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特許異議申立

2024-700902

電気化学セルおよび二酸化炭素回収システム

審判番号
2024-700902
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-182708
登録番号
7453651
請求日
2024年09月19日
審決日
2025年06月13日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社デンソー
  • 【権利者代理人】弁理士法人かいせい特許事務所
  • 【権利者】国立大学法人京都大学
  • 【権利者代理人】弁理士法人かいせい特許事務所
  • 【異議申立人】相庭 大介
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 増山 淳子
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.113-Y (B01D) / P1651.121-Y (B01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
データ出所
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特許第7453651号発明「電気化学セルおよび二酸化炭素回収システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7453651号の請求項1~14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7453651号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和2年10月30日の出願であって、令和6年3月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~14に係る特許に対して、令和6年9月19日に特許異議申立人相庭大介(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明14」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 CO2吸着材(102b)を含む作用極(102)と、対極(103)と、を備え、 前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合し、 前記CO2吸着材は、結晶性多孔体であり、電子の授受を行ってCO2と結合する官能基が規則的に配置された分子構造を有しており、 前記CO2吸着材は、前記官能基が結晶格子の架橋部に規則的に配置されている電気化学セル。 【請求項2】 前記結晶性多孔体は、金属有機構造体、共有結合性有機構造体および炭素質材料の少なくとも1つである請求項1に記載の電気化学セル。 【請求項3】 前記結晶性多孔体は金属有機構造体であり、前記官能基はケトン基である請求項2に記載の電気化学セル。 【請求項4】 前記金属有機構造体は、Alイオンにケトン基を含むベンゾフェノンジカルボン酸塩が配位している請求項3に記載の電気化学セル。 【請求項5】 前記対極は、電子の授受を行う補助材(103b)を含んでおり、 前記対極の電位が前記作用極の電位より高くなる第1の電圧が前記対極と前記作用極との間に印加されることで、前記補助材から前記CO2吸着材に電子が供給され、前記CO2吸着材がCO2と結合する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項6】 前記第1の電圧よりも低い第2の電圧が前記対極と前記作用極との間に印加されることで、前記CO2吸着材から前記補助材に電子が供給され、前記CO2吸着材が吸着しているCO2を脱離する請求項5に記載の電気化学セル。 【請求項7】 前記作用極は導電性物質(102c)を含んでおり、前記導電性物質は前記CO2吸着材と混合した状態となっている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項8】 前記導電性物質は、炭素質材料から構成されている請求項7に記載の電気化学セル。 【請求項9】 前記作用極は、導電性を有する電極基材(102a)を含んでおり、 前記CO2吸着材は、前記電極基材に保持されている請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項10】 前記電極基材は、炭素質材料もしくは金属材料からなり、前記CO2含有ガスが通過可能な孔が形成された多孔質構造を備えている請求項9に記載の電気化学セル。 【請求項11】 前記作用極は、前記CO2吸着材を前記電極基材に保持させるためのバインダ(102d)を含んでいる請求項9または10に記載の電気化学セル。 【請求項12】 前記作用極と前記対極との間にイオン伝導性を有するイオン伝導性物質(106)が設けられており、前記イオン伝導性物質はイオン液体もしくは固体電解質である請求項1ないし11のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項13】 前記作用極と前記対極との間に、導電性を有さない絶縁層(104)が設けられている請求項1ないし12のいずれか1つに記載の電気化学セル。 【請求項14】 請求項1ないし13のいずれか1つに記載の電気化学セルを備える二酸化炭素回収システム。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由は、概略以下のとおりである。 ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。 甲第1号証:Siwu Li et al., "Carbon dioxide in the cage: manganese metal-organic frameworks for high performance CO2 electrodes in Li-CO2 batteries", Energy & Environmental Science, 2018, p.1318-1325 甲第2号証:国際公開第2017/075014号 甲第3号証:特開2017-125234号公報 甲第4号証:Xing Gao et al., " MOFs and COFs for Batteries and Supercapacitors", Electrochemical Energy Reviews, 2019, Vol.3, p.81-126 甲第5号証:Bohejin Tang et al.," Mechanism of electrochemical lithiation of a metal-organic framework without redox-active nodes", The Journal of Chemical Physics, 2016, Volume 144, 194702 甲第6号証:米国特許第8377999号明細書 甲第7号証:Catherine R. DeBlase et al., " Rapid and Efficient Redox Processes within 2D Covalent Organic Framework Thin Films", ACS Nano, 2015, Vol.9, No.3, p.3178-3183 甲第8号証:Deanna M. D'Alessandro et al., " Carbon Dioxide Capture:Prospects for New Materials", Angew. Chem. Int. Ed., 2010, Vol.49, p.6058-6082 甲第9号証:Paula J. Celis-Salazar et al.," Proton-Coupled Electron Transport in Anthraquinone-Based Zirconium Metal-Organic Frameworks", Inorganic Chemistry, 2017, vol.56, p.13741-13747 甲第10号証:Ravichandar Babarao et al.," Molecular Screening of Metal-Organic Frameworks for CO2 Storage", Langmuir, 2008, Vol.24, Issue 12, p.6270-6278 甲第11号証:Helge Reinsch et al., "First Keto-Functionalized Microporous Al-Based Metal-Organic Framework:[Al(OH)(O2C- C6H4-CO-C6H4-CO2)]", Inorganic Chemistry, 2013, vol.52, p.1854-1859 甲第12号証:Shin-ichiro Noro et al., "Fluorine-functionalized metal-organic frameworks and porous coordination polymers",NPG Asia Materials, 2017, 9, e433, p.1-14 甲第13号証:Jian-Rong Li et al., "Porous materials with pre-designed single-molecule traps for CO2 selective adsorption", nature communications, 2013,vol.4, p.1-8 甲第14号証:特開昭56-33489号公報 甲第15号証:Joseph H. Rheinhardt et al.," Electrochemical Capture and Release of Carbon Dioxide", ACS Energy Letters, 2017, Vol.2, Issue 2, p.454-461 (以下、甲第1号証等を「甲1」等という。) 