特許異議申立
2024-700903
水道メータ位置特定検針システム、水道メータ位置特定検針方法、およびプログラム
- 審判番号
- 2024-700903
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-042268
- 登録番号
- 7460215
- 請求日
- 2024年09月19日
- 審決日
- 2025年06月12日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社KIS
- 【権利者代理人】弁理士法人ソシデア知的財産事務所
- 【異議申立人】第一環境 株式会社
- 【異議申立人代理人】IAT弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 田川 泰宏
- 審判官 小池 堂夫
- 分類
- P1651.851-YAA(G01C) / P1651.121-YAA(G01C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7460215号発明「水道メータ位置特定検針システム、水道メータ位置特定検針方法、およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7460215号の請求項の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9、10について訂正することを認める。
特許第7460215号の請求項1-10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7460215号の請求項1-10に係る特許についての出願は、令和5年3月16日に出願され、令和6年3月25日にその特許権の設定登録がされ、同年4月2日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年9月19日に特許異議申立人 第一環境株式会社(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
その後の手続きは以下のとおりである。
令和6年12月 6日 取消理由通知書(起案日)
令和7年 2月 7日 訂正請求書・意見書の提出(特許権者)
令和7年 2月25日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
令和7年 3月 3日 通知書(訂正請求があった旨の通知)(起案日)
なお、申立人から、指定期間内に通知書に対する意見書等の提出はなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
特許第7030251号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-10について訂正することを求める。
2 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する
【訂正前】「水道メータの位置を特定し検針を行うための水道メータ位置特定検針システムであって、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得部と、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導部と、
前記水道メータの検針情報を入力する入力部と、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力部と、
を備える水道メータ位置特定検針システム。」とあるのを、
【訂正後】「水道メータの位置を特定し検針を行うための水道メータ位置特定検針システムであって、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得部と、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導部と、
前記水道メータの検針情報を入力する入力部と、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力部と、
を備え、前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する、水道メータ位置特定検針システム。」に訂正する。(下線は、訂正請求書の記載と同様。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の【請求項4】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】「前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、前記水道メータの前記位置情報を補正する請求項1に記載の水道メータ位置特定検針システム。」とあるのを、
【訂正後】「前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得して蓄積し、蓄積した当該位置情報の平均値または中央値から前記水道メータの前記位置情報を補正する請求項1に記載の水道メータ位置特定検針システム。」に訂正する。(下線は、訂正請求書の記載と同様。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の【請求項9】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】「水道メータの位置特定と検針を行う水道メータ位置特定検針方法であって、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得ステップと、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導ステップと、
前記水道メータの検針情報を入力する入力ステップと、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力ステップと、
を備える水道メータ位置特定検針方法。」とあるのを
【訂正後】「水道メータの位置特定と検針を行う水道メータ位置特定検針方法であって、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得ステップと、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導ステップと、
前記水道メータの検針情報を入力する入力ステップと、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力ステップと、
前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正するステップと、
を備える水道メータ位置特定検針方法。」に訂正する。(下線は、訂正請求書の記載と同様。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の【請求項10】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】「水道メータの位置特定と検針を行う水道メータ位置特定検針システムに、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得ステップと、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導ステップと、
前記水道メータの検針情報を入力する入力ステップと、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力ステップと、
を実行させるためのコンピュータ読取り可能なプログラム。」とあるのを、
【訂正後】「水道メータの位置特定と検針を行う水道メータ位置特定検針システムに、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得ステップと、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導ステップと、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力ステップと、
前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正するステップと、
