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特許異議申立

2025-700039

燃料電池用制御装置および燃料電池システム

審判番号
2025-700039
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-114459
登録番号
7517275
請求日
2024年12月26日
審決日
2025年03月07日
公報発行日
2025年04月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社SOKEN
  • 【権利者代理人】弁理士法人ゆうあい特許事務所
  • 【権利者】株式会社デンソー
  • 【権利者代理人】弁理士法人ゆうあい特許事務所
  • 【異議申立人】林 尚子
審判長/審判官
  • 審判長 河端 賢
  • 審判官 倉橋 紀夫
  • 審判官 中尾 麗
分類
P1652.113-Y (H01M) / P1652.121-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7517275号発明「燃料電池用制御装置および燃料電池システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7517275号の請求項3及び10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7517275号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~14に係る出願は、令和3年7月9日に出願され、令和6年7月8日にその特許権の設定登録がされ、令和6年7月17日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年12月26日に特許異議申立人林尚子(以下、「申立人」という。)は、本件特許の請求項3及び10に係る特許について特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項3及び10に係る発明(以下、請求項3に係る発明を「本件発明1」、請求項10に係る発明を「本件発明10」という。)は、特許請求の範囲の請求項3及び10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項3】 燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池(5)に用いられる燃料電池用制御装置であって、 前記燃料電池に要求される電流である電流指令値が所定値以下であるとき、回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機(4)に印加する電圧を制御することで前記送風機の回転を制御することによって、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を前記電流指令値が前記所定値よりも大きいときと比較して減少させる制御部(S106)を備え、 前記制御部は、前記電流指令値が前記所定値以下であるとき、前記送風機に電圧を印加する時間および前記送風機に電圧を印加しない時間を制御することにより、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を減少させる燃料電池用制御装置。」 「【請求項10】 燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池(5)と、 回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機(4)と、 前記燃料電池に要求される電流である電流指令値が所定値以下であるとき、前記送風機に印加する電圧を制御することで前記送風機の回転を制御することによって、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を前記電流指令値が前記所定値よりも大きいときと比較して減少させる制御部(S106)を有する燃料電池用制御装置(80)と、 を備え、 前記制御部は、前記電流指令値が前記所定値以下であるとき、前記送風機に電圧を印加する時間および前記送風機に電圧を印加しない時間を制御することにより、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を減少させる燃料電池システム。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、以下の甲第1号証及び甲第2号証(以下、各甲号証に付された数字に対応して「甲1」等という。)を提出し、本件特許を取り消すべき理由として、次の申立理由1及び2を主張している。 甲1:米国特許出願公開第2020/0185742号明細書 甲2:特開2004-63368号公報 1 申立理由1 本件発明1及び2は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものである。また、本件発明1及び2は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。 よって、それらの特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2 本件発明1及び2は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。 よって、それらの特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第4 当審の判断 1 各甲号証について (1)甲1に記載された発明 甲1(特に、[0002]~[0003]、[0032]、[0036]~[0040]、[0045]~[0053]、図2-4参照。)には、以下の発明(以下、「甲1-1発明」、「甲1-2発明」という。)が記載されている。 