審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700955

電気化学セルおよび二酸化炭素回収システム

審判番号
2024-700955
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-176292
登録番号
7459755
請求日
2024年10月02日
審決日
2025年06月13日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社デンソー
  • 【権利者代理人】弁理士法人かいせい特許事務所
  • 【異議申立人】本田 仁志
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 増山 淳子
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.113-Y (B01D) / P1651.121-Y (B01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7459755号発明「電気化学セルおよび二酸化炭素回収システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7459755号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7459755号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年10月20日の出願であって、令和6年3月25日にその特許権の設定登録がされ、同年4月2日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~9に係る特許に対して、令和6年10月2日に特許異議申立人本田仁志(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 作用極(102)と、対極(103)と、を備え、 前記作用極は、多孔質状の電極基材(102a)と、CO2吸着材(102b)と、導電性を有するバインダ(102c)とを有しており、 前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合し、 前記バインダは、前記電極基材に形成された凹凸の隙間に入り込み前記電極基材との間に機械的な結合力を発生させ、前記CO2吸着材を前記電極基材に保持している電気化学セル。 【請求項2】 前記バインダは、前記CO2吸着材及び有機溶媒を分散、混合させた状態で含み、流動性を有する液体状物質の前記バインダの原材料を、前記電極基材に形成された凹凸の隙間に入り込んだ状態でゲル化または固化されているゲル状物質または固体状物質である請求項1に記載の電気化学セル。 【請求項3】 前記バインダは、イオン液体をゲル化したイオン液体ゲルである請求項2に記載の電気化学セル。 【請求項4】 前記バインダは、CO2を透過させることができるCO2透過性を有している請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項5】 前記CO2含有ガスには複数種類のガスが含まれており、 前記バインダは、前記CO2含有ガスに含まれる複数種類のガスのうち、CO2を選択的に透過させることができるCO2選択透過性を有している請求項4に記載の電気化学セル。 【請求項6】 前記バインダは、疎水性を有している請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項7】 前記バインダと前記CO2吸着材の混合物を形成し、前記混合物が前記電極基材に保持されている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項8】 前記作用極と前記対極の間にイオン伝導性を有するイオン伝導性部材(106)が設けられており、前記イオン伝導性部材はゲル状物質もしくは固体状物質である請求項1ないし7のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電気化学セルを備える二酸化炭素回収システム。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人が主張する申立理由は、概略以下のとおりである。 ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。 甲第1号証:Siwu Li et al., ”Carbon dioxide in the cage: manganese metal-organic frameworks for high performance CO2 electrodes in Li-CO2 batteries” Energy & Environmental Science, 2018, Issue 5, p.1318-1325 甲第2号証:国際公開第2017/075014号 甲第3号証:中村孝一、Technical Report No.56 構造用接着剤、1984年、株式会社シーエムシー、p.1-3,26-29 甲第4号証:特開2008-129481号公報 甲第5号証:特開2017-125234号公報 甲第6号証:Eri Hayashi et al., "Application of Protic Ionic Liquids to CO2 Separation in a Sulfonated Polyimide-Derived Ion Gel Membrane, ACS Appl. Polym. Mater. 2019, 1, p.1579-1589 甲第7号証:Qinian Wang et al., ”Electrodeposition of tin on Nafion-bonded carbon black as an active catalyst layer for efficient electroreduction of CO2 to formic acid”, SCIENTIFIC REPORTS, 2017,Vol.7, p.1-7 (以下、甲第1号証等を「甲1」等という。) 1 申立理由1(甲1を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 本件発明1、2、7~9は、甲1に記載された発明であり、本件発明1~9は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(甲2を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 本件発明1、2、7~9は、甲2に記載された発明であり、本件発明1~9は、甲2に記載された発明及び甲1、3~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。 