を実行させるためのコンピュータ読取り可能なプログラム。」と訂正する。(下線は、訂正請求書の記載と同様。)
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の構成に、下線部の限定事項を付加することで限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
訂正事項1は、上記アで説示したとおり、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の構成を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
訂正前の請求項4には、上記2(2)の【訂正前】に示したとおり、「前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、前記水道メータの前記位置情報を補正する」と記載されている。さらに、願書に添付した明細書の段落【0016】、【0082】~【0083】を参照すると、段落【0016】には「前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の前記位置情報を取得し、前記水道メータ敷設位置情報を補正する」と記載され、段落【0082】には、「水道メータ位置特定検針システム1の取得部301は、上述した検針処理において関連付けられた水道メータ位置情報10と、検針入力情報16と、ユーザ位置情報11とを取得し、取得した各々の情報から水道メータ位置情報10を補正する
(ステップS414)。」と記載され、段落【0083】には「定期的に行われる検診時において都度当該水道メータの位置情報を測位し、当該水道メータの位置情報を蓄積し関連付けることで位置情報の精度向上が可能となる。」と記載されている。
そうすると、同明細書の段落【0016】、【0082】~【0083】により、取得部が「前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する」ことが記載されているといえ、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、すべての請求項1-10に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項4の構成に、下線部の限定事項を付加することで限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
訂正事項2は、上記アで説示したとおり、本件訂正前の請求項4の構成を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
願書に添付した明細書の段落【0016】、【0082】~【0084】を参照すると、段落【0016】には「前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の前記位置情報を取得し、前記水道メータ敷設位置情報を補正する」と記載され、段落【0082】には、「水道メータ位置特定検針システム1の取得部301は、上述した検針処理において関連付けられた水道メータ位置情報10と、検針入力情報16と、ユーザ位置情報11とを取得し、取得した各々の情報から水道メータ位置情報10を補正する
(ステップS414)。」と記載され、段落【0083】には「定期的に行われる検診時において都度当該水道メータの位置情報を測位し、当該水道メータの位置情報を蓄積し関連付けることで位置情報の精度向上が可能となる。」と記載され、段落【0084】には「蓄積した当該水道メータの位置情報の平均値または中央値を当該水道メータの水道メータ位置情報10として設定し、更新し続けることで位置情報の精度を向上してもよい。」と記載されている。
そうすると、同明細書の段落【0016】、【0082】~【0084】により、取得部が「前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得して蓄積し、蓄積した当該位置情報の平均値または中央値から前記水道メータの前記位置情報を補正する」ことが記載されているといえ、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、すべての請求項1-10に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項9の構成に、下線部の限定事項を付加することで限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
訂正事項3は、上記アで説示したとおり、本件訂正前の請求項9の構成を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
上記(1)ウと同様の理由で、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、すべての請求項1-10に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項10の構成に、下線部の限定事項を付加することで限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
訂正事項4は、上記アで説示したとおり、本件訂正前の請求項10の構成を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
上記(1)ウと同様の理由で、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
エ 独立特許要件について
本件においては、すべての請求項1-10に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1-4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
さらに、訂正前の請求項1-8について、請求項2-8は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、請求項1-8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項4、6-7について、請求項6-7は、それぞれ請求項4を直接的又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項2によって訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。したがって、請求項4、6-7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
なお、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1-10に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9、10について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、特許第7460215号の請求項1-10の特許に係る発明は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
水道メータの位置を特定し検針を行うための水道メータ位置特定検針システムであって、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得部と、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導部と、
前記水道メータの検針情報を入力する入力部と、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力部と、
を備え、前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する、水道メータ位置特定検針システム。
【請求項2】
前記水道メータおよび前記ユーザの前記位置情報と、入力した前記検針情報とを少なくとも送受信する通信部を備える請求項1に記載の水道メータ位置特定検針システム。
【請求項3】
