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特許異議申立

2016-700835

洗浄剤組成物

審判番号
2016-700835
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-131045外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年09月08日
審決日
2017年05月17日
公報発行日
2017年08月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.121-YAA(C11D) / P1652.537-YAA(C11D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条特許法36条6項特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第3項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5882836号発明「洗浄剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5882836号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第5882836号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯等 1 本件特許異議の申立てに係る特許 本件特許異議の申立てに係る特許第5882836号は、特許権者である花王株式会社より、平成24年6月8日、特願2012-131045号として出願され、平成28年2月12日、発明の名称を「洗浄剤組成物」、請求項の数を「13」として特許権の設定登録を受けたものである。 2 手続の経緯 本件特許に対して、平成28年9月8日、特許異議申立人である田中和幸(以下、「異議申立人」という)より、請求項1ないし9に対して特許異議の申立てがなされ、同年12月14日付けで取消理由が通知され、平成29年1月20日、特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、同年2月1日付けで訂正請求書に対する手続補正指令(方式)が通知され、同年2月8日に手続補正書(方式)が提出され、これに対し、異議申立人に、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが何らの応答もなかったものである。 第2 訂正の適否 1 訂正事項 上記平成29年1月20日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項を構成する請求項1ないし13について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「洗浄剤組成物」とあるのを、「皮膚洗浄剤組成物」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~9及び11~13も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (3)訂正事項3 請求項12及び13に「請求項1~10」とあるのを、「請求項1~9」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「洗浄剤組成物」の洗浄対象について限定がなされていなかったのを、訂正後の請求項1において、洗浄対象が「皮膚」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 上記「ア」で述べたように、上記訂正事項1は、「洗浄剤組成物」にもともと含まれていた洗浄対象である「皮膚」を付加するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものには該当しない。 ウ 上記訂正事項1に係る「皮膚洗浄剤組成物」は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項10の「皮膚洗浄剤組成物」との記載に基づくものであるから、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 エ 上記訂正事項1は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 オ よって、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 (2)訂正事項2について 上記訂正事項2は、請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 (3)訂正事項3について 上記訂正事項3は、請求項10の削除に伴い、請求項12及び請求項13が引用する請求項を、「請求項1~10」から「請求項1~9」とするものであり、請求項12及び請求項13が引用する請求項数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 3 特許異議の申立てがされていない請求項についての独立特許要件 上記訂正事項1及び3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、これにより限定された請求項11ないし13は、特許異議の申立てがなされていない請求項であることから、訂正後の請求項11ないし13に係る発明が、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第7項で規定される特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か検討する。 