特許異議申立
2023-701111
脱イオン水の製造方法および製造システム
- 審判番号
- 2023-701111
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-169260
- 登録番号
- 7262353
- 請求日
- 2023年10月18日
- 審決日
- 2024年05月21日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】オルガノ株式会社
- 【権利者代理人】宮崎 昭夫
- 【権利者代理人】緒方 雅昭
- 【異議申立人】柴田 隆史
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 河本 充雄
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.121-YAA(C02F) / P1651.537-YAA(C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7262353号発明「脱イオン水の製造方法および製造システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7262353号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~10〕について訂正することを認める。
特許第7262353号の請求項1、3~10に係る特許を維持する。
特許第7262353号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7262353号の請求項1~10に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和元年9月18日の出願であって、令和5年4月13日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年10月18日:特許異議申立人 柴田 隆史(以下、「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 1月10日付け:取消理由通知
同年 3月12日:特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 4月23日:申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年3月12日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の「1μg-B/L以上のホウ素を含み」との記載を「1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み」に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の「ホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である」との記載を「全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である」に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の「請求項2に記載の脱イオン水の製造方法」との記載を「請求項1に記載の脱イオン水の製造方法」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4の「請求項1~3のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法」との記載を「請求項1または請求項3に記載の脱イオン水の製造方法」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1~4のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法」との記載を「請求項1、3、4のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6の「請求項1~5のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法」との記載を「請求項1、3~5のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法」に訂正する。
(7)訂正事項7
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項8の「1μg-B/L以上のホウ素を含み」との記載を「1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み」に訂正する。
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項8の「ホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である」との記載を「全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である」に訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~10も同様に訂正する。)
なお、本件訂正は、一群の請求項〔1~7〕、〔8~10〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1-1について
訂正事項1-1による訂正は、ホウ素の含有量の上限が「250μg-B/L以下」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0055】の「・ホウ素および炭酸含有水:上記ホウ素非含有水に、ホウ素を250μg-B/Lで添加し」との記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1-1による訂正は、上記のとおり、ホウ素の含有量の上限が「250μg-B/L以下」であることを限定するものであって、カテゴリ-や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項1-2について
まず、訂正事項1-2による訂正は、本件明細書等の【請求項2】、及び、【0057】の【表1】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、訂正事項1-2による訂正は、「ホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である」との記載を「全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である」に訂正するものであるところ、「ホウ素以外の全アニオン濃度」及び「全炭酸濃度」について、本件明細書等の【0030】には、「ホウ素以外の全アニオン濃度は、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、遊離炭酸、シリカ(SiO2、Si(OH)4、Si(OH)3O―)の合計濃度である。」(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)と記載され、【0031】には、「全炭酸濃度(CO2、HCO3-及びCO32-の濃度を全てHCO3-として換算して合計した値)」と記載されていることから、「全炭酸濃度」は、「ホウ素以外の全アニオン濃度」の下位概念であるといえる。