前記誘導部は、誘導時に前記水道メータの敷設位置付近の近景および遠景を少なくとも表示する請求項1に記載の水道メータ位置特定検針システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得して蓄積し、蓄積した当該位置情報の平均値または中央値から前記水道メータの前記位置情報を補正する請求項1に記載の水道メータ位置特定検針システム。
【請求項5】
前記水道メータの敷設位置付近の近景および遠景を撮影する撮影部をさらに備え、前記撮影部は、撮影位置の位置情報と、撮影した画像および映像と、前記水道メータの前記位置情報とを関連付ける請求項1に記載の水道メータ位置特定検針システム。
【請求項6】
前記水道メータに前記ユーザを誘導し検針を行うための作業端末と、前記作業端末と通信可能に接続されたコンピュータとを備える請求項1乃至5の何れか1項に記載の水道メータ位置特定検針システム。
【請求項7】
前記作業端末と通信可能に接続される前記位置情報を取得するための測位補助端末をさらに備える請求項6に記載の水道メータ位置特定検針システム。
【請求項8】
前記補助衛星は、少なくとも準天頂衛星「みちびき」(登録商標)である請求項1に記載の水道メータ位置特定検針システム。
【請求項9】
水道メータの位置特定と検針を行う水道メータ位置特定検針方法であって、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得ステップと、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導ステップと、
前記水道メータの検針情報を入力する入力ステップと、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力ステップと、
前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正するステップと、
を備える水道メータ位置特定検針方法。
【請求項10】
水道メータの位置特定と検針を行う水道メータ位置特定検針システムに、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得ステップと、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導ステップと、
入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力ステップと、
前記水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正するステップと、
を実行させるためのコンピュータ読取り可能なプログラム。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和6年9月19日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由
(1)理由1(進歩性)
本件特許の請求項1-10に係る発明は、甲第1号証記載の発明に、甲第4号証から甲第7号証記載の周知技術を適用して容易に発明できるものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1-10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(進歩性)
本件特許の請求項1-10に係る発明は、甲第2号証記載の発明に、甲第4号証から甲第7号証記載の周知技術を適用して容易に発明できるものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1-10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)理由3(進歩性)
本件特許の請求項1-10に係る発明は、甲第3号証記載の発明に、甲第4号証から甲第7号証記載の周知技術を適用して容易に発明できるものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1-10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
異議申立人が提出した証拠は以下のとおり
甲第1号証 特開2013-161435号公報
甲第2号証の1 MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)award2011参加一覧のホームページ(https://www.mcpc-jp.org/award2011/index.html)
甲第2号証の2 MCPCaward2011特別賞第一環境(株)「スマートフォンを利用した水道サービス現場支援モバイルGISシステム」システム概要のパワーポイント
甲第2号証の3 MCPCaward2011特別賞第一環境(株)の活用事例第12頁(https://www.mcpc-jp.org/jirei/pdf/11_mcpc_p12.pdf)
甲第2号証の4 第63回全国水道研究発表会講演集18~19頁
甲第2号証の5 第63回全国水道研究発表会講演集の目次及び奥付(講演プログラムを含む)
甲第3号証の1 第60回全国水道研究発表会講演集の目次及び奥付(講演プログラムを含む)
甲第3号証の2 第60回全国水道研究発表会講演集26~27頁
甲第3号証の3 第60回全国水道研究発表会講演1-13第一環境「検針巡回効率の比較実験-電子地図端末と紙地図を比較して-」発表パワーポイント
甲第4号証の1 平成30年度技術報告集(第33号) ホームページ(「https://www.suikon.or.jp/activity/publishing/tech_report/033/index.html」)
甲第4号証の2 (株)三水コンサルタント発表「IoTを活用した水道台帳作成例」
(「https://www.suikon.or.jp/activity/publishing/tech_report/033/images/h30_001.pdf」)
甲第5号証 特開2013-101013号公報
甲第6号証 測位航法学会全国大会セミナー 「GPS/GNSS の基礎と高精度測位技術」の抜粋(スライド1,140-152)
(https://www.enri.go.jp/jp/research/organization/nav/doc/publicity/pntj2021_seminar(1).pdf)
甲第7号証 特許第7060755号公報
第5 取消理由について
1 当審において令和6年12月6日付けで通知した取消理由(以下「取消理由」という。)の概要は以下のとおりである。
本件特許の請求項1-10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1~引用文献6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1-10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、該取消理由は、第4の1(1)の理由2に対応し、引用文献1は、甲第2号証のうち、甲第2号証の4及び甲第2号証の5に示された文献に対応する。
2 引用文献について
(1)引用文献1(甲第2号証の4、甲第2号証の5)
ア 引用文献1の記載
本願の出願前に公開された引用文献1(甲第2号証の4、甲第2号証の5)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同様。)。
(ア)「(1-9)料金徴収業務における携帯情報端末の導入効果 -広域化への備え-」
(イ)「1.はじめに
わが国の水道事業は、事業統合や共同委託などの広域化に向けた模索が始まっている。当社は、今後広域化が進むなか、どうすれば効率的な料金徴収業務(検針、引越し精算、開閉栓等)を提供できるかを検討してきた。
業務エリアが広がると、現在のような料金センター(営業所)から作業現場に向かう方法では移動時間が増加し、作業効率が低下するだけでなく、迅速なお客様対応が困難になる。料金徴収業務の現場作業はほとんどが数分で済むが、営業所と現場が離れている場合、移動に往復で1時間半以上費やすことも珍しくない。
当社は、移動時間の削減などを目的に、通信機能付の携帯情報端末(以下、PDA)を利用した『新システム』を開発し、2010年12月広島県呉市に導入した。(新システムの開発経緯は2011年5月の全国水道研究発表会で発表済)。
その後、新システムの機能を拡張し、2011年11月神奈川県横須賀市にも導入した。新システム導入によるお客様サービスの迅速化を実現し、業務効率改善の調査を横須賀市にて実施したので、その結果を報告する。
