼に入射されるから、開眼状態の被照射者の網膜上の光受容体に付与される光刺激量は常に略一定になる。この結果、本例の被照射者3の如く開眼状態である被照射者は、略一定の光量が保持されたままであると感じることになり、開眼状態の被照射者に違和感を与えずにすむ。
【0081】
以上のように本例においては、開眼状態の被照射者には略一定の明るさの照明を提供しながら、閉眼状態の被照射者には選択的に適切な光刺激を与えることができる。」
「【0083】
また、本実施の形態においては、検出器6として、被照射者を撮影する撮像部61と、該撮像部61を制御する撮像制御部62と、撮像部61により撮影された画像を解析する画像信号解析部63とを備えてなる撮像装置を用いているが、これに限定されず、睡眠及び/又は眠気判定を行うことが可能な検出器であればよい。例えば、脳波を測定する脳波測定器であってもよく、この場合、眠気判定において非常に細やかな検知をおこなうことが可能となる。脳波測定を行う場合は、被照射者の身体に電極を装着することが必要となるが、例えば、入院患者に対して使用する場合に好適に用いることができる。
【0084】
また、検出器6として、例えば、体圧、体温、心拍等の測定が可能な検出器でもよい。図14は、本実施の形態に係る照明装置に適用可能な検出器の具体例である。図14(a)は、会議室のイス等にシート状の体圧及び体温の測定が可能な検出器6aを設置した例である。検出器6aにより体圧及び体温を測定することができ、体圧測定値から得られる体動及び体温の変動値を用いて睡眠状態、眠気レベルを解析することが可能である。図14(b)は、腕に装着するベルトの内側に心拍、脈波及び体温の測定が可能な検出器6bを設けた腕時計型の検出器の例である。検出器6bにより心拍、脈波及び体温を測定することができ、測定された心拍、脈波及び体温の変動値を用いて睡眠状態、眠気レベルを解析することが可能である。さらに、検出器として、撮像装置、体圧センサ、体温センサ等、複数種のセンサを組み合わせて用いることも可能であり、この場合、よりきめ細かく確実に被照射者の睡眠状態、眠気レベル等を判定することができ、この判定結果に応じて更に適切な光刺激を被照射者に与えることが可能となる。」
「【0102】
このように構成された照明装置20の光源部1に対する光源調光用信号は、照明装置20の具体的な適用場所に応じて適切に設定される。図18は、設定された時間の到来を報知するアラーム信号を出力する時計装置8、所謂目覚まし時計に本発明に係る照明装置20を適用した例を示す図である。被照射者に目覚まし効果を与えたい場合への適用例であり、例えば、被照射者の枕元に置いて用いられる。
【0103】
時計装置8は、所謂置時計であり、該時計装置8の下部には、入力装置5が連設してある。時計装置8の上部には、複数の光源を有する光源部1が設けてある。光源部1は、該光源部1から出射される光が被照射者の顔面に照射されるように適宜角度調整が可能なように構成してあることが望ましい。
【0104】
図19は、本実施の形態に係る照明装置20の点灯及び光量の制御過程を示すタイミングチャートの一例である。図19(a)は第1の光源11を、図19(b)は第2の光源12を、図19(c)は第1の光源11及び第2の光源12からなる光源部1を夫々示しており、図19(a)(b)(c)の横軸は時刻を、縦軸は光量を夫々示している。光源制御部3は、入力装置5により与えられた電源スイッチからの入力信号及びアラーム設定スイッチからの入力信号に基づいて生成された光源調光用信号に応じて、図19に示す如く、第1の光源11及び第2の光源12夫々を点灯する。光源制御部3は、第1時間帯(t1≦t<ta)の間は、瞼の光透過率の高い波長域の光を発する第1の光源11を点灯させ、第2時間帯(ta≦t<t2)の間は、メラトニンの分泌抑制の効果の高い波長域の光を発する第2の光源12を点灯させている。」
「【0109】
図21は、本実施の形態に係る照明装置20の点灯及び光量の制御過程を示すタイミングチャートの他の例である。図21(a)は第1の光源11を、図21(b)は第2の光源12を、図21(c)は第1の光源11及び第2の光源12からなる光源部1を夫々示しており、図21(a)(b)(c)の横軸は時刻を、縦軸は光量を夫々示している。本例において、光源制御部3は、図20に示した例と同様に、刺激付与時間(t1≦t<t2)の前半の時間帯は、瞼の光透過率の高い波長域の光を発する第1の光源11の光量が第2の光源12の光量よりも多くなるように、刺激付与時間の後半の時間帯は、メラトニンの分泌抑制の効果の高い波長域の光を発する第2の光源12の光量が第1の光源11の光量よりも多くなるとともに、入力装置5の電源スイッチからの出力信号が点灯信号であるときは少なくとも、混光後の総光量が一定になるように第1の光源11及び第2の光源12夫々を点灯させるようにしてある。
【0110】
なお、この場合、光量情報の設定値変更の手順及び内容が図16及び図17に示した内容と異なることになるが、それ以外は同じである。即ち、光源制御部3は、現在時刻が刺激付与時間内であるか否かを判定し、刺激付与時間内であるときは、電源スイッチからの出力信号が点灯信号であるか否かを判定する。点灯信号であるときは、総光量が刺激付与時間及び刺激付与時間の前後にて一定になるように大きさを決定し、図21(a)(b)に示すような時間の経過に応じて変化する光量を得るべく設定された光量情報の設定値に変更する。点灯信号でないときは、予め設定された光量の値の大きさを変更せず、図21(a)(b)に示すような時間の経過に応じて変化する光量を得るべく設定された光量情報の設定値に変更する。一方、刺激付与時間外であるときは、ステップS36に戻り一連の動作を繰り返す。
【0111】
本例の如く照明装置20の点灯制御を行うことにより、例えば、複数の被照射者が同じ部屋に寝ているような場合に、まだ目覚めていない閉眼状態である被照射者には、第1の光源11と第2の光源12光源1との切替え点灯により、最初に瞼の光透過率の高い光刺激を付与して開眼を促進したのち、メラトニンの分泌抑制の効果の高い光刺激を付与して確実な目覚まし効果を得ることができる。一方、略一定の総光量が保持されているから、既に目覚めている開眼状態である被照射者には、光量変化を殆ど感じさせず、違和感を与えずにすむ。
【0112】
なお、以上述べた本実施の形態においては、時計装置8による時間情報及び刺激付与情報に応じて光源部1を点灯制御するように構成してあるが、これに限定されず、実施の形態1において述べた検出器6によるセンサ信号と時計装置8による時間情報及び刺激付与情報とを組み合わせて、これらの内容に応じて光源部1を点灯制御するように構成してもよい。」
図1
「
[図:0001419607000001.jpg]
」
図2
「
[図:0001419607000002.jpg]
」
図3
「
[図:0001419607000003.jpg]
」
図7
「
[図:0001419607000004.jpg]
」
図10
「
[図:0001419607000005.jpg]
」
図11
「
[図:0001419607000006.jpg]
」
図12
「
[図:0001419607000007.jpg]
」
図13
「
[図:0001419607000008.jpg]
」
図19
「
[図:0001419607000009.jpg]
」
図21
「
[図:0001419607000010.jpg]
」
(2)認定事項
ア 段落【0044】の「光源部1は、・・・第1の波長域の分光成分を有する光を発する第1の光源11と、・・・前記第1の波長域と異なる第2の波長域の分光成分を有する光を発する第2の光源12と、・・・を備えている。」という記載より、第1の波長域の分光成分を有する光を発する第1の光源11と、第1の波長域と異なる第2の波長域の分光成分を有する光を発する第2の光源12と、を備えている光源部1を有する構成を認定することができる。
イ 段落【0047】の「このような第1の光源11に好適に用いることができる光源の例・・・ピーク波長が700nmの光を発するLED」という記載より、第1の光源11は、ピーク波長が700nmの光を発するLEDである構成を認定することができる。
ウ 段落【0055】の「前述した図7に示す7種類のLEDのうち、発光色がロイヤルブルー、ブルー、シアン及びグリーンのLEDは、580nm以下の波長域に分光成分が多く含まれる光源であり、第2の光源12として用いることができる。」という記載より、第2の光源12は、580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるLEDである構成を認定することができる。
エ 図13(b)から、被照射者1又は2のいずれかが閉眼の状態から、被照射者1~3の全員が開眼状態になったときに第2の光源の光量を増加させることが看取でき、図13(c)から、このとき、第1の光源と第2の光源の総光量は一定であることが看取できる。そして、段落【0078】の「光源制御部3は、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第1の光源11の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」との記載も踏まえると、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号である状態から、すべてのセンサ信号が開眼状態を示す信号となったとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる構成を認定することができる。
(3)甲1発明
上記(1)及び(2)より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「第1の波長域の分光成分を有する光を発する第1の光源11と、
第1の波長域と異なる第2の波長域の分光成分を有する光を発する第2の光源12と、
を備えている光源部1を有し、
第1の光源11は、ピーク波長が700nmの光を発するLEDであり、
第2の光源12は、580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるLEDであり、
光源制御部3には、被照射者の眼の開閉状態を検出する検出器6が接続してあり、検出器6は、光源制御部3による動作指令信号に応じて被照射者の眼の開閉状態を検出し、検出された被照射者の眼の開閉状態を光源制御部3に与え、
検出器6は、被照射者を撮影する撮像部61と、該撮像部61を制御する撮像制御部62と、撮像部61により撮影された画像を解析する画像信号解析部63とを備えてなり、
画像信号解析部63は、求めた開眼の度合いを用いて被照射者が開眼状態か閉眼状態かを判定し、判定された結果を、センサ信号として光源制御部3に与え、
被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される、光源制御部3に画像信号解析部63により与えられるセンサ信号は、複数の被照射者夫々が開眼状態又は閉眼状態であることを示す信号であり、光源制御部3は、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号である状態から、すべてのセンサ信号が開眼状態を示す信号となったとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる、
照明装置10。」
(4)甲1技術事項
また、甲1には、段落【0074】~【0076】、図10~11に記載された、車両に搭載された実施の形態に係る次の技術事項(以下「甲1技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「被照射者が一人のみであり、その被照射者が覚醒状態を維持したい場合に適用され、
光源部1は、車両用操舵装置のステアリングホイール101のハブ101aに設けてあり、
光源制御部3は、センサ信号が閉眼状態を示す信号であるとき、第2の光源12の光量を一定に保ちつつ、第1の光源11の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させ、閉眼状態の運転者の開眼を促す、
車両に搭載された照明装置10。」
2 甲2
(1)記載事項
甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「[0001] 本発明は、覚醒光を照射して睡眠者の覚醒を促す覚醒システム及びそれに用いられる照明装置の制御方法に関する。」
「[0009] 本発明の一実施形態に係る覚醒システム及びそれに用いられる照明装置の制御方法について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る覚醒システムの構成を示す。この覚醒システム1は、覚醒光L1を照射する照明装置(光源)2と、覚醒光L1の出力及び色温度を変化させるように照明装置2を制御する制御装置3と、ユーザによって操作され、制御装置3による各種制御条件を入力又は設定するためのインターフェース装置(操作パネル又はリモコン装置)4を備えている。
[0010] この覚醒システム1では、照明装置2から照射される覚醒光L1の出力及び色温度を変えることが可能であり、制御装置3は、照明装置2による覚醒光L1の照射開始から覚醒光L1の出力を徐々に増加させると共に、覚醒光L1の出力が小さい段階では覚醒光L1の色温度を低くしておき、覚醒光L1の出力が大きくなるにつれて徐々に覚醒光L1の色温度を高くするように、照明装置2を制御する。それにより、ユーザが覚醒したときに、不快に感じさせることがなく、自然に起床させることができる。ここで、制御装置3による上記照明装置2の制御動作を覚醒動作と呼ぶ。インターフェース装置4は、例えば操作ボタンなどの入力部及び液晶パネルなどの表示部を備えた操作装置(表示画面上に操作ボタンを画像表示したタッチパネルを含む)であり、覚醒動作を開始する覚醒動作開始時刻と、この時刻よりも時間的に後であって、ユーザを覚醒させる覚醒時刻(すなわち、起床時刻)を入力し、表示するために用いられる。」
