特許異議申立
2023-700611
繊維製品用液体洗浄剤組成物
- 審判番号
- 2023-700611
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-246610
- 登録番号
- 7186610
- 請求日
- 2023年06月09日
- 審決日
- 2025年03月27日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】花王株式会社
- 【権利者代理人】古谷 聡
- 【権利者代理人】河戸 春樹
- 【異議申立人】森田 弘潤
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 関根 裕
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P1651.113-YAA(C11D) / P1651.121-YAA(C11D) / P1651.537-YAA(C11D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7186610号発明「繊維製品用液体洗浄剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7186610号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7186610号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7186610号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年12月28日の出願であって、令和4年12月1日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年6月9日に特許異議申立人である森田 弘潤(以下「申立人」という。)により、請求項1~4に係る特許について特許異議の申立てがなされたものである。
以後の手続は、次のとおりである。
令和 5年10月12日付け 取消理由通知
令和 5年12月14日 特許権者による訂正の請求及び意見書の提出
令和 5年12月26日付け 訂正請求があった旨の通知
令和 6年 2月 7日 申立人による意見書の提出
令和 6年 6月19日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 6年 8月23日 特許権者による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)及び意見書の提出
令和 6年 9月 5日付け 手続補正指令(方式)
令和 6年 9月18日 特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和 6年 9月27日 特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和 6年11月28日 申立人による上申書の提出
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の請求の趣旨は、「特許第7186610号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下のとおりである(なお、訂正箇所に下線を付す)。
なお、令和5年12月14日提出の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の繊維製品用液体洗浄剤組成物について「(b)成分のスルホン酸基のモル数Xと(a)成分のカチオン基のモル数Yとのモル比であるX/Yが30以上である」と記載されているのを、「(b)成分のスルホン酸基のモル数Xと(a)成分のカチオン基のモル数Yとのモル比であるX/Yが30以上200以下であり、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「繊維製品用液体洗浄剤組成物。」と記載されているのを、「25℃のpHが3以上9以下である、繊維製品用液体洗浄剤組成物。」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、一群の請求項である。そうすると、本件訂正は一群の請求項ごとにされたものである。
3 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「X/Yが30以上であ」るという事項について、「X/Yが30以上200以下であ」るとするものであり、X/Yの上限を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落0041には、「X/Yの値は、本発明の課題をより解決できる観点から、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、更に好ましくは30以上であり、より更に好ましくは40以上であり、同じ観点から、好ましくは500以下であり、より好ましくは400以下であり、より更に好ましくは300以下であり、より更に好ましくは200以下である」と記載されているから、訂正事項1は、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのとおり、X/Yの上限を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の「繊維製品用液体洗浄剤組成物」という事項について、「25℃のpHが3以上9以下である」とするものであり、繊維製品用液体洗浄剤組成物の25℃のpHを特定の範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落0044には、「本発明の繊維製品用液体洗浄剤組成物は、25℃のpHが好ましくは3以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である」と記載されているから、訂正事項2は、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのとおり、繊維製品用液体洗浄剤組成物の25℃のpHを特定の範囲に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであること
本件訂正請求による訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~4に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は次のとおりの発明である。
「【請求項1】
下記(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下、(b)成分を0.1質量%以上10質量%以下、(c)成分を15質量%以上60質量%以下、及び水を含有し、(b)成分のスルホン酸基のモル数Xと(a)成分のカチオン基のモル数Yとのモル比であるX/Yが30以上200以下であり、25℃のpHが3以上9以下である、繊維製品用液体洗浄剤組成物。
(a)成分:カチオン基を有する多糖ポリマー
(b)成分:炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩
(c)成分:アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤
【請求項2】
前記(b)成分がクメンスルホン酸塩である、請求項1に記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(c)成分のアニオン界面活性剤が、下記(c1-1)成分、(c1-2)成分、(c1-3)成分及び(c1-4)成分から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤である、請求項1又は2に記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
