特許異議申立
2024-700600
照明器具
- 審判番号
- 2024-700600
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-191049
- 登録番号
- 7404216
- 請求日
- 2024年06月24日
- 審決日
- 2024年09月17日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【権利者】三菱電機照明株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【異議申立人】河南 満洋
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 高橋 学
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.121-Y (H05B) / P1651.536-Y (H05B) / P1651.537-Y (H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7404216号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7404216号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7404216号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成27年3月30日に出願した特願2015-069510号の一部を平成31年3月7日に新たな特許出願とした特願2019-041679号の一部を更に令和2年11月17日に新たな特許出願としたものであり、令和5年12月15日にその特許権の設定登録がされ、同年12月25日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~4に係る特許に対し、令和6年6月24日に特許異議申立人河南満洋(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、本件特許の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】
LEDモジュールと、
前記LEDモジュールを点灯制御する点灯回路と、
前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御装置と無線通信を行うアンテナを有する無線通信モジュールと、
前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーとを備え、
前記無線通信モジュールは、光信号を受信する受光素子を有し、
前記無線通信モジュールのアドレスは、前記受光素子が受信した前記光信号に基づいて設定され、
前記無線通信モジュールは、前記LEDモジュールの開口部から前記受光素子の一部分が露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され、
前記受光素子は、直接触られないように前記カバーにより保護され、
前記LEDモジュールは長尺状であり、
前記受光素子に光を入力する受光部が前記LEDモジュールの幅方向の一方の側の端部寄りに配置されている照明器具。
【請求項2】
前記LEDモジュールが下面に取り付けられた取付板を更に備え、
前記無線通信モジュールは前記取付板の上面に取り付けられている請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記カバーは、前記取付板に固着されている請求項2に記載の照明器具。
【請求項4】
被取付部に設置される器具本体と、
前記器具本体に取り付けられる光源ユニットとを備え、
前記光源ユニットは、
LEDモジュールと、
前記LEDモジュールを点灯制御する点灯回路と、
前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御装置と無線通信を行うアンテナを有する無線通信モジュールと、
前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーと、
前記光源ユニットを前記器具本体に取り付ける2つの取り付け具とを有し、
前記無線通信モジュールと前記点灯回路は前記2つの取り付け具の間に配置され、
前記無線通信モジュールは、光信号を受信する受光素子を有し、
前記無線通信モジュールは、前記光源ユニットの開口部から前記受光素子の一部分が前記LEDモジュール側に露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され、
前記無線通信モジュールは、前記器具本体と前記カバーとの間に配置された照明器具。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、次の証拠を提示し、以下の特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
1 提示された証拠
甲第1号証:特開2014-78426号公報
甲第2号証:特開2013-65452号公報
甲第3号証:特開2006-93098号公報
甲第4号証:特開2014-22101号公報
以下、甲第○号証を甲○という。
2 申立理由
(1)甲1を主たる証拠としての本件発明1~4の進歩性の欠如[特許法第29条第2項(同法第113条第2号)]
本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
(2)請求項1~4に対する明確性要件違反[特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)]