「[0012] 図2は、覚醒システム1のブロック構成を示す。照明装置2は、赤色光を照射する赤色光源21と、緑色光を照射する緑色光源22と、青色光を照射する青色光源23と、これら各光源21~23を個別に調光制御する赤色点灯回路24R、緑色点灯回路24G及び青色点灯回路24Bを備えている。各光源21~23は、例えば発光ダイオード(LED)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)などの素子を、同じ種類の素子同士又は異なる種類の素子を組み合わせて構成されている。この構成例では、照明装置2からは、各光源21~23から照射される光を合成した合成光が覚醒光L1として出力される。そして、各点灯回路24R、24G及び24Bによって各光源21~23の出力を個別に制御することにより、覚醒光L1の出力と色温度を同時に変化させることができる。すなわち、各点灯回路24R、24G及び24Bは、覚醒光L1の出力可変装置及び色温度可変装置24として機能する。
[0013] 制御装置3は、各点灯回路24R、24G及び24Bを駆動制御して覚醒動作を行うマイクロプロセッサ31と、覚醒動作における各種動作のタイミングを計るためのタイマ回路32と、覚醒動作を実行するためのプログラムや制御パターンなどを記憶した記憶部33を備えている。マイクロプロセッサ31は、インターフェース装置4から出力される覚醒動作開始時刻及び覚醒時刻の情報を受信し、タイマ回路32により現在時刻をカウントし、現在時刻が覚醒動作開始時刻となったときに覚醒動作を開始する。また、マイクロプロセッサ31は、タイマ回路32により覚醒動作開始時刻から覚醒時刻までの時間を算出し、その時間に基づいて覚醒動作内容を調整する。インターフェース装置4は、ユーザが覚醒動作開始時刻と覚醒時刻を入力するための操作ボタン、ボリューム又はタッチパネルなどの入力部41と、入力部41により入力された各種時刻を記憶するメモリ等の記憶部42と、入力部41を介して入力された覚醒動作開始時刻や覚醒時刻などの入力情報を表示するための表示部43を有し、それらの各種情報を制御装置3に送信する。マイクロプロセッサ31は、覚醒動作中に照明装置2から照射される覚醒光L1の出力を変化させるように各点灯回路24R、24G及び24B(出力可変装置)制御する光出力制御部と、覚醒動作中に覚醒光の色温度を変化させるように各点灯回路24R、24G及び24B(色温度可変装置)を制御する色温度制御部として機能する。」
「[0015] 図3は、制御装置3により制御された照明装置2から照射される覚醒光L1の出力特性61を示す。図3に示すように、覚醒光L1の出力特性61において、覚醒動作開始時刻(図では「開始時刻」とする)では、覚醒光L1の出力がほぼ0(lx)であり、時間経過と共になだらかに増加し、第1所定時間T1経過後、すなわち第1の時点から後は急激に増加する。そして、覚醒光L1の出力は覚醒時刻で最大値LMAXとなる。ここで、覚醒光L1の出力が急激に増加し始める時点、又は覚醒光L1の出力が所定の値C1に到達した時点を第1の時点と呼ぶ。第1の時点は、例えば、覚醒動作開始時刻から覚醒時刻までの時間に所定割合を乗じて得た値を覚醒設定時刻から引いて又は覚醒動作開始時刻に足して求められる。このような演算により、ユーザにより覚醒動作開始時刻及び覚醒時刻が入力された時点において、第1の時点は予め定められる。」
「[0017] 図4及び図5は、それぞれ覚醒光L1の色温度特性71,72を示す。図4に示す覚醒光L1の色温度特性71では、覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇し、第1の時点から最大出力時点(本実施形態では覚醒時刻)に向かって急激に上昇し、覚醒光L1の最大出力時点で最高値CMAXとなる(CS<C1<CMAX)。一方、図5に示す色温度特性72では、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光L1の色温度がほぼ一定である(CS=C1<CMAX)。」
「[0019] 図3及び図4又は図3Cに示す制御パターンはあくまでも一例であって、照明装置2の制御パターンはこれらに限定されるものではない。例えば、制御装置3の記憶部33に複数の異なった制御パターンを記憶させておき、ユーザがインターフェース装置4の入力部41を操作して任意の制御パターンを選択できるように構成してもよい。また、記憶部33に覚醒光L1の複数の出力特性と色温度特性をそれぞれ個別に記憶させておき、出力特性と色温度特性を任意に組み合わせされるように構成してもよい。制御装置3は、ユーザによって選択された出力特性及び色温度特性を再現できるように、覚醒光L1の出力及び色温度を制御する。
[0020] さらに、この覚醒システム1に就寝中のユーザH1の体動、脈拍、心拍、血圧、脳波などの生体情報を検出する各種センサを設けると共に、制御装置3に、それた各種センサによる測定結果に基づいて、複数の制御パターンの中から適切なものを自動選択させて実行させるように構成してもよい。あるいは、覚醒動作開始時刻、第1の時点及び覚醒時刻など、複数の時点における覚醒光L1の出力値及び色温度を記憶部33に記憶させておき、ユーザH1により設定された覚醒動作開始時刻及び覚醒時刻に応じて、出力特性及び色温度特性の傾きを変化させるように構成してもよい。さらに、インターフェース装置4に照度センサ及び色温度センサを設けておき、実際に照明装置2から照射される覚醒光L1による照度及び色温度を測定し、制御装置3に対してフィードバック制御を行わせるように構成してもよい。
[0021] このように、本実施形態に係る覚醒システム1では、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光L1の出力を時間の経過と共に、第1の傾きで徐々に増加させると同時に、覚醒光L1の色温度も第2の傾きで徐々に上昇させ、第1の時点から覚醒時刻又は覚醒光出力最大時点までの間は、覚醒光L1の出力を時間の経過と共に、第1の傾きよりも大きな第3の傾きで急激に増加させると同時に、覚醒光L1の色温度も第2の傾きよりも大きな第4の傾きで急激に上昇させている。その結果、覚醒光L1の出力が小さい間は、同時に覚醒光L1の色温度が低く、覚醒光L1の出力が大きい間は、同時に覚醒光L1の色温度が高くなるように、照明装置2を制御することができる。ところで、前述のように、光源からの光の出力が小さい低照度状態では、光源の色温度が低ければ、人は快適に感じ、光源の色温度が高ければ人は不快に感じることが知られている。そのため、この覚醒システム1を用いた場合、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすことができる。」
「[0023] なお、光源として蛍光灯などの放電ランプを使用した場合、その出力をほぼ「0」の状態から徐々に増加させることは困難である。また、光源としてLEDを使用した場合、個々のLED素子の漏れ電流特性のばらつきなどにより、低出力時に全てのLED素子の出力を一定のレベルにそろえることが困難である。そこで、例えば、図6において実線で示す出力特性62のように、覚醒動作開始時刻において覚醒光L1の出力として「0」よりも大きい一定の値を有するように構成してもよい。覚醒動作開始時刻における覚醒光L1の出力の初期値LSは、第1の時点における覚醒光L1の出力の値L1よりも低い値とし、徐々に増加させるようにしてもよい。あるいは、図6において一点鎖線で示す出力特性63ように、覚醒開始時刻から第1の時点よりも前の任意の時点まで、覚醒光L1の出力を一定値LS’となるようにしてもよい。なお、図6において、比較例として図3における出力特性61を破線で示す。」
図1
「
[図:0001419607000011.jpg]
」
図2
「
[図:0001419607000012.jpg]
」
図3
「
[図:0001419607000013.jpg]
」
図4
「
[図:0001419607000014.jpg]
」
図5
「
[図:0001419607000015.jpg]
」
図6
「
[図:0001419607000016.jpg]
」
(2)認定事項
ア 段落[0019]の「図3及び図4又は図3Cに示す制御パターンはあくまでも一例であって、照明装置2の制御パターンはこれらに限定されるものではない。・・・記憶部33に覚醒光L1の複数の出力特性と色温度特性をそれぞれ個別に記憶させておき、出力特性と色温度特性を任意に組み合わせされるように構成してもよい。」という記載(「図3C」は「図5」の誤記と認められる。)より、制御パターンは、覚醒光L1の出力特性と色温度特性とを組み合わせたものであることを認定することができる。
イ 上記ア、段落[0020]の「各種センサによる測定結果に基づいて、複数の制御パターンの中から適切なものを自動選択させて実行させる」という記載、段落[0017]の「図4に示す覚醒光L1の色温度特性71では、覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇し、第1の時点から最大出力時点(本実施形態では覚醒時刻)に向かって急激に上昇し、覚醒光L1の最大出力時点で最高値CMAXとなる(CS<C1<CMAX)。一方、図5に示す色温度特性72では、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光L1の色温度がほぼ一定である(CS=C1<CMAX)。」という記載、及び段落[0023]の「図6において一点鎖線で示す出力特性63ように、覚醒開始時刻から第1の時点よりも前の任意の時点まで、覚醒光L1の出力を一定値LS’となるようにしてもよい。」という記載より、各種センサによる測定結果に基づいて自動選択される複数の制御パターンのうちの一つが、色温度特性71と出力特性63とを組み合わせた制御パターンであり、同複数の制御パターンのうちの他の一つが、色温度特性72と出力特性63とを組み合わせた制御パターンであることが認められる。
また、段落[0023]の「低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえることが困難である。そこで、・・・図6において一点鎖線で示す出力特性63ように、覚醒開始時刻から第1の時点よりも前の任意の時点まで、覚醒光L1の出力を一定値LS’となるようにしてもよい」、及び段落[0021]の「覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、・・・覚醒光L1の色温度も第2の傾きで徐々に上昇させ、・・・その結果、・・・いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすことができる。」との記載から、出力特性63は低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるために覚醒光L1の出力を一定値LS’とするものであり、色温度特性71は、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすための覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇する構成であると認められる。
すなわち、各種センサによる測定結果に基づいて選択される複数の制御パターンのうちの一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすための覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇する色温度特性71とを組み合わせた制御パターンであり、同複数の制御パターンのうちの他の一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光1の色温度がほぼ一定である色温度特性72とを組み合わせた制御パターンである構成を認定することができる。
(3)甲2発明
上記(1)及び(2)より、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「照明装置2は、赤色光を照射する赤色光源21と、緑色光を照射する緑色光源22と、青色光を照射する青色光源23と、これら各光源21~23を個別に調光制御する赤色点灯回路24R、緑色点灯回路24G及び青色点灯回路24Bを備え、各点灯回路24R、24G及び24Bによって各光源21~23の出力を個別に制御することにより、覚醒光L1の出力と色温度を同時に変化させることができ、各点灯回路24R、24G及び24Bは、覚醒光L1の出力可変装置及び色温度可変装置24として機能し、
制御装置3は、各点灯回路24R、24G及び24Bを駆動制御して覚醒動作を行うマイクロプロセッサ31と、覚醒動作における各種動作のタイミングを計るためのタイマ回路32と、覚醒動作を実行するためのプログラムや制御パターンなどを記憶した記憶部33を備え、マイクロプロセッサ31は、覚醒動作中に照明装置2から照射される覚醒光L1の出力を変化させるように各点灯回路24R、24G及び24B(出力可変装置)を制御する光出力制御部と、覚醒動作中に覚醒光の色温度を変化させるように各点灯回路24R、24G及び24B(色温度可変装置)を制御する色温度制御部として機能し、
就寝中のユーザH1の体動、脈拍、心拍、血圧、脳波などの生体情報を検出する各種センサを設けると共に、制御装置3に、各種センサによる測定結果に基づいて、複数の制御パターンの中から適切なものを自動選択させて実行させ、
制御パターンは、覚醒光L1の出力特性と色温度特性とを組み合わせたものであり、
各種センサによる測定結果に基づいて選択される複数の制御パターンのうちの一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすための覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇する色温度特性71とを組み合わせた制御パターンであり、同複数の制御パターンのうちの他の一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光1の色温度がほぼ一定である色温度特性72とを組み合わせた制御パターンである、