(c1-1)成分:アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩
(c1-2)成分:アルキレンオキシ基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩
(c1-3)成分:スルホン酸塩基を有するアニオン界面活性剤
(c1-4)成分:脂肪酸又はその塩
【請求項4】
前記(c)成分のノニオン界面活性剤が、下記一般式(c2)で表されるノニオン界面活性剤である、請求項1~3の何れかに記載の繊維製品用液体洗浄剤組成物。
R1c-(CO)xO-(AO)m-R2c (c2)
〔式中、R1cは炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、AOは、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基であり、xは0又は1の数であり、mはAOの平均付加モル数であり、3以上50以下の数であり、R2cは、水素原子又はメチル基である。〕」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要、取消理由(決定の予告)の概要及び証拠方法
1 特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要
(1)申立理由1(サポート要件違反)
本件特許の請求項1~4に係る特許は、下記ア~オの点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア X/Yの下限値、上限値
本件特許の明細書には、実施例、比較例の試験データがそれぞれ示されているが、その評価からすると、請求項1の「X/Yが30以上」を充足することによって、必ずしも流動性に優れ、固形物が析出しても接触面に固形物が付着しにくいという効果が得られるものではないし、また上限値についても、前記実施例では、最大でもX/Yの値が132の場合までしか示されておらず、それを上回る場合について同様の効果が得られるとは認識し得ないから、パラメータ発明のサポート要件の充足性は認められない。
イ (a)成分、(b)成分及び(c)成分の濃度
請求項1の「下記(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下」をサポートするためには、その課題解決が困難になる(a)成分の上限値付近についての実験データの裏付けが不可欠になるところ、本件特許の明細書にはそのような実験データは一切示されておらず、また、請求項1の「(b)成分を0.1質量%以上10質量%以下、(c)成分を15質量%以上60質量%以下」についても、本件特許の明細書の実施例で示されているのは、(b)成分の濃度5~8質量%、(c)成分の濃度16~21質量%の範囲に過ぎないから、パラメータ発明のサポート要件の充足性は認められない。
ウ (b)成分の種類(構造)
請求項1の「(b)成分」は「炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩」であるが、本件特許の明細書の実施例では、炭素数が3の場合(p-クメンスルホン酸)のみしか開示しておらず、「炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基」の範囲まで、その効果を一般化・抽象化できるとは認められないから、サポート要件の充足性は認められない。
エ (c)成分の種類
請求項1の「(c)成分」は「アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤」と規定されるのみで、その具体的な種類や構造に関して一切規定されておらず、本件特許の明細書の段落0004における「組成物の外観は均一透明であるが、組成物の流動性が損なわれる」という本件発明の技術的課題を解決できない態様を多分に含んでいるから、サポート要件の充足性は認められない。
オ 繊維製品用液体洗浄剤組成物のpH
請求項1では、繊維製品用液体洗浄剤組成物のpHに関して何らの限定もされていないが、本件特許の明細書の実施例、比較例においてpHが8.0以外の値になれば、同様の効果が得られないことが合理的に推測されるため、繊維製品用液体洗浄剤組成物のpHを構成要件としない請求項1の範囲まで、その効果を一般化・抽象化できるとは認められないから、サポート要件の充足性は認められない。
(2)申立理由2-1(甲第1号証を主引用例とする新規性欠如)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由2-2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 当審で通知した令和6年6月19日付け取消理由通知(決定の予告)の取消理由
(1)取消理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)(申立理由2-2に対応)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 証拠方法
(1)申立人が申立書とともに提出した証拠方法は、次のとおりである。なお、甲第1号証~甲第22号証を、以下「甲1」~「甲22」ともいう。
甲第1号証:特表2011-522914号公報
甲第2号証:特表2017-524048号公報
甲第3号証:特開2010-209293号公報
甲第4号証:特開2008-156565号公報
甲第5号証:ダウ・ケミカル社、カタログ「UCARE Polymers」、2005年、p.1-24
甲第6号証:「4-クメンスルホン酸ナトリウム」の「J-GLOBAL」での検索結果の出力物、https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907056758914980
甲第7号証:特表2015-529282号公報
甲第8号証:特表2002-537482号公報
甲第9号証:特表2003-524065号公報
甲第10号証:「カチオン化セルロース」の「日本化粧品技術者会ホームページ ライブラリー 化粧品用語集」での検索結果の出力物、https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/324
甲第11号証:「塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース」の「Cosmetic-Info.jp」での検索結果の出力物、https://www.cosmetic-info.jp/jsqi/detail.php?id=341
甲第12号証:特開2006-273790号公報
甲第13号証:特開2017-202991号公報
甲第14号証:特開2009-179624号公報
甲第15号証:特開2009-221138号公報
甲第16号証:特開2017-81835号公報
甲第17号証:特開2005-8837号公報
甲第18号証:特開2010-100606号公報
甲第19号証:特開2017-14375号公報
甲第20号証:特開平6-192130号公報
甲第21号証:特表2007-517805号公報
甲第22号証:特表2016-534177号公報
(2)特許権者が令和5年12月14日に提出した意見書に添付して提出した証拠方法は、次のとおりである。なお、乙第1号証~乙第4号証を、以下「乙1」~「乙4」ともいう。
乙第1号証:特開2005-48196号公報
乙第2号証:特開昭54-98343号公報
乙第3号証:特表2005-529830号公報
乙第4号証:特開2009-102587号公報
第5 当審における判断
1 甲号証に記載された事項
(1)甲1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
カチオン性布地柔軟化剤と香料付着ポリマーとを含み、6~11のpHを有する液体又はゲル形態の水性洗濯洗剤組成物であって、
a)前記組成物の5重量%~30重量%の非石鹸アニオン性界面活性剤と、
