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特許異議申立

2024-700470

TOC除去装置及びTOC除去方法

審判番号
2024-700470
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-524323
登録番号
7383141
請求日
2024年05月17日
審決日
2025年01月31日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】オルガノ株式会社
  • 【権利者代理人】宮崎 昭夫
  • 【権利者代理人】緒方 雅昭
  • 【異議申立人】柴田 隆史
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 増山 淳子
  • 審判官 金 公彦
分類
P1652.113-YAA(C02F) / P1652.121-YAA(C02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7383141号発明「TOC除去装置及びTOC除去方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7383141号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9、10〕について訂正することを認める。 特許第7383141号の請求項1、2、4-6、8-10に係る特許を維持する。 特許第7383141号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7383141号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)4月8日(優先権主張 令和2年5月20日)を国際出願日とする特許出願であって、令和5年11月9日に特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~6及び8~10に係る特許に対し、令和6年5月17日に特許異議申立人である柴田隆史(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 本件特許異議申立事件における、以降の手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 8月13日付け:取消理由通知 同年10月11日 :意見書の提出及び訂正の請求(特許権者) 同年12月 2日 :意見書の提出(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 令和6年10月11日に特許権者より請求された訂正(以下、「本件訂正」といい、この訂正の請求を「本件訂正請求」という。)は、適法になされたものと判断する。 以下、その理由につき詳述する。 1 訂正の内容 本件訂正請求は、本件特許請求の範囲を訂正することを求めるものであって、その内容は、次の訂正事項1~8からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「被処理水が供給される第1の電気再生式脱イオン装置と、 前記第1の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水が供給される紫外線酸化装置と、 前記紫外線酸化装置で処理された処理水が供給される第2の電気再生式脱イオン装置と、 を有する、一次純水システムとしてのTOC除去装置。」と記載されているのを、 「被処理水が供給される第1の電気再生式脱イオン装置と、 前記第1の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水が供給される紫外線酸化装置と、 前記紫外線酸化装置で処理された処理水が供給される第2の電気再生式脱イオン装置と、 を有する、一次純水システムとしてのTOC除去装置であって、 前記紫外線酸化装置に供給される処理水のpHが1.0以上8.5未満である、TOC除去装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4~6、8も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1~3のいずれか1項に記載のTOC除去装置」と記載されているのを、 「請求項1または2に記載のTOC除去装置」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6、8も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に 「請求項1~4のいずれか1項に記載のTOC除去装置」と記載されているのを、 「請求項1、2、4のいずれか1項に記載のTOC除去装置」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、8も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に 「前記第1の電気再生式脱イオン装置を間欠運転とし、前記第2の電気再生式脱イオン装置を連続運転とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のTOC除去装置」と記載されているのを、 「被処理水が供給される第1の電気再生式脱イオン装置と、 前記第1の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水が供給される紫外線酸化装置と、 前記紫外線酸化装置で処理された処理水が供給される第2の電気再生式脱イオン装置と、 を有する、一次純水システムとしてのTOC除去装置であって、 前記第1の電気再生式脱イオン装置を間欠運転とし、前記第2の電気再生式脱イオン装置を連続運転とする、TOC除去装置」に訂正する(請求項7の記載を直接的に引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8に 