第4 各証拠に記載された事項 1 甲1に記載された事項 (1)「In pursuing a multifunctional porous material for high-performance CO2 electrodes, we targeted the MOF family for the following considerations: (1) MOFs have strong capability in CO2 capture; the affinity with and the uptake amount of CO2 can be easily tuned by adjusting the pore size and functionality of MOFs. (2) MOFs possess regularly arranged micropores, providing separated and strictly confined nanospaces that can dictate the nucleation and early-stage deposition of Li2CO3, and induce its growth towards a uniform nanostructured morphology. (3) Catalytic metal centers can be monodispersed in the highly porous framework, facilitating a complete and efficient decomposition of the nanostructured Li2CO3. (4) The metal centers and pore structures of MOFs can be systematically varied for drawing out the structure-performance relationships, making rational design and optimization possible (Fig. 1). ・・・ [図:0001424601000001.jpg] 」 (1319頁右欄5-19行目、図1) (当審訳:高性能CO2電極の多機能多孔質材料を追求するにあたり、以下を考慮してMOFファミリーをターゲットにした。(1)MOFはCO2捕捉能力が高い、MOFの細孔径や機能を調整することでCO2との親和性や取り込み量を容易に調整できる。(2)MOFは規則的に配置された微細孔を有し、Li2CO3の核形成と初期段階の堆積を示し、均一なナノ構造形態への成長を誘導できる分離され厳密に制限されたナノスペースを提供する。(3)触媒金属中心は、高多孔質フレームワーク中に単分散させることができ、ナノ構造のLi2CO3の完全かつ効率的な分解を促進する。(4)MOFの金属中心や細孔構造を系統的に変化させて構造と性能の関係を引き出すことができるため、合理的な設計と最適化が可能となる(図1)。 ・・・ [図:0001424601000002.jpg] 図1 MOFベースのCO2電極を備えるLi-CO2電池の利点の概略) (2)「2.3 Electrode preparation and cell assembly CO2 electrodes were prepared in a glove box filled with pure argon. Typically, 45 wt% of degassed MOF crystals, 45 wt% of carbon nanotubes (CNTs) and 10 wt% of polyvinylidene fluoride (PVDF) were blended to form a uniform slurry. The slurry was coated on a carbon paper (TGP-H-060 carbon paper, Toray) and dried in a vacuum oven at 80 ℃ for 12 h. The dried carbon paper was punched into 1.12 cm2 circular discs as working electrodes, with 0.3-0.5 mg of active material (the total mass of MOF material and CNTs) on each. The Mn2(dobdc)@Ni electrode for Raman investigation was prepared by growing Mn2 (dobdc) on a Ni foam under the solvothermal conditions of Mn2 (dobdc). Before the Raman tests, the Ni foam and Mn2 (dobdc)@Ni electrodes were coated with Au (-0.2 mg) by magnetron sputtering using a Au target. Li-CO2 cells were assembled in a glove box filled with high-purity argon, using CR2032-type coin cells with holes on the cathode side. Li foil was used as an anode and a piece of glass fiber (16 mm in diameter) soaked with 50μL of electrolyte (1 molL-1 LiTFSI dissolved in TEGDME) was used as a separator. 2.4 Electrochemical tests The cells were tested in a glovebox filled with CO2 using a LAND CT2001A tester. 」(1320頁左欄下から12行~右欄11行) (当審訳:2.3 電極の調製とセルの組み立て CO2電極は、純粋なアルゴンで満たされたグローブボックスに調製された。通常、脱気された結晶状態のMOFを45重量%、カーボンナノチューブ(CNTs)を45重量%、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を10重量%で混合されて均一なスラリーが形成された。スラリーがカーボンペーパー(TGP-H-060カーボンペーパー、東レ)に塗布され、80℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。乾燥したカーボンペーパーを1.12cm2の円形ディスクに打ち抜き、それぞれが0.3~0.5mgの活物質(MOF材料とCNTsの総質量)を備える作用電極を得た。ラマン調査用のMn2(dobdc)@Ni電極は、Mn2(dobdc)のソルボサーマル条件下でNiフォーム上にMn2(dobdc)を成長させることによって調製された。ラマン試験に先立ち、NiフォームとMn2(dobdc)@Ni電極をAuターゲットを用いたマグネトロンスパッタリングによりAu(0.2mg以下)でコーティングした。Li-CO2セルは、カソード側に穴が開いたCR2032型コインセルを使用して、高純度アルゴンを充填したグローブボックスに組み立てられた。Li箔がアノードとして使用され、50μLの電解液(1molL-1のLiTFSIが溶解されたTEGDME)が含浸されたガラス繊維(直径16mm)片がセパレーターとして使用された。 2.4 電気化学試験 CO2を充填したグローブボックス内でLAND CT2001Aテスターを用いて、セルを試験した。) 