覚醒システム1。」
3 甲3
甲3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0108】
〈照明装置の構成〉
上記照明装置(30)は、図3に示すように、ケーシング(30a)と照明手段である照明ユニット(31)とコントローラ(32)とを備えている。」
「【0111】
上記照明ユニット(31)は、発光ダイオード(以下、LEDという)より構成され、波長特性の異なる2つの光源手段である電球色LED(41)及び白色LED(42)をそれぞれ88個と、該各LED(41,42)を取り付ける支持基板(43)を4枚備えている。
【0112】
図10の(a)に示すように、上記電球色LED(41)が発生させる光は、波長600nm前後の成分が最も多く含まれ、464nmを基準とする所定範囲(380nm以上525nm以下)の波長の光はあまり含まれない。つまり、電球色LED(41)は、464nmを基準とする所定範囲の波長を除いた波長領域の光を多く含んでいる。一方、図10の(b)に示すように、上記白色LED(42)が発生させる光は、464nmを基準とする所定範囲の波長の成分を比較的多く含む。ここで、人体が、波長が464nmを基準とする所定範囲の光を浴びると、眠気を誘発するメラトニンというホルモンの分泌が抑制されることが知られいる。つまり、上記電球色LED(41)は、覚醒刺激の弱い波長特性の光を発生させるものであり、就寝用及び睡眠途中用の光源手段に構成され、上記白色LED(42)は、覚醒刺激の強い波長特性の光を発生させるものである。なお、図10(c)に青色LEDの波長特性を示すが、青色LEDの発生させる光においても、464nmを基準とする所定範囲の波長成分が多く含まれるので、白色LED(42)の代わりに青色LEDを用いてもよい。」
「【0161】
次に、第3パターンを図6(c)に基づいて説明する。第3パターンにおいて、覚醒照度設定部(55c)は、実線cに示すように、照明ユニット(31)の全体の照度が、照明開始時刻(T3)から漸次大きくなり、該照明開始時刻(T3)から所定時間Δt2経過した後に最大照度の一定となるように設定する。また、覚醒波長設定部(55d)は、実線aに示すように、照明開始時刻(T3)から電球色LED(41)の照度が漸次大きくなると共に、破線bに示すように、照明開始時刻(T3)の所定時間Δt1後から、白色LED(42)の照度が漸次大きくなるように設定する。さらに、覚醒照度設定部(55c)は、照明開始時刻(T3)から所定時間Δt2経過した後に、電球色LED(41)の照度が漸次小さくなっるよに設定する。これにより、覚醒刺激の強い464nmを基準とする所定範囲の波長を多く含む光が漸次増大する一方、照明開始時刻(T3)から所定時間Δt2経過後には、照度が一定に維持される。」
「【0180】
また、上記実施形態1では、就寝者が設定ボタン(33)によって、予め自己の睡眠状態を予測して、照明ユニット(31)の動作を入力するようにしたが、ベッド本体(10)に就寝者の睡眠状態を検知するセンサなどを設けることにより、就寝者が入力することなく、該センサの情報によって、照明ユニット(31)の照度などの照明条件を適宜設定するようにしてもよい。」
図6(c)
「
[図:0001419607000017.jpg]
」
4 甲4
甲4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0021】
図3は照明装置1の要部回路構成を示すブロック図で、全体を制御する制御部本体21を設け、この制御部本体21で前記昼白色蛍光ランプ9を調光制御する調光制御部22を制御するとともに、前記電球色蛍光ランプ10を調光制御する調光制御部23を制御するようになっている。また、制御部本体21は前記照度センサ7が検知した照度検知信号を取り込むとともに睡眠センサ24が検知した睡眠検知信号を取り込むようになっている。前記睡眠センサ24は、睡眠する人の腕などに取り付けて脈拍や体温を検知するものや枕内に取り付けて睡眠する人の動きを検知するものなど様々の方法で入眠を検知するセンサで周知のセンサである。制御部本体21による睡眠センサ24からの睡眠検知信号の取り込みは、リード線を使用した有線方式や電波による無線方式がある。
【0022】
前記主制御部本体21は、マイクロプロセッサのほか、時刻を計時する時計回路21aや時刻の設定等を行うメモリ21bを設けている。制御部本体21は調光制御部22を制御し昼白色蛍光ランプ9を図5に実線のグラフg1に示すように調光制御する。すなわち、予め設定された入眠時刻又は予測される入眠時刻の、90分以上前に設定時刻を決め、入眠時刻や設定時刻をメモリ21bに記憶する。そして、設定時刻において調光率が0%になるように調光率を100%から徐々に低下させる。
【0023】
また、前記制御部本体21は調光制御部23を制御し電球色蛍光ランプ10を図5に点線のグラフg2に示すように調光制御する。すなわち、昼白色蛍光ランプ9の調光率が100%から低下するのに同期して調光率を0%から徐々に大きくし、設定時刻よりも前の時刻において調光率が100%になり、以降その状態を入眠時刻になるまで保持し、入眠時刻になると調光率を0%に低下させる。すなわち、制御部本体21は入眠時刻になると電球色蛍光ランプ10も消灯状態と同じ状態にする。このとき、昼白色蛍光ランプ9と電球色蛍光ランプ10の照度の対数値が時間を変数とした余弦カーブとなるように連続的に変化させることで色温度をなめらかに低下させることができる。」
「【0029】
また、メモリ21bに設定する入眠時刻は、睡眠センサ24からの睡眠検知信号を取り込んだ時の時計回路21aの計時時刻に基づいて設定してもよい。例えば、人は曜日によって寝る時間が異なる場合があり、従って、メモリ21bに曜日毎の入眠時刻を設定できるようにする。そして、設定する入眠時刻をそれぞれの曜日において得られる睡眠の計時時刻を平均した時刻にする。これにより、その人の各曜日の入眠時刻が自動的に設定され、その入眠時刻に対してそれぞれ相関色温度が低下し、床面の照度が200lx以下になる設定時刻が設定される。」
「【0031】
なお、前述した実施の形態は、内側に相関色温度が5000Kの3波長形昼白色の蛍光ランプ9を配置し、外側に相関色温度が2800Kの3波長形電球色の蛍光ランプ10を配置した照明装置について述べたが、図8に示すように、内側に相関色温度が6700Kの3波長形昼光色の蛍光ランプ31を配置し、中間に相関色温度が5000Kの3波長形昼白色の蛍光ランプ32を配置し、外側に相関色温度が2800Kの3波長形電球色の蛍光ランプ33を配置した3本の蛍光ランプを有する外観が図9に示す構成の照明装置34であってもよい。」
「【0033】
そして、図11に示すように、通常は、3波長形昼光色の蛍光ランプ(D)31からの照明による照度が最も高くなるように全光点灯で点灯制御し、また、3波長形昼白色の蛍光ランプ(N)32からの照明による照度が100lxよりも低い状態で維持するようにおよそ50%調光で点灯制御する。この状態で3波長形電球色の蛍光ランプ(L)33を照度0の状態から徐々に立ち上げると共に蛍光ランプ31の照度を徐々に低下させる。
【0034】
そして、時刻t1において、蛍光ランプ(D)31の照度を10lx以下に低下させ、蛍光ランプ(L)33の照度を最も高くする。また、蛍光ランプ(N)32の照度は略横ばい状態を保つ。その後、蛍光ランプ(N)32の照度を徐々に低下させ、時刻t2において照度を10lx以下に低下させる。以降、蛍光ランプ(L)33を70%以下で調光点灯させることで照度を170lxまで低下させて維持しスムーズな睡眠を誘う。このときの、蛍光ランプ(D)31、蛍光ランプ(N)32、蛍光ランプ(L)33による合計照度は図中グラフ(D+N+L)で示すように変化する。」
「【0036】
以上は、睡眠前の制御について述べたが、例えば、布団に圧力センサを配置したり、赤外線センサを配置したり、あるいは身体に加速度センサを配置するなどしてユーザが起床するのを検知し、その起床が予め設定されている起床時刻近傍であれば、図13に示すように相関色温度と明るさをなめらかに増加させるように各蛍光ランプを調光制御することもできる。
【0037】
また、枕型や身体装着型の生体計測装置を使用して睡眠深度を計測し、この計測によって起床時刻前のレム睡眠を検知し、このタイミングで相関色温度と明るさを増加させることで心地よい目覚めを促すことも可能になる。」
図3
「
[図:0001419607000018.jpg]
」
図8
「
[図:0001419607000019.jpg]
」
図9
「
[図:0001419607000020.jpg]
」
図11
「
[図:0001419607000021.jpg]
」
5 甲5
(1)記載事項
甲5には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0013】
(実施の形態)
本実施の形態において、集中とは、一つの事柄に注意を集中して物事に取り組むことを意味する。また、集中度とは、集中の度合いを意味する。すなわち、集中度とは、物事に取り組む際に、どの程度、一つの事柄に注意を集中しているかの度合いを意味する。また、集中度は、単位時間あたりの知的作業量に影響を与える。集中度が高いほど、単位時間あたりの知的作業量が大きくなり、集中度が低いほど、単位時間あたりの知的作業量が小さくなる。
【0014】
ここで、知的作業量は、知的作業の作業量である。知的作業は、主として作業者の知的能力(知能)を用いて行われる作業であって、例えば、認知、思考および判断等の作業である。より具体的には、知的作業は、デスクワークまたは勉強等である。」
「【0016】
なお、覚醒は、目を覚ますことを意味し、覚醒度は、覚醒の度合いを示す。覚醒度の低下により、集中度も低下する場合があるが、必ずしも覚醒度の増大が集中度の増大をもたらすとは限らない。」
「【0035】
図3は、本実施の形態における環境制御システムの構成を示すブロック図である。環境制御システム10は、知的作業を行うユーザの環境を制御するシステムであって、検出部11および回復部13を備える。」
「【0037】
検出部11は、知的作業を行うユーザの集中度の低下を検出する検出器である。集中度の低下は、直前の状態よりも集中度が低下したことを意味する。特に、検出部11は、ユーザが知的作業を行うための方向から回復部13へ視線を向けたことをユーザの集中度の低下として検出する。検出部11は、撮像部12を備えていてもよい。撮像部12は、撮像により画像を生成する撮像器である。撮像部12は、可視光により撮像を行ってもよいし、赤外線により撮像を行ってもよい。」
「【0047】
回復部13は、知的作業を行うユーザの集中度を回復させる回復器である。特に、回復部13は、ユーザの集中度の低下が検出された場合、ユーザの環境を変化させることにより、ユーザの集中度を回復させる。言い換えれば、回復部13は、ユーザの集中度の低下が検出された場合、ユーザの集中度が回復するように、ユーザの環境を変化させる。
【0048】
回復部13は、送風部14を備えていてもよいし、照明部15を備えていてもよいし、発香部16を備えていてもよいし、発音部17を備えていてもよい。また、回復部13は、送風部14、照明部15、発香部16および発音部17のうち2つ以上を備えていてもよい。」
「【0053】
例えば、ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、照明の色温度を下げてもよい。具体的には、照明の色温度が6200Kである状態において、ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、4000~5000K程度に照明の色温度を下げてもよい。
【0054】
また、例えば、ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、照明の照度を下げてもよい。具体的には、照明の照度が750Lxである状態において、ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、300Lx程度に照明の照度を下げてもよい。」
「【0056】
また、例えば、ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、照明の色温度、照度および照射範囲のうち複数の要素を変更させてもよい。」
図3
「
[図:0001419607000022.jpg]
」
(2)甲5技術事項
上記(1)より、甲5には次の技術事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲5技術事項>
「照明部15を備える回復部13と、
知的作業を行うユーザの集中度の低下を検出する検出部11と、を備え、知的作業はデスクワークまたは勉強等であり、集中度は単位時間あたりの知的作業量に影響を与え、
ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、照明の色温度又は照度を変更させる、
環境制御システム10。」
6 甲6
甲6には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0016】
(実施の形態1)
図1に示すように、発光装置100は、それぞれ赤色光、緑色光、青色光を放射する3つのLEDチップ1r、1g、1bと、これらLEDチップ1r~1bが表面に配置された平坦な素子基板2と、LEDチップ1r~1bを封止する封止部材3とを備える。」
「【0062】
上記実施形態では、1つの発光装置が3つの発光素子を備えた例を示したが、1つの発光装置が1つのみの発光素子を備えてもよいし、4つ以上の発光素子を備えてもよい。素子基板の形状は、四角形に限られず、多角形や円形や楕円形であってもよい。封止部材3は、蛍光体やフィラー等を含んでもよい。本発明の表示装置は、屋外での使用の用途に限られず、屋内でも使用できることは勿論である。」
図1
「
[図:0001419607000023.jpg]
」
7 甲7
甲7には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0022】