1 申立理由1(甲1を主たる証拠とした新規性、進歩性欠如) 本件発明1、2、7~9、11、13は、甲1に記載された発明であり、本件発明3~6、10、12、14は、甲1に記載された発明及び甲2、5、11、15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(甲2を主たる証拠とした進歩性欠如) 本件発明1~14は、甲2に記載された発明及び甲4又は甲5に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 申立理由3(甲3を主たる証拠とした進歩性欠如) 本件発明1~14は、甲3に記載された発明及び甲4又は甲5に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 なお、甲6は、共有結合性有機骨格(COF)及びケトンリンカーを含む多孔質構造化有機フィルム(SOF)の複数の孔に二酸化炭素が吸着または吸収されたSOFに関する記載がある文献であり、甲7は、ケトン基が結晶格子の架橋部に規則的に配置された分子構造を有する結晶性多孔体のDAAQ-TFP COF、DAAQ-TFP COFとカーボンブラックとPVDFバインダーを混合したスラリーから形成された電極に関する記載がある文献であり、甲8は、金属-有機構造体、共有結合性有機構造体(COF)が、CO2を吸着するため、CO2回収に用いられることが記載されている文献であり、甲9は、2,6-Zr-AQ-MOF、1,4-Zr-AQ-MOFの分子構造に関する記載のある文献であり、甲10は、CO2貯蔵用の金属有機構造体(MOF)についての分子シミュレーションに関する記載のある文献であり、甲12は、フッ素官能基化金属有機構造体についての記載のある文献であり、甲13は、O及びNを含む官能基が結晶格子の架橋部に規則的に配置されている有機金属構造体からなる、CO2選択的吸着用の単分子トラップ(SMT)に関する記載のある文献であり、甲14は電気触媒及び導電性物質の粉末をバインダーにより隔膜表面に結合させることに関する記載のある文献である。 第4 各証拠に記載された事項 甲1~5、11、15には以下の事項が記載されている。甲6~10、12~14については摘記を省略する(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。 1 甲1に記載された事項 (1)「In pursuing a multifunctional porous material for high-performance CO2 electrodes, we targeted the MOF family for the following considerations: (1) MOFs have strong capability in CO2 capture; the affinity with and the uptake amount of CO2 can be easily tuned by adjusting the pore size and functionality of MOFs. (2) MOFs possess regularly arranged micropores, providing separated and strictly confined nanospaces that can dictate the nucleation and early-stage deposition of Li2CO3, and induce its growth towards a uniform nanostructured morphology. (3) Catalytic metal centers can be monodispersed in the highly porous framework, facilitating a complete and efficient decomposition of the nanostructured Li2CO3. (4) The metal centers and pore structures of MOFs can be systematically varied for drawing out the structure-performance relationships, making rational design and optimization possible (Fig. 1). Herein, we have, for the first time, identified the potential of MOFs as porous catalysts in CO2 electrodes. In particular, eight porous MOFs (Mn2 (dobdc), Co2 (dobdc), Ni2 (dobdc), Mn(bdc),Fe(bdc), Cu(bdc), Mn(C2H2N3) 2, and Mn(HCOO) 2) and two nonporous materials (MnCO3 and MnO) were investigated. ・・・ [図:0001424597000001.jpg] 」 (1319頁右欄5~19行目、図1) (当審訳:高性能CO2電極の多機能多孔質材料を追求するにあたり、以下を考慮してMOFファミリーをターゲットにした。(1)MOFはCO2捕捉能力が高い、MOFの細孔径や機能を調整することでCO2との親和性や取り込み量を容易に調整できる。(2)MOFは規則的に配置された微細孔を有し、Li2CO3の核形成と初期段階の堆積を示し、均一なナノ構造形態への成長を誘導できる分離され厳密に制限されたナノスペースを提供する。(3)触媒金属中心は、高多孔質フレームワーク中に単分散させることができ、ナノ構造のLi2CO3の完全かつ効率的な分解を促進する。(4)MOFsの金属中心や細孔構造を系統的に変化させて構造と性能の関係を引き出すことができるため、合理的な設計と最適化が可能となる(図1)。 本研究では、我々は、CO2電極における多孔質触媒としてのMOFの可能性を初めて特定した。特に、8つの多孔質材料MOF(Mn2(dobdc)、Co2(dobdc)、Ni2(dobdc)、Mn(bdc)、Fe(bdc)、Cu(bdc)、Mn(C2H2N3)2およびMn(HCOO)2)ならびに2つの非多孔質材料(MnCO3およびMnO)を調査した。 ・・・ [図:0001424597000002.jpg] 図1 MOFベースのCO2電極を備えるLi-CO2電池の利点の概略) (2)「2.3 Electrode preparation and cell assembly CO2 electrodes were prepared in a glove box filled with pure argon. Typically, 45 wt% of degassed MOF crystals, 45 wt% of carbon nanotubes (CNTs) and 10 wt% of polyvinylidene fluoride (PVDF) were blended to form a uniform slurry. The slurry was coated on a carbon paper (TGP-H-060 carbon paper, Toray) and dried in a vacuum oven at 80 ℃ for 12 h. The dried carbon paper was punched into 1.12 cm2 circular discs as working electrodes, with 0.3-0.5 mg of active material (the total mass of MOF material and CNTs) on each. The Mn2(dobdc)@Ni electrode for Raman investigation was prepared by growing Mn2 (dobdc) on a Ni foam under the solvothermal conditions of Mn2 (dobdc). Before the Raman tests, the Ni foam and Mn2 (dobdc)@Ni electrodes were coated with Au (-0.2 mg) by magnetron sputtering using a Au target. Li-CO2 cells were assembled in a glove box filled with high-purity argon, using CR2032-type coin cells with holes on the cathode side. Li foil was used as an anode and a piece of glass fiber (16 mm in diameter) soaked with 50μL of electrolyte (1 molL-1 LiTFSI dissolved in TEGDME) was used as a separator. 2.4 Electrochemical tests The cells were tested in a glovebox filled with CO2 using a LAND CT2001A tester. 」(1320頁左欄下から12行~右欄11行) (当審訳:2.3 電極の調製とセルの組み立て CO2電極は、純粋なアルゴンで満たされたグローブボックスに調製された。通常、脱気された結晶状態のMOFを45重量%、カーボンナノチューブ(CNTs)を45重量%、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を10重量%で混合して均一なスラリーが形成された。