2 甲2に記載された事項 (1)「Claims ・・・ 1. An electrochemical cell, comprising: a first negative electrode and a second negative electrode, each comprising a gas permeable layer and a primary electroactive composite layer; a positive electrode positioned between the first and second negative electrodes and comprising a first complementary electroactive composite layer facing the first negative electrode and a second complementary electroactive composite layer facing the second negative electrode; a first separator positioned between the first negative electrode and the positive electrode; and a second separator positioned between the second negative electrode and the positive electrode, wherein each of the first and second separators is able to be saturated with an ionic liquid. 2. The electrochemical cell of claim 1, wherein the primary electroactive composite layer comprises a first electroactive species capable of bonding with carbon dioxide gas, when the first electroactive species is in a reduced state, and releasing carbon dioxide gas, when the first electroactive species is in an oxidized state. ・・・ 16. The electrochemical cell of claim 1, wherein the gas permeable layer has a porosity of from 70% to 90%.」 (当審訳:請求項 ・・・ 1.各々がガス透過層および主要電気活性複合材層を含む、第1の負極および第2の負極と; 前記第1の負極と第2の負極との間に位置し、前記第1の負極に面する第1の補助的電気活性複合材層および前記第2の負極に面する第2の補助的電気活性複合材層を含む、正極と; 前記第1の負極と前記正極との間に位置する第1のセパレーターと; 前記第2の負極と前記正極との間に位置する第2のセパレーターと を含む、電気化学セルであって、前記第1および第2のセパレーターの各々をイオン性液体で飽和されることが可能である、電気化学セル。 2.前記主要電気活性複合材層が、第1の電気活性種が還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能であり、第1の電気活性種が酸化状態にある場合に二酸化炭素ガスを放出することが可能である、第1の電気活性種を含む、請求項1に記載の電気化学セル。 ・・・ 16.前記ガス透過層が70%~90%の多孔度を有する、請求項1に記載の電気化学セル。) (2)「According to some embodiments, the one or more negative electrodes may comprise a gas permeable layer (also referred to as a substrate layer) and an electroactive composite layer (also referred to as primary electroactive composite layer, herein). In electrochemical cells incorporating two negative electrodes, the materials and components of each of the electrodes may be the same or different.」(5頁10~14行) (当審訳:一部の実施形態によれば、1つまたは複数の負極は、ガス透過層(基材層とも呼ばれる)および電気活性複合材層(本明細書において主要電気活性複合材層とも呼ばれる)を含んでいてもよい。2つの負極を組み込む電気化学セルにおいて、電極の各々の材料および成分は同じまたは異なっていてもよい。) (3)「In some embodiments, the electroactive chemical species may be immobilized onto the negative electrode. Such embodiments may be distinguished from those of other systems, in which the electroactive chemical species are transported from one electrode to another via advection. In some embodiments, the electroactive composite layer comprises an immobilized polymeric composite of the electroactive and carbonaceous material. For example, in some embodiments the electroactive composite layer comprises a polyanthraquinone (pAQ) - carbon nanotube (CNT) composite.」(6頁23~29行) (当審訳:一部の実施形態では、電気活性な化学種は負極上に固定化されてもよい。そのような実施形態は、電気活性な化学種が1つの電極から別の電極へ移流によって輸送される、他のシステムの実施形態とは区別することができる。一部の実施形態では、電気活性複合材層は、電気活性で炭素質材料の固定化ポリマー複合材を含む。