特許異議申立
2021-701156
汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法
- 審判番号
- 2021-701156
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-514149
- 登録番号
- 6892041
- 請求日
- 2021年12月08日
- 審決日
- 2022年09月14日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】栗田工業株式会社
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】川渕 健一
- 【権利者代理人】服部 映美
- 【異議申立人】大矢 真紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 関根 崇
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.113-YAA(C02F) / P1651.121-YAA(C02F) / P1651.537-YAA(C02F) / P1651.851-YAA(C02F) / P1651.853-YAA(C02F) / P1651.857-YAA(C02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6892041号発明「汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6892041号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第6892041号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6892041号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月4日(優先権主張 令和1年12月6日)を国際出願日とする出願であって、令和3年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年12月 8日 :特許異議申立人 大矢真紀子(以下「申
立人」という。)による全請求項に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和4年 2月21日付け:取消理由通知
同年 4月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の
提出
なお、上記令和4年4月25日付けの訂正請求書に対して、申立人に期間を指定して意見を求めたが、意見書の提出はなされなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年4月25日付けの訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1~6からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「下記式(a1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位aと、
下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位b及び下記式(c1)で表される第三級アミン塩から誘導された構成単位cから選択される1種以上の構成単位と、を有し、
ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上4モル%以下であるカチオン性ポリマーを含有し、
前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.5~4.0dL/gである、汚泥脱水剤。
【化1】
[図:0001392035000001.jpg]
(式(a1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R2は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化2】
[図:0001392035000002.jpg]
(式(b1)中、R4及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R5は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化3】
[図:0001392035000003.jpg]
(式(c1)中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)」との記載を、
「下記式(a1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位aと、
下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位b及び下記式(c1)で表される第三級アミン塩から誘導された構成単位cから選択される1種以上の構成単位と、を有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aは、30モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、20モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計は、60モル%以上100モル%以下であり、
ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上0.5モル%以下であるカチオン性ポリマーを含有し、
前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.7~3.5dL/gである、汚泥脱水剤。
【化1】
[図:0001392035000004.jpg]
(式(a1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R2は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化2】
[図:0001392035000005.jpg]
(式(b1)中、R4及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R5は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化3】
[図:0001392035000006.jpg]
(式(c1)中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、
「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計が、60モル%以上100モル%以下である、請求項1に記載の汚泥脱水剤。」との記載を、
「下記式(a1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位aと、
下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位b及び下記式(c1)で表される第三級アミン塩から誘導された構成単位cから選択される1種以上の構成単位と、を有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aは、30モル%以上55モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、30モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計は、60モル%以上100モル%以下であり、
ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上0.1モル%以下であるカチオン性ポリマーを含有し、
前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.9~2.8dL/gである、汚泥脱水剤。