2.新システム概要
新システムは、(A)営業所から携帯電話網を経由して現場のPDAに作業データを送信、(B)現場作業者の最適移動順路を営業所に設置した管理PCで自動計算してPDAにその移動順路を表示(自動ルーティング機能)、(C)営業所と現場の間で作業の進捗状況と作業者の現在位置情報を共有、営業所から現場のPDAに作業情報を自動送信、という特徴をもつ。
二次開発では、開閉栓や給水停止だけでなく検針業務にも対応する機能を追加、更にPDAで水道メータの位置を修正登録できるようにした。また、通信可能地域を広げるため携帯電話キャリアの変更も行なった。」
(ウ)
「
[図:0001426832000001.jpg]
」
上記(ウ)を参照すると、「営業所内(管理PC)」に「(1)水道料金徴収システム」と「(2)新システム(地図・通信機能等)」とを備え、「現場(PDA)」に「(3)新システム(地図・通信機能等)」と「(4)現場業務システム(検針・給水停止等)」とを備え、「営業所内(管理PC)」と「現場(PDA)」とは「携帯電話網と閉域通信回線」で接続されており、
「検針等の作業データは(1)から(2)・(3)を経由して(4)に渡される。(4)で作業結果を入力すると、(3)・(2)を経由して(1)にデータが戻ってくる。(図中の各矢印と○1(当審注:「○1」は原文では丸囲み数字である、以下同様)の○6の番号は、このデータの流れを示す。)
作業進捗情報や移動予定ルート、各作業場所の位置、GPSによる現在位置情報は、(2)(3)間でやり取りされる。
(3)と(4)の各システムは、一台のPDAの中で動作する。」
と記載されていることが見て取れ、引用文献1には、(1)(2)(3)(4)の各システムからなるシステムが記載されているといえる。
イ 引用文献1に記載された発明
上記アによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「 新システムは、(A)営業所から携帯電話網を経由して現場のPDAに作業データを送信、(B)現場作業者の最適移動順路を営業所に設置した管理PCで自動計算してPDAにその移動順路を表示(自動ルーティング機能)、(C)営業所と現場の間で作業の進捗状況と作業者の現在位置情報を共有、営業所から現場のPDAに作業情報を自動送信、という特徴をもち、検針業務にも対応する機能を追加、更にPDAで水道メータの位置を修正登録できるようにしたものであって(上記ア(イ))、
営業所内(管理PC)に(1)水道料金徴収システムと(2)新システム(地図・通信機能等)とを備え、現場(PDA)に(3)新システム(地図・通信機能等)と(4)現場業務システム(検針・給水停止等)とを備え、営業所内(管理PC)と現場(PDA)とは携帯電話網と閉域通信回線で接続されており、検針等の作業データは(1)から(2)・(3)を経由して(4)に渡され、(4)で作業結果を入力すると、(3)・(2)を経由して(1)にデータが戻ってくるものであり、作業進捗情報や移動予定ルート、各作業場所の位置、GPSによる現在位置情報は、(2)(3)間でやり取りされ、(3)と(4)の各システムは、一台のPDAの中で動作する(上記ア(ウ))、
(1)(2)(3)(4)の各システムからなるシステム(上記ア(ウ))。」
(2)引用文献2、3(周知技術を示す文献)
ア 引用文献2(甲第5号証)
(ア)引用文献2の記載
本願の出願前に公開された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の運転支援または有料道路の課金を行うための位置標定装置、車載器、位置標定方法、位置標定プログラム、運転支援方法、運転支援プログラム、道路課金方法、道路課金プログラム、位置標定システム、運転支援システムおよび道路課金システムに関するものである。」
「【0010】
図1は、実施の形態1における安全運転支援システム100の概要図である。
実施の形態1における安全運転支援システム100の概要について、図1に基づいて説明する
【0011】
安全運転支援システム100(運転支援システムの一例)は、1機以上の準天頂衛星101と、複数の測位衛星102と、複数の車両103a-cとを有する。
【0012】
準天頂衛星101からの点線は測位信号およびLEX信号(L-band EXperiment)の送信を意味し、測位衛星102からの点線は測位信号の送信を意味する。
車両103a-c間の矢印は自己位置の通信を意味する。
【0013】
各車両103a-cの車載器は、準天頂衛星101と測位衛星102とから測位信号を受信し、準天頂衛星101から測位信号の観測量に含まれる誤差量を表す測位補強情報を含んだLEX信号を受信する。
各車両103a-cの車載器は、測位信号の観測量をLEX信号に含まれる測位補強情報に基づいて補正し、補正した測位信号の観測量を用いて自己位置を標定する。測位信号の観測量を測位補強情報に基づいて補正することにより、センチメートル級の精度(誤差が1メートル未満)で自己位置を標定することができる。」
「【0017】
準天頂衛星101(QZS:Quasi-Zenith Satellite)は、日本の上空を飛行する人工衛星であって測位衛星102の一種である。
複数の準天頂衛星101が所定の8の字形の準天頂軌道を飛行し、常に1機の準天頂衛星101が日本の上空に配置される測位システムを準天頂衛星システム(QZSS:QZS System)という。
【0018】
準天頂衛星101は、測位信号とLEX信号(測位補強信号の一例)とを周期的に送信する。
準天頂衛星101は日本の各地から見て高い仰角の方向に存在するため、準天頂衛星101から送信される測位信号およびLEX信号が建物などによって遮蔽されることは少ない。つまり、各車両103a-cが建物に囲まれた市街地を走行する場合であっても、各車両103a-cの車載器は準天頂衛星101から測位信号およびLEX信号を受信することができる。
【0019】
LEX信号とは、準天頂衛星101からLバンドの所定の周波数(1278.75MHz)で送信される信号である。
実施の形態において、準天頂衛星101は、測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための測位補強情報を設定してLEX信号を送信する。但し、測位補強情報はLEX信号と異なる周波数の信号で送信しても構わない。
測位信号の観測量とは、例えば、車載器と測位衛星102との間の疑似距離である。
測位信号の観測量に含まれる誤差量とは、測位衛星102が備える衛星時計の誤差、測位衛星102の軌道誤差、電離層や対流圏によって生じる測位信号の伝達遅延などの誤差成分の大きさである。」
「【図1】
[図:0001426832000002.jpg]
」
(イ)引用文献2に記載の技術事項
上記(ア)によれば、引用文献2には、次の技術事項が記載されているといえる。
「 安全運転支援システム100は、1機以上の準天頂衛星101と、複数の測位衛星102と、複数の車両103a-cとを有しており(【0011】)、
各車両103a-cの車載器は、準天頂衛星101と測位衛星102とから測位信号を受信し、準天頂衛星101から測位信号の観測量に含まれる誤差量を表す測位補強情報を含んだLEX信号を受信するものであって(【0013】)、
準天頂衛星101(QZS:Quasi-Zenith Satellite)は、測位衛星102の一種であり(【0017】)、
準天頂衛星101は、測位信号の観測量に含まれる誤差量を算出するための測位補強情報を設定してLEX信号を送信する(【0019】)、
安全運転支援システム100。」
イ 引用文献3(甲第6号証)
(ア)引用文献3の記載
本願の出願前に公開された引用文献3には、次の事項が記載されている。
a 表紙
「
[図:0001426832000003.jpg]
」
表紙には、「測位航法学会 セミナー○1 GPS/GNSSの基礎と高精度測位技術」と記載されている。
b スライド1
「
[図:0001426832000004.jpg]
」
スライド1には、「セミナー○1 GPS/GNSSの基礎」として、「(4)準天頂衛星システム(QZSS=みちびき)」と記載されている。
c スライド141
「
[図:0001426832000005.jpg]
」
スライド141には、「準天頂衛星システム(日本)」について、「2019.9打上げ 技術・利用実証実験」、「2018年実用4機体制を構築」と記載されている。
d スライド145
「
[図:0001426832000006.jpg]
」