例えば、一部の実施形態では、電気活性複合材層はポリアントラキノン(pAQ)-カーボンナノチューブ(CNT)複合材を含む。) (4)「FIG.2A shows an exploded view of an exemplary electrochemical cell 100a, operating in a charge mode, according to one or more embodiments. The components of electrochemical cell 100a may be like those described with regard to electrochemical cell 100, described herein with regard to FIG. 1. As shown in FIG. 2a, a power source 140a and wiring 150a are used to apply a potential difference across the electrochemical cell 100a. This causes an electron flow 160a in the external circuit 150a directing electrons to the primary electroactive composite layer 114a of each of the negative electrodes 110a. A redox half-cell reaction takes place at the electroactive composite layer 114a to reduce the electroactive species immobilized in the layer 114a. In its reduced state, the electroactive species exhibits an increased affinity towards a target species in a gas stream (not shown). The target species of the gas stream may permeate the gas permeable layer 112A of the negative electrode to bond to the reduced material of the composite layer 114A.」(12頁8~20行) (当審訳: 図2Aは、1つまたは複数の実施形態による、充電モードで作動している例示的な電気化学セル100aの分解立体図を示す。電気化学セル100aの構成要素は、図1に関して本明細書に記載される、電気化学セル100に関して記載されるものと同様であってもよい。図2aに示すように、電源140aおよび配線150aは、電気化学セル100aを横切って電位差を加えるために使用される。これは、外部回路150aにおける電子流160aが電子を負極110aの各々の主要電気活性複合材層114aへ向かわせることを引き起こす。電気活性複合材層114aでレドックス半セル反応が生じて層114aに固定化された電気活性種を還元させる。その還元状態において、電気活性種はガスストリーム(図示せず)中の標的種に対する増大した親和性を示す。ガスストリームの標的種は負極のガス透過層112Aを透過して複合材層114Aの還元された物質へ結合することができる。) (5)「Example 2 This example describes a non-limiting procedure for synthesizing Polymer- Multi- Walled Carbon Nanotube (MWCNT) composites comprising Poly(l,4- anthraquione) (P14AQ), which may function as a primary electroactive composite layer of an electrochemical cell, according to one or more embodiments described herein. The composite was made by ultra-sonicating a suspension of 40 mg of P14AQ (as made according to the process described in Example 1) and 120 mg MWCNT in 40 ml of chloroform at 15°C for 40 minutes, resulting in a well-dispersed ink. The ratio of P14AQ to CNT was optimized and the highest current per mass of active material (polymer) was obtained with a 1 to 3, P14AQ to CNT by weight ratio.」(23頁22~31行) (当審訳:実施例2 この実施例は、本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態による、電気化学セルの主要電気活性複合材層として機能することができる、ポリ(1,4-アントラキノン)(P14AQ)を含むポリマー-多層カーボンナノチューブ(MWCNT)複合材を合成するための非限定的な手順を記載している。複合材は、40mlのクロロホルム中の40mgのP14AQ(実施例1に記載されるプロセスに従って作られる)および120mgのMWCNTの懸濁液を15℃で40分超音波処理し、十分に分散したインクを得ることにより、作製された。P14AQのCNTに対する比を最適化し、重量比で1対3のP14AQ対CNTにおいて、活性材料(ポリマー)の質量当たりで最も高い電流を得た。) 3 甲3に記載された事項 (1)「接着力というのは分子間力そのものである。 これは単に物理的に引合う場合もあろうし,化学反応を起こす場合もある。 すなわち,2つの分子が近づいた時に分子と分子とが化学結合を伴わない接触点がある。この場合分子を構成する原子の最近接非結合距離をVan der Waals半径という。 この時に分子間に働く力をVan der Waals力,接着では2次結合力と呼び,完全な物理的相互作用である。」(1頁下から6行~2頁1行) (2)「すなわち,接着剤は表面の針状酸化物の間に浸透して接着力を発揮する。」(26頁1行) (3)「ピール強さはテスト条件下で破断エネルギーの示度(measure)である。ポリエチレンを繊維状の被着体より引きはがした場合,電子顕微鏡の観察によると,破断はポリマーの中で起こっていることが明白になっている29)。」(26頁(7)接着のメカニズムの1~3行) (4)「塑性変形部分に吸収されるエネルギーが大きければ大きい程ピール強度は高い。みがかれた銅表面への接着力は非常に弱い。その理由は塑性変形を生ずる要因がないからである。」(26頁(7)接着のメカニズムの4~5行) (5)「表面凹凸の存在は,種々の要因で分散エネルギーを増大させる。」(26頁(7)接着のメカニズムの15行) 4 甲4に記載された事項 (1)「【請求項1】 最外層が、少なくとも層状無機化合物と、導電剤とを含有してなり、該導電剤が、少なくとも電子伝導剤と、イオン液体を保持したフッ素系ポリマーナノ粒子とを含有することを特徴とする画像形成用半導電性部材。」 (2)「【0064】 前記最外層の形成は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、最外層を形成する各成分を含む最外層塗布液を調製し、該最外層塗布液を塗布することにより形成することができる。前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばディッピング法、スプレーコーティング法、ロールコート法などが挙げられる。」 (3)「【0118】 次に、直径8mmの芯金上に3mm肉厚の三元系エピクロルヒドリンゴム(GECO)弾性層(体積抵抗率R=2.5×107Ω・cm)を設けたローラ上に、上記最外層塗布液を硬化後の厚みが5μmとなるように、スプレー塗工し、実施例1の半導電性部材(ローラ抵抗R’=1.0×106Ω)を作製した。」 