特許異議申立
2017-700042
道路学習装置
- 審判番号
- 2017-700042
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-126983外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月19日
- 審決日
- 2017年03月31日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社デンソー
- 【権利者代理人】特許業務法人 サトー国際特許事務所
- 【異議申立人】特許業務法人 にじいろ特許事務所
- 分類
- P1652.121-Y (G01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5953948号発明「道路学習装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5953948号の請求項1ないし4、6及び7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5953948号の請求項1ないし4、6及び7に係る特許(以下、「請求項1ないし4、6及び7に係る特許」という。また、請求項毎に「請求項1に係る特許」などという。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成24年6月4日に特許出願され、平成28年6月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年1月19日に特許異議申立人 特許業務法人にじいろ特許事務所(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
請求項1ないし4、6及び7に係る特許に係る発明(以下、各発明毎に「本件発明1」などという。)は、それぞれ、本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4、6及び7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
地図データを記憶する地図データ記憶手段(110)と、
自車両の位置を検出する自車位置検出部(120)と、
前記自車両の位置を含む走行データを記憶する走行データ記憶手段(130)と、
前記自車両が、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データで示された登録道路を走行しているか、当該地図データには示されていない未登録道路を走行しているか否かを判断する未登録道路走行判断手段(201)と、
前記未登録道路走行判断手段により前記未登録道路を走行したことが判断されると、この未登録道路の前記走行データ群を未登録道路走行データ群として前記走行データ記憶手段に記憶する未登録道路走行データ記憶制御手段(202)と、
前記走行データ記憶手段に記憶された未登録道路走行データ群から未登録道路の走行軌跡を未登録道路可能性軌跡として作成する未登録道路可能性軌跡作成手段(204)と、
前記未登録道路可能性軌跡を前記登録道路の地図データにマージするために所定の補正態様で形状補正し、第1軌跡とする第1の補正手段(205)と、
前記第1軌跡に対して前記未登録道路走行データを逐次マップマッチングさせるマップマッチング試行手段(203)と、
前記マップマッチング試行手段の実行後に前記第1軌跡に対して前記未登録道路走行データ群がマップマッチングしたか否かを判定する一次マップマッチング成否判定手段(208)と、
この一次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングしないことが判定されたときに、前記第1軌跡を前記第1の補正手段の補正態様と異なる補正態様で形状補正し、第2軌跡とする第2の補正手段(209)と、
前記第2軌跡に対して前記マップマッチング試行手段を再実行させ、前記未登録道路走行データ群がマップマッチングするか否かを判定する二次マップマッチング成否判定手段(210)と、
前記二次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングしないことが判定されたときに前記未登録道路走行データ群を破棄し、前記一次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングすることが判定されたときには前記第1軌跡を前記登録道路の地図データにマージして前記地図データ記憶手段に記憶させ、及び前記二次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングすることが判定されたときには前記第2軌跡を前記登録道路の地図データにマージして前記地図データ記憶手段に記憶させる新地図データ記憶制御手段(211)と
を備えてなる道路学習装置。
【請求項2】
前記未登録道路走行データ記憶制御手段(202)は、前記未登録道路走行データ群の他に、自車両が未登録道路進入の際に離脱した離脱側登録道路における離脱直前にある前記地図データが記憶した地点と、自車両が未登録道路から登録道路に復帰した際に復帰した復帰側登録道路における復帰直後にある前記地図データが記憶した地点とを前記走行データ記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1に記載の道路学習装置。
【請求項3】
前記第1の補正手段(205)は、前記未登録道路可能性軌跡を任意のパラメータで回転伸縮して当該未登録道路可能性軌跡の形状を補正し第1軌跡とする補正態様の第1経路形状補正手段(206)を有し、
前記第2の補正手段(209)は、前記第1軌跡を前記第1経路形状補正手段(206)の前記パラメータの値とは異なる値で回転伸縮して当該第1軌跡の形状を補正し第2軌跡とする補正態様の第2経路形状補正手段(209a)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の道路学習装置。
【請求項4】
前記第2の補正手段(209)は、前記第2経路形状補正手段(209a)により得た第2軌跡が二次マップマッチング成否判定手段でマップマッチングしないと判定されたときには、当該二次マップマッチング成否判定手段でマップマッチングすることが判定されるまで前記第2経路形状補正手段(209a)の前記パラメータの値を順次変更するパラメータ値変更手段(209b)を備え、
前記新地図データ記憶制御手段(211)は、前記パラメータ値変更手段(209b)によるパラメータの値の変更が全て終了しても前記二次マップマッチング成否判定手段でマップマッチングしないと判定されたときを条件に前記未登録道路走行データ群を破棄することを特徴とする請求項3に記載の道路学習装置。」
「【請求項6】
前記第1経路形状補正手段(206)及び第2経路形状補正手段(209a)が行う回転伸縮は、下記式(1)を用いた座標変換で行い、
・・・中略・・・