本発明の一実施の形態に係る輸送手段の表示装置用照明装置に使用される照明光源である前記LED部40は、図4aに図示されたように、赤色LEDチップ40R、緑色LEDチップ40G、及び青色LEDチップ40Bの組合せからなる少なくとも一つのLEDユニットUからなることができる。
【0023】
また、前記LED部40は、図4bに図示されたように、赤色LEDチップ40R、緑色LEDチップ40G、及び青色LEDチップ40Bのグループから選択される二つの組合せのみからなる少なくとも一つのLEDユニットUからなることができる。」
図4a
「
[図:0001419607000024.jpg]
」
図4b
「
[図:0001419607000025.jpg]
」
8 甲8
甲8には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0018】
LED1は、赤色光を発光する赤色LEDチップ1Rと緑色光を発光する緑色LEDチップ1Gと青色光を発光する青色LEDチップ1Bの夫々発光色が異なる3種類のLEDチップが1つのパッケージ2に直線状に実装されている。このLED1の構造は、所謂3in1タイプと称されるものである。」
「【0042】
また、LED1を夫々発光色が異なる2つのLEDチップ、あるいは発光色が異なる4つ以上のLEDチップで構成することもできる。この場合も、LEDチップのうち1つがリフレクタの焦点の位置に位置ようにLED1を配置する。」
図1
「
[図:0001419607000026.jpg]
」
図2
「
[図:0001419607000027.jpg]
」
9 甲9
甲9には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0025】
これら白色光源部24A、及び補助光源部24Bは、調光可能な光源であり、この光源には、例えば半導体光源が用いられており、この白色光源部24Aでは、白色LED24A1が用いられている。白色LED24A1は、黄色蛍光体を分散させた蛍光体樹脂によって青色LEDが封止され、この青色LEDの発光色と黄色蛍光体の蛍光色とを混色して白色光K1Aを放射する。
補助光源部24Bは、可視光波長域の光として、光三原色の各色の波長の光を放射する光源であり、赤色を放射する赤色LED24B1、緑色を放射する緑色LED24B2、及び青色を放射する青色LED24B3を備え、これら各色の光を補助光K1Bとして放射する。」
図3
「
[図:0001419607000028.jpg]
」
10 甲10
甲10には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0033】
図5に示したように、赤色LED素子18を2個、緑色LED素子19を2個の合計4個のLED素子をサブマウント基板7上に格子状に実装し、更に、青色LED素子20を2個、緑色LED素子19を2個の合計4個のLED素子を別のサブマウント基板7上へ格子上に実装する。このように形成した2種類のサブマウント基板7を1ユニットとして、長尺状の金属板15上の長辺方向に沿って搭載する。ここでは、1つのサブマウント基板7上に実装するLED素子の個数を4個としたが、これに限られるものではない。なお、上述のようにサブマウント基板7の形状を正方形とした場合には、LED素子の個数を4個とするのが好ましい。」
図5
「
[図:0001419607000029.jpg]
」
11 甲11
甲11には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0014】
図3はLED表示素子1の全体構成を示す正面図(図3A)と側面図(図3B)である。青色LEDチップ13、赤色LEDチップ14及び緑色LEDチップ15はカップ部4cに載置されている。封止樹脂16は、カップ部4cに載置された3色のLEDチップを封止している(図7参照)。トロイダル形状を有する樹脂パッケージ5は、封止樹脂16が充填されているカップ部4cを囲繞している。樹脂パッケージ5は、X方向の曲率6xとY方向の曲率6yが異なる。樹脂パッケージ5は、前面5z、後ろ面5u、右側面5m、左側面5h、底面5s、天頂面5jを有している。」
図3
「
[図:0001419607000030.jpg]
」
12 甲12
甲12には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0027】
LED光源は、複数のLEDを有している。複数のLEDとしては、赤色LED、緑色LED及び青色LEDをそれぞれ少なくとも1つずつ有することが好ましい。
【0028】
あるいは、複数のLEDを、単色のLEDで構成しても良い。また、複数のLED各々を、レンズの光軸に対して対称に配置しても良いし、非対称に配置しても良い。さらに、LED光源に複数色のLEDを用いる場合において、レンズの光軸に対してLEDの色を対称に配置しても良いし、非対称に配置しても良い。」
第7 当審の判断
1 無効理由1~3(本件発明1の、甲1発明を主引例とした新規性・進歩性)について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の、「第1の波長域の分光成分を有する光を発する第1の光源11と、第1の波長域と異なる第2の波長域の分光成分を有する光を発する第2の光源12と、を備えている光源部1を有し、第1の光源11は、ピーク波長が700nmの光を発するLEDであり、第2の光源12は、580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるLEDであ」る構成(以下「構成A」という。)について検討する。
(ア)波長が700nmの光は、発光色が赤色であることは技術常識であるから、上記構成Aの「ピーク波長が700nmの光を発するLED」は、本件発明1の「赤色光を発光する赤色発光手段」に相当する。
(イ)上記構成Aの「光源部1」は、「ピーク波長が700nmの光を発するLED」及び「580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるLED」、すなわち複数の発光手段を有するものであるから、本件発明1の「発光部」に相当する。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、上記構成Aは、本件発明1の「赤色光を発光する赤色発光手段と、青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部」「を有する」構成と、「赤色光を発光する赤色発光手段を含む複数の発光手段を有する発光部を有する」構成において共通する。
イ 甲1発明の、「光源制御部3には、被照射者の眼の開閉状態を検出する検出器6が接続してあり、検出器6は、光源制御部3による動作指令信号に応じて被照射者の眼の開閉状態を検出し、検出された被照射者の眼の開閉状態を光源制御部3に与え、検出器6は、被照射者を撮影する撮像部61と、該撮像部61を制御する撮像制御部62と、撮像部61により撮影された画像を解析する画像信号解析部63とを備えてなり、画像信号解析部63は、求めた開眼の度合いを用いて被照射者が開眼状態か閉眼状態かを判定し、判定された結果を、センサ信号として光源制御部3に与え、被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される、光源制御部3に画像信号解析部63により与えられるセンサ信号は、複数の被照射者夫々が開眼状態又は閉眼状態であることを示す信号であり、光源制御部3は、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号である状態から、すべてのセンサ信号が開眼状態を示す信号となったとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」構成(以下「構成B」という。)について検討する。
(ア)上記構成Bは、「被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される」ものであり、「光源制御部3は、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号である状態から、すべてのセンサ信号が開眼状態を示す信号となったとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」ものであるから、被照射者が閉眼状態であるときには、覚醒していない状態であり、開眼状態であるときには、覚醒している状態と判定していることは明らかである。
そうすると、上記構成Bの「被照射者の眼の開閉状態」は、被照射者が覚醒しているか否かを表す状態に関する情報、すなわち本件発明1の「人の覚醒度合に関する生体情報」に相当する。
また、上記構成Bの「センサ信号」は、「画像信号解析部63は、求めた開眼の度合いを用いて被照射者が開眼状態か閉眼状態かを判定し、判定された結果」であるとともに、「複数の被照射者夫々が開眼状態又は閉眼状態であることを示す信号」であるから、上記構成Bの「センサ信号」も本件発明1の「人の覚醒度合に関する生体情報」に相当する。
(イ)上記構成Bの「検出器6」は、「被照射者の眼の開閉状態を検出」するものであるから、上記(ア)の相当関係を踏まえると、本件発明1の「覚醒度合生体情報取得部」に相当し、上記構成Bの「被照射者の眼の開閉状態を検出する検出器6」は、本件発明1の「人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部」に相当する。
(ウ)上記構成Bの、「検出器6は、」「画像信号解析部63」「を備え」ること、「画像信号解析部63は、求めた開眼の度合いを用いて被照射者が開眼状態か閉眼状態かを判定し、判定された結果を、センサ信号として光源制御部3に与え」ること、及び上記(イ)の相当関係より、光源制御部3には、検出器6からのセンサ信号、すなわち、本件発明1の文言を用いると、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報」が与えられるものといえる。
(エ)上記構成Bの「光量」は、本件発明1の「発光量」に相当し、上記構成Bの「総光量」は、本件発明1の「発光量の総和」に相当する。
また、上記構成Bの「第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」構成は、センサ信号に応じて、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定の条件で、第2の光源12の光量を増加させるものであるから、第2の光源12の光量を増加させるのと同時に、第1の光源11の光量を減少させる、すなわち、第1の光源11の光量と、第2の光源12の光量の比を変化させるものであることは明らかである。
このことと、上記アの相当関係を踏まえると、上記構成Bの「第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」構成は、本件発明1の「前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」構成と、「前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま特定の発光手段の発光量比を増加させる」構成において共通する。
(オ)上記構成Bの「光源制御部3」は、「センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」ものであるから、上記(ウ)及び(エ)を踏まえると、本件発明1の「調節部」に相当する。
そして、上記構成Bの「被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される、光源制御部3に画像信号解析部63により与えられるセンサ信号は、複数の被照射者夫々が開眼状態又は閉眼状態であることを示す信号であり、光源制御部3は、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」構成は、本件発明1の「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるための調節部」「を有する」構成と、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま特定の発光手段の発光量比を増加させるための調節部を有する」構成において共通する。
(カ)上記(ア)~(オ)より、上記構成Bは、本件発明1の「人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発行量比を増加させるための調節部と、を有する」構成と、「人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま特定の発光手段の発光量比を増加させるための調節部と、を有する」構成において共通する。
ウ 甲1発明の「照明装置10」は、本件発明1の「照明装置」に相当する。
エ 上記ア~ウより、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点1において一致し、相違点1において相違する。
<一致点1>
「赤色光を発光する赤色発光手段を含む複数の発光手段を有する発光部と、
人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、
覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま特定の発光手段の発光量比を増加させるための調節部と、
を有する照明装置。」
<相違点1>