スラリーがカーボンペーパー(TGP-H-060カーボンペーパー、東レ)に塗布され、80℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。乾燥したカーボンペーパーを1.12cm2の円形ディスクに打ち抜き、それぞれが0.3~0.5mgの活物質(MOF材料とCNTsの総質量)を備える作用電極を得た。ラマン調査用のMn2(dobdc)@Ni電極は、Mn2(dobdc)のソルボサーマル条件下でNiフォーム上にMn2(dobdc)を成長させることによって調製された。ラマン試験に先立ち、NiフォームとMn2(dobdc)@Ni電極をAuターゲットを用いたマグネトロンスパッタリングによりAu(0.2mg以下)でコーティングした。Li-CO2セルは、カソード側に穴が開いたCR2032型コインセルを使用して、高純度アルゴンを充填したグローブボックスに組み立てられた。Li箔がアノードとして使用され、50μLの電解液(1molL-1のLiTFSIが溶解されたTEGDME)が含浸されたガラス繊維(直径16mm)片がセパレーターとして使用された。 2.4 電気化学試験 CO2を充填したグローブボックス内でLAND-CT2001Aテスターを用いて、セルを試験した。) 2 甲2に記載された事項 (1)「Claims ・・・ 1. An electrochemical cell, comprising: a first negative electrode and a second negative electrode, each comprising a gas permeable layer and a primary electroactive composite layer; a positive electrode positioned between the first and second negative electrodes and comprising a first complementary electroactive composite layer facing the first negative electrode and a second complementary electroactive composite layer facing the second negative electrode; a first separator positioned between the first negative electrode and the positive electrode; and a second separator positioned between the second negative electrode and the positive electrode, wherein each of the first and second separators is able to be saturated with an ionic liquid. 2. The electrochemical cell of claim 1, wherein the primary electroactive composite layer comprises a first electroactive species capable of bonding with carbon dioxide gas, when the first electroactive species is in a reduced state, and releasing carbon dioxide gas, when the first electroactive species is in an oxidized state. ・・・ 4. The electrochemical cell of claim 1, wherein the primary electroactive composite layer comprises a first electroactive species comprising polyanthraquinone. (当審訳:請求項 ・・・ 1.各々がガス透過層および主要電気活性複合材層を含む、第1の負極および第2の負極と; 前記第1の負極と第2の負極との間に位置し、前記第1の負極に面する第1の補助的電気活性複合材層および前記第2の負極に面する第2の補助的電気活性複合材層を含む、正極と; 前記第1の負極と前記正極との間に位置する第1のセパレーターと; 前記第2の負極と前記正極との間に位置する第2のセパレーターと を含む、電気化学セルであって、前記第1および第2のセパレーターの各々をイオン性液体で飽和されることが可能である、電気化学セル。 2.前記主要電気活性複合材層が、第1の電気活性種が還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能であり、第1の電気活性種が酸化状態にある場合に二酸化炭素ガスを放出することが可能である、第1の電気活性種を含む、請求項1に記載の電気化学セル。 ・・・ 4.前記主要電気活性複合剤層が、ポリアントラキノンを含む第1の電気活性種を含む、請求項1に記載の電気化学セル。) (2)「Background of the Invention Efforts have been made to remove target species from gas mixtures. For example, over the last two decades there has been a constant effort to mitigate global warming by curbing anthropogenic carbon dioxide (CO2) emission. Carbon capture and storage (CCS) is one of the most studied solutions proposed thus far towards this end, and a number of approaches have been pursued to tackle carbon dioxide at different stages of its production: either post combustion capturing at power plants, or concentrating it from the atmosphere, after which it is either pressurized and stored in geological formations, or it is converted to commercially useful chemical compounds. Thus, a number of carbon capturing methods have been devised with varying degrees of success. However, current methods/systems have many disadvantages, including high energy requirements and waste. Furthermore, conventional thermal methods to capture carbon dioxide are failing to meet the ever-stricter efficiency and capacity criteria set by regulatory agencies. Accordingly, improved apparatuses, methods, and/or systems are needed.」(1頁13~27行) (当審訳:発明の背景 ガス混合物から標的種を除去するための努力がなされてきた。例えば、最近の20年間にわたって人為的二酸化炭素(CO2)排出量を抑制することにより地球温暖化を軽減するための継続的な努力がなされてきた。二酸化炭素回収貯留(carbon capture and storage)(CCS)はこの目的に向けてこれまでに提案された最も研究された解決策の1つであり、二酸化炭素をその生成の様々な段階で捕えるために、発電所において燃焼後に捕捉する、または大気から二酸化炭素を濃縮し、その後地層中で加圧および貯留する、または商業的に有用な化合物へ転化させるといった、いくつかの方法が追及されてきた。このようにして、いくつかの二酸化炭素捕捉法が考案されており、成功の度合いは様々である。しかし、現在の方法/システムは、高いエネルギー要件および廃棄物を含めた多くの欠点を有する。さらに、二酸化炭素を捕捉するための従来の熱的方法は、規制機関によって定められるますます厳しくなる効率および能力の基準を満たすことができない。したがって、改善された装置、方法、および/またはシステムが必要とされる。) (3)「The primary electroactive composite layer comprises a first electroactive species capable of bonding with the target species gas (e.g. CO2), when the first electroactive species is in a reduced state, and releasing the target species gas, when the first electroactive species is in an oxidized state. The electroactive species may be chosen such that in a reduced state it has a strong affinity for the intended target species for the particular application for which it is intended. For example, in some embodiments, where CO2 is the target species, the chosen electroactive species may have a binding constant with carbon dioxide of 101 to 103 M-1. In some embodiments, the chosen electroactive species may have a binding constant with a different target species of 101 to 103 M-1. Anthraquinone, for example, in a polymerized form as polyanthraquinone, discussed further within, is an electroactive species that may be used. In some embodiments, in the presence of CO2, anthraquinone is reduced to its dianion in a single step which then binds to CO2 forming a complex.」