b)前記組成物の0重量%~20重量%の石鹸と、
c)前記組成物の0.5重量%~30重量%の非イオン性界面活性剤と、
d)前記組成物の0重量%~5重量%のヒドロトロープと、
e)前記組成物の0.1重量%~6重量%の、1000未満の分子量を有する布地柔軟化カチオン性補助界面活性剤と、
f)前記組成物の0.05重量%~1重量%の布地柔軟化四級化ポリマーであって、少なくとも200,000の分子量を有する、布地柔軟化四級化ポリマーと、
g)前記組成物の0.01重量%~0.5重量%の香料付着ポリアミンであって、5,000~50,000の分子量を有する、香料付着ポリアミンと、
h)前記組成物の0重量%~0.5重量%の非四級化非ポリアミン増粘剤と、
i)前記組成物の0.01重量%~0.5重量%の香料と、
を含む、水性洗濯洗剤組成物。」
「【0001】
本発明は、標準的な消費者用洗濯機で利用するとき、布地を柔軟化する効果をもたらす液体洗濯洗剤組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品(例えば寝具、リネン、及び/又は衣類)を洗濯するための多くの水性液体洗濯洗剤製品が市販されている。これらの製品は、従来は染み除去及び清浄化効果に焦点が当てられ、洗濯機及び/又は手洗い用途で用いることができた。したがって、水性洗濯洗剤組成物は当該技術分野で周知であり、アニオン性及び非イオン性界面活性剤等の界面活性剤を含有していることが多い。
【0003】
より最近では、かかる洗濯洗剤組成物は、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethycelluloses)等の柔軟化技術を含んで配合されて、洗浄を通して清浄化効果と柔軟化効果の両方を消費者に提供する。重要なことに、これらの製剤により消費者は、すすぎサイクルのみでの別個の布地強化製品を利用するのを避けることが可能になる。かかる製剤は、消費者にとってより望ましいものとなった。
【0004】
香料及び爽やか感(freshness)技術もまた、水性液体洗濯洗剤で用いるために開発されて、洗濯された布地上で長持ちする香気を消費者に提供している。市販のLUPASOL等の香料付着技術は、デルタ-ダマスコン等の特定の香料原材料と共に用いられて、香料の布地への付着を促進し、全体的な爽やかな経験を消費者にもたらすことができる。
【0005】
しかし、現在驚くべきことに、特定の種類のカチオン性布地柔軟化物質(カチオン性ヒドロキシエチルセルロース等)を、アニオン性/非イオン性界面活性剤マトリクス中で特定の種類の香料付着促進ポリマー(Lupasol HF又はWF等)と組み合わせると、保存時、望ましくない沈殿が形成され、洗剤から析出することが発見された。このような望ましくない特性としては、例えば、見苦しい斑点又は塊として容器の壁上に固着する沈殿が挙げられる。Lupasol種の材料と組み合わせられたカチオン性ヒドロキシエチルセルロースが沈殿し、それにより製品に見苦しい残留物が形成されるという問題は以前は知られておらず、両方の技術が全体的に同じ電荷を有するため(カチオン性)予想外であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、消費者に更により良好な使用中の経験をもたらし、単一の安定した水性洗濯洗剤組成物に良好な清浄性、柔軟性、及び全体的爽やかさを提供することが望ましい。」
「【0034】
驚くべきことに、低分子量カチオン性補助界面活性剤を、布地柔軟化四級化ポリマー及び香料付着ポリアミンも含有しているアニオン性及び非イオン性界面活性剤含有洗剤組成物に添加することにより、製品の安定性が達成され得るということが、現在見出された。更に、清浄化及び柔軟化特性を維持しながら安定性が達成される。したがって、本明細書で提供される洗剤組成物は、経済的であり、優れた清浄、布地柔軟化、及び香料付着を提供し、ボトルに見苦しい付着物が形成されることなく長期間保存できる。更に、本発明の水性洗濯洗剤は、洗濯洗剤が日本で販売可能であるために必要な厳しい保存試験条件(凍結-融解試験を含む)を満たしている。」
「【0040】
水性洗濯洗剤組成物
本発明の組成物は水性であり、これは該組成物が少なくとも5%の水を含有することを意味する。他の種類の水混和性液体、例えばアルカノール、ジオール、他のポリオール、エーテル、アミン等を、共溶媒又は安定剤として液体洗剤組成物に添加してもよい。しかし、これらの他の液体はコストが高いことが多い。本発明の水性洗濯組成物は、液体又はゲル形態であってよい。1つの実施形態では、組成物は、組成物の約30重量%~70重量%、あるいは35重量%~50重量%、更にあるいは約10重量%~25重量%の水を含む。
【0041】
本明細書において洗濯洗剤組成物は、1%水溶液で約6~約11のpHを有する。好ましくは、pHは約7.5~約9である。
【0042】
香料付着ポリアミン(LUPASOL)
本発明の水性洗剤組成物は、組成物の約0.01重量%~約0.5重量%、あるいは約0.01重量%~約0.4重量%の、約5,000~約50,000の分子量を有する香料付着ポリアミンを含有する。1つの実施形態では、分子量は約10、000~約30,000である。」
「【0049】
布地柔軟化四級化ポリマー(CAT-HEC)
本発明の水性洗剤組成物は、組成物の約0.05重量%~約1重量%、あるいは約0.1重量%~約0.3重量%の、少なくとも200,000の分子量を有する布地柔軟化四級化ポリマーを含有する。1つの実施形態では、布地柔軟化四級化ポリマーは、400,000超の分子量を有する。
【0050】
1つの実施形態では、布地柔軟化四級化ポリマーは、カチオン性ヒドロキシエチルセルロースである。理論に縛られるものではないが、一部の消費者、特に日本の消費者は、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース等の天然由来の材料を含有する洗剤組成物を好む。しかし、好適な分子量を有する限り、代替物として合成材料(PAM/MAPTAC等)を用いてもよい。」
「【0067】
アニオン性界面活性剤
本明細書における水性洗濯洗剤組成物は、アニオン性界面活性剤を含有する。洗濯洗剤で用いるための当該技術分野で既知である非石鹸アニオン性界面活性剤のいずれを利用してもよい。組成物は、組成物の約5重量%~約30重量%の非石鹸アニオン性界面活性剤を含有する。1つの実施形態では、組成物は、組成物の約6重量%~約15重量%、あるいは約6重量%~約8重量%の非石鹸アニオン性界面活性剤を含有する。
【0068】
1つの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、分枝鎖アルキルベンゼンスルホネート、アルキルポリ(エトキシレート)、アルキルサルフェート、メチルエステルスルホネート、及びこれらの混合物から選択される。アニオン性界面活性剤の親水性指数は広範囲にわたって異なってもよい。」
「【0077】
石鹸
本明細書における水性洗濯洗剤組成物は石鹸を含有してもよい。本発明は石鹸を有さない実施形態も含むが、好ましい実施形態は石鹸を含む。理論に縛られるものではないが、石鹸は部分的に界面活性剤として、及び部分的にビルダーとして作用し、発泡抑制にも有用である場合があるため、石鹸を含むことが望ましい場合がある。更に、理論に縛られるものではないが、石鹸は組成物の種々のカチオン性化合物と都合よく相互作用して、本発明の組成物で処理された(treaded)繊維製品の布地の柔軟性を高めることができる。洗濯洗剤で用いるための当該技術分野で既知である石鹸のいずれを利用してもよい。1つの実施形態では、組成物は0重量%~約20重量%、あるいは約0.5重量%~約20重量%、あるいは約4重量%~約10重量%、あるいは約4重量%~約7重量%の石鹸を含有する。
【0078】
本明細書で有用な石鹸の例としては、オレイン酸石鹸、パルミチン酸石鹸、パーム核脂肪酸石鹸、及びこれらの混合物が挙げられる。典型的な石鹸は、異なる鎖長及び置換度を有する脂肪酸石鹸の混合物の形態である。かかる混合物の1つは、抜頭(topped)パーム核脂肪酸である。」
