特許異議申立
2017-701062
有機物含有水の処理装置および処理方法
- 審判番号
- 2017-701062
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-115161外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月10日
- 審決日
- 2018年11月15日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】オルガノ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人YKI国際特許事務所
- 【異議申立人】矢部 和夫
- 分類
- P1651.121-ZAA(C02F) / P1651.851-ZAA(C02F) / P1651.853-ZAA(C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6128964号発明「有機物含有水の処理装置および処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6128964号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-8〕について訂正することを認める。
特許第6128964号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6128964号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成25年5月31日に出願されたものであって、平成29年4月21日に特許の設定登録(特許掲載公報発行 平成29年5月17日)がされ、その後、その特許に対して同年11月10日付けで特許異議申立人 矢部和夫(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたので、これを検討して平成30年1月17日付けで当審から取消理由を通知したところ、同年3月23日付けで意見書(特許権者)が提出され、これに対して同年6月8日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、同年8月8日付けで訂正請求書と共に意見書が提出され、同年9月21日付けで意見書(申立人)が提出されたものである。
第2 訂正請求について
平成30年8月8日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)が認められるかについて検討する。
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「前記酸化処理した酸化処理水を膜ろ過する膜ろ過装置」を、「前記酸化処理した酸化処理水をUF膜で膜ろ過する膜ろ過装置」に訂正する。
訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2~4についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の本件明細書の【0013】の「前記酸化処理した酸化処理水を膜ろ過する膜ろ過装置」を、「前記酸化処理した酸化処理水をUF膜で膜ろ過する膜ろ過装置」に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項5の「前記酸化処理した酸化処理水を膜ろ過装置に通水して膜ろ過する膜ろ過工程」を、「前記酸化処理した酸化処理水を膜ろ過装置に通水してUF膜で膜ろ過する膜ろ過工程」に訂正する。
訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項6~8についても同様に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の本件明細書の【0017】の「前記酸化処理した酸化処理水を膜ろ過装置に通水して膜ろ過する膜ろ過工程」を、「前記酸化処理した酸化処理水を膜ろ過装置に通水してUF膜で膜ろ過する膜ろ過工程」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「膜ろ過する」ことを「UF膜で膜ろ過する」ことに限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものである。
また、「UF膜で膜ろ過」することは本件明細書【0046】に記載され、【0053】には実施例としても記載されるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1の請求項1の訂正に伴い、明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の規定に適合するものである。
また、訂正事項1と同様に、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり、さらに、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5の「膜ろ過する」ことを「UF膜で膜ろ過する」ことに限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものである。
また、「UF膜で膜ろ過する」ことは本件明細書【0046】に記載され、【0053】には実施例としても記載されるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
さらに、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項3の請求項5の訂正に伴い、明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の規定に適合するものである。