そうすると、「ホウ素以外の全アニオン濃度」を「全炭酸濃度」に訂正することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-2による訂正は、令和6年1月10日付け取消理由通知の「第2 取消理由1(サポート要件)」の2(1)イにおいて、本件訂正前の「ホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水」について、サポート要件を満たしていない旨指摘されたのに対して、サポート要件を満たすように、本件明細書等の【請求項2】、及び、【0057】の【表1】の記載に基づいて、その記載を正すものであるといえる。
したがって、訂正事項1-2による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項1-2による訂正は、上記のとおり、本件訂正前の「ホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である」との記載を正すものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和6年4月23日に提出した意見書の3ページ下から11行~8行において、本件訂正後の請求項1は、供給水の全炭酸濃度のみを規定したものであり、全アニオン濃度については規定されておらず、炭酸以外の他のアニオン成分の制限がなくなっている以上、本件訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない旨主張している。
しかし、上記イで検討したとおり、訂正事項1-2による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正事項1-2による訂正により本件訂正前の請求項1に、本件訂正前の請求項2に特定された事項を特定するとともに、訂正事項2による訂正により、請求項2を削除したことに伴い、請求項3の引用請求項を請求項2から、本件訂正前の請求項2が引用する請求項1にする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正事項1-2による訂正により本件訂正前の請求項1に本件訂正前の請求項2に特定された事項を特定するとともに、訂正事項2による訂正により請求項2を削除したことに伴い、請求項4の引用請求項を請求項1~3のいずれか一項から、請求項1又は請求項3にする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正事項1-2による訂正により本件訂正前の請求項1に本件訂正前の請求項2に特定された事項を特定するとともに、訂正事項2による訂正により請求項2を削除したことに伴い、請求項5の引用請求項を請求項1~4のいずれか一項から、請求項1、3、4のいずれか一項にする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、訂正事項1-2による訂正により本件訂正前の請求項1に本件訂正前の請求項2に特定された事項を特定するとともに、訂正事項2による訂正により請求項2を削除したことに伴い、請求項6の引用請求項を請求項1~5のいずれか一項から、請求項1、3~5のいずれか一項にする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7-1は訂正事項1-1と同じ内容であり、また、訂正事項7-2は訂正事項1-2と同じ内容であるから、上記(1)で検討したのと同様に、訂正事項7-1及び7-2による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 まとめ
以上によれば、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~10〕について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、3~10の特許に係る発明(以下、「本件発明1、3~10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1、3~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
電気式脱イオン水製造装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置が、
対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置であり、
1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する、脱イオン水の製造方法。」
「【請求項3】
前記供給水の全炭酸濃度が800μg-CO2/L以上である、請求項1に記載の脱イオン水の製造方法。
【請求項4】
前記電気式脱イオン水製造装置を、0.1A/dm2以上の電流密度で運転する、請求項1または請求項3に記載の脱イオン水の製造方法。
【請求項5】
前記脱塩室に充填されたイオン交換体が、少なくともカチオン交換体を含む、請求項1、3、4のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法。
【請求項6】
逆浸透膜の透過水を、前記供給水として用いる、請求項1、3~5のいずれか一項に記載の脱イオン水の製造方法。
【請求項7】
前記電気式脱イオン水製造装置を、前記被処理水の流れに関して直列に2つ以上設け、それぞれの電気式脱イオン水製造装置において、逆浸透膜の透過水を、前記供給水として用いる、請求項6に記載の脱イオン水の製造方法。
【請求項8】
対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に、1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である供給水を供給するホウ素含有水供給手段と
を備える、脱イオン水の製造システム。
【請求項9】
前記ホウ素含有水供給手段が、
逆浸透膜と、
前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室の入口に、前記逆浸透膜の透過側を連通させる流路と
を含む、請求項8に記載の脱イオン水の製造システム。
【請求項10】
前記電気式脱イオン水製造装置が、前記被処理水の流れに関して直列に2つ以上接続され、
前記ホウ素含有水供給手段が、
それぞれの前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室の入口に、前記逆浸透膜の透過側を連通させる流路を含む、請求項9に記載の脱イオン水の製造システム。」