本件発明1~4は、明確でない。
(3)請求項1~4に対するサポート要件違反[特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)]
本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(4)実施可能要件違反[特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)]
本件の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
第4 当審の判断
1 申立理由(1)[進歩性]について
(1)甲1について
ア 甲1の記載事項
甲1には、図1~図8の記載に加え、以下の事項が記載されている。なお、下線については、当審で付与したものである(甲2~甲4の記載についても同様)。
(ア)「【0012】
本実施形態の照明器具Aは、図1~図4に示すように、天井直付け型の照明器具であり、吊ボルト(図示せず)を用いて天井材100に取り付けられる器具本体1と、器具本体1に対して着脱自在に取り付けられる光源ユニット2とを備える。」
(イ)「【0014】
光源ユニット2は、図2に示すように、複数(図2では2個)のLED基板22と、LED基板22が取り付けられる取付部材21と、LED基板22を覆うようにして取付部材21に取り付けられるカバー部材23と、LED基板22に所定の点灯電力を供給する電源装置24と、端子台ブロック25とを有する。
【0015】
LED基板22は、前後方向に長い矩形板状に形成されたプリント基板221からなり、プリント基板221の下面には複数のLED(発光ダイオード)222が前後方向(長手方向)に沿って実装されている。また、一方(図2中の右側)のLED基板22の一端部(右端部)には、電源装置24との間を電気的に接続するためのコネクタ223が実装されている。このコネクタ223には電線(図示せず)が接続されており、この電線の端部を電源装置24に接続することでLED基板22と電源装置24とが電気的に接続される。また、各LED基板22において隣接するLED基板22と対向する端部には、電源供給用のコネクタ224がそれぞれ実装されている。そして、両LED基板22,22のコネクタ224,224を接続することで、一方(図2中の右側)のLED基板22から他方(図2中の左側)のLED基板22に電源を供給することができる。」
(ウ)「【0020】
ここで、図7は上述した取付部材21の要部拡大図であり、本実施形態では、取付部材21を器具本体1に係止するための係止金具26及び係止ばね27が取付部材21に取り付けられている。係止金具26は、板金に曲げ加工を施すことで形成され、略矩形板状に形成された金具本体261の左端縁には、側方(左側)に延出する矩形板状の係止板262が設けられている。また、係止板262の先端には、係止板262と直交する方向(図7中の下方向)に延出する引掛け部262aが設けられている。さらに、金具本体261の右端縁には、係止ばね27を保持するための保持部263と、係止ばね27の一方の腕部272が係止される係止部264とが設けられている。」
(エ)図2には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001415337000001.jpg]
」
(オ)図4には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001415337000002.jpg]
」
イ 甲1からの認定事項
(ア)前記ア(エ)から、LED基板22が長尺状であることが看取できる。
(イ)前記ア(オ)から、電源装置24は、2つの係止ばね27の間に配置されているといえる。
ウ 甲1発明
前記ア、イから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「天井材100に取り付けられる器具本体1と、該器具本体1に対して着脱自在に取り付けられる光源ユニット2とを備える照明器具Aであって、
前記光源ユニット2は、長尺状のLED基板22と、LED基板22が取り付けられる取付部材21と、前記LED基板22を覆うようにして取付部材21に取り付けられるカバー部材23と、前記LED基板22に所定の点灯電力を供給する電源装置24とを有し、
前記LED基板22は、複数のLED(発光ダイオード)222が実装されたプリント基板221からなり、
前記取付部材21には、前記取付部材21を前記器具本体1に係止するための2つの係止ばね27が取り付けられ、
前記電源装置24は、前記2つの係止ばね27の間に配置されている
照明器具A。」
(2)甲2について
甲2には、図1~図4の記載に加え、以下の事項が記載されている。
ア「【0017】
図1および図2に示すように、本発明に用いられる照明機器10は、照明ユニット20と、無線通信手段33を有する通信ユニット30から構成されており、複数の照明機器10が、一定の間隔で、通路の天井に設置されている。照明機器10の設置位置は天井に限られず、壁に設置してもよい。」
イ「【0022】
無線通信手段33は、制御ユニット40または他の照明機器10から送信された無線信号による点灯情報を受信し、他の照明機器10に対して無線信号により点灯情報を送信するものである。無線信号として、代表的には、38kHzで変調された赤外線信号を用いることができる。赤外線受信手段32としては、38kHzで変調された赤外線を受光する赤外線受光モジュールを用いることができる。赤外線受光モジュールの出力端子は第一の制御部24の入力端子に接続されている。赤外線送信手段31としては、赤外線発光ダイオードが用いられ、制御手段24の出力端子に接続される。・・・赤外線送信手段31は一つに限られず、照射範囲を拡大するために複数個用いても良い。また、赤外線受信手段32も一つに限られず、受光範囲を拡大するために複数個用いても良い。無線通信は、赤外線通信に限られず、電波による無線通信であってもよい。したがって、無線通信手段33として、電波を放射・吸収するアンテナと、検知情報を変調・復調する無線通信モジュールを用いてもよい。」