「請求項1~7のいずれか1項に記載のTOC除去装置」と記載されているのを、 「請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載のTOC除去装置」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項9に 「(c)前記紫外線酸化装置からの処理水を前記第2の電気再生式脱イオン装置に供給して処理するステップと、 を有するTOC除去方法」と記載されているのを、 「(c)前記紫外線酸化装置からの処理水を前記第2の電気再生式脱イオン装置に供給して処理するステップと、を有し、 前記紫外線酸化装置に供給される処理水のpHが1.0以上8.5未満である、TOC除去方法」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項10に 「前記ステップ(a)の前段に、前記紫外線酸化装置に供給される水のpHを1.0以上8.5未満に調整するステップをさらに有する」と記載されているのを、 「前記ステップ(a)の前段に、前記紫外線酸化装置に供給される処理水のpHを1.0以上8.5未満に調整するステップを有する」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、7について 訂正事項1及び訂正事項7は、それぞれ、本件訂正前の請求項1及び請求項9に「・・処理水が供給される紫外線酸化装置」、「・・処理水を前記紫外線酸化装置に供給して」と記載されていることから、紫外線酸化装置に供給されるものを「水」から「処理水」とし、本件訂正前の請求項3の「前記紫外線酸化装置に供給される水のpHが1.0以上8.5未満である」との記載から、紫外線酸化装置に供給される処理水(水)のpHを1.0以上8.5未満に限定するものであるから、これにより新たな技術的事項が導入されるものとはいえない。 したがって、訂正事項1、7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3、4、6について 訂正事項3、4、6は、請求項3の削除にともない、それぞれ本件訂正前の請求項4、5、8を、請求項3を引用しないものとするものであるから、訂正事項3、4、6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項5について 訂正事項5は、本件訂正前の請求項7が請求項1~6を引用していたところ、その引用関係を解消し、請求項1を引用する請求項7について書き下し、独立形式請求項へ改めるものである。 そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項8について 訂正事項8は、本件訂正前の請求項10において、訂正事項7によって、本件訂正前の請求項10に記載されていた発明特定事項を本件訂正後の請求項9に記載したことに伴って、「さらに」との記載を削除し、また、本件訂正前の請求項10が引用する本件訂正前の請求項9において、訂正事項7によって、紫外線酸化装置に供給されるものを「水」から「処理水」としたことに記載を合わせて、紫外線酸化装置に供給されるものを「水」から「処理水」とするものである。 そうすると、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)独立特許要件について 本件訂正前の請求項1~6、8~10についての特許に対しては、特許異議の申立てがされているので、上記請求項1~6、8~10に対応する本件訂正後の請求項1~6、8~10に係る発明については、独立特許要件は課されない。 一方、本件訂正前の請求項7についての特許に対しては、特許異議の申立てがされておらず、訂正事項5によって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正がされていることから、本件訂正後の請求項7に係る発明については、独立特許要件について判断する必要がある。 本件訂正後の請求項7に係る発明は、第1、第2の電気再生式脱イオン装置を有するTOC除去装置において、第1の電気再生式脱イオン装置を間欠運転とし、第2の電気再生式脱イオン装置を連続運転とするものであるが、甲1~甲5には、第1の電気再生式脱イオン装置を間欠運転とし、第2の電気再生式脱イオン装置を連続運転とすることは記載も示唆もされていないし、他に、そのような運転方法が技術常識であるといえる証拠もないため、本件訂正後の請求項7に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如したものではないし、他に特許出願の際に独立して特許を受けることができるものではないとする理由もない。 よって、本件訂正後の請求項7に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (7)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~8は、本件訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しており、請求項1~8は一群の請求項を構成し、上記訂正事項1~6は、特許法第120条の5第4項の規定にしたがって、この一群の請求項について行われるものである。 なお、訂正後の請求項7については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めているが、訂正後の請求項8は、請求項1、2、4~7を引用することから、特許法施行規則第45条の4の規則により、訂正後の請求項1~8において一群の請求項を構成することとなる。 