第4 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第6号証(以下、「甲1」~「甲6」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~10に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(進歩性)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1及び甲2に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲1~甲3に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1~甲4に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項4~6に係る発明は、甲1~甲5に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲1~甲6に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項8、9に係る発明は、甲1及び甲2に記載された発明に基いて、本件訂正前の請求項10に係る発明は、甲1、甲2及び甲6に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠方法]
甲1:特開2004-167291号公報
甲2:特開2017-140550号公報
甲3:特開2018-30065号公報
甲4:特開2010-201361号公報
甲5:特開2002-136971号公報
甲6:特開2019-111467号公報
2 申立理由2(サポート要件)
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 申立理由3(明確性)
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、特許請求の範囲の記載が明確でないから、本件請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
当審において、令和6年1月10日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(サポート要件)
本件請求項1~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
なお、令和6年1月10日付け取消理由の理由1における「特許法第36条第6項第2号」は、「特許法第36条第6項第1号」の誤記であることを、特許権者は、令和6年2月27日に実施した面接において了承している(同日付の面接記録参照。)。
第6 取消理由1(サポート要件)、申立理由2(サポート要件)について
1 本件発明が解決しようとする課題
本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0008】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「スケール生成抑制のために濃縮室内にアニオン交換体を配しつつも、ホウ素がカチオン交換膜を通過して濃縮室から脱塩室に移動することを抑制することのできる、EDI装置を用いた脱イオン水の製造方法および製造システムを提供すること」(以下、「本件課題」という。)であるといえる。
2 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の【発明を実施するための形態】の【0009】、【0010】、【0016】、【0017】、【0019】、【0021】、【0030】、【0031】、【0034】、【0049】の記載、【実施例】の【0053】~【0057】の記載によれば、発明の詳細な説明には、「電気式脱イオン水製造装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置が、
対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置であり、
1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する、脱イオン水の製造方法」、及び、「対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に、1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である供給水を供給するホウ素含有水供給手段と
を備える、脱イオン水の製造システム」が記載され、かつ、上記「脱イオン水の製造方法」及び「脱イオン水の製造システム」は、スケール生成抑制のために濃縮室内にアニオン交換体を配しつつも、ホウ素がカチオン交換膜を通過して濃縮室から脱塩室に移動することを抑制できる、すなわち、本件課題を解決できるといえる。
3 上記2の検討によれば、本件発明1及び8は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
4 本件発明3は、発明の詳細な説明の【0031】に記載され、本件発明4は同【0035】に記載され、本件発明5は同【0020】に記載され、本件発明6は同【0028】に記載され、本件発明7は同【0051】に記載され、本件発明9は同【0049】に記載され、本件発明10は同【0049】、【0051】に記載されているといえる。
また、本件発明3~7は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、また、本件発明9~10は、本件発明8の全ての構成を有するものであるから、本件発明1及び8と同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
5 まとめ
以上によれば、本件発明1、3~10は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、請求項1、3~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
よって、取消理由1及び申立理由2には、理由がない。
第7 申立理由1(進歩性)について
1 甲号証の記載、甲号証に記載された発明
(1)甲1(特開2004-167291号公報)
ア 甲1には以下の記載がある。
「【0015】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の電気脱イオン装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の電気脱イオン装置の実施の形態を示す模式的な断面図である。
【0016】
この電気脱イオン装置は、電極(陽極11、陰極12)の間に複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14を交互に配列して複数の濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16及び濃縮室15にそれぞれカチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填したものである。17は陽極室、18は陰極室である。
・・・