5 甲5に記載された事項 (1)「【請求項1】 導電性部材と、 前記導電性部材の表面に、吸着剤とを有し、 前記吸着剤が、導電性及び細孔を有し、二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材と、前記細孔内に、二酸化炭素を還元可能な中心金属を有する金属錯体とを有する、 ことを特徴とする二酸化炭素還元用電極。」 (2)「【0014】 <導電性部材> 前記導電性部材としては、導電性を有する部材であれば、その材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 ここで、導電性とは、体積抵抗率で102Ωcm以下の範囲を意味する。 【0015】 前記導電性部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素を多電子還元する能力の点で、銅、銀、金、亜鉛、インジウムが好ましい。これらの材質であれば、前記導電性部材の表面においても、二酸化炭素の還元を行うことができる。 【0016】 前記導電性部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。 【0017】 前記導電性部材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、それ自体が導電性の材料で構成されていてもよいし、芯材表面に、導電性の薄膜が配された構造であってもよい。 前記芯材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属製芯材、樹脂製芯材、ガラス製芯材などが挙げられる。 前記薄膜としては、例えば、メッキ膜、スパッタ膜などが挙げられる。 ・・・・ 【0021】 前記多孔性基材としては、導電性及び細孔を有し、かつ二酸化炭素を吸着可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素の吸着能力が優れる点で、活性炭、カーボンナノチューブ、多孔性金属錯体が好ましい。 ・・・ 【0026】 -多孔性金属錯体- 前記多孔性金属錯体は、金属イオンと、アニオン性配位子とを含有する多孔性材料である。前記多孔性金属錯体(MOF)は、多孔性配位高分子(PCP)とも呼ばれることがある。 ・・・ 【0042】 前記吸着剤を、前記導電性部材の表面に配する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記吸着剤を含有する塗布物を前記導電性部材に塗布する方法、前記吸着剤自体を前記導電性部材に吹き付ける方法などが挙げられる。 【0043】 前記塗布する方法に使用する前記塗布物は、前記吸着剤と、接着成分とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。 前記接着成分は、導電性を有することが好ましい。そのような成分としては、例えば、カーボンペースト、導電性樹脂などが挙げられる。 前記塗布物における、前記吸着剤と、前記接着成分との割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 ・・・ 【0048】 開示の二酸化炭素還元用電極においては、導電性部材2とその表面に吸着剤3とを有し、吸着剤3が、導電性及び細孔を有し、二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材3Aと、細孔内に、二酸化炭素を還元可能な中心金属を有する金属錯体3Bとを有する。 二酸化炭素還元用電極において二酸化炭素(CO2)を還元する際、反応場には、電子と二酸化炭素とが供給される必要があるが、電子は、導電性部材2及び吸着剤3を介して細孔内に供給され、二酸化炭素は、多孔性基材3Aに吸着されて細孔内に供給、及び保持される。そして、細孔内に金属錯体3Bが存在することにより、細孔内が反応場となる。その結果、反応場に二酸化炭素が保持でき、二酸化炭素の還元効率が高くなる。 ・・・ 【0074】 ここで、開示の二酸化炭素還元装置の一例を図を用いて説明する。 図5は、二酸化炭素還元装置100Aの断面模式図である。 図5の二酸化炭素還元装置100Aは、カソード槽110と、アノード槽120と、プロトン透過膜130と、二酸化炭素供給部材140と、定電圧電源装置150と、参照電極160とを有する。 カソード槽110とアノード槽120との間には、プロトン透過膜130が挟まれている。 カソード槽110には、第1電解液112が収容されている。そして、カソード槽110内において、二酸化炭素還元用電極1と、参照電極160とが、第1電解液112に浸されている。 アノード槽120には、第2電解液122が収容されている。そして、アノード槽120内において、アノード電極121が、第2電解液122に浸されている。 【0075】 二酸化炭素供給部材140は、例えば、中空の棒状部材であり、その一方の先端が第1電解液112に浸っており、第1電解液112に二酸化炭素を供給する。 そのため、第1電解液112には二酸化炭素が溶解している。 【0076】 二酸化炭素還元装置100Aにおいては、定電圧電源装置150により、カソード電極である二酸化炭素還元用電極1と、アノード電極121との間に電圧が印加される。そうすると、アノード側では、水の酸化分解が生じ、一方、カソード側では、二酸化炭素の還元が生じる。カソード側では、二酸化炭素還元用電極1を用いていることから、二酸化炭素の還元が効率的に行われる。」 6 甲6に記載された事項 (1)「The [N124][NTf2](PIL)/SPI membranes showed a CO2 permeability (PCO2 = 240 Barrer) with a relatively high selectivity (αCO2/N2 = 23) at 30 °C, which indicates that a PIL/SPI composite membrane can be employed for CO2 separation.」(ABSTRACTの17~19行) (当審訳:[N124][NTf2](PIL)/SPI 膜は、30 °Cで(αCO2/N2 = 23)という比較的高い選択性を有するCO2 透過性(PCO2 = 240 Barrer)を示したので、PIL/SPI複合膜は CO2分離に使用することが可能であることが示される。) (2)「In this study, we initially aimed to compare the CO2 separation properties of well characterized ion gel membranes prepared from sulfonated polyimide and either a PIL or an AIL.」(1583頁左欄のRESULTS AND DISCUSSIONの1~3行) (当審訳:本研究では、当初、スルホン化ポリイミドとPILまたはAILのいずれかとから調製された十分に特性評価されたイオンゲル膜のCO2分離特性を比較することを目的としていた。) 