本件訂正前の請求項10は、本件訂正前の請求項9を直接的に引用しており、請求項9、10は一群の請求項を構成し、上記訂正事項7及び8は、特許法第第120条の5第4項の規定にしたがって、この一群の請求項について行われるものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9、10〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 上記第2のとおり本件訂正請求は適法になされたものであると認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、4~6、8~10に係る発明(以下、項番にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~6、8~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線は訂正箇所。)。 「【請求項1】 被処理水が供給される第1の電気再生式脱イオン装置と、 前記第1の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水が供給される紫外線酸化装置と、 前記紫外線酸化装置で処理された処理水が供給される第2の電気再生式脱イオン装置と、 を有する、一次純水システムとしてのTOC除去装置であって、 前記紫外線酸化装置に供給される処理水のpHが1.0以上8.5未満である、TOC除去装置。 【請求項2】 前記TOC除去装置で処理された処理水のTOC濃度が1ppb未満である、請求項1に記載のTOC除去装置。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記第1の電気再生式脱イオン装置の前段にpH調整装置を備える、請求項1または2に記載のTOC除去装置。 【請求項5】 前記第2の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水をブローするブロー配管をさらに備える、請求項1、2、4のいずれか1項に記載のTOC除去装置。 【請求項6】 前記TOC除去装置の運転開始初期または再起動時に、前記第2の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水が前記ブロー配管を介して15時間以上ブローされる、請求項5に記載のTOC除去装置。」 「【請求項8】 前記第2の電気再生式脱イオン装置の消費電力が、前記第1の電気再生式脱イオン装置の消費電力よりも低い、請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載のTOC除去装置。 【請求項9】 第1の電気再生式脱イオン装置と、紫外線酸化装置と、第2の電気再生式脱イオン装置と、を有する一次純水システムとしてのTOC除去装置を用いてTOCを除去するTOC除去方法であって、 (a)被処理水を前記第1の電気再生式脱イオン装置に供給して処理するステップと、 (b)前記第1の電気再生式脱イオン装置からの処理水を前記紫外線酸化装置に供給して処理するステップと、 (c)前記紫外線酸化装置からの処理水を前記第2の電気再生式脱イオン装置に供給して処理するステップと、 を有し、 前記紫外線酸化装置に供給される処理水のpHが1.0以上8.5未満である、TOC除去方法。 【請求項10】 前記ステップ(a)の前段に、前記紫外線酸化装置に供給される処理水のpHを1.0以上8.5未満に調整するステップを有する、請求項9に記載のTOC除去方法。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立理由について 1 特許異議申立の概要 申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。 甲第1号証:特開2001-113281号公報 甲第2号証:特開2019-115892号公報 甲第3号証:特開2009-160500号公報 甲第4号証:特開2008-68198号公報 甲第5号証:特開2019-188313号公報 (以下、「甲第1号証」などを、「甲1」などという。) 申立理由(甲1を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1、9に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3項に該当し、設定登録時の請求項2~6、8、10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。 2 取消理由の概要 取消理由(甲1を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 設定登録時の請求項1、9に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3項に該当し、設定登録時の請求項2~6、8、10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当審の判断 事案に鑑み、特許異議申立理由及び取消理由をまとめて検討する。 1 甲号証 (1)甲1について ア 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。 (ア)「【請求項9】 被処理水を複数段の電気脱イオン装置に通水するように接続した純水製造装置であって、最前段の電気脱イオン装置が請求項1ないし8のいずれか1項の電気脱イオン装置である純水製造装置。 ・・・ 【請求項15】 電気脱イオン装置の間に紫外線照射装置を備えたことを特徴とする請求項9~14のいずれか1項の純水製造装置。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は半導体、液晶、製薬、食品、電力等の分野の各種産業、民生用又は研究設備で利用される脱イオン水を製造する電気脱イオン装置に係る。特に、シリカ、ホウ素などの弱電解質の除去率を飛躍的に向上させることができ、超純水製造装置の一次純水システムや回収系に好適な電気脱イオン装置に係る。 ・・・ 【0020】本発明は上記従来の問題点を解決し、苛性ソーダなどの薬液を注入することなく、また、スケールが生成せず、シリカ、ホウ素等の弱電解質の除去率が著しく高い電気脱イオン装置と、この電気脱イオン装置を用いた純水製造装置を提供することを目的とする。」 (ウ)「【0042】電気脱イオン装置の脱塩室内部のpHが9.0以上であると、シリカ、ホウ素が除去され易い。」 (エ)「【0055】電気脱イオン装置では前述のように供給水のイオンを排出させるのに必要な理論電流値以上の電流を流して、脱塩室内で水解離を生じさせて、イオン交換体を連続的に再生している。」 (オ)「【0093】前段電気脱イオン装置3Aにおいて印加電圧又は電流を上昇させると、前段電気脱イオン装置3Aの処理水pHが高くなる。従って、前段電気脱イオン装置3Aの処理水の排出配管にpH計4を取り付けてpHを監視し、このpH値が好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0~10.5程度となるように、前段電気脱イオン装置3Aの印加電圧や電流を制御するのが好ましい。」 (カ)「【0126】本発明は、電気脱イオン装置同士の間に、水中のTOC(全有機炭素)を分解するために紫外線照射装置を設けてもよい。」 (キ)「【0127】前段電気脱イオン装置の処理水がアルカリ性の場合、紫外線照射装置のTOC分解効率が高くなる。紫外線照射装置に導入される被処理水に、その水中のTOC濃度の2~20倍の過酸化水素又はオゾンを添加すると、さらに分解効率が高くなる。」 (ク)「【0138】2段目以降の電気脱イオン装置により、シリカ、ホウ素などの弱電解質物質を効率よく除去するために、1段目電気脱イオン装置処理水のpHは9.5以上になることが好ましい。2段目(後段)電気脱イオン装置被処理水pHが9.0の時はシリカ除去率99%であっても、pHが9.5以上の時は、99.9%となる。」 (ケ)「【0166】実施例9 表1の実施例1の電気脱イオン装置と、紫外線照射装置((株)日本フォトサイエンス社,UV酸化器ランプ,AZ-26,2本(0.1kW/本)と、表2の後段電気脱イオン装置3Bとをこの順に直列に接続し、TOC300ppbの原水を通水した。前段電気脱イオン装置から流出した処理水のpHは9.5であった。 【0167】各電気脱イオン装置から流出した処理水のTOC濃度を表5に示す。 【0168】 【表5】 [図:0001422435000001.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 甲1には、上記ア(ア)によれば、被処理水を複数段の電気脱イオン装置に通水するように接続した純水製造装置として、電気脱イオン装置の間に紫外線照射装置を備えたものが記載されており、同(イ)によれば、電気脱イオン装置が一次純水システムに好適なものであることが記載されており、同(エ)によれば、電気脱イオン装置は、電流によって、そのイオン交換体が連続的に再生されるものであることが記載されており、同(カ)によれば、紫外線照射装置により水中のTOCが分解されることが記載されている。 そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。 「被処理水を複数段の電気脱イオン装置に通水するように接続した超純水製造装置として一次純水システムに好適に用いられる装置であって、電気脱イオン装置は電流によってそのイオン交換体が連続的に再生されるものであり、電気脱イオン装置同士の間に、水中のTOCを分解するために紫外線照射装置を設けた装置、及び、この装置を用いて被処理水を処理する方法。」 (2)甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 脱塩室内に、TOC分解能を有する触媒を含む連続式電気脱イオン装置を有することを特徴とするTOC除去装置。」 イ 「【0042】 なお、連続式電気脱イオン装置2の脱塩室には、まず最初に水素ガス溶解原水が供給される。ここで供給された水素ガス溶解原水中のTOCは、酸素が存在しないため、そのまま流出してしまうが、この初回の給水で得られる処理水については初期ブローすることが望ましい。」 (3)甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0033】 (参考例1)紫外線酸化におけるpHとTOC除去 厚木市水を逆浸透膜装置、紫外線酸化装置、混床式イオン交換樹脂塔に順番に通水して処理する際に、紫外線酸化装置の入口において、被処理水のpHを変化させたときのTOC除去の効果について表1に示した。このとき、pHの調整は塩酸又は水酸化ナトリウムを添加することにより行った。なお、ここで用いた装置は後述する実施例及び比較例と同一のものである。 【0034】 【表1】 [図:0001422435000002.jpg] 【0035】 この結果から、紫外線酸化装置におけるTOCの分解効率はpHが低いほど向上することがわかる。」 (4)甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【0056】 また、本実施形態に係る電気脱イオン装置1の脱塩室16には、予めpHを調整した被処理水を供給することが好ましい。具体的には、予めpHを6.5以下に調整した被処理水を供給することが好ましく、特にpHを5.8以下に調整した被処理水を供給することが好ましい。被処理水のpHが6.5を超えると、脱塩室16内に水酸化マグネシウム等の不溶性の水酸化物スケールが発生してしまうおそれがあり、それにより、脱塩室16の差圧の上昇を引き起こしてしまい、ひいては脱塩室16の閉塞を引き起こしてしまうおそれがある。 【0057】 被処理水のpHを調整する方法としては、一般的なpH調整方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、被処理水中にpH調整剤を添加することにより被処理水のpHを調整してもよいし、前処理工程として脱炭酸装置を備える場合には、当該脱炭酸装置における脱炭酸量を調整することにより被処理水のpHを調整してもよい。」 (5)甲5について 甲5には、以下の事項が記載されている。 