スライド145には、「準天頂衛星システムの効果(2)」として、「GPSのみ バラつきが大きく、最大数10mに及ぶ誤差が生じることもある」、「QZSS実用化後:QZSSからの補正情報で誤差を補正: コード測位⇒誤差1m以下 搬送波位相測位⇒誤差数cm」と記載されている。
e スライド148
「
[図:0001426832000007.jpg]
」
スライド148には、「準天頂衛星システムの機能○1○2」として、「○1 GPSの補完:衛星数増加による測位精度の向上(上空視界の限られた都市部を中心に改善が図られる)」、「○2 GPSの補強:衛星測位の精度向上(電子基準点を活用してcm級精度を実現)」と記載されている。
g スライド149
「
[図:0001426832000008.jpg]
」
スライド149には、「衛星測位サービス」として、「GPSと同じ測位信号(L1C/A、L1C、L2C、L5)を送信するため、GPSと一体となって使用することで、測位精度が改善する。」と記載されている。
h スライド150
「
[図:0001426832000009.jpg]
」
スライド150には、「サブメータ級測位補強サービス」として、「主にハンディナビ、カーナビ、ドライブレコーダーなどでの利用を想定。L1S信号を受信できる端末で利用することができる。」と記載されている。
i スライド151
「
[図:0001426832000010.jpg]
」
スライド151には、「センチメータ級測位補強サービス」として、「主に車載や測量機材での利用を想定。L6信号を受信できる端末で利用することができる。」と記載されている。
(イ)引用文献3に記載の技術事項
上記(ア)によれば、引用文献3には、次の技術事項が記載されているといえる。
「 GPS/GNSSの基礎と高精度測位技術であって(表紙)、
準天頂衛星システム(QZSS=みちびき)(日本)は、2019年9月に打ち上げられ、2018年に実用4機体制が構築されており(スライド1、スライド141)、
準天頂衛星システムの効果は、GPSのみではバラつきが大きく、最大数10mに及ぶ誤差が生じることもあるが、QZSS実用化後は、QZSSからの補正情報で誤差を補正することにより、コード測位⇒誤差1m以下 搬送波位相測位⇒誤差数cmになるものであり(スライド145)、
準天頂衛星システムの機能には、GPSの補強:衛星測位の精度向上があり(スライド148)、
衛星測位サービスとして、GPSと一体となって使用することで、測位精度が改善するものであり(スライド149)、
サブメータ級測位補強サービスとして、ハンディナビでの利用を想定しており(スライド150)、
センチメータ級測位補強サービスとして、測量機材での利用を想定している(スライド151)、
GPS/GNSSの基礎と高精度測位技術。」
(3)引用文献4、5(周知技術を示す文献)
ア 引用文献4(甲第3号証の1、甲第3号証の2)
(ア)引用文献4の記載
本願の出願前に公開された引用文献4には、次の事項が記載されている。
a 「(1-13)検針巡回効率の比較実験 ―電子地図端末と紙地図を比較して―」
b 「1.はじめに
各種配達業務や電柱点検作業などで、作業者が効率的に現場での移動を行い必要な情報を管理できるようにGIS(Geographic Information System)とGPS(Global Positioning System)機能を搭載した携帯型電子機器の導入が始まっている。当社では、再検針、代理による定例検針、メータ交換業務など非定型な移動を伴う作業に将来このような電子機器が導入されていく可能性があると考え、どの程度移動時間を効率化できるかの実験を試みた。
2.実験結果
山間部の別荘地帯において、土地勘の無い被験者(検針員)4名が、紙の住宅地図或は水道メータ位置を登録した携帯型の電子地図端末を頼りに、同一の水道メータの検針を定められた時間の中でそれぞれ行った。結果は、紙の地図を利用した被験者に比べ、電子地図端末を利用した被験者の方が検針順路順に回った場合で4.8倍、バラバラのメータを任意の順で探した場合で2.8倍の効率で検針業務を行うことができた。全体では電子地図端末を利用した方が3.9倍効率的に移動できたという結果となった。(詳細は「実験結果一覧」参照)
3.準備
電子地図上に水道メータの位置を登録するにあたり、今回は水道事業体側に提供可能な位置座標のデータが無かった。そのため本実験にあたっては、当社がGPSを利用して事前にメータ位置座標の測定とデータ作成を行った。」
c
「
[図:0001426832000011.jpg]
」
(イ)引用文献4に記載の技術事項
上記(ア)によれば、引用文献4には、次の技術事項が記載されているといえる。
「 検針巡回効率の比較実験において(上記(ア)a)、
水道メータ位置を登録した携帯型の電子地図端末を頼りに、水道メータの検針を行った際に、準備として、電子地図上に水道メータの位置を登録するにあたり、GPSを利用して事前にメータ位置座標の測定とデータ作成を行った(上記(ア)b)。」
イ 引用文献5(甲第4号証の2)
(ア)引用文献5の記載
本願の出願前に公開された引用文献5には、次の事項が記載されている。
a 「IoTを活用した水道台帳作成事例」
b 「本稿は、上水道台帳システム構築業務における水道メーター(以下、メーターという)位置調査の事例を紹介するとともに、本調査から得たデータを基に、今後の上水道台帳システム(以下、台帳システムという)の精度向上に向けて、「効率性」、「コスト」、「位置の精度」の観点から、調査結果及び考察を報告するものである。」
c 「2. 台帳システム構築上の課題
台帳システムの管理情報は、管路や弁栓類の位置・設置年度・形式・口径、メーターの位置などが必要とされる。これらの位置情報は、災害時などの調査点検のため正確な情報が必要であるが、紙媒体からトレースした台帳システムではメーターや弁栓類などの位置が正確に反映されない場合が多い。
位置情報の入力は、仕切弁や消火栓などの弁栓類については、道路上の現地調査により精度向上が図れるが、宅地内にあるメーターは、調査箇所数が膨大で空き家や留守の家もあり、精度向上のためには、調査に多くの時間と労力が必要となり経費が増大する。
この課題の解消に当たり、メーター位置特定と精度向上、調査経費の削減を図るため、次に述べる IoT技術の活用を提案した。
3. IoTを活用したメーター位置調査
前述したとおり、台帳システムは、正確な位置情報の入力が必要となり、さらに限られた財政の中で構築することとなる。
IoTは、「Internet of Things」の略で、モノのインターネットとも呼ばれる。現在では、様々な分野で取り入れられている手法であり、主に作業の効率化やコスト削減に効果が期待されている。IoTの中には、AI、センサー、ロボット、スマートフォンなどがあり、我々の生活の手助けをしてくれている。
以下に、構築する上で課題となった正確なメーターの位置調査内容とそれに伴う経費の削減について述べる。
3-1 調査内容
選定した調査方法により取得したメーターの位置情報をもとに、台帳システムへメーターの登録を行う。調査対象は、町内の一部区域、約1,800箇所である。」
d 「3-2 調査方法の選定
調査方法は、ケース○1からケース○3が考えられ、それぞれの特徴及び比較表を次に示す。
ケース○1 RTK測量調査
1)測定方法
測定方法は、固定局からの補正観測情報を携帯電話や無線を利用して移動局に送信し、移動局の位置をリアルタイムで測定する方法で、GNSS受信機をメーター上にセットし、位置座標を取得する。
2)特徴
・誤差数cmと高精度の位置情報が取得可能
・調査日数:60日間
・コスト:約200万円」
e 「ケース○3 スマートフォン撮影調査
1)測定方法
○1 調査員4人を2人2組に分け、調査ブロックを分担し、調査する。調査員は、毎月巡回し、メーター位置を把握している水道検針員に協力をお願いする。
○2 調査員がスマートフォンとハンディGPSを携帯し、スマートフォンで水道台帳図を見ながらメーター位置で写真を撮影する。(写真は、周りの建物や構造物との位置関係を把握するための遠景撮影とメーター位置座標取得のための近景撮影を行う)
○3 位置情報付で撮影した写真のEXIFデータを利用し、台帳システムへデータインポートを行う。
○4 インポートされたメーター位置を確認し、大きなずれが生じている場合は、ハンディGPSの取得した軌跡データと写真撮影時間で整合を取り、撮影位置を再考する。
○5 遠景写真から建物や構造物の位置関係を確認する最終チェックを行う。
2)特徴
・スマートフォンのバックアップとしてハンディGPSでも撮影位置を補完可能