請求項11ないし13に係る発明は、請求項1に係る発明を引用するものであるところ、後述する「第5 当審の判断」において、請求項1に係る発明について検討したのと同様に、その特許を取り消すべき理由がないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 4 小括 上記「2」及び「3」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1ないし13について訂正することを求めるものであり、それらの訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし13〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし13に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に係る特許を「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 次の成分(A)、(B)及び(C): (A)アニオン界面活性剤  2~30質量%、 (B)エーテル化度が0.5以上0.9以下であるカルボキシメチルセルロース又はその塩  0.5~15質量%、 (C)水 を含有し、組成物中に分散された成分(B)の平均粒子径が0.5~1000μmである皮膚洗浄剤組成物。 【請求項2】 30℃における粘度が10~30000mPa・sである請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項3】 成分(A)及び(B)の質量割合が、(A)/(B)=1~29である請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項4】 さらに、(D)架橋されたポリアクリル酸重合体及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマーとして含む重合体から選ばれる1種又は2種以上のアニオンポリマーを0.5~2質量%含有する請求項1~3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項5】 成分(B)のカルボキシメチルセルロース又はその塩が、重量平均分子量18000~700000である請求項1~4のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項6】 成分(A)のアニオン界面活性剤が、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1~5のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項7】 成分(A)のアニオン界面活性剤が、ミリスチン酸塩を30~100質量%含む脂肪酸塩である請求項1~6のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項8】 さらに、(E)下記一般式(1) R1-(OCH2CH2)n-OH (1) (式中、R1は炭素数1~5のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは2~5の数を示す) で表されるアルキレングルコールアルキルエーテルを含有する請求項1~7のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項9】 さらに、(F)2糖アルコールを含有する請求項1~8のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 マッサージ用洗浄剤組成物である請求項1~9のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。 【請求項12】 請求項1~9のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物を手又は洗浄補助具に取り、体に塗布し、水で希釈し、泡立てながら体を擦った後、洗い流す洗浄方法。 【請求項13】 請求項1~9のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物を手又は洗浄補助具に取り、水で希釈し、体に塗布し、泡立てながら体を擦った後、洗い流す洗浄方法。」 第4 取消理由、及び取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立理由(以下、「申立理由」という。)