また、訂正事項3と同様に、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり、さらに、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
3.一群の請求項及び明細書の訂正に関係する請求項について
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~4について、訂正前の請求項2~4はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項5~8について、訂正前の請求項6~8はそれぞれ訂正前の請求項5を直接又は間接的に引用するものであって、請求項5の訂正に連動して訂正されるものであるので、本件訂正前の請求項1~4、請求項5~8はそれぞれ一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
(2)明細書の訂正に関係する請求項について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に対応する明細書の記載を訂正するものであり、訂正前の請求項2~4は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているから、訂正事項2と関係する請求項は訂正前の請求項1~4であり、訂正事項4は、訂正前の請求項5に対応する明細書の記載を訂正するものであり、訂正前の請求項6~8は、訂正前の請求項5を直接又は間接的に引用しているから、訂正事項4と関係する請求項は訂正前の請求項5~8である。
すると、本件訂正請求は、訂正事項2と関係する一群の請求項の全て、及び、訂正事項4と関係する一群の請求項の全てを請求の対象としているものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。
4.本件訂正請求についての結言
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-8〕について訂正を認める。
第3 本件訂正発明について
上記訂正請求が認められたので、特許第6128964号の請求項1ないし8に係る発明は、それぞれ、以下の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものである。
以下、請求項の順に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明8」という。
また、上記訂正請求により訂正された本件明細書を「本件訂正明細書」という。
【請求項1】
分子量100,000以上2,000,000以下の高分子有機物および分子量500以上100,000以下のフミン質類の少なくとも1つを含む有機物含有水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が添加された酸化剤添加水を酸化処理する、二酸化マンガン触媒を充填した酸化処理槽と、
前記酸化処理した酸化処理水をUF膜で膜ろ過する膜ろ過装置と、
を備えることを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機物含有水の処理装置であって、
前記二酸化マンガン触媒は、β型の結晶構造を有する二酸化マンガンを含むことを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機物含有水の処理装置であって、
前記酸化剤は、過酸化水素であることを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の有機物含有水の処理装置であって、
前記有機物含有水のTOCを測定するTOC測定手段と、
前記測定したTOCに基づいて前記酸化剤の添加量を制御する制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項5】
分子量100,000以上2,000,000以下の高分子有機物および分子量500以上100,000以下のフミン質類の少なくとも1つを含む有機物含有水に酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、
前記酸化剤が添加された酸化剤添加水を、二酸化マンガン触媒を充填した酸化処理槽に通水して酸化処理する酸化処理工程と、
前記酸化処理した酸化処理水を膜ろ過装置に通水してUF膜で膜ろ過する膜ろ過工程と、
を含むことを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の有機物含有水の処理方法であって、
前記二酸化マンガン触媒は、β型の結晶構造を有する二酸化マンガンを含むことを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の有機物含有水の処理方法であって、
前記酸化剤は、過酸化水素であることを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の有機物含有水の処理方法であって、 前記有機物含有水のTOCを測定し、前記測定したTOCに基づいて前記酸化剤の添加量を制御することを特徴とする有機物含有水の処理方法。
第4 取消理由の要旨
訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が平成30年6月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨の一つは次のとおりである。
(要旨)本件発明1ないし8に係る特許は、同発明が、甲第4号証に記載された発明、甲第6号証、甲第9の1号証、甲第10号証、甲第102ないし104号証に記載の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
