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特許異議申立

2021-700419

逆浸透膜を用いる水処理方法

審判番号
2021-700419
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-162399
登録番号
6779706
請求日
2021年04月30日
審決日
2022年05月12日
公報発行日
2022年08月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】オルガノ株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人YKI国際特許事務所
  • 【異議申立人】鈴木 淑子
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 山田 倍司
分類
P1651.113-YAA(C02F) / P1651.121-YAA(C02F) / P1651.536-YAA(C02F) / P1651.537-YAA(C02F) / P1651.841-YAA(C02F) / P1651.851-YAA(C02F) / P1651.853-YAA(C02F) / P1651.855-YAA(C02F) / P1651.857-YAA(C02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第2条第3項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6779706号発明「逆浸透膜を用いる水処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6779706号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第6779706号の請求項3、4及び6~8に係る特許を維持する。 特許第6779706号の請求項1、2及び5に係る特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6779706号に係る出願は、平成28年8月23日を出願日とする出願であって、令和2年10月16日にその請求項1~5に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、令和3年4月30日に特許異議申立人 鈴木 淑子(以下、「申立人」という。)により甲第1~23号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年7月13日付で当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月9日に特許権者より乙第1号証を添付して意見書の提出及び訂正の請求(以下、「一次訂正請求」という。)がされ、同年11月4日に申立人より甲第24~25号証を添付して意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出され、同年12月21日に当審より訂正拒絶理由が通知され、令和4年1月24日に申立人より上申書(以下、「上申書」という。)が提出され、同年同月25日に特許権者より意見書が提出され、同年2月8日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月1日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたものである。 なお、一次訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。また、当該一次訂正請求による訂正は、「逆浸透膜が」「アニオン荷電膜である」との発明特定事項を削除する訂正事項を含んでいたのに対して、本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、このような訂正事項を含んでいないこと(すなわち当該発明特定事項に関しては実質的な訂正はないこと)を除き、両者の訂正事項は共通しているところ、この共通の訂正事項については既に申立人から意見を聴取しているから、このような事情は、同法同条第5項ただし書にいう特別な事情にあたるものであるため、同項の規定に基づいて、申立人に意見書を提出する機会を与えることはしない。 第2 本件訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~12からなるものである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「請求項1または2に記載の逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整することを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 と記載されているのを、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整し、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 に訂正する(請求項3を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「請求項1~3のいずれか1項に記載の逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含むことを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 と記載されているのを、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含み、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 に訂正する(請求項4を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 新たに特許請求の範囲の請求項6として、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整し、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 を追記する(請求項6を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 新たに特許請求の範囲の請求項7として、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含み、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 を追記する(請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 新たに特許請求の範囲の請求項8として、 「請求項3,4,6,7のいずれか1項に記載の逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 透過水をユースポイントで使用しないときのみに前記殺菌剤を添加して前記被処理水中に存在させることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 を追記する。 (9)訂正事項9 本件特許明細書の段落【0008】に、 「本発明は、被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、アンモニアを含有する前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を存在させ、前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である、逆浸透膜を用いる水処理方法である。」 と記載されているのを、 「本発明は、被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整し、前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である、逆浸透膜を用いる水処理方法である。」 に訂正する。 (10)訂正事項10 本件特許明細書の段落【0009】に、 「また、本発明は、被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、アンモニアを含有する前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を存在させ、前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である、逆浸透膜を用いる水処理方法である。」 と記載されているのを、 「また、本発明は、被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整し、前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である、逆浸透膜を用いる水処理方法である。」 に訂正する。 (11)訂正事項11 本件特許明細書の段落【0010】に、 「前記逆浸透膜を用いる水処理方法において、前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整することが好ましい。」 と記載されているのを、 「本発明は、被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含み、前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である、逆浸透膜を用いる水処理方法である。」 に訂正する。 (12)訂正事項12 本件特許明細書の段落【0012】に、 「前記逆浸透膜を用いる水処理方法において、前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含むことが好ましい。」 と記載されているのを、 「本発明は、被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含み、前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である、逆浸透膜を用いる水処理方法である。」 に訂正する。 (13)一群の請求項について 本件訂正前の請求項3~5は請求項1又は2を引用するものであり、本件訂正前の請求項1~5は一群の請求項であるので、訂正事項1~8に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項所定の規定に従い、この一群の請求項1~5を訂正の単位として請求されたものである。 また、上記訂正事項9~12に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項所定の規定に従い、この一群の請求項1~5を訂正の単位として請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、2、5について 訂正事項1、2及び5に係る訂正は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1、2及び5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、以下の訂正事項からなるものであり、各訂正事項についての判断は次のとおりである。 ア 訂正事項3-1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3が請求項1又は2を引用するものであったものを、請求項1を引用するものについて独立請求項とする訂正。 そして、訂正事項3-1に係る訂正は、後記訂正事項6-1と併せみれば、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項3-2 「被処理水」のpHを「5.5以上9.0以下」に限定するとともに、「水処理方法」を、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものに限定する訂正。 そして、訂正事項3-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許明細書の段落【0026】及び【0048】には、 「【0026】 本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法では、例えば、アンモニアを含有する被処理水中に、「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入してもよい。「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に被処理水に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから被処理水に添加してもよい。」 「【0048】 本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法において、逆浸透膜を備える逆浸透膜装置へ給水される被処理水のpHが5.5以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましく、6.5以上であることがさらに好ましい。…また、被処理水のpHの上限値については、通常の逆浸透膜の適用上限pH(例えば、pH10)以下であれば特に制限はないが、カルシウム等の硬度成分のスケール析出を考慮すると、pHは例えば9.0以下で運転することが好ましい。…」(当審注:「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。) と記載されているから、訂正事項3-2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 小括 前記ア、イによれば、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3)訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、以下の訂正事項からなるものであり、各訂正事項についての判断は次のとおりである。 ア 訂正事項4-1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4が請求項1~3のいずれか1項を引用するものであったものを、請求項1を引用するものについて独立請求項とする訂正。 そして、訂正事項4-1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項4-2 「被処理水」のpHを「5.5以上9.0以下」に限定するとともに、「水処理方法」を、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものに限定する訂正。 そして、訂正事項4-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、前記(2)イに記載したのと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 小括 前記ア、イによれば、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (4)訂正事項6について 訂正事項6に係る訂正は、以下の訂正事項からなるものであり、各訂正事項についての判断は次のとおりである。 ア 訂正事項6-1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3が請求項1又は2を引用するものであったものを、請求項2を引用するものについて独立請求項とする訂正。 そして、訂正事項6-1に係る訂正は、前記訂正事項3-1と併せみれば、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項6-2 「被処理水」のpHを「5.5以上9.0以下」に限定するとともに、「水処理方法」を、「被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものに限定する訂正。 そして、訂正事項6-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、前記(2)イに記載したのと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 小括 前記ア、イによれば、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (5)訂正事項7について 訂正事項7に係る訂正は、以下の訂正事項からなるものであり、各訂正事項についての判断は次のとおりである。 ア 訂正事項7-1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4が請求項1~3のいずれか1項を引用するものであったものを、請求項2を引用するものについて独立請求項とする訂正。 そして、訂正事項7-1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項7-2 「被処理水」のpHを「5.5以上9.0以下」に限定するとともに、「水処理方法」を、「被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものに限定する訂正。 そして、訂正事項7-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、前記(2)イに記載したのと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 小括 前記ア、イによれば、訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (6)訂正事項8について 訂正事項8に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5が択一的に引用していた請求項1~4のうちの、請求項1を引用する請求項3、請求項2を引用する請求項3、請求項1を引用する請求項4、または、請求項2を引用する請求項4について、前記訂正事項3-2などの限定を加えるとともに、前記各訂正事項との整合を図りながら、新たに請求項8とするものである。 そして、訂正事項8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (7)訂正事項9~12について 訂正事項9~12は、前記訂正事項1~7に伴い、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項3、4、6及び7の記載と本件訂正前の本件特許明細書の段落【0008】~【0010】及び【0012】の記載とが不整合となっていたところ、これらを整合させて記載を明瞭にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項9~12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (8)独立特許要件について 本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~5について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (9)申立人意見書における申立人の主張について ア 申立人は、申立人意見書において、以下の(i)~(iii)の理由により、一次訂正は特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合しない旨を主張している。 (i)本件特許明細書の実施例においては、超純水に殺菌剤を添加し調製した被処理水に対してアンモニア塩水溶液を添加して、逆浸透膜処理を行うことのみによって課題解決の実証検証が行われており、本件特許に係る発明の本質的部分は殺菌剤を含む被処理水に対してアンモニア水溶液を添加することであるのに対して、一次訂正はアンモニアを含む被処理水に対して殺菌剤を添加するものであり、アンモニアを含む被処理水に対して殺菌剤を添加することで発明の効果を発揮または課題を解決できることは、本件特許明細書の実施例には記載されていないし、本件特許の出願日当時の技術常識に基づいて理解することもできないから、一次訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえない。 また、殺菌剤とアンモニア水溶液の添加順序を逆にする一次訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。 (ii)一次訂正のアンモニアを含む被処理水に対して殺菌剤を添加することは、実施例が全くないので、サポート要件違反が明らかなので、独立特許要件を満たさない。 (iii)一次訂正後の特許請求の範囲の請求項3、4及び6~8係る発明は新規性、進歩性を有しないので、独立特許要件を満たさない。 そして、本件訂正の訂正の内容と一次訂正の訂正の内容は、前記1(1)~(12)の訂正事項に関して同じものであり、一次訂正に関する前記(i)~(iii)の主張は本件訂正についてもあてはまるので、以下、検討しておく。 