の概要 1 取消理由の概要 訂正前の本件発明1ないし9(訂正前の本件特許1ないし9)に対して平成28年12月14日付けで特許権者に通知した特許許法第36条第6項第1号に関する取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件発明1ないし9が、発明の詳細な説明に記載したものでなく、本件特許1ないし9は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由の概要 訂正前の本件発明1ないし9(訂正前の本件特許1ないし9)に対して申立てられた申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった特許法第29条第2項に関する特許異議の申立理由の要旨は、次のとおりである。 本件発明1ないし9は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証ないし甲第6号証に記載された周知の技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1ないし9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 特許異議申立てで引用された刊行物 甲第1号証:財団法人 国際科学振興財団編、「科学大辞典 第2版」、丸善株式会社(平成17年2月28日)第834頁(当審注:異議申立ての特許法第36条第6項第1号に関する申立理由で引用された刊行物) 甲第2号証:特公平7-13237号公報 甲第3号証:特開2007-297510号公報 甲第4号証:国際公開第2010/103833号 甲第5号証:特開2011-132271号公報 甲第6号証:特開平10-280000号公報 以下、例えば甲第2号証を「甲2」などという。 第5 当審の判断 1 取消理由(特許法第36条第6項第1号)について 取消理由は、『本件発明の課題は、明細書の段落【0006】の記載によれば、「従来の洗浄剤組成物では、起泡性や、泡質改善が見られるものの、洗浄行為のみでは、マッサージ剤のように、肌に対して外部から物理的な力が容易に加えられるものではなかった。」というものである。 一方、本件発明1の「次の成分(A)、(B)及び(C): (A)アニオン界面活性剤 2~30質量%、 (B)エーテル化度が0.5以上0.9以下であるカルボキシメチルセルロース又はその塩 0.5~15質量%、 (C)水 を含有し、組成物中に分散された成分(B)の平均粒子径が0.5~1000μmである洗浄剤組成物。」との特定では、洗浄剤組成物は、肌に対するもの、すなわち、「皮膚洗浄剤組成物」以外の洗浄剤組成物(例えば、衣類用洗浄剤組成物あるいは食器用洗浄剤組成物)も含み得ることになる。 しかしながら、本件明細書には、「洗浄剤組成物」に関し、同段落【0006】の「本発明は、高い洗浄実感が得られると同時に、手あるいは洗浄タオル、洗浄スポンジ等の洗浄具で肌を擦るという洗浄行為自身によって粘度の高い泡を容易に得られ、泡の粘度が高いことを利用して、洗浄行為から肌に対して外部から物理的に力が容易に加えられ、高いマッサージ感を付与できる洗浄剤組成物に関する。」との記載や、また、同段落【0041】~【0059】に記載される「実施例」においては、所定の「皮膚洗浄剤組成物」を製造し、「ポリマー平均粒径、透過率、粘度、泡粘度、泡立ちの速さ、泡の厚み感及び泡持ちの良さ」を評価し(段落【0041】)、本件発明の洗浄剤組成物はいずれも、洗浄行為を通じて肌に対し、手からの力が容易に加えられ、高いマッサージ感が得られた(段落【0053】)旨記載されるように、実質的に「皮膚用洗浄剤組成物」に関する記載しかないといえる。 そうすると、本件明細書には、上記の発明の課題を解決することのできる「皮膚用洗浄剤組成物」に関する記載はあるものの、本件発明1が含み得る「皮膚用洗浄剤組成物」以外の「洗浄剤組成物」に関する実質的な記載はないこととなる。 よって、本件発明1は、「洗浄剤組成物」に関し、本件の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲(「皮膚用洗浄剤組成物」)を超えるものである。 本件発明1を引用する本件発明2~9についても、本件発明1と同様に、本件の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。』というものである。 この理由に対し、本件訂正により、本件発明1ないし9の「洗浄剤組成物」が、「皮膚洗浄剤組成物」と訂正されることにより、本件発明1ないし9は、本件の発明の詳細な説明に記載される発明の課題に対応するものとなり、本件発明1ないし9が、本件の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえなくなった。 