特許異議申立
2024-700153
情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
- 審判番号
- 2024-700153
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-059483
- 登録番号
- 7331187
- 請求日
- 2024年02月21日
- 審決日
- 2024年04月16日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【権利者代理人】伊藤 健太郎
- 【権利者代理人】久下 範子
- 【権利者】国立大学法人滋賀大学
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【権利者代理人】伊藤 健太郎
- 【権利者代理人】久下 範子
- 【異議申立人】大森 隆一
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 倉橋 紀夫
- 審判官 青木 良憲
- 分類
- P1651.121-Y (G01C) / P1651.537-Y (G01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7331187号発明「情報処理装置、情報処理方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7331187号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7331187号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年3月31日に出願され、令和5年8月14日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月22日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年2月21日に特許異議申立人大森隆一(以下、「申立人」という。)は、本件特許の請求項1~8に係る特許について特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれの請求項に係る発明に対応して「本件発明1」等という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける受付部と、
自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する取得部と、
前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する予測部と、
前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部と、
前記スコアと、前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップとを出力する出力部と、
前記リスク地点の少なくとも1つを含む経路変更指示を受け付けることに応じて、前記経路変更指示に含まれるリスク地点を回避する経路を決定する経路変更部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記インシデントの数に応じた態様で前記リスク地点及び/又は前記経路を提示する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記リスク地点に関連付けられたリスク要素に基づいて、前記リスク要素に関連して発現し得るインシデントを低減するために、自動運転車が走行する前に取り得る策を出力する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記リスク地点及び/又は前記経路を、そのリスクの高さに応じて異なる態様で提示する、請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記スコアに基づいて保険料の割引率を決定し、
前記出力部は、前記割引率をさらに出力する、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記受付部は、前記受け付けた経路の変更を受け付け、
前記取得部は前記変更した経路について環境情報を取得し、
前記予測部は前記変更した経路についてインシデントの数を予測し、
前記評価部は、前記変更した経路のインシデントの数に基づいて前記スコアを算出し、
前記出力部は前記変更した経路のスコアを出力する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける工程と、
自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する工程と、
前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する工程と、
前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する工程と、
前記スコアと、前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップとを出力する工程と、
前記リスク地点の少なくとも1つを含む経路変更指示を受け付ける工程と、
前記経路変更指示に含まれるリスク地点を回避する経路を決定する工程と
を含み、
経路が決定されると、前記決定された経路について、前記取得する工程、前記予測する工程、前記算出する工程、及び前記出力する工程を実行する、方法。
【請求項8】
1又は複数のコンピュータに、
自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける処理と、
自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する処理と、