【化4】
[図:0001392035000007.jpg]
(式(a1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R2は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化5】
[図:0001392035000008.jpg]
(式(b1)中、R4及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R5は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化6】
[図:0001392035000009.jpg]
(式(c1)中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について、
「前記カチオン性ポリマーは、非イオン性単量体から誘導された構成単位dをさらに有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位aが、0モル%超60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位が、20モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位dが、0モル%超40モル%以下である、請求項1又は2に記載の汚泥脱水剤。」との記載を、
「前記カチオン性ポリマーは、非イオン性単量体から誘導された構成単位dをさらに有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位dが、0モル%超40モル%以下である、請求項1に記載の汚泥脱水剤。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4について、
「請求項1~3のいずれか一項に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。」との記載を、
「請求項1又は3に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記カチオン性ポリマーは、非イオン性単量体から誘導された構成単位dをさらに有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位dが、0モル%超40モル%以下である、請求項2に記載の汚泥脱水剤。」を追加する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項2又は5に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。」を追加する。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1の記載を請求項2~4が直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~4は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1~6に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項から派生した訂正後の請求項〔1~6〕を訂正の単位として請求されたものである。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否)の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、カチオン性ポリマーを構成する、構成単位aの含有量、構成単位b及び構成単位cから選択される1種以上の構成単位の含有量、並びに構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計含有量を規定するとともに、アニオン性単量体から誘導された構成単位の含有量の範囲の上限値を「0.5モル%以下」に限定し、さらに、カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度の数値範囲を「0.7~3.5dL/g」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
カチオン性ポリマーを構成する構成単位aの含有量は、願書に添付した明細書の段落【0022】に記載されており、構成単位b及び構成単位cから選択される1種以上の構成単位の含有量は、同【0035】に記載されており、構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計含有量は、特許請求の範囲の【請求項2】に記載されており、アニオン性単量体から誘導された構成単位の含有量は、同【0042】に記載されており、さらに、カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度は、同【0013】に記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項2について、独立形式に書き下して引用関係を解消した上で、カチオン性ポリマーを構成する、構成単位aの含有量、構成単位b及び構成単位cから選択される1種以上の構成単位の含有量、並びに構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計含有量を規定するとともに、アニオン性単量体から誘導された構成単位の含有量の範囲の上限値を「0.1モル%以下」に限定し、カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度の数値範囲を「0.9~2.8dL/g」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的としている。
また、訂正事項2は、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%」という記載を「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%」とする訂正がされているが、当該訂正は、明細書の段落【0008】、【0037】における「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%」なる記載と平仄を合わせるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的するものといえる。
イ 新規事項の有無
カチオン性ポリマーを構成する構成単位aの含有量は、願書に添付した明細書の段落【0022】に記載されており、構成単位b及び構成単位cから選択される1種以上の構成単位の含有量は、同【0035】に記載されており、構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計含有量は、特許請求の範囲の【請求項2】に記載されており、アニオン性単量体から誘導された構成単位の含有量は、同【0071】【表2】の「合成例7」に記載されており、さらに、カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度の上限値は、同【0013】に記載されており、当該固有粘度の下限値は、同【0071】【表2】の「合成例3」に記載されている。また、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%」という記載は、同【0008】、【0037】に記載されている。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3において、「請求項1又は2」を引用していたものを、「請求項1」のみを引用するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的としている。