よって、本件発明1ないし9は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、本件発明1ないし9は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 2 申立理由(特許法第29条第2項)について (1)甲2ないし甲6に記載の事項 ア 甲2(特公平7-13237号公報) (ア-1)第1頁左欄第2行~右欄第2行 「【請求項1】界面活性剤、再付着防止剤および液体洗剤組成物用に場合によって配合される通常の成分を含有する水性の均一液体洗剤組成物において、C1~C4アルキルセルロース(AC、場合によってヒドロキシル化されている)とカルボキシメチルセルロース(CMC)との、CMC:ACの重量比6:1から1:4のコアセルベート0.1~3重量%、 陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との混合物20重量%より大(非イオン界面活性剤は3重量%よりも多く、陰イオン界面活性剤は石けん及び非石けん陰イオン界面活性剤で構成され、そして陰イオン界面活性剤対非イオン界面活性剤の重量比は1:1から8:1の範囲内である)、および 10重量%よりも多い水(総成分対水の重量比は1:1から9:1である)を含有することを特徴とする水性の均一均一洗剤組成物。」 (ア-2)第2頁右欄第38行~50行 「アルキルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースの使用は、洗剤技術分野において周知であり、そして再付着防止機能において特に粒状洗剤における広い商業的応用を見い出している。しかし、液体洗剤内へのこれらのセルロースエーテルの配合は、かなりの困難を受けやすいことも既知である。液体洗剤内への再付着防止剤の可溶化は、陰イオン界面活性剤の存在下において事実上不可能である。一般に、これらの再付着防止剤を分散液によつて配合することが試みられた。しかし、安定なセルロースエーテル分散液は、チキソトロピー性を有するか有していない高い製品粘度をしばしば必要とする。製品粘度は、減少された相分離の結果として均一な分散液を与える手段として役立つことが理解されている。」 (ア-3)第3頁左欄第30行~第46行 「今まで、従来技術は、陰イオンセルロースエーテルと非イオンセルロースエーテルとの混合物を有効に使用し、コアセルベート網目構造を液体洗剤内に形成する手段を示唆していない。従来技術は、チキソトロピー性のない低粘度を有するセルロースエーテル含有の安定な液体洗剤を処方することを示唆していない。更に、従来技術は、そうでなければ配合が困難であろう成分、例えばマトリツクスに通常不溶性である成分を安定に配合させるセルロースエーテルコアセルベート網目構造を有利に利用することに関しては触れていない。 セルロースエーテル、特にカルボキシメチルセルロースを液体洗剤内に有効に配合する可能性に対する従来技術の固定した偏見は、一般知識に基づいており、そして例えば米国特許第4,127,495号明細書の開示によつて支持される。この偏見は、陰イオン界面活性剤とセルロースエーテルとの併用の場合に特に有害であると言われている。」 (ア-4)第3頁右欄第15行~第20行 「本発明の主要目的は、添加剤量の再付着防止剤を含有する均一液体洗剤組成物を処方することにある。 本発明の更に他の目的は、陰イオンセルロースエーテルと非イオンセルロースエーテルとの混合物を含有し、優秀な貯蔵安定性を長期間にわたつて示す濃厚均一液体洗剤を提供することにある。」 (ア-5)第4頁左欄第11行~第40行 「本発明の組成物は、第一必須成分として、非イオンセルロースエーテルと陰イオンセルロースエーテルとのコアセルベート0.1%~3%、好ましくは0.5%~1.5%を含有する。 非イオンセルロースエーテルは、C1~C4アルキルの、場合によつてはヒドロキシ化されたセルロースエーテルによつて表わされる。・・・(略)・・・ DSは、アンヒドログルコース単位当たりの置換アルキル基の数を示す。DPは、重合体分子内に存在するアンヒドログルコース単位の数を示す。 陰イオンセルロースエーテルは、0.3~1.5の範囲、好ましくは0.6~0.9のDSおよび50~1000の範囲内、好ましくは200~400のDPを有するカルボキシメチルセルロースによつて表わされる。カルボキシメチルセルロースは、洗剤技術分野において著しく周知である。カルボキシメチルセルロースは、好ましくは通常の陽イオン、例えばナトリウム、カリウム、アミンまたは置換アミンを有する塩として使用される。好適なカルボキシメチルセルロースの典型例は、DS0.7およびDP250を有するナトリウム塩である。」 (ア-6)第4頁右欄第5行~第26行 「好適な陰イオン界面活性剤は、通常スルホネート、サルフエート、およびカルボキシレート/石けんの群から選択される。これらの陰イオン洗剤は、洗剤技術分野において著しく周知であり、そして広い商業的応用を見い出している。好ましい陰イオン水溶性スルホネートまたはサルフエート界面活性剤は、それらの分子構造内に炭素数約8~約22のアルキル基を有する。好ましい陰イオン界面活性剤の例は、タローおよびやし油から誘導されたC8~C18脂肪アルコールを硫酸化することによつて得られる反応生成物;アルキル基が炭素数約8~15を有するアルキルベンゼンスルホネート;アルキルグリセリルエーテルスルホン酸ナトリウム;タローおよびやし油から誘導された脂肪アルコールのエーテルサルフエート;ココナツツ脂肪酸モノグリセリドサルフエートおよびココナツツ脂肪酸モノグリセリドスルホネート;およびアルキル鎖内に炭素数約8~約22を有するパラフインスルホン酸の水溶性塩である。