本件訂正発明1~8に係る特許に対して、上記取消理由の妥当性を以下で検討する。
1.証拠
上記取消理由で引用する甲各号証は特許異議申立書に添付された以下のとおりのものである。ただし、甲第102~104号証は特許異議申立書中で甲各号証とは別に記載された文献であり、当審で当該番号を付与した。
○甲第4号証:河川水のUF膜ろ過(当審注:原文では「ろ過」の「ろ」は「さんずい」に「戸」であるが、当庁の起案システムで表記できないので「ろ過」とした。以下で甲第4号証を引用する場合において全て同様である。)における膜ファウリング発現機構、渡辺義公 外3名、水道協会雑誌、社団法人日本水道協会、平成12年2月1日、第69巻第2号、12-23頁
○甲第6号証:特開平1-99689号公報
○甲第9の1号証:ろ過材メーカー日本原料株式会社ハイパータンク、ウエブページ等に掲載されたもの(URL:http://www.genryo.co.jp/HT.html)
○甲第10号証:特開平10-277572号公報
○甲第102号証:国際公開第2010/109838号
○甲第103号証:特開平11-156375号公報
○甲第104号証:特開2013-52359号公報
特許権者が平成30年3月23日付け意見書に添付した乙各号証は次のとおりのものである。
○乙第1号証:特開2006-231274号公報
○乙第2号証:水道膜ろ過法入門、(財)水道技術研究センター編、株式会社日本水道新聞社、第9頁、平成14年1月28日発行
○乙第3号証:特開2007-296464号公報
2.甲第4号証の記載事項
(ア)「要旨:・・・(2)その後、膜面への懸濁粒子や高分子フミン質の堆積によるケーキ層が形成され、膜ファウリングは主にケーキ層の形成により生ずる。(3)一部のケーキ層が物理洗浄により剥離する。(4)剥離しきれないケーキ層が膜面に蓄積し、連続UF膜ろ過の膜ファウリングは主にケーキ層の蓄積により生ずる。」(12頁「要旨」1~5行)
(イ)「3.1 河川水中の不純物
河川水には、粘土粒子、バクテリア、鉄・マンガン・アルミニウムなどの金属析出物を含む懸濁成分、アンモニア性窒素、マンガンなどの溶解性無機成分、フミン質を主体とする天然有機成分が存在する。UF膜ろ過における不純物の除去特性と膜ファウリング特性は、これらの不純物の寸法に大きく影響される。」(13頁右欄下から24行~下から17行)
(ウ)「また、溶解性有機成分の大部分を占めるフミン質はさまざまな分子サイズを有する混合体であるため、膜ファウリングとの関わりはその分子サイズにより異なる。膜細孔径以上のサイズを有する高分子フミン質は膜面に堆積し、ケーキ層抵抗を発現するが、膜細孔径以下のサイズを有する低分子フミン質は膜細孔内に吸着し、膜細孔径の減少を引き起こすと考えられる。」(13頁右欄下から4行~14頁左欄4行)
(エ)「図-1は分子篩膜の・・・YM系列UF膜を用い、千歳川表流水のE260を分画した結果である。YM系列のUF膜は、表面無荷電の親水性膜であり、有機物の吸着が無視できるため、フミン質の見かけ分子量の測定によく使われている。図-1によると、千歳川表流水中のフミン質はほとんどが見かけ分子量100kDa以上(35%)と30kDa以下(60%)の両端に分布し、30kDa~100kDaの間には、わずか5%程度しか存在しない。」(14頁左欄5~15行)
(オ)「公称孔径0.1μm、0.03μmのMF膜と分画分子量50kDa、150kDa、200kDaのUF膜を用いた千歳川表流水の連続ろ過では、E260の平均除去率がほぼ同程度の30~35%であった。この除去率は上記の分子篩膜により分画された100kDa以上のフミン質の存在比とほぼ同じであり・・・UF膜ろ過で除去できない低分子フミン質はほとんど見かけ分子量30kDa以下であり・・・」(14頁左欄16~26行)
3.甲第4号証に記載された発明
(1)上記甲第4号証の記載事項(イ)(エ)(オ)から、「YM系列のUF膜」を用いて「千歳川表流水の連続ろ過」を行ったところ、「E260」は波長260nmの紫外線吸収度から定量された有機物の量、すなわち「千歳川」の表流水中に含まれる有機物の量を示すので、「千歳川」の表流水中には、フミン質を主体とする天然有機成分が含まれており、フミン質の分子量は「100kDa(100,000)以上」(35%)と「30kDa(30,000)以下」(60%)に集中することが記載されているといえる。
(2)また、同(ウ)(エ)(オ)から、「YM系列のUF膜」には、分子量が「100kDa(100,000)以上」の「フミン質」が「千歳川表流水」から除去されて「膜面に堆積し、ケーキ層抵抗を発現」して「膜ファウリング」の原因となることが示され、分子量が「30kDa(30,000)以下」の「フミン質」は、「YM系列のUF膜」は「表面無荷電の親水性膜」であるので「有機物の吸着が無視」できることから、「YM系列のUF膜」で「除去でき」ずに透過したいえる。
(3)以上から、本件訂正発明5の請求項の記載に沿って甲第4号証に記載された発明を整理すれば、甲第4号証には、
「分子量100,000以上のフミン質および分子量30,000以下のフミン質を含有する千歳川表流水をYM系列のUF膜で濾過する処理方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
4.本件訂正発明5について
4-1.本件訂正発明5と引用発明との対比
(1)特許権者の提出した乙第1ないし3号証にも記載されるように、「フミン質」は、「植物の残骸や微生物の遺体が微生物による分解を受け、その分解産物から化学的、生物的に合成された高分子有機酸の総称」(乙第1号証【0007】)であり、「フミン酸やフルボ酸などはフミン物質の一種であ」って(乙第3号証【0001】)、「フミン酸(分子量:1,000~数10万)やフルボ酸(分子量:数百)が有機物質」(乙第2号証 9頁 表-2.1-1)であって、「分子量100,000」超の「フミン質類」が「高分子有機物」に含まれることは当業者にとって明らか」だから、引用発明の「分子量100,000」超の「フミン質類」は「高分子有機物」に含まれるものである。