ア 甲1-1発明 「制御システムであって、 燃料電池スタック10に要求される電流が比較的低い低電流制御領域では、前記燃料電池スタック10に供給される空気流量を低減する低流量制御によって運転し、燃料電池停止モード時には、前記燃料電池停止モードに入る直前の空気供給量が予め定められた基準空気量以下である場合、酸素が偏在していると判定されて、追加の空気を供給する空気供給コントローラ30を備え、 前記空気供給コントローラ30は、前記燃料電池停止モード時に、前記空気供給量が第1基準値(α)以下である場合、送風機40をx1秒間駆動し、前記空気供給量が前記第1基準値(α)を超えて第2基準値(β)以下である場合、前記送風機40を前記x1秒未満のx2秒間駆動して、前記空気供給量が前記第2基準値(β)を超える場合、酸素分布が均一であると判定し、空気を追加供給せず、空気供給を中断する制御システム。」 イ 甲1-2発明 「水素及び空気を受け取り化学反応によって電気を生成する燃料電池スタック10と、 燃料電池スタックに空気を供給する送風機40と、 燃料電池スタック10に要求される電流が比較的低い低電流制御領域では、前記燃料電池スタック10に供給される空気流量を低減する低流量制御によって運転し、燃料電池停止モード時には、前記燃料電池停止モードに入る直前の空気供給量が予め定められた基準空気量以下である場合、酸素が偏在していると判定されて、追加の空気を供給する空気供給コントローラ30を有する制御システムと、 を備え、 前記空気供給コントローラ30は、前記燃料電池停止モード時に、前記空気供給量が第1基準値(α)以下である場合、送風機40をx1秒間駆動し、前記空気供給量が前記第1基準値(α)を超えて第2基準値(β)以下である場合、前記送風機40を前記x1秒未満のx2秒間駆動して、前記空気供給量が前記第2基準値(β)を超える場合、酸素分布が均一であると判定し、空気を追加供給せず、空気供給を中断するシステム。」 (2)甲2に記載された発明 甲2(特に、【0001】、【0023】、【0025】-【0026】、【0029】、【0031】-【0032】、【0034】、【0043】、【0065】、図1参照。)には、以下の発明(以下、「甲2-1発明」、「甲2-2発明」という。)が記載されている。 ア 甲2-1発明 「電力需要が減少すると、燃料電池10への空気の供給量が前記需要電力に対応する所定値になるように空気側送風機32を制御するコントローラ50。」 イ 甲2-2発明 「空気中の酸素と燃料ガス中の水素及び一酸化炭素とが反応して発電が行われる燃料電池10と、 回転数を制御することにより風量調整可能に構成される空気側送風機32と、 電力需要が減少すると、燃料電池10への空気の供給量が前記需要電力に対応する所定値になるように空気側送風機32を制御するコントローラ50と、 を備える燃料電池発電システム。」 2 申立理由1について (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、後者の「制御システム」は、燃料電池スタック10に用いられるものであるから、前者の「燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池(5)に用いられる燃料電池用制御装置」に相当し、以下同様に、「燃料電池スタック10に要求される電流が比較的低い低電流制御領域では」という態様は「前記燃料電池に要求される電流である電流指令値が所定値以下であるとき」という態様に、「前記燃料電池スタック10に供給される空気流量を低減する低流量制御によって運転し」という態様は、送風機40を制御することによって行われることが自明であるから、「回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機(4)に印加する電圧を制御することで前記送風機の回転を制御することによって、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を前記電流指令値が前記所定値よりも大きいときと比較して減少させる」態様に、「空気供給コントローラ30」は「制御部」に、それぞれ相当する。 よって、両者は、 「燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池に用いられる燃料電池用制御装置であって、 前記燃料電池に要求される電流である電流指令値が所定値以下であるとき、回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機に印加する電圧を制御することで前記送風機の回転を制御することによって、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を前記電流指令値が前記所定値よりも大きいときと比較して減少させる制御部を備える燃料電池用制御装置。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 制御部に関し、本件発明1は、「前記電流指令値が前記所定値以下であるとき、前記送風機に電圧を印加する時間および前記送風機に電圧を印加しない時間を制御することにより、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を減少させる」のに対し、甲1-1発明は、そのようなものであるか不明な点。 イ 判断 上記相違点1について、以下検討する。 甲1-1発明の空気供給コントローラ30は、燃料電池停止モード時に、直前の空気供給量が第1基準値(α)以下である場合、送風機40をx1秒間駆動し、前記空気供給量が前記第1基準値(α)を超えて第2基準値(β)以下である場合、前記送風機40を前記x1秒未満のx2秒間駆動して、前記空気供給量が前記第2基準値(β)を超える場合、酸素分布が均一であると判定し、空気を追加供給せず、空気供給を中断するものであるが、送風機40に電圧を印加しない時間を制御するものとは認められない。 よって、上記相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1-1発明ではない。 また、甲2-1発明のコントローラ50も、空気側送風機32に電圧を印加しない時間を制御するものとは認められない。 したがって、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1及び2のいずれにも記載されておらず、また、当業者が適宜なし得る設計的事項又は周知技術であるという証拠もない。 