7 甲7に記載された事項 (1)「In this work, a novel Sn-based gas diffusion electrode (ESGDE) is prepared by electrodepositing Sn on Nafion-bonded carbon black as catalyst layer to enhance electron transfer and thus the efficiency of ERCF」(1頁第1段落の3~5行) (当審訳:本研究では、触媒層としてナフィオン結合カーボンブラックにSnを電着させることにより、新規なSn系ガス拡散電極(ESGDE)を作製し、電子移動を高め、ERCFの効率を高めた。) (2)「In consideration of that carbon black is porous and conductive, we developed Nafion-bonded carbon black as CL support, anticipating an improvement in the electron transfer via carbon black and in proton transfer through Nafion.」(5頁のDiscussionの12~14行) (当審訳:カーボンブラックは多孔質で導電性があることを考慮し、カーボンブラックによる電子移動と、ナフィオンによるプロトン移動との向上が期待できるCL担体としてナフィオン結合カーボンブラックを開発した。) (3)「The carbon black loading amount and Nafion fraction in the Nafion-bonded carbon black CL support are the two crucial parameters for the CO2 diffusion, electron and proton transfer.」(6頁最終行及び8頁1,2行) (当審訳:ナフィオン結合カーボンブラックCL担体のカーボンブラック負荷量とナフィオン割合は、CO2拡散、電子およびプロトン移動の2つの重要なパラメータである。) 第5 当審の判断 1 申立理由1について (1)甲1に記載された発明 ア 上記第4の1(1)の図1の説明文には「MOFベースのCO2電極を備えるLi-CO2電池の利点の概略」と記載されているから、図1に示されているのはLi-CO2電池である。 また、図1の左の図には「Liアノード」、「カソード」との記載があり、図1の説明文によれば、図1の電池は「MOFベースのCO2電極」を備えるものであるから、「カソード」は「MOFベース」の電極であるといえる。そして、同図には、「Liアノード」から「カソード」へとe-、すなわち電子が移動することを意味する→が記載されており、「Liアノード」から「MOFベース」の「カソード」に電子が供給されていることが記載されているといえる。 通常、電池の「カソード」とは、放電時に電子を受け取って還元反応が起こる電極を意味するので、図1において、「Liアノード」から「カソード」へと電子が移動しているのは、「放電」反応が起こっている状態であるといえる。 ここで、図1の右上の図では、「放電」と記載されたうえで、「MOF」と記載された構造の中にCO2が取り込こまれ、吸着される様子が見て取れるから、放電によって、「MOFベース」の「カソード」に電子が供給され、カソード中の「MOF」に「CO2」が吸着されることが記載されているといえる。 そうすると、図1及びその説明文には、「Liアノード」及び「MOFベース」の「カソード」を備えた「Li-CO2電池」であって、放電によって「Liアノード」から「MOFベース」の「カソード」へと電子が供給され、「MOFベース」の「カソード」中の「MOF」が「CO2」を吸着することが記載されているといえる。 イ 上記第4の1(2)によれば、甲1には、結晶状態のMOF、カーボンナノチューブ、ポリフッ化ビニリデンからなるスラリーをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することによって得られる作用電極と、Li箔であるアノードを備える電池が記載されている。そして、上記アの検討を踏まえると、MOFの塗布された、この作用電極は、上記アの「MOFベース」の「カソード」のことであるといえる。 そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。 「MOF、カーボンナノチューブ、ポリフッ化ビニリデンからなるスラリーをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することによって得られる作用電極であるMOFベースのカソードと、Li箔であるLiアノードを備え、LiアノードからMOFベースのカソードに電子が供給されることでカソード中のMOFがCO2を吸着する、Li-CO2電池。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)甲1発明の「MOF」は、「CO2を吸着する」ものであるから、本件発明1の「CO2吸着材」に相当する。 (イ)甲1発明の「作用電極」、「Liアノード」は、それぞれ、本件発明1の「作用極」、「対極」に相当する。 (ウ)甲1発明の「カーボンペーパー」は、多孔質材料であるから、本件発明1の「多孔質状の電極基材」に相当する。 (エ)甲1発明において、「作用電極」は、「MOF」を含むスラリーをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することによって得られるのであるから、甲1発明の「作用電極」は「MOF」を含むものであり、上記(ア)によれば「MOF」は、「CO2吸着材」であり、上記(イ)によれば甲1発明の「作用電極」は本件発明1の「作用極」のことであるから、甲1発明は「CO2吸着材を含む作用極」を有しているといえる。 (オ)上記第4の1(2)によれば、CO2を充填したグローブボックス内でセルの電気化学試験が行われているから、甲1発明において、吸着されるCO2は、ガス中に含まれるガス状のCO2であることが理解される。 (カ)甲1発明の「LiアノードからMOFベースのカソードに電子が供給されることでカソード中のMOFがCO2を吸着する」は、本件発明1の「対極から作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴って」「CO2と結合」することに相当し、上記(オ)によれば、甲1発明において、結合するCO2は、ガス中に含まれるガス状のCO2であるから、本件発明1の「対極から作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2ガスと結合」することに相当する。 (キ)甲1発明の「Li-CO2電池」は、本件発明1の「電気化学セル」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、 「作用極と、対極と、を備え、 前記作用極は、多孔質状の電極基材と、CO2吸着材と、を有しており、 前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2ガスと結合する、電気化学セル。」