(5頁26行~6頁4行) (当審訳:主要電気活性複合材層は、第1の電気活性種が還元状態にある場合に標的種ガス(例えばCO2)と結合することが可能であり、第1の電気活性種が酸化状態にある場合に標的種ガスを放出することが可能である、第1の電気活性種を含む。電気活性種は、還元状態で意図する特定の用途に向けた意図する標的種への強い親和性を有するように選択してもよい。例えば、CO2が標的種である、一部の実施形態では、選択される電気活性種は101~103M-1の二酸化炭素との結合定数を有していてもよい。一部の実施形態では、選択される電気活性種は、101~103M-1の様々な標的種との結合定数を有していてもよい。例えばポリアントラキノンとして重合した形態のアントラキノンは、ここでさらに説明されるように、使用することができる電気活性種である。一部の実施形態では、CO2の存在下で、アントラキノンは1ステップでそのジアニオンに還元され、次いでCO2に結合して錯体を形成する。) (4)「FIG.2A shows an exploded view of an exemplary electrochemical cell 100a, operating in a charge mode, according to one or more embodiments. The components of electrochemical cell 100a may be like those described with regard to electrochemical cell 100, described herein with regard to FIG. 1. As shown in FIG. 2a, a power source 140a and wiring 150a are used to apply a potential difference across the electrochemical cell 100a. This causes an electron flow 160a in the external circuit 150a directing electrons to the primary electroactive composite layer 114a of each of the negative electrodes 110a. A redox half-cell reaction takes place at the electroactive composite layer 114a to reduce the electroactive species immobilized in the layer 114a. In its reduced state, the electroactive species exhibits an increased affinity towards a target species in a gas stream (not shown). The target species of the gas stream may permeate the gas permeable layer 112A of the negative electrode to bond to the reduced material of the composite layer 114A.」(12頁8~20行) (当審訳: 図2Aは、1つまたは複数の実施形態による、充電モードで作動している例示的な電気化学セル100aの分解立体図を示す。電気化学セル100aの構成要素は、図1に関して本明細書に記載される、電気化学セル100に関して記載されるものと同様であってもよい。図2aに示すように、電源140aおよび配線150aは、電気化学セル100aを横切って電位差を加えるために使用される。これは、外部回路150aにおける電子流160aが電子を負極110aの各々の主要電気活性複合材層114aへ向かわせることを引き起こす。電気活性複合材層114aでレドックス半セル反応が生じて層114aに固定化された電気活性種を還元させる。その還元状態において、電気活性種はガスストリーム(図示せず)中の標的種に対する増大した親和性を示す。ガスストリームの標的種は負極のガス透過層112Aを透過して複合材層114Aの還元された物質へ結合することができる。) 3 甲3に記載された事項 (1)「【請求項9】 二酸化炭素還元用電極をカソード側の電極として有する二酸化炭素還元装置であって、 前記二酸化炭素還元用電極が、導電性部材と、前記導電性部材の表面に、吸着剤とを有し、 前記吸着剤が、導電性及び細孔を有し、二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材と、前記細孔内に、二酸化炭素を還元可能な中心金属を有する金属錯体とを有する、 ことを特徴とする二酸化炭素還元装置。」 (2)「【0021】 前記多孔性基材としては、導電性及び細孔を有し、かつ二酸化炭素を吸着可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二酸化炭素の吸着能力が優れる点で、活性炭、カーボンナノチューブ、多孔性金属錯体が好ましい。」 (3)「【0074】 ここで、開示の二酸化炭素還元装置の一例を図を用いて説明する。 図5は、二酸化炭素還元装置100Aの断面模式図である。 図5の二酸化炭素還元装置100Aは、カソード槽110と、アノード槽120と、プロトン透過膜130と、二酸化炭素供給部材140と、定電圧電源装置150と、参照電極160とを有する。 カソード槽110とアノード槽120との間には、プロトン透過膜130が挟まれている。 カソード槽110には、第1電解液112が収容されている。そして、カソード槽110内において、二酸化炭素還元用電極1と、参照電極160とが、第1電解液112に浸されている。 アノード槽120には、第2電解液122が収容されている。そして、アノード槽120内において、アノード電極121が、第2電解液122に浸されている。 【0075】 二酸化炭素供給部材140は、例えば、中空の棒状部材であり、その一方の先端が第1電解液112に浸っており、第1電解液112に二酸化炭素を供給する。 そのため、第1電解液112には二酸化炭素が溶解している。 【0076】 二酸化炭素還元装置100Aにおいては、定電圧電源装置150により、カソード電極である二酸化炭素還元用電極1と、アノード電極121との間に電圧が印加される。そうすると、アノード側では、水の酸化分解が生じ、一方、カソード側では、二酸化炭素の還元が生じる。カソード側では、二酸化炭素還元用電極1を用いていることから、二酸化炭素の還元が効率的に行われる。」 4 甲4に記載された事項 (1)「Metal-organic frameworks (MOFs) and covalent organic frameworks (COFs) as two burgeoning families of crystalline porous materials (CPMs) have been extensively investigated and applied in various fields on account of their enticing features as large surface area, controllable crystalline structure and highly ordered pores/channels. However, the greatest stumbling block to their widespread application in electrochemical energy storage systems is the inferior electrical conductivity. Therefore, numerous efforts have been exerted on exploiting the advantages and remedying the disadvantages. In this review, we mainly focus on pristine MOFs and COFs, emphasize the recent progress and highlight the milestones of their applications in the fields of lithium-ion batteries, lithium-sulfur batteries, lithium-air batteries and supercapacitors. We hope to provide a constructive view of the structure-activity relationship between CPMs and energy storage systems and promote their future development.」