【0021】電気脱イオン装置の給水は、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水が用いられ、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である。このような水の処理には、脱塩室16のイオン交換樹脂のアニオン/カチオン比は60/40~70/30程度とすることが望ましい。なお、脱塩室16内も、イオン交換樹脂に限らず、イオン交換繊維等の他のイオン交換体を充填しても良い。
【0022】
このような本発明の電気脱イオン装置では、従来の電気脱イオン装置と同様に、被処理水は濃縮室15及び脱塩室16に導入され、脱塩室16に流入した被処理水中のイオンのうち、カチオンはカチオン交換膜14を透過して、また、アニオンはアニオン交換膜13を透過して、それぞれ濃縮室15内に濃縮され、脱塩室16から生産水として脱イオン水が得られる。一方、濃縮室15からは、イオンが濃縮された濃縮水が流出する。」
「【図1】
[図:0001413342000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
(ア)甲1の【0016】には、「この電気脱イオン装置は、電極(陽極11、陰極12)の間に複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14を交互に配列して複数の濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16及び濃縮室15にそれぞれカチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填したものである。」と記載されているから、電気脱イオン装置は、陽極11と陰極12の間に複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14を交互に配列して複数の濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16及び濃縮室15にそれぞれカチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填したものであるといえる。
(イ)甲1の【図1】から、脱塩室16は、脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15のうちの陰極12側の濃縮室15にカチオン交換樹脂10Aを介して隣接するとともに、一対の濃縮室15のうちの陽極11側の濃縮室15にアニオン交換樹脂10Bを介して隣接していることが見て取れる。
(ウ)甲1の【0022】には、「このような本発明の電気脱イオン装置では、従来の電気脱イオン装置と同様に、脱塩室16に流入した被処理水中のイオンのうち、カチオンはカチオン交換膜14を透過して、また、アニオンはアニオン交換膜13を透過して、それぞれ濃縮室15内に濃縮され、脱塩室16から生産水として脱イオン水が得られるものといえる。」と記載されているから、電気脱イオン装置では、脱塩室16に被処理水を流入させて脱塩室16から脱イオン水を得ているといえる。
(エ)上記(ア)及び(ウ)の検討を参酌すると、甲1には、電気脱イオン装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法が記載されているといえる。
(オ)甲1の【0021】には、「電気脱イオン装置の給水は、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水が用いられ、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である。」と記載され、同【0022】には、「被処理水は濃縮室15及び脱塩室16に導入され」と記載されているから、電気脱イオン装置の濃縮室15に導入される被処理水は、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水が用いられ、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度であるといえる。
また、甲1には、電気脱イオン装置と、電気脱イオン装置の濃縮室15に、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水を用い、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である被処理水を導入する被処理水導入手段とを備える電気脱イオン水製造システムが記載されているといえる。
(カ)以上によれば、甲1には、以下の2つの発明が記載されている。
「電気脱イオン装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法であって、
電気脱イオン装置は、陽極11と陰極12の間に複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14を交互に配列して複数の濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16及び濃縮室15にそれぞれカチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填したものであり、
脱塩室16は、脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15のうちの陰極12側の濃縮室15にカチオン交換樹脂10Aを介して隣接するとともに、一対の濃縮室15のうちの陽極11側の濃縮室15にアニオン交換樹脂10Bを介して隣接し、
脱塩室16に被処理水を流入させて脱塩室16から脱イオン水を得る電気脱イオン装置であり
濃縮室15に導入される被処理水は、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水が用いられ、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である、脱イオン水の製造方法。」(以下、「甲1-1発明」という。)
「陽極11と陰極12の間に複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14を交互に配列して複数の濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16及び濃縮室15にそれぞれカチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填したものであり、
脱塩室16は、脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15のうちの陰極12側の濃縮室15にカチオン交換樹脂10Aを介して隣接するとともに、一対の濃縮室15のうちの陽極11側の濃縮室15にアニオン交換樹脂10Bを介して隣接し、
脱塩室16に被処理水を流入させて脱塩室16から脱イオン水を得る電気脱イオン装置と、
電気脱イオン装置の濃縮室15に、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水を用い、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である被処理水を導入する被処理水導入手段と