前記パラメータは、θ、a、dであることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の道路学習装置。
【請求項7】
前記自車位置検出手段は、自車両の走行時に自車両の位置及び方位を検出し自車位置データ及び方位データなどの走行データから自車両位置を検出することを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の道路学習装置。」
第3 特許異議申立ての理由
特許異議申立人は、証拠方法として、次に示す甲第1及び2号証を提出し、概ね以下の理由を主張している。
1 証拠方法
(1)甲第1号証:特開2009-192480号公報
(2)甲第2号証:特許第4645352号公報
2 理由の概要
(1)理由A
本件発明1は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項、周知技術及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである(以下、「理由A」という。)。
(2)理由B
本件発明2は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項、周知技術及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項2に係る特許を取り消すべきものである(以下、「理由B」という。)。
(3)理由C
本件発明3は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項、周知技術及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項3に係る特許を取り消すべきものである(以下、「理由C」という。)。
(4)理由D
本件発明4は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項、周知技術及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項4に係る特許を取り消すべきものである(以下、「理由D」という。)。
(5)理由E
本件発明6は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項、周知技術及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項6に係る特許を取り消すべきものである(以下、「理由E」という。)。
(6)理由F
本件発明7は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の事項、周知技術及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項7に係る特許を取り消すべきものである(以下、「理由F」という。)。
第4 当審の判断
1 各甲号証について
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、「ナビゲーション装置およびプログラム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、地図データで示される地図に配置されていない道路を特定する機能を有するナビゲーション装置に関する。
・・・
【0004】
ところで、ナビゲーション装置では、通常、GPS衛星からの情報に基づいてナビゲーション装置の現在位置を特定し、地図データで示される地図上のうち、そうして特定した現在位置に相当する道路上の位置を推定することにより、現在位置と地図上の位置との誤差を補正している。
【0005】
その一方、地図上に配置されていない道路を通過した際には、現在位置と地図上の位置との誤差を補正する基準たる道路そのものが存在しておらず、上記と同様には補正することができないため、通過軌跡の特定後などに改めて誤差の補正を行わなければならない。
【0006】
この点、上記特許文献2に記載の技術では、通過軌跡が地図における区画の境界に到達する毎に、それまでの通過軌跡を未配置道路の情報として登録し、それ以降の通過軌跡を別の未配置道路の情報として登録しているため、複数の区画にまたがる一連の未配置道路であるにも拘わらず、各通過軌跡それぞれに対して誤差の補正を別々に行う必要がある。
【0007】
この場合、未配置道路を構成する通過軌跡それぞれが一連のものであるにも拘わらず、別々に誤差の補正が行われてしまうため、例えば、ある通過経路の終点とそれに続く通過経路の始点とが一致しなくなってしまうなどして、一連の未配置道路として適切に特定できなくなってしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の区画にまたがるような未配置道路であっても、一連の未配置道路として適切に特定できるようにするための技術を提供することである。」(段落【0001】ないし【0008】)
(イ)「【0025】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
ナビゲーション装置1は、車両に搭載される装置(いわゆるカーナビゲーション装置)であり、図1に示すように、ナビゲーション装置1自身の現在位置を特定する位置特定部12、ユーザからの各種指示を入力するための操作スイッチ群14、ナビゲーション装置1外部との間で情報を入出力する外部情報入出力部20、各種情報を記憶する記憶部22との間でデータを入出力するデータ入力部24、地図表示画面やTV画面等の各種表示を行うための表示部26、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部28、ユーザからの音声を入力するための音声入力部30、CD,DVDまたはメモリカードなどのメディアとの間でデータを入出力するメディアドライブ32、各構成要素の動作を制御する制御部34、リモートコントロール端末(リモコン)42との間でデータ通信を行うリモコンセンサ44などを備えている。
【0026】
位置特定部12は、GPS受信機12a、ジャイロスコープ12b、車速センサ12cなどからなる。これらのうち、GPS受信機12aは、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナで受信してナビゲーション装置1自身の位置,方位,速度等を検出する。また、ジャイロスコープ12bは、車両に加えられる回転運動の大きさを検出する。また、車速センサ12cは、車両の前後方向の速度を車速パルス発生器から発生される車速パルスに基づいて検出する。そして、これらセンサ類は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用されることで、ナビゲーション装置1自身の現在位置を示す位置情報(座標)が取得される。なお、位置特定部12は、上述した構成のうちの一部からなるものとしてもよく、その他、ステアリングの回転センサ,各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0027】