前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する処理と、
前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する処理と、
前記スコアと、前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップとを出力する処理と、
前記リスク地点の少なくとも1つを含む経路変更指示を受け付ける処理と、
前記経路変更指示に含まれるリスク地点を回避する経路を決定する処理と
を実行させ、
経路が決定されると、前記決定された経路について、前記取得する処理、前記予測する処理、前記算出する処理、及び前記出力する処理を実行させる、プログラム。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第7号証(以下、各甲号証に付された数字に対応して「甲1」等という。)を提出し、本件特許を取り消すべき理由として、次の申立理由1~3を主張している。
1 申立理由1
本件発明1~8は、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、それらの特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2
本件発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3
本件発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
4 証拠方法
甲1:特開2004-171482号公報
甲2:特開2005-283395号公報
甲3:国際公開第2014/157367号
甲4:特開2003-123185号公報
甲5:特開2002-310680号公報
甲6:国際公開第2020/148854号
甲7:特開2002-259708号公報
第4 各甲号証について
1 甲1に記載された発明
甲1(特に、【0001】、【0004】、【0026】~【0031】、【0033】~【0036】、【0039】~【0041】、【0043】~【0052】、【0056】~【0058】、【0071】~【0079】、全図参照。)には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「自動車200が自らの走行を制御するオートドライブの機能を有し、
自動車200に搭載された車載装置10に備えられたルート選択部16であって、ルート決定基礎情報が入力されて、ドライブのルートを選択するルート選択部16と、
ルート上の気象情報及び交通情報を取得する気象情報取得部38及び交通情報取得部40と、
ルートに含まれた位置に対応付けられたオートドライブ時の位置リスクを抽出し、ルートに含まれる位置毎の気象情報及び交通情報に基づいて位置リスクを個別に補正し、補正した位置リスクの和をとった積算値をルートリスクとして算出するリスク算出部30と、
算出したルートリスクを表示し、複数ルートのそれぞれに関するルートリスクがある場合、複数のルートのうちでルートリスクが最も低いルートを強調して表示する表示部20と、
を備えるテレマティクスシステム100。」
2 甲2に記載された事項
(1)「【請求項2】
請求項1の車載ナビゲーション装置において、
前記画面表示制御手段は、前記複数の経路のそれぞれを現在地から目的地まで表したルート全体画面を前記ルート選択画面において表示し、
前記事故多発地帯表示手段は、前記事故多発地帯の存在を示す事故多発地帯マークを、前記ルート全体画面の事故多発地帯に対応する位置に表示することを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項2の車載ナビゲーション装置において、
前記複数の経路のいずれか一つを選択するルート選択手段と、
前記ルート選択手段により複数の前記事故多発地帯マークが表示されている経路が選択されたとき、その複数の事故多発地帯マークのいずれかを選択するためのカーソルを表示するカーソル表示手段とをさらに備え、
前記画面表示制御手段は、前記ルート選択手段により選択された一つの経路について、前記カーソルにより選択された事故多発地帯マークが表している事故多発地帯の名称情報を含むルート情報画面を前記ルート選択画面において表示することを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3の車載ナビゲーション装置において、
前記カーソルにより選択された事故多発地帯マークが表している事故多発地帯を回避する個別回避ルートを、前記ルート選択手段により選択された経路に基づいて探索する個別回避ルート探索手段をさらに備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。」
(2)「【0001】
本発明は、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内する車載ナビゲーション装置およびナビゲーションシステムに関する。」
(3)「【0018】
図2(a)のルート選択画面は、左右2つの画面に分割されている。左側の画面には、ルート探索によって探索された現在地21から目的地22までの経路a,bおよびcのそれぞれが現在地から目的地まで表されている。以下の説明では、この左側の画面をルート全体画面という。このルート全体画面において、経路選択ボタン23によりユーザが経路a~cのいずれかを選択すると、選択された経路が他の経路とは異なる表示形態によって強調表示される。図2(a)では、経路aが選択されて強調表示されている様子を示している。
【0019】