(2)本件訂正発明5の「有機物含有水」は「河川水」等を原水とするものである(本件訂正明細書【0002】)ところ、引用発明の「千歳川表流水」について、河川毎にも時間的にも河川に含まれる成分には相違があると考えられるが、「千歳川」が特異な地形土壌を流れる河川ではなく、周辺での時間的に大きな環境の変化があったものとも認められないので、「千歳川」は一般的な河川であるといえることを考慮すれば、「千歳川表流水」の上記含有成分は河川水のものとして一般的なものといえる。
(3)本件訂正発明5の「UF膜」は、本件訂正明細書【0046】には「膜ろ過装置14において用いるろ過膜は、酸化処理工程で処理された溶存有機物のうち低分子化に至らなかった有機物や濁質成分等をろ過できるものであればよく、特に制限はないが、例えば、UF膜、MF膜等が挙げられ、酸化触媒から剥離した微細な触媒粒子(例えば、0.1μm未満)等を除去できる等の点から、UF膜が好ましい。」と記載されており、これは引用発明の「YM系列のUF膜」を含むものといえ、また、引用発明も「YM系列のUF膜」へ通水するための「膜ろ過装置」を当然に有するものといえる。
(4)すると、本件訂正発明5と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。
(一致点)「分子量100,000以上2,000,000以下の高分子有機物」及び「分子量500以上30,000以下のフミン質を含」む有機物含有水を「膜ろ過装置に通水してUF膜で膜ろ過する膜ろ過工程」を含む「有機物含有水の処理方法」である点。
(相違点)本件訂正発明5は「有機物含有水に酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、前記酸化剤が添加された酸化剤添加水を、二酸化マンガン触媒を充填した酸化処理槽に通水して酸化処理する酸化処理工程」を含むのに対して、引用発明は当該処理工程を含まない点。
4-2.相違点の検討
(1)上記甲第4号証の記載事項(ア)(ウ)(オ)から、引用発明においては、「分子量100,000以上のフミン質」すなわち「分子量100,000以上2,000,000以下の高分子有機物」が膜面にケーキ層として蓄積して膜ファウリングを生じているから、これを除去すべき課題が当然に存在するものといえる。
(2)ここで、甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証について示す。
i)甲第6号証には、「上、下水や工業用水等の水中に存在する有機物質を除去」する(1頁右下欄3-4行)方法、装置において、「次亜塩素酸ナトリウム」や「過酸化水素」といった「酸化剤の存在下」で、「活性度の高い電解二酸化マンガンのβ型やγ型二酸化マンガン粒子」の「触媒ろ材層」に「通水」「ろ過」することで、「水中の有機物を酸化分解して除去する」こと(2頁左上欄19行-同頁右上欄20行)が示されている。
ii)また、甲第102号証には、「一般排水、産業排水、下水、河川水、地下水、湖沼水など、種々の有機物含有水」([0033])を被処理水として、「塩素系酸化剤を添加し、マンガン系濾過材に通水して有機物を接触酸化分解する」([0018])ことが示され、「マンガン系濾過材」は「β-MnO2を含む天然の二酸化マンガン(MnO2)の結晶粉末を、粒子状の担体の表面にバインダーによって担持させた濾過材」を用い得る([0025])ものであり、「塩素系酸化剤」は「次亜塩素酸ナトリウム」を用い得る([0032])ものであることが示されている。
iii)さらに、甲第103号証には、「用水処理あるいは廃水処理などの水処理」(【0001】)において、そのような「有機物を含有する原水に、酸化剤を添加し、粒状又は粉末状のマンガン鉱石と接触させて該有機物を酸化」(【請求項1】)すると、原水中の有機物は強力に酸化分解される(4頁5欄1行、【0034】)ものであることが示されるが、「マンガン鉱石」より高価である「二酸化マンガン」(【0034】)を用いる従来法として「触媒酸化法」も示され、同法において、「酸化剤」として「過酸化水素」が、酸化触媒として「粉末状二酸化マンガン触媒」が用いられても、原水中の有機物は強力に酸化分解されること(【0029】【0031】【0033】)が示されている。
iv)以上から、有機物を含む種々の性状の原水に、酸化剤を添加して二酸化マンガン触媒に接触させると、有機物が分解し、原水より除去できることは周知技術ということができる。
(3)すると、引用発明においては、上記「3.(2)」の検討から、分子量が「30kDa(30,000)以下」の「フミン質」の大きさ以下であれば、引用発明の「UF膜」を透過するのであるから、引用発明に上記周知技術の工程を適用して、「分子量100,000以上2,000,000以下の高分子有機物」が分解されて、分子量が「30kDa(30,000)以下」の「フミン質」の大きさ以下になれば、引用発明の「YM系列のUF膜」を透過して「膜面への膜ファウリング」を防止出来ることになるといえる。
したがって、引用発明において、甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証に示される周知技術を適用して、分子量が「30kDa(30,000)以下」の「フミン質」の大きさ以下の大きさの物質に分解しようとすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
(4)以下に、意見書での特許権者の主張について検討する。
i)特許権者は、平成30年3月23日付け意見書(10~12頁「(キ)」)で、甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証に記載の技術手段は、「分子量100,000以上2,000,000以下の高分子有機物および分子量500以上100,000以下のフミン質類の少なくとも1つを含」んでいる「有機物含有水」に対して有機物を酸化分解するものではないから、引用発明に適用して有機物を酸化分解することはできない旨を主張する。