操作スイッチ群14は、表示部26における表示面に沿って設置されたタッチパネル,および,表示部26の周辺に設けられたキースイッチなどからなる。
外部情報入出力部20は、FM放送信号や、道路近傍に配置されたVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報システム)サービス用の固定局から送信される電波ビーコン信号および光ビーコン信号を受信し、これら信号で特定される交通情報(渋滞情報,事故・工事の情報,交通規制の情報など)を取得する。
【0028】
記憶部22は、少なくとも複数の道路それぞれが配置された地図をデータ化してなる地図データや、位置検出精度向上のためのマップマッチング用データなどのデータを、記憶媒体(本実施形態においてはハードディスク)に記憶している。
【0029】
制御部34は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、位置特定部12の各検出信号から座標および進行方向を車両の現在位置として算出し、地図表示処理や後述する経路案内処理などを実行する。この「地図表示処理」とは、データ入力部24を介して読み込んだ現在位置付近の地図データや、操作スイッチ群14に対する操作またはリモコン42により指示された範囲の地図データを表示部26に表示させる処理である。」(段落【0025】ないし【0029】)
(ウ)「(2)制御部34による処理
以下に、制御部34により実施される各種処理について説明する。
(2-1)メインルーチン
はじめに、ナビゲーション装置1が起動された以降、繰り返し実施されるメインルーチンの処理手順を図2に基づいて説明する。
【0030】
このメインルーチンが起動されると、まず、位置特定部12からナビゲーション装置1自身の現在位置を示す現在位置情報が取得され、これで示される現在位置が特定される(s120)。
【0031】
次に、記憶部22に記憶されている地図データで示される地図のうち、上記s120にて特定された現在位置に対応する道路が特定される(s130)。
ここでは、まず、上記s120にて特定された現在位置を含む地図の区画に対応する地図データのデータ領域(以降「区画データ」という)が記憶部22から読み出され、その区画に配置された1以上の道路の形状がそれぞれ特定される。そして、こうして特定された1以上の道路の形状それぞれが、現時点において制御部34内蔵のRAMに記憶されている直近所定数の道路位置情報で規定される通過軌跡(後述する)と比較され、その一致度が所定のしきい値以上となっている道路(2以上ある場合は一致度が最も高い1の道路)が特定される。
【0032】
このs130で、現在位置に対応する道路が特定されたら(s130:YES)、その道路において上記s120にて特定された現在位置に最も近似する位置が、現在位置に相当する道路上の位置として推定される(s140)。
【0033】
なお、こうして推定された道路上の位置を示す位置情報(道路位置情報)それぞれは、ナビゲーション装置1が通過してきた通過軌跡を形成するものとして随時制御部34内蔵のRAMに随時記憶される。これに基づいて上記s130での道路の特定が行われる。
【0034】
こうして、s140が行われた後、プロセスが上記s120へと戻る。
一方、上記s130で、現在位置に対応する道路が特定されなければ(s130:NO)、以下に示す学習対象道路決定処理が実施された後(s150)、プロセスが上記s120へと戻る。
【0035】
この学習対象道路決定処理では、図3に示すように、まず、その実施に先立って特定された現在位置(以降「離脱現在位置」という)と、制御部34内蔵のRAMに記憶された道路位置情報のうち最新のもので示される位置(以降「離脱道路位置」という)と、が以降の処理で規定される軌跡の始点に関する離脱情報として制御部34内蔵のRAMに記憶される(s210)。
【0036】
次に、上記s120と同様に、ナビゲーション装置1自身の現在位置が特定される(s220)。
次に、上記s130と同様に、記憶部22に記憶されている地図データで示される地図のうち、上記s220にて特定された現在位置に対応する道路が特定される(s230)。
【0037】
このs230で、現在位置に対応する道路が特定されなければ(s230:NO)、その現在位置を示す現在位置情報が、上記離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する情報として制御部34内蔵のRAMに記憶された後(s240)、プロセスがs230へと戻る。
【0038】
こうして、現在位置に対応する道路が特定されるまで現在位置情報の記憶が繰り返され、その後、上記s230で道路が特定されたら(s230:YES)、その現在位置(以降「復帰現在位置」という)と、そうして特定された道路上の位置(以降「復帰道路位置」という)とが、上記離脱現在位置から続く軌跡の終点に関する復帰情報として制御部34内蔵のRAMに記憶される(s250)。
【0039】
次に、この時点で制御部34内蔵のRAMに記憶されている離脱情報で示される離脱現在位置,現在位置情報それぞれで示される現在位置,および,復帰情報で示される復帰現在位置により形成される軌跡を、地図データで示される地図に配置されていない道路(以降「未配置道路」という)と定義し(図4(a)参照)、この未配置道路の地図上の位置が補正される(s260)。
【0040】
ここでは、未配置道路の始点たる離脱現在位置が、離脱情報で示される離脱道路位置に重なり、未配置道路の終点たる復帰現在位置が、復帰情報で示される復帰道路位置に重なるように、その未配置道路の位置が次に示す手順により補正される。
(i)まず、未配置道路を、離脱現在位置が離脱道路位置に重なるように、地図におけるx軸方向,y軸方向それぞれに沿って平行移動させる(同図(b)参照)
(ii)上記(i)にて平行移動させた未配置道路を、その離脱現在位置,復帰現在位置,および,復帰道路位置それぞれが一直線上に並ぶように、離脱現在位置を中心として回転させる(同図(c)参照)
(iii)上記(ii)にて回転させた未配置道路を、復帰現在位置が復帰道路位置に重なるように、離脱現在位置を中心として地図におけるx軸方向およびy軸方向のいずれかまたは両方に沿って拡大させる(同図(d)参照)
こうして、未配置道路の位置が補正されたら、この未配置道路をデータ化するための道路データ変換処理(後述する)が実施された後(s270)、本学習対象道路決定処理が終了し、プロセスがメインルーチンへ戻る。」(段落【0029】ないし【0040】)
イ 甲第1号証の記載事項及び図面の記載から分かること
(ア)上記ア(ア)ないし(ウ)及び図1ないし4の記載によれば、甲第1号証には、ナビゲーション装置1が記載されていることが分かる。
(イ)上記ア(イ)及び(ウ)並びに図1ないし3の記載(特に、段落【0028】及び【0031】並びに図1ないし3の記載)によれば、ナビゲーション装置1は、地図データを記憶する記憶部22を備えることが分かる。
(ウ)上記ア(イ)並びに図1及び2の記載(特に、段落【0025】及び【0026】並びに図1及び2の記載)によれば、ナビゲーション装置1は、車両に搭載されるナビゲーション装置1自身の現在位置を特定する位置特定部12を備えることが分かる。