を備える、脱イオン水の製造システム。」(以下、「甲1-2発明」という。)
(2)甲2(特開2017-140550号公報)
甲2には以下の記載がある。
「【0080】
(実施例1)
図4は、実施例に用いた純水製造装置3を概略的に表わすブロック図である。図4に示す純水製造装置3は、第1の実施形態の純水製造装置1の前段に、活性炭装置(AC)35を備える他は、純水製造装置1と同様の構成である。そのため、純水製造装置1と同様の機能を奏する構成については、重複する説明を省略する。図4に示すように、純水製造装置3は、活性炭装置35、第1逆浸透膜装置31、第2逆浸透膜装置32、膜閉塞防止剤添加装置33を順に備えている。
【0081】
第1逆浸透膜装置31は、処理対象を導入する供給管31aと、透過水配管31bと、濃縮水配管31cを備えている。第2逆浸透膜装置32は、透過水配管31bによって第1逆浸透膜装置31に接続されている。第2逆浸透膜装置32は、透過水配管32bと濃縮水循環配管32cとを備えている。濃縮水循環配管32cは、供給管31aに接続されている。
【0082】
本実施例では、処理対象水として、市水(ホウ素濃度11.9μg/L、pH7.9、全炭酸濃度0.5mg/L)を用いた。第1逆浸透膜装置31の濃縮水は系外に排出した。第2逆浸透膜装置32の濃縮水は、第1の逆浸透膜装置31に供給されるように循環させた。また、膜閉塞防止剤添加装置33としては定量ポンプを用い、これを透過水配管31bに接続して、透過水配管31bを通流する第1透過水にスケール防止剤を添加するように配置した。スケール防止剤としては、無機ポリリン酸類を主成分とするスケール防止剤(NALCO製、PC-191T、pH:10.5)を使用して、第1透過水に対して薬液量2.5mg/Lで添加した。pH調整剤は使用しなかった。
【0083】
純水製造装置3に使用した各装置の使用及び運転条件は次のものである。
活性炭装置(AC)35:NCC-200型(活性炭充填量:54L、野村マイクロ・サイエンス社製)を1本使用した。
第1逆浸透膜装置31:TM820K-400(東レ社製、中圧型逆浸透膜装置)を1本使用した。水回収率は85%、透過水流量は0.85m3/hr、給水圧力は2.5MPaである。
第2逆浸透膜装置32:TMG20-400(東レ社製、超低圧型逆浸透膜装置)を1本使用した。水回収率は90%、透過水流量は0.76m3/hr、濃縮水流量は0.09m3/hr、給水圧力は0.7MPaである。
【0084】
原水の処理を開始して第2逆浸透膜装置32の透過水水質が安定した後に、活性炭装置35の処理水(測定ポイントA)、第1逆浸透膜装置31への供給水(測定ポイントB)、第2逆浸透膜装置32への供給水(測定ポイントC)、第2逆浸透膜装置32の透過水(測定ポイントD)中の全炭酸(CO2+HCO3-+CO32-)濃度、ホウ素濃度、pHをそれぞれ測定した。さらに、全炭酸濃度の測定値と、pHの測定値から、各ポイントにおけるCO2濃度、HCO3-とCO32-の合計濃度をそれぞれ計算で求めた。また、測定ポイントC及び測定ポイントDにおけるホウ素濃度の測定値から、第2逆浸透膜装置32におけるホウ素除去率を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0085】
各水質の測定方法及び測定に用いた装置は次のとおりである。
pHの測定:CP-200(Horiba社製)、
全炭酸濃度の測定:TOC-900 On-Line(GE社製)
ホウ素濃度の測定:誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)
【0086】
(実施例2)
処理対象水として使用済み超純水を処理した回収水(ホウ素濃度11.0μg/L、pH=7.1、全炭酸濃度=6mg/L)を用い、スケール防止剤の添加量を15mg/Lにした他は実施例1と同様の処理を行った。各測定ポイントで実施例1と同様に水質の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0087】
(比較例1)
処理対象水として、実施例1と同様の市水を用い、膜閉塞防止剤添加装置33の接続位置を、供給管31aの濃縮水循環配管32cの接続点と第1逆浸透膜装置31の間に変更した他は実施例1と同様の処理を行った。本例では、測定ポイントBは膜閉塞防止剤添加装置33と第1逆浸透膜装置31の間である。各測定ポイントで実施例1と同様に水質の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0088】
(実施例3)
図5に示すように、純水製造装置3の、活性炭装置35と供給管31aの濃縮水循環配管32cの接続点との間に、脱炭酸装置(DG)36(リキセル(登録商標)、(4×28インチ外圧型分離膜、ポリポア社製)を直列で2本接続したもの)を設置した純水製造装置4を用いた。脱炭酸装置36では、供給流量を1m3/hrとして、脱炭酸装置36の真空側に窒素(N2)ガスを0.2Nm3/hrで注入し、真空度を50Torrで運転し、脱炭酸処理を行った。
【0089】
処理対象水として実施例2と同様の回収水を用い、スケール防止剤の添加量を2.5mg/Lにした他は実施例1と同様の処理を行った。なお、本例における測定ポイントBは、供給管31の濃縮水循環配管32cの接続点と第1逆浸透膜装置31の間である。各測定ポイントで実施例1と同様に水質の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
処理対象水として実施例2と同様の回収水を用い、スケール防止剤の添加量を2.5mg/L、膜閉塞防止剤添加装置33の接続位置を、供給管31aの濃縮水循環配管32cの接続点と第1逆浸透膜装置31の間に変更した他は実施例3と同様の処理を行った。なお、測定ポイントBは膜閉塞防止剤添加装置33と第1逆浸透膜装置31の間である。各測定ポイントで実施例1と同様に水質の測定を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例3)
処理対象水として実施例1と同様の市水を用い、塩基性のスケール防止剤に代えて、ポリカルボン酸を有効成分とするスケール防止剤(Flocon 100、pH3、BioLab社製)を使用し、添加量を2.5mg/Lにした他は実施例1と同様の処理を行った。各測定ポイントで実施例1と同様に水質の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0092】
(実施例4)
処理対象水として実施例1と同様の市水を用い、スケール防止剤に代えて、
結合臭素を有効成分とするスライムコントロール剤(ハイパワーブロム100、pH13.5、片山ナルコ社製)を使用した。スライムコントロール剤の添加量を5mg/Lにした他は実施例1と同様の処理を行った。各測定ポイントで実施例1と同様に水質の測定を行った。これらの結果を表2に示す。
【0093】
【表1】
[図:0001413342000002.jpg]
」
「【図4】
[図:0001413342000003.jpg]
【図5】
[図:0001413342000004.jpg]
」
(3)甲3(特開2018-30065号公報)