の点で共通し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では、作用極が「導電性を有するバインダ」を有しており、「バインダ」は、「前記電極基材に形成された凹凸の隙間に入り込み前記電極基材との間に機械的な結合力を発生させ、前記CO2吸着材を前記電極基材に保持している」のに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点2> 本件発明1では、「前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで」対極から作用極に電子が供給されるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 イ 相違点について 事案に鑑み、相違点2について検討すると、甲1には「前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで対極から作用極に電子が供給される」ことは記載されていないから、相違点2は、実質的な相違点である。 次に、相違点2の容易想到性についても検討する。 本件明細書には、「CO2回収装置100は、作用極102と対極103に所定の電圧を印加する電源105が設けられており、作用極102と対極103の 電位差を変化させることができる。」(【0018】)と記載されており、本件発明1において「電圧を印加する」とは、外部電源によって、電圧を加えることを意味しているといえる。 甲1発明は、LiアノードからMOFベースのカソードに電子が供給されることでカソード中のMOFがCO2を吸着する電池であり、この反応は「放電」とされている。 そして、電池の放電とは、カソードとアノードを電気的に接続した際に、カソードとアノードの電位差によって、アノードからカソードへ電子が移動する現象であり、このような電子の移動のために外部電源によって電圧を加える必要はない。 したがって、アノードからカソードへの電子の移動、すなわち、電池の放電において、「電圧の印加」は不要であるため、通常行われないし、仮に行われたとしても、アノードからカソードへ電子が供給されること、つまり、「対極から作用極に電子が供給される」のは、「電圧が印加されること」によるものとはいえない。 そうすると、甲1発明において、相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 また、甲2~7にも、電圧が印加されることによって、アノードからカソードへ電子を供給することについては何ら記載はないため、甲2~7の記載事項を検討しても、依然として、甲1発明において、相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3)本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は、「図1から、MOFを含むCO2電極と、Liアノードとを備えたLi-CO2電池において、CO2電極とLiアノードとの間に電圧が印加されることでLiアノードからCO2電極に電子(e-)が供給され、MOFは電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合」することがわかる(特許異議申立書11頁)旨主張しているが、電圧の印加とは、上記(2)イで述べたように、外部電源によって、電圧を加えることを意味しているところ、図1からは「電圧が印加される」ことが読み取れるとはいえないし、Liアノードからカソードに電子を供給する際には電圧が印加されるとの技術常識もない。 したがって、上記申立人の主張は採用できない。 (5)申立理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1には理由がない。 2 申立理由2について (1)甲2に記載された発明 ア 上記第4の2(1)によれば、甲2には、ガス透過層、主要電気活性複合材層を含む第1の負極および第2の負極、正極を含む電気化学セルが記載されており、主要電気活性複合材層が、還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能である第1の電気活性種を含むこと、ガス透過層は70~90%の多孔度を有することが記載されている。 そうすると、甲2には、ガス透過層、還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能である第1の電気活性種を含む第1の負極及び第2の負極、正極を含む電気化学セルが記載されているといえる。 そして、同(2)によれば、「ガス透過層」は「基材層」とも呼ばれるものである。 イ 同(4)によれば、甲2には、充電モードにおいて、電位差を与えるために電源が使用され、電子が負極の主要電気活性複合材層に向かい、負極の電気活性種を還元させ、ガスストリーム中の標的種が、還元された物質、すなわち、電気活性種に結合することが記載されている。 そして、同(1)によれば、負極の電気活性種とは第1の電気活性種である。また、同(1)によれば、第1の電気活性種に結合するのは二酸化炭素であるから、ガスストリーム中の標的種が電気活性種に結合することは、ガスストリーム中のCO2が電気活性種に結合されることを意味する。 そうすると、甲2には、充電モードにおいて、電源によって電位差が加えられ、電子が負極に向かい、第1の電気活性種が還元され、ガスストリーム中のCO2が第1の電気活性種に結合されることが記載されているといえる。 ウ してみれば、甲2には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲2発明」という。)。 「70~90%の多孔度を有する基材層、還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能である第1の電気活性種を含む第1の負極及び第2の負極、正極を含み、 充電モードでは、電源によって電位差が加えられ、電子が負極に向かい、負極の第1の電気活性種が還元され、ガスストリーム中のCO2が第1の電気活性種に結合される、電気化学セル。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明を対比する。 (ア)甲2発明の「基材層」、「負極」、「正極」、「結合」は、それぞれ、本件発明1の「電極基材」、「作用極」、「対極」、「吸着」に相当する。 (イ)甲2発明の「70~90%の多孔度を有する」は、本件発明1の「多孔質状」に相当する。 (ウ)甲2発明の「第1の電気活性種」は、二酸化炭素を結合するのであるから、本件発明1の「CO2吸着材」に相当する。 (エ)甲2発明の「電源によって電位差が加えられ」は本件発明1の「作用極と前記対極との間に電圧が印加される」ことに相当する。 (オ)上記(ア)で述べたとおり、甲2発明の「負極」は本件発明1の「作用極」であるから、甲2発明の「電子が負極に向かい」は本件発明1の「対極から作用極に電子が供給され」ることに相当する。 (カ)上記(ウ)で述べたとおり、甲2発明の「第1の電気活性種」は、本件発明1の「CO2吸着材」に相当し、甲2発明の「還元され」とは本件発明1の「電子が供給され」に相当するから、甲2発明の「負極の第1の電気活性種が還元され」は、本件発明1の「CO2吸着剤は電子が供給される」に相当する。 (キ)甲2発明の「ガスストリーム中のCO2」は、本件発明1の「CO2含有ガスに含まれるCO2」に相当する。 (ク)上記(エ)~(キ)の記載を合わせて考えれば、甲2には、作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、対極から作用極に電子が供給され、CO2吸着剤は電子が供給されることでCO2含有ガスに含まれるCO2と結合することが記載されているといえる。 