本件発明1では、発光部を構成する発光手段が、「青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段と」を含むとともに、調節部が、「赤色発光手段」、「青色発光手段」及び「緑色発光手段」の「三つの発光手段」の発光量の総和を略一定にしたまま「青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」ためのものであるのに対し、甲1発明では、光源部1が「第2の光源12」である「580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるLED」を含むとともに、光源制御部3が、「第1の光源11(ピーク長が700nmの光を発するLED、すなわち、赤色発光手段)」及び「第2の光源12」の総光量を一定に保ちつつ、「第2の光源12」の光量を、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させるものである点。
(2)判断
ア 無効理由1(本件発明1の、甲1発明に基づく新規性)について
甲1発明における第2の光源12は、「580nm以下の分光成分が多く含まれるLED」であって、必ずしも「青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段」との2つの発光手段を有するものではないから、「青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」ものでもなく、上記相違点1は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲1発明ではない。
よって、本件発明1は甲1発明ではないから、無効理由1により、請求項1に係る特許を無効にすることはできない。
イ 無効理由2(本件発明1の、甲1発明に基づく進歩性)について
上記相違点1について検討する。
甲1に記載された照明装置10は、「会議室内」における用途(段落【0077】)や、「入院患者に対して使用する」用途(段落【0083】)が想定されているところ、これらの用途では、照明装置の照明光を白色光とすることが技術常識である。
また、発光色が互いに異なる複数の光源により、白色光を調光しようとする際の手法のひとつとして、発光色が赤色の光源、青色の光源、及び緑色の光源の三種類の光源を用いることは、特段文献を例示するまでもなく本件特許出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
さらに、甲1の段落【0055】には、「前述した図7に示す7種類のLEDのうち、発光色がロイヤルブルー、ブルー、シアン及びグリーンのLEDは、580nm以下の波長域に分光成分が多く含まれる光源であり、第2の光源12として用いることができる。」と記載され、選択的ではあるものの、第2の光源12として発光色がブルーのLEDや、発光色がグリーンのLEDを用いる事項(以下「甲1に記載された事項」という。)が、記載されているといえ、図7からも、ブルー及びグリーンのLEDが580nm以下の波長域に分光成分が多く含まれることが看取できる。
上記甲1に記載された事項、上記技術常識、及び上記周知技術1を踏まえると、第1の光源11を、ピーク波長が700nmの光を発するLED(赤色発光手段)とし、第2の光源12として、580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるLEDとする甲1発明において、照明装置10が白色光を調光でき、かつ、580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるものとして、第2の光源12を、発光色がブルーのLED(青色発光手段)と発光色がグリーンのLED(緑色発光手段)とからなるものとすることは当業者が容易になし得たことである。そして、甲1発明は、第2の光源の発光量比を増加させる構成を含むところ、第2の光源12として発光色がブルーのLEDとグリーンのLEDを採用すれば、これらのうち少なくとも一方の発光量比を増加させるものとなる。
したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
よって、本件発明1は、甲1発明、甲1に記載された事項、技術常識及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効理由2により、請求項1に係る特許を無効とすべきである。
ウ 無効理由3(本件発明1の、甲1発明及び甲1~甲4に示される周知技術に基づく進歩性)について
請求人は、審判請求書の7.(4)ウ(a)(a-1)、特に第44ページ第4~11行において、覚醒度合生体情報取得部及び調節部の構成(請求人が主張する構成要件B、C)について、甲1発明と本件発明1との間に相違点があったとしても、覚醒度合等に関する生体情報をセンサで検知してそのセンサで検知した人の生体情報に応じて発光色が異なる複数の発光手段の発光量の総和を一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させることは、甲1~甲4に示される周知技術にすぎず、当業者であれば、甲1発明及び当該周知技術に基いて、本件発明1を容易に想到できる旨、予備的に主張をしているが、上記イで検討したとおりであるから、当該周知技術によらず、本件発明1は甲1発明、甲1に記載された事項、技術常識及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 被請求人の主張について
(ア)被請求人の主張の概要
被請求人は、令和5年5月29日差出の答弁書の第二の1及び2(1)において、概ね以下のように主張する。
甲1には、青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させることについては何ら記載がない。甲1の「第2の光源」は、複数の被照射者のいずれかの者が閉眼になった際に、「第2の光源」の光量を初期設定値より減少させる構成であって、増加させる構成ではない。
(イ)被請求人の主張に対する当審の判断
本件発明1における発光量比の調節に係る発明特定事項は「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるための調節部」であり、青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるとの構成は、初期設定値から増加させることに限定されるものではない。また、発明の詳細な説明には、「覚醒度合に関する生体情報に応じて」、「青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」ことについての特段の説明はなく(上記「第2」における検討も参照されたい)、初期設定値から増加させることに限定して解釈すべき理由も見いだせない。
そして、上記「第6 1(2)エ」で説示したとおり、甲1の図13(b)から、被照射者1又は2のいずれかが閉眼の状態から、被照射者1~3の全員が開眼状態になったときに第2の光源12の光量を増加させることが看取でき、甲1には、第2の光源12の光量を増加させることが記載されていると認められる。
よって、被請求人の意見は、採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明ではないから、無効理由1により、請求項1に係る特許を無効にすることはできない。また、本件発明1は、甲1発明、甲1に記載された事項、技術常識及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効理由2により、請求項1に係る特許を無効とすべきであり、無効理由3については、上述のとおりである。
2 無効理由4~7(本件発明2の、甲1発明を主引例とした新規性・進歩性)について
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
ア 上記1(1)アで検討したのと同様に、甲1発明の上記構成Aは、本件発明2の「赤色光を発光する赤色発光手段と、青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部」「を有する」構成と、「赤色光を発光する赤色発光手段を含む複数の発光手段を有する発光部を有する」構成において共通する。
イ 上記1(1)イで検討した事項を踏まえると、甲1発明の上記構成Bの「第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」構成は、本件発明2の「前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる」構成と、「前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる」構成において共通する。そうすると、上記構成Bは、本件発明2の「人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部と、を有する」構成と、「人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部と、を有する」構成において共通する。
ウ 甲1発明の「照明装置10」は、本件発明2の「照明装置」に相当する。
エ 上記ア~ウより、本件発明2と甲1発明とは、以下の一致点2において一致し、相違点2及び相違点3において相違する。
<一致点2>
「赤色光を発光する赤色発光手段を含む複数の発光手段を有する発光部と、
人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部と、
覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部と、
を有する照明装置。」
<相違点2>
本件発明2では、発光部を構成する発光手段が、「青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段と」を含むとともに、調節部が、「赤色発光手段」、「青色発光手段」及び「緑色発光手段」の「三つの発光手段」の発光量の総和を略一定にしたまま「それぞれの発光手段」の発光量比を変化させるためのものであるのに対し、甲1発明では、光源部1が「第2の光源12」である「580nm以下の波長域の分光成分が多く含まれるLED」を含むとともに、光源制御部3が、「第1の光源11(ピーク長が700nmの光を発するLED、すなわち、赤色発光手段)」及び「第2の光源12」の総光量を一定に保ちつつ、「第2の光源12」の光量を、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させるものである点。
<相違点3>
本件発明2は、「覚醒度合生体情報取得部は、デスクワーク作業効率の低下、運転中の居眠、疲労による運動能力の低下、対話における適切な言葉の選択効率の低下、のいずれか一以上を測定する効率・能率測定手段を有し、調節部は測定された値に応じて発光量比を変化させる効率・能率依存発光量比調節手段を有する」ものであるのに対し、甲1発明は、検出器6が「被照射者の眼の開閉状態を検出する」ものであり、「被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される、・・・光源制御部3は、センサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号である状態から、すべてのセンサ信号が開眼状態を示す信号となったとき、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」ものである点。
(2)判断
ア 無効理由4(本件発明2の、甲1発明に基づく新規性)について
上記相違点2及び3は、実質的な相違点であるから、本件発明2は甲1発明ではない。
よって、本件発明2は甲1発明ではないから、無効理由4により、請求項1に係る特許を無効にすることはできない。
イ 無効理由5(本件発明2の、甲1発明に基づく進歩性)について
事案に鑑み、上記相違点3について、先に検討する。
上記相違点3について検討するにあたり、最初に、甲1発明に甲1技術事項を適用することができるか否かについて検討する。
まず、被照射者についてみると、甲1発明における「総光量を一定に保」つ構成は、「被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される」ことを前提としている。これに対し、甲1技術事項は「被照射者が一人のみであり、その被照射者が覚醒状態を維持したい場合に適用され」るものであって、実際、甲1技術事項では「光源部1は、車両用操舵装置のステアリングホイール101のハブ101aに設け」るのであるから、もっぱら運転者に照射するものと認められ、同乗者を含めた複数名を被照射者とするものではない。
次に制御の課題についてみると、甲1発明は、「総光量を一定に保」つものであって、これは、「第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保持しており、・・・本例の被照射者3の如く開眼状態である被照射者は、略一定の光量が保持されたままであると感じることになり、開眼状態の被照射者に違和感を与えずにすむ」(段落【0080】)という記載を参照すると、会議室(段落【0077】)等において、光源部1の総光量が変化すると、複数の被照射者のうち、開眼状態の被照射者に光量の変化による違和感を与えてしまうという課題を解決しようとするものと認められる。一方、甲1技術事項が対象とする車両では、明るさが変化しないことが自然な状態である会議室等と異なり、夜間であれば、街灯の有無や対向車の灯火等により、また、日中であれば、周囲の建造物の影や車両に対する太陽の向きの変化(車両の進行方向の変化)により、車内の明るさが常態的に変化するものと認められる。そうすると、車両においては、これらの、周囲からの光の影響で、同乗者が感じる光量も常態的に変化すると認められるから、甲1技術事項が、開眼状態の被照射者に光量の変化による違和感を与えてしまうという課題を解決しようとするものとはいえない。
以上のとおり、甲1発明と甲1技術事項とは、被照射者の人数(複数又は一人)の前提が異なり、制御の課題も共通するものではないから、複数人の被照射者に対する総光量を一定に保持する甲1発明において、一人の運転者の開眼を促そうとする甲1技術事項の構成を適用する動機付けは存在しない。