また、訂正事項3は、引用する請求項1が、前記訂正事項1によって限縮されたことにより、重複することとなった請求項3の記載、具体的には、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位aが、0モル%超60モル%以下であり、前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位が、20モル%以上60モル%以下であり」という記載を削除して、引用する請求項1の記載と整合させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としている。
さらに、訂正事項3は、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%」という記載を「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%」とする訂正もされているが、当該訂正は、明細書中の記載と平仄を合わせるものであるから、上記(2)アで検討したように、「明瞭でない記載の釈明」を目的としている。
イ 新規事項の有無
上記アで検討したように、訂正事項3は、請求項2を引用しないようにした上で、引用する請求項1と重複する記載を削除するとともに、明細書中の記載(【0008】、【0037】)と平仄を合わせるものであるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたものを、請求項2及び請求項2を引用する請求項3を引用しないようにしたものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項3において、「請求項1又は2」を引用していたもののうち、請求項1を削除し、訂正事項2によって引用関係を解消して独立形式に改めた請求項2のみを引用するものを新たな請求項5にするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的としている。
また、訂正事項5は、引用する請求項2が、前記訂正事項2によって限縮されたことにより、重複することとなった請求項3の記載、具体的には、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位aが、0モル%超60モル%以下であり、前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位が、20モル%以上60モル%以下であり」という記載を削除して、引用する請求項2の記載と整合させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的としている。
さらに、訂正事項5は、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%」という記載を「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%」とする訂正もされているが、当該訂正は、明細書中の記載と平仄を合わせるものであるから、上記(2)アで検討したように、「明瞭でない記載の釈明」を目的としている。
イ 新規事項の有無
上記アで検討したように、訂正事項5は、訂正事項2によって引用関係を解消して独立形式に改めた請求項2のみを引用するとともに、明細書中の記載(【0008】、【0037】)と平仄を合わせるものであるから、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項4において、「請求項1~3のいずれか一項」を引用していたもののうち、請求項1及びこれを引用する請求項3を削除し、訂正事項2によって引用関係を解消して独立形式に改めた請求項2及びこれを引用する請求項5のみを引用するものを新たな請求項6にするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
なお、特許異議の申立ては、全請求項についてされているので、訂正事項1~6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明について
本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、これらを纏めて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
下記式(a1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位aと、
下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位b及び下記式(c1)で表される第三級アミン塩から誘導された構成単位cから選択される1種以上の構成単位と、を有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aは、30モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、20モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計は、60モル%以上100モル%以下であり、
ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上0.5モル%以下であるカチオン性ポリマーを含有し、
前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.7~3.5dL/gである、汚泥脱水剤。
【化1】
[図:0001392035000010.jpg]
(式(a1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R2は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化2】
[図:0001392035000011.jpg]
(式(b1)中、R4及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R5は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化3】
[図:0001392035000012.jpg]
(式(c1)中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【請求項2】
下記式(a1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位aと、
下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位b及び下記式(c1)で表される第三級アミン塩から誘導された構成単位cから選択される1種以上の構成単位と、を有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aは、30モル%以上55モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、30モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計は、60モル%以上100モル%以下であり、
ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上0.1モル%以下であるカチオン性ポリマーを含有し、
前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.9~2.8dL/gである、汚泥脱水剤。
【化4】
[図:0001392035000013.jpg]
(式(a1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R2は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化5】
[図:0001392035000014.jpg]
(式(b1)中、R4及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R5は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化6】
[図:0001392035000015.jpg]
(式(c1)中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【請求項3】