・遠景写真からメーターの位置を確認
・調査日数:5日間
・コスト:約30万円」
f 「4.まとめ
今回の台帳整備では、台帳作成の精度向上と工期の短縮、コストの削減に有効であった。特に、IoTディバイスの利用と、水道検針員と協働できたことで、位置特定の作業が正確かつスムーズに作業することができた。
現在最も身近なIoTディバイスであるスマートフォンを活用した今回の調査方法は、GISデータの構築に非常に有効な調査手段であることが実証できた。また、メーターの撮影以外にも、モバイル台帳システムによる台帳図の閲覧、調査メモの入力、無料通話アプリによる連絡通話といった機能も利用し、調査状況の共有や進捗管理にも役立てることができ、その利便性とコストパフォーマンスは非常に高いと考える。
これらの手法は、GISデータ構築に限らず、災害時の調査にも応用が可能で、他県から訪れる土地勘の無い応援部隊にも正確な施設情報を提供することができ、災害状況の把握や共有に役立つツールであると言える。
撮影した写真の中には、山間部など地形状況により、10m程度の誤差を生じるものもあったが、2018年11月に本格運用予定とされている準天頂衛星みちびきを利用した位置情報サービスにより、その精度も向上されることが期待できる。
近い将来には、上水道台帳を始め、インフラ管理の基礎情報である位置情報の精度向上のためにIoTディバイスの活用がさらに有効的に機能するものと考える。」
(イ)引用文献5の記載の技術事項
上記(ア)によれば、引用文献5には、次の技術事項が記載されているといえる。
「 IoTを活用した水道台帳作成であって(上記(ア)a)、
上水道台帳システム構築業務における水道メーター(以下、メーターという)位置調査であり(上記(ア)b)、
台帳システムの管理情報は、管路や弁栓類の位置・設置年度・形式・口径、メーターの位置などが必要とされ、これらの位置情報は、災害時などの調査点検のため正確な情報が必要であり(上記(ア)c)、
IoTを活用したメーター位置調査は、選定した調査方法により取得したメーターの位置情報をもとに、台帳システムへメーターの登録を行うものであり(上記(ア)c)、
RTK測量調査では、GNSS受信機をメーター上にセットし、位置座標を取得するものであり(上記(ア)d)、
スマートフォン撮影調査では、調査員がスマートフォンとハンディGPSを携帯し、スマートフォンで水道台帳図を見ながらメーター位置で写真を撮影し(写真は、周りの建物や構造物との位置関係を把握するための遠景撮影とメーター位置座標取得のための近景撮影を行う)、ハンディGPSの取得した軌跡データと写真撮影時間で整合を取り、撮影位置を再考する(上記(ア)e)、
IoTを活用した水道台帳作成。」
(4)引用文献6(甲第1号証)
ア 引用文献6の記載
本願の出願前に公開された引用文献6には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計の検針作業において作業効率を向上させる検針作業支援システムに係り、特に、検針員の交替時に引き継ぎ業務を円滑に進め、交替した検針員の負担を軽減させることが可能な検針作業支援システムに関する。」
「【0023】
本実施例の検針作業支援システムの構成について図1を用いて説明する。
図1(a)は本発明の実施の形態に係る検針作業支援システムの構成図であり、図1(b)は図1(a)に示した作業用携帯端末の構成図である。
図1(a)に示すように、本実施例の検診作業支援システムでは、本社や本店等に設置されるホストコンピュータ1に、各営業所等に設置された管理コンピュータ2が専用回線やインターネットなどの通信網を介して接続されるとともに、複数の作業用携帯端末3が有線又は無線の通信手段を介して管理コンピュータ2に接続されている。」
「【0026】
作業用携帯端末3は、検針員が検針対象場所において電力量計から読み取った検針値を入力するためのものであり、有線又は無線の通信手段を介して管理コンピュータ2との間でデータを送受信可能に構成されている。
具体的には、図1(b)に示すように、作業用携帯端末3は、管理コンピュータ2との間でデータの送受信を行うための通信部9と、液晶ディスプレイ等からなる表示部10と、検針員が検針値を入力するための入力部11と、顧客データや画像データが保存される記憶部12を備えている。」
「【0038】
検針日の当日、検針員は検針対象となる住戸を訪問し、その住戸に設置された電力量計の検針値を読み取る。その後、この検針値を作業用携帯端末3に入力し、記憶部12に保存する。そして、電力量計に表示された時刻及び電力量計が設置された場所周辺の異常の有無についての確認を行うとともに、顧客からの申出があった場合には、その内容を作業用携帯端末3に入力する。このとき、作業用携帯端末3の撮像部13を利用して、検針対象場所や電力量計の設置箇所及びその周辺を必要に応じて撮影し、その画像データを記憶部12に保存する(ステップS5)。
【0039】
なお、検針対象となる住戸を訪問する際、検針員は作業用携帯端末3の表示部10に「検針対象場所の画像」(図7(a)参照)や「電力量計の設置場所を示す画像(静止画又は動画)」(図7(b)参照)を表示させる。これらの画像を参照することによれば、検針員は検針順路の選択を誤るおそれがない。また、現場で電力量計を探す手間が省かれる。
さらに、本実施例の検針作業支援システムでは、GPS受信機14により取得された現在位置が位置表示部15によって「検針対象場所を示す画像」に重ねて作業用携帯端末3の表示部10に表示される。すなわち、検針員は作業用携帯端末3の表示部10に表示された上記画像によって自分の現在位置を確認できるため、道に迷うおそれがない。従って、万一、検針対象となる区画に不慣れな場合であっても、検針員は正しい検針順路を通って検針対象場所に赴き、効率よく検針作業を行うことができる。
【0040】
検針作業終了後、検針員は作業用携帯端末3の記憶部10に記憶させた検針結果を通信部9を介して管理コンピュータ2に転送し、その記憶装置4bに記憶させる(ステップS6)。そして、ホストコンピュータ1の操作者は検針者が管理コンピュータ2の記憶装置4bに記憶させた内容をホストコンピュータ1の記憶装置4aに伝送し、検針結果に基づいて顧客の電気料金を計算する(ステップS7)。
【0041】
なお、ステップS6において、作業用携帯端末3の記憶部12に、検針員が撮像部13を利用して撮影した検針対象場所や電力量計の設置箇所を示す画像データが新たに保存されている場合には、これらの画像データを必要に応じて管理コンピュータ2を介してホストコンピュータ1に送信する。これにより、ホストコンピュータ1の記憶装置4aに保存されている画像データが更新される。
このように、顧客データを常に最新の状態に保つことによれば、電力量計が設置された箇所の周辺で検針作業に影響を与えるような状況が新たに発生した場合でも、応援検針の引き継ぎ業務の際に、交替した別の検針員に対してその内容を正確に伝達することができる。これにより、その検針員は上述の状況に正確に対処し、効率よく応援検針を行うことができる。」
「【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の請求項1乃至請求項4に記載された発明は、電力量計に限らず、ガスや水道の使用量を表示する計器の検針作業に対しても適用可能である。」
「【図1】
[図:0001426832000012.jpg]
」
「【図7】
[図:0001426832000013.jpg]
」
イ 引用文献6に記載の技術事項
上記アによれば、引用文献6には、次の技術事項が記載されているといえる。
「 電力量計の検針作業において作業効率を向上させる検針作業支援システムであって(【0001】)、
ホストコンピュータ1に管理コンピュータ2が通信網を介して接続されるとともに、複数の作業用携帯端末3が通信手段を介して管理コンピュータ2に接続されており(【0023】)、
作業用携帯端末3は、検針員が検針対象場所において電力量計から読み取った検針値を入力するためのものであり、管理コンピュータ2との間でデータを送受信可能に構成されており(【0026】)、
検針日の当日、検針員は検針対象となる住戸を訪問し、その住戸に設置された電力量計の検針値を読み取り、その後、この検針値を作業用携帯端末3に入力し、記憶部12に保存し、このとき、作業用携帯端末3の撮像部13を利用して、検針対象場所や電力量計の設置箇所及びその周辺を撮影し、その画像データを記憶部12に保存し(【0038】)、