また、上記のルート全体画面において、経路上に事故多発地帯が存在する場合には、その事故多発地帯に対応する位置に、事故多発地帯の存在を示すマーク(事故多発地帯マークという)が表示される。経路aに対しては事故多発地帯マーク24と25が表示されており、経路bに対しては事故多発地帯マーク26が表示されている。一方、経路c上には事故多発地帯が存在せず、事故多発地帯マークが表示されていない。以下の説明では、経路cのようにその経路上に事故多発地帯が存在しない経路のことを全体回避ルートという。事故多発地帯マーク24~26は、地図データに含まれている事故多発地帯データに基づいて、次のようにして表示される。
【0020】
事故多発地帯データでは、道路データの各ノードごとに、そのノードが事故多発地帯に該当するか否かが予め設定されている。事故多発地帯に該当すると事故多発地帯データにおいて設定されているノードが探索された経路上にある場合は、そのノードに対応する位置に事故多発地帯マークが表示される。これにより、図2(a)の事故多発地帯マーク24~26が表示される。なお、事故多発地帯データにおいてどのノードが事故多発地帯に該当するかは、各ノードが対応する地点の過去の事故発生件数の累計などに基づいて決めておくことができる。
【0021】
上記の事故多発地帯マーク24の周囲には、カーソル27が表示されている。このカーソル27は、ユーザの操作によって、事故多発地帯マーク24と25の間を移動することができる。このカーソル27によっていずれかの事故多発地帯がユーザに選択されると、図2(a)の右側のような画面が表示される。以下の説明では、この右側の画面をルート情報画面という。ここでは、事故多発地帯マーク24が選択された場合のルート情報画面を示している。このように、選択されている経路に対して複数の事故多発地帯マークが表示されている場合には、その事故多発地帯マークのいずれかを選択するためのカーソルがルート全体画面に表示される。なお、事故多発地帯マークが1つの場合には、カーソルを表示してもしなくてもよい。」
(4)「【0025】
以上説明した事故多発地帯の情報表示30の右には、回避ボタン33が表示されている。この回避ボタン33において、ユーザが「はい」の部分を選択すると、経路aに基づいて、事故多発地帯であるX地点を避けるようなルートが新たに探索される。また、ルート決定ボタン34を押すと、そのときルート全体画面において選択している経路が推奨経路に設定され、目的地までのルート案内が開始される。」
(5)「【0029】
以上説明したルート選択画面を表示するときに制御回路11において実行される処理のフローチャートを図3に示す。このフローチャートは、ユーザの操作によって目的地の情報が入力されたときに実行される。ステップS1では、入力された目的地の情報に基づいて目的地の設定を行う。このとき、周知のように目的地としたい施設等のジャンルや名称、あるいは住所や電話番号などの情報をユーザが入力したり、地図上の地点を指定したりすることによって、目的地が設定される。なお、DVD-ROM19の地図データには、この目的地設定を行うための検索データが含まれている。
【0030】
ステップS2では、ステップS1において設定された目的地までのルート探索を前述のようにして行う。その結果、単数または複数の経路が探索される。上記の例では、経路aとbがこのステップS2において探索される。ステップS3では、ステップS2において探索された全ての経路上に事故多発地帯が存在するか否かを判定する。その結果、探索された全ての経路上に事故多発地帯が存在する場合はステップS4へ進み、事故多発地帯が存在しない経路が少なくとも1つ以上ある場合は、ステップS5へ進む。」
(6)「【0032】
次に、図3のステップS5において実行されるルート選択画面の表示処理の内容を示す図4のフローチャートについて説明する。ステップS51では、図3のステップS2およびS4で探索された経路について、図2(a)の左側に示すようなルート全体画面を表示する。ステップS52では、地図データ中の事故多発地帯データに基づいて、ステップS51で表示したルート全体画面において、経路上の事故多発地帯データに対応する位置に事故多発地帯マークを表示する。これにより、図2(a)の事故多発地帯マーク24~26が表示される。」
(7)「【0035】
ステップS57では、選択された経路の事故多発地帯マークのいずれかにカーソルを表示する。これにより、図2(a)のカーソル27が表示される。ステップS58では、ステップS57で表示したカーソルによって選択された事故多発地帯の情報を、ステップS55で表示したルート情報画面に表示する。このとき、その情報表示が事故多発地帯についてのものであることを示すために、事故多発地帯マークを合わせて表示する。さらに、選択されていない事故多発地帯についても事故多発地帯マークを表示する。これにより、図2(a)の事故多発地帯の情報表示30と、事故多発地帯マーク31および32がルート情報画面に表示される。
【0036】
ステップS59では、図2(a)の回避ボタン33において「はい」の部分がユーザによって選択されることにより、回避ルートの探索を指示されたか否かを判定する。回避ボタン33により回避ルートの探索が指示された場合はステップS81へ進む。
【0037】
ステップS81では、カーソルにより選択されている事故多発地帯について、前述したような個別回避ルートを探索する。次のステップS82では、ステップS81で探索された個別回避ルートを強調表示する。これにより、図2(b)の経路a’が探索されて強調表示される。ステップS82を実行した後は、ステップS60へ進む。一方、ステップS59において回避ルートの探索を指示されなかったと判定した場合は、ステップS81とS82を実行せずにステップS60へ進む。」
(8)「
[図:0001410267000001.jpg]
[図:0001410267000002.jpg]
[図:0001410267000003.jpg]
」
3 甲3に記載された事項
(1)「[0056] 危険箇所41は、急ブレーキ発生場所のうち急ブレーキの発生回数や発生頻度の高い場所を示す。この危険箇所41は、急ブレーキの発生回数や発生頻度に応じて異なる態様で表示される。本実施形態では、矢印の数により急ブレーキの発生回数又は発生頻度を示すこととしている。即ち、矢印が1つの危険箇所41は発生回数又は発生頻度が最も少なく、矢印が2つの危険箇所41は発生回数又は発生頻度が次に少なく、矢印が3つの危険箇所41は発生回数又は発生頻度が最も多いことを示している。」