仮に甲1発明に甲1技術事項を適用したとすると、次に示すように、第2の光源12の光量は一定として、第1の光源11の光量を増減すべきであるから、本件発明2の構成とはならない。
甲1における第2の光源12が有する作用・効果についてみると、段落【0002】、【0004】、【0009】、【0056】等を参照すれば、第2の光源12は、メラトニンの分泌抑制の効果の高い光であり、メラトニンの分泌を抑制することで被照射者の覚醒を効果的に促す作用・効果を有するものとしている。つまり、甲1では、第2の光源12も被照射者の覚醒を促すため作用効果を有する光としている。そうすると、被照射者の覚醒を促す観点からは、第2の光源12を減光する理由はない。それにも関わらず、甲1発明が「総光量を一定に保」つとして、第2の光源12の光量が減少することを含んでいるのは、上記したように、会議室等において、複数の被照射者がおり、開眼状態の被照射者に光量の変化による違和感を与えてしまうという課題を解決しようとするためであり、この課題を解決するために、あえて第2の光源12の光量を減少させているといえる。一方、甲1技術事項は、「被照射者が一人のみであり、その被照射者が覚醒状態を維持したい場合に適用され」るもの、具体的には、一人のみの被照射者を車両の運転者とし、運転者の覚醒状態を維持するものである。そして、甲1技術事項は、運転者の閉眼状態であるときに第1の光源11の光量を増加させつつ、第2の光源12の光量を一定に保っており、ここで、「第2の光源12の光量を一定に保」つのは、運転者の覚醒を効果的に促す第2の光源12の上記作用・効果のためといえ、あえて第2の光源12の光量を減少させる理由もない。
してみれば、仮に甲1発明に甲1技術事項を適用し、一人のみの被照射者である運転者を被照射者とした際には、一人のみの被照射者である運転者の覚醒状態を維持するため、第2の光源12の光量は一定とすべきもの、すなわち、第2の光源12の光量を一定としつつ、第1の光源11の光量を増減するものとすべきであって、本件発明2が有する「発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる」構成とはならない。(つまり、甲1発明の「第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させる」構成を、甲1技術事項の「センサ信号が閉眼状態を示す信号であるとき、第2の光源12の光量を一定に保ちつつ、第1の光源11の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させ」る構成に置換すべきものであって、この場合、本件発明2と甲1発明との一致点とした前提が覆ることになる。)
したがって、甲1発明に甲1技術事項を適用する動機づけはなく、また、仮に甲1発明に甲1技術事項を適用しても本件発明2の構成とはならない。
また、甲1には他に、甲1発明において相違点3に係る本件発明2の構成を採用することを示唆する記載もない。
よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲1技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由5により、請求項2に係る特許を無効にすることはできない。
ウ 無効理由6(本件発明2の、甲1発明及び甲1~甲4に示される周知技術に基づく進歩性)について
上記相違点3について、まず検討すると、上記相違点3に係る本件発明2の構成は、甲1~甲4に示される周知技術であるとはいえない。すなわち、甲2~甲4に開示される事項は、上記第6の2~4のとおり、ベッド等で就寝中のユーザを起床させる際に該ユーザの睡眠状態に基づき制御するものであって、「デスクワーク作業効率の低下、運転中の居眠、疲労による運動能力の低下、対話における適切な言葉の選択効率の低下、のいずれか一以上を測定する効率・能率測定手段」に基づいて発光量比を変化させるものではない。また、甲1には、上記甲1技術事項が記載されているものの、上記相違点3に係る本件発明2の構成が、周知技術であるとする根拠はない。
したがって、甲1発明に甲1~甲4に示される周知技術を適用して、上記相違点3に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲1~甲4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由6により、請求項2に係る特許を無効にすることはできない。
エ 無効理由7(本件発明2の、甲1発明及び甲5技術事項に基づく進歩性)について
甲1発明に甲5技術事項を適用して、上記相違点3に係る本件発明2の構成とすることができるか否かについて、まず検討する。
(ア)甲5技術事項について
甲5技術事項と、上記相違点3に係る本件発明2の構成との対応関係について検討する。
甲5技術事項において、「知的作業はデスクワークまたは勉強等であり、集中度は単位時間あたりの知的作業量に影響を与え」るものであることを踏まえると、甲5技術事項の「知的作業を行うユーザの集中度」及び「集中度」は、デスクワークまたは勉強等における単位時間あたりの知的作業量に影響を与える指標といえるから、本件発明2の「デスクワーク作業効率」に相当し、甲5技術事項における「ユーザの集中度の低下」は、本件発明2における「デスクワーク作業効率の低下」に相当する。
また、上記相当関係を踏まえると、甲5技術事項の「検出部11」は、「知的作業を行うユーザの集中度の低下を検出する」ものであるから、本件発明2の「効率・能率測定手段」に相当する。
したがって、本件発明2の文言を用いると、甲5技術事項は、
「照明部15を備える回復部13と、
デスクワーク作業効率の低下を検出する効率・能率測定手段と、を備え、
デスクワーク作業効率の低下が検出された場合、照明部15は、照明の色温度又は照度を変更させる、
環境制御システム10。」
ということができる。
(イ)甲1発明に甲5技術事項を適用することについて
甲1発明に甲5技術事項を適用することができるか否かについて検討する。
まず、被照射者についてみると、甲1発明は、「被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される」ものである。一方、甲5技術事項は、「ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、照明の色温度又は照度を変更させる」ものであるから、対象となるユーザは一人であることが前提と認められる。そうすると、甲1発明と甲5技術事項とは、対象となる被照射者の人数(複数又は一人)が異なるものである。
次に、検出する情報についてみると、甲1には、「検出器6として、被照射者を撮影する撮像部61と、該撮像部61を制御する撮像制御部62と、撮像部61により撮影された画像を解析する画像信号解析部63とを備えてなる撮像装置を用いているが、これに限定されず、睡眠及び/又は眠気判定を行うことが可能な検出器であればよい」(段落【0083】)と記載されていることから、甲1発明の検出器6(覚醒度合生体情報取得部)は、睡眠及び/又は眠気判定をするもの、すなわち被照射者の覚醒度合を検出するものを含み得るものの、その場合であっても、甲1発明は閉眼状態の被照射者に光刺激を与えるための第1の光源の光量を増加させるものであるから、被照射者の眼の開閉状態を判別するものと認められる。これに対して、甲5技術事項は、「集中度の低下」を検出するものであり、甲5技術事項における「集中度」は、甲5の段落【0016】に、「覚醒度の低下により、集中度も低下する場合があるが、必ずしも覚醒度の増大が集中度の増大をもたらすとは限らない。」と記載されているように、覚醒度とは、必ずしも一致しない上、段落【0037】に記載されるように、「集中度の低下」は、具体的にはユーザの視線の移動から検出するものであって、ユーザの眼の開閉状態を判別するものでもない。
してみると、甲1発明と甲5技術事項とは、被照射者の人数においても、検出する情報の種類においても異なるものであるから、甲1発明に甲5技術事項を適用する動機付けは存在せず、甲1発明に甲5技術事項を適用して、上記相違点3に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲5技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由7により、請求項2に係る特許を無効にすることはできない。
オ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張の概要
上記相違点3に関して、請求人は、令和5年1月26日付け口頭審理陳述要領書の5.(2-1-1)、(2-1-3)及び令和5年7月14日付け審判事件弁駁書の6.(2-2)において、概ね以下のように主張する。
a 甲1において、第1の光源11及び第2の光源12の発光量の総光量を一定にしたまま第1の光源11及び第2の光源12の発光量比を変化させることは、実施の形態1だけではなく、実施の形態2にも記載されている。そして、この実施の形態2において、照明装置20が設置される場所は、被照射者の枕元であり、会議室ではない。このように第1の光源11及び第2の光源12の発光量の総光量を一定にしたまま第1の光源11及び第2の光源12の発光量比を変化させることは、照明装置を会議室内に設置する態様を含む実施の形態1だけではなく、照明装置を枕元に設置する態様を含む実施の形態2にも記載されている。しかも、甲1の実施の形態1だけを取りあげてみても、照明装置10は会議室内に設置される態様に限定されず、車両に搭載される態様や入院患者に使用する態様も記載されている。また、甲1に接した当業者であれば、照明装置10を会議室や車両以外に、例えば、教室や寝室といった他の居室の照明装置として用いることができることは当然に理解でき、照明装置10を会議室以外に設置することは甲1に記載されているに等しい事項であり、甲1-1発明を会議室に設置された発明として限定して認定することは妥当ではない。(以上、令和5年1月26日付け口頭審理陳述要領書の5.(2-1-1))
b 甲1の寝室枕元の態様(実施の形態2)は、図19及び図20に示される「一人」の形態と、図21に示される「複数人」の形態の両方から成り立っており、同じ寝室枕元の態様において「複数人」の形態と「一人」の形態が共存しているのであるから、甲1の車両の態様(実施の形態1)においても、明細書に記載されたような搭乗者が運転手の「一人」のみという特殊な形態を、同乗者が「複数人」の一般的な態様とすることは、容易に想到することである。審判合議体は「一人」と「複数人」の違いを強調しているようにも思うが、「一人」であっても「複数人」であっても、同じ技術分野、ましてや同じ文献に記載された形態であり、両者の間には、一方の形態を他方の形態に適用する動機付けを否定するほどの根本的な違いはないと考える。(以上、令和5年7月14日付け審判事件弁駁書の6.(2-2)、特に、第15ページ第15行~第16ページ第17行)
c 甲1の実施の形態1として記載された(i)運転中の居眠りを測定する手段(段落【0074】)と、(ii)運転中の居眠りを測定する手段により測定された値に応じて第1の光源11及び第2の光源12を制御する事項(段落【0075】)とを、同じく実施の形態1として記載された、第1の光源11及び第2の光源12の発光量の総光量を一定にしたまま第1の光源11及び第2の光源12の発光量比を変化させる態様(段落【0078】)に適用することに何ら矛盾はなく、上記(i)(ii)の事項を甲1-1発明に適用した甲1-2発明は、甲1に開示されているといえる。(以上、令和5年1月26日付け口頭審理陳述要領書の5.(2-1-3))
(イ)請求人の主張に対する当審の判断
aの主張について
特許文献には、一般に、複数の発明が記載されることが通常である。甲1には、実施の形態1として、被照射者が複数おり、その被照射者全員が覚醒状態を維持したい場合に適用される発明であって(段落【0077】)、第1の光源11及び第2の光源12の総光量を一定に保ちつつ、第1の光源の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させるようにした(段落【0078】)又は第2の光源12の光量をセンサ信号の少なくとも一つが閉眼状態を示す信号であるときよりも増加させるものとした(図13(b);上記「第6 1(2)エ」の認定参照)ものと、被照射が一人のみであり、その被照射者が覚醒状態を維持したい場合に適用される発明であって、車両に搭載され(段落【0074】)、第2の光源の光量を一定に保ちつつ第1の光源11の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させる(段落【0075】)ものが記載されている。そして、両者は、対象とする被照射者の数や、光源の制御の方法が異なるものであって、折衷した態様が想定し得ないところ、それぞれ甲1に記載された複数の発明のうちの別発明と捉えるのが相当であり、両発明を合わせた発明が記載されているとはいえない。
よって、請求人のaの主張は採用できない。
bの主張について
甲1の段落【0102】~【0104】、【0109】~【0110】及び図19、21を参照すると、目覚まし時計に適用した例(請求人の主張における「寝室枕元」の態様)として、第1の光源11と第2の光源12の総光量を一定にしない場合が記載されると共に、複数の被照射者が同じ部屋に寝ている場合に、総光量を略一定にすることで、既に目覚めている開眼状態にある被照射者には違和感を与えないようにすることが記載されている。しかしながら、車両の例では、同乗者が被照射者であることは前提としていないこと、目覚まし時計が通常置かれる寝室は明るさが変化しないことが自然な状態であるのと異なり、車両では、周囲の明るさが常態的に変化するから、同乗者に違和感を与えないようにするという課題を有するとはいえないこと、したがって、被照射者の数や制御の課題が異なり、車両の例において光量を一定にする動機づけがないことは、上記無効理由5の検討において説示したのと同様である。
よって、請求人のbの主張は採用できない。
cの主張について