しかしながら、上記甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証に記載の周知技術は、各種の有機物を含む種々の性状の原水に酸化剤を添加して二酸化マンガン触媒に接触させると有機物が分解し原水より除去できることを示すもので、例えば甲第102号証の[0011]には「難分解性である有機物(例えば、フェノールなど)」も分解できることが示されており、引用発明への適用が困難なものとはいえない。
ii)特許権者は、平成30年8月8日付け意見書(14~17頁「(7)」)で、本件発明は「低分子化した有機物がUF膜を通過することを見出したことから、至ったものである(本件訂正明細書【0029】)」ところ、引用発明に甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証に記載の周知技術を適用する動機付けはなく、本件発明を容易に成し得るものでは無い旨を主張する。
しかしながら、甲第4号証には、上記「3.(2)」の検討から、分子量が「30kDa(30,000)以下」の「フミン質」の大きさ以下であれば、引用発明の「UF膜」を透過することが記載されているから、引用発明においてUF膜面にケーキ層として蓄積して膜ファウリングを生じている「分子量100,000以上のフミン質」という有機物に当該周知技術を適用して、分子量が「30kDa(30,000)以下」の「フミン質」の大きさ以下の物質にしようと試みることには十分な動機付けがあるというべきである。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
4-3.本件訂正発明5についての結言
以上から、本件訂正発明5に係る特許は、同発明が甲第4号証に記載された発明と、甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、取り消されるべきものである。
5.本件訂正発明1について
本件訂正発明1の「有機物含有水の処理装置」は、本件訂正発明5の「有機物含有水の処理方法」と発明のカテゴリーが異なるだけで実質的に同一の技術思想の発明である。
よって、上記「4.」で記したのと同様の理由により、本件訂正発明1に係る特許は、取り消されるべきものである。
6.本件訂正発明2及び6、本件訂正発明3及び7、本件訂正発明4及び8について
(1)本件訂正発明2及び6について
本件訂正発明2、6は、それぞれ本件訂正発明1、5を引用して、「二酸化マンガン触媒は、β型の結晶構造を有する二酸化マンガンを含むこと」をさらに特定事項とするものであるところ、同特定事項は、甲第6号証(【請求項3】)、甲第9の1号証(2/2頁 「除色 (フミン質)処理」の欄)、甲第102号証([0012])に記載されるように周知技術であり、引用発明への甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証に記載の周知技術の適用において、「二酸化マンガン」を「ベータ型の結晶構造を持つ」ものとすることに格別の困難性は見出せない。
(2)本件訂正発明3及び7について
本件訂正発明3、7は、それぞれ本件訂正発明1又は2、5又は6を引用して、「酸化剤は、過酸化水素であること」をさらに特定事項とするものであるところ、同特定事項は、酸化マンガンを触媒として酸化剤を添加して目的物(有機物)を酸化する上記周知技術において、次に示すように種々の薬剤を使用し得ることが知られているから、引用発明に周知技術を適用するにあたり、被処理水の状況に応じて酸化の程度を調整する等のために設計的に成し得ることにすぎない。
○甲第6号証(有機物の処理):酸化剤が塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸カリウム(【特許請求の範囲2】)
○甲第102号証(有機物の処理):次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、過マンガン酸カリウム([0032])
○甲第103号証(有機物の処理):過酸化水素、次亜塩素酸、過マンガン酸(【0019】)
(3)本件訂正発明4及び8について
本件訂正発明4、8は、それぞれ本件訂正発明1ないし3、又は、5ないし7を引用して、「有機物含有水のTOCを測定するTOC測定手段と、前記測定したTOCに基づいて前記酸化剤の添加量を制御する制御手段と、をさらに備える」ことをさらに特定事項とするものであるところ、同特定事項は甲第10号証(【0010】)、甲第104号証(【特許請求の範囲】【図1】)に記載されるように周知技術といえる。
すると、引用発明は「有機物含有水の処理方法」であって、「4-2.(1)」で検討したように、膜面への有機物によるファウリングを防止するという課題を有するから、「有機物含有水」中の有機物量の指標として上記周知技術である「TOC測定手段」を設けて「TOC」を測定し、甲第6号証、甲第102号証、甲第103号証に記載の二酸化マンガン触媒と酸化剤による有機物を分解する周知技術において、TOC測定値に対応させて酸化剤量を決定し、ファウリングを防止しようとすることに格別の困難性は見いだせない。
(4)結言
したがって、本件訂正発明2及び6、本件訂正発明3及び7、本件訂正発明4及び8に係る特許は、同発明が、甲第4号証に記載された発明、甲第6号証、甲第9の1号証、甲第10号証、甲第102ないし104号証に記載の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、取り消されるべきものである。
第7 むすび
以上から、本件訂正発明1ないし8に係る特許は、同発明が、甲第4号証に記載された発明及び他の甲各号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701062