前記カチオン性ポリマーは、非イオン性単量体から誘導された構成単位dをさらに有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位dが、0モル%超40モル%以下である、請求項1に記載の汚泥脱水剤。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。
【請求項5】
前記カチオン性ポリマーは、非イオン性単量体から誘導された構成単位dをさらに有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位dが、0モル%超40モル%以下である、請求項2に記載の汚泥脱水剤。
【請求項6】
請求項2又は5に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当該取消理由は、要するに、訂正前の請求項1~4に係る発明は、汚泥脱水剤を構成するカチオン性ポリマーの構成単位の含有割合と固有粘度で特定されるものであるところ、当該請求項1~4に係る発明のうち、各構成単位の含有割合と固有粘度が実施例から大きく外れる部分については、本件明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の記載からみて、当業者において、「脱水性能に優れる、すなわち濾水性がよく脱水ケーキの含水率をより低下できる汚泥脱水剤、及びこれを用いた汚泥脱水方法を提供する」(【0005】~【0007】)との課題を解決できると認識できる範囲のものといえないことを論拠として、当該請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである。
2 取消理由に対する当審の判断
(1)サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号所定のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを比較し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。
(2)サポート要件適合性について
ア 本件発明の課題は、前記1にも記載したとおり、「脱水性能に優れる、すなわち濾水性がよく脱水ケーキの含水率をより低下できる汚泥脱水剤、及びこれを用いた汚泥脱水方法を提供する」ことであるといえる(【0005】~【0007】)。
イ そして、発明の詳細な説明に開示される合成例1~8(実施例)については、濾水性(20秒濾ろ過量及びSSリーク量)がよく、脱水ケーキの含水率を低下できることが確認されているから(表4)、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
ウ これに対して、本件発明1~6に係る特許請求の範囲の記載は、前記第3のとおりであり、本件発明1は、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、「構成単位aは、30モル%以上60モル%以下」、「構成単位b及び構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、20モル%以上60モル%以下」、「構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計は、60モル%以上100モル%以下」であって、かつポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、「アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上0.5モル%以下」であって、かつ「カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での「固有粘度が0.7~3.5dL/g」であるカチオン性ポリマーを含むことが特定されており、当該カチオン性ポリマーは、合成例1~8(実施例)の組成から大きく外れるものではない。
エ 加えて、発明の詳細な説明には、カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃における固有粘度が0.7~3.5dL/gであるとより好ましく、固有粘度が前記数値範囲内であると汚泥脱水剤の濾水性を高め、脱水性能をより高めやすいこと(【0013】)、構成単位aは30モル%以上60モル%以下が好ましく、構成単位b及び構成単位cから選択される1種以上の構成単位は20モル%以上60モル%以下が好ましく、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計は60モル%以上であると好ましく、各構成単位が前記数値範囲内であると、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすいこと(【0022】、【0035】、【0037】)、アニオン性単量体から誘導された構成単位は0.5モル%以下が特に好ましく、アニオン性単量体が前記数値範囲内であると、荷電中和力が落ちて脱水性能が低下するのを防止できること(【0042】)が記載されている。そして、これらの好適とされる数値範囲は、本件発明1で特定される各構成単位及び固有粘度の数値範囲にほかならず、しかも、実施例で効果が確認された数値範囲から大きく外れるものでもないから、本件発明1の汚泥脱水剤について、合成例1~8(実施例)と同様の効果を奏することを推認できる。
オ よって、本件発明1及びこれを引用する本件発明3~4は、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲といえる。
カ また、本件発明2は、前記第3に記載したとおりのものであり、本件発明1の各構成単位の含有量及び固有粘度の数値範囲をさらに限定したものということができるから、本件発明2及びこれを引用する本件発明5~6についても同様に判断できる。
キ したがって、前記(1)の判断手法に従えば、本件発明1~6に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(3)小括
よって、取消理由に理由はない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由のうち、前記第4の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、甲第1号証(特開2009-39651号公報)である。
(1)申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性欠如)
設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、当該請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
設定登録時の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 甲第1号証の記載事項
下線は当審が付したものであり、「…」は省略を表す。
(1a)「【請求項1】
下水混合生汚泥あるいは下水消化汚泥に汚泥脱水剤を添加したのち、スクリュープレス型脱水機で脱水処理する汚泥の脱水方法において、該高分子汚泥脱水剤が、下記の高分子汚泥脱水剤群(a)、(b)および(c)より選択される一種以上であることを特徴とするスクリュープレス型脱水機用汚泥脱水剤。
…
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥脱水剤を下水混合生汚泥あるいは下水消化汚泥に添加した後、スクリュープレス型脱水機を用いて汚泥を脱水することを特徴とする汚泥脱水方法。」
(1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュープレス型脱水機を用いて汚泥を脱水する場合の汚泥脱水剤および汚泥脱水方法に関するものであり、詳しくは特定の化学組成の高分子汚泥脱水剤に関し、またそれを用いた汚泥脱水方法に関する。」
(1c)「【0031】