(2)「[0058] 交通事故多発エリア43は、交通事故が多発する領域を示す。なお、交通事故多発エリア43は、交通事故の発生回数や発生頻度に応じて異なる態様で表示することとしてもよい。
ゾーン30エリア44は、制限速度が時速30kmである領域を示す。
表示切替タブ45は、表示の切り替え(ソート)を行うための操作部であり、詳しくは後述する。」
(3)「[図3]
[図:0001410267000004.jpg]
」
(4)「[図5]
[図:0001410267000005.jpg]
」
4 甲4に記載された事項
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、道路交通情報を集配信する技術にかかり、特に道路交通に関して危険な情報の集配信に関する。」
(2)「【0110】次に、端末101で危険情報を表示するための処理について説明する。端末101は、地図情報に基づいて地図を表示する機能を有し、図21に示すような地図を表示する。地図情報はサーバ104から取得してもよいし、端末101内に保持していてもよい。ここで、自車の位置は191に示す車、危険地区は192に示すハッチングした丸印となる。自車位置191は、GPS情報に基づいて表示し、危険地区192は、危険地区情報記憶部210から取得して表示する。従って、自車位置の分からない端末(例えば、GPSユニットを備えないパーソナルコンピュータ)では、自車位置192は表示されない。ここで、マウスなどのポインティングデバイス193を危険地区192上へ移動すると、その危険情報の概要194が表示される。また危険地区192の表示は、事故の種別(死亡事故、人身事故、物損事故、ユーザ登録、自動登録)により色を分けても良い。例えば死亡事故の場合には赤色としてもよい。」
(3)「【0151】リンクコスト計算部2707は、ヒヤリハットデータベース2704、地図記憶部2705、リンク旅行時間記憶部2706を参照し、経路の基準を元にした各道路リンクの評価計算を行う。リンクコスト最短となる経路の探索方法としてはダイクストラ方法(http://gtr01.adin.hamamatsu-u.ac.jp:8080/Apl24.html)があり、本実施形態ではこれを用いることができる。このアルゴリズムの概要について述べる。
【0152】この方法は、道路ネットワーク上の各交差点への最小コストを、始点から1つずつ確定し、徐々に範囲を広げていき、最終的にすべての交差点への最短コスト経路を求める方法である。ここで道路長を重視した(道路)リンクコストとしては、以下の式(11)で示される式とする。
【0153】
リンクコスト= 道路長 + Sa×道路の危険指数 …(11)
Sa:危険度
【0154】また旅行時間を重視した(道路)リンクコストとしては、以下の式(12)で示される式とする。
【0155】
リンクコスト = 道路旅行時間 + Sb×道路の危険指数 …(12)
Sb:危険度
【0156】ここで、危険度Sa、Sbは、ユーザが許容する危険度(「危険を考慮しない」「やや危険回避」「危険回避」)に応じて数値化する。たとえば、「危険を考慮しない」場合には、Sa、Sb共に値を0とする。「やや危険回避」の場合には、道路長(または旅行時間)の項のオーダーと、危険の度合いの項(式(11)、式(12)の右辺2項目)のオーダを一致させるようにする。即ち、Saを平均的な道路長を危険指数の平均値で割った値、Sbを平均的な旅行時間を危険指数の平均値で割った値、またはこの値に近い値とする。「危険回避」の場合には、危険の度合いの項(式(11)、式(12)の右辺2項目)の0でない最小値が、道路長(または旅行時間)の最小値を越えないようにSa(またはSb)を設定する。即ちSaは、道路長の最大値を、道路の危険指数の最小値で割った値、Sbは、道路の旅行時間の最大値を、道路の危険指数の最小値で割った値とする。
【0157】ここで、危険指数は危険の程度を示す指数であり、ある道路の危険地区の数の加重和であり、危険情報テーブル1069を参照して、式(13)により定義される。
【0158】
【数3】
[図:0001410267000006.jpg]
【0159】ここで危険の種類による重みwiは、例えば、死亡事故であれば10、死亡事故以外の人身事故であれば5、物損事故であれば3、その他の自動で転送された危険情報および住民からの通報の場合は1としてもよい。そして、これらの情報は、ドライバまたは住民に開示する情報のみを対象とする。
【0160】経路探索部2708では、リンクコスト計算部2707で計算された各リンクコストを参照し、ユーザ(住民、ドライバ)から入力された出発地点および目的地点に基づいて、最適経路を求める。」
(4)「
[図:0001410267000007.jpg]
」
5 甲5に記載された事項
(1)「例えば、図8に示すように、ナビ画面には交差点のエリアバッファに有る程度近づくと、「この先前方に危険度ランクAの交差点がある」ことをメッセージ表示すると共に音声を発生する。そして、さらに交差点に近づくと「まもなく交差点である」ことを伝える。また、交差点は点滅されて示されると共に、この交差点のポリゴン画像15に危険度ランク、事故件数、事故内容、交差点の周囲の状況等をメッセージ表示すると共に、音声で伝える。」(5頁左欄45行~右欄3行)
(2)「
[図:0001410267000008.jpg]
」
6 甲6に記載された事項
(1)「[0049] 続いて、情報処理装置15は、スコアに応じた自動車保険料の割引率を算出して(ステップS22)、処理を終了する。例えば、情報処理装置15は、スコアと当該割引率との関係を示す情報テーブルを参照して、当該割引率を算出する。典型的には、スコアが高いほどユーザXが安全な運転支援に対する貢献度が高いと判断される。そのため、情報テーブルは、スコアが高いほど自動車保険料の割引率が高くなるようなテーブルが採用される。