(3)甲3について
甲3には、図1~図9の記載に加え、以下の事項が記載されている。
ア 「【0044】
図2に示すように、照明システムは、例えば、オフィスビルなどの各フロアや各エリアの天井に設置される複数の照明装置11を集中制御するもので、各照明装置11には固有のアドレス情報やグループ情報が設定されており、集中制御を行う図示しない主制御装置から各照明装置11に対してアドレス情報やグループ情報に対応付けて制御信号を送信することにより、各照明装置11は該当するアドレス情報やグループ情報の制御信号を受信して点灯状態を制御するように構成されている。」
イ「【0045】
図1に示すように、各照明装置11は、光源としての蛍光ランプ12、この蛍光ランプ12を調光点灯可能な例えばインバータ回路を用いた高周波点灯装置などの点灯装置13、例えば電波などの媒体を利用して無線信号を送受信する受信部としての照明側送受信部14、無線信号を送受信するアンテナ15、照明側送受信部14を通じて主制御装置などと通信して点灯装置13を制御する照明側制御部16を備えている。この他、図示しないが、設定確認や動作確認のためのブザーなどの確認音を発生する音発生手段や、照明空間の明るさを検知するセンサを備えていている。」
ウ「【0047】
そして、照明側制御部16は、アドレス情報やグループ情報が未設定の場合に照明側送受信部14で設定用の無線信号を受信したとき、設定対象となる設定モードに切り換わるとともに、点灯または消灯の状態にあった蛍光ランプ12を点滅させたり、100%点灯にあった蛍光ランプ12を50%点灯に調光するなどの点灯状態を変更する機能、設定対象にあって照明側送受信部14でアドレス情報やグループ情報の無線信号を受信したとき、自己のアドレス情報やグループ情報として設定し、設定対象となる設定モードを解除するとともに、蛍光ランプ12の点灯状態の変更を解除して点滅から点灯または消灯に戻したり、50%点灯から100%点灯に戻す機能、アドレス情報やグループ情報の設定後は照明側送受信部14で設定用の無線信号、アドレス情報やグループ情報の無線信号を受信しても反応せず、特定の設定解除用の無線信号により設定を解除する機能を有している。」
(4)甲4について
甲4には、図1~図9の記載に加え、以下の事項が記載されている。
ア「【0005】
しかしながら、受光素子においては、リモコン送信機から送信される赤外線の他に、LEDチップから発せられた光が到達する場合がある。LEDチップから発せられた光が受光素子に到達すると、ノイズとして作用し、その結果、リモコンの効きが悪くなるといった不具合が生じ得た。」
イ「【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、赤外線リモコンの効きを改善するのに適したLED照明器具を提供することをその課題とする。」
ウ「【0027】
図1~図5は、本発明の第1実施形態に係るLED照明器具を示している。本実施形態のLED照明器具101は、本体200、複数のLEDモジュール300、電源基板410、電源部420、受光素子510、可視光カットフィルタ520、LEDカバー600、およびカバー700を備えている。・・・」
エ「【0028】
本体200は、LED照明器具101の土台をなす部分であり、図3~図5に示すように、センター部材210と、支持板220と、バックアップ板230とを備えている。センター部材210は、平面視(本発明でいう第1方向視)において略円環状とされており、たとえば所定の強度を有する樹脂により一体形成されている。」
オ「【0029】
・・・支持板220には、図4における上下方向(第1方向)に貫通する開口部221が設けられている。開口部221は、支持板220の径方向における中間に位置している。」
カ「【0040】
受光素子510は、図外の赤外リモコン送信機から送信された赤外線信号を受信するためのものであり、本実施形態においては、電源基板410に搭載されている。受光素子510は、支持板220に対して図4における図中上側(第1方向設置側)に位置しており、平面視(第1方向視)において支持板220の開口部221と重なっている。上記赤外リモコン送信機から送信される赤外線信号は、たとえば36.7kHzの搬送波で振幅変調されている。」
キ「【0042】
可視光カットフィルタ520は、赤外線を透過させつつ、可視光線を吸収して当該可視光線の透過を防止するものであり、支持板220に取り付けられている。図4および図9に示すように、可視光カットフィルタ520は、支持板220に対して図中下側(第1方向照射側)に位置しており、円形の板状部521と、板状部521につながる起立状の環状壁部522とを有する。板状部521は、支持板220の開口部221を覆うとともに、外周寄りの部分が支持板220と重なっている。板状部521における支持板220との重合部分の幅W1は、板状部521の厚みT1よりも大とされている。」
ク「【0049】
・・・LEDチップ310からの光は、可視光カットフィルタ520によって効率よく吸収され、受光素子510に到達しにくい。したがって、LED照明器具101によれば、受光素子510においてリモコンからの赤外線信号を効率よく受信することができ、リモコンの効き具合の改善を図ることができる。」