(合成例1)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン126.0gにソルビタンモノオレート6.0g及びポリリシノール酸/ポリオキシエチレンブロック共重合物0.6gを仕込み溶解させた。別に脱イオン水35.0gとアクリル酸(AACと略記)60%水溶液19.7gを混合し、これを35%水酸化ナトリウム水溶液17.8gで当量中和した。中和後、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)80%水溶液119.1g、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMCと略記)80%水溶液42.6g、アクリルアミド(AAMと略記)50%水溶液116.4g及びメチレンビスアクリルアミド0.1質量%水溶液3.3g(対単量体0.0018モル%)を各々採取し前記アクリル酸溶液に添加し、完全に溶解させた。また、pHを4.01に調節し、油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで15分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMC/DMQ/AAC/AAM=10/30/10/50(モル%)である。
【0032】
得られたエマルジョンにイソプロピルアルコール40%水溶液2.0g(対単量体0.5質量%)を加え、単量体溶液の温度を30~33℃に保ち、窒素置換を30分行った後、2、2’-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩化水素化物の10%水溶液0.35g(対単量体0.02質量%)を加え、重合反応を開始させた。反応温度を32±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル10.0g(対液2.0質量%)を添加混合して試験に供する試料(試料-1)とした。得られた試料をミューテック社製PCD滴定装置により荷電内包率を測定し、また静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS-7000)によって重量平均分子量を測定した。仕込み組成を表1に、結果を表2に示す。
【0033】
(合成例2)合成例1と同様な操作により単量体組成DMC/DMQ/AAM=20/40/40(モル%)からなる油中水型エマルジョンを重合し、転相剤を加え試料-2とした。仕込み組成を表1に、及び結果を表2に示す。
…
【0045】
[図:0001392035000016.jpg]
DMC:メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド
DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、AAC:アクリル酸、AAM:アクリルアミド、架橋剤添加量:対単量体モル%、MBA;メチレンビスアクリルアミド、AN:アクリロニトリル、NVF:N-ビニルホルムアミド
【0046】
[図:0001392035000017.jpg]
分散液粘度:mPa・s、分子量:単位は万、荷電内包率;%
【実施例1】
【0047】
下水余剰汚泥と生汚泥の混合汚泥(pH6.71、全SS分36400mg/L)200mLをポリビーカーに採取し、表2の試料-1~試料-3(架橋性水溶性高分子)、試料-4~試料-5(ポリアミジン)および試料-6~試料-8(低分子高カチオン性水溶性高分子)を対汚泥固形分0.6%添加し、ビーカー移し替え攪拌20回行った後、T-1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後の濾液量の測定、及びフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後50秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水した後、ケーキ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表3に示す。
【0048】
(比較試験1)表2の比較-1と比較-2(架橋性でない水溶性イオン性高分子)および試料-3と試料-4(分子量の高い高カチオン性水溶性高分子)を用いて、実施例1と同様な試験操作によって行った。結果を表3に示す。
【0049】
[図:0001392035000018.jpg]
10秒後濾液量:ml、ケーキ含水率:質量%濾布剥離性:○>△>×の順に良いことを示す。
【実施例2】
【0050】
下水消化汚泥(pH7.73、全SS分26000mg/L)200mLをポリビーカーに採取し、表2の試料-1~試料-3(架橋性水溶性高分子)、試料-4~試料-5(ポリアミジン)および試料-6~試料-8(低分子高カチオン性水溶性高分子)を対汚泥固形分0.40%添加し、ビーカー移し替え攪拌20回行った後、T-1179Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、10秒後の濾液量の測定、及びフロック強度(大きさ)を目視により測定した。その後50秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/m2で1分間脱水した後、ケーキ含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表4に示す。
…
【0052】
[図:0001392035000019.jpg]
10秒後濾液量:ml、ケーキ含水率:質量%濾布剥離性:○>△>×の順に良いことを示す。」
3 申立理由に対する当審の判断
事案にかんがみ、申立理由1、2について併せて検討する。
(1)甲第1号証に記載された発明
前記2(1a)によれば、甲第1号証には、スクリュープレス型脱水機を用いて汚泥を脱水する高分子汚泥脱水剤について記載されている。
そして、同(1c)の合成例2(試料-2)に注目して、段落【0032】~【0033】の記載及び(表1)と(表2)の記載事項を整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「単量体組成がメタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DMC)/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DMQ)/アクリルアミド(AAM)=20/40/40(モル%)であり、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミド(MBA)を対単量体で0.0005モル%含有させた油中水型エマルジョンに対し、イソプロピルアルコール40%水溶液2.0g(対単量体0.5質量%)を加え、単量体溶液の温度を30~33℃に保ち、窒素置換を30分行った後、2、2’-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩化水素化物の10%水溶液0.35g(対単量体0.02質量%)を加えて重合反応を開始し、反応温度を32±2℃で12時間重合させ反応を完結させ、重合後、生成した油中水型エマルジョンに転相剤としてポリオキシエチレントリデシルエーテル10.0g(対液2.0質量%)を添加混合したものである、スクリュープレス型脱水機を用いて汚泥を脱水する高分子汚泥脱水剤であって、分子量が700万であり、分散液粘度が370mPa・sである、高分子汚泥脱水剤。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DMC)」及び「アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DMQ)」は、それぞれ、本件発明1の「式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位b」及び「式(a1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位a」に相当する。