例えば米国特許第3,332,880号明細書に詳述のスルホン化オレフイン界面活性剤も、使用できる。陰イオン合成スルホネートおよび(または)サルフエート用の中和化陽イオンは、洗剤技術において広く使用される通常の陽イオン、例えばナトリウム、カリウム、アミンおよび置換アミンによつて表わされる。」 (ア-7)第6頁左欄第4行~右欄第38行 「本発明の組成物は、前記必須成分に加えて、一連の通常の液体洗剤組成物添加剤をそれらの既知の機能用に技術上確立された量で含有できる。 これらの通常の液体洗剤添加剤は、特にことわらない限り、通常約5%以下の量で使用される。本組成物と良く両立するこの種の添加剤の例は、酵素、ポリ酸、制泡剤、乳白剤、酸化防止剤、殺細菌剤、染料、香料、増白剤、共界面活性剤、光活性剤、外皮形成抑制剤、腐食抑制剤、酵素安定剤、洗剤ビルダー等である。 ・・・(略)・・・ 好適な外皮形成/外皮除去抑制剤は、使用された汚れた布類の外観を改善するために添加され得る。それらは、しばしば0.5%~2%の範囲の量で使用される。この種の「外皮(crustation)」抑制剤の周知の例は、欧州特許出願第82.200602.9号明細書に詳述されているマレイン酸およびアクリル酸(メタクリル酸)単量体含有の共重合体である。」 (ア-8)第7頁右欄第24行~第8頁右欄32行 「以下の液体洗剤は、個々の成分を表示された割合で混合することによつて調製された。使用された混合法は、非石けん陰イオン界面活性剤をセルロースエーテルの混合物の水溶液に添加して混合下に、一次コアセルベートを調製し、次いで混合下に陰イオン界面活性剤の残部を添加し、その後混合下に非イオン界面活性剤を添加してコアセルベート網目を形成すること(但し、混合操作下でpHは6.0以上に維持される)からなる。 (1) カルボキシメチルセルロース:ヘクストAG製の登録商標タイロース(TYLOSE)C30、DS0.64、DP250 (2) メチルセルロース:ヘクストAG製の登録商標タイロースMH20、DS1.75、DP200 (3) メチルヒドロキシエチルセルロース:ウオルフ・ウオルスロード製の登録商標ウオロセル(WALOCEL)、DS2.1、DP195 (4) メチルヒドロキシプロピルセルロース:ウオルフ・フオルスロード製の登録商標ウオロセル、DS1.7、DP190 (5) ギスト・ブロカーズ製の登録商標マキサターゼ(MAXATASE) (6) ギスト・ブロカーズ製の登録商標ラピダーゼ(RAPIDASE) これらの洗剤組成物は、顕微鏡試験によつて確認されるコアセルベート網目の形成および貯蔵安定性(室温、1週間)について比較評価された。結果を以下に示す。 前記結果は、近似の従来組成物に比較しての本発明の組成物から得られる利益を実証している。結果は、特許請求の範囲の臨界性をきわ立たせる(ACの不存在の組成物A、非イオンエトキシレートの不存在の組成物B、組成物Cの総成分対水の比率1:1以下)。」 イ 甲3(特開2007-297510号公報) (イ-1) 「【請求項1】 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有し、かつ前記(C)成分の含有量cに対する前記(B)成分由来のカルボキシ基の含有量bの割合b/c(モル比)が0.9~5.0の範囲内であることを特徴とする衣料用液体洗浄剤組成物。 (A)非イオン性界面活性剤 (B)架橋型カルボキシビニルポリマー (C)1価のカチオン性界面活性剤」 ウ 甲4(国際公開第2010/103833号) (ウ-1) 「請求の範囲 [請求項1](A)酸化亜鉛粒子およびアルミノ珪酸亜鉛粒子から選ばれる1種類以上の粒子、および(B)重量平均分子量300,000~1,000,000のカルボキシメチルセルロースを含有し、(A)酸化亜鉛粒子および/またはアルミノ珪酸亜鉛粒子と(B)カルボキシメチルセルロースの質量比(A)/(B)が10/1~1/4であることを特徴とする粒状洗剤組成物。 [請求項2]前記(A)酸化亜鉛粒子および/またはアルミノ珪酸亜鉛粒子の平均粒子径が10μm以下である、請求項1記載の粒状洗剤組成物。」 エ 甲5(特開2011-132271号公報) (エ-1) 「【請求項1】 (a)下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤を25~60質量%、(b)炭素数12~18の脂肪酸又はその塩を酸構造とみなして0.3~10質量%、(c)窒素原子に結合する有機基のうち、1~3つが炭素数2~4のアルカノール基であり、残りが水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であるアルカノールアミンを0.05~6質量%、(d)キレート剤を0~0.4質量%及び水を含有し、25℃におけるpHが6~8である衣料用液体洗浄剤組成物であって、金属の含有量が0.5質量%以下である、衣料用液体洗浄剤組成物。 R1(CO)lO-[(C2H4O)m/(AO)n]R2    (1) 〔式中、R1は炭素数7~22の鎖式炭化水素基であり、R2は水素原子、又は1~3のアルキル基である。lは0又は1の数であって、l=0のときR2は水素原子である。AOは炭素数3~5のアルキレンオキシ基である。