(5)本件発明1の進歩性について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、その機能及び構造から、後者の「複数のLED(発光ダイオード)222が実装されたプリント基板221からな」る「LED基板22」が前者の「LEDモジュール」に相当し、以下同様に、後者の「所定の点灯電力を供給する」ことが前者の「点灯制御する」ことに、後者の「電源装置24」が前者の「点灯回路」に、後者の「長尺状」が前者の「長尺状」に、後者の「照明器具A」が前者の「照明器具」に、それぞれ相当する。
そして、以上の相当関係から以下のことがいえる。
(イ)後者の「LED基板22に所定の点灯電力を供給する電源装置24」は前者の「LEDモジュールを点灯制御する点灯回路」に相当する。
(ウ)後者の「LED基板22を覆う」「カバー部材23」は、透光性を有していることは明らかなので、前者の「LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバー」に相当する。
(エ)後者の「長尺状のLED基板22」が前者の「LEDモジュール」が「長尺状である」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「LEDモジュールと、
前記LEDモジュールを点灯制御する点灯回路と、
前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーとを備え、
前記LEDモジュールは長尺状である、
照明器具。」
との点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1が「前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御装置と無線通信を行うアンテナを有する無線通信モジュール」「を備え、」「前記無線通信モジュールは、光信号を受信する受光素子を有し、前記無線通信モジュールのアドレスは、前記受光素子が受信した前記光信号に基づいて設定され、前記無線通信モジュールは、前記LEDモジュールの開口部から前記受光素子の一部分が露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され、前記受光素子は、直接触られないように前記カバーにより保護され、」「前記受光素子に光を入力する受光部が前記LEDモジュールの幅方向の一方の側の端部寄りに配置されている」のに対して、甲1発明1は、かかる「無線通信モジュール」を備えていない点。
イ 相違点1についての検討
前記(2)~(4)における甲2~甲4の各記載事項を踏まえると、甲2~甲4のいずれにも、前記相違点1に係る本件発明1の構成であるところの「他の照明器具又は照明制御装置と無線通信を行うアンテナ」と「受光素子」とを「有」する「無線通信モジュール」の「アドレス」を「前記受光素子が受信した光信号に基づいて設定」することについては、記載も示唆もされていない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明2~3の進歩性について
本件発明2~3は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、前記(2)イと同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件発明4の進歩性について
ア 本件発明4と甲1発明との対比
(ア)本件発明4と甲1発明とを対比すると、その機能及び構造から、後者の「天井材100」が前者の「被取付部」に相当し、以下同様に、後者の「器具本体1」が前者の「器具本体」に、後者の「光源ユニット2」が前者の「光源ユニット」に、後者の「複数のLED(発光ダイオード)222が実装されたプリント基板221からな」る「LED基板22」が前者の「LEDモジュール」に、後者の「所定の点灯電力を供給する」ことが前者の「点灯制御する」ことに、後者の「電源装置24」が前者の「点灯回路」に、後者の「2つの係止ばね27」が前者の「2つの取付け具」に、後者の「照明器具A」が前者の「照明器具」に、それぞれ相当する。
そして、以上の相当関係から、以下のことがいえる。
(イ)後者の「天井材100に取り付けられる器具本体1」は、前者の「被取付部に設置される器具本体」に相当する。
(ウ)後者の「器具本体1に対して着脱自在に取り付けられる光源ユニット2」は、前者の「器具本体に取り付けられる光源ユニット」に相当する。
(エ)後者の「LED基板22に所定の点灯電力を供給する電源装置24」は前者の「LEDモジュールを点灯制御する点灯回路」に相当する。
(オ)後者の「LED基板22を覆う」「カバー部材23」は、透光性を有していることは明らかなので、前者の「LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバー」に相当する。
(カ)後者の「前記取付部材21を前記器具本体1に係止するための2つの係止ばね27」は、「取付部材21」が「光源ユニット2」を構成する部材なので、前者の「光源ユニットを前記器具本体に取り付ける2つの取り付け具」に相当する。
(キ)後者の「取付部材21には、前記取付部材21を前記器具本体1に係止するための2つの係止ばね27が取り付けられ」ることは、「取付部材21」が「2つの係止ばね27」を有しているといえるので、前記(カ)も踏まえると、前者の「光源ユニット」が「前記光源ユニットを前記器具本体に取り付ける2つの取り付け具」「を有」することに相当する。
(ク)前記(イ)~(キ)から、後者の「光源ユニット2は、長尺状のLED基板22と、LED基板22が取り付けられる取付部材21と、前記LED基板22を覆うようにして取付部材21に取り付けられるカバー部材23と、前記LED基板22に所定の点灯電力を供給する電源装置24とを有し、前記取付部材21には、前記取付部材21を前記器具本体1に係止するための2つの係止ばね27が取り付けられ」ることは、前者の「光源ユニットは、LEDモジュールと、前記LEDモジュールを点灯制御する点灯回路と、」「前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーと、前記光源ユニットを前記器具本体に取り付ける2つの取り付け具とを有」することに相当する。