「【0082】
非イオン性界面活性剤
本明細書における水性洗濯洗剤組成物は、非イオン性界面活性剤を含有する。洗濯洗剤で用いるための当該技術分野で既知の非イオン性界面活性剤のいずれを利用してもよい。組成物は、組成物の約0.5重量%~約30重量%の非イオン性界面活性剤を含有する。1つの実施形態において、組成物は、組成物の約5重量%~約15重量%、あるいは約8重量%~約12重量%の非イオン性界面活性剤を含有する。
【0083】
1つの実施形態では、アニオン性界面活性剤の非イオン性界面活性剤に対する比は1以上である。
【0084】
本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の例としては、C12~C16(EO)xH(式中EOはエチレンオキシドを表し、xは1~8の範囲であってよい)等の長鎖アルキルポリ(エトキシレート)が挙げられる。」
「【0086】
ヒドロトロープ
本明細書における水性洗濯洗剤組成物はヒドロトロープを含有してもよい。1つの実施形態では、組成物は、組成物の0重量%~約5重量%、あるいは約0.5重量%~約5重量%、あるいは約3重量%~約5重量%のヒドロトロープを含有する。洗濯洗剤で用いるための当該技術分野で既知のヒドロトロープのいずれを利用してもよい。
【0087】
本明細書で有用なヒドロトロープの例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアンモニウム塩、並びにクメンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びこれらの混合物の酸型が挙げられる。」
「【0098】
以下の実施例は本発明の組成物を説明するが、本明細書の発明の範囲を限定する又は別の方法で定義することを必ずしも意味しない。
【0099】
(実施例1A及び1B) 本発明による2つの組成物を、示す比率で表Iに列挙された成分を組み合わせる従来の手段により調製する。
【表1】
[図:0001423426000001.jpg]
」
(2)甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
アニオン性界面活性剤と、
非イオン性界面活性剤と、
0.5重量%~25重量%の水と、
組成物の0.05重量%~2重量%のトリメチルアンモニウム置換エポキシドにより誘導体化されているヒドロキシエチルセルロースポリマーであるカチオン性ポリマーと、
を含む液体洗濯洗剤組成物であって、
前記アニオン性界面活性剤は脂肪酸を含み、及び
式中、
-前記カチオン性ポリマーの前記アニオン性界面活性剤に対する重量比が1:5より低く、
-前記カチオン性ポリマーの前記非イオン性界面活性剤に対する重量比が1:10より高く、
-前記カチオン性ポリマーの前記界面活性剤の総量に対する重量比が1:5より低く、
-前記アニオン性界面活性剤の前記非イオン性界面活性剤の重量比が5:1~23:1であり、
「界面活性剤の総量」は前記液体洗濯洗剤組成物中に存在する、全てのアニオン性、非イオン性、カチオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない全ての界面活性剤の量を意味する、液体洗濯洗剤組成物。」
「【0002】
ヒドロキシエチルセルロースポリマーを含むカチオン性ポリマーは、洗濯洗剤組成物において布地を柔らかくするのに有用であることが知られている。しかし、カチオン性セルロースポリマーと、洗濯洗剤組成物中に存在するアニオン性洗浄界面活性剤との相互作用により、この布地を柔らかくする効果が薄れることがよくある。洗浄界面活性剤を増量することにより洗浄効果が改善するが、これは布地を柔らかくする効果を弱める作用がある。」
「【0079】
構造式Iのカチオン性セルロースポリマーには、同様に、市販のものが包含され、市販物質を従来の化学修飾によって調製できる物質が更に包含される。構造式Iの市販されているセルロースポリマーには、Ucare Polymer JR 30M、JR 400、JR 125、LR 400、及びLK 400ポリマーの商品名で販売されているもの等のINCI名ポリクオタニウム10、Softcar SK(商標)、の商品名で販売されているもの等のポリクオタニウム67(以上、Amerchol Corporation(Edgewater NJ)から市販されている)、Celquat H200及びCelquat L-200の商品名で販売されているもの等のポリクオタニウム4(以上、National Starch and Checmical Company(Bridgewater NJ)から市販されている)が挙げられる。他の好適な多糖としては、グリシジルC12~C22アルキルジメチルアンモニウムクロリドで四級化されたヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。このような多糖の例としては、商品名Quaternium LM 200でAmerchol Corporation(Edgewater NJ)から市販されている、INCI名ポリクオタニウム24のポリマーが挙げられる。カチオン性デンプンは、D.B.Solarek in Modified Starches,Properties and Uses(CRC Pressにより出版(1986))及びU.S.Pat.No.7,135,451,col.2,line 33-col.4,line 67に記載されている。」
(3)甲3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)成分:アニオン界面活性剤と、(B)成分:カチオン化ポリマーと、(C)成分:ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエスエル系樹脂で香料を内包したカプセル化香料とを含有する洗剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分は、カチオン化セルロースである、請求項1に記載の洗剤組成物。」
「【0005】
しかしながら、洗剤組成物には、洗浄力に加え複数の機能を備えることが求められている。被洗物への香りの付与(残香性)については、被洗物の着用中に被洗物が擦り合わされて香気が放出する(発香性)ことが求められている。加えて、洗剤組成物の被洗物に対する残香性、発香性及び柔軟性のさらなる向上が求められていた。
そこで、本発明は、残香性、発香性及び柔軟性に優れた洗剤組成物を目的とする。」
「【0021】
<カチオン化セルロース>
カチオン化セルロースは、その重量平均分子量が10万~200万であるものが好ましく、40万~160万であるものがより好ましい。上記下限値以上であれば、洗剤組成物の柔軟性がより向上する。上記上限値以下であれば、カチオン化セルロース自身又はカチオン化セルロースを含有する洗剤組成物の水への溶解性がより良好となる。
なお、カチオン化セルロースの重量平均分子量は、標準物質をポリエチレンオキシドとしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析を行う方法により測定できる。
【0022】
カチオン化セルロースのカチオン化度は、0.4~1.2質量%であることが好ましく、0.4~0.8質量%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、特に綿を被洗物とした場合、柔軟性、残香性、発香性がより向上する。
本発明において、「カチオン化度」とは、カチオン化セルロース分子中に占める窒素の含有率(質量%)を意味し、グルコース環単位当たりの窒素原子の割合を示す。該窒素原子はカチオン化剤に由来する。