[0050] なお、情報処理装置15は、算出したスコアおよび割引率をディスプレイ175に表示してもよい。また、情報処理装置15は、通信インターフェイス174を介して、算出したスコアおよび割引率をユーザXの端末装置(例えば、スマートフォン)あるいは車載機器101に送信してもよい。これにより、ユーザXは、自身が受けるメリットを把握することができる。」
7 甲7に記載された事項
(1)「【0061】図6は、図5のステップST10における画面表示の例を示す図である。ここでは、安全装備に関し、月初めから現在までに収集されたデータに基づいて、各項目の合格率を示すと共に、その月末時における保険料の割引率の予測値を示している。すなわち、毎月末に、一ヶ月間の操作/装着状態を数値化して集計し、保険の掛け金へ反映させることを前提とした表示例である。図6に示すように、ある年の11月1日から18日の間では、シートベルトの装着、シートベルトのショルダーアンカーの高さ調整、及びチャイルドシートの装着状態については合格率が100パーセントであった。しかし、ヘッドレストレイトの高さ調整に関しては、合格率は30パーセント、シートの背もたれの角度調整については、合格率は80パーセントであった。これに基づき、11月18日現在において、その月末における保険料の割引率の予測値は、基準値から3パーセントの割引率となることが示されている。また、すべての項目について合格率が100パーセントとなると、割引率は5パーセントとなることが併せて表示されており、使用者に対して改善の余地があることを示唆している。
【0062】このように、各検出結果及び自動車の維持又は管理に関するデータの変動に応じて自動車保険料の予測値が算出されるので、その自動車の使用者は、データの変動に基づいて算出される保険料の予測値、すなわち、安全でない運転をした場合の保険の掛け金の増加や、安全装備を的確に装着した場合の保険の掛け金の減少を予測値が表示される毎に把握することができる。その結果、その自動車の使用者に対し、安全な運転、安全装備の適切な装着と共に、自動車に対する適切なメンテナンスを行うことを促すことができる。
【0063】図7は、図5のステップST10における画面表示の例を示す図である。ここでは、自動車の運転操作に関し、月初めから現在までに収集されたデータに基づいて、使用者の運転レベルと、先月までの保険料の割引率をグラフ化して示している。すなわち、毎月末に、一ヶ月間の運転レベルの評価を数値として集計し、保険の掛け金を反映させることを前提として表示がされている。運転レベルは、運転技術や、安全運転の度合いを点数化し、数値として評価することができるようにしたものである。例えば、運転技術の評価は、自動車に搭載されているGセンサによって、タイヤをロックさせることなくスムースに減速をしているかどうか、カーブに差し掛かったときに無理なハンドル操作をしていないか等を検出し、点数化することにより行う。また、安全運手の度合いの評価は、車間距離センサーによって、走行速度に応じた安全な車間距離を確保しているかどうかを検出し、点数化することにより行う。点数化された運転レベルは、図7に示すように、棒グラフとして表示され、5月と比較して9月の運転レベルが向上していることが認識できる。また、保険の掛け金の割引率が折れ線グラフとして表示されている。運転レベルの向上に伴って、保険の掛け金の割引率も上昇しており、使用者が支払うべき自動車保険料が安くなっていることが分かる。
【0064】上記の図6においては、一ヶ月を単位として保険の掛け金の割引率を算出し、図7においては、一ヶ月間の運転レベルを集計しているが、各検出結果及び自動車の維持又は管理に関するデータの変動がある毎にリアルタイムに運転レベルを表示することも可能である。すなわち、各検出結果及び自動車の維持又は管理に関するデータの変動に応じてリアルタイムに自動車保険料が算出することによって、その自動車の使用者は、データの変動に基づいて算出される保険料、すなわち、安全でない運転をした場合の保険の掛け金の増加や、安全装備を的確に装着した場合の保険の掛け金の減少を常時把握することができる。その結果、その自動車の使用者に対し、安全な運転、安全装備の適切な装着と共に、自動車に対する適切なメンテナンスを行うことを促すことができる。」
第5 当審の判断
1 申立理由1について
(1)本件発明1
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「自動車200」は「自らの走行を制御するオートドライブの機能を有し」ているから前者の「自動運転車」に相当し、以下同様に「ルート」は「経路」に、「ルート決定基礎情報」は「走行する経路に関する情報」に、それぞれ相当するから、後者の「自動車200に搭載された車載装置10に備えられたルート選択部16であって、ルート決定基礎情報が入力されて、ドライブのルートを選択するルート選択部16」は前者の「自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける受付部」に相当する。
(イ)後者の「気象情報及び交通情報」は「位置リスクを個別に補正」するものであり、リスクとなり得る情報といえるから、後者の「環境情報」に相当し、よって、後者の「ルート上の気象情報及び交通情報を取得する気象情報取得部38及び交通情報取得部40」は前者の「自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する取得部」に相当する。