(81頁のAbstract) (当審訳:金属有機構造体(MOF)と共有結合有機構造体(COF)は、結晶性多孔質材料(CPM)の急成長している2つのファミリーとして、大きな表面積、制御可能な結晶構造、高度に秩序化された細孔/チャネルなどの魅力的な特徴から、さまざまな分野で広く研究され、適用されてきた。しかし、電気化学的エネルギー貯蔵システムへの広範囲な適用への最大の障害は、電気伝導率の低さである。そのため、長所を開拓し、短所を是正するために多くの努力が払われてきた。このレビューでは、主に初期のMOFとCOFに焦点を当て、最近の進捗状況を強調し、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、スーパーキャパシタの分野での応用のマイルストーンをハイライトする。CPMとエネルギー貯蔵システムの構造と活動の関係について、建設的な見解を提供し、それらの将来の発展を促進したいと考えている。) (2)「CPMs have attracted much attention in sensor, gas storage/separation, catalysis and energy storage [18-32].」(81頁左欄10~12行目 (当審訳:CPMは、センサー、ガス貯蔵・分離、触媒作用とエネルギー貯蔵においてより注目を引き付けている[18-32]。) 5 甲5に記載された事項 (1)「Metal-organic frameworks (MOFs) have many potential uses for separations, storage, and catalysis,but their use as intercalation hosts for batteries has been scarce. In this article, we examine the mech-anism of Li insertion in a MOF to provide guidance to future design efforts in this area. As a model system, we choose UiO-66, a MOF with the formula (Zr6O4(OH)4)4 (1,4-benzenedicarboxylate)6, as an electrode material for lithium-ion batteries; this MOF is of special interest because the zirconium is not redox active. We report both quantum mechanical characterization of the mechanism and experimental studies in which the material is synthesized as nanoparticles to reduce diffusion lengths for lithium ions and increase the contact area with a conductive carbon phase. The calculated changes in the IR spectra of UiO-66 and lithiated UiO-66 are consistent with the experimental FTIR results.We found experimentally that this MOF can maintain a specific discharge capacity of at least 118 mAh/g for 30 lithiation and delithiation cycles at a rate of C/5, exhibiting good cyclability. Density functional electronic structure calculations show that the charge transfer during lithiation is mainly from Li to node oxygens and carboxylate oxygens, that is, it involves anions rather than cations or aromatic rings, and they provide a mechanistic understanding of the potential for increased Li capacity because the theoretical capacity of UiO-66 with Li at the oxygens in the metal oxide nodes and the carboxylate linkers is more than 400 mAh/g. The lithiation process greatly decreases the bandgap of UiO-66, which is expected to increase its electronic conductivity. The electrode material was also characterized by X-ray diffraction and scanning electron microscopy, which were consistent in confirming that smaller particle sizes were obtained in lower-temperature syntheses.」(ABSTRACT) (当審訳:有機金属構造体(MOF)は、分離、貯蔵、触媒作用など多くの用途が期待されているが、電池のインターカレーションホストとしての使用はほとんどなかった。本稿では、MOFにおけるLi挿入のメカニズムを検証し、この分野での今後の設計作業の指針を提供する。モデルシステムとして、リチウムイオン電池の電極材料として、式(Zr6O4(OH)4)4(1,4-ベンゼンジカルボン酸)6のMOFであるUiO-66を選択した。このMOFはジルコニウムが酸化還元活性でないので特別に興味を持たれる。本稿では、そのメカニズムの量子力学的評価と、リチウムイオンの拡散長を短くし、導電性炭素相との接触面積を増加させるために、材料をナノ粒子として合成する実験的研究の双方について報告する。UiO-66およびリチオ化UiO-66のIRスペクトルの計算された変化は、実験的なFTIR結果と一致している。このMOFは、C/5の速度で30回のリチウム化および脱リチエーションサイクルで少なくとも118mAh/gの比放電容量を維持でき、良好なサイクル性を示すことを実験的に見出した。密度汎関数電子構造計算は、リチウム化中の電荷移動が主にLiからノード酸素およびカルボン酸塩酸素への移動であること、つまり、陽イオンや芳香環ではなく陰イオンを含むことを示しており、金属酸化物ノードおよびカルボン酸塩リンカーの酸素におけるLiを含むUiO-66の理論容量が400mAh/g以上であるため、Li容量の増加の可能性を機構的に理解できる。リチオ化プロセスにより、UiO-66のバンドギャップが大幅に減少し、電子伝導率の向上が期待される。また、電極材料はX線回折法と走査型電子顕微鏡法により特徴付けられ、低温合成でより小さな粒子サイズが得られることが確認された。) 2「 [図:0001424597000003.jpg] FIG. 1. (a) The 1×1×2 primitive cell of UiO-66. (b) The cluster model of UiO-66. The gray, red, white, and green spheres represent C, O, H, and Zr, respectively.」 (当審訳:図1.(a) UiO-66の1×1×2原始的なセル。(b) UiO-66のクラスターモデル。灰色、赤、白、緑の球体は、それぞれC、O、H、Zrを表す。) 6 甲11に記載された事項 「‥the new carbonyl-functionalized metal-organic framework (MOF) [(Al(OH)(O2C-C6H4-CO-C6H4-CO2))], denoted as CAU-8, was discovered employing high throughput methods.」(ABSTRACTの2~4行目) (当審訳:CAU-8と称される、新規なカルボニル官能基化された金属有機構造体MOF(Al(OH)(O2C-C6H4-CO-C6H4-CO2)が高いスループット法を用いて見出された。) 7 甲15に記載された事項 「A less explored strategy uses electrochemical cycles to capture CO2 and release it in pure form. These cycles typically rely on electrochemical generation of nucleophiles that attack CO2 at the electrophilic carbon atom, forming a CO2 adduct. Then, CO2 is released in pure form via a subsequent electrochemical step. In this Perspective, we describe electrochemical cycles for CO2 capture and release, emphasizing electrogenerated nucleophiles.」(454頁のABSTRACTの6~11行目) (当審訳:あまり探求されていない戦略として、電気化学的サイクルを利用してCO2を捕捉し、純粋な形で放出する方法がある。