(エ)上記ア(ウ)及び図1ないし3の記載(特に、段落【0031】ないし【0038】及び図1ないし3の記載)によれば、ナビゲーション装置1は、該ナビゲーション装置1が通過してきた直近所定数の、各時点において取得された現在位置に対応する道路において、各時点において取得された現在位置に最も近似する位置を示す位置情報である道路位置情報及び現在位置を示す現在位置情報を記憶する制御部34内蔵のRAMを備えることが分かる。
(オ)上記ア(ウ)及び図1ないし3の記載(特に、段落【0031】ないし【0040】並びに図1ないし3の記載)によれば、ナビゲーション装置1は、その制御部34のS130における現在位置に対応する道路の特定及び学習対象道路決定処理により、記憶部22に記憶されている地図データで示される地図のうち、位置特定部12により特定されたナビゲーション装置1自身の現在位置に対応する道路が特定されるか否かを判断し、ナビゲーション装置1自身の現在位置に対応する道路が特定されない場合、特定された現在位置(以下、「離脱現在位置」という。)及びRAMに記憶された道路位置情報のうち最新のもので示される位置(以下、「離脱道路位置」という。)からなる離脱情報をRAMに記憶させるとともに、次にナビゲーション装置1自身の現在位置に対応する道路が特定されるまで離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する情報を形成する情報をRAMに記憶させ、ナビゲーション装置1自身の現在位置に対応する道路が特定されたら、その時のナビゲーション装置1自身の現在位置(以下、「復帰現在位置」という。)及びナビゲーション装置1自身の現在位置に対応する道路を復帰情報としてRAMに記憶させ、離脱現在位置、離脱現在位置から続く現在位置の軌跡及び復帰現在位置により形成される軌跡を、地図データで示される地図に配置されていない道路(以下、「未配置道路」ともいう。)としている(特に、段落【0031】及び図2のs130の記載や、段落【0037】並びに図3のs230及びs240の記載を参照。)から、ナビゲーション装置1は、車両が、記憶部22に記憶された地図データで示される地図上に配置された道路を走行しているか、当該地図データで示される地図上に配置されていない道路を走行しているか否かを判断していることは明らかである。
そうすると、ナビゲーション装置1は、車両が、記憶部22に記憶された地図データで示される地図上に配置された道路を走行しているか、当該地図データで示される地図上に配置されていない道路を走行しているか否かを判断する制御部34の学習対象道路決定処理による判断手段を備えることが分かる。
(カ)上記ア(ウ)及び図1ないし3の記載(特に、段落【0036】ないし【0039】並びに図1ないし3の記載)によれば、ナビゲーション装置1は、制御部34の学習対象道路決定処理による判断手段により地図データで示される地図に配置されていない道路を走行したことが判断されると、離脱現在位置、離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する現在位置情報及び復帰現在位置を未配置道路の走行データ群として制御部34内蔵のRAMに記憶する制御部34の学習対象道路決定処理による記憶判断手段を備えていることが分かる。
(キ)上記ア(ウ)並びに図1及び4の記載(特に、段落【0039】並びに図1及び4の記載)によれば、ナビゲーション装置1は、制御部34内蔵のRAMに記憶された未配置道路の走行データ群としての離脱現在位置、離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する現在位置情報及び復帰現在位置から未配置道路を定義する制御部34の学習対象道路決定処理による未配置道路の定義手段を備えることが分かる。
(ク)上記ア(ウ)並びに図1、3及び4の記載(特に、段落【0040】並びに図1、3及び4の記載)によれば、ナビゲーション装置1は、未配置道路を記憶部22に記憶された地図データで示される地図上に配置された道路の地図データにマージするために未配置道路の始点たる離脱現在位置が、離脱情報で示される道路位置情報の離脱道路位置に重なり、未配置道路の終点たる復帰現在位置が、復帰情報で示される道路位置情報の復帰道路位置に重なるように、その未配置道路の位置を補正し、この未配置道路をデータ化するための道路データ変換処理をする制御部34の学習対象道路決定処理による道路データ変換手段を備えることが分かる。
ウ 甲1発明
上記ア及び上記イを総合して、本件発明1の表現にならって整理すると、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「地図データを記憶する記憶部22と、
車両に搭載されるナビゲーション装置1自身の現在位置を特定する位置特定部12と、
前記ナビゲーション装置1が通過してきた直近所定数の、各時点において取得された現在位置に対応する道路において、各時点において取得された現在位置に最も近似する位置を示す位置情報である道路位置情報及び現在位置を示す現在位置情報を記憶する制御部34内蔵のRAMと、
前記車両が、前記記憶部22に記憶された地図データで示される地図上に配置された道路を走行しているか、当該地図データで示される地図上に配置されていない道路を走行しているか否かを判断する制御部34の学習対象道路決定処理による判断手段と、
前記制御部34の学習対象道路決定処理による判断手段により前記地図データで示される地図に配置されていない道路を走行したことが判断されると、離脱現在位置、離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する現在位置情報及び復帰現在位置を未配置道路の走行データ群として前記制御部34内蔵のRAMに記憶する制御部34の学習対象道路決定処理による記憶判断手段と、
前記制御部34内蔵のRAMに記憶された未配置道路の走行データ群としての離脱現在位置、離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する現在位置情報及び復帰現在位置から未配置道路を定義する制御部34の学習対象道路決定処理による未配置道路の定義手段と、
前記未配置道路を前記地図データで示される地図上に配置された道路の地図データにマージするために前記未配置道路の始点たる離脱現在位置が、離脱情報で示される前記道路位置情報の離脱道路位置に重なり、前記未配置道路の終点たる復帰現在位置が、復帰情報で示される前記道路位置情報の復帰道路位置に重なるように、その未配置道路の位置を補正し、この未配置道路をデータ化するための道路データ変換処理をする制御部34の学習対象道路決定処理による道路データ変換手段と、
を備えてなるナビゲーション装置。」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、「地図情報更新システム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている.