該カチオン化度は、その値が大きいほどカチオン化セルロースのカチオン性が強まり、水溶性が高くなることを意味する。したがって、カチオン化度は、被洗物である衣類への吸着性と関係する物性である。カチオン化セルロースにおいては、カチオン化度が0.4質量%以上であると、適度な強さのカチオン性が得られ、カチオン化セルロース自体の衣類への吸着性がより良好となるため、これに伴ってカチオン化セルロースの吸着性も良好となり、柔軟性、残香・発香性の効果がより向上すると考えられる。一方、1.2質量%以下であると、カチオン性の強さが適度に抑えられて水溶性が高くなりすぎず、カチオン化セルロース自体の衣類への吸着性が良好に保たれるため、カチオン化セルロースの吸着性も良好となり、柔軟性、残香性、発香性がより向上すると考えられる。
【0023】
カチオン化セルロースは、例えば、セルロースに酸化エチレンを付加させて得られるヒドロキシエチルセルロースと、カチオン化剤のグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとを反応させることによって製造することができる。
カチオン化セルロースの好適なものとしては、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有する高分子化合物、(ハロゲン)-O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
・・・
【0028】
前記式(2)中、Xはハロゲン原子を示し、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
グルコース環単位当たりの前記一般式(2)で表される基の平均個数は0.1~0.8であることが好ましく、0.3~0.8であることがさらに好ましい。
前記一般式(1)で表される繰返し単位を有する高分子化合物において、グルコース環単位当たりのエチレンオキシド(EO)置換度は、0.3~3.0であることが好ましく、0.7~2.5であることがさらに好ましい。
ただし、「EO置換度」とは、セルロース原料のグルコース環単位当たり、EOで置換された水酸基の平均個数(該グルコース環の持つ3つの水酸基のうち、いくつにEOが付加されたかを示すもので、最大3となる。)を示す。
また、グルコース環単位当たりのEO平均付加モル数は、l+m+n=1~5であることが好ましく、特に洗浄力の向上、再汚染(汚れの再付着)を抑制する効果が良好なことから、下限値は1以上が好ましく、上限値は3以下がより好ましい。
カチオン化セルロースの具体的には、ライオンケミカル株式会社から販売されているレオガードGPS(カチオン化度1.8質量%)、レオガードGP(カチオン化度1.8質量%)、レオガードGP0(カチオン化度1.8質量%)、レオガードLP(カチオン化度1.0質量%)、レオガードKGP(カチオン化度1.8質量%)、レオガードMGP(カチオン化度1.8質量%)、レオガードMLP(カチオン化度0.6質量%)、レオガードMTY(カチオン化度0.6質量%)(以上、商品名);東邦化学工業株式会社から販売されているカチナールHC-100(カチオン化度1.0~2.0質量%)、カチナールHC-200(カチオン化度1.0~2.0質量%)、カチナールLC-100(カチオン化度0.5~1.5質量%)、カチナールLC-200(カチオン化度0.5~1.5質量%)(以上、商品名);ダウケミカル社から販売されているUCARE Polymer LR400(カチオン化度0.8~1.1質量%)、UCARE Polymer LR30M(カチオン化度0.8~1.1質量%)(以上、商品名)等の市販のものが好適なものとして挙げられる。
なお、上記市販のものにおける商品名の相違は、セルロースの分子量、EOの平均付加モル数又はカチオン化度等が異なることによる。
カチオン化セルロースは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。」
(4)甲4には、次の事項が記載されている。
「【0031】
(カチオン化セルロース)
カチオン化セルロースは、繊維への吸着性が良好である。綿布への吸着率が20%以上のカチオン化セルロースとしては、ヒドロキシトリメチルアンモニオプロピルヒドロキシエチルセルロースクロリドである市販のレオガードGPS(窒素分1.8質量%、平均分子量900,000)、レオガードGP(窒素分1.8質量%、平均分子量900,000)、レオガードGPO(窒素分1.8質量%、平均分子量900,000)、レオガードLP(窒素分1.0質量%、平均分子量900,000)、レオガードKGP(窒素分1.8質量%、平均分子量900,000)、レオガードMGP(窒素分1.8質量%、平均分子量2,000,000)、レオガードMLP(窒素分0.6質量%、平均分子量2,000,000)、レオガードMTY(窒素分0.6質量%、平均分子量900,000)〔以上、ライオン化学社製、グレードの相違はセルロースの分子量、エチレンオキシド(EO)付加及びカチオン化度等による。〕や、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体であるセルコートH-100(窒素分1.0質量%、平均分子量140,000)、セルコートL-200(窒素分2.0質量%、平均分子量30,000)、セルコートSC-240C(窒素分2.0質量%、平均分子量115,000)、セルコートSC-230M(窒素分2.0質量%、平均分子量170,000)〔以上、日本エヌエスシー社製、グレードの相違はセルロースの分子量、EO付加及びカチオン化度等による〕等が挙げられる。
これらカチオン化セルロースは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオン化セルロースの分子量は、10,000~10,000,000が好ましく、500,000~5,000,000がより好ましい。分子量が小さすぎると布への吸着が小さくなり、分子量が大きすぎると水溶液中における粘性が高まり、顆粒の溶解性が悪くなる。」
(5)甲5には、次の事項が記載されている。なお、摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。
「
[図:0001423426000002.jpg]
」(図3:UCAREポリマーの水溶液中での典型的な特性)
(6)甲6には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001423426000003.jpg]
」
(7)甲7には、次の事項が記載されている。
「【0047】
好ましいアニオン性界面活性剤は、C10~16アルキルベンゼンスルホン酸、好ましくはC11~14アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩である。好ましくは、アルキル基は直鎖であり、このような直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は、「LAS」として知られている。アルキルベンゼンスルホン酸、特にLASは、当該技術分野において周知である。このような界面活性剤及びそれらの調製については、例えば、米国特許第2,220,099号及び米国特許第2,477,383号に記載されている。好ましいものは、アルキル基の炭素原子の平均数が約11~14の直鎖のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びカリウムである。最も好ましいものは、アルキル基の炭素原子の平均数が約11~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の酸性型(HLAS)である。C11~C14、例えば、C12のHLASが、最も好ましい。」
(8)甲8には、次の事項が記載されている。
「【0216】
下記例は本発明の例示であって、その範囲を制限または限定するような意味ではない。ここで用いられているすべての部、パーセンテージおよび比率は、別記されないかぎり、重量%で表示されている。
下記例において、組成物に用いられた様々な成分の略号は以下の意味を有している。
【0217】
LAS :ナトリウム直鎖C12アルキルベンゼンスルホネート
・・・(中略)・・・
MEA :モノエタノールアミン
・・・(中略)・・・
脂肪酸(TPK):トップドパーム核脂肪酸