(ウ)後者の「オートドライブ時の位置リスク」と前者の「自動運転車により発生しやすいインシデントの数」とは、「自動運転車により発生しやすいリスクに関する情報」という限りにおいて一致する。また、後者の「位置リスク」は、位置に基づくリスクであり、当然そのリスクが発生しやすい位置も抽出しているといえるから、後者の「オートドライブ時の位置リスクを抽出し」と前者の「前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する」とは、「前記経路上で自動運転車により発生しやすいリスクに関する情報と、自動運転車により発生しやすいリスク地点とを予測する」という限りにおいて一致する。さらに、後者の「補正した位置リスクの和をとった積算値をルートリスクとして算出する」と前者の「前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する」とは、「前記リスクに関する情報に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示す点数を算出する」という限りにおいて一致する。
よって、後者の「ルートに含まれた位置に対応付けられたオートドライブ時の位置リスクを抽出し、ルートに含まれる位置毎の気象情報及び交通情報に基づいて位置リスクを個別に補正し、補正した位置リスクの和をとった積算値をルートリスクとして算出するリスク算出部30」と前者の「前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する予測部と、前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部」とは、「前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいリスクに関する情報と、前記経路上の、自動運転車により発生しやすいリスク地点とを予測する部と、前記リスクに関する情報に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示す点数を算出する部」という限りにおいて一致する。
(エ)後者の「複数のルートのうちでルートリスクが最も低いルートを強調して表示する」は、ルートを表示する場合一般的には地図上に表示することから、後者の「算出したルートリスクを表示し、複数ルートのそれぞれに関するルートリスクがある場合、複数のルートのうちでルートリスクが最も低いルートを強調して表示する表示部20」と前者の「前記スコアと、前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップとを出力する出力部」とは、「前記点数と、前記経路に基づいてマップとを出力する出力部」という限りにおいて一致する。
(オ)後者の「テレマティクスシステム100」は前者の「情報処理装置」に相当する。
(カ)よって、両者は、以下の点で一致する。
「自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける受付部と、
自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する取得部と、
前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいリスクに関する情報と、前記経路上の、自動運転車により発生しやすいリスク地点とを予測する部と、
前記リスクに関する情報に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示す点数を算出する部と、
前記点数と、前記経路に基づいてマップとを出力する出力部と、
を備える情報処理装置。」
(キ)そして、両者は、以下の点で相違する。
[相違点1]
「予測する部」及び「スコアを算出する部」に関し、本件発明1は、「前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する予測部」と「前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部」であるのに対し、甲1発明は、ルートに含まれた位置に対応付けられたオートドライブ時の位置リスクを抽出し、ルートに含まれる位置毎の気象情報及び交通情報に基づいて位置リスクを個別に補正し、補正した位置リスクの和をとった積算値をルートリスクとして算出するリスク算出部30である点。
[相違点2]
「出力部」に関し、本件発明1は、「前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップ」を出力しているのに対し、甲1発明は、ルートを表示しているものの「リスク地点に基づいてリスクマップ」を表示するものではない点。
[相違点3]
本件発明1は、「前記リスク地点の少なくとも1つを含む経路変更指示を受け付けることに応じて、前記経路変更指示に含まれるリスク地点を回避する経路を決定する経路変更部」を備えるのに対し、甲1発明は、そのような経路変更部を備えていない点。
イ 判断
(ア)相違点1について
a 「インシデント」とは、一般的に出来事や事象を意味する言葉であり、数値で表せるものではないところ、本件発明1では、「インシデントの数」という数値を予測し、その「インシデントの数」に基づいてスコアを算出している。
一方で甲1発明の「位置リスク」とは、甲1の【0041】に、
「リスクデータベース32は、地図上の位置に、位置毎の事故の発生率である位置リスクを対応付けて格納する。本発明に係る位置は、住所、緯度・経度、交差点名、地名、及び道路名を含む。事故の発生率は、例えば0.003が0.3%に相当する。リスクデータベース32は、それぞれの位置における過去の事故の発生率に基づいて作成される。」
と記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)ように、事故の発生確率であり、位置リスクそのものが数値で表せるものである。そして、甲1発明のルートリスクは、この「位置リスク」という数値の和をとった積算値である。
よって、甲1発明の「位置リスク」は本件発明1の「インシデント」にも「インシデントの数」にも相当せず、同様に「補正した位置リスクの和をとった積算値」より算出される「ルートリスク」は「前記インシデントの数に基づいて」算出される「スコア」に相当しない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点である。