(ア)「【0009】
以下、本発明をカーナビゲーションシステムに適用した一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、全体のシステムを概略的に示している。この図1において、本カーナビゲーションシステムは、カーナビゲーション装置(車載端末に相当)1と情報センタ2からなり、カーナビゲーション装置1が保有している地図情報或いは後述するように情報センタ2から取得した更新情報を表示するシステムとなっている。この場合、カーナビゲーション装置1は、利用者の嗜好に合わせて表示画面をカストマイズすると共に、カスタマイズした更新情報を情報センタ2に登録して他の利用者に公開することが可能となっており、このような動作を実現するためにカーナビゲーション装置1には編集機能、編集した編集情報を評価する評価機能、評価結果がOKの編集情報を情報センタ2に送信するための通信機能などが備えられている。
【0010】
カーナビゲーション装置1には、上述した機能を実現するために、地図情報提示手段3、地図照合手段4、地図情報編集手段(編集手段に相当)5、評価入力手段(評価手段に相当)6、位置測定手段7、入力手段8、通信手段(送信手段に相当)9、制御手段10を備えていると共に、地図情報11、更新情報12、利用者情報13を保持している。
【0011】
地図情報提示手段3は、自己が保持している地図情報或いは更新情報から最新の地図情報を取得し、取得した地図情報をもとに表示するための表示情報を作成して利用者に表示する。また、地図情報提示手段3は、一般に地図の拡大、縮小、指定座標周辺の表示、POI(Point of Interest=目的地点情報)データの名前、ジャンルなどによる検索等の機能を備える。
【0012】
地図照合手段4は、車両の現在位置が道路上に補正するマップマッチング処理を実行する際に、参照すべき道路を照合する。
地図情報編集手段5は、更新情報を反映した表示情報を生成し、地図情報提示手段3によって利用者に表示するもので、後述するように地図情報に登録されていない道路を走行した場合は、新規道路として道路情報を自動的に編集したり、利用者による操作に応じてランドマークを登録したりする機能を備えている。
【0013】
通信手段9は、情報センタ2との通信を行う。
制御手段10は、他の手段に指示を与えることによりカーナビゲーション装置1の処理を制御する。つまり、通信手段9により受信された情報センタ2からの表示情報を地図情報提示手段3によって利用者に提示する。提示された情報に従って利用者が入力手段8により入力を行い、その入力結果を通信手段9によって情報センタ2に送信する。これらの繰り返しで利用者との対話処理が行われる。これらの手段はカーナビゲーション装置1に本来的に備えられた構成要素を利用して構成されており、特に、本実施例では、後述するように入力手段8により道路情報或いはランドマークなどの地図情報に対して修正、削除、追加などの更新を実行可能となっている。
また、制御手段10は、編集した更新情報を更新情報12に追加、更新する。これにより、地図情報提示手段3は、更新情報を反映した状態で利用者に対して地図情報を提示するようになる。
【0014】
位置測定手段7によって車両の現在の位置が測定され、地図情報提示手段3による現在位置周辺の表示が可能となる。
評価入力手段6は、利用者に対して更新情報に対する評価情報の入力を可能とする。
カーナビゲーション装置1で保持する利用者情報は、情報センタ2側との通信の際に利用者識別のために用いられる。
一方、情報センタ2は、通信手段14、制御手段15、更新情報編集手段16、更新情報送信手段17、受信対象選択手段18、認証手段19を備え、更新情報データベース(以下、DB)20、利用者DB21を保持している。
【0015】
通信手段14は、カーナビゲーション装置1との通信を行う。
制御手段15は、更新情報編集手段16、更新情報送信手段17、受信対象選択手段18、認証手段19に指示を与えることにより情報センタ2での処理を制御する。
更新情報編集手段16は、更新情報DB20に利用者DB21と関連付けられた状態で更新情報を格納する。
更新情報送信手段17は利用者DB21に登録された選択情報をもとにカーナビゲーション装置1に更新情報を送信する。」(段落【0009】ないし【0015】)
(イ)「【0017】
図2は、カーナビゲーション装置1が編集した更新情報を情報センタ2に登録するまでの更新情報登録処理の流れを示している。この更新情報登録とは、編集した道路情報或いはランドマークなどの更新情報を情報センタ2に登録するための処理である。
制御手段10は、所定の編集タイミングとなったときは、地図情報編集手段5に対して地図情報を編集することを指示する。この場合、地図情報としては道路地図とランドマーク情報であり、それぞれ編集方法が異なる。
【0018】
図3は、カーナビゲーション装置1で地図情報としての道路情報を編集する際のフローチャートである。この図3において、カーナビゲーション装置1の位置測定手段7が車両の現在位置を測定したときは(S1)、地図照合手段4は、車両の走行位置を道路上となるように補正するマップマッチング処理を実行する(S2)。そして、マップマッチング処理の対象となる所定の範囲内にマップマッチング対象の照合道路がある場合において(S3:YES)、履歴が満杯でないときは(S7:NO)、履歴を登録し(S8)、履歴が満杯のときは(S7:YES)、最古の履歴を削除してから(S10)、履歴を登録する(S8)。この場合、マップマッチング対象の照合道路が地図情報に保持されているときは、位置記憶したものでないことから(S9:NO)、そのまま終了となる。
このような動作により、カーナビゲーション装置1は、過去一定期間の補正履歴を保持する。
【0019】
ここで、地図照合手段4は、位置測定手段7による位置測定結果に対して、マップマッチング処理の対象となる所定の範囲(図4中に破線の円で示す範囲)内に照合するべき道路が存在する場合(図4に示すA1)から存在しなくなった場合(図4に示すB1、B2)には、新規道路の構成点であると判断し、保持している過去の補正履歴から平均補正量を算出し、位置測定結果に対して補正を行った位置を記憶する。これにより、正確な位置を履歴として記憶することができる。
【0020】
そして、車両の走行によりマップマッチング処理の対象となる所定の範囲内に照合すべき道路が再び存在するようになった時点(図4に示すA2)で、記憶している構成点列の前後に、始点及び終点からの既存道路上の最近傍点(図4に示すC1、C2)を追加した構成点列(図中に破線で示す)を、新規道路として位置記憶する。この場合、所定の範囲は固定ではなく、過去の補正履歴から補正距離の分散を求めそれに応じて動的に定めてもよい。