・・・(中略)・・・
HEDP :1,1-ヒドロキシエタンジホスホン酸
・・・」
(9)甲9には、次の事項が記載されている。
「【0162】
以下は、本発明に基づいた重質液状洗剤組成物を説明する:
【表1】
[図:0001423426000004.jpg]
1.直鎖状、又は中鎖分枝状のアルキル単位のいずれかを含むことができる。
【0163】
2.3-N’-(C8~C10分枝状アルカノイル)-N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン
3.シェルオイル社(Shell Oil Co.)のネオドール24-7
・・・」
(10)甲11には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001423426000005.jpg]
」
(11)甲19には、次の事項が記載されている。
「【0029】
上記(B-3)であるカチオン化セルロースは、セルロースに任意のカチオン化剤を付加して生成される。本実施形態において用いられるカチオン化セルロースは特に限定されないが、たとえば、分子量40万以上150万以下の範囲であり、カチオン性窒素含量1%以上2.5%以下(%とは質量%を意味する、以下、本段落において同じ)のものが好ましい。カチオン化セルロースの市販品の例としては、例えば、ポイズC-60H(分子量60万、N含量2.2%)、ポイズC-M80(分子量80万、N含量1.5%)、ポイズC-L150(分子量150万、N含量1.3%)、ポイズC-150L(分子量150万、N含量1.0~1.5%)(以上、花王株式会社製);ポリマーJR400(分子量40万、N含量1.7%)(ユニオン・カーバイド社製);カチナールLC-100(分子量40万、N含量1.0%)、カチナールHC-100K(分子量40万、N含量2.0%)、カチナールLC-200(分子量150万、N含量1.2%)(以上、東邦化学工業株式会社製)などが挙げられる。液体洗浄剤組成物200は、カチオン化セルロースを含有することにより、適度な粘度をもたせつつ、泡切れのよい泡造形物を形成することができる。」
(12)甲22には、次の事項が記載されている。
「【0126】
C9~11 EO5は、ICI又はShellから市販のC9~11 EO5非イオン性界面活性剤である。・・・(中略)・・・NaCSは、A&Wから市販されているクメンスルホン酸ナトリウムである。・・・」
(13)乙1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
[図:0001423426000006.jpg]
[式中、R1、R2及びR3は水素原子、次の一般式(II):
【化2】
[図:0001423426000007.jpg]
(ここで、R4は水素原子又はメチル基を示し、aは平均で1~6の数を示す。)で表される基又は次の一般式(III):
【化3】
[図:0001423426000008.jpg]
(式中、R4は水素原子又はメチル基を示し、aは平均で1~6の数を示し、R5、R6及びR7はそれぞれ同一又は異なる炭素数1~16のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは50~2000の数を示す。]
で表され、電気泳動法により求められる移動度分布(△U)が0.1×10-5~2.0×10-5cm2/sec・Vの範囲であることを特徴とするカチオン化ヒドロキシアルキルセルロース。」
「【0001】
本発明は、シャンプー、リンス、トリートメント等の配合成分として有用なカチオン化ヒドロキシアルキルセルロース及びその製造方法に関する。」
「【0019】
また、一般式(I)で表されるカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースは、窒素原子含有率(%)が0.1~10.0であることが好ましく、0.5~4.0であることが特に好ましい。」
「【0029】
実施例1
ヒドロキシエチルセルロース(無水グルコース単位当たりに付加したエチレンオキシドのモル数は2.2、25℃における2重量%水溶液の粘度は920mPa・s)を含むヒドロキシエチルセルロース粉末145gを、冷却管付き4つ口フラスコに入れ、さらに89重量%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液1110gを添加し、ヒドロキシエチルセルロースを攪拌し分散させてスラリーを得た。
次に、このスラリーを攪拌しながら、20重量%水酸化ナトリウム水溶液60gを加え、25℃で120分間攪拌して、アルカリ処理を行った。
その後、スラリーに、カチオン化剤として75重量%グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液を100g添加し、60分間攪拌混合したのち、40℃に昇温し、同温度でさらに3時間攪拌した。
室温まで冷却後、20重量%塩酸水溶液55gを添加して中和し、攪拌したのち、スラリーを濾過した。この濾過残渣を、76重量%アセトン水溶液2200mlに添加し、攪拌洗浄後、濾過した。次に、76重量%のアセトン水溶液で3回洗浄した残渣を、98重量%のアセトン水溶液2200mlに添加して攪拌混合後、再度、濾過した。残渣を70℃の温度下で2時間乾燥して、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース175gを得た。
得られたカチオン化ヒドロキシエチルセルロースについて、下記の各測定を行った。結果を表2に示す。」
「【0037】
実施例2~4、比較例1~3
表2に示す条件で、実施例1と同様にして、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースを得た。これらのカチオン化ヒドロキシエチルセルロースについて、実施例1と同様にして、各測定を行った。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
[図:0001423426000009.jpg]
」
(14)乙2には、次の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
(1) 第4級塩型カチオン界面活性剤0.3重量%以上と、水に難溶な抗菌性物質0.1重量%以上と、C17~70炭化水素0.5重量%以上とを、必須成分として含有することを特徴とするヘアリンス剤組成物。・・・」(特許請求の範囲)
「この発明は優れたフケ取り効果を有するヘアリンス剤組成物(以下、ヘアリンス剤と略称)に関する。」(第1頁左欄第17~19行)
「また第4の必須配合成分である含窒素水溶性高分子は、具体的にはポリビニルピロリドン、酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ビニルピロリドン樹脂、カチオン化アクリル樹脂などを挙げることができ、窒素含有量が1.5~14%のものを使用するのが好ましい。」(第2頁左下欄第18行~右下欄第5行)
「
[図:0001423426000010.jpg]
表は、水に不溶な抗菌性物質(ジンクピリチオン)を含有するヘアリンス剤を調製し、他の配合成分が抗菌性物質の残留性に及ぼす影響、とくに疎水性油性物質と含窒素水溶性高分子の配合による影響を調査した結果を示すものである。」(第3頁表、第4頁左上欄第1~6行)
(15)乙3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(i)カチオン変性又は二級もしくは三級アミノ変性されたセルロースエーテル又は
(ii)酸素に結合した、ヒドロキシエトキシル置換基を、単独又は1種もしくはそれ以上の他の置換基との組合せで含むセルロースエーテルであって、そのエチレンオキシドモル置換MShydroxyethoxylが2.2~3.2で、且つ非置換無水グルコース単位の百分率が8.5%以下、又はエチレンオキシドモル置換MShydroxyethoxylが2.2より小さく、且つ非置換無水グルコース単位の百分率が12%以下のいずれかであるセルロースエーテル