甲3には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされたものであって、逆浸透膜装置と脱気装置の組合せによって、全炭酸(IC)を著しく低減し、極めて純度の高い超純水を製造することのできる超純水製造システム及び超純水製造方法を提供することを目的とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態の超純水製造システム1を模式的に表わす図である。超純水製造システム1は、第1逆浸透膜装置(RO1)11と、酸添加装置12と、脱気装置(DG)13と、第2逆浸透膜装置(RO2)14を備えている。第2逆浸透膜装置14は、超純水の使用場所(POU)15に接続されている。
【0018】
超純水製造システム1においては、原水を第1逆浸透膜装置11で脱塩処理して第1透過水を得た後、第1透過水を脱気装置13にて脱気処理して二酸化炭素ガスを除去し、さらに、第2の逆浸透膜装置で、脱気処理水中に残留するイオン成分と非イオン成分を除去して第2透過水を生成する。
【0019】
超純水製造システム1において、脱塩処理した第1透過水に酸を添加した後に脱気処理を行うことで、脱気処理水中のIC濃度を著しく低減することができる。そして、脱気処理水中に残留するイオン成分を第2の逆浸透膜装置で除去することで、不純物濃度を著しく低減し、かつ極めて高い抵抗率の第2透過水を得ることができる。ここで、全炭酸(IC)は、二酸化炭素(CO2)と、炭酸イオン(CO32-)と炭酸水素イオン(HCO3-)の総量である。また、以下において特に断らない限り、IC濃度は、炭素換算濃度(as C)で表す。」
「【0066】
【表1】
[図:0001413342000005.jpg]
」
「【図1】
[図:0001413342000006.jpg]
」
(4)甲4(特開2010-201361号公報)
甲4には、以下の記載がある。
「【0011】
濃縮室のスケール発生抑制のために、濃縮室にアニオン交換体を充填すると、脱塩室から濃縮室へのアニオン成分の移動が促進され濃縮室でのスケール発生を抑制できる。その一方で、脱塩室から濃縮室に移動してきたイオン化した炭酸は対極方向へと移動し、酸性に傾いたカチオン交換膜近傍でガス化して炭酸ガスとなり、炭酸ガスはカチオン交換膜を透過し脱塩室に移動しやすくなる。この結果、脱イオン水の水質は、低下するおそれがある。
そこで本発明は、大量の被処理水や炭酸濃度が高い被処理水であっても、比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水を安定的に得られるEDI及び脱イオン水の製造方法を目的とする。」
「【0062】
被処理水中に含まれるイオン成分濃度は特に限定されないが、例えば、全炭酸濃度が好ましくは0.5mg/L以上、より好ましくは5mg/L以上、さらに好ましくは10mg/L以上の被処理水に対して、EDI10を好適に用いることができる。被処理水中の全炭酸濃度の上限値は特に限定されないが、200mg/L以下であることが好ましい。また、例えば、シリカ濃度が好ましくは0.2mg/L以上、より好ましくは0.5mg/L以上、さらに好ましくは1.0mg/L以上の被処理水に対して、EDI10を好適に用いることができる。被処理水中のシリカ濃度の上限は特に限定されないが、30mg/L以下であることが好ましい。一般に、被処理水中には、従来のEDIでは除去しにくい弱酸成分の炭酸やシリカが多く含まれている。即ち、上述のような全炭酸濃度及び/又はシリカ濃度が比較的高い被処理水において、本発明のEDIは従来のEDIと比較して顕著な効果を示すことができる。なお、全炭酸濃度とは、遊離炭酸、炭酸水素イオン及び炭酸イオンの合計の濃度をCO2濃度として表したものである。また、シリカ濃度とはケイ素化合物の合計量をシリカ(SiO2)として表したものである。」
「【0066】
濃縮水の流量が少なすぎると、濃縮室30に移行したイオン成分の濃度拡散にむらが生じ、イオン交換膜面の濃度分極層が厚くなり、スケ-ル生成のおそれがある。一方、濃縮水の流量が多すぎると、脱イオン水の回収率が低下するため好ましくない。濃縮水に用いる原水は、特に限定されることはなく、被処理水と同じ水源の水を濃縮水の原水として使用しても良いし、脱イオン水や純水等を使用しても良い。」
(5)甲5(特開2002-136971号公報)
甲5には以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気的脱イオン装置に係わり、特に処理水の比抵抗値と弱電解質アニオンの除去率の向上を図り、高純度の純水を連続的に製造することができる電気的脱イオン装置に関する。」
「【0086】厚さ5mm以上の脱塩室を有する電気的脱イオン装置は、100mA/dm2以上の電流密度そして1m3/m2/d以上のイオン交換膜通水量で運転されてもよく、この運転は優れた処理水水質をもたらす。」
(6)甲6(特開2019-111467号公報)
甲6には以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、電気脱イオンシステムに係り、特に電気脱イオン装置を複数段に設けた電気脱イオンシステムに関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、実施の形態に係る電気脱イオンシステムに用いられる電気脱イオン装置の構成の一例を示す。なお、この装置で処理される原水としては、RO(逆浸透)処理水等が例示される。」
「【0026】
本発明では、図4のように、第1の電気脱イオン装置1の濃縮室15Aには、原水を脱塩室を並行流にて通水してもよい。」
「【図4】
[図:0001413342000007.jpg]
」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
ア 甲1-1発明の「脱塩室16」には「カチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂」が「充填」されている。
一方、本件発明1の「脱塩室」に「充填された」「イオン交換体」について、本件明細書には以下の記載がある。
「【0019】
・脱塩室内のイオン交換体
脱塩室23内には、被処理水に含まれるイオンを捕捉するために、イオン交換体(アニオン交換体および/またはカチオン交換体)が充填される。」
以上の記載から、本件発明1の「脱塩室」に「充填された」「イオン交換体」は、アニオン交換体及び/又はカチオン交換体であるといえる。
そうすると、甲1-1発明の「カチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂」が「充填」された「脱塩室16」は、本件発明1の「イオン交換体が充填された脱塩室」に相当する。
イ 甲1-1発明の「脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15」には、「カチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填し」ているから、「脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15」のそれぞれに少なくとも「アニオン交換樹脂10B」が「充填」されているといえる。