上記(i)(ii)の事項を甲1-1発明に適用した甲1-2発明が開示されているとの上記cの主張は、甲1発明に甲1技術事項を適用することが容易想到であると主張することと実質的に同じであり、これが容易想到でないことは、上記無効理由5として検討したとおりである。
よって、請求人のcの主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明2は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲1~甲4に示された周知技術に基いて、又は、甲1発明及び甲5記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、無効理由4~7によって、請求項2に係る特許を無効にすることはできない。
3 無効理由8~10(本件発明1の、甲2発明を主引例とした新規性・進歩性)について
(1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明の「赤色光を照射する赤色光源21」、「緑色光を照射する緑色光源22」、「青色光を照射する青色光源23」は、本件発明1の「赤色光を発光する赤色発光手段」、「青色光を発光する青色発光手段」、「緑色光を発光する緑色発光手段」に、それぞれ相当する。
また、甲2発明の「赤色光を照射する赤色光源21」、「緑色光を照射する緑色光源22」及び「青色光を照射する青色光源23」からなるもの、並びに、「各光源21~23」からなるものは、本件発明1の「発光部」、「前記三つの発光手段」に相当する。
そして、上記相当関係を踏まえると、甲2発明の「照明装置2は、赤色光を照射する赤色光源21と、緑色光を照射する緑色光源22と、青色光を照射する青色光源23と、」「を備え」る構成は、本件発明1の「赤色光を発光する赤色発光手段と、青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、」「を有する」構成に相当する。
イ 甲2発明の「就寝中のユーザH1の体動、脈拍、心拍、血圧、脳波などの生体情報を検出する各種センサを設ける」構成は、本件発明1の「人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部」「を有する」構成と、「人の生体情報を取得する生体情報取得部を有する」構成において共通する。
ウ 甲2発明の「これら各光源21~23を個別に調光制御する赤色点灯回路24R、緑色点灯回路24G及び青色点灯回路24Bを備え、各点灯回路24R、24G及び24Bによって各光源21~23の出力を個別に制御することにより、覚醒光L1の出力と色温度を同時に変化させることができ、各点灯回路24R、24G及び24Bは、覚醒光L1の出力可変装置及び色温度可変装置24として機能し、制御装置3は、各点灯回路24R、24G及び24Bを駆動制御して覚醒動作を行うマイクロプロセッサ31と、覚醒動作における各種動作のタイミングを計るためのタイマ回路32と、覚醒動作を実行するためのプログラムや制御パターンなどを記憶した記憶部33を備え、マイクロプロセッサ31は、覚醒動作中に照明装置2から照射される覚醒光L1の出力を変化させるように各点灯回路24R、24G及び24B(出力可変装置)制御する光出力制御部と、覚醒動作中に覚醒光の色温度を変化させるように各点灯回路24R、24G及び24B(色温度可変装置)を制御する色温度制御部として機能」する構成(以下「構成C」という。)について検討する。
上記構成Cの「各光源21~23の出力」及び「覚醒光L1の出力」における「出力」は、光源からの光の出力であるから、本件発明1の「発光量」に相当する。
上記構成Cにおいて、赤色点灯回路24R、緑色点灯回路24G及び青色点灯回路24Bは、各光源21~23の出力可変装置及び色温度可変装置として機能するものであり、光出力制御部及び色温度制御部として機能する制御装置3と協働して、覚醒光L1の出力と色温度とを制御するものであるから、甲2発明の「赤色点灯回路24R」、「緑色点灯回路24G」、「青色点灯回路24B」及び「制御装置3」からなるものは、本件発明1の「調節部」に相当する。
このことと、上記アの相当関係とを踏まえると、甲2発明の上記構成Cと、本件発明1の「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるための調節部」「を有する」構成とは、「前記三つの発光手段の発光量を変化させるための調節部を有する」構成において共通する。
エ 上記ア~ウの相当関係、及び甲2発明は、「各光源21~23」が「照明装置2」を構成するものであることを踏まえると、甲2発明の「覚醒システム1」は、「各光源21~23」(本件発明1の「発光部」に相当)、「各種センサ」(本件発明1の「覚醒度合生体情報取得部」と「生体情報取得部」の点で共通)、並びに、「赤色点灯回路24R」、「緑色点灯回路24G」、「青色点灯回路24B」及び「制御装置3」からなるもの(本件発明1の「調節部」に相当)を有するものであるから、本件発明1の「照明装置」に相当する。
オ 上記ア~エより、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点3において一致し、相違点4及び相違点5において相違する。
<一致点3>
「赤色光を発光する赤色発光手段と、
青色光を発光する青色発光手段と、
緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、
人の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記三つの発光手段の発光量を変化させるための調節部と、
を有する照明装置。」
<相違点4>
生体情報取得部が、本件発明1では、人の「覚醒度合に関する」生体情報を取得する「覚醒度合生体情報取得部」であるのに対し、甲2発明では、「就寝中のユーザH1の体動、脈拍、心拍、血圧、脳波などの生体情報を検出する各種センサ」である点。
<相違点5>
本件発明1は、調節部が、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるための」ものであるのに対し、甲2発明は、赤色点灯回路24R、緑色点灯回路24G、青色点灯回路24B及び制御装置3(以下「制御装置3等」という。)からなるものが、次の制御Aを有する点。
<制御A>
「各種センサによる測定結果に基づいて、複数の制御パターンの中から適切なものを自動選択させて実行させ、
制御パターンは、覚醒光L1の出力特性と色温度特性とを組み合わせたものであり、
各種センサによる測定結果に基づいて選択される複数の制御パターンのうちの一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすための覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇する色温度特性71とを組み合わせた制御パターンであり、同複数の制御パターンのうちの他の一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光1の色温度がほぼ一定である色温度特性72とを組み合わせた制御パターンである」制御。
(2)判断
ア 無効理由8(本件発明1の、甲2発明に基づく新規性)について
事案に鑑み、上記相違点5について、先に検討する。
甲2発明の「覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすための覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇する色温度特性71とを組み合わせた制御パターン」は、少なくとも、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間においては、覚醒光L1の出力を一定値LS’にするとともに、覚醒光L1の色温度を変化させるものであるから、本件発明1の「前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させる」構成と、「三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる」点で共通する制御パターンといえる。
しかしながら、本件発明1の「調節部」は、「覚醒度合に関する生体情報に応じて」、「三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段又は緑色発光手段の発光量比を増加させるための」ものであるのに対し、甲2発明の「制御装置3等」は、「生体情報に基づいて」、「制御パターンを選択」するためのものであって、発光量比の変化そのもの(例えば、三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま、それぞれの発光手段の発光量比を変化させること、あるいは、三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段又は緑色発光手段の発光量比を増加させること)を行わせるためのものではない。
逆に、発光量の総和を略一定としたまま発光量比を変化させることが、何に応じたものであるかを見ると、本件発明1における発光量比は、「覚醒度合に関する生体情報に応じて」変化させるものであるのに対し、甲2発明では、覚醒度合に関する生体情報に応じて行われるものではない。換言すると、本件発明1と甲2発明では、発光量の総和を略一定としたまま発光量比を変化させることが、何に応じて行われるのかが異なるものである。すなわち、甲2発明における覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇する色温度特性71は、前者は、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるため、後者は、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすためのものであって、甲2発明において、覚醒光L1の出力を一定値LS’としつつ、覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇するのは、発光素子の特性やユーザの快適性に対応するために設定されたものである。そして、発光素子の特性やユーザの快適性は、覚醒度合に関する生体情報でないことは明らかであるから、甲2発明において、覚醒光L1の出力を一定値LS’としつつ、色温度をなだらかに上昇させることは、覚醒度合に関する生体情報に応じたものではない。
してみれば、甲2発明の「制御装置3等」は、制御パターンを選択するものであって発光量比を変化させるためのものではない点でも、発光量比の変化が覚醒度合に関する生体情報に応じたものではない点でも、本件発明1の「調節部」と異なるものである。
したがって、上記相違点5は実質的な相違点であるから、上記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明ではない。
なお、本件発明1は、色温度を略一定に制御する公知技術を採り上げ、「明るさを維持することが求められる照明装置に係る技術を適用することはできない」ことを発明が解決しようとする課題(段落【0006】)として、三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるため調節部を有するものであるのに対して、甲2に記載されたものは「覚醒光を照射して睡眠者の覚醒を促す」(段落[0001])ものであって、覚醒光の出力を増加させ、覚醒時刻で最大値LMAXとなるとなるように制御する(段落[0015]、図3、図5等)というものであるから、本件発明1と甲2に記載されたものは、技術思想全体としてみれば全く異なるものである。
よって、本件発明1は甲2発明ではないから、無効理由8により、請求項1に係る特許を無効にすることはできない。
イ 無効理由9(本件発明1の、甲2発明に基づく進歩性)について
上記相違点5について、まず検討すると、甲2発明の「制御装置3等」を、上記相違点5に係る本件発明1の「調節部」の構成とすることは、甲2には記載されていないし示唆もない。
すなわち、甲2発明の「制御装置3等」が行うことを「生体情報に基づいて」「制御パターンを選択」することに替えて、覚醒度合に関する生体情報に応じて三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段のへ発光量比を変化させるものとすること、さらには「覚醒度合に関する生体情報に応じて三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段又は緑色発光手段の発光量比を増加させる」ものとすることは、甲2には記載も示唆もない。
そうすると、甲2発明に基いて、上記相違点5に係る本件発明1を構成することは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、上記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由9により、請求項1に係る特許を無効にすることはできない。
ウ 無効理由10(本件発明1の、甲2発明及び甲1~甲4に示される周知技術に基づく進歩性)について
上記相違点5について、まず検討すると、上記相違点5に係る本件発明1の調節部、すなわち「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段もしくは緑色発光手段の発光量比を増加させるための」調節部が、本件特許出願前に周知技術であったとする根拠はない。以下、補足する。
甲2には、上記アで説示したように、上記相違点5に係る本件発明1の調節部については記載されていない。