以上の動作により、カーナビゲーション装置1は、道路情報として登録されていない新規道路の位置を追加記憶することができる。
【0021】
ところで、このように追加記憶した新規道路を更新情報として直ちに更新情報12に登録した場合には、更新情報としての信頼性が低く、そのまま使用したのでは不具合を生じる恐れがある。
そこで、カーナビゲーション装置1は、図3に示すようにマップマッチング対象の照合道路があったときは(S3:YES)、そのマップマッチング対象の照合道路が上述のように位置記憶された新規道路かを判断し(S9)、位置記憶されていたときは、その新規道路を更新情報として追加してから(S11)、位置記憶をクリアする(S12)。これにより、新規道路を更新情報として登録する際の信頼性を高めることができる。
【0022】
次に、カーナビゲーション装置1によるランドマークの編集について述べる。カーナビゲーション装置1は、利用者による入力手段8に対する操作によってランドマークの新規追加が要求された場合は、さらに名称、ジャンル等の情報を入力手段8によって利用者に入力させ、位置測定手段7よる位置測定結果と結びつけて更新情報に追加する。位置については地図情報提示手段3によって提示された地図情報中の位置を入力手段8によって利用者に指定させても良い。ランドマークの位置変更については、地図情報提示手段3によって提示された地図情報中から、入力手段8によって既存ランドマークを選択した場合に位置変更が可能であることを利用者に提示し、利用者が位置変更を要求した場合には、地図情報提示手段3中の選択されたランドマークの位置を、入力手段8によって移動できるようにする。
以上のような動作により、カーナビゲーション装置1は、ランドマーク情報を更新することができる。
【0023】
ところで、上述したような新規道路の情報或いはランドマーク情報などの更新情報を情報センタ2で共有した場合、以降においては、情報センタ2と契約している利用者のカーナビゲーション装置1では、更新情報を利用者の所望に応じて反映することができるようになることから、更新情報の信頼性が重要となる。
【0024】
そこで、本実施例では、次のようにしてカーナビゲーション装置1により更新情報の評価を行い、信頼性を確認した更新情報のみを情報センタ2に登録するようにした。
カーナビゲーション装置1による更新情報としての道路情報の評価は次のように行われる。カーナビゲーション装置1は、地図照合手段4で送信用評価済みでない更新情報上の道路と照合を行った場合に評価を行う。具体的には、図5に示すように更新情報上の道路(図中に太線で示す)、位置測定手段7による位置測定結果Di(i=1,2,…,n)(図中の○印で示す)、地図照合手段4によるマップマッチング後の位置測定結果(矢印の根本位置)とが得られたとする。進行方向右側を正、左側を負とし、補正距離Xi(i=1,2,…,n)を標本と見なして所定の危険率αのもとで母平均の区間推定を行う。母分散については、位置測定手段7の特性、過去の統計情報などから値が得られる場合にはその値を用い、得られない場合は未知として推定を行う。所定の基準値をδとして、得られた母平均の区間が(-δ,δ)の区間に含まれる場合には基準を満たしたとし、更新情報を情報センタ2に送信する。得られた標本数nが所定の値未満である場合には、結果の信頼性が低く基準を満たさないと判断して送信しないようにしてもよい。基準を満たした場合、満たさなかった場合のいずれでも更新情報の送信用評価済みフラグを設定する。
【0025】
以上の動作により、カーナビゲーション装置1は、更新情報としての道路情報の信頼性が高いと判断した場合には、当該更新情報を情報センタ2に送信して登録することができる。」(段落【0017】ないし【0025】)
(ウ)「【0026】
次に、カーナビゲーション装置1によるランドマーク情報の評価について述べる。入力手段8によって更新情報に含まれるランドマークが目的地または経由地として設定された場合に、車両が停車(ACCオフ)した時点での位置測定手段7による位置測定結果と、更新情報に含まれるランドマークの位置との距離Lを求め、その距離Lが所定距離L1未満であった場合に評価を行う。L1以上であった場合には、ランドマークにまで到達していないものとして評価を行わない。最終的な評価は、L1未満であるLが所定距離L2未満である場合に基準を満たしたとして、更新情報を情報センタ2に送信する。基準を満たした場合、満たさなかった場合のいずれでも更新情報の送信用評価済みフラグを設定する。
【0027】
以上の評価では、位置測定手段7による位置計測結果を用いているが、位置測定手段7において高精度位置測定手段(例えば絶対的な緯度、経度の入力)が選択可能である場合には、高精度位置測位手段に切替えて評価を行っても良い。これにより、更新情報の評価の信頼性を一層高めることができる。
また、以上の評価では、基準を満たさなかった場合には送信用評価済みフラグを設定し、以降の送信用評価を抑止するようにしたが、評価結果を基に更新情報を修正するようにしてもよい。このような再評価は次のように行う。
【0028】
図6(a)に示すように、更新情報B1,B2(図中に○印で示す)、評価時の位置計測結果E1,E2(図中の□印)が得られたとすると、修正された結果F1,F2,F3,F4(図中に△印で示す)を次のようにして求める。更新情報による折れ線、評価時による位置計測結果による折れ線について、長さの差を考慮して互いのデータの対応点を求め(図6(b))、対応点どうしの座標平均をとったものを修正結果Fとする。このような修正により、更新情報と評価時の位置測定結果との中間位置を修正結果F1,F2,F3,F4として求めることができる。この場合、修正結果F1,F2,F3,F4における前後する各点での偏角の差(図6(c)のθ)を求め、最小値が所定値以下である場合には対応する点を間引く処理を加えても良い。そして、修正された結果と修正前の更新情報とを入れ替え、対応する送信用評価済みフラグを未設定状態にする。
【0029】
以上のように編集した更新情報を利用者が情報センタ2に登録する場合、入力手段8によって登録の指示を行う。このとき同時に利用者を識別するための認証情報もカーナビゲーション装置1から情報センタ2に伝えられる。つまり、図2に示すように、カーナビゲーション装置1は、更新情報の送信を開始したときは、認証依頼を情報センタ2に送信する。」(段落【0026】ないし【0029】)