そうすると、甲1-1発明の「脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15」、「アニオン交換樹脂10B」は、本件発明1の「該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室」、「アニオン交換体」に相当し、本件発明1と甲1-1発明とは、「前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され」ている点で共通する。
ウ 甲1-1発明の「電気脱イオン装置」は、「カチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填した」「脱塩室16」と、「脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15」とを有するものであり、「脱塩室16」と「一対の濃縮室15」とは、対向する「陽極11」と「陰極1」との間に設けられているといえるから、甲1-1発明の対向する「陽極11」と「陰極1」との間に設けられている「カチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填した」「脱塩室16」と、「脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15」は、本件発明1の「対向する陰極と陽極との間に」「設けられ」る「少なくとも一つの脱塩処理部」に相当する。
エ 甲1-1発明の「脱塩室16は、脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15のうちの陰極12側の濃縮室15にカチオン交換樹脂10Aを介して隣接するとともに、一対の濃縮室15のうちの陽極11側の濃縮室15にアニオン交換樹脂10Bを介して隣接し」ていることは、本件発明1の「前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し」ていることに相当する。
オ 甲1-1発明において、「電気脱イオン装置」の「濃縮室15に導入される被処理水は、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水が用いられ、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である」から、甲1-1発明は、「被処理水」を、少なくとも、「陽極11」に最も近い「濃縮室15」以外の「濃縮室15」に供給しているといえる。
そうすると、甲1-1発明の「被処理水」は、本件発明1の「供給水」に相当し、本件発明1と甲1-1発明とは、「前記電気式脱イオン水製造装置の、供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する」点で共通する。
カ 甲1-1発明の「電気脱イオン装置」は、本件発明1の「電気式脱イオン装置」に相当し、甲1-1発明の「電気脱イオン装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法」は、本件発明1の「電気式脱イオン水製造装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法」に相当する。
キ 以上によれば、本件発明1と甲1-1発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「電気式脱イオン水製造装置を用いて脱イオン水を製造する、脱イオン水の製造方法であって、
前記電気式脱イオン水製造装置が、
対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置であり
供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する、脱イオン水の製造方法。」
<相違点>
相違点1:「少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する」「供給水」について、本件発明1は、「1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である」のに対し、甲1-1発明は、「一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水が用いられ、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度」であって、本件発明1の上記構成を備えているか不明である点。
(2)相違点1についての判断
甲2の【0093】【表1】の実施例1~3には、測定ポイントCにおける供給水は、ホウ素濃度が2.5~2.9μg/Lであり、CO2の濃度が<0.1~4.2mg/L、HCO3+CO32-の濃度が0.12~4.2mg/Lであることが記載されている。
しかし、甲2の【0084】の記載によれば、測定ポイントCの供給水は、第2逆浸透膜装置32への供給水であって、「電気脱イオン装置」の「濃縮室15に導入される被処理水」ではない。
そうすると、甲2に記載されているポイントCにおける供給水を、甲1-1発明の「電気脱イオン装置」の「濃縮室15に導入される被処理水」に採用する動機付けはない。
また、甲3~甲6のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲1-1発明及び甲2~甲6に記載され発明に基づいて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。
(3)小括
以上から、本件発明1は、甲1-1発明及び甲2~甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明3~7について
本件発明3~7は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1-1発明及び甲2~甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
4 本件発明8について
(1)対比
本件発明8と甲1-2発明とを対比する。
ア 上記2(1)の検討を参酌すると、甲1-2発明の「陽極11と陰極12の間に複数のアニオン交換膜13及びカチオン交換膜14を交互に配列して複数の濃縮室15と脱塩室16とを交互に形成し、脱塩室16及び濃縮室15にそれぞれカチオン交換樹脂10Aとアニオン交換樹脂10Bとの混合イオン交換樹脂を充填したものであり、
脱塩室16は、脱塩室16の両隣に設けられる一対の濃縮室15のうちの陰極12側の濃縮室15にカチオン交換樹脂10Aを介して隣接するとともに、一対の濃縮室15のうちの陽極11側の濃縮室15にアニオン交換樹脂10Bを介して隣接し、
脱塩室16に被処理水を流入させて脱塩室16から脱イオン水を得る電気脱イオン装置」は、本件発明8の「対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置」に相当する。
イ 甲1-2発明は、「電気脱イオン装置の濃縮室15に、一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水を用い、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である被処理水を導入する被処理水導入手段」を有しているから、甲1-2発明は、「被処理水」を、少なくとも、「陽極11」に最も近い「濃縮室15」以外の「濃縮室15」に供給する「被処理水導入手段」を備えているといえる。