イ 前記(2)イの本件特許明細書の段落【0026】によれば、本件特許に係る発明においては、アンモニアを含有する被処理水中に、「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入してもよいし、「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に被処理水に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから被処理水に添加してもよいものであり、これらの添加方法は、殺菌剤を含む被処理水に対してアンモニア水溶液を添加するものではないから、本件特許に係る発明の本質的部分が、殺菌剤を含む被処理水に対してアンモニア水溶液を添加することであるとはいえない。 そして、アンモニアを含有する被処理水中に、「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入することは、本件訂正後の請求項3及び4における、「アンモニアを含有」する「前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項、及び、本件訂正後の請求項6及び7における、「アンモニアを含有」する「前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項にほかならない。 更に、後記第6の2(2)ア(ア)(b)の本件特許明細書の段落【0022】には、被処理水にアンモニアが含まれるとき、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物を含む殺菌剤が逆浸透膜を透過しやすくなることから、この現象を利用して、アンモニアを含む被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を存在させることにより、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制し、かつ逆浸透膜の酸化劣化を抑制できることが記載されており、このことと前記段落【0026】を併せてみれば、本件特許明細書には、アンモニアを含む被処理水に対して殺菌剤を添加することで発明の効果を発揮または課題を解決できることが記載されているというべきである。 すると、仮に、本件特許明細書の実施例に、超純水に殺菌剤を添加し調製した被処理水に対してアンモニア塩水溶液を添加して、逆浸透膜処理を行うものしか記載されておらず、アンモニアを含む被処理水に対して殺菌剤を添加する実施例が全くないとしても、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正というべきであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~5について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されないことは前記(8)に記載のとおりであるから、独立特許要件を満たさないことを理由に本件訂正が不適法であるということもできない。 したがって、申立人意見書における申立人の前記ア(i)~(iii)の主張が本件訂正についてもあてはまるとしても、いずれも採用できない。 3 まとめ 以上のとおりであるので、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、かつ、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、訂正後の請求項1~8について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項3、4及び6~8に係る発明(以下、「本件発明3」、「本件発明4」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3、4及び6~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整し、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。 【請求項4】 被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含み、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。 【請求項5】(削除) 【請求項6】 被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整し、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。 【請求項7】 被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である前記被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し、 前記被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含み、 前記逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。 【請求項8】 請求項3,4,6,7のいずれか1項に記載の逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 透過水をユースポイントで使用しないときのみに前記殺菌剤を添加して前記被処理水中に存在させることを特徴とする、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 第4 特許異議申立理由の概要 1 証拠方法 (1)申立人が提出した甲各号証 甲第1号証:国際公開第2015/073170号 甲第2号証:Rich Franks et al., Implementing Energy Saving RO Technology in Large Scale Wastewater Treatment Plants, IDA World Congress,2007年10月 甲第3号証:Kha L. Tu et al., Coupling effects of feed solution pH and ionic strength on the rejection of boron by NF/RO membranes, Chemical Engineering Journal, 2011年,168号,p.700-706 甲第4号証:池嶋 規人ら,「低圧逆浸透膜の溶質分離に及ぼす膜ζ-電位の影響」,土木学会第56回年次学術講演会,平成13年10月,p.386-387 甲第5号証:T. Fujioka et al., Modification of a polyamide reverse osmosis membrane by heat treatment for enhanced fouling resistance, Faculty of Engineering and Information Sciences - Papers: Part A, University of Wollongong Research Online,2013年 甲第6号証:S. N. Diop et al., Intrinsic properties and performances of NF270 and XLE membranes for water filtration, Water Science & Technology: Water Supply,11.2,2011年,p.186-193 甲第7号証:Qiang Li et al., Investigating the microstructures and surface features of seawater RO membranes and the dependencies of fouling resistance performances, Desalination,2014年,352号,p.109-117 甲第8号証:M. Thompson et al., CASE STUDY - KRANJI HIGH GRADE WATER RECLAMATION PLANT, SINGAPORE, IMSTEC'03,2003年9月 甲第9号証:特公平6-2277号公報 甲第10号証:特開平6-226253号公報 甲第11号証:米国特許第3749672号明細書 甲第12号証:M. H. Lietzke et al., A KINETIC MODEL FOR PREDICTING THE CONCENTRATIONS OF ACTIVE HALOGEN SPECIES IN CHLORINATED SALINE COOLING WATERS, Manuscript for publication in the Proceedings of the Third Conference on Water Chlorination: Environmental Impact and Health Effects,1979年,p.1-9 甲第13号証:特公平6-10663号公報 甲第14号証:国際公開第2015/159654号 甲第15号証:栗田工業(株)著,「入門ビジュアル・テクノロジー よくわかる水処理技術」,第9刷,2014年5月20日,株式会社日本実業出版社,p.98-99 甲第16号証:岡部利之ら,「逆浸透法海水淡水化プロセスにおけるクロラミン殺菌法の検討」,水道協会雑誌,平成9年10月,第66巻第10号(第757号),p.13-20 甲第17号証:特許第4966936号公報 甲第18号証:寺嶋勝彦ら,「塩素によるアンモニアの分解反応機構及び分解反応速度」,水道協会雑誌,昭和58年6月,第52巻第6号(第585号),p.33-42 甲第19号証:特開2014-79672号公報 甲第20号証:特開2013-78712号公報 甲第21号証:特開2015-62889号公報 甲第22号証:平田健正,「地下水中における硝酸性窒素の起源に関する研究」,国環研ニュース,1994年,13巻3号,国立環境研究所 甲第23号証:立本英機ら,「下水中の溶解性有機物の組成」,日本化学会誌,1986年,No.9,p.1257-1259 甲第24号証:矢部江一編著,「これでわかる 純水・超純水技術」,初版第2刷,2007年7月17日,株式会社工業調査会,p.72-81 甲第25号証:谷口良雄ら,「逆浸透プロセスにおける処理水質の簡易計算方法とその信頼度について」,日本海水学会誌,1976年,第30巻第1号,p.50-53 (2)特許権者が提出した乙第1号証 乙第1号証:平成30年度 水道統計 水質分布表(浄水(給水栓水等))平均値(http://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2018-b-04Jyo-02avg.pdf) 2 特許法第29条第1項(新規性)、第2項(進歩性)について (1)本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、甲第1号証に記載された発明及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第21号証に記載された発明である。 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲第21号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第21号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第23号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲第8号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第23号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 記載不備について (1)「逆浸透膜の酸化劣化の抑制」について ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 本件特許明細書の段落【0007】によれば、本件発明は、「逆浸透膜の酸化劣化」の抑制を課題とするものであって、殺菌剤の遊離塩素が多い場合には、逆浸透膜の酸化劣化を生じさせることは明らかであるが、本件特許明細書には、逆浸透膜を透過する被処理水中及び透過した透過水中に遊離塩素がどのくらい含まれるかが記載されていないし、「逆浸透膜の酸化劣化」に関連する試験方法、評価方法及びその検討プロセスについても全く開示がなく、本件特許明細書の実施例(以下、「本件実施例」という。)の試験条件をみても、「逆浸透膜の酸化劣化」の抑制をみているとはいえないので、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明により「逆浸透膜の酸化劣化の抑制」の課題を解決し得るとは理解できないから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 本件特許明細書には、「逆浸透膜の酸化劣化」に関連する試験方法、評価方法及びその検討プロセスについても全く開示がなく、前記評価方法や試験方法は一義的に定まらないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、実施可能要件を満たさない。 (2)「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であること」について ア 特許法第36条第6項第2号(明確性)について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明においては「pH7.0におけるゼータ電位」の下限が特定されていないので、マイナス無限大も含むから、明確でない。 イ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 本件実施例によれば、中性膜がアニオン荷電膜よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があったり、ゼータ電位が高いアニオン荷電膜がゼータ電位が低いアニオン荷電膜よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があり、本件特許の審査の経緯から、中性膜は従来技術に相当するので、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明のアニオン荷電膜は従来技術よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が低い場合を含み、発明の詳細な説明に記載された内容を、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明まで拡張ないし一般化できないから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 (3)アンモニア濃度の好ましい数値範囲について ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (ア)本件実施例によれば、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に係る発明の「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」において、中性膜がアニオン荷電膜よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があったり、ゼータ電位が高いアニオン荷電膜がゼータ電位が低いアニオン荷電膜よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があり、前記請求項3に係る発明の「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」と「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である」こととの整合性がとれていないので、前記請求項3に係る発明はサポート要件を満たさない。 (イ)本件実施例の安定化次亜塩素酸組成物における「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」の裏付けは、本件特許明細書の段落【0078】【表1】のアンモニア1mg/Lの一点しかなく、同段落【0083】【表3】では、被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の前記比と、「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である」こととの整合性がとれていないので、安定化次亜臭素酸組成物の場合ですらサポートされているとはいえず、安定化次亜塩素酸組成物における「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」に拡張ないし一般化できること、更に当該範囲に臨界的意義があることを理解できないので、前記請求項3に係る発明はサポート要件を満たさない。 また、アンモニア濃度についても、前記アンモニア濃度の比と同様に、サポートされない領域を含んでいる。 (4)「有機物」及び全塩素濃度の好ましい数値範囲について ア 特許法第36条第6項第2号(明確性)について (ア)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に係る発明では「逆浸透膜を通過する有機物」の上限値が特定されていないため、無限大を含み、発明の範囲が不明確である。 (イ)本件特許明細書においては「有機物」及びその測定方法が具体的に記載されておらず、更に「有機物」の指標や測定方法は複数あるから、前記請求項4に係る発明の「有機物(mg/L)」が何を意味するのかが明らかでないので、前記請求項4に係る発明は不明確である。 イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 前記請求項4に係る発明の「有機物」及びその測定方法が一義的に定まらないので、「有機物」に起因するスライム汚染の抑制効果を実施できないから、発明の詳細な説明は、前記請求項4に係る発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないので、実施可能要件を満たさない。 ウ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 本件実施例では原水として「超純水」を用いており、当該超純水は「有機物」を0.5mg/Lも含まないから、本件特許明細書には、前記請求項4に係る発明の「スライム汚染抑制」の課題を解決できることの裏付けが開示されていない。 更に、本件特許明細書の記載からは「有機物」及びその濃度が一義的に定まらないので、本件特許明細書の段落【0029】に記載される逆浸透膜に接触する全塩素濃度内であれば、「スライム汚染抑制」の課題を解決し得るかが明らかでないから、前記請求項4に係る発明及び本件特許明細書中の全塩素濃度の好ましい数値範囲には、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段が反映されておらず、前記請求項4に係る発明及び全塩素濃度の好ましい数値範囲は、発明の詳細な説明の記載を超えるので、前記請求項4に係る発明及び本件特許明細書の全塩素濃度の好ましい範囲の記載は発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (5)「透過水をユースポイントで使用しないときのみに前記殺菌剤を添加して前記被処理水中に存在させる」ことについて ア 特許法第36条第6項第2号(明確性)について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に係る発明において殺菌剤を添加しない場合には、前記請求項5に係る発明が「逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制し、かつ逆浸透膜の酸化劣化を抑制する」ことができるのか等、どのような作用効果を期待するのかが不明確であり、発明の範囲が不明確である。 仮に、ユースポイントから得られる処理水に殺菌剤を含ませないことを目的とした場合でも、含ませない手段として、逆浸透膜とユースポイントの位置関係及びこれらの間の工程、殺菌剤及びアンモニアの添加場所、これらの含有量または添加量も特定する必要があり、これらが特定されていない前記請求項5に係る発明は不明確である。 また、本件特許明細書の段落【0047】の記載によると、1次側に循環させることで2次側に殺菌剤が含まれなくなるため、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制できるという課題を解決できない状態となるから、前記請求項5に係る発明と本件特許明細書の記載が整合していないので、前記請求項5に係る発明は不明確である。 イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 本件特許明細書においては、逆浸透膜とユースポイントの位置関係及びこれらの間の工程等が記載されていないので、課題を解決しないものが含まれ、本件特許明細書の【0047】の記載を考慮しても、前記請求項5に係る発明の実施に過度の試行錯誤が必要になるから、発明の詳細な説明は、前記請求項5に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 ウ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 本件特許明細書においては、逆浸透膜とユースポイントの位置関係及びこれらの間の工程、殺菌剤及びアンモニアの含有量または添加量等が特定されておらず、本件実施例でも「透過水をユースポイントで使用しないときのみに前記殺菌剤を添加して前記被処理水中に存在させる」ことについての裏付けもなく、前記請求項5に係る発明の課題も定かでないから、発明の詳細な説明の記載を前記請求項5に係る発明にまで拡張ないし一般化できないので、前記請求項5に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 第5 取消理由の概要 令和3年7月13日付け取消理由通知及び令和4年2月8日付け取消理由通知(決定の予告)における取消理由は実質的に同じものであり、その概要は以下のとおりである。 1 特許法第29条第1項(新規性)、第2項(進歩性)について (1)甲第1号証を主引用例とした場合について 本件訂正前の請求項1、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件訂正前の請求項2、4、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は甲1発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)甲第21号証を主引用例とした場合について 本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第21号証に記載された発明であるか、甲第21号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断 事案に鑑み、以下、前記第4の特許異議申立理由及び第5の取消理由についてまとめて判断する。 1 特許法第29条第1項(新規性)、第2項(進歩性)について (1)甲第1号証を主引用例とした場合について ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア)甲第1号証には以下(1a)~(1d)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (1a)「Claims 1. A method for inhibiting biofouling formation in membrane separation devices for water treatment or removing the biofouling from membrane separation devices for water treatment, the method comprising: adding halogen-type oxidizers and sulfur-containing compounds or adding the mixture of the halogen-type oxidizers and sulfur-containing compounds to the membrane separation device, and followed by adding ammonium salts and/or urea to the membrane separation device. … 3. The method of Claims 1 or 2, wherein the halogen-type oxidizers are chlorine and bromine-type oxidizers.」 (当審訳:特許請求の範囲 1.水処理用膜分離装置の生物付着の形成を抑制するため、または水処理用膜分離装置から前記生物付着を除去するための方法であって、 前記膜分離装置にハロゲン型酸化剤およびイオウ含有化合物を添加し、または前記ハロゲン型酸化剤およびイオウ含有化合物の混合物を添加し、続いてアンモニウム塩および/または尿素を前記膜分離装置に添加することを含む、方法。 … 3.請求項1または2に記載の方法であって、前記ハロゲン型酸化剤が塩素型および臭素型酸化剤である、方法。」 (1b)「A method for inhibiting the biofouling growth in a membrane separation device for water treatment or removing the biofouling in a membrane separation device for water treatment is disclosed. The method includes adding halogen-type oxidizers and sulfur-containing compounds or adding the mixture of the halogen-type oxidizers and sulfur-containing compounds to the membrane separation device, followed by adding ammonium salts and/or urea to the membrane separation device. The invention may further include that the sulfur-containing compounds are 1 to 5 moles and the ammonium salts and/or urea are 0.1 to 1.0 moles with respect to 1 mole of the halogen-type oxidizers. … Utilizing the method according to the present invention can effectively inhibit the growth of biofouling without damaging the filtration membrane itself which is comprised of polymers (such as polyamide).」(5頁11行~8頁20行) (当審訳:水処理用膜分離装置の生物付着増大の抑制方法、または水処理用膜分離装置の生物付着の除去方法を開示する。その方法は、膜分離装置に、ハロゲン型酸化剤およびイオウ含有化合物を添加し、またはハロゲン型酸化剤およびイオウ含有化合物の混合物を添加し、続いてアンモニウム塩および/または尿素を膜分離装置に添加することを含む。本発明はさらに、1モルのハロゲン型酸化剤に対して、イオウ含有化合物が1から5モル、ならびにアンモニウム塩および/または尿素が0.1から1.0モル、含んでいてもよい。 … 本発明による方法の使用により、ポリマー(ポリアミドなど)で構成されるろ過膜自体を損傷すること無く、生物付着の増大を効果的に抑制できる。) (1c)「Example 1. Adding the second stabilizer to the concentrated solution to further reduce FRC In order to further reduce the FRC, the second stabilizer ammonium sulfate was used in the present example. The results of example 1 are shown in Fig.1. In the present example, 67g sodium hypochlorite and 13g sulfamic acid …were first added to 20g water. The molar ratio between sulfamic acid and sodium hypochlorite was 1.2 to 1. Then the pH was adjusted to more than 12 by sodium hydroxide. According to the addition amount of sodium hypochlorite, the different molar ratios of second stabilizer ammonium sulfates were added. After the solution was uniformly mixed, DPD and iodine were used to determine the TC concentration and DPD was used to determine the FRC concentration.」(21頁12行~23行) (当審訳:実施例1.さらなるFRCの低減のため濃縮溶液への第2の安定化剤の添加 さらにFRCを低減するために、本実施例では第2の安定化剤として硫酸アンモニウムを使用した。実施例1の結果を図1に示す。本実施例では、67gの次亜塩素酸ナトリウムおよび13gのスルファミン酸…を最初に20gの水に添加した。スルファミン酸および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比は1.2から1であった。次に、水酸化ナトリウムにより、pHが12を超えるように調製した。次亜塩素酸ナトリウムの添加量に従い、異なるモル比で第2の安定化剤である硫酸アンモニウムを添加した。溶液を均質に混合した後、DPDおよびヨウ素をTC濃度測定のために使用し、DPDをFRC濃度測定のために使用した。) (1d)「Example 5. The effect on the membrane performance by using the biofouling inhibitor with dual stabilizers The object of this example is to research the effect on the membrane performance when the membrane is contacting with the biocides during a long time. The 10 ppm and 50 ppm of the biocides (halogen-type oxidizers), in terms of total chlorine in the inlet water were examined to check the effects on the membrane performance. In this example, the continuous operational small plate types reverse osmosis membrane (the model of the reverse osmosis membrane is BW30, produced by Dow Chemical company) separation device was utilized. The available membrane area of the reverse osmosis membrane device for evaluation was 149 square centimeters. The device was operating in the manner of closed circulation and total reflux.The dual stabilizers and biocides (halogen-type oxidizers) were added directly into the raw water box. The addition method of the above substances and the substances used were identical to the examples 1 or 2. The molar ratio between the first stabilizer and sodium hypochlorite was 1.2 to 1. The second stabilizer was added in the amount such that the molar ratio between the second stabilizer and sodium hypochlorite was 0.1 to 1. Applying the standard reverse osmosis membrane testing condition,i.e.,the 2000 ppm sodium chloride salts solution was used as raw material solution,the operation pressure was 225 psi and the system was running continuously for 1000 hours. The membrane performance was detected periodically while detecting and maintaining the concentration of biocides in water.」(24頁26行~25頁18行) (当審訳:実施例5.2種安定化剤と共に生物付着抑制剤を使用することによる膜性能に対する効果 この実施例の目的は、膜が殺生物剤と長期間接触しているときの、膜の性能に対する効果を調査することである。膜性能に対する効果をチェックするために、流入水中の全塩素に関して、10ppmおよび50ppmの殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)で試験した。この実施例では、連続運転用小型平面タイプの逆浸透膜(逆浸透膜のモデルはBW30、ダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company)製)分離装置を使用した。評価のための逆浸透膜装置の利用可能な膜面積は、149平方センチメートルだった。装置は閉鎖循環全還流の方式で運転した。2種の安定化剤および殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)を、原水の箱中に直接添加した。上記物質の添加方法および使用した物質は、実施例1または2と同一である。第1の安定化剤および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比は1.2から1であった。第2の安定化剤は、第2の安定化剤および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比が0.1から1であるような量で添加した。標準的な逆浸透膜試験条件の適用、すなわち、2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液を、原料溶液として使用し、運転圧力は225psiであり、システムを連続的に1000時間運転した。膜の性能を周期的に検出し、検出と同時に水中の殺生物剤の濃度を維持した。) (イ)前記(ア)(1c)、(1d)によれば、甲第1号証には、膜性能に対する効果をチェックするための、流入水中の全塩素に関して、10ppmおよび50ppmの殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)による「試験」が記載されており、当該「試験」は、実施例1の物質を使用した実施例5に注目すると、連続運転用小型平面タイプの逆浸透膜(逆浸透膜のモデルはBW30、ダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company)製)分離装置を使用し、評価のための逆浸透膜装置の利用可能な膜面積は、149平方センチメートルであり、装置は閉鎖循環全還流の方式で運転し、2種の安定化剤および殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)を、原水の箱中に直接添加したものであり、使用した物質は、67gの次亜塩素酸ナトリウムおよび13gのスルファミン酸を最初に20gの水に添加し、スルファミン酸および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比は1.2から1であり、次に、水酸化ナトリウムにより、pHが12を超えるように調製し、次亜塩素酸ナトリウムの添加量に従い、異なるモル比で第2の安定化剤である硫酸アンモニウムを添加したものであり、第2の安定化剤は、第2の安定化剤および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比が0.1から1であるような量で添加したものであり、標準的な逆浸透膜試験条件の適用、すなわち、2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液を、原料溶液として使用し、運転圧力は225psiであり、システムを連続的に1000時間運転し、膜の性能を周期的に検出し、検出と同時に水中の殺生物剤の濃度を維持したものである。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には以下の発明が記載されているといえる。 「膜性能に対する効果をチェックするための、流入水中の全塩素に関して、10ppmおよび50ppmの殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)による試験であって、 連続運転用小型平面タイプの逆浸透膜(逆浸透膜のモデルはBW30、ダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company)製)分離装置を使用し、評価のための逆浸透膜装置の利用可能な膜面積は、149平方センチメートルであり、装置は閉鎖循環全還流の方式で運転し、2種の安定化剤および殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)を、原水の箱中に直接添加したものであり、 使用した物質は、67gの次亜塩素酸ナトリウムおよび13gのスルファミン酸を最初に20gの水に添加し、スルファミン酸および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比は1.2から1であり、次に、水酸化ナトリウムにより、pHが12を超えるように調製し、次亜塩素酸ナトリウムの添加量に従い、異なるモル比で第2の安定化剤である硫酸アンモニウムを添加したものであり、 第2の安定化剤は、第2の安定化剤および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比が0.1から1であるような量で添加したものであり、 標準的な逆浸透膜試験条件の適用、すなわち、2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液を、原料溶液として使用し、運転圧力は225psiであり、システムを連続的に1000時間運転し、膜の性能を周期的に検出し、検出と同時に水中の殺生物剤の濃度を維持したものである、試験。」(以下、「甲1発明」という。) イ 本件発明3、4について (ア)本件発明3と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「原料溶液」及び「連続運転用小型平面タイプの逆浸透膜(逆浸透膜のモデルはBW30、ダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company)製)」は、それぞれ、本件発明3における「被処理水」及び「逆浸透膜」に相当し、甲1発明において「システムを連続的に1000時間運転」することは、本件発明3において「被処理水を逆浸透膜で処理する」ことに相当し、甲1発明における「試験」は、本件発明3における「逆浸透膜を用いる水処理方法」に相当する。 すると、本件発明3と甲1発明とは、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法。」 の点で一致し、少なくとも、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明3は、「アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「2種の安定化剤および殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)を、原水の箱中に直接添加したものであり、 使用した物質は、67gの次亜塩素酸ナトリウムおよび13gのスルファミン酸を最初に20gの水に添加し、スルファミン酸および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比は1.2から1であり、次に、水酸化ナトリウムにより、pHが12を超えるように調製し、次亜塩素酸ナトリウムの添加量に従い、異なるモル比で第2の安定化剤である硫酸アンモニウムを添加したものであり、 第2の安定化剤は、第2の安定化剤および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比が0.1から1であるような量で添加したものであり、 標準的な逆浸透膜試験条件の適用、すなわち、2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液を、原料溶液として使用」するものである点。 (イ)以下、前記(ア)の相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、本件発明3は、「被処理水」が「アンモニアを含有」するものであるのに対して、甲1発明は、「被処理水」が、「標準的な逆浸透膜試験条件」が適用された「2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液」であって、そもそも「被処理水」が「アンモニアを含有」するものではない。 また、仮に、甲1発明における「次亜塩素酸ナトリウム」、「スルファミン酸」及び「硫酸アンモニウム」が、それぞれ、本件発明3における「臭素系酸化剤または塩素系酸化剤」、「スルファミン酸化合物」及び「アンモニア」に相当するとしても、甲1発明は、「臭素系酸化剤または塩素系酸化剤および」「スルファミン酸化合物を最初に」「水に添加し」、「次に、水酸化ナトリウムにより、pHが12を超えるように調製し、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤の添加量に従い、異なるモル比で第2の安定化剤であるアンモニアを添加」するものであるから、もともと「アンモニアを含有」する「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものではない。 したがって、甲1発明は、「アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものではないから、前記相違点1は実質的な相違点である。 よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明3が甲1発明であるとはいえない。 (ウ)更に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、前記ア(ア)(1d)によれば、甲1発明は、膜が殺生物剤と長期間接触しているときの、膜の性能に対する効果を調査することを目的とした、「標準的な逆浸透膜試験条件」を適用した「試験」であって、「被処理水」として、当該「標準的な逆浸透膜試験条件」に適合する「2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液」を用いるものである。 そして、そのような「試験」において、「被処理水」を「アンモニアを含有」するものとして、「アンモニアを含有」する「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することは、前記「標準的な逆浸透膜試験条件」を逸脱するものであって、そもそも想定されないから、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとする動機付けは存在しない。 してみれば、甲第2~25号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術にかかわらず、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明に基づく、甲1発明及び本件特許出願時における周知技術に基づく、又は、甲1発明、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づく、いずれの場合であっても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明4について検討しても事情は同じである。 ウ 本件発明6~8について (ア)前記イ(ア)と同様にして本件発明6と甲1発明とを対比した場合、本件発明6と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 ・相違点1’:本件発明6は、「アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「2種の安定化剤および殺生物剤(ハロゲン型酸化剤)を、原水の箱中に直接添加したものであり、 使用した物質は、67gの次亜塩素酸ナトリウムおよび13gのスルファミン酸を最初に20gの水に添加し、スルファミン酸および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比は1.2から1であり、次に、水酸化ナトリウムにより、pHが12を超えるように調製し、次亜塩素酸ナトリウムの添加量に従い、異なるモル比で第2の安定化剤である硫酸アンモニウムを添加したものであり、 第2の安定化剤は、第2の安定化剤および次亜塩素酸ナトリウムの間のモル比が0.1から1であるような量で添加したものであり、 標準的な逆浸透膜試験条件の適用、すなわち、2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液を、原料溶液として使用」するものである点。 (イ)そして、前記(ア)の相違点1’は、「殺菌剤」が「臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤」である点を除いて前記相違点1と同じものであるから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、前記イ(イ)、(ウ)に記載したのと同様の理由により、本件発明6は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいても、甲1発明及び本件特許出願時における周知技術に基づいても、更に、甲1発明、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 更に、本件発明7及び8について検討しても、事情は同じである。 エ 申立人の主張について (ア)申立人は、前記イ(ア)の相違点1又はウ(ア)の相違点1’に関して、申立人意見書(9頁2行~10頁12行)及び上申書(2頁下から2行~4頁17行)において、以下(i)~(iii)の旨を主張する。 (i)甲第1号証の実施例3、4には、殺菌剤を一切添加しない原水に、次亜塩素酸ナトリウム及び第1の安定化剤(スルファミン酸)を添加したこと、試験後に細菌の数を測定したことが開示され、このことから、この原水には細菌が増殖可能なアンモニア、有機物等の成分が含まれており、更に、甲第21号証、甲第2号証、甲第14号証、甲第15号証、甲第20号証の記載から、通常、原水にはアンモニアが含まれているから、甲第1号証の実施例3、4の原水は、アンモニア含有の被処理水といえるので、甲第1号証には、アンモニア含有被処理水に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤と添加することが開示されているし、甲第1号証ではこれらの添加順序は特段限定されていない旨。 (ii)甲第14号証、甲第15号証、甲第21号証から、アンモニア含有被処理水に塩素等のハロゲン供給源の殺菌剤を添加することは、当業者の技術常識であるので、このことからも、甲第1号証にはアンモニア含有被処理水に対して殺菌剤を添加する添加順序も含まれるので、「アンモニアを含有し、…被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することは、甲第1号証に記載されているか、当業者による設計的事項である旨。 (iii)甲第1号証の技術の本質は、イオウを含有する結合型ハロゲン物質(クロロスルファミン酸)とアンモニア塩とを混合することを意図し、添加順序を固定させるものではないから、「アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することは、甲第1号証に記載されているに等しい事項であり、また、本件特許明細書において、アンモニアを含有する被処理水に対して殺菌剤を添加することによる優れた効果は実証されていないから、そうすることに技術的意義は全くないので、「アンモニアを含有し、pHが5.5以上9.0以下である被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することは、甲第1号証に記載されているか、当業者による設計的事項に過ぎない旨。 (イ)そこで、以下、前記(ア)(i)~(iii)の主張について検討すると、甲1発明は、膜が殺生物剤と長期間接触しているときの、膜の性能に対する効果を調査するための試験であって、標準的な逆浸透膜試験条件に適合する、2000ppmの塩化ナトリウム塩溶液を原料溶液として使用するものであるから、甲第1号証の実施例3、4や、甲第21号証、甲第2号証、甲第14号証、甲第15号証、甲第20号証の記載事項に関わらず、甲1発明における被処理水にアンモニアが含有される余地はないし、被処理水にアンモニアを含有させる動機づけも存在しない。 また、前記ア(ア)(1a)、(1b)によれば、甲1発明は、膜分離装置に、ハロゲン型酸化剤及びイオウ含有化合物を添加し、又はハロゲン型酸化剤及びイオウ含有化合物の混合物を添加し、続いてアンモニウム塩及び/又は尿素を膜分離装置に添加することで、ポリマー(ポリアミドなど)で構成されるろ過膜自体を損傷すること無く、生物付着の増大を効果的に抑制できるものである。 そうすると、甲1発明は、膜分離装置に、ハロゲン型酸化剤及びイオウ含有化合物を添加し、又はハロゲン型酸化剤及びイオウ含有化合物の混合物を添加し、続いてアンモニウム塩及び/又は尿素を膜分離装置に添加することを前提とするものというべきであるから、甲1発明において、ハロゲン型酸化剤及びイオウ含有化合物とアンモニウム塩の添加順序を変更して、「アンモニアを含有」する「被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することは、甲1発明が前提とする事項を破却するものであって、そうすることが当業者による設計的事項であるとは到底いえない。 これらのことからみれば、「アンモニアを含有し、…被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することが、甲第1号証に記載されているとはいえないし、当業者による設計的事項であるともいえないので、前記(ア)(i)~(iii)の主張はいずれも採用できない。 オ 小括 したがって、本件発明3、4及び6~8は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて、甲第1号証に記載された発明及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 (2)甲第21号証を主引用例とした場合について ア 甲第21号証の記載事項及び甲第21号証に記載された発明 (ア)甲第21号証には以下(21a)~(21b)の記載がある。 (21a)「【0044】 RO装置の用途としては、例えば、海水淡水化、排水回収等が挙げられる。」 (21b)「【0061】 <実施例1> [組成物の調製] 窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は7.5重量%であった。実施例1の組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。 … 【0069】 <比較例3> 12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:50重量%、スルファミン酸:10重量%、水酸化ナトリウム:8重量%、水:残分を混合して、組成物を調製した。組成物のpHは14、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)は6重量%であった。 【0070】 [RO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力の比較試験] 以下の条件で、逆浸透膜装置の原水に、実施例1,2,4、比較例1,3で調製した組成物、および実施例3、比較例2の各組成を添加して、RO膜の排除率への影響、透過水への影響、酸化力を比較した。 【0071】 (試験条件) ・試験装置:平膜試験装置 ・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20 ・運転圧力:0.75MPa ・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm) ・薬剤:実施例1,2,4、比較例1,3で調製した組成物、および実施例3、比較例2の各組成を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として10mg/Lとなるように添加」 (イ)前記(ア)(21b)によれば、甲第21号証には「RO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力の比較試験」が記載されており、当該「RO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力の比較試験」は、逆浸透膜装置の原水に調製した組成物を添加するものであり、前記組成物として実施例1で調製した組成物に注目すると、その試験条件は以下のとおりのものである。 (試験条件) ・試験装置:平膜試験装置 ・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20 ・運転圧力:0.75MPa ・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm) ・薬剤:窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して調製した組成物を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として10mg/Lとなるように添加 (ウ)また、組成物として比較例3で調製した組成物に注目すると、その試験条件は以下のとおりのものである。 (試験条件) ・試験装置:平膜試験装置 ・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20 ・運転圧力:0.75MPa ・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm) ・薬剤:12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:50重量%、スルファミン酸:10重量%、水酸化ナトリウム:8重量%、水:残分を混合して調製した組成物を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として10mg/Lとなるように添加 (エ)前記(イ)、(ウ)によれば、甲第21号証には以下の発明が記載されているといえる。 「逆浸透膜装置の原水に調製した組成物を添加するものであり、その試験条件は、以下のとおりのものである、RO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力の比較試験。 (試験条件) ・試験装置:平膜試験装置 ・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20 ・運転圧力:0.75MPa ・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm) ・薬剤:窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して調製した組成物を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として10mg/Lとなるように添加」(以下、「甲21-1発明」という。) 「逆浸透膜装置の原水に調製した組成物を添加するものであり、その試験条件は、以下のとおりのものである、RO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力の比較試験。 (試験条件) ・試験装置:平膜試験装置 ・分離膜:日東電工(株)製、ポリアミド系高分子逆浸透膜 ES20 ・運転圧力:0.75MPa ・原水:相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm) ・薬剤:12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:50重量%、スルファミン酸:10重量%、水酸化ナトリウム:8重量%、水:残分を混合して調製した組成物を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として10mg/Lとなるように添加」(以下、「甲21-2発明」という。) イ 本件発明3について (ア)本件発明3と甲21-2発明とを対比すると、甲21-2発明における「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」、「12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液」及び「スルファミン酸」は、それぞれ、本件発明3における「pHが5.5以上9.0以下である被処理水」、「臭素系酸化剤または塩素系酸化剤」及び「スルファミン酸化合物」に相当し、甲21-2発明において、「薬剤:12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液:50重量%、スルファミン酸:10重量%、水酸化ナトリウム:8重量%、水:残分を混合して調製した組成物を、有効ハロゲン濃度(有効塩素換算濃度)として10mg/Lとなるように添加」することは、本件発明3において、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することに相当し、甲21-2発明における「RO膜排除率への影響、透過水への影響、酸化力の比較試験」は、本件発明3における「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法」に相当する。 すると、本件発明3と甲21-2発明とは、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 pHが5.5以上9.0以下である被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加する、逆浸透膜を用いる水処理方法。」の点で一致し、少なくとも、以下の点で相違する。 ・相違点2:本件発明3は、「被処理水」が、「アンモニアを含有し」、「前記被処理水中の全塩素濃度に対する前記アンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように前記殺菌剤または前記アンモニアの濃度を調整」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲21-2発明は前記発明特定事項を有しない点。 (イ)以下、前記(ア)の相違点2の容易想到性について検討すると、前記ア(ア)(21a)によれば、甲21-2発明は、「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」である「被処理水」に、実施例1,2,4、比較例1,3で調製した組成物、および実施例3、比較例2の各組成を添加して、RO膜の排除率への影響、透過水への影響、酸化力を比較するためのものであって、殊更、「被処理水」中の「アンモニア」に注目したものではない。 そして、そのような甲21-2発明において、仮に、「被処理水」である「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」が「アンモニア」を含有するとしても、そこから進んで、「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲となるように殺菌剤またはアンモニアの濃度を調整」することはそもそも想定されないから、甲21-2発明において、前記相違点2に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとする動機付けは存在しない。 してみれば、甲第1~20、22~25号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術にかかわらず、甲21-2発明において、前記相違点2に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 なお、申立人は、甲第1号証には、「被処理水中の全塩素濃度(1mg/L)に対するアンモニアの濃度(mg/L)の比が、0.048~0.48mg/L」が開示されているから、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第21号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨(特許異議申立書105頁9行~最終行)、甲第21号証と甲第1号証とは、課題及び作用効果も共通性が極めて高く、殺菌剤として結合ハロゲンを使用していることも共通しているので、甲第21号証に記載された発明において甲第1号証を参照することは当業者の通常行為であるから、一次訂正後の請求項3に係る発明は、甲第21号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨(申立人意見書15頁下から6行~最終行)を主張するが、そもそも、甲21-2発明において、前記相違点2に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとする動機付けが存在しないのであるから、この発明特定事項を容易想到の事項ということはできないので、申立人の前記主張はいずれも採用できない。 (ウ)よって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲21-2発明に基づいて、又は、甲21-2発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 そして、甲21-2発明と同様に、「被処理水」が「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」である甲21-1発明について検討しても事情は同じであるから、本件発明3は、甲第21号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第21号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明4について (ア)前記イ(ア)と同様にして本件発明4と甲21-2発明とを対比すると、本件発明4と甲21-2発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。 ・相違点2’:本件発明3は、「被処理水」が「逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含」む、との発明特定事項を有するのに対して、甲21-2発明は、「被処理水」が「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」である点。 (イ)以下、前記(ア)の相違点2’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲21-2発明における「被処理水」である「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」が、「逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含」むものであることを示す証拠はないから、前記相違点2’は実質的な相違点であるというほかないので、本件発明4が甲21-2発明であるとはいえない。 なお、申立人は、甲21-2発明の「被処理水」が「逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含」むものである旨、前記ア(ア)(21a)より、甲第21号証には、有機物が0.5mg/L以上になるような「海水、排水」の被処理水も開示されている旨を主張するが(特許異議申立書108頁14行~最終行)、甲21-2発明における「被処理水」である「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」が、「逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含」むものであることを示す証拠がないことは前記のとおりであるし、前記ア(ア)(21a)の記載は、甲21-2発明における「被処理水」が海水や排水であることをいうものではないから、申立人の前記主張は採用できない。 (ウ)更に、前記相違点2’の容易想到性について検討すると、前記イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲21-2発明は、殊更、「被処理水」中の「逆浸透膜を透過する有機物」に注目したものではないから、甲21-2発明において、「被処理水」を、「逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含」むものとすることはそもそも想定されないので、甲21-2発明において、前記相違点2’に係る本件発明4の発明特定事項を有するものとする動機付けは存在しない。 よって、甲第1~20、22~25号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術にかかわらず、甲21-2発明において、前記相違点2’に係る本件発明4の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 (エ)したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲21-2発明に基づいて、又は、甲21-2発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいい難い。 そして、甲21-2発明と同様に、「相模原井水(pH7.2、導電率240μS/cm)」が「被処理水」である甲21-1発明について検討しても事情は同じであるから、本件発明4は、甲第21号証に記載された発明であるとも、その発明などに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 エ 本件発明6~8について 前記イ(ア)と同様にして本件発明6と甲21-1発明とを対比した場合、本件発明6と甲21-1発明とは、少なくとも前記イ(ア)の相違点2の点で相違し、本件発明7と甲21-1発明とを対比した場合、本件発明7と甲21-1発明とは、少なくとも前記ウ(ア)の相違点2’の点で相違する。 すると、前記イ(イ)~(ウ)、ウ(イ)~(エ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲第21号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明6及び7は、甲第21号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第21号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 更に、本件発明3、4、6及び7のいずれかを引用する本件発明8について検討しても事情は同じである。 オ 小括 したがって、本件発明4、7及び8は、甲第21号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明3、4及び6~8は、甲第21号証に記載された発明に基づく場合、甲第21号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づく場合のいずれの場合であっても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲第2号証を主引用例とした場合について ア 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア)甲第2号証には以下(2a)~(2b)の記載がある。 (2a)「Abstract In an effort to address increasing water demands, a growing number of municipalities throughout the world are employing membrane technology to reclaim their wastewaters.…One plant, Orange Country Water District's(OCWD) Groundwater Replenishment System(GWRS) located in Southern California, is expanding to 265,000m3/d(70 MGD), while the other, Ulu Pandan located in Singapore, is producing 148,000m3/d(39 MGD). … This paper will discuss the evolution of the design of these large scale wastewater reclamation plants using energy saving RO membranes. Lessons learned from years of piloting, demonstration plants, and full scale plant experience at both OCWD and UP will be presented. RO performance data, including permeability, differential pressure, and salt passage will be presented as well as analysis of RO elements from each site after extended operating periods.」(1頁6行~最終行) (当審訳:要約 増大する水需要に対応するために、膜技術を使用して廃水を再生する自治体が世界中で増え続けている。…1つのプラントである、南カリフォルニアにあるオレンジカントリーウォーターディストリクト(OCWD)の地下水補給システム(GWRS)は、265,000m3 / d(70 MGD)に拡大し、もう一方のシンガポールにあるウル パンダンは148,000m3 / d(39 MGD)を生産している。 … この論文では、省エネRO膜を使用したこれらの大規模廃水再生プラントの設計の進化について説明する。OCWDとUPの両方での長年のパイロット、デモンストレーションプラント、および実物大プラントの経験から学んだ教訓を紹介する。長期間の運転後の各サイトからのRO要素の分析のほかに、浸透率、差圧、塩の通過を含むRO性能データが示される。) (2b)「III. Pretreatment 3.1 Microfiltration to control colloidal fouling Colloidal fouling is one of the primary mechanisms of RO fouling in wastewater treatment.… Feed to the MF is dosed with chlorine to maintain a 2-3 ppm chloramines residual through the MF to the RO. The residual chloramine in the feed to the RO serves to control biofouling in the RO element's feed/brine channels and on the RO membrane surface. 3.3 Chloramines to control biofouling Secondary effluent is contains a high concentration of organic material and bacteria. This combination is conductive to biofouling of the RO membranes. …Biofouling is controlled by the presence of chloramines. Chlorine dosed into the feed streams at OCWD and UP combines with the 3 to 5 ppm of ammoniacal nitrogen to produce chloramines. Chlorine is known to oxidize the polyamide membrane leading to a doubling of salt passage within 3000 ppm-hours of exposure. Chloramines, however, are less aggressive. Polyamide membranes can tolerate up to 100,000 ppm-hrs before a doubling of salt passage occurs. OCWD and UP maintain a continuous chloramine concentration of 2-3ppm.」(4頁1行~5頁27行) (当審訳:III.前処理 3.1 コロイドファウリングを制御するための精密ろ過 コロイドファウリングは、廃水処理におけるROファウリングの主要なメカニズムの1つである。… MFへのフィードには、MFからROへの残留クロラミンが2-3 ppmに維持されるように塩素が投与される。ROへのフィードに残留するクロラミンは、ROエレメントのフィード/ブラインチャネルおよびRO膜面のバイオファウリングを制御するのに役立つ。 3.3 生物付着を制御するためのクロラミン 二次排水には、高濃度の有機物とバクテリアが含まれている。この組み合わせは、RO膜のバイオファウリングにつながる。…バイオファウリングは、クロラミンの存在によって制御される。OCWDおよびUPで、フィードストリームに投入された塩素は、3-5 ppmのアンモニア性窒素と結合してクロラミンを生成する。塩素は、ポリアミド膜を酸化して、3000ppm-時間以内の暴露で塩の通過を2倍にすることが知られている。しかし、クロラミンはそれほど攻撃的ではない。ポリアミド膜は、塩の通過が2倍になるまでに最大100,000 ppm-時間耐えることができる。OCWDとUPは、2-3ppmの連続クロラミン濃度を維持する。) (2c)「IV. Lessons Learned from Pilot, Demonstration, and Full Scale Plant Experience Since the 1990s, both OCWD and Singapore have accumulated a wealth of data and experience on the design and operation of polyamide RO membrane systems for wastewater reclamation. Several different membrane types from at least three different membrane manufactures have been operated in pilot, demonstration, or full scale plants. The characteristics of membranes tested at either of these two locations during the past are summarized in Table2 below. [図:0001387474000001.jpg] 」(5頁下から8行~6頁) (当審訳:IV.パイロット、デモンストレーション、および実物大のプラント経験から学んだ教訓 1990年代以降、OCWDとシンガポールの両方が廃水再生用のポリアミドRO膜システムの設計と操作に関する豊富なデータと経験を蓄積してきた。少なくとも3つの異なる膜メーカーからのいくつかの異なるタイプの膜がパイロット、デモンストレーション、または実物大のプラントで運用された。過去にこれら2つの場所のいずれかでテストされた膜の特性は、以下の表2に要約されている。 表2:膜製造業者の仕様に基づく、OWCD及び/又はシンガポールで試験されたポリアミドRO膜の特性) (イ)前記(ア)(2a)~(2b)によれば、甲第2号証には、大規模廃水再生プラントである、南カリフォルニアにある「オレンジカントリーウォーターディストリクト(OCWD)」の「長期間の運転」が記載されており、当該「オレンジカントリーウォーターディストリクト(OCWD)」の「長期間の運転」においては、バイオファウリングは、クロラミンの存在によって制御され、フィードストリームに投入された塩素は、3-5 ppmのアンモニア性窒素と結合してクロラミンを生成し、ポリアミド膜は、塩の通過が2倍になるまでに最大100,000 ppm-時間耐えることができ、2-3ppmの連続クロラミン濃度を維持するものである。 また、前記(ア)(2c)によれば、前記「オレンジカントリーウォーターディストリクト(OCWD)」の「長期間の運転」で運用されるポリアミドRO膜は、「BW30-400FR」(Dow)、「XLE-440」(Dow)、「ESPA2」(Hydranautics)、「ESPA2+」(Hydranautics)である。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第2号証には以下の発明が記載されているといえる。 「バイオファウリングが、クロラミンの存在によって制御され、 フィードストリームに投入された塩素は、3-5 ppmのアンモニア性窒素と結合してクロラミンを生成し、 ポリアミド膜は、塩の通過が2倍になるまでに最大100,000 ppm-時間耐えることができ、 2-3ppmの連続クロラミン濃度を維持し、 運用されるポリアミドRO膜は、BW30-400FR(Dow)、XLE-440(Dow)、ESPA2(Hydranautics)、ESPA2+(Hydranautics)である、 大規模廃水再生プラントである、南カリフォルニアにあるオレンジカントリーウォーターディストリクト(OCWD)の長期間の運転。」(以下、「甲2発明」という。) イ 本件発明3、4について (ア)本件発明3と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「ポリアミドRO膜」は、本件発明3における「逆浸透膜」に相当し、甲2発明における「大規模廃水再生プラントである、南カリフォルニアにあるオレンジカントリーウォーターディストリクト(OCWD)の長期間の運転」は、本件発明3における「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法」に相当する。 すると、本件発明3と甲2発明とは、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法。」の点で一致し、少なくとも、以下の点で相違する。 ・相違点3:本件発明3は、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、「バイオファウリングが、クロラミンの存在によって制御され、フィードストリームに投入された塩素は、3-5 ppmのアンモニア性窒素と結合してクロラミンを生成」するものである点。 (イ)以下、前記(ア)の相違点3の容易想到性について検討すると、前記ア(ア)(2a)によれば、甲第2号証は、省エネRO膜を使用した大規模廃水再生プラントの設計の進化について説明したものであって、長年のパイロット、デモンストレーションプラント、および実物大プラントの経験から学んだ教訓を紹介するものである。 すなわち、甲2発明は、バイオファウリングを、「フィードストリームに投入された塩素」が「3-5 ppmのアンモニア性窒素と結合して」「生成」した「クロラミンの存在によって制御するもの」であって、殺菌剤が前記「クロラミン」であるパイロット、デモンストレーションプラント、および実物大プラントの長期間の運転後に得られるデータを示すことで、これらの経験から学んだ教訓を紹介するためのものである。 そうすると、甲2発明は、殺菌剤が前記「クロラミン」であることを前提として、パイロット、デモンストレーションプラント、および実物大プラントの長期間の運転後に得られるデータを示すことで、これらの経験から学んだ教訓を紹介するためのものであり、そのような甲2発明において殺菌剤を前記「クロラミン」以外のものに変更する余地はないから、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものとする動機付けはそもそも存在しない。 (ウ)してみれば、甲第1、3~25号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術にかかわらず、甲2発明において、前記相違点3に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 なお、申立人は、甲第1号証の記載に接した当業者であれば、甲2発明において、塩素を投与して形成させるクロラミンに使用する塩素を、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物に代えること、必要に応じて更に第2の安定化剤としてのアンモニア塩を使用は、当業者が容易になし得る旨を主張するが(特許異議申立書88頁20行~90頁6行)、甲2発明において、殺菌剤を、「フィードストリームに投入された塩素」が「3-5 ppmのアンモニア性窒素と結合して」「生成」した「クロラミン」以外のものに変更する余地はなく、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものとする動機付けはそもそも存在しないことは、前記(イ)に記載のとおりであるから、申立人の前記主張は採用できない。 そして、本件発明4について検討しても事情は同じであるから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明3及び4は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第23号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明6~8について (ア)前記イ(ア)と同様にして本件発明6と甲2発明とを対比すると、本件発明6と甲2発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。 ・相違点3’:本件発明6が、「被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、「バイオファウリングが、クロラミンの存在によって制御され、フィードストリームに投入された塩素は、3-5 ppmのアンモニア性窒素と結合してクロラミンを生成」するものである点。 (イ)そして、前記(ア)の相違点3’は、被処理水中に添加する殺菌剤の相違に関するものである点で前記イ(ア)の相違点3と同様であるから、前記イ(イ)~(ウ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明6についても、甲2発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第23号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 そして、本件発明7、及び、本件発明3、4、6及び7のいずれかを引用する本件発明8について検討しても事情は同じである。 エ 小括 したがって、本件発明3、4及び6~8は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第23号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (4)甲第8号証を主引用例とした場合について ア 甲第8号証の記載事項及び甲第8号証に記載された発明 (ア)甲第8号証には以下(8a)の記載がある。 (8a)「Abstract Increased water demand from population and economic growth, environmental needs, change in rainfall, flood contamination of good quality water and over abstraction of groundwater are all factors that continue to create water shortage problems.… This paper discusses the dual membrane treatment system installed at Kranji in the north of the Singapore Island, and in particular the microfiltration pretreatment as a practical and economical choice for reuse. Initially,the Kranji High Grade Water Reclamation Plant(HGWRP),or NEWater plant, will supply industry including the microelectronics industry, with a small amount supplied for indirect potable reuse.… 1.0 Project Background A joint venture between the Public Utilities Board(PUB) and the Ministry of the Environment(ENV) of Singapore initiated a Water Reclamation Study(NEWater Study) in 1998.… The NEWater study included the design, construction and operation of a 10,000m3/day advanced water reclamation plant using state of the art dual membrane(microfiltration and reverse osmosis) and ultraviolet technologies.… An expert panel that consisted of both local and foreign experts in: engineering; biomedical science; chemistry and water technology was formed in January 1999, and oversaw the NEWater study. After evaluating plant performance and extensive testing of final water quality(including physical/chemical analyses; pesticide/herbicide analyses; radionuclides; synthetic and natural hormones and microbiological testing) for a period of 2 years, the expert panel concluded that: ・NEWater is considered safe for potable use(and meets the latest requirements of the USEPA's National Primary and Secondary Drinking Water Standards and the WHO's Drinking Water guidelines; and ・Singapore should adopt the approach of indirect potable reuse.」(1頁8行~最終行) (当審訳:要約 人口と経済成長による水需要の増加、環境ニーズ、降雨量の変化、良質な水の洪水汚染、地下水の過剰な取水はすべて、水不足の問題を発生させ続ける要因である。… この論文では、シンガポール島北部のクランジに設置された二重膜処理システム、特に再利用のための実用的かつ経済的な選択肢としての精密ろ過前処理について説明する。当初、クランジ高品位水再生プラント(HGWRP)またはNEWaterプラントは、マイクロエレクトロニクス産業を含む産業に供給し、間接的な飲用再利用のために少量を供給する。… 1.0 プロジェクトの背景 シンガポール公益事業委員会と環境省の合弁事業は、1998年に水再生調査(NEWater調査)を開始した。… NEWater調査には、最先端の二重膜(精密ろ過と逆浸透)と紫外線技術を使用した10,000m3 /日の高度な水再生プラットフォームの設計、建設、運用が含まれていた。… 1999年1月に、地域と外国の両方の工学、生物医学、化学、水技術の専門家で構成される専門家パネルが結成され、NEWater調査を監督した。プラントの性能を評価し、最終的な水質の広範なテスト(物理的/化学的分析、農薬/除草剤分析、放射性核種、合成および天然ホルモン、微生物学的テストを含む)を2年間行った後、専門家パネルは次のように結論付けた。 ・NEWaterは飲用に安全であると考えられる(そして、USEPAの国家一次および二次飲料水基準とWHOの飲料水ガイドラインの最新の要件を満たしている。 ・シンガポールは、間接的な飲用再利用のアプローチを採用する必要がある。) (8b)「2.0 Plant & Process Description The Kranji HGWRP is a 40,000m3/day dual-membrane wastewater reclaim plant. The plant combines Memcor's CMF-S(Microfiltration) with Reverse Osmosis(RO) and UV to produce high quality water from secondary effluent. A multiple barrier process to ensure pathogen removal in wastewater. … 2.1 Microfiltration Chloraminated secondary effluent(MF Feedwater) is drawn from the flow equalisation tank. It is pumped through a feed strainer to the CMF-S feed channel. Chloramine residual is controlled via dosing at the secondary effluent pump dischrage.」(2頁11行~25行) (当審訳:2.0 プラントとプロセスの説明 Kranji HGWRPは、40,000m3/日の二段膜廃水再生プラントである。このプラントは、MemcorのCMF-S(精密ろ過)と逆浸透(RO)およびUVを組み合わせて、二次排水から高品質の水を生成する。廃水中の病原体を確実に除去するための複数のバリアプロセスである。 … 2.1 精密ろ過 クロラミン処理された二次排水(MF給水)は、流量均等化タンクから引き出される。フィードストレーナを介してCMF-Sフィードチャンネルにポンプで送られる。残留クロラミンは、二次排水ポンプの排出時に添加することで制御される。) (8c)「2.2 Final stages: Reverse Osmosis and UV The filtrate produced from the CMF-S system flows to the downstream filtrate storage tank and on to the RO plant. The RO permeate is then treated with UV for disinfection, and pH adjusted before end use. … 2.3 Chlorine Dosing and Chloramine Residual Control Typically, there is 1 to 3 mg/L of ammonia in the secondary effluent feeding the NEWater plant. 5 mg/L of chlorine is dosed into secondary effluent prior to the equalisation tank. The equalisation tank not only buffers flow from wastewater treatment plant to equalise flow to the NEWater plant it also provides reaction time for the chlorine. 2-3 mg/L of the chlorine is consumed by the organics in the secondary effluent, the remaining 2-3 mg/L combines with the ammonia to form chloramines, which is then fed to the CMF-S system. After the CMF-S, the chloramine levels are slightly lower, 1-2mg/L, as more is consumed in the CMF-S system. After CMF-S more chlorine is dosed to achieve 2 mg/L of chloramines in the feed to the RO. The RO permeate contain residual amounts of chloramine and more chloramine is added to reach the required residual for the distribution system. The chloramine residual greatly controls the biological fouling in both the CMF-S and RO systems, increasing run times between CIP's.」(4頁1行~30行) (当審訳:2.2 最終段階:逆浸透とUV CMF-Sシステムから生成されたろ液は、下流のろ液貯蔵タンクとROプラントに流れる。次に、RO透過液は、消毒のためにUVで処理され、最終使用前にpHが調整される。 … 2.3 塩素投与とクロラミン残留管理 通常、NEWaterプラントに供給する二次排水には1-3 mg/Lのアンモニアが含まれている。5 mg/Lの塩素が、均等化タンクの前に二次排水に投入される。均等化タンクは、NEWaterプラントへの流れを均等化するために、廃水処理プラントからの流れを緩衝するだけではなく、塩素の反応時間を提供する。2-3 mg/Lの塩素は、二次排水の有機物によって消費され、残りの2-3 mg/Lは、アンモニアと結合してクロラミンを生成し、その後、CMF-Sシステムに供給される。 CMF-Sの後、CMF-Sシステムでより多く消費されるためにクロラミンレベルはわずかに低くなり、1-2 mg/Lとなる。CMF-Sの後、ROに2 mg/Lのクロラミンが供給されるように、より多くの塩素が添加される。RO透過液には残留量のクロラミンが含まれており、分配システムに必要な残留量とするためにさらにクロラミンが追加される。 残留クロラミンは、CMF-SシステムとROシステムの両方で生物学的汚染を大幅に制御し、CIP間の実行時間を増加させる。) (イ)前記(ア)(8a)~(8c)によれば、甲第8号証には「クランジ高品位水再生プラント(HGWRP)」による「プロセス」が記載されており、当該「クランジ高品位水再生プラント(HGWRP)」は、40,000m3/日の二段膜廃水再生プラントであり、前記「プロセス」は、MemcorのCMF-S(精密ろ過)と逆浸透(RO)およびUVを組み合わせて、二次排水から高品質の水を生成し、廃水中の病原体を確実に除去するための複数のバリアプロセスである。 すなわち、クロラミン処理された二次排水(MF給水)は、流量均等化タンクから引き出され、フィードストレーナを介してCMF-Sフィードチャンネルにポンプで送られ、残留クロラミンは、二次排水ポンプの排出時に投与することで制御されるものであり、CMF-Sシステムから生成されたろ液は、下流のろ液貯蔵タンクとROプラントに流れ、次に、RO透過液は、消毒のためにUVで処理され、最終使用前にpHが調整されるものである。 そして、通常、NEWaterプラントに供給する二次排水には1-3 mg/Lのアンモニアが含まれており、5 mg/Lの塩素が、均等化タンクの前に二次排水に投入され、均等化タンクは、NEWaterプラントへの流れを均等化するために、廃水処理プラントからの流れを緩衝するだけではなく、塩素の反応時間を提供するものであり、2-3 mg/Lの塩素は、二次排水の有機物によって消費され、残りの2-3 mg/Lは、アンモニアと結合してクロラミンを生成し、その後、CMF-Sシステムに供給されるものであり、CMF-Sの後、CMF-Sシステムでより多く消費されるためにクロラミンレベルはわずかに低くなり、1-2 mg/Lとなり、CMF-Sの後、ROに2 mg/Lのクロラミンが供給されるように、より多くの塩素が添加され、RO透過液には残留量のクロラミンが含まれており、分配システムに必要な残留量とするためにさらにクロラミンが追加されるものであり、残留クロラミンは、CMF-SシステムとROシステムの両方で生物学的汚染を大幅に制御し、CIP間の実行時間を増加させるものである。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第8号証には以下の発明が記載されているといえる。 「40,000m3/日の二段膜廃水再生プラントによるプロセスであり、 このプロセスは、MemcorのCMF-S(精密ろ過)と逆浸透(RO)およびUVを組み合わせて、二次排水から高品質の水を生成し、廃水中の病原体を確実に除去するための複数のバリアプロセスであり、 クロラミン化された二次排水(MF給水)は、流量均等化タンクから引き出され、フィードストレーナを介してCMF-Sフィードチャンネルにポンプで送られ、残留クロラミンは、二次排水ポンプの排出時に投与することで制御されるものであり、CMF-Sシステムから生成されたろ液は、下流のろ液貯蔵タンクとROプラントに流れ、次に、RO透過液は、消毒のためにUVで処理され、最終使用前にpHが調整されるものであり、 通常、NEWaterプラントに供給する二次排水には1-3 mg/Lのアンモニアが含まれており、5 mg/Lの塩素が、均等化タンクの前に二次排水に投入され、均等化タンクは、NEWaterプラントへの流れを均等化するために、廃水処理プラントからの流れを緩衝するだけではなく、塩素の反応時間を提供するものであり、 2-3 mg/Lの塩素は、二次排水の有機物によって消費され、残りの2-3 mg/Lは、アンモニアと結合してクロラミンを生成し、その後、CMF-Sシステムに供給されるものであり、CMF-Sの後、CMF-Sシステムでより多く消費されるためにクロラミンレベルはわずかに低くなり、1-2 mg/Lとなり、 CMF-Sの後、ROに2 mg/Lのクロラミンが供給されるように、より多くの塩素が添加され、RO透過液には残留量のクロラミンが含まれており、分配システムに必要な残留量とするためにさらにクロラミンが追加されるものであり、 残留クロラミンは、CMF-SシステムとROシステムの両方で生物学的汚染を大幅に制御し、CIP間の実行時間を増加させるものである、クランジ高品位水再生プラント(HGWRP)によるプロセス。」(以下、「甲8発明」という。) イ 本件発明3、4について (ア)本件発明3と甲8発明とを対比すると、甲8発明における「NEWaterプラントに供給する二次排水」及び「逆浸透(RO)」は、それぞれ、本件発明3における「被処理水」及び「及び逆浸透膜」に相当し、甲8発明において、「NEWaterプラントに供給する二次排水には1-3 mg/Lのアンモニアが含まれて」いることは、本件発明3において、「被処理水」が「アンモニアを含有」することに相当し、甲8発明における「クランジ高品位水再生プラント(HGWRP)によるプロセス」は、本件発明3における「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法」に相当する。 すると、本件発明3と甲2発明とは、 「被処理水を逆浸透膜で処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法であって、 アンモニアを含有する前記被処理水を処理する、逆浸透膜を用いる水処理方法。」の点で一致し、少なくとも、以下の点で相違する。 ・相違点4:本件発明3は、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲8発明は、「5 mg/Lの塩素が、均等化タンクの前に二次排水に投入され、均等化タンクは、NEWaterプラントへの流れを均等化するために、廃水処理プラントからの流れを緩衝するだけではなく、塩素の反応時間を提供するものであり、2-3 mg/Lの塩素は、二次排水の有機物によって消費され、残りの2-3 mg/Lは、アンモニアと結合してクロラミンを生成し、その後、CMF-Sシステムに供給されるものであり、CMF-Sの後、CMF-Sシステムでより多く消費されるためにクロラミンレベルはわずかに低くなり、1-2 mg/Lとなり、CMF-Sの後、ROに2 mg/Lのクロラミンが供給されるように、より多くの塩素が添加され、RO透過液には残留量のクロラミンが含まれており、分配システムに必要な残留量とするためにさらにクロラミンが追加される」ものである点。 (イ)以下、前記(ア)の相違点4の容易想到性について検討すると、前記ア(ア)(8a)によれば、甲第8号証は、シンガポール政府によりシンガポール島北部のクランジに設置された「クランジ高品位水再生プラント(HGWRP)」による二重膜処理システム、特に再利用のための実用的かつ経済的な選択肢としての精密ろ過前処理について記載したものであって、プラントの性能を評価し、最終的な水質の広範なテスト(物理的/化学的分析、農薬/除草剤分析、放射性核種、合成および天然ホルモン、微生物学的テストを含む)を2年間行った後の、専門家パネルの結論を説明したものである。 すなわち、甲8発明は、「塩素」が「アンモニアと結合」して生成した「クロラミン」を殺菌剤とした「クランジ高品位水再生プラント(HGWRP)」を、2年間テストした後に得られた結論を説明するためのものである。 そうすると、甲8発明は、殺菌剤が、塩素がアンモニアと結合して生成した「クロラミン」であることを前提として、プラントの長期間の運転後に得られた結果を示すためのものである点で、甲2発明と同様のものであるから、前記(3)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲8発明において「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものとする動機付けはそもそも存在しない。 (ウ)してみれば、甲第1~7、9~25号証に記載された事項及び本件特許の出願時における周知技術にかかわらず、甲8発明において、前記相違点4に係る本件発明3の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 なお、申立人は、甲第1号証の記載に接した当業者であれば、甲8発明において、アンモニア含有被処理水に塩素投与し、逆浸透膜を透過させる結合ハロゲン(クロラミン)管理に使用する塩素を、臭素型酸化剤又は塩素型酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む混合物(つまり殺菌剤)に代えること、必要に応じて更に第2の安定化剤としてのアンモニア塩の使用は、当業者が容易になし得る旨を主張するが(特許異議申立書91頁下から5行~93頁下から7行)、甲2発明と同様に、甲8発明において、殺菌剤を、「塩素」が「アンモニアと結合」して生成した「クロラミン」以外のものに変更する余地はなく、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」するものとする動機付けはそもそも存在しないから、申立人の前記主張は採用できない。 