検針対象となる住戸を訪問する際、検針員は作業用携帯端末3の表示部10に「検針対象場所の画像」や「電力量計の設置場所を示す画像(静止画又は動画)」を表示させ、これらの画像を参照することにより、検針員は検針順路の選択を誤るおそれがなく、現場で電力量計を探す手間が省かれ(【0039】)、
さらに、GPS受信機14により取得された現在位置が位置表示部15によって「検針対象場所を示す画像」に重ねて作業用携帯端末3の表示部10に表示され、検針員は作業用携帯端末3の表示部10に表示された上記画像によって自分の現在位置を確認できるため、道に迷うおそれがなく(【0039】)、
作業用携帯端末3の記憶部12に、検針員が撮像部13を利用して撮影した検針対象場所や電力量計の設置箇所を示す画像データが新たに保存されている場合には、これらの画像データを管理コンピュータ2を介してホストコンピュータ1に送信することにより、ホストコンピュータ1の記憶装置4aに保存されている画像データが更新されるものであって(【0041】)、
電力量計に限らず、水道の使用量を表示する計器の検針作業に対しても適用可能である(【0043】)、
検針作業支援システム。」
第6 取消理由についての判断
1 請求項1に係る発明について
(1)対比
請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」という。他の請求項についても同様。)と、引用発明とを対比する。
ア 本件特許発明1の「水道メータの位置を特定し検針を行うための水道メータ位置特定検針システム」について
引用発明の「現場(PDA)」は、「(3)新システム(地図・通信機能等)と(4)現場業務システム(検針・給水停止等)とを備え」るものであって、「(B)現場作業者の最適移動順路を営業所に設置した管理PCで自動計算してPDAにその移動順路を表示(自動ルーティング機能)」するものであり、「検針業務にも対応する機能を追加、更にPDAで水道メータの位置を修正登録できるようにした」ものである。
ここで、「検針業務」とは「水道メータ」の「検針業務」を示しており、「現場作業者の最適移動順路」「を表示(自動ルーティング機能)」することは、「現場作業者」が「水道メータの位置」に「移動」するための「最適移動順路」を「表示(自動ルーティング機能)」することを意味しているから、引用発明の「現場(PDA)」では、前記「最適移動順路」を表示するために「水道メータの位置」が特定されていることは明らかである。
そして、引用発明の「(3)新システム(地図・通信機能等)と(4)現場業務システム(検針・給水停止等)とを備え」る「現場(PDA)」は、これら2つのシステム(3)(4)を備えるシステムであって、前述したとおり、水道メータの位置が特定されており、水道メータの「検針業務」を行うためのシステムであるから、水道メータ位置特定検針システムであるといえる。
よって、引用発明の「(3)新システム(地図・通信機能等)と(4)現場業務システム(検針・給水停止等)とを備え」る「現場(PDA)」は、本件特許発明1の「水道メータの位置を特定し検針を行うための水道メータ位置特定検針システム」に相当する。
イ 本件特許発明1の「一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータおよびユーザの位置情報を少なくとも取得する取得部」について
引用発明では、「GPSによる現在位置情報は、(2)(3)間でやり取りされ」るところ、ここでいう「GPSによる現在位置情報」とは「現場(PDA)」の「現在位置情報」を示していることは明らかであるから、引用発明の「現場(PDA)」は「GPSによる現在位置情報」を取得する機能を有していると解される。
そして、引用発明の「現場(PDA)」は、「現場作業者」であるユーザが現場に携帯するPDAであるから、引用発明の「現場(PDA)」が「GPSによる現在位置情報」を取得することは、「GPS」によってユーザの位置情報を取得することに他ならず、また、「GPS」が一つ乃至複数のナビゲーション衛星から測位されるものであることは技術常識である。
よって、引用発明の「現場(PDA)」は、「一つ乃至複数のナビゲーション衛星から測位されるユーザ位置情報を取得する」機能を有しているといえる。
さらに、上記アで検討したとおり、引用発明の「現場(PDA)」では「水道メータの位置」が特定されているとは明らかなところ、「各作業場所の位置、・・・は、(2)(3)間でやり取りされ」るものである。ここで、前記「各作業場所の位置」とは、水道メータの「検針」を行う作業場所を示しており、これは水道メータの位置に他ならないから、引用発明の「現場(PDA)」は、前述した「一つ乃至複数のナビゲーション衛星から測位されるユーザ位置情報」に加え、「水道メータの位置情報」も前記「(2)(3)間」の「やり取り」によって取得していると推察され、引用発明の「現場(PDA)」は、これら2つの位置情報を少なくとも取得する取得部を実質的に備えているといえる。
以上を踏まえると、本件特許発明1と引用発明の「現場(PDA)」は、下記の相違点1、2を除いて、「一つ乃至複数のナビゲーション衛星から測位されるユーザの位置情報と、水道メータの位置情報とを少なくとも取得する取得部」を備えている点で一致する。
ウ 本件特許発明1の「取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導部」について
引用発明は、「(B)現場作業者の最適移動順路を営業所に設置した管理PCで自動計算してPDAにその移動順路を表示(自動ルーティング機能)」するものであって、上記(2)で検討したとおり、引用発明の「現場(PDA)」はユーザの位置情報と水道メータの位置情報とを少なくとも取得するものであるから、引用発明の「現場(PDA)」は、取得したこれらの位置情報に基づいて、ユーザが水道メータの位置に移動するための「最適移動順路」を「表示(自動ルーティング機能)」するものと解される。
そして、ユーザが水道メータの位置に移動するための「最適移動順路」を「表示(自動ルーティング機能)」することは、ユーザを水道メータの敷設位置に誘導することに他ならないから、引用発明の引用発明の「現場(PDA)」は、取得した前記位置情報からユーザを水道メータの敷設位置に誘導する誘導部を実質的に備えているといえる。
よって、本件特許発明1と引用発明の「現場(PDA)」は、「取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導部」を備えている点で一致する。
エ 本件特許発明1の「前記水道メータの検針情報を入力する入力部」について
引用発明は「検針業務にも対応する機能を追加」されたものであって、引用発明の「現場(PDA)」は「(4)現場業務システム(検針・給水停止等)」を備えるものであるから、かかる「(4)現場業務システム(検針・給水停止等)」で行われる「検針業務」において、水道メータの検針情報を入力することは明らかである。
よって、引用発明の「現場(PDA)」は、水道メータの検針情報を入力するための入力部を実質的に備えていると解され、本件特許発明1と引用発明の「現場(PDA)」は、「前記水道メータの検針情報を入力する入力部」を備えている点で一致する。
オ 本件特許発明1の「入力した前記検針情報と取得した前記位置情報を少なくとも出力する出力部」について
上記エで検討したとおり、引用発明の「現場(PDA)」は、検針情報を入力する入力部を備えていると解されるところ、引用発明は、「(4)で作業結果を入力すると、(3)・(2)を経由して(1)にデータが戻ってくるもの」であるから、引用発明の「現場(PDA)」の「(4)現場業務システム(検針・給水停止等)」において入力した検針情報は、「(3)・(2)を経由して」「営業所内(管理PC)」に出力されるといえる。
さらに、引用発明では「GPSによる現在位置情報は、(2)(3)間でやり取りされ」るところ、上記イで検討したとおり、「GPSによる現在位置情報」は「現場(PDA)」の現在位置情報であって、作業者であるユーザの現在位置情報に他ならないから、引用発明の「現場(PDA)」は、GPSにより取得したユーザの現在位置情報を「営業所内(管理PC)」に出力するものと解される。
以上を踏まえると、引用発明の「現場(PDA)」は、入力した検針情報と、ユーザの位置情報を「営業所内(管理PC)」に出力するための出力部を実質的に備えているといえる。
よって、本件特許発明と引用発明1は、下記の相違点3を除いて、「入力した前記検針情報と前記ユーザの位置情報を少なくとも出力する出力部」を備えている点で一致する。