そうすると、甲1-2発明の「被処理水」は、本件発明8の「供給水」に相当し、本件発明8と甲1-2発明とは、「少なくとも、陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に、供給水を供給する供給手段」を備える点で共通する。
ウ 以上によれば、本件発明8と甲1-2発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「対向する陰極と陽極との間に少なくとも一つの脱塩処理部が設けられ、
前記脱塩処理部は、イオン交換体が充填された脱塩室と、該脱塩室の両隣に設けられる一対の濃縮室とを有し、前記一対の濃縮室のそれぞれに少なくともアニオン交換体が充填され、
前記脱塩室は、前記一対の濃縮室のうちの前記陰極側の濃縮室にカチオン交換膜を介して隣接するとともに、前記一対の濃縮室のうちの前記陽極側の濃縮室にアニオン交換膜を介して隣接し、
前記脱塩室に被処理水を通水して前記脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置と、
前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に、供給水を供給する供給手段と
を備える、脱イオン水の製造システム。」
<相違点>
相違点2:「前記電気式脱イオン水製造装置の、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室」に、「供給水を供給する」「供給手段」が、本件発明8は、「1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である供給水を供給するホウ素含有水供給手段」であるのに対し、甲1-2発明は、「一般的に市水等の原水を活性炭、逆浸透膜分離(RO)処理した水を用い、その電気伝導度は3~10μS/cm、CO2濃度は3~30ppm、シリカ濃度は0.2~1.0ppm程度である被処理水を導入する被処理水導入手段」であって、本件発明8の上記構成を備えているか不明である点。
(2)相違点2についての判断
相違点2に係る本件発明8の「供給水」は、「1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である供給水」であるところ、当該「供給水」は、相違点1に係る本件発明1の「供給水」と同じ構成であるから、上記2(2)で検討したのと同様の理由により、甲2に記載されているポイントCにおける供給水を、甲1-2発明の「電気脱イオン装置」の「濃縮室15に導入される被処理水」に採用する動機付けはない。
また、甲3~甲6には、相違点2に係る本件発明8の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲1-2発明及び甲2~甲6に記載され発明に基づいて、相違点2に係る本件発明8の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得るものであるとはいえない。
(3)小括
以上から、本件発明8は、甲1-2発明及び甲2~甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件発明9~10について
本件発明9~10は、本件発明8の全ての構成を有するものであるから、本件発明8と同様の理由により、甲1-2発明及び甲2~甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
6 まとめ
以上によれば、本件発明1、3~10は、甲1~甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、請求項1、3~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
よって、申立理由1には、理由がない。
第8 申立理由3(明確性)について
1 申立人は、特許異議申立書の35ページ下から4行~37ページ9行において、本件訂正前の請求項1の「1μg-B/L以上のホウ素」及び、「ホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上」について、甲2の【0093】の【表2】のポイントCにおける供給水(第1逆浸透膜装置31の処理水)の記載、及び、甲3の【0066】の【表1】の2段の逆浸透膜処理水の記載を根拠として、本件訂正前の請求項1で規定する供給水のホウ素及び全アニオンの濃度の下限値はいずれも高度な清浄化処理を施した水に相当するものであり、その結果、本件訂正前発明における電気脱イオン装置の濃縮水の供給水は、逆浸透膜の透過水はおろか汎用的な市水、工業用水などがすべてこの水質に該当するから、かかる非常に低い下限値が許容されるとすれば、実質的に電気脱イオン装置の濃縮水に水を共有すること自体ができなくなり、明らかに不合理であり、したがって、訂正前の請求項1の「1μg-B/L以上のホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する」における下限だけを示すような数値範囲限定は、発明の範囲が不明確となる場合に該当し、その結果、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮してその表現を含む発明特定事項の範囲を当業者が理解できるものとはなっておらず、かかる特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たしていない旨主張している。
2 しかし、本件訂正前の請求項1、8の「1μg-B/L以上のホウ素を含み、かつホウ素以外の全アニオン濃度が10μg-CaCO3/L以上である供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する」は、本件訂正によって、「1μg-B/L以上250μg-B/L以下のホウ素を含み、かつ全炭酸濃度が10μg-CO2/L以上27000μg-CO2/L以下である供給水を、少なくとも、前記陽極に最も近い濃縮室以外の濃縮室に供給する」に訂正されている。
そして、本件訂正後の請求項1、8の記載において、供給水のホウ素及び全炭酸濃度は、いずれも下限及び上限が特定されており、その記載は明確である。
したがって、本件訂正後の請求項1、8の記載、及び、本件訂正後の請求項1を引用する請求項3~7の記載、並びに、本件訂正後の請求項8の記載を引用する請求項9~10の記載は、いずれも明確である。
よって、申立人の上記主張は、採用できない。
3 まとめ
以上によれば、本件発明1、3~10の記載は明確である。
したがって、請求項1、3~10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
よって、申立理由3には、理由がない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、3~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701111