これらのサイクルは、通常、求電子炭素原子でCO2を攻撃し、CO2付加体を形成する求核剤の電気化学的生成に依存する。その後、CO2はその後の電気化学的ステップを経て純粋な形で放出される。本稿では、CO2の回収と放出のための電気化学サイクルについて、電解した求核剤に焦点を当てて説明する。) 「 [図:0001424597000004.jpg] 」(457頁) (当審訳: [図:0001424597000005.jpg] 図 1. キノン(Q)酸化還元活性担体とイオン液体電解質を利用した電気化学式CO2分離セルの概略図。電極は透過性の多孔質膜である。文献22より。) 第5 当審の判断 1 申立理由1について (1)甲1に記載された発明 ア 上記第4の1(1)によれば、甲1には、「多孔質材料MOF(Mn2(dobdc)」と記載されているから、「MOF」であるところの「Mn2 (dobdc)」は多孔質材料であるといえる。 イ 同(1)の図1の説明文には「MOFベースのCO2電極を備えるLi-CO2電池の利点の概略」と記載されているから、図1に示されているのはLi-CO2電池である。 また、図1中の左の図には「Liアノード」、「カソード」との記載があり、図1の説明文によれば、図1の電池は「MOFベースのCO2電極」を備えるものであるから、「カソード」は「MOFベース」の電極であるといえる。そして、同図には、「Liアノード」から「カソード」へとe-、すなわち電子が移動することを意味する→が記載されており、「Liアノード」から「MOFベース」の「カソード」に電子が供給されていることが記載されているといえる。 通常、電池の「カソード」とは、放電時に電子を受け取って還元反応が起こる電極を意味するので、図1において、「Liアノード」から「カソード」へと電子が移動しているのは、「放電」反応が起こっている状態であるといえる。 ここで、図1中の右上の図では、「放電」と記載されたうえで、「MOF」と記載された構造の中にCO2が取り込こまれ、吸着される様子が見て取れるから、放電によって、「MOFベース」の「カソード」に電子が供給され、カソード中の「MOF」に「CO2」が吸着されることが記載されているといえる。 そうすると、図1及びその説明文には、「Liアノード」及び「MOFベース」の「カソード」を備えた「Li-CO2電池」であって、放電によって「Liアノード」から「MOFベース」の「カソード」へと電子が供給され、「MOFベース」の「カソード」中の「MOF」が「CO2」を吸着することが記載されているといえる。 イ 同(2)によれば、甲1には、結晶状態のMOF、カーボンナノチューブ、ポリフッ化ビニリデンからなるスラリーをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することによって得られる作用電極と、Li箔であるアノードを備える電池が記載されている。 そして、上記アの検討を踏まえると、MOFの塗布された、この作用電極は、上記アの「MOFベース」の「カソード」のことであるといえる。 また、上記アによれば、MOFは、多孔質材料のMn2 (dobdc)であることができるから、甲1には、多孔質材料のMn2 (dobdc)、カーボンナノチューブ、ポリフッ化ビニリデンからなるスラリーをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することによって得られる作用電極である結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)ベースのカソードと、Li箔であるLiアノードを備えることが記載されているといえる。 ウ そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。 「結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)、カーボンナノチューブ、ポリフッ化ビニリデンからなるスラリーをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することによって得られる作用電極である結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)ベースのカソードと、Li箔であるLiアノードを備え、Liアノードから結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)ベースのカソードに電子が流れ込むことで結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)がCO2を吸着する、Li-CO2電池。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)甲1発明の「結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)」は、「CO2を吸着する」ものであるから、本件発明1の「CO2吸着材」に相当する。 (イ)甲1発明の「作用電極」、「Liアノード」は、それぞれ、本件発明1の「作用極」、「対極」に相当する。 (ウ)甲1発明において、「作用電極」は、「結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)」を含むスラリーをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することによって得られるのであるから、甲1発明の「作用電極」は「結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)」を含むものであるといえ、上記(ア)によれば「結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)」は、「CO2吸着材」であり、上記(イ)によれば「作用電極」は「作用極」のことであるから、甲1発明は「CO2吸着材を含む作用極」を有しているといえる。 (エ)上記第4の1(2)によれば、CO2を充填したグローブボックス内でセルの電気化学試験が行われているから、甲1発明において、吸着されるCO2は、ガス中に含まれる、ガス状のCO2であることが理解される。 (オ)甲1発明の、「Liアノードから結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)ベースのカソードに電子が流れ込むことで結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)がCO2を吸着する」ことは、「対極から作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴って」「CO2と結合」することに相当し、上記(エ)によれば、結合するCO2は、ガス中に含まれるガス状のCO2であるから、「対極から作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2ガスと結合」することに相当する。 (カ)甲1発明の「結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)」は「結晶性多孔体」であるといえるし、上記(ア)によれば「結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)」は、「CO2吸着材」であるから、本件発明1の「CO2吸着材は結晶性多孔体」であることに相当する。 (キ)甲1発明の「Li-CO2電池」は、本件発明1の「電気化学セル」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、 「CO2吸着材を含む作用極と、対極と、を備え、 前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2ガスと結合し、 前記CO2吸着材は、結晶性多孔体である電気化学セル。」の点で共通し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では、「前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで」対極から作用極に電子が供給されるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点2> 本件発明1では、「CO2吸着材」は、「電子の授受を行ってCO2と結合する官能基が規則的に配置された分子構造を有しており、前記CO2吸着材は、前記官能基が結晶格子の架橋部に規則的に配置されている」のに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 イ 相違点について 相違点1について検討する。 甲1には「前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで対極から作用極に電子が供給される」ことは記載されていないから、相違点1は、実質的な相違点である。 次に、異議申立理由とはなっていないが、相違点1の容易想到性についても検討する。 本件明細書には、「CO2回収装置100は、作用極102と対極103に所定の電圧を印加する電源105が設けられており、作用極102と対極103の電位差を変化させることができる。」(【0018】)と記載されており、本件発明1において「電圧を印加する」とは、外部電源によって、電圧を加えることを意味しているといえる。 甲1発明は、Liアノードから結晶状態の多孔質材料であるMn2 (dobdc)ベースのカソードに電子が供給されることでカソード中のMOFであるMn2 (dobdc)がCO2を吸着する電池であり、この反応は「放電」とされている。 そして、電池の放電とは、カソードとアノードを電気的に接続した際に、カソードとアノードの電位差によって、アノードからカソードへ電子が移動する現象であり、このような電子の移動のために外部電源によって電圧を加える必要はない。 