(ケ)後者の「電源装置24は、前記2つの係止ばね27の間に配置されている」ことと、前者の「前記無線通信モジュールと前記点灯回路は前記2つの取り付け具の間に配置され」ることとは、「点灯回路は前記2つの取り付け具の間に配置され」ることで共通する。
そうすると、本件発明4と甲1発明とは、
「被取付部に設置される器具本体と、
前記器具本体に取り付けられる光源ユニットとを備え、
前記光源ユニットは、
LEDモジュールと、
前記LEDモジュールを点灯制御する点灯回路と、
前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーと、
前記光源ユニットを前記器具本体に取り付ける2つの取り付け具とを有し、
前記点灯回路は前記2つの取り付け具の間に配置された照明器具」
との点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)
本件発明4は、「光源ユニット」が「点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御装置と無線通信を行うアンテナを有する無線通信モジュール」「を有し、」「前記無線通信モジュール」「は前記2つの取り付け具の間に配置され、前記無線通信モジュールは、光信号を受信する受光素子を有し、前記無線通信モジュールは、前記光源ユニットの開口部から前記受光素子の一部分が前記LEDモジュール側に露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され、前記無線通信モジュールは、前記器具本体と前記カバーとの間に配置され」るのに対して、甲1発明は、かかる「無線通信モジュール」を備えていない点。
イ 相違点2についての検討
前記(2)~(4)における甲2~甲4の各記載事項を踏まえると、甲2~甲4のいずれにも、前記相違点2に係る本件発明4の構成であるところの「光源ユニットの開口部から受光素子の一部分が前記LEDモジュール側に露出するように、LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置」することについては、記載も示唆もされていない。
なお、甲4には、本体200の支持板220に設けられた開口部221と前記支持板220に位置するリモコンからの赤外線信号を効率よく受信する受光素子510の位置とを平面視において重ねることは記載されているものの、甲4においては、前記開口部221を可視光カットフィルタ520で覆っており、前記開口部221から前記受光素子510がLEDモジュール300側に露出しているとはいえない。
そして、甲4においては、前記可視光カットフィルタ520によってLED照明器具101のLEDチップ310からの光を吸収することで、前記受光素子510のリモコンからの赤外線信号の受信効率を上げることを目的としていることから、前記可視光カットフィルタ520を用いずに、前記開口部221から前記受光素子510を露出させる構成を採ることは想定していないといえる。
したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由(2)[明確性要件違反]について
(1)申立理由(2)の内容
申立理由(2)は、特許異議申立書の36ページ~37ページの「(ア)明確性」の記載を踏まえると、要するに、本件特許の特許請求の範囲の請求項1(以下、単に「請求項1」という。他の請求項についても同様。)には、「前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバー」及び「前記無線通信モジュールは、前記LEDモジュールの開口部から前記受光素子の一部分が露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」るとの記載があり、請求項4には、「前記光源ユニットは、LEDモジュールと、……前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーと、……を有し」及び「前記無線通信モジュールは、前記光源ユニットの開口部から前記受光素子の一部分が露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」るとの記載があり、本件特許の明細書(以下、単に「明細書」という。)の段落【0038】には、「無線通信モジュール4は、LEDモジュール2の開口部から受光素子23の一部分が露出するように、LEDモジュール2を覆うカバー18の内部に配置されている」との記載がある一方で、本件特許の図面(以下、単に「図面」という。)の図16には、カバー18に開口部が設けられており、「無線通信モジュール4は、カバー18の開口部から受光素子23の一部分が露出するように、LEDモジュール2を覆うカバー18の内部に配置されている」構成が示されているので、明細書の記載事項と図16との間で、開口部の説明が矛盾しており、本件特許発明1、4の「LEDモジュール」の定義が不明確であるので、本件特許発明1~4は、明確ではないというものである。
(2)申立理由(2)の検討
発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面(以下「明細書等」という。)を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断される。
したがって、以下では、上記の観点に立って、明確性要件について検討を行う。
ア 本件特許の特許請求の範囲の記載について