m、nは平均付加モル数であって、mは8~30の数であり、nは1~5の数であり、且つm+nは14以上の数である。l=0のときmは12以上の数である。“/”はC2H4O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕」 オ 甲6(特開平10-280000号公報) (オ-1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 酵素、及びホウ酸または該組成物中でホウ酸を形成しうるホウ素化合物を含有する液体洗浄剤を、塗布部がフェルトからなる塗布型容器に充填してなることを特徴とする衣料用洗浄剤製品。 【請求項2】 液体洗浄剤が、ノニオン界面活性剤10~30重量%、溶剤1~60重量%、脂肪分解酵素50~5000LU/g、及びホウ酸または該組成物中でホウ酸を形成しうるホウ素化合物0.05~5重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の衣料用洗浄剤製品。 【請求項3】 フェルトがポリエステル/ポリオレフィン混合である請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の衣料用洗浄剤製品。」 (2)甲2に記載の発明 甲2には、「液体洗剤」(発明の名称)に関し、上記(ア-1)に「界面活性剤、再付着防止剤および液体洗剤組成物用に場合によって配合される通常の成分を含有する水性の均一液体洗剤組成物において、C1~C4アルキルセルロース(AC、場合によってヒドロキシル化されている)とカルボキシメチルセルロース(CMC)との、CMC:ACの重量比6:1から1:4のコアセルベート0.1~3重量%、 陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との混合物20重量%より大(非イオン界面活性剤は3重量%よりも多く、陰イオン界面活性剤は石けん及び非石けん陰イオン界面活性剤で構成され、そして陰イオン界面活性剤対非イオン界面活性剤の重量比は1:1から8:1の範囲内である)、および 10重量%よりも多い水(総成分対水の重量比は1:1から9:1である)を含有する水性の均一洗剤組成物。」が記載されている。 そして、上記(ア-2)の記載によれば、この液体洗剤のアルキルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースは、再付着防止機能を持つもの(再付着防止剤)であるところ、液体洗剤内へのこれら再付着防止剤の可溶化は、陰イオン界面活性剤の存在下において事実上不可能であったが、上記(ア-3)及び(ア-5)の記載によれば、陰イオンセルロースエーテル(上記カルボキシメチルセルロース)と非イオンセルロースエーテル(上記C1~C4アルキルセルロース)との混合物を有効に活用し、コアセルベート網目構造を液体洗剤内に形成することにより、上記(ア-4)の記載によれば、上記の液体洗剤は、添加剤量の再付着防止剤を含有する均一液体洗剤組成物を処方することができるものである。 ここで、上記(ア-8)には、この液体洗剤の態様を示す組成物例I~Vに対し、前記コアセルベート網目が形成されておらず、貯蔵安定性も「相分離」とされている組成物例A~Cが記載されている。 この組成物例A~Cのうち組成物例Aを例にとると、上記(ア-8)の記載によれば、この例Aは、多数の成分からなるものであるが、主要な成分(含有量がカルボキシルメチルセルロース(1)よりも大きいもの)を挙げれば、カルボキシルメチルセルロース(1):1.0、線状ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩:11、C13~C15オキソアルコールとアルコール1モル当たり7モルのエチレンオキシドとの縮合物:12、脂肪酸(ラウリン酸とミリスチン酸との重量比約3:1の混合物):10、オレイン酸:5、エタノール:3.0、1,2-プロパンジオール:9.0、トリエタノールアミン:5.0、苛性物:1.5、ココナツツアルコール硫酸のトリエタノールアミン塩:4.0、ギ酸ナトリウム:1.0、水:35を含む組成物である。 そして、この組成物の各成分の割合は、ここで挙げていない少量成分も含めれば合計で100であることから、各数値は、質量%に対応するといえるし、カルボキシルメチルセルロース(1)は、上記(ア-8)の記載によれば、DSが0.64のものである。 そうすると、甲2には、この組成物例Aとして、「DSが0.64のカルボキシルメチルセルロース(1):1.0質量%、線状ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩:11質量%、C13~C15オキソアルコールとアルコール1モル当たり7モルのエチレンオキシドとの縮合物:12質量%、脂肪酸(ラウリン酸とミリスチン酸との重量比約3:1の混合物):10質量%、オレイン酸:5質量%、エタノール:3.0質量%、1,2-プロパンジオール:9.0質量%、トリエタノールアミン:5.0質量%、苛性物:1.5質量%、ココナツツアルコール硫酸のトリエタノールアミン塩:4.0質量%、ギ酸ナトリウム:1.0質量%、水:35質量%を含有し、相分離している液体洗剤組成物。」