よって、当業者が相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に容易に想到し得るという理由は見いだせないから、本件発明1は、当業者が甲1-1発明及び甲2-1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2 本件発明2と甲1-2発明とを対比すると、上記(1)アの対比に加えて、後者の「水素及び空気を受け取り化学反応によって電気を生成する燃料電池スタック10」は前者の「燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池」に相当し、以下同様に、「燃料電池スタックに空気を供給する送風機40」は「回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機」に、「システム」は「燃料電池システム」に、それぞれ相当する。 したがって、両者は、上記相違点1において相違し、その余の点で一致する。 そして、相違点1については、上記(1)イで説示したとおりである。 よって、本件発明2は、甲1-2発明ではなく、また、当業者が甲1-2発明及び甲2-1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1によって取り消すことはできない。 3 申立理由2について (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、後者の「電力需要が減少すると、燃料電池10への空気の供給量が前記需要電力に対応する所定値になるように空気側送風機32を制御するコントローラ50」は前者の「燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池(5)に用いられる燃料電池用制御装置であって、前記燃料電池に要求される電流である電流指令値が所定値以下であるとき、回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機(4)に印加する電圧を制御することで前記送風機の回転を制御することによって、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を前記電流指令値が前記所定値よりも大きいときと比較して減少させる制御部(S106)を備え」「る燃料電池用制御装置」に相当する。 よって、両者は、 「燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池に用いられる燃料電池用制御装置であって、 前記燃料電池に要求される電流である電流指令値が所定値以下であるとき、回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機に印加する電圧を制御することで前記送風機の回転を制御することによって、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を前記電流指令値が前記所定値よりも大きいときと比較して減少させる制御部を備える燃料電池用制御装置。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点2] 制御部に関し、本件発明1は、「前記電流指令値が前記所定値以下であるとき、前記送風機に電圧を印加する時間および前記送風機に電圧を印加しない時間を制御することにより、前記送風機によって前記燃料電池に供給される空気の流量を減少させる」のに対し、甲2-1発明は、そのようなものであるか不明な点。 イ 判断 上記相違点2は、実質的に相違点1と同じである。 そして、相違点1については、上記2(1)イで説示したとおりである。 よって、本件発明1は、当業者が甲2-1発明及び甲1-1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2 本件発明2と甲2-2発明とを対比すると、上記(1)アの対比に加えて、後者の「空気中の酸素と燃料ガス中の水素及び一酸化炭素とが反応して発電が行われる燃料電池10」は前者の「燃料ガスと空気に含まれる酸素との化学反応により発電する燃料電池」に相当し、以下同様に、「回転数を制御することにより風量調整可能に構成される空気側送風機32」は「回転することにより前記燃料電池に空気を供給する送風機」に、「燃料電池発電システム」は「燃料電池システム」に、それぞれ相当する。 したがって、両者は、上記相違点2において相違し、その余の点で一致する。 そして、相違点2については、上記(1)イで説示したとおりである。 よって、本件発明2は、当業者が甲2-2発明及び甲1-1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由2によって取り消すことはできない。 4 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の10頁8~13行において 「甲1発明における燃料電池に供給する空気の流量を低減する手段のうち、一定の回転数で駆動する送風機の駆動時間をコントローラが変化させるものは(段落0049)、本件発明1の、電流指令値が所定値以下であるとき、制御部が送風機に電圧を印加する時間および送風機に電圧を印加しない時間を制御することにより、送風機によって燃料電池に供給される空気の流量を減少させることに相当する。」 と主張する。 しかしながら、上記2(1)イで説示したとおり、甲1-1発明の空気供給コントローラ30は、送風機40に電圧を印加しない時間を制御するものとは認められない。 よって、申立人の主張は根拠を有するものではなく、採用できない。 第5 むすび したがって、申立人がした特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項3及び10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項3及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700039

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