更に、本件発明4について検討しても事情は同じである。 ウ 本件発明6~8について (ア)前記イ(ア)と同様にして本件発明6と甲8発明とを対比すると、本件発明6と甲8発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。 ・相違点4’:本件発明6が、「被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」する、との発明特定事項を有するのに対して、甲8発明は、「5 mg/Lの塩素が、均等化タンクの前に二次排水に投入され、均等化タンクは、NEWaterプラントへの流れを均等化するために、廃水処理プラントからの流れを緩衝するだけではなく、塩素の反応時間を提供するものであり、2-3 mg/Lの塩素は、二次排水の有機物によって消費され、残りの2-3 mg/Lは、アンモニアと結合してクロラミンを生成し、その後、CMF-Sシステムに供給されるものであり、CMF-Sの後、CMF-Sシステムでより多く消費されるためにクロラミンレベルはわずかに低くなり、1-2 mg/Lとなり、CMF-Sの後、ROに2 mg/Lのクロラミンが供給されるように、より多くの塩素が添加され、RO透過液には残留量のクロラミンが含まれており、分配システムに必要な残留量とするためにさらにクロラミンが追加される」ものである点。 (イ)そして、前記(ア)の相違点4’は、被処理水中に添加する殺菌剤の相違に関するものである点で前記イ(ア)の相違点4と同様であるから、前記イ(イ)~(ウ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲第8号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第23号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 そして、本件発明7、及び、本件発明3、4、6及び7のいずれかを引用する8について検討しても事情は同じである。 オ 小括 したがって、本件発明3、4及び6~8は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証、甲第17号証、甲第21号証、甲第23号証に記載された事項及び本件特許出願時における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (5)まとめ したがって、特許法第29条第1項、同法同条第2項についての取消理由及び特許異議申立理由はいずれも理由がない。 2 記載不備について (1)サポート要件及び実施可能要件の判断手法 ア 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ また、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等に当業者がその方法を使用することができる程度の記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件に適合するということができる。 (2)「逆浸透膜の酸化劣化の抑制」について ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (ア)まず、本件発明の課題についてみると、本件特許明細書には以下(a)、(b)の記載がある。 (a)「【0002】 逆浸透膜(RO膜)を用いる水処理方法において、バイオファウリング対策として各種の殺菌剤(スライム抑制剤)が使用されることが一般的である。次亜塩素酸等の塩素系酸化剤は代表的な殺菌剤であり、系内の殺菌目的で通常は逆浸透膜の前段に添加される。塩素系酸化剤は逆浸透膜を劣化させる可能性が高いため、一般的には逆浸透膜の直前で塩素系酸化剤を還元分解するか、間欠的に塩素系酸化剤を逆浸透膜に流入させることで運用されている。 【0003】 また、殺菌剤(スライム抑制剤)として塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤を逆浸透膜の被処理水中に存在させる方法(特許文献1参照)や、臭素系酸化剤、または臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物との混合物もしくは反応生成物を被処理水に添加する方法(特許文献2参照)が知られている。 【0004】 塩素系酸化剤または臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤は、殺菌能力が高いうえにポリアミド系の逆浸透膜を酸化劣化させにくく、逆浸透膜での阻止率も高く、後段の処理水(透過水)質に影響が少ないため有効である。 … 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかし、逆浸透膜で殺菌剤の大部分が阻止されてしまうため、逆浸透膜の1次側では殺菌剤が有効な場合でも2次側の透過水ラインがスライム汚染を受けることがある。特に被処理水が低分子(例えば、分子量200以下)の有機物を含む場合、低分子の有機物は逆浸透膜による阻止率が低いため、逆浸透膜の1次側では殺菌剤が有効な場合でも2次側で低分子の有機物に起因するスライム汚染が発生することがある。 【0007】 本発明の目的は、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制し、かつ逆浸透膜の酸化劣化を抑制する、逆浸透膜を用いる水処理方法を提供することにある。」 (b)「【0022】 本発明者らは検討を重ねたところ、被処理水にアンモニアが含まれるとき、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物を含む殺菌剤が逆浸透膜を透過しやすくなることを見出した。この現象を利用して、アンモニアを含有する被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を存在させることにより、被処理水を逆浸透膜で処理する水処理方法において、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制し、かつ逆浸透膜の酸化劣化を抑制することができる。 【0023】 このように、本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法において、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤と同等以上のスライム抑制効果を発揮するにも関わらず、塩素系酸化剤と比較すると、逆浸透膜への劣化影響が低いため、逆浸透膜でのファウリングを抑制しながら、逆浸透膜の酸化劣化を抑制できる。このため、本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物は、被処理水を逆浸透膜で処理する水処理方法で用いるスライム抑制剤としては好適である。」 (イ)前記(ア)(a)、(b)によれば、従来、逆浸透膜(RO膜)を用いる水処理方法にあっては、バイオファウリング対策として各種の殺菌剤(スライム抑制剤)が使用されることが一般的であり、具体的には、殺菌剤(スライム抑制剤)として塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤を逆浸透膜の被処理水中に存在させる方法や、臭素系酸化剤、または臭素化合物と塩素系酸化剤との反応物と、スルファミン酸化合物との混合物もしくは反応生成物を被処理水に添加する方法が知られていたところ、このような従来の殺菌剤、すなわち、塩素系酸化剤または臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤は、殺菌能力が高いうえにポリアミド系の逆浸透膜を酸化劣化させにくく、逆浸透膜での阻止率も高く、後段の処理水(透過水)質に影響が少ないため有効である反面、逆浸透膜で殺菌剤の大部分が阻止されてしまうため、逆浸透膜の1次側では殺菌剤が有効な場合でも2次側の透過水ラインがスライム汚染を受けることがあり、特に被処理水が低分子の有機物を含む場合、低分子の有機物は逆浸透膜による阻止率が低いため、逆浸透膜の1次側では殺菌剤が有効な場合でも2次側で低分子の有機物に起因するスライム汚染が発生することがある、といった課題(以下、「本件課題」という。)を有するものであったことが伺える。 本件発明は、このような本件課題に対処するものであって、その目的は、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制し、かつ逆浸透膜の酸化劣化を抑制する、逆浸透膜を用いる水処理方法を提供することにあるということができる。 そして、本件発明は、被処理水にアンモニアが含まれるとき、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物を含む殺菌剤が逆浸透膜を透過しやすくなることを見出し、この現象を利用して、アンモニアを含有する被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を存在させることにより、被処理水を逆浸透膜で処理する水処理方法において、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制し、かつ逆浸透膜の酸化劣化を抑制することができるものであり、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤と同等以上のスライム抑制効果を発揮するにも関わらず、上述の従来の塩素系酸化剤と比較すると、逆浸透膜への劣化影響が低いため、逆浸透膜でのファウリングを抑制しながら逆浸透膜の酸化劣化を抑制できるものであることが分かる。 (ウ)前記(イ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、塩素系酸化剤と比較してポリアミド系の逆浸透膜を酸化劣化させにくい塩素系酸化剤または臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を用いることで、逆浸透膜の酸化劣化を抑制するものであることを理解するものと解される。 一方、本件発明3、4及び6~8は、いずれも、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し」、または、「被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加し」、との発明特定事項を有するものであり、「被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」すること、及び、「被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を添加」することは、塩素系酸化剤と比較してポリアミド系の逆浸透膜を酸化劣化させにくい塩素系酸化剤または臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を用いることにほかならないから、当業者は、本件発明3、4及び6~8の発明特定事項により、塩素系酸化剤と比較してポリアミド系の逆浸透膜を酸化劣化させにくい塩素系酸化剤または臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を用いることで逆浸透膜の酸化劣化を抑制できることを理解すると解するのが合理的である。 (エ)してみれば、仮に、本件特許明細書に、透過する被処理水中及び透過した透過水中に、逆浸透膜の酸化劣化を生じさせることが明らかな遊離塩素がどのくらい含まれるかが記載されておらず、逆浸透膜の酸化劣化に関連する試験方法、評価方法及びその検討プロセスについても全く開示がなく、本件実施例において、逆浸透膜の酸化劣化の抑制をみているとはいえないとしても、当業者は、本件発明3、4及び6~8の発明特定事項により、逆浸透膜の酸化劣化の抑制の課題を解決できると認識できるというべきである。 そして、このことを前記(1)アの判断手法に照らせば、本件特許の特許請求の範囲の記載は、「逆浸透膜の酸化劣化の抑制」についてサポート要件に適合するということができるので、前記第4の3(1)アの特許異議申立理由は理由がない。 イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、塩素系酸化剤と比較してポリアミド系の逆浸透膜を酸化劣化させにくい塩素系酸化剤または臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を用いることで、逆浸透膜の酸化劣化を抑制するものであることを理解することは、前記ア(ウ)に記載のとおりである。 すると、仮に、本件特許明細書に、逆浸透膜の酸化劣化に関連する試験方法、評価方法及びその検討プロセスについても全く開示がなく、前記評価方法や試験方法は一義的に定まらないとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、塩素系酸化剤と比較してポリアミド系の逆浸透膜を酸化劣化させにくい塩素系酸化剤または臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を用いることで、逆浸透膜の酸化劣化を抑制することが記載されているのであるから、当業者が本件発明3、4及び6~8の方法を使用することができる程度の記載があるというべきである。 そして、このことを前記(1)イの判断手法に照らせば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「逆浸透膜の酸化劣化の抑制」について実施可能要件に適合しているというべきであるので、前記第4の3(1)イの特許異議申立理由は理由がない。 ウ 小括 よって、前記第4の3(1)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 (3)「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であること」について ア 特許法第36条第6項第2号(明確性)について 甲第3号証(Fig.3)、甲第4号証(図2)によれば、膜のゼータ電位はマイナス無限大となるものではなく、膜の種類に応じた下限値を有するものであって、このことは技術常識といえるから、仮に、本件発明3において「pH7.0におけるゼータ電位」の下限が特定されていないとしても、前記技術常識からみて、「pH7.0におけるゼータ電位」がマイナス無限大を含むものとはならないので、本件発明3は明確であるというべきであり、本件発明4及び6~8について検討しても事情は同じである。 したがって、前記第4の3(2)アの特許異議申立理由は理由がない。 イ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (ア)本件特許明細書には、更に以下(c)、(d)の記載がある。 (c)「【0042】 本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法は、逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜に好適に適用することができる。ポリアミド系高分子膜は、酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる。しかしながら、本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法ではポリアミド高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下はほとんど起こらない。 【0043】 逆浸透膜には、中性膜、アニオン荷電膜、およびカチオン荷電膜がある。本明細書では、中性膜は、後述する実施例に記載したゼータ電位の測定方法により求めた、pH7.0におけるゼータ電位が-5~5(mV)の範囲のものを指し、アニオン荷電膜は、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満のものを指す。 【0044】 市販の中性膜としては、例えば、BW30XFR(ダウ・ケミカル社製)、LFC3(日東電工株式会社製)、TML20(東レ株式会社製)等が挙げられる。 【0045】 市販のアニオン荷電膜としては、例えば、OFR-625(以上、オルガノ株式会社製)、ES15、ES20、CPA3、CPA5(以上、日東電工株式会社製)、RE-8040BLN(ウンジン社製)等が挙げられる。 【0046】 本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法では、アニオン荷電膜を用いた場合、中性膜を用いた場合に比べて、殺菌剤の透過率が高く、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染をより抑制することができる。」 (d)「【0081】 <実施例2> 実施例2では、平膜として、中性膜である、LFC3(日東電工株式会社製)、TML20(東レ株式会社製)、アニオン荷電膜である、OFR-625(オルガノ株式会社製)、ES15、ES20、CPA5(以上、日東電工株式会社製)を用い、殺菌剤として、安定化次亜臭素酸組成物(組成物1)を用い、実施例1と同様に図1のフローで下記条件および方法で透過水濃度を測定した。 【0082】 試験水(被処理水)は、超純水に殺菌剤を添加し、pHが7.0になるように塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調製したものを使用した。殺菌剤の濃度は全塩素濃度で10mg/Lとした。水温は25±1℃となるようにチラーを用いて調節した。逆浸透膜の操作圧は0.75MPaとした。逆浸透膜への供給水は5L/minで通水した。被処理水にアンモニア濃度が0,0.1,0.5,1,5,10mg/Lとなるように塩化アンモニウムを添加し、3時間程度の通水後、各殺菌剤の被処理水濃度(全塩素濃度)および透過水濃度(全塩素濃度)を測定し、透過率を求めた。結果を表3および図2に示す。 【0083】 【表3】 [図:0001387474000002.jpg] 【0084】 このように、アニオン荷電膜を用いた場合、中性膜を用いた場合に比べて、殺菌剤の透過率が高く、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染をより抑制することができることがわかった。」 (イ)前記(ア)(c)、(d)によれば、本件発明においては、逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜を好適に適用することができるものであるが、前記ポリアミド系高分子膜のうち「アニオン荷電膜」を用いた場合、「中性膜」を用いた場合に比べて、殺菌剤の透過率が高く、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染をより抑制できるものであることが分かる。 他方、本件特許明細書は、「中性膜」を用いたものが従来技術に相当するものであることを明示するものではないし、そのような技術常識も見当たらないことから、本件発明は、単に、逆浸透膜を、ポリアミド系高分子膜のうち、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染をより抑制できる「アニオン荷電膜」に特定するものに過ぎないと解するのが合理的であって、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「中性膜」を用いたものが従来技術に相当するものとは理解しないというべきである。そして、このことは、本件特許の審査過程において「逆浸透膜」を「アニオン荷電膜」に特定したことに左右されるものでもない。 (ウ)すると、仮に、本件実施例において、「中性膜」が「アニオン荷電膜」よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があったり、ゼータ電位が高い「アニオン荷電膜」がゼータ電位が低い「アニオン荷電膜」よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があるとしても、「中性膜」を用いたものが従来技術に相当するものではないのであるから、逆浸透膜として「アニオン荷電膜」を用いる本件発明3が従来技術よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が低い場合を含むものではない。 更に、前記(イ)によれば、当業者は、「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である」、との発明特定事項を有する本件発明3の発明特定事項により、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染をより抑制でき、本件課題を解決できることを認識するから、発明の詳細な説明に記載された内容は、本件特許の特許請求の範囲の範囲まで拡張ないし一般化できるのであり、本件発明4及び6~8について検討しても事情は同じである。 