したがって、アノードからカソードへの電子の移動、すなわち、電池の放電において、「電圧の印加」は不要であるため、通常行われないし、仮に行われたとしても、アノードからカソードへ電子が供給されること、つまり、「対極から作用極に電子が供給される」のは、「電圧が印加されること」によるものとはいえない。 そうすると、甲1発明において、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 また、甲2、5、11、15にも、電圧が印加されることによって、アノードからカソードへ電子を供給することについては何ら記載はないため、甲2、5、11、15の記載事項を検討しても、依然として、甲1発明において、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2、5、11、15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3)本件発明2~14について 本件発明2~14は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2、5、11、15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は、「図1から、MOFを含むCO2電極と、Liアノードとを備えたLi-CO2電池において、CO2電極とLiアノードとの間に電圧が印加されることでLiアノードからCO2電極に電子(e-)が供給され、MOFは電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合」することがわかる(特許異議申立書16頁)旨主張しているが、電圧の印加とは、上記(2)イで述べたように、外部電源によって、電圧を加えることを意味しているところ、図1からは「電圧が印加される」ことが読み取れるとはいえないし、Liアノードからカソードに電子を供給する際には電圧が印加されるとの技術常識もない。 したがって、上記申立人の主張は採用できない。 (5)申立理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1には理由がない。 2 申立理由2について (1)甲2に記載された発明 ア 上記第4の2(1)によれば、甲2には、主要電気活性複合材層を含む第1の負極および第2の負極、正極を含む電気化学セルが記載されており、主要電気活性複合材層が、還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能である、第1の電気活性種を含むこと、第一の電気活性種がポリアントラキノンであり得ることが記載されている。 そうすると、甲2には、還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能である第1の電気活性種であるポリアントラキノンを含む第1の負極及び第2の負極、正極を含む電気化学セルが記載されているといえる。 イ 同(3)によれば、標的種ガスはCO2ガスであること、ポリアントラキノンとして重合した形態のアントラキノンは、CO2の存在下で還元されることで、CO2に結合することが記載されている。 また、同(4)によれば、甲2には、充電モードにおいて、電位差を与えるために電源が使用され、電子が負極の主要電気活性複合材層に向かい、負極の電気活性種を還元させ、ガスストリーム中の標的種が、還元された物質、すなわち、電気活性種に結合することが記載されている。 そうすると、甲2には、充電モードにおいて、電源によって電位差が加えられ、電子が負極に向かい、第1の電気活性種であるポリアントラキノンのアントラキノンが還元され、ガスストリーム中の標的種であるCO2が第1の電気活性種であるポリアントラキノンに結合されることが記載されているといえる。 ウ してみれば、甲2には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲2発明」という。)。 「還元状態にある場合に二酸化炭素ガスと結合することが可能である第1の電気活性種であるポリアントラキノンを含む第1の負極及び第2の負極、正極を含み、 充電モードでは、電源によって電位差が加えられ、電子が負極に向かい、第1の電気活性種であるポリアントラキノンを還元することで、ガスストリーム中のCO2が第1の電気活性種であるポリアントラキノンに結合される電気化学セル。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明を対比する。 (ア)甲2発明の「負極」、「正極」、「結合」は、それぞれ、本件発明1の「作用極」、「対極」、「吸着」に相当する。 (イ)甲2発明の「第1の電気活性種であるポリアントラキノン」は、二酸化炭素と結合するのであるから、本件発明1の「CO2吸着材」に相当し、上記(ア)によれば「負極」は「作用極」に相当するから、甲2発明の「第1の電気活性種であるポリアントラキノンを含む負極」は本件発明1の「CO2吸着材を含む作用極」に相当する。 (ウ)甲2発明の「電源によって電位差が加えられ、電子が負極に向かい、第1の電気活性種であるポリアントラキノンを還元することで、ガスストリーム中のCO2が第1の電気活性種であるポリアントラキノンに結合される」は、本件発明1の「作用極と対極との間に電圧が印加されることで、対極から作用極に電子が供給され」、「CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2ガスに結合し」に相当する。 そうすると、本件発明1と、甲2発明は、 「CO2吸着材を含む作用極と、対極と、を備え、 前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合する電気化学セル。」の点で一致し、下記の点で相違する。 <相違点3> 本件発明1では、CO2吸着材は、「結晶性多孔体であり、電子の授受を行ってCO2と結合する官能基が規則的に配置された分子構造を有しており」、「前記官能基が結晶格子の架橋部に規則的に配置されている」のに対し、甲2発明ではCO2吸着材は「ポリアントラキノン」である点。 イ 相違点について 相違点3について検討する。 甲2発明は、上記第4の2(2)によれば、「高いエネルギー要件及び廃棄物を含めた多くの欠点を有する従来の方法の改善」を課題とし、第1の電気活性種としてポリアントラキノンを用いることで、上記課題を解決するものである。そうすると、甲2発明において、第1の電気活性種を、ポリアントラキノンにかえて「結晶性多孔体であり、電子の授受を行ってCO2と結合する官能基が規則的に配置された分子構造を有しており」、「前記官能基が結晶格子の架橋部に規則的に配置されている」ものを採用する動機付けはない。 そうすると、甲2発明において、相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 また、この点について、甲4、5の記載を確認しても、負極に電気活性種として存在するポリアントラキノンにかえて、結晶性多孔体であり、電子の授受を行ってCO2と結合する官能基が規則的に配置された分子構造を有しており」、「前記官能基が結晶格子の架橋部に規則的に配置されている」ものを用いることに関する記載はないため、甲4、5の記載事項を検討しても、依然として、甲2発明において、相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲4、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~14について 本件発明2~14は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲2発明及び甲4、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書において、「甲第4号証は、結晶性多孔質材料である金属有機構造体(MOF)を用いた電極を備えたLi-CO2電池において、放電により電極に電子が供給された際に、MOFがCO2含有ガスに含まれるCO2と結合し、充電時にMOFがCO2を放出することが記載されていることから・・・、甲第4号証に記載のMOFは、甲2発明に記載の電気活性種と共通する機能ないし作用を有します。また、甲第4号証は、MOF等の結晶性多孔質材料は電池に加え、甲2発明と共通する技術分野であるガス貯蔵・分離にも用いられることを開示します・・・。従って、甲2発明に記載の電気活性種として甲2発明と共通の技術分野に属する甲第4号証が開示する電子が供給された際にCO2含有ガスに含まれるCO2と結合するMOFを用いることは、当業者が容易になし得るものです。」(69~70頁)、と主張している。 しかし、上記(2)で述べたとおり、甲2には、第1の電気活性種であるポリアントラキノンを他のものにする動機付けがないから、甲4の記載の如何にかかわらず、本件発明1を容易に発明できるとすることはできない。 また、甲4の導入部(Introduction)には、他文献18-32の紹介として、「センサー、ガス貯蔵・分離、触媒作用とエネルギー貯蔵においてより注目を引きけている(18-32)」との記載はあるものの、甲4はLi-CO2電池に関する文献であるため、ガス貯蔵・分離におけるMOFの使用について、具体的な記載はないから、ガス貯蔵・分離の点で甲2発明と共通の技術分野にあるといえない。また、甲2発明は充電の際にCO2が結合するものであるから、Li-CO2電池に関する甲4は、この点でも、甲2発明と同じ技術分野にあるとはいえない。そうすると、甲4が甲2発明と共通の技術分野に属する技術を開示しているとはいえない。 したがって、甲2発明に甲4に記載された技術を用いることは、当業者が容易になし得るものではなく、上記申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、特許異議申立書において、「甲第5号証には、ケトン基のようなOを含む官能基を有するリンカーが結晶格子の架橋部に規則的に配置されている分子構造を有するMOFがLiの受け入れ性(capacity)と電気応答性を有することを開示しています(<4-2-5>の<イ>)。