請求項1の記載をみると、請求項1における「前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバー」との記載からは「透光性を有するカバー」が「LEDモジュールを覆」うこと、及び「透光性を有するカバー」が「LEDモジュール」には含まれないことが明らかに認められ、以下同様に、「前記無線通信モジュールは、光信号を受信する受光素子を有し、」との記載からは「無線通信モジュール」が「光信号を受信する受光素子を有」することが、「前記無線通信モジュールは、前記LEDモジュールの開口部から前記受光素子の一部分が露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」との記載からは「LEDモジュール」が「開口部」を有し、該「開口部」から「受光素子の一部が露出するように、」「無線モジュール」が「LEDモジュールを覆うカバーの内部に配置され」ることが明らかに認められる。
そうすると、請求項1において、「照明器具」における「LEDモジュール」、「透光性を有するカバー」、「無線通信モジュール」、及び「受光素子」のそれぞれについての関係は明確であるといえる。
また、請求項4においても、「光源ユニットは、LEDモジュール」「を有し」との記載から、「光源ユニット」と「LEDモジュール」の関係が明らかであり、更に、請求項1と同様に、「照明器具」における「光源ユニット」、「LEDモジュール」、「透光性を有するカバー」、「無線通信モジュール」、及び「受光素子」のそれぞれについての関係は明確である。
イ 本件特許の明細書等の記載について
前記アにおいて、述べたように、請求項1、4の記載は明確であるものの、明細書及び図面の記載についても以下に、付言する。
明細書の記載については、段落【0038】に、前述した請求項1、4の記載と同様の記載がある。
また、図面の記載については、図16では、「無線モジュール4」が破線で記載されていることから、「無線モジュール4」が「カバー18」の内部に配置されることは明確に示されているといえる。
しかしながら、図16では、「開口部」が「カバー18」に設けられることについては定かでないので、図16には、「開口部」が「カバー18」に設けられることについて記載されているとまではいえない。
したがって、請求項1、4、明細書、及び図面のそれぞれの記載に矛盾があるとまではいえない。
ウ まとめ
前記ア、イから、請求項1、4の記載について第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。
また、請求項2~3に対する申立理由(2)は、要するに、請求項1の記載が明確ではないので、請求項1を引用する請求項2~3も明確でないというものである。
そうすると、前述したとおり、請求項1の記載は、明確であるので、同様に、請求項1を引用する請求項2~3の記載も明確であるといえる
よって、請求項1~4の記載は明確であり、本件発明1~4は明確である。
3 申立理由(3)[サポート要件違反]について
(1)申立理由(3)の内容
異議申立理由(3)は、特許異議申立書の37ページ~38ページの「(イ)サポート要件」の記載を踏まえると、前記2(1)で述べたのと同様の理由から、本件特許1~4は、発明の詳細な説明に記載したものでないというものである。
(2)申立理由(3)の検討
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
したがって、以下では、上記の観点に立って、サポート要件について検討を行う。
ア 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比
明細書の記載については、段落【0038】には、「図16は、本発明の実施の形態6に係る照明器具を示す斜視図である。実施の形態5の図14と比較すると、無線通信モジュール4の配置のみ異なり、その他の構成及び動作は同一である。無線通信モジュール4は、LEDモジュール2の開口部から受光素子23の一部分が露出するように、LEDモジュール2を覆うカバー18の内部に配置されている。」との記載があり、更に、段落【0033】には、「実施の形態5」に関して、「図15は、図14の照明器具の4面図(a~d)と光源ユニットからカバーを取り外した状態を示す図(e)である。」との記載がある。
そして、図面の記載については、図16では、「無線モジュール4」が破線で記載されていることから、「カバー18」の内部に配置されることは看取できる一方、「開口部」が「カバー18」に設けられることについては定かでないので、この点については、記載されているとまではいえない。
そうすると、請求項1の「前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバー」「を備え、」「前記無線通信モジュールは、前記LEDモジュールの開口部から前記受光素子の一部分が露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」るとの記載、及び請求項4の「前記光源ユニットは、」「LEDモジュールと」「前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーと」「を有し、」「前記無線通信モジュールは、前記光源ユニットの開口部から前記受光素子の一部分が前記LEDモジュール側に露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」るとの記載と、明細書及び図面の記載との間に矛盾があるとまではいうことはできず、請求項1、4における前記記載は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
イ 本件特許の課題の解決について
明細書の段落【0006】には、その課題として「無線通信用のアドレスを容易に設定することができる照明器具を得る」ことが記載されている。