b そして、甲2~7には、上記第4の2~7に記載した事項が記載されているところ、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲2、3及び5~7のいずれにも記載も示唆もされていない。
一方、上記第4の4(3)に示したように、甲4には、「ある道路の危険地区の数の加重和である危険指数を算出する」という技術(以下、甲4記載技術」という。)が記載されている。
ここで、本件発明1は「インシデント」と「リスク地点」とを含むものであり、一般的に用語が異なるものは、その発明特定事項が異なるといえる。そして、本件特許の発明の詳細な説明を参酌すると、【0024】に
「1つのリスク要素に複数のインシデントが関連付けられる場合もある。交差点の例では、右折が最もリスクが高く、次に左折のリスクが高く、直進が最もリスクが低いことが想定される。従って、一実施形態では、リスク要素「右折の交差点」には2つのインシデント「対向車接触」及び「歩行者接触」が関連付けられ、リスク要素「左折の交差点」には1つのインシデント「歩行者接触」が関連付けられ、直進の交差点にはインシデントが関連付けられないようにすることができる。」
と記載されているように、1つの地点に複数のインシデントが関連付けられることがあることから、本件発明1において、「インシデント」と「リスク地点」とは異なるものであるといえる。
そして、甲4記載技術の「ある道路の危険地区」とは、リスク地点ということができ、甲4記載技術は、リスク地点の数に基づいて、危険指数を算出しているといえ、本件発明1のインシデントの数に基づいて、スコアを算出することとは異なる。
よって、甲4にも、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は記載されていない。
c 仮に、甲4記載技術の「ある道路の危険地区」がインシデントといえ、甲4記載技術がインシデントの数に基づいて、危険指数を算出しているといえるとしても、甲4記載の危険指数は、表示されるものではなく、リンクコストを求めるために用いられ、さらに当該リンクコストは、最適経路を求めるために用いられている。
よって、甲1発明において表示されるものである「ルートリスク」とは、その機能が異なるものであり、甲1発明の「ルートリスク」に代えて甲4記載技術の危険指数を採用しようとする動機付けがない。
d そして、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が適宜なし得る設計的事項であるとも、周知技術であるともいえない。
したがって、当業者が相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に容易に想到し得るという理由は見いだせないから、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲2~7に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~6
本件発明2~6は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2~6は、当業者が甲1発明及び甲2~7に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明7
本件発明7は、実質的に本件発明1の「情報処理装置」という物の発明を「方法」という方法の発明にしたものを含むものである。
甲1には、甲1発明に係る方法の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されている。
そして、上記(1)で対比、判断したのと同様に、本件発明7は、当業者が甲1方法発明及び甲2~7に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明8
本件発明8は、実質的に本件発明1の「情報処理装置」に関する発明を「プログラム」に関する発明にしたものを含むものである。
甲1には、甲1発明に係るプログラムの発明(以下、「甲1プログラム発明」という。)が記載されている。
そして、上記(1)で対比、判断したのと同様に、本件発明8は、当業者が甲1プログラム発明及び甲2~7に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、申立人が認定した甲1発明の「受信したルートに含まれる位置に対応付けて格納された位置リスク、気象情報及び交通情報に基づいて、当該ルートをドライブした場合の事故の発生率であるルートリスク(位置リスクの和をとった積算値)を算出するリスク算出部30」が本件発明1の「前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する予測部と、前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部」に相当すると主張している。
しかしながら、上記(1)アで対比したとおり、申立人が認定した甲1発明の「受信したルートに含まれる位置に対応付けて格納された位置リスク、気象情報及び交通情報に基づいて、当該ルートをドライブした場合の事故の発生率であるルートリスク(位置リスクの和をとった積算値)を算出するリスク算出部30」は本件発明1の「前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する予測部と、前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部」に相当せず、概略上記相違点1で相違する。
そして、上記1(1)イで判断したとおり、当業者が相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に容易に想到し得るという理由は見いだせない。
よって、申立人の主張は、採用できない。
(6)小括