「【0017】 この実施の形態では、電気脱イオン装置は直列に2段に設置されており、脱炭酸塔7の処理水は、配管8を介して第1段目の電気式脱イオン装置9に通水され、その処理水(第一処理水)は配管10を介して第2段目の電気式脱イオン装置11に通水され、処理水(第二処理水)が配管12を介して取り出される。なお、この第二処理水はさらにサブシステムに通水処理して高水質の純水とされてもよい。」 2 申立理由及び取消理由(甲1を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 甲1発明との対比、判断 (ア)甲1発明の、「電流によってそのイオン交換体が連続的に再生される」「電気脱イオン装置」は、本件発明1の、「電気再生式脱イオン装置」に相当する。 (イ)甲1発明の、「複数段の電気脱イオン装置」は、複数の電気脱イオン装置があることを意味しているから、本件発明1の、「第1の電気再生式脱イオン装置」、「第2の電気再生式脱イオン装置」を有することに相当する。 (ウ)甲1発明の、「電気脱イオン装置同士の間に」、「紫外線照射装置を設けた装置」は、電気脱イオン装置、紫外線照射装置、電気脱イオン装置、という順序で各装置が配置されていることを意味するから、本件発明1の、「前記第1の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水が供給される紫外線酸化装置と、前記紫外線酸化装置で処理された処理水が供給される第2の電気再生式脱イオン装置」に相当する。 (エ)甲1発明において、紫外線照射装置はTOCを分解するための装置であるところ、上記1(1)ア(ケ)によれば、電気脱イオン装置、紫外線照射装置、電気脱イオン装置の順で各装置が配置された装置によって、原水において300ppbであったTOCが、装置に通水後に2.5ppbとなることが示されているから、この装置によって「TOC」は分解され、「除去」されることが理解できる。してみれば、甲1発明の「水中のTOCを分解するために紫外線照射装置を設けた装置」は、本件発明1の「TOC除去装置」に相当する。 (オ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは 「被処理水が供給される第1の電気再生式脱イオン装置と、 前記第1の電気再生式脱イオン装置で処理された処理水が供給される紫外線酸化装置と、 前記紫外線酸化装置で処理された処理水が供給される第2の電気再生式脱イオン装置と、 を有する、一次純水システムとしてのTOC除去装置。」の点で一致し、下記の点で相違する。 <相違点> 本件発明1では、「紫外線酸化装置に供給される処理水のpHが1.0以上8.5未満である」ことが特定されているのに対し、甲1発明では、そのような特定がない点。 イ 相違点について (ア)上記相違点について検討する。 甲1には、「紫外線酸化装置に供給される処理水のpHが1.0以上8.5未満である」ことは特定されていないのであるから、上記相違点は実質的な相違点である。 (イ)次に、上記相違点の容易想到性について検討する。 a 甲1には、上記1(1)ア(キ)によれば、「前段電気脱イオン装置の処理水がアルカリ性の場合、紫外線照射装置のTOC分解効率が高くなる」と記載されている。 そうすると、紫外線照射装置に導入される処理水がアルカリ性であるとTOC分解効率が高くなることが記載されているのであるから、甲1には、紫外線照射装置に導入される処理水のpHを、酸性領域を含む、1.0~8.5未満とする動機はない。 b 上記1(3)によれば、甲3には、紫外線酸化装置におけるTOCの分解効率はpHが低いほど向上することが記載されている。 そこで、甲1発明に甲3に記載の技術的事項を組み合わせ、甲1発明において、アルカリ性の範囲内で紫外線照射装置に導入される処理水のpHを下げ、pHを7.0超~8.5未満とすることの容易想到性についても、以下で検討する。 (a)甲1発明の装置及び方法は、上記1(1)ア(イ)によれば、「シリカ、ホウ素等の弱電解質の除去率が著しく高い電気脱イオン装置と、この電気脱イオン装置を用いた純水製造装置を提供することを目的」とし、同(ウ)によれば「電気脱イオン装置の脱塩室内部のpHが9.0以上であると、シリカ、ホウ素が除去され易い」ことが記載され、同(オ)によれば、前段の電気脱イオン装置から排出される処理水のpHを、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0~10.5とすることが記載されている。 (b)同(ク)によれば「2段目以降の電気脱イオン装置により、シリカ、ホウ素などの弱電解質物質を効率よく除去するために、1段目電気脱イオン装置処理水のpHは9.5以上になることが好ましい。2段目(後段)電気脱イオン装置被処理水pHが9.0の時はシリカ除去率99%であっても、pHが9.5以上の時は、99.9%となる。」と記載されている。してみれば、甲1には、シリカ、ホウ素の除去のために、後段の電気脱イオン装置では、脱塩室内部のpHが9.5以上であることが好ましいことが記載されているといえる。 (c)上記(a)、(b)によれば、甲1には、前段の電気脱イオン装置から排出される処理水は8.5以上が好ましいこと、後段の電気脱イオン装置に導入される処理水は、好ましくはpHが9.0以上、さらに好ましくは9.5以上であることが記載されているといえる。 そうすると、甲1で好ましいとされるpHの範囲内で処理水を調製すると、前段の電気脱イオン装置からpHが8.5以上の処理水が排出されるようにし、紫外線照射装置に導入する前に処理水のpHを下げて7.0超~8.5未満とし、紫外線照射装置から排出された処理水のpHを9.5以上として後段の電気脱イオン装置に導入することとなる。そして、そのためには、紫外線照射装置前でpHを下げる処理をし、後段の電気脱イオン装置前でpHを上げる処理をするという、煩雑な工程が必要となる。 してみると、処理水が、アルカリ性であれば紫外線照射装置のTOC分解効率が高くなるという甲1発明において、当業者が、敢えて紫外線照射装置に導入される処理水のpHを下げ、紫外線照射装置での処理後に再度pHを上げる処理を行う動機があるとはいえない。 