そして、明細書の段落【0030】には、「実施の形態5」に関して、「アドレス設定のための光信号を受信する受光素子23が設けられている。無線通信モジュール4のアドレスは受光素子23にて受信した光信号に基づいて設定される。ユーザ又は工事業者は、リモコン等で無線通信モジュール4の受光素子23に所定のアドレスを送信することで、各々の照明器具に対してアドレスを容易に設定することができる。」との記載がある。
一方、請求項1には、「照明器具」が「点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御装置と無線通信を行うアンテナを有する無線通信モジュールと、前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーとを備え、前記無線通信モジュールは、光信号を受信する受光素子を有し、前記無線通信モジュールのアドレスは、前記受光素子が受信した前記光信号に基づいて設定され、前記無線通信モジュールは、前記LEDモジュールの開口部から前記受光素子の一部分が露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」ることが記載され、請求項4には、「前記光源ユニット」が「LEDモジュールと、前記LEDモジュールを点灯制御する点灯回路と、前記点灯回路に接続され、他の照明器具又は照明制御装置と無線通信を行うアンテナを有する無線通信モジュールと、前記LEDモジュールを覆い、透光性を有するカバーと」「を有し、」「前記無線通信モジュールは、光信号を受信する受光素子を有し、前記無線通信モジュールは、前記光源ユニットの開口部から前記受光素子の一部分が前記LEDモジュール側に露出するように、前記LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」ることが記載されている。
そうすると、請求項1、4には、「無線通信モジュール」が「光信号を受信する受光素子」を「有」し、該「受光素子の一部分が」「LEDモジュールの開口部から」「露出する」ように「LEDモジュールを覆う前記カバーの内部に配置され」るとの構成が記載されているところ、これらの構成から「受光素子」が「光信号」を受信可能な状態で「カバーの内部に配置」されているといえるので、請求項1、4の記載は、その記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
ウ まとめ
前記ア、イから、請求項1、4の記載は、サポート要件を満たしているといえる。
また、請求項2~3に対する申立理由(3)は、要するに、本件発明1が発明の詳細な説明に記載したものではないので、本件発明1を全て含む本件発明2~3も発明の詳細な説明に記載したものではないというものである。
そうすると、前述したとおり、請求項1の記載は、サポート要件を満たしているといえるので、同様に、請求項1を引用する請求項2~3の記載もサポート要件を満たしているといえる
4 申立理由(4)[実施可能要件違反]について
(1)申立理由(4)の内容
申立理由(4)は、特許異議申立書の38ページ~39ページの「(ウ)実施可能要件違反」の記載を踏まえると、前記2(1)で述べたのと同様の理由から、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないというものである。
(2)申立理由(4)の検討
発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。
したがって、以下では、上記の観点に立って、実施可能要件について検討する。
本件発明1、4に対応する明細書の記載及び図面の記載については、前記3(2)で説示したとおりであるところ、その記載に基づけば、「LEDモジュール4」に対して、「受光素子23の一部分が露出」するような「開口部」を設け、当該「開口部」から「受光素子23の一部分が露出」するように「無線モジュール4」を「LEDモジュール4」に対して配置することを、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、実施できることは明らかである。
そうすると、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
また、本件発明2~3に関する申立理由(4)については、要するに、発明の詳細な説明は、本件発明1について当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本件発明1を全て含む本件発明2~3についても当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないというものである。
そうすると、前述したとおり、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるので、本件発明2~3についても当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
5 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明1~4は、明確であり、また、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
更に、発明の詳細な説明は、本件発明1~4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
よって、申立理由(1)~(4)は、理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
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