(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 (3)対比・判断 ア 本件発明1について 本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「洗剤組成物」は、本件発明1の「洗浄剤組成物」に相当する。 また、甲2発明の「DS」とは、上記(ア-5)の記載によれば、「アンヒドログルコース単位当たりの置換アルキル基の数を示す」とされ、カルボキシルメチルセルロースにおける置換アルキル基とは、カルボキシメチル基であるといえる。一方、本件発明1で「エーテル化度」とは、本件明細書の段落【0015】の記載によれば、「グルコース1単位あたりのカルボキシメチル基の平均置換度を示」すものであるから、甲2発明の「DS」は、本件発明1の「エーテル化度」に相当する。 さらに、甲2発明の「線状ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩」(アルキル基が炭素数12を有するアルキルベンゼンスルホネート)は、上記(ア-6)の記載によれば、陰イオン界面活性剤であるから、本件発明1の「アニオン界面活性剤」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明は、「次の成分(A)、(B)及び(C): (A)アニオン界面活性剤  11質量%、 (B)エーテル化度が0.64であるカルボキシメチルセルロース  1.0質量%、 (C)水 を含有する洗浄剤組成物。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 (相違点1) 洗浄剤組成物に関し、本件発明1では、「皮膚洗浄剤組成物」であるのに対し、甲2発明では、皮膚洗浄剤組成物であるのか明らかでない点。 (相違点2) カルボキシルメチルセルロースに関し、本件発明1では、組成物中に分散され、平均粒子径が0.5~1000μmであるのに対し、甲2発明では、洗浄剤組成物は、相分離をしていることから、カルボキシメチルセルロースは組成物中に平均粒子径を持つ粒子として分散されているものではない点。 事案に鑑み、上記(相違点1)について、以下検討する。 ここで、上記(ア-7)の記載によれば、甲2発明の「液体洗剤組成物」の洗浄対象として、「使用された汚れた衣類」は、記載されているといえるものの、甲2には、洗浄対象を「皮膚」とすることは記載されていない。 そして、洗浄の対象が、「皮膚」であるか、「汚れた衣類」であるかによって、汚れの種類が異なると共に、「皮膚」を洗浄対象とするものであれば、その組成物の各成分の生体への適合性等も必要になることから、本件発明1の「皮膚洗浄剤組成物」と共通する成分以外に多数の皮膚の汚れの洗浄に有効であるか否か、生体に適合する成分であるか否かの検討がなされていない成分を含有する甲2発明の「汚れた衣類」に対する液体洗剤組成物を、「皮膚」の洗浄にも用いることができるとすることはできない。 また、甲3ないし甲6を参照しても、「汚れた衣類」に対する液体洗剤組成物を、「皮膚」の洗浄にも用いることができるとする記載や示唆も見当たらない。 さらに、本件発明は、本件発明1の組成を有する洗浄剤組成物を、「皮膚」の洗浄に用いることにより、本件明細書の段落【0009】に記載される、「洗浄中の増泡性に優れ、高い洗浄実感が得られ、得られた泡は、泡持ちに優れ、著しく高い泡粘度を有するものである。特に、手あるいは洗浄タオル、洗浄スポンジ等の洗浄具で肌を擦るという洗浄行為自身によって手の力を容易に肌に加えられることから、高いマッサージ感が得られる。」という甲2ないし甲6からは、予測することのできない格別の効果を奏するものである。 よって、上記(相違点2)を検討するまでもなく、上記(相違点1)が、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲2発明並びに甲3ないし甲6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件特許1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 イ 本件発明2ないし9について 本件発明2ないし9は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2ないし9は、いずれも甲2発明並びに甲3ないし甲6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件特許2ないし9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 第6 むすび 上記「第5」で検討したとおり、本件特許1ないし9は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許1ないし9を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1ないし9を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700835

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