したがって、甲1発明において、甲3の記載事項から、紫外線照射装置に導入される処理水のpHを7.0超~8.5未満とすることを、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 c また、甲2、4、5に、紫外線照射装置に供給される処理水のpHを1.0~8.5未満とすることについての記載はない。 d よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載された事項により当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (2)本件発明9について ア 甲1発明との対比、判断 上記(1)の検討を踏まえると、甲1には、「第1の電気再生式脱イオン装置と、紫外線酸化装置と、第2の電気再生式脱イオン装置と、を有する一次純水システムとしてのTOC除去装置を用いてTOCを除去するTOC除去方法」が記載されているといえる。 そして、これらの装置をこの順で配置して被処理水を処理すれば、 「(a)被処理水を前記第1の電気再生式脱イオン装置に供給して処理するステップと、 (b)前記第1の電気再生式脱イオン装置からの処理水を前記紫外線酸化装置に供給して処理するステップと、 (c)前記紫外線酸化装置からの処理水を前記第2の電気再生式脱イオン装置に供給して処理するステップ」 を有するといえる。してみれば、本件発明9と甲1発明は、上記(1)アに記載した相違点と同じ相違点で相違するといえる。 そして、当該相違点については、同イで検討したとおり、甲1発明及び甲2~5に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明9は、甲1発明及び甲2~5に記載された事項により当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (3)本件発明2、4~6、10について 本件発明2、4~6は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないし、本件発明10は、本件発明9の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (4)本件発明8について 本件発明8のうち請求項1、2、4~6を引用する部分についは、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないし、本件発明8のうち請求項7を引用する部分については、本件発明7の全ての特定事項を含むものであり、本件発明7は、上記第2の2(6)で検討したとおり、新規性・進歩性を有するものであるから、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (5)申立人の主張について ア 申立人は、令和6年12月2日提出の意見書で、おおむね以下の主張をしている。 「甲第3号証には、pH4.8~10.2にpH調整した水を紫外線酸化装置に通水することが明示されており、TOCの分解効率はpHが低いほど向上することが記載されている以上、甲1発明において、紫外線照射装置に供給される水のpHを調整し、pHを1.0以上8.5未満とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。特許権者は、甲第3号証に記載されている発明を甲3発明と捉え、当該甲3発明が「pHをアルカリ条件、好ましくは9.5以上に調整した原水を用いることを前提とする」から、甲1発明に甲3発明を適用することには阻害要因があるとしているが、甲1発明に甲3発明を組み合わせる必要はそもそもなく、甲第3号証に記載されていると特許権者も認識している「紫外線酸化装置におけるTOCの分解効率はpHが低いほど向上する」ことを知り得た当業者が、甲1発明において、紫外線照射装置に供給される水のpHを調整し、pHを1.0以上8.5未満とすることには容易に想到し得るということに過ぎない。」(第3頁22行~第4頁5行) 「甲第1号証に「前段電気脱イオン装置の処理水がアルカリ性の場合、紫外線照射装置のTOC分解効率が高くなる」との記載があるとしても、被処理水のpHを低くしてはいけない、あるいは被処理水のpHを低くすると問題が生じるとの記載が甲第1号証にあるわけではない。したがって、甲第3号証に記載されている「紫外線酸化装置におけるTOC分解効率はpHが低いほど向上する」ことを知り得た当業者が、その構成を甲1発明において採用する動機づけがないと認定することはできない。」(第4頁12行~18行) イ 申立人の主張に対する当審の判断 上記(1)イ(イ)で述べたように、甲1発明において、紫外線照射装置に供給される処理水のpHを、酸性領域を含む1.0~8.5未満とする動機はないものであり、仮に、甲3の記載事項を甲1発明に組み合わせようとすると、上記(1)イ(イ)b(c)で論じたように、シリカ、ホウ素等の弱電解質の除去率を著しく高くするという目的において、不必要に煩雑な工程を強いるものであるから、上記申立人の主張を受け入れることはできない。 (6)取消理由及び申立理由についてのまとめ 以上のとおり、取消理由及び申立理由には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1、2、4~6、8~10に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1、2、4~6、8~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3に係る発明は、訂正により削除された。これにより、請求項3に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700470

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