そして、このことを前記(1)アの判断手法に照らせば、本件特許の特許請求の範囲の記載は、「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜であること」についてサポート要件に適合しているというべきであるから、前記第4の3(2)イの特許異議申立理由は理由がない。 ウ 小括 よって、前記第4の3(2)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 (4)アンモニア濃度の好ましい数値範囲について ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (ア)仮に、本件実施例において、「中性膜」が「アニオン荷電膜」よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があったり、ゼータ電位が高い「アニオン荷電膜」がゼータ電位が低い「アニオン荷電膜」よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が高い場合があるとしても、「中性膜」を用いたものが従来技術に相当するものではないのであるから、逆浸透膜として「アニオン荷電膜」を用いる本件発明3が従来技術よりも殺菌剤(全塩素)の透過率が低い場合を含むものではない。 そして、そうであれば、当業者は、「被処理水」にアンモニアが含まれ、「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」であり、「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である」、との発明特定事項を有する本件発明3により本件課題を解決できることを認識するのであって、「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」であることと、「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である」ことに整合性がとれていないとはいえない。この点は、本件発明6及び8について検討しても事情は同じである。 そして、このことを前記(1)アの判断手法に照らせば、アンモニア濃度の好ましい数値範囲について、本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するというべきであるから、前記第4の3(3)ア(ア)の特許異議申立理由は理由がない。 (イ)本件特許明細書には、更に以下(e)の記載がある。 (e)「【0029】 逆浸透膜に接触する全塩素濃度は有効塩素濃度換算で、0.01~100mg/Lであることが好ましい。0.01mg/L未満であると、十分なスライム抑制効果を得ることができない場合があり、100mg/Lより多いと、逆浸透膜の劣化、配管等の腐食を引き起こす可能性がある。 【0030】 被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比(アンモニア濃度(mg/L)/殺菌剤濃度(全塩素濃度:mg/L))が、0.01~1の範囲となるように殺菌剤を存在させることが好ましく、0.01~0.5の範囲となるように殺菌剤を存在させることがより好ましい。被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が0.01以上となるように殺菌剤を存在させると、殺菌剤の透過率向上の効果が十分に表れるため好ましい。被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が0.01未満であると、殺菌剤の透過率向上の効果が十分に表れない場合があり、1を超えて存在させても、アンモニア添加による殺菌剤の透過率の向上効果が表れにくくなる。 … 【0032】 被処理水が、逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含む場合、特に1.0mg/L以上500mg/L以下含む場合に、本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法がより好適に適用することができる。被処理水中の、逆浸透膜を透過する有機物の含有量が0.5mg/L未満であると、逆浸透膜の2次側においてスライム汚染が発生しにくい。 【0033】 本明細書において低分子の有機物とは、分子量が200以下の有機物を指し、例えば、分子量が200以下の、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール化合物、モノエタノールアミン、尿素等のアミン化合物、水酸化テトラメチルアンモニム等のテトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。」 前記(e)によれば、本件特許明細書には、逆浸透膜に接触する全塩素濃度は有効塩素濃度換算で、0.01~100mg/Lであることが好ましく、被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比(アンモニア濃度(mg/L)/殺菌剤濃度(全塩素濃度:mg/L))が、0.01~1の範囲となるように殺菌剤を存在させることが好ましいものであり、被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が0.01以上となるように殺菌剤を存在させると、殺菌剤の透過率向上の効果が十分に表れ、1を超えて存在させても、アンモニア添加による殺菌剤の透過率の向上効果が表れにくくなることが記載されているといえる。 (ウ)そして、本件発明は、被処理水にアンモニアが含まれるとき、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物を含む殺菌剤が逆浸透膜を透過しやすくなる現象を利用して、アンモニアを含有する被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を存在させることにより、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制するものであるから、仮に、本件実施例における「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比」の裏付けがアンモニア1mg/Lの一点しかないとしても、前記(イ)の本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明において、「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」となるように殺菌剤を存在させることで、殺菌剤が逆浸透膜を透過しやすくなり、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制できることを理解するというべきである。 また、「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」であることと、「逆浸透膜が、pH7.0におけるゼータ電位が-5(mV)未満であるアニオン荷電膜である」ことに整合性がとれていないとはいえないことは前記(ア)に記載のとおりであるから、当業者は、本件発明3の発明特定事項により本件課題を解決できることを認識することができ、発明の詳細な説明に記載された内容を、本件発明3の範囲まで拡張ないし一般化できるものである。この点は、本件発明6及び8について検討しても事情は同じである。 そして、このことを前記(1)アの判断手法に照らせば、本件特許の特許請求の範囲の記載は、アンモニア濃度の好ましい数値範囲についてサポート要件に適合するというべきであり、このことは、「被処理水中の全塩素濃度に対するアンモニアの濃度の比が、0.01~1の範囲」に臨界的意義があるか否かに左右されるものでもないし、更に、本件発明3、6及び8においてアンモニア濃度が特定されるものではなく、アンモニア濃度について、サポートされない領域を含むものでもないので、前記第4の3(3)ア(イ)の特許異議申立理由は理由がない。 イ 小括 よって、前記第4の3(3)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 (5)「有機物」及び全塩素濃度の好ましい数値範囲について ア 特許法第36条第6項第2号(明確性)について (ア)技術常識からみて、被処理水中の逆浸透膜を透過する「有機物」の濃度が無限大となることは考え難く、当該濃度が上限値を有することは明らかであるので、本件発明4、7及び8において逆浸透膜を透過する「有機物」の濃度の上限値が特定されていないとしても、本件発明4、7及び8は明確であるというべきである。 したがって、前記第4の3(4)ア(ア)の特許異議申立理由は理由がない。 (イ)前記(2)ア(ア)(a)(【0006】)、(4)ア(イ)(e)(【0033】)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明4における「有機物」は、逆浸透膜の阻止率が低く、2次側においてスライム汚染を発生させる、例えば分子量200以下の、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール化合物、モノエタノールアミン、尿素等のアミン化合物、水酸化テトラメチルアンモニム等のテトラアルキルアンモニウム塩等が例示される低分子の「有機物」をいうことを理解する。 そして、前記(4)ア(イ)(e)(【0032】)によれば、本件発明においては、被処理水中の逆浸透膜を透過する有機物の含有量が0.5mg/L未満であると、もともと逆浸透膜の2次側においてスライム汚染が発生しにくく、逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含む場合、本件発明をより好適に適用できるとされているに過ぎず、当業者は、これら低分子の「有機物」に対して通常用いられる測定方法に基づき、被処理水が逆浸透膜を透過する「有機物」を0.5mg/L以上含む場合、本件発明をより好適に適用できることも理解できるので、本件発明4は明確であるというべきであり、本件発明7及び8について検討しても事情は同じである。 したがって、前記第4の3(4)ア(イ)の特許異議申立理由は理由がない。 イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明4及び7における「有機物」は、逆浸透膜の阻止率が低く、2次側においてスライム汚染を発生させる低分子の「有機物」をいうことを理解でき、また、当業者は、これら低分子の「有機物」に対して通常用いられる測定方法に基づき、被処理水が逆浸透膜を透過する「有機物」を0.5mg/L以上含む場合、本件発明をより好適に適用できることも理解できることは前記ア(イ)に記載のとおりであるから、当業者は、「有機物」に起因するスライム汚染の抑制効果を実施できるので、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明4の方法を使用することができる程度の記載があるというべきであり、本件発明7及び8について検討しても事情は同じである。 そして、このことを前記(1)イの判断手法に照らせば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「有機物」の好ましい数値範囲について実施可能要件に適合しているというべきであるから、前記第4の3(4)イの特許異議申立理由は理由がない。 ウ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (ア)本件発明は、被処理水にアンモニアが含まれるとき、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物を含む殺菌剤が逆浸透膜を透過しやすくなる現象を利用して、アンモニアを含有する被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を存在させることにより、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制するものであって、被処理水中の逆浸透膜を透過する有機物の含有量が0.5mg/L未満であると、もともと逆浸透膜の2次側においてスライム汚染が発生しにくく、逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含む場合、本件発明をより好適に適用できるとされるものである。 すると、仮に、本件実施例では原水として「超純水」を用いており、当該超純水は有機物を0.5mg/Lも含まないとしても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、「被処理水が、前記逆浸透膜を透過する有機物を0.5mg/L以上含」むものである本件発明4の発明特定事項により本件課題を解決できることを認識するから、本件特許明細書には、本件発明4により「スライム汚染抑制」の課題を解決できることの裏付けが開示されているといえる。 (イ)また、当業者は、低分子の「有機物」に対して通常用いられる測定方法に基づき、被処理水が逆浸透膜を透過する「有機物」を0.5mg/L以上含む場合、本件発明をより好適に適用できることを理解できることは、前記ア(イ)に記載のとおりであり、「有機物」及びその濃度が一義的に定まらないとはいえないから、当業者は、本件特許明細書の【0029】(前記(3)ア(イ)(e))に記載される逆浸透膜に接触する全塩素濃度内であれば、「スライム汚染抑制」の課題を解決し得ることを認識することができる。 (ウ)前記(ア)、(イ)によれば、当業者は、本件発明4の発明特定事項により本件課題を解決できることを認識することができるということができ、このことは、本件発明7及び8についても同様である。 そして、このことを前記(1)アの判断手法に照らせば、本件特許の特許請求の範囲の記載は、有機物及び全塩素濃度の好ましい数値範囲についてサポート要件に適合しているというべきであるから、前記第4の3(4)ウの特許異議申立理由は理由がない。 エ 小括 よって、前記第4の3(4)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 (6)「透過水をユースポイントで使用しないときのみに前記殺菌剤を添加して前記被処理水中に存在させる」ことについて ア 特許法第36条第6項第2号(明確性)について (ア)本件特許明細書には、更に以下(f)の記載がある。 (f)「【0047】 本実施形態に係る逆浸透膜を用いる水処理方法では、透過水をユースポイントで使用しないときには、得たRO透過水をRO濃縮水とともに逆浸透膜の1次側に循環させてもよく、透過水をユースポイントで使用しないときのみに殺菌剤を添加して被処理水中に存在させることが好ましい。これにより、RO透過水ラインの殺菌を行いつつ、透過水を使用する際には透過水に殺菌剤が含まれなくなるという効果がある。」 前記(f)によれば、本件発明8においては、透過水をユースポイントで使用しないときには、得たRO透過水をRO濃縮水とともに逆浸透膜の1次側に循環させ、透過水をユースポイントで使用しないときのみに殺菌剤を添加して被処理水中に存在させるものであり、これにより、RO透過水ラインの殺菌を行いつつ、透過水を使用する際には透過水に殺菌剤が含まれないようにするものである。 (イ)前記(ア)によれば、当業者は、本件発明8が、透過水をユースポイントで使用しないときのみに殺菌剤を添加して被処理水中に存在させることで、RO透過水ラインの殺菌を行いつつ、透過水を使用する際には透過水に殺菌剤が含まれないようにするものであることを理解するので、本件発明8に期待される作用効果は明確であるというべきである。 また、本件発明8は、透過水をユースポイントで使用しないときのみに殺菌剤を添加して被処理水中に存在させるものであって、ユースポイントから得られる処理水に殺菌剤を含ませないことを目的とするものではないから、本件発明8において、殺菌剤を含ませない手段として、逆浸透膜とユースポイントの位置関係及びこれらの間の工程、殺菌剤及びアンモニアの添加場所、これらの含有量または添加量を特定する必要はないのであり、これらが特定されていないとしても、本件発明8が不明確であるということはできない。 更に、本件発明は、殺菌剤の透過率が高くなることで、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染をより抑制できるものであることからみれば、被処理水に殺菌剤を添加したとき、RO透過水には、当然、殺菌剤が含まれるものである。 すると、透過水をユースポイントで使用しないときのみに殺菌剤を添加して被処理水中に存在させる本件発明8において、透過水をユースポイントで使用しないときに、得たRO透過水をRO濃縮水とともに逆浸透膜の1次側に循環させた場合、2次側のRO透過水に殺菌剤が含まれなくなることはなく、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制できるという本件課題を解決できるものである。 そして、前記(ア)(f)の記載は、RO透過水を使用する際には、RO透過水に殺菌剤が含まれないことをいうものに過ぎないから、本件発明8と本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は合致しているので、本件発明8は明確であるというべきである。 したがって、本件発明8は明確であるというべきであるので、前記第4の3(5)アの特許異議申立理由は理由がない。 イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 本件発明8において、殺菌剤を含ませない手段として、逆浸透膜とユースポイントの位置関係及びこれらの間の工程、殺菌剤及びアンモニアの添加場所、これらの含有量または添加量を特定する必要はないこと、及び、透過水をユースポイントで使用しないときのみに殺菌剤を添加して被処理水中に存在させる本件発明8において、透過水をユースポイントで使用しないときに、得たRO透過水をRO濃縮水とともに逆浸透膜の1次側に循環させた場合、2次側のRO透過水に殺菌剤が含まれなくなることはなく、逆浸透膜の2次側においてもスライム汚染を抑制できるという本件課題を解決できることは、前記ア(イ)に記載のとおりである。 すると、本件発明8において、逆浸透膜とユースポイントの位置関係及びこれらの間の工程等を特定していないとしても、本件発明8は課題を解決しないものを含むものではなく、本件発明8の実施に過度の試行錯誤が必要となるものでもないので、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明8の方法を使用することができる程度の記載があるというべきである。 そして、このことを前記(1)イの判断手法に照らせば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「透過水をユースポイントで使用しないときのみに前記殺菌剤を添加して前記被処理水中に存在させる」ことについて実施可能要件に適合しているというべきであるから、前記第4の3(5)イの特許異議申立理由は理由がない。 ウ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 本件発明8は課題を解決しないものを含むものではないことは、前記イに記載のとおりであるし、前記(2)ア(イ)によれば、本件課題は明確であるから、発明の詳細な説明の記載は、請求項8にまで拡張ないし一般化できるものである。 そして、このことを前記(1)アの判断手法に照らせば、本件特許の特許請求の範囲の記載は、「透過水をユースポイントで使用しないときのみに前記殺菌剤を添加して前記被処理水中に存在させる」ことについてサポート要件に適合しているというべきであるから、前記第4の3(5)ウの特許異議申立理由は理由がない。 エ 小括 よって、前記第4の3(5)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 (7)まとめ したがって、特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号及び同法同条第6項第2号についての特許異議申立理由はいずれも理由がない。 第7 むすび 以上のとおり、請求項3、4及び6~8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に請求項3、4及び6~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正により請求項1、2及び5は削除されたので、請求項1、2及び5に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700419

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  • 2021-700606異議申立 / 2022-02-22 / 訂正認容逆浸透膜処理システムおよび逆浸透膜処理方法
    共通の審決分類: 113・C02F、121・C02F、536・C02F、537・C02F ほか2件
  • 2016-700931異議申立 / 2017-09-27 / 訂正認容有機性排水の生物処理方法
    共通の審決分類: 113・C02F、121・C02F、536・C02F、537・C02F ほか2件
  • 2023-700644異議申立 / 2024-02-27 / 訂正認容管理装置
    共通の審決分類: 113・C02F、121・C02F、536・C02F、537・C02F ほか1件

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