を含んでなるセメント組成物。」
「【0001】
本発明はセメント(cementitious)組成物に関し、更にセルロースエーテル含有セメント組成物の硬化時間の制御方法に関する。」
「【0054】
セルロースエーテル上のカチオン性置換基又はアミノ置換基の置換レベルは、窒素のパーセントとして測定することができる。好ましくは、その置換は、窒素のパーセントとして測定され、セルロースエーテルの合計重量に基づいて、セルロースエーテルの無水グルコース繰り返し単位に共有結合されたカチオン性又はアミノ置換基が、0.5~5.0重量%、より好ましくは1.0~3.5重量%、最も好ましくは1.5~2.5重量%である。置換レベルは、この技術分野では公知の多くの異なる方法、例えば核磁気共鳴分光分析法(NMR)などによって測定されうる。セルロースエーテルにおける窒素のパーセントを測定するための好ましい方法は、“Organic Analysis”,III巻、136~141頁(Interscience Publishers, New York刊行)に開示されているキェルダール(Kjeldahl)法である。
【0055】
カチオン変性又はアミノ変性のセルロースエーテルは、対応するセルロースエーテルから、周知の方法、例えば米国特許第3,472,840号;同第4,220,548号;同第4,663,159号;同第5,407,919号;もしくは同第5,614,616号;又は国際公開第01/48021A1号に記載されているような方法に従って、製造することができる。カチオン変性セルロースエーテルを提供するための、殊に好ましいカチオン化剤は(2,3-エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドであり、それは70重量%固形分の溶液として、Degussa CorporationからQUAB(商標) 151として購入できる。本発明のセメント組成物に好適に使用されるカチオン変性セルロースエーテルは、Amerchol Corporationから商標名UCARE(商標)ポリマーとして、詳しくは、1%ブルックフィールド粘度が1000~2500mPa・sのカチオン変性ヒドロキシエチルセルロースで、且つ前記キェルダール法により測定されたカチオン性窒素1.9重量%を含むUCARE(商標)ポリマーJR-30Mとして購入できる。」
「【0105】
実施例5
カチオン性エチルヒドロキシエチルセルロース(Cat-EHEC)の製造
500mlの樹脂反応釜に、攪拌用櫂及びモーター、セーラムキャップ、窒素導入口、及び鉱油噴出装置付きフリードリッヒコンデンサーを取り付ける。この樹脂反応釜には、BERMOCOLL(商標) EBS481 FQエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)25.0g、アセトン112.5g及び蒸留水12.5gを充填する。混合物は、攪拌しながら窒素で1時間パージする。窒素下に1時間攪拌後、22%水酸化ナトリウム水溶液3.63gをシリンジにより5分間掛けて窒素下に滴加し、更に1時間攪拌を続行する。
【0106】
QUAB(商標) 151[(2,3-エポキシプロピル)トリエチルアンモニウムクロリド](Degussa Corporationから購入できる)の70%水溶液17.85gを、前記スラリーにシリンジにより5分間掛けて窒素下に滴加する。このスラリーには、加熱マントルにより熱を与え、この混合物は2時間窒素下で攪拌しながら環流する。次いでスラリーは室温まで冷却し、シリンジにより氷酢酸2.00gを添加することより中和し、15分間攪拌する。ポリマーは減圧濾過により回収し、ワリングブレンダー中で、容積比10:1のアセトン/水500mlで1回、純アセトン500mlで3回、容積比7:1のアセトン/水500mlで1回、そして純アセトン500mlで2回洗浄する。ポリマーは減圧下50℃で一夜乾燥して、含有揮発分1.1%、含有灰分(酢酸ナトリウムとして計算して)1.6%並びにキェルダール含有窒素(灰分及び揮発分で補正して)2.04%(カチオン性置換CS=0.57)を有する、オフホワイトの固体を得る。このポリマーの1重量%水溶液のブルックフィールド粘度は2280cP(回転子#3、30rpm、揮発分について補正して)である。
【0107】
カチオン性エチルヒドロキシエチルセルロースポリマーCat-EHECを使用する以外は、実施例1bにおけると同様にセメント混合物を製造する。乾燥セメントに基づいて、ポリマーCat-EHECを1.25%含むセメント混合物の硬化時間は12.4時間である。」
「【0114】
実施例7
カチオン性ヒドロキシエチルセルロース(Cat-HEC)
乾燥セメントに基づいて、カチオン変性ヒドロキシエチルセルロース、それぞれ、1.25%及び1.75%を含むセメント組成物を、実施例1bにおけると同様にして製造する。カチオン変性ヒドロキシエチルセルロースは、ヒドロキシエチルセルロースの、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドとの塩基触媒反応により製造し、そしてAmerchol Corporationから、商標名UCARE Polymer JR-30Mとして購入できる。それはEO MS(MShydroxyethoxyl)2.1、キェルダール含有窒素1.87%(カチオン置換0.43)及び1重量%水溶液の粘度1740mPa・sを有している。乾燥セメントに基づいて、Cat-HEC 1.25%を含むセメント混合物の硬化時間は11時間である。乾燥セメントに基づいて、Cat-HEC 1.75%を含むセメント組成物を同様にして製造し、そしてそのセメント混合物の硬化時間もまた11時間である。」
(16)乙4には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、下記一般式(1)で表されるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩と反応させる、下記一般式(2)で表されるカチオン化セルロースの製造方法。
【化1】
[図:0001423426000011.jpg]
(式中、R1~R3は同一又は異なった炭素数1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【化2】
[図:0001423426000012.jpg]
(式中、R4は、水素原子又は下記一般式(3)で示されるカチオン基を示し、R4すべてが水素原子となることはない。nは100~2000の数を示す。)
【化3】
[図:0001423426000013.jpg]
(式中、R1~R3及びXは、前記に同じである。)」
「【0001】
本発明はカチオン性セルロース誘導体として有用なカチオン化セルロースの製造方法に関する。」
「【0043】
実施例4
前記1Lニーダー中に、前記製造例1に準じて得られた非晶化セルロース(結晶化度0%、重合度400)100gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液5gを加え、窒素雰囲気下3時間攪拌した。その後ニーダーを温水により60℃に加温し、5~10kPaの圧力範囲で脱水しながら、前記グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド230gを3時間かけて滴下した。その後更に3時間攪拌したところ、反応系から約15gの水が留出した。HPLC分析に原料グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドは92%が消費されていた。そのまま酢酸で中和し、生成物をニーダーから取り出した後、含水イソプロパノール(15%含水)およびアセトンで洗浄して中和塩、未反応物を除き、減圧下乾燥して、カチオン化セルロースを270gの淡茶白色固体として得た。元素分析およびコロイド滴定により、塩素元素含量は16%、窒素元素含量は6.4%、セルロース上のカチオン基としての置換度はグルコース単位当たり1.49となり、セルロースへの反応選択性は91%であった。」