そうすると、本件発明1と、甲2発明は、 「作用極と、対極と、を備え、 前記作用極は、多孔質状の電極基材と、CO2吸着材とを有しており、 前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合する、 電気化学セル。」の点で一致し、下記の点で相違する。 <相違点3> 本件発明1では、「導電性を有するバインダ」を有し、「前記バインダは、前記電極基材に形成された凹凸の隙間に入り込み前記電極基材との間に機械的な結合力を発生させ、前記CO2吸着材を前記電極基材に保持している」のに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。 イ 相違点について 相違点3について検討する。 甲2発明においては、バインダを添加することは記載されていないので、相違点3は、実質的な相違点である。 次に、相違点3の容易想到性について検討する。 甲2には、バインダの添加について何らの示唆もないし、電気活性複合層を形成する材料にバインダを添加すれば、その分、添加しうる電気活性種の含有量は減り、二酸化炭素吸収量も減るのであるから、甲2発明において、バインダ成分を添加すると、好ましくない影響が生じるおそれがあるため、バインダを添加する動機付けがあるともいえない。 したがって、甲2発明において、相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうるとはいえない。 また、この点について、甲1、3~7の記載を検討してみても、いずれの文献にもCO2吸着材を電極基材に保持する導電性を有するバインダに関する記載はないため、甲1、3~7の記載事項を検討しても、依然として、甲2発明において、相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲1、3~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3)本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲1、3~7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書において、甲2において、第1の電気活性種は、第1の固定化ポリマー複合材によって、多孔質状のガス透過層に保持されているので、甲2の「第1の炭素質材料を含む第1の固定化ポリマー複合材料」は本件発明1の「導電性を有するバインダ」に相当する旨主張している(42頁)。 申立人が、甲2の「第1の炭素質材料を含む第1の固定化ポリマー複合材料」が本件発明1の「導電性を有するバインダ」に相当すると主張する根拠は明確ではないが、特許異議申立書において、甲2の【0024】の「一部の実施形態では、電気活性な化学種は負極上に固定化されてもよい。そのような実施形態は、電気活性な化学種が1つの電極から別の電極へ移流によって輸送される、他のシステムの実施形態とは区別することができる。一部の実施形態では、電気活性複合材層は、電気活性で炭素質材料の固定化ポリマー複合材を含む。例えば、一部の実施形態では、電気活性複合材層はポリアントラキノン(pAQ)-カーボンナノチューブ(CNT)複合材を含む。」(上記第4の2(3)参照。下線は当審で付した。)との記載を摘記しているので、その点について検討してみる。 上記記載においては「電気活性複合材層は電気活性で炭素質材料の固定化ポリマー複合材を含む。」との記載に続けて、「例えば、・・電気活性複合材層はポリアントラキノン(pAQ)-カーボンナノチューブ(CNT)複合材を含む。」とされており、「電気活性で炭素質材料の固定化ポリマー複合材」の例として「ポリアントラキノン(pAQ)-カーボンナノチューブ(CNT)複合材」を挙げているといえる。そして、この固定化ポリマーの「固定化」は、上記第4の2(3)の「電気活性な化学種は負極上に固定化されてもよい」との記載によれば、それ自身が固定化されることを意味するから、この固定化ポリマー複合材は、対象物を固定化することを意味する「バインダー」を意味しない。また、「ポリマー」については、同(5)に「主要電気活性複合材層として機能することができる、ポリ(1,4-アントラキノン)(P14AQ)を含むポリマー-多層カーボンナノチューブ(MWCNT)複合材を合成するための非限定的な手順を記載している。・・・P14AQのCNTに対する比を最適化し、重量比で1対3のP14AQ対CNTにおいて、活性材料(ポリマー)の質量当たりで最も高い電流を得た」と記載されているとおり、電気活性な化学種(活性材料)を意味する。してみれば、上記記載から、甲2の「第1の炭素質材料を含む第1の固定化ポリマー複合材料」は本件発明1の「導電性を有するバインダ」に相当するとはいえない。 したがって、上記【0024】の記載を検討してみても、申立人の上記主張は採用することができない。 (5)申立理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由2には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~9に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700955

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決257件(本田 仁志、株式会社デンソー)
  • 2023-700670異議申立 / 2026-03-25 / 維持艶消物品
    同じ当事者: 本田 仁志
  • 2025-700427異議申立 / 2026-02-12 / 訂正認容対象物制御装置
    同じ当事者: 株式会社デンソー
  • 2024-700902異議申立 / 2025-06-13 / 維持電気化学セルおよび二酸化炭素回収システム
    同じ当事者: 株式会社デンソー
  • 2024-701102異議申立 / 2025-03-28 / 維持金属線
    同じ当事者: 本田 仁志
  • 2025-700039異議申立 / 2025-03-07 / 維持燃料電池用制御装置および燃料電池システム
    同じ当事者: 株式会社デンソー
同じ論点・分野の審決(審決分類)434件(113・B01D、121・B01D)
  • 2024-700585異議申立 / 2026-01-07 / 訂正認容非対称細孔構造を有する多孔質ポリエチレンフィルター膜ならびに関連するフィルターお…
    共通の審決分類: 113・B01D、121・B01D
  • 2024-701159異議申立 / 2025-11-18 / 訂正認容ガス回収設備、及びガス回収方法
    共通の審決分類: 113・B01D、121・B01D
  • 2024-700902異議申立 / 2025-06-13 / 維持電気化学セルおよび二酸化炭素回収システム
    共通の審決分類: 113・B01D、121・B01D
  • 2024-701180異議申立 / 2025-03-18 / 維持分離装置、および、分離装置の運転方法
    共通の審決分類: 113・B01D、121・B01D
  • 2023-701021異議申立 / 2025-01-08 / 訂正認容炭酸塩の晶析方法及び、炭酸塩の精製方法
    共通の審決分類: 113・B01D、121・B01D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存