以上のとおり、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1によって取り消すことはできない。
2 申立理由2について
(1)申立人の主張の概要
本件特許の請求項2には
「前記出力部は、前記インシデントの数に応じた態様で前記リスク地点及び/又は前記経路を提示する」
と記載されているが、具体的に「インシデントの数」に応じて「前記リスク地点及び/又は前記経路」をどのような態様で提示するかについて発明の詳細な説明に記載されていないため、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。
(2)発明の詳細な説明に記載された事項
本件特許の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【0011】
上記情報処理装置において、出力部は、インシデントの数に応じた態様でリスク地点及び/又は経路を提示してもよい。この態様によれば、ユーザは、予測されたインシデントの数に応じて把握される各リスク地点及び/又は経路のリスクの高低を確認することができる。」
(3)判断
本件発明2の
「前記出力部は、前記インシデントの数に応じた態様で前記リスク地点及び/又は前記経路を提示する」
という発明特定事項は、上記(2)のとおり発明の詳細な説明の【0011】に記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0011】の記載から、本件発明2の解決しようとする課題は、ユーザが「予測されたインシデントの数に応じて把握される各リスク地点及び/又は経路のリスクの高低を確認することができる」情報処理装置を提供することと認められる。そして、当該課題を解決する手段として、発明の詳細な説明には、【0011】に記載されたとおり出力部が「インシデントの数に応じた態様で前記リスク地点及び/又は前記経路を提示する」ことが記載されている。
よって、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決する手段が反映されている。
以上より、その具体的な態様が発明の詳細な説明に記載されているか否かに関わらず、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(4)小括
以上のとおり、本件発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、申立理由2によって取り消すことはできない。
3 申立理由3について
(1)申立人の主張の概要
本件特許の請求項2には
「前記出力部は、前記インシデントの数に応じた態様で前記リスク地点及び/又は前記経路を提示する」
と記載されており、請求項2に従属する請求項4には
「前記リスク地点及び/又は前記経路を、そのリスクの高さに応じて異なる態様で提示する」
と記載されている。
請求項4に記載の事項は、本件特許の明細書の【0043】に説明があるが、請求項2に記載の事項は、発明の詳細な説明に記載されていないため、「インシデントの数に応じた態様」と「そのリスクの高さに応じて異なる態様」とは、同じ意味であるのか否か明確でない。
(2)判断
ア 本件特許の特許請求の範囲には、
「インシデントの発生しやすいリスク地点」(請求項1、7及び8)
「インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する」(請求項1、7及び8)
「リスク要素に関連して発現し得るインシデント」(請求項3)
と記載されており、当該特許請求の範囲の記載から、インシデントとリスクとは関連したものであることが理解できる。
イ さらに、発明の詳細な説明を参酌すると、例えば、
「インシデントの数に基づいて、経路を自動運転の車両が走行する場合のリスクを可視化することができる。」(【0009】)
「出力部は、インシデントの数に応じた態様でリスク地点及び/又は経路を提示してもよい。この態様によれば、ユーザは、予測されたインシデントの数に応じて把握される各リスク地点及び/又は経路のリスクの高低を確認することができる。」(【0011】)
「交差点の例では、右折が最もリスクが高く、次に左折のリスクが高く、直進が最もリスクが低いことが想定される。従って、一実施形態では、リスク要素「右折の交差点」には2つのインシデント「対向車接触」及び「歩行者接触」が関連付けられ、リスク要素「左折の交差点」には1つのインシデント「歩行者接触」が関連付けられ、直進の交差点にはインシデントが関連付けられない」(【0024】)
と記載されており、【0011】の上記記載から、インシデントの数がリスクの高低を表していることは明らかであり、【0024】の上記記載から、リスクが高い場合ほどインシデントの数が多いことが理解できる。
ウ よって、本件発明2の「前記インシデントの数に応じた態様で前記リスク地点及び/又は前記経路を提示する」と本件発明4の「前記リスク地点及び/又は前記経路を、そのリスクの高さに応じて異なる態様で提示する」とは、実質的に同じ態様でリスク地点及び/又は経路を提示することができることは、当業者にとって自明である。
さらにいえば、本件発明2は、本件特許の【0043】に記載された
「出力部127は、リスクの高さに応じてリスク地点を示す記号の大きさを変えて提示してもよいし、リスクの高さに応じて異なる記号を用いてリスク地点を提示してもよいし、リスクの高さに応じてリスク地点及び/又は経路の色を変えて提示してもよい。」
と同様の態様でリスク地点及び/又は経路を提示することができることは、当業者にとって自明である。
したがって、本件発明2は明確である。
(3)小括
以上のとおり、本件発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、申立理由3によって取り消すことはできない。
第6 むすび
したがって、申立人がした特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700153