甲第5号証には、上記分子構造を有するMOFに電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合すると明記されていませんが、上記分子構造を有するMOF、COFがCO2吸着能を有することが周知技術であることを考慮すれば、当業者が容易になし得るものです。」(70頁)と主張している。 しかし、上記(2)で述べたとおり、甲2には、第1の電気活性種であるポリアントラキノンを他のものにする動機付けがないから、甲5の記載の如何にかかわらず、本件発明1を容易に発明できるとすることはできない。 また、甲5には二酸化炭素の吸着に関する記載はなく、甲2発明と技術分野が共通しているとはいえない。 したがって、甲2発明に甲5記載の技術を用いることは、当業者が容易になし得るものではなく、上記申立人の主張は採用できない。 (5)申立理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由2には、理由がない。 3 申立理由3について (1)甲3に記載された発明 ア 上記第4の3(1)によれば、甲3には、「導電性部材と、二酸化炭素還元用電極をカソード側の電極として有する二酸化炭素還元装置であって、前記二酸化炭素還元用電極が、導電性部材と、前記導電性部材の表面に、吸着剤とを有し、前記吸着剤が、導電性及び細孔を有し、二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材と、前記細孔内に、二酸化炭素を還元可能な中心金属を有する金属錯体とを有する、二酸化炭素還元装置。」が記載されている。 イ 同(3)によれば、甲3には、カソード槽とアノード槽を有する二酸化炭素還元装置において、カソード槽には第1電解液が収容され、二酸化炭素還元用電極が及び二酸化炭素供給部材が浸っており、第1電解液に二酸化炭素が供給されること、カソード電極である二酸化炭素還元用電極とアノード電極との間に電圧が印加され、カソード側で二酸化炭素の還元が生じることが記載されている。 してみれば、甲3には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲3発明」という。)。 「カソード側の電極として二酸化炭素還元用電極を有し、二酸化炭素還元用電極は、導電性部材と、前記導電性部材の表面に、吸着剤とを有し、 吸着剤は、導電性及び細孔を有し、二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材と、前記細孔内に、二酸化炭素を還元可能な中心金属を有する金属錯体とを有し、 二酸化炭素供給部材はカソード側の電極である二酸化炭素還元用電極が浸っている第1電解液に二酸化炭素を供給し、定電圧電源装置により、カソード電極である二酸化炭素電極とアノード電極との間に電圧が印加され、カソード側で二酸化炭素の還元が生じる、二酸化炭素還元装置。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲3発明を対比する。 (ア)甲3発明の「二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材」を有する「吸着剤」は、本件発明の「CO2吸着材」に相当する。 (イ)甲3発明の「吸着剤」を有する、「カソード側の電極」である「二酸化炭素還元用電極」は、本件発明1の「作用極」に相当する。 (ウ)甲3発明の「アノード電極」は、本件発明1の「対極」に相当する。 (エ)甲3発明の「定電圧電源装置により、カソード電極である二酸化炭素電極とアノード電極との間に電圧が印加され、カソード側で二酸化炭素の還元が生じる」ことは、本件発明1の「前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から電気作用極に電子が供給され」ることに相当する。 (オ)甲3発明の「二酸化炭素還元装置」と本件発明1の「電気化学セル」はいずれも「装置」であるといえる。 (カ)そうすると、両者は、 「CO2吸着材を含む作用極と、対極と、を備え、 前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から前記作用極に電子が供給される装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> 本件発明1では「前記CO2吸着材は電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合し、前記CO2吸着材は、結晶性多孔体であり、電子の授受を行ってCO2と結合する官能基が規則的に配置された分子構造を有しており、前記CO2吸着材は、前記官能基が結晶格子の架橋部に規則的に配置されている」のに対し、甲3発明では「吸着剤」は、「導電性及び細孔を有し、二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材と、前記細孔内に、二酸化炭素を還元可能な中心金属を有する金属錯体」である点。 <相違点5> 装置が、本件発明1では「電気化学セル」であるのに対し、甲3発明では、「二酸化炭素還元装置」である点。 イ 相違点について 相違点4について検討する。 上記第4の3(2)によれば、甲3では、導電性及び細孔を有し、二酸化炭素を吸着可能な多孔性基材は「二酸化炭素を吸着可能であれば特に制限はない」ものであり、二酸化炭素を吸着する多孔性基材として「活性炭、カーボンナノチューブ、多孔性金属錯体」が例示されており、実施例では活性炭が用いられている。そうすると、甲3発明の吸着剤は「多孔性」に基づいて二酸化炭素を吸着するものであり、「電子が供給されることに伴って」二酸化炭素を吸着するものではない。そして、甲3発明において、吸着剤を、多孔性に基づいて二酸化炭素を吸着する材料から、二酸化炭素を吸着する機序が異なるものである、電圧の印加による電子の供給によって二酸化炭素を吸着する材料のものとする動機付けはない。 よって、甲3発明において、相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 また、この点について、甲4、5を検討しても、吸着剤として、多孔性に基づいて二酸化炭素を吸着する材料から、電圧の印加による電子の供給によって二酸化炭素を吸着する材料のものとすることに関する記載はないため、甲4、5の記載事項を検討しても、依然として、甲3発明において、相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる事項であるとはいえない。 (ウ)したがって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲4、5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~14について 本件発明2~14は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲3発明及び甲4、5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書において、「甲第4号証は、結晶性多孔質材料である金属有機構造体(MOF)を用いた電極を備えたLi-CO2電池において、放電により電極に電子が供給された際に、MOFがCO2含有ガスに含まれるCO2と結合し、充電時にMOFがCO2を放出することが記載されていることから・・・、甲第4号証に記載のMOFは、甲3発明に記載の多孔性金属錯体と共通する機能ないし作用を有します。また、甲第4号証は、MOF等の結晶性多孔質材料が電池に加え、甲3発明と共通する技術分野であるガス貯蔵・分離にも用いられることを開示します・・・。従って、甲3発明に記載の多孔性金属錯体として甲3発明と共通の技術分野に属する甲第4号証が開示する電子が供給された際にCO2含有ガスに含まれるCO2と結合するMOFを用いることは、当業者が容易になし得るものです。」(71~72頁)、と主張している。 しかし、上記(2)に記載したとおり、甲3には、多孔性金属錯体を含有するものである吸着剤を、他のものにする動機付けがないから、甲4の記載の如何に関わらず、本件発明1を容易に発明することができるとすることはできない。 また、上記2(4)アに記載したとおり、甲4にはガス貯蔵・分離におけるMOFの使用について、具体的な記載はないから、ガス貯蔵・分離の点で甲3と技術分野が共通しているとはいえない。 したがって、甲3発明に甲4記載の技術を用いることは、当業者が容易になし得るものではなく、上記申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、特許異議申立書において、「甲第5号証には、ケトン基のようなOを含む官能基を有するリンカーが結晶格子の架橋部に規則的に配置されている分子構造を有するMOFがLiの受け入れ性(capacity)と電気応答性を有することを開示しています(<4-2-5>の<イ>)。甲第5号証には、上記分子構造を有するMOFに電子が供給されることに伴ってCO2含有ガスに含まれるCO2と結合すると明記されていませんが、上記分子構造を有するMOF、COFがCO2吸着能を有することが周知技術であることを考慮すれば、当業者が容易になし得るものです。」(72頁)と主張している。 しかし、上記(2)に記載したとおり、甲3には、吸着剤を他のものにする動機付けがないから、甲5の記載の如何に関わらず、本件発明1を容易に発明することができるとすることはできない。また、上記2(4)イに記載したとおり、甲5には、二酸化炭素の吸着に関する記載はなく、甲3発明と技術分野が共通しているとはいえない。 したがって、甲3発明に甲5記載の技術を用いることは、当業者が容易になし得るものではなく、上記申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~14に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700902

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