カ 本件特許発明1の「水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する」について
引用発明は、「水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する」ものとはいえず、この点は、相違点である。
この点、申立人は、訂正前の請求項4に関連して、引用文献1(甲第4号証の4)の「二次開発では、開閉栓や給水停止だけでなく検針業務にも対応する機能を追加、更にPDAで水道メータの位置を修正登録できるようにした。」の記載を指摘しているが、この記載は、「水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する」旨を示す記載であるとはいえない。
キ 上記ア~オの検討を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
水道メータの位置を特定し検針を行うための水道メータ位置特定検針システムであって、
一つ乃至複数のナビゲーション衛星から測位されるユーザの位置情報と、水道メータの位置情報とを少なくとも取得する取得部と、
取得した前記位置情報から前記ユーザを前記水道メータの敷設位置に誘導する誘導部と、
前記水道メータの検針情報を入力する入力部と、
入力した前記検針情報と取得した前記ユーザの位置情報を少なくとも出力する出力部と、
を備える水道メータ位置特定検針システム。
[相違点1]
ユーザの位置情報の測位に関して、本件特許発明1は、一つ乃至複数のナビゲーション衛星「および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される」ものであるのに対して、引用発明は、ナビゲーション衛星により測位しているものの「および・・・補助衛星から測位される」とはしていない点。
[相違点2]
水道メータの位置情報の取得に関して、本件特許発明1は、水道メータの位置情報は「一つ乃至複数のナビゲーション衛星および前記ナビゲーション衛星に関する補強信号を放送する補助衛星から測位される、水道メータ」「の位置情報」を取得するものであるのに対して、引用発明は、水道メータの位置情報をどのように取得するのか明らかではない点。
[相違点3]
出力部に関して、本件特許発明1は、ユーザの位置情報に加えて「水道メータの位置情報」も出力しているのに対して、引用発明は、「水道メータの位置情報」を出力するのか明らかではない点。
[相違点4]
取得部に関して、本件特許発明1は、「水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する」ものであるのに対して、引用発明はそのような構成を有していない点。
(2) 相違点の判断
事案に鑑み、上記[相違点4]について検討する。
ア上記1(3)ア(イ)で示したとおり、引用文献4には、「水道メータ位置を登録した携帯型の電子地図端末を頼りに、水道メータの検針を行った際に、準備として、電子地図上に水道メータの位置を登録するにあたり、GPSを利用して事前にメータ位置座標の測定とデータ作成を行った」という技術事項が記載されており、これはあらかじめ水道メータの位置情報をGPSにより測位して登録しておくことを示すものである。
また、上記1(3)イ(イ)で示したとおり、引用文献5には、「IoTを活用した水道台帳作成であって、上水道台帳システム構築業務における水道メーター(以下、メーターという)位置調査であり」、「台帳システムの管理情報は、・・・、メーターの位置などが必要とされ、これらの位置情報は、災害時などの調査点検のため正確な情報が必要であり」、「RTK測量調査では、GNSS受信機をメーター上にセットし、位置座標を取得するものであり」、「スマートフォン撮影調査では、調査員がスマートフォンとハンディGPSを携帯し」、「ハンディGPSの取得した軌跡データと写真撮影時間で整合を取り、撮影位置を再考する」という技術事項が記載されている。
引用文献5に記載の上記技術事項によれば、引用文献5に記載の水道台帳は、GNSSやGPSにより測位した水道メータの位置情報などを登録したものであって、調査点検に使われるものである。
よって、引用文献4、5に記載の上記技術事項に鑑みると、水道メータの検針や調査点検に用いるために、予め水道メータの位置情報をGPSにより測定して登録しておくことは、本願出願時において周知技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
イ「水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する」ことは引用文献4、5には記載されておらず、引用文献1に周知技術1を適用しても相違点4の構成には至らない。さらには、このことは、申立人が提出した甲第1号証~甲第7号証(枝番を含む。第4の2)のいずれにも記載されておらず、また、当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項でもなく、相違点4について容易想到であるとはいえない。
ウ したがって、本件特許発明1は、引用発明と引用文献1~6を含む甲第1号証乃至甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 請求項2-8に係る発明について
本件特許発明2~本件特許発明8は、いずれも、上記1で検討した相違点4に係る発明特定事項を含め、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであり、本件特許発明1と同様に、引用発明と甲第1号証乃至甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 請求項9及び10に係る発明について
本件特許発明9及び本件特許発明10は、本件特許発明1の「水道メータ位置特定検針システム」の発明を、それぞれカテゴリの異なる「水道メータ位置特定検針方法」及び「コンピュータ読取り可能なプログラム」の発明としたものであり、それぞれ引用発明に対応する方法及びプログラムの発明と対比すると、上記1(1)カの相違点4と同様の相違点を有することになる。 そして、上記1(2)に照らせば、この相違点について容易想到であるとはいえない。
したがって、上記1と同様、本件特許発明9及び本件特許発明10は、引用発明と甲第1号証乃至甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 取消理由通知において採用しなかった申立理由(理由1、理由3)について
1 本件特許発明1~本件特許発明8は第6で検討した相違点4に係る発明特定事項(「水道メータの前記検針情報を入力する度に入力時の位置情報を取得し、当該位置情報を蓄積することで前記水道メータの前記位置情報を補正する」)を含み、本件特許発明9及び本件特許発明10は、この相違点4に相当する相違点に対応する発明特定事項を含むものであるのに対し、第6に示したとおり、申立人が提出した甲第1号証~甲第7号証には、この点が記載されておらず、また、この点は、当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項でもない。
2 申立人は、訂正前の請求項4に係る発明に関連して、甲第1号証の段落【0040】【0041】を指摘して、検診員が作業端末の撮像部で撮像した検診対象場所や電力量計の設置箇所を示す画像データでホストコンピュータの画像データが更新される旨の記載があり、このホストコンピュータの画像データが更新されるとは、水道メータの位置情報を補正することを意味し、検診の際に、計器の位置情報を補正していることは明らかである旨、及び甲3発明に甲1発明の「検診の際に、検診対象場所等を撮像して、画像データを更新する」構成を適用し、本件特許発明4の構成とすることは、当業者にとって容易である旨を主張している。
しかしながら、甲第1号証の段落【0040】【0041】の記載は、検診の際に、計器の位置情報を補正する旨を示すものではないことが明らかであるから、申立人の主張を採用することはできない。
3 以上を踏まえると、理由1及び理由3により、請求項1-請求項10に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は認められるものであり、また、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1-10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700903