そして、甲1発明において、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、「DMQが40モル%であること」、「DMCが20モル%であること」及び「DMQとDMCの合計量が60モル%であること」、並びに「アニオン性単量体から誘導される単量体は含まれていないこと」は、本件発明1の「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aは、30モル%以上60モル%以下であり」、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、20モル%以上60モル%以下であり」及び「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計は、60モル%以上100モル%以下であり」、並びに「ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上0.5モル%以下であるカチオン性ポリマーを含有し」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「下記式(a1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位aと、
下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位b及び下記式(c1)で表される第三級アミン塩から誘導された構成単位cから選択される1種以上の構成単位と、を有し、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aは、30モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、20モル%以上60モル%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bと前記構成単位cとの合計は、60モル%以上100モル%以下であり、
ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体から誘導された構成単位が0モル%以上0.5モル%以下であるカチオン性ポリマーを含有し」「汚泥脱水剤。
【化1】
[図:0001392035000020.jpg]
(式(a1)中、R1及びR3は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R2は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化2】
[図:0001392035000021.jpg]
(式(b1)中、R4及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、R5は、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)
【化3】
[図:0001392035000022.jpg]
(式(c1)中、R7及びR8は、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基である。Aは、酸素原子又はイミノ基であり、Bは、炭素数2~4のアルキレン基である。X-は、陰イオンである。)」である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1は、「前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.7~3.5dL/gである」のに対し、
甲1発明は、そのような特定がない点。
イ 相違点についての検討
甲1発明には、「分散液粘度が370mPa・s」であることが特定されるものの、カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度の値の記載はないし、甲第1号証の内容を子細にみても、前記分散液粘度から固有粘度の値に換算できることや、換算した固有粘度の値が0.7~3.5dL/gを満たすことを示す記載もない。
また、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】には、「固有粘度は、ポリマー鎖の広がりや収縮の程度の指標となるポリマー物性である。固有粘度は、分子量の指標ともなり、ポリマーの分子量が大きいほど、固有粘度が高い傾向にある。ただし、固有粘度は、ポリマーを構成する単量体単位である単量体の構造や重合条件等による影響も受けるため、常に分子量と直接的な相関関係を示すものではない。」と、固有粘度はポリマー鎖の広がりや収縮の程度や分子量の指標となるポリマー物性であるが、ポリマーを構成する単量体単位である単量体の構造や重合条件等による影響も受けることが示されているところ、甲1発明の高分子脱水剤を構成する単量体の組成が、本件発明1の汚泥脱水剤の単量体の組成を満たすものだとしても、本件発明1と甲1発明の汚泥脱水剤のポリマー鎖の広がりや収縮の程度や重合条件等が同じであることを示す証拠がない以上、甲1発明の汚泥脱水剤の固有粘度の値が0.7~3.5dL/gになることを推認することはできない。よって、上記相違点1は実質的なものである。
そして、甲1発明に基づく容易想到性について検討するに、甲第1号証の記載を子細にみても、固有粘度の値を0.7~3.5dL/gにすることの動機付けとなるような記載はないし、これを記載する他の証拠もない。そうすると、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易想到な事項とはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件発明2について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明2は、本件発明1をさらに限定するものということができ、特に、「前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.9~2.8dL/gである」との特定、及び「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、30モル%以上60モル%以下」との特定を含むものである。
そうすると、本件発明2と甲1発明とを対比すると、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明2は、「前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、前記構成単位b及び前記構成単位cから選択される1種以上の構成単位は、30モル%以上60モル%以下」であるのに対し、
甲1発明は、(本件発明2の「構成単位b」に対応する)メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(DMC)は20モル%である点。
<相違点3>
本件発明2は、「前記カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度が0.9~2.8dL/gである」のに対し、
甲1発明は、そのような特定がない点。
イ 相違点についての検討
事案にかんがみ、相違点3から検討する。
固有粘度に関し、本件発明1は「0.7~3.5dL/g」であったのに対し、本件発明2は「0.9~2.8dL/g」であり、本件発明1をさらに限定したものといえる。そうすると、相違点3についての判断は、上記(2)イにおける相違点1の検討と事情は同じであるから、上記相違点3は実質的なものであるし、また、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易想到な事項とはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件発明3~6について
本件発明3~6と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1又は相違点3の点で相違するから、本件発明3~6は、前記(2)又は(3)での検討と事情は同じであり、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)まとめ
よって、申立理由1、2に理由はない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-701156