イ 甲2技術
上記ア及図1ないし6の記載によれば、甲第2号証には、次の事項からなる技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認める。
「カーナビゲーション装置1と情報センタ2からなる地図情報更新システムにおいて、
位置測定手段7による測定結果に対して新規道路の構成点であると判断し、位置測定結果に対して補正を行った位置を記憶し、そして、記憶している構成点列の前後に、始点及び終点からの既存道路上の最近傍点を追加した構成点列を、新規道路として位置記憶し、その後、マップマッチング対象の照合道路があったときは、そのマップマッチング対象の照合道路が位置記憶された新規道路かを判断し、位置記憶されていたときは、その新規道路を更新情報として追加してから、位置記憶をクリアすることにより、道路情報として登録されていない新規道路の位置を追加記憶するようにした、地図照合手段4と、
地図照合手段4で送信用評価済みでない更新情報上の道路と照合を行った場合に、更新情報上の道路、位置測定手段7による位置測定結果Di(i=1,2,…,n)、地図照合手段4によるマップマッチング後の位置測定結果とが得られたとすると、進行方向右側を正、左側を負とし、補正距離Xi(i=1,2,…,n)を標本と見なして所定の危険率αのもとで母平均の区間推定を行い、所定の基準値をδとして、得られた母平均の区間が(-δ,δ)の区間に含まれる場合には基準を満たしたとし、更新情報を情報センタ2に送信する評価手段と、
基準を満たさなかった場合には、更新情報B1,B2、評価時の位置計測結果E1,E2が得られたとすると、更新情報による折れ線、評価時による位置計測結果による折れ線について、長さの差を考慮して互いのデータの対応点を求め、対応点どうしの座標平均をとったものを修正結果Fとするような修正により、更新情報と評価時の位置測定結果との中間位置を修正結果F1,F2,F3,F4として求める修正手段と、
修正された結果と修正前の更新情報とを入れ替え、対応する送信用評価済みフラグを未設定状態にする再評価手段と、
を備えるようにした技術。」
2 理由Aについて
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構成または技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明における「地図データ」は、本件発明1における「地図データ」に相当し、以下同様に、「記憶部22」は「地図データ記憶手段」に、「車両」は「自車両」に、「車両に搭載されるナビゲーション装置1自身の現在位置を特定する」は「自車両の位置を検出する」に、「位置特定部12」は「自車位置検出部」に、「ナビゲーション装置1が通過してきた直近所定数の、各時点において取得された現在位置に対応する道路において、各時点において取得された現在位置に最も近似する位置を示す位置情報である道路位置情報及び現在位置を示す現在位置情報」は「自車両の位置を含む走行データ」に、「制御部34内蔵のRAM」は「走行データ記憶手段」に、「地図データで示される地図上に配置された道路」は「地図データで示された登録道路」又は「登録道路」に、「地図データで示される地図上に配置されていない道路」は「地図データには示されていない未登録道路」又は「未登録道路」に、「制御部34の学習対象道路決定処理による判断手段」は「未登録道路走行判断手段」に、「離脱現在位置、離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する現在位置情報及び復帰現在位置」は「この未登録道路の走行データ群」に、「未配置道路の走行データ群」又は「未配置道路の走行データ群としての離脱現在位置、離脱現在位置から続く現在位置の軌跡を形成する現在位置情報及び復帰現在位置」は「未登録道路走行データ群」に、「制御部34の学習対象道路決定処理による記憶判断手段」は「未登録道路走行データ記憶制御手段」に、「未配置道路」は「未登録道路の走行軌跡」又は「未登録道路可能性軌跡」に、「未配置道路を定義する」は「未登録道路の走行軌跡を未登録道路可能性軌跡として作成する」に、「制御部34の学習対象道路決定処理による未配置道路の定義手段」は「未登録道路可能性軌跡作成手段」に、「未配置道路の始点たる離脱現在位置が、離脱情報で示される道路位置情報の離脱道路位置に重なり、未配置道路の終点たる復帰現在位置が、復帰情報で示される道路位置情報の復帰道路位置に重なるように、その未配置道路の位置を補正し、この未配置道路をデータ化するための道路データ変換処理をする」は「所定の補正態様で形状補正し、第1軌跡とする」に、「制御部34の学習対象道路決定処理による道路データ変換手段」は「第1の補正手段」に、「ナビゲーション装置」は「道路学習装置」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、
「地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出部と、
前記自車両の位置を含む走行データを記憶する走行データ記憶手段と、
前記自車両が、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データで示された登録道路を走行しているか、当該地図データには示されていない未登録道路を走行しているか否かを判断する未登録道路走行判断手段と、
前記未登録道路走行判断手段により前記未登録道路を走行したことが判断されると、この未登録道路の前記走行データ群を未登録道路走行データ群として前記走行データ記憶手段に記憶する未登録道路走行データ記憶制御手段と、
前記走行データ記憶手段に記憶された未登録道路走行データ群から未登録道路の走行軌跡を未登録道路可能性軌跡として作成する未登録道路可能性軌跡作成手段と、
前記未登録道路可能性軌跡を前記登録道路の地図データにマージするために所定の補正態様で形状補正し、第1軌跡とする第1の補正手段と
を備えてなる道路学習装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本件発明1においては、「前記第1軌跡に対して前記未登録道路走行データを逐次マップマッチングさせるマップマッチング試行手段と、
前記マップマッチング試行手段の実行後に前記第1軌跡に対して前記未登録道路走行データ群がマップマッチングしたか否かを判定する一次マップマッチング成否判定手段と、