甲3に記載されたものは、甲3の段落【0161】、【0180】及び図6(c)等に記載されているように、就寝者が照明開始時刻(T3)から所定時間Δt2経過した後に、照度が一定に維持したまま、白色LED(42)の照度が漸次大きく、電球色LED(41)の照度が漸次小さくなるパターンを入力設定して行う制御であって、甲3の段落【0180】には、「上記実施形態1では、就寝者が設定ボタン(33)によって、予め自己の睡眠状態を予測して、照明ユニット(31)の動作を入力するようにしたが、ベッド本体(10)に就寝者の睡眠状態を検知するセンサなどを設けることにより、就寝者が入力することなく、該センサの情報によって、照明ユニット(31)の照度などの照明条件を適宜設定するようにしてもよい。」と記載されているものの、センサの情報によって具体的に照度などの照明条件をどのように設定するのかは特定できず、人の覚醒度合に関する生体情報に応じて発光量の総和を略一定にしたまま発光量比を変化させるように調節する制御が開示されているということはできない。
甲4に記載されたものは、甲4の段落【0033】~【0034】、図11等に記載されているように、時刻に応じて蛍光ランプ(D)31、蛍光ランプ(N)32、蛍光ランプ(L)33の照度を低下、あるいは高くするものであり、3つの蛍光ランプによる合計照度(D+N+L)は、時刻t1過ぎあたりまで略一定といえる(図11参照)ものの、3つの蛍光ランプの照度を低下、あるいは高くすることは、時刻に応じて行うものであって、人の覚醒度合に関する生体情報に応じて行うものではない。なお、甲4の段落【0036】、【0037】には、ユーザの起床を検知して、又は睡眠深度を計測して、相関色温度と明るさを増加させることが記載されているが、明るさを増加させるのであるから、発光量の総和を一定にするものではない。
甲1には、甲1発明として、上記1(1)イで説示したように、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて、前記赤色光を発光する赤色発光手段を含む前記複数の発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま特定の発光手段の発光量比を増加させるための調節部」について記載されていると認められるものの、甲1の記載をもって、上記相違点5に係る本件発明1の調節部が、本件特許出願前に周知技術であったとまではいえない。
また、仮に、上記相違点5に係る本件発明1の調節部が本件特許出願前に周知技術であったとしても、甲2発明は、各種センサによる測定結果に基づいて、複数の制御パターンの中から適切なものを自動選択させて実行させるものであり、人の覚醒度合に関する生体情報に応じて発光手段の発光量を変化させる調節部とは、異なるものであることは、上記アで説示したとおりであるから、甲2発明に当該周知技術を適用する動機付けは見いだせない。
したがって、甲2発明及び甲1~甲4に示される周知技術に基いて、上記相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、上記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1~甲4に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由10により、請求項1に係る特許を無効にすることはできない。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張の概要
上記相違点5に関して、請求人は、令和5年1月26日付け口頭審理陳述要領書の5.(2-2-1)及び令和5年7月14日付け審判事件弁駁書の6.(2-3)において、概ね以下のように主張する。
a 甲2には、センサで取得した人の覚醒度合に関する生体情報に基づいて、図6の一点鎖線で示される出力特性63(つまり覚醒光L1の出力が一定値LS’)と図7等に示される色温度特性とを組み合わせた制御パターンを選択して、赤色光源21、緑色光源22及び青色光源23の発光量比を変化させて覚醒光L1を制御することが開示ないし示唆されているといえる。(以上、令和5年1月26日の口頭審理陳述要領書の5.(2-2-1)、特に、第9ページ第34行~第10ページ第16行)
b 合議体は、甲2は、発光量比を変化させる制御パターンは、複数の制御パターンの中から自動選択する際の選択肢の一つの制御パターンであると認定し、「(発光量の総和を略一定にしたまま発光量比を変化させるよう)制御する」ことと、「(そのような)制御パターンを選択する」こととには差異があると考えていると思われるが、そうであっても、3つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる制御パターンが開示されていることに変わりはない。なお、合議体は、生体情報に応じて発光量を制御するとは、リアルタイムに「制御する」ことであって、あらかじめ定められた一定のパターンで「制御する」ことではないと判断しているとも考えられるが、生体情報に応じて発光量を制御していること自体に変わりはない。(以上、令和5年7月14日付けの審判事件弁駁書の6.(2-3)、特に、第19ページ第15行~第20ページ第10行)
(イ)請求人の主張に対する当審の判断
aの主張について
上記アで説示したように、甲2発明の「制御装置3等」は、「生体情報に基づいて」、「制御パターンを選択」するものであって、本件発明1の「調節部」のように、「覚醒度合に関する生体情報に応じて」「三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたまま青色発光手段又は緑色発光手段の発光量比を増加させる」ものではない。
よって、請求人のaの主張は採用できない。
bの主張について
請求人は、甲2は、制御パターンを選択し、あらかじめ定められた一定のパターンで制御するものであるが、そうであっても、生体情報に応じて発光量を制御していること自体に変わりはないと主張する。しかしながら、甲2発明の制御装置3等が、覚醒度合に関する生体情報に応じて発光量比を制御するためのものと異なることは、上記アで説示したとおりである。
加えて、請求人は、3つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる制御パターンが開示されていることに変わりはないと主張する。しかしながら、甲2発明の制御パターンの選択肢には、「覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光1の色温度がほぼ一定である色温度特性72とを組み合わせた制御パターン」も含んでおり、この選択肢では、色温度がほぼ一定であるから、3つの発光手段の発光量比を変化させない。そうすると、甲2発明において、選択しうる制御パターンの一つに3つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させる部分が含まれているとしても、制御パターンを選択することは、発光量の総和を略一定にしたまま発光量比を変化させるためのものではない。
よって、請求人のbの主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、又は、甲2発明及び甲1~甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、無効理由8~10により、請求項2に係る特許を無効にすることはできない。
4 無効理由11(本件発明2の、甲2発明及び甲1技術事項又は甲5技術事項に基づく進歩性)について
(1)対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
ア 上記3(1)アで検討したのと同様に、甲2発明の「照明装置2は、赤色光を照射する赤色光源21と、緑色光を照射する緑色光源22と、青色光を照射する青色光源23と、」「を備え」る構成は、本件発明2の「赤色光を発光する赤色発光手段と、青色光を発光する青色発光手段と、緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、」「を有する」構成に相当する。
イ 上記3(1)イで検討したのと同様に、甲2発明の「就寝中のユーザH1の体動、脈拍、心拍、血圧、脳波などの生体情報を検出する各種センサを設ける」構成は、本件発明2の「人の覚醒度合に関する生体情報を取得する覚醒度合生体情報取得部」「を有する」構成と、「人の生体情報を取得する生体情報取得部を有する」構成において共通する。
ウ 上記3(1)ウでの検討を踏まえると、甲2発明の上記構成Cと、本件発明2の「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための調節部」「を有する」構成とは、「前記三つの発光手段の発光量を変化させるための調節部を有する」構成において共通する。
エ 上記3(1)エで検討したのと同様に、甲2発明の「覚醒システム1」は、本件発明2の「照明装置」に相当する。
オ 上記ア~エより、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点4において一致し、相違点6~8において相違する。
<一致点4>
「赤色光を発光する赤色発光手段と、
青色光を発光する青色発光手段と、
緑色光を発光する緑色発光手段とを有する発光部と、
人の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記三つの発光手段の発光量を変化させるための調節部と、
を有する照明装置。」
<相違点6>
生体情報取得部が、本件発明2では、人の「覚醒度合に関する」生体情報を取得する「覚醒度合生体情報取得部」であるのに対し、甲2発明では、「就寝中のユーザH1の体動、脈拍、心拍、血圧、脳波などの生体情報を検出する各種センサ」である点。
<相違点7>
本件発明2は、調節部が、「覚醒度合生体情報取得部で取得した人の覚醒度合に関する生体情報に応じて前記三つの発光手段の発光量の総和を略一定にしたままそれぞれの発光手段の発光量比を変化させるための」ものであるのに対し、甲2発明は、赤色点灯回路24R、緑色点灯回路24G、青色点灯回路24B及び制御装置3(以下「制御装置3等」という。)からなるものが、次の制御Aを有する点。
<制御A>
「各種センサによる測定結果に基づいて、複数の制御パターンの中から適切なものを自動選択させて実行させ、
制御パターンは、覚醒光L1の出力特性と色温度特性とを組み合わせたものであり、
各種センサによる測定結果に基づいて選択される複数の制御パターンのうちの一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、いつの時点でユーザH1が覚醒したとしても、ユーザH1に快適な覚醒をもたらすための覚醒動作開始時刻から時間の経過と共に覚醒光L1の色温度がなだらかに上昇する色温度特性71とを組み合わせた制御パターンであり、同複数の制御パターンのうちの他の一つは、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間において、低出力時にすべてのLED素子の出力を一定のレベルにそろえるための覚醒光L1の出力が一定値LS’となる出力特性63と、覚醒動作開始時刻から第1の時点までの間は、覚醒光1の色温度がほぼ一定である色温度特性72とを組み合わせた制御パターンである」制御。
<相違点8>
本件発明2は、「覚醒度合生体情報取得部は、デスクワーク作業効率の低下、運転中の居眠、疲労による運動能力の低下、対話における適切な言葉の選択効率の低下、のいずれか一以上を測定する効率・能率測定手段を有し、調節部は測定された値に応じて発光量比を変化させる効率・能率依存発光量比調節手段を有する」ものであるのに対し、甲2発明は、そのような構成を有しない点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点8について先に検討する。
甲2発明は、各種センサによる測定結果に基づいて「複数の制御パターンの中から適切なものを自動選択」させるものであるものであるのに対し、甲1技術事項は、「光源制御部3は、センサ信号が閉眼状態を示す信号であるとき、第2の光源12の光量を一定に保ちつつ、第1の光源11の光量をセンサ信号が開眼状態を示す信号であるときよりも増加させ、閉眼状態の運転者の開眼を促す」ものであり、制御パターンを自動選択するものではないし、甲2発明において、制御パターンを自動選択することに換えて、甲1技術事項を採用する理由もない。また、甲5技術事項は、「ユーザの集中度の低下が検出された場合、照明部15は、照明の色温度又は照度を変更させる」ものであり、「集中度」は、甲5の段落【0016】に、「覚醒度の低下により、集中度も低下する場合があるが、必ずしも覚醒度の増大が集中度の増大をもたらすとは限らない。」と記載されているように、覚醒度とは必ずしも一致しない(上記2(2)エでも説示したとおり)から、覚醒度合生体情報部に関するものではない。
また、甲2発明は、就寝中のユーザを覚醒させるものであるのに対し、甲1技術事項の運転者や甲5技術事項の知的作業を行うユーザは就寝中ではないから、対象となるユーザが異なり、甲2発明に甲1技術事項又は甲5技術事項を適用する動機付けもない。
したがって、甲2発明、及び甲1技術事項又は甲5技術事項に基いて、上記相違点8に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、上記相違点6及び7について、検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明、及び甲1技術事項又は甲5技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明2は、甲2発明、及び甲1技術事項又は甲5技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由11により、請求項2に係る特許を無効にすることはできない。
第8 むすび
以上のとおり、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきものである。
また、請求人が主張する無効理由及び証拠方法によっては、請求項2に係る特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条の規定により、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-800069