この一次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングしないことが判定されたときに、前記第1軌跡を前記第1の補正手段の補正態様と異なる補正態様で形状補正し、第2軌跡とする第2の補正手段と、
前記第2軌跡に対して前記マップマッチング試行手段を再実行させ、前記未登録道路走行データ群がマップマッチングするか否かを判定する二次マップマッチング成否判定手段と、
前記二次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングしないことが判定されたときに前記未登録道路走行データ群を破棄し、前記一次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングすることが判定されたときには前記第1軌跡を前記登録道路の地図データにマージして前記地図データ記憶手段に記憶させ、及び前記二次マップマッチング成否判定手段によりマップマッチングすることが判定されたときには前記第2軌跡を前記登録道路の地図データにマージして前記地図データ記憶手段に記憶させる新地図データ記憶制御手段と
を備えてなる」のに対して、甲1発明においては、そのような手段を備えているか否か不明である点(以下、「相違点」という。)。
(2)判断
ア 相違点の検討
まず、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「前記第1軌跡に対して前記未登録道路走行データを逐次マップマッチングさせるマップマッチング試行手段と、前記マップマッチング試行手段の実行後に前記第1軌跡に対して前記未登録道路走行データ群がマップマッチングしたか否かを判定する一次マップマッチング成否判定手段と」(以下、「特定事項A」という。)について検討する。
本件発明1の特定事項Aにおいて、第1軌跡に対して未登録道路走行データを逐次マップマッチングさせるところ、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「前記未登録道路走行判断手段により前記未登録道路を走行したことが判断されると、この未登録道路の前記走行データ群を未登録道路走行データ群として前記走行データ記憶手段に記憶する未登録道路走行データ記憶制御手段(202)と、
前記走行データ記憶手段に記憶された未登録道路走行データ群から未登録道路の走行軌跡を未登録道路可能性軌跡として作成する未登録道路可能性軌跡作成手段(204)と、
前記未登録道路可能性軌跡を前記登録道路の地図データにマージするために所定の補正態様で形状補正し、第1軌跡とする第1の補正手段(205)と、」との記載及び同明細書の段落【0021】ないし【0023】における「次のステップS8では、未登録道路走行データ群で示される自車位置群を順次つないで未登録道路可能性軌跡Mを作成する(未登録道路可能性軌跡作成手段204)。・・・なお、前記経路形状補正手段206及び/又は連結形状補正手段207による補正後の軌跡を第1軌跡M1と称する。」との記載によれば、第1軌跡は、1回目に未登録道路を走行した際の未登録道路走行データ群から作成されたものである。
してみると、本件発明1における特定事項Aは、マップマッチング試行手段により、1回の未登録道路の走行に基づいた未登録道路走行データ群から作成された第1軌跡に対して、当該第1軌跡の作成元データである1回目に未登録道路を走行した際の未登録道路走行データを逐次マップマッチングさせ、一次マップマッチング成否判定手段により、当該マップマッチングがされたか否かを判定しているものということができる。
一方、甲2技術は、地図照合手段4において、新規道路として位置記憶した後、マップマッチング対象の照合道路があったときは、そのマップマッチング対象の照合道路が位置記憶された新規道路かを判断し、位置記憶されていたとき、その新規道路を更新情報として追加してから、位置記憶をクリアする、すなわち、少なくとも2回目以降に新規道路(未登録道路)を走行した際に、マップマッチングされた新規道路(未登録道路)を更新情報としている。
さらに、甲2技術は、評価手段により、地図照合手段4で送信用評価済みでない更新情報上の道路と照合を行った場合に、所定の基準値をδとして、得られた母平均の区間が(-δ,δ)の区間に含まれる場合には基準を満たしたとし、更新情報を情報センタ2に送信する、すなわち、少なくとも3回目以降に新規道路を走行した際に、所定の基準を満たした場合に、更新情報を情報センタ2に送信している。
以上を考慮すると、甲2技術は、本件発明1における特定事項Aを備えたものということはできない。
また、甲2技術は、新規道路(未登録道路)を更新情報として登録する際の信頼性を高めるため(甲第2号証の段落【0021】、【0023】及び【0024】を参照。)に、複数回の新規道路(未登録道路)の走行を条件として、新規道路(未登録道路)を更新情報として登録するのであるから、これを1回の新規道路(未登録道路)の走行に基づいて、新規道路(未登録道路)を更新情報として登録することには阻害要因があるともいえる。
そうすると、甲1発明において、甲2技術を適用したとしても、本件発明1の特定事項Aを備えることはできないから、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、特許明細書に記載された所定の効果を奏するものである。
イ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号に該当するものではなく、理由Aによって取り消すことができない。
3 理由BないしFについて
請求項2ないし4、6及び7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明2ないし4、6及び7は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記2の検討を踏まえると、本件発明2ないし4、6及び7は、甲1発明及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、請求項2ないし4、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号に該当するものではなく、それぞれの特許について申立てがされた理由BないしFによって取り消すことができない。
第5 結語
上記第4のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700042