2 甲1に記載された発明
甲1の請求項1には、「カチオン性布地柔軟化剤と香料付着ポリマーとを含み、6~11のpHを有する液体又はゲル形態の水性洗濯洗剤組成物。」が記載されていている。そして、実施例1Bには、「HLAS 6.5重量%、NI 24-7 8.5重量%、クエン酸1.30重量%、C1218 TPK FA 5.5重量%、酵素 0.2重量%、ホウ酸(MEAボレート) 8.5重量%、CaCl2 0.020重量%、HEDP 0.10重量%、Lupasol HF 0.03重量%、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド 1.5重量%、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース 0.20重量%、硬化ヒマシ油 0.10重量%、エタノール 3.0重量%、1,2プロパンジオール 6.0重量%、MEA 0.30重量%、NaOH 2.8重量%、NaCS 4.5重量%、香料及び染料 0.3重量%、水 100重量%まで」、の成分を組み合わせて調製した組成物が記載されている。ここで、甲1の段落0050、0042の記載より、実施例1Bの組成物を構成する成分のうち、「カチオン性ヒドロキシエチルセルロース」、「Lupasol HF」は、それぞれ「カチオン性布地柔軟化剤」、「香料付着ポリマー」である。
すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「カチオン性布地柔軟化剤であるカチオン性ヒドロエチルセルロースと香料付着ポリマーであるLupasol HFとを含み、6~11のpHを有する液体又はゲル形態の水性洗濯洗剤組成物であって、HLAS 6.5重量%、NI 24-7 8.5重量%、クエン酸1.30重量%、C1218 TPK FA 5.5重量%、酵素 0.2重量%、ホウ酸(MEAボレート) 8.5重量%、CaCl2 0.020重量%、HEDP 0.10重量%、Lupasol HF 0.03重量%、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド 1.5重量%、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース 0.20重量%、硬化ヒマシ油 0.10重量%、エタノール 3.0重量%、1,2プロパンジオール 6.0重量%、MEA 0.30重量%、NaOH 2.8重量%、NaCS 4.5重量%、香料及び染料 0.3重量%、水 100重量%まで、からなる水性洗濯洗剤組成物。」
3 対比・判断
(1)本件発明1
ア 対比
甲1発明の水性洗濯洗剤組成物を構成する成分のうち、甲7の段落0047の記載より、「HLAS」は「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の酸性型」の略称であり、甲8の段落0217の記載より、「MEA」、「C1218 TPK FA」、「HEDP」はそれぞれ「モノエタノールアミン」、「炭素数12~18の抜頭(topped)パーム核脂肪酸」、「1,1-ヒドロキシエタンジホスホン酸」の略称であり、甲9の段落0163の記載より、「NI 24-7」は「C12~14アルキルエトキシ(7.0)アルコール」の略称であり、甲22の段落0126の記載より、「NaCS」は「クメンスルホン酸ナトリウム」の略称であると解するのが技術常識からいえる。
そこで、本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明における「カチオン性ヒドロキシルエチルセルロース」、「NaCS」はそれぞれ、本件発明1における「(a)成分:カチオン基を有する多糖ポリマー」、「(b)成分:炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩」に相当し、甲1発明における「HLAS」、「C1218 TPK FA」は、本件発明1における「(c)成分:アニオン界面活性剤」に相当し、甲1発明における「NI 24-7」は、本件発明1における「ノニオン界面活性剤」に相当する。
また、甲1発明における「カチオン性ヒドロキシルエチルセルロース 0.20重量%」、「NaCS 4.5重量%」はそれぞれ、本件発明1における「(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下」、「(b)成分を0.1質量%以上10質量%以下」を充足し、甲1発明における「HLAS 6.5重量%」、「C1218 TPK FA 5.5重量%」、「NI 24-7 8.5重量%」は、各成分の合計含有割合が20.5重量%であることから、本件発明1における「(c)成分を15質量%以上60質量%以下」を充足し、甲1発明における「水 100重量%まで」は、本件発明1の「水を含有」を充足する。
さらに、甲1発明の「液体又はゲル形態の水性洗濯洗剤組成物」は、甲1の段落0001~0002の記載より、繊維製品を洗濯するための洗濯洗剤組成物であり、布地を柔軟化する効果をもたらす洗濯洗剤組成物の分野に関するものであることから、本件発明1における「繊維製品用液体洗浄組成物」に相当する。
すると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「下記(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下、(b)成分を0.1質量%以上10質量%以下、(c)成分を15質量%以上60質量%以下、及び水を含有する繊維製品用液体洗浄剤組成物。
(a)成分:カチオン基を有する多糖ポリマー
(b)成分:炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩
(c)成分:アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤」
<相違点1>
本件発明1では、「(b)成分のスルホン酸基のモル数Xと(a)成分のカチオン基のモル数Yとのモル比であるX/Yが30以上200以下である」のに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点
<相違点2>
本件発明1では、繊維製品用液体洗浄剤組成物について「25℃のpHが3以上9以下」であるのに対し、甲1発明の水性洗濯洗剤組成物は6~11のpHを有している点
イ 相違点1についての判断
(ア)相違点1が実質的な相違点であるかについて
甲1発明のモル数Xについて、甲1発明の「NaCS 4.5重量%」とは、NaCSであるクメンスルホン酸ナトリウムの分子量は甲6の記載より「222.230」であり、本件特許の明細書の段落0060に記載のモル数Xの式から、X=0.020249(=4.5/222.230)と算出できる一方、甲1発明のモル数Yについて、甲1発明の「カチオン性ヒドロキシエチルセルロース 0.20重量%」の窒素含有量が特定されていない。
そこで、仮に、甲1発明の「モル比X/Y」が「30以上200以下」を満たすと仮定すると、その場合、カチオン性ヒドロキシエチルセルロースのカチオン基のモル数Yは、0.00010125(=0.020249/200)以上、0.00067497(=0.020249/30)以下を満たし、窒素含有量は、本願明細書段落0060記載のモル数Yの式から、0.70872(=0.00010125×100×14/0.2)以上、4.7248(=0.00067497×100×14/0.2)以下の範囲を満たすことが必要となるが、カチオン性ヒドロキシエチルセルロースの市場製品には、窒素含有量(質量%)の範囲が「0.70872以上4.7248以下」を満たすものも、甲4の段落0031に記載された「レオガードMLP(窒素分0.6質量%、平均分子量2,000,000)」、「レオガードMTY(窒素分0.6質量%、平均分子量900,000)」、甲5の表3に記載された「UCAREポリマー」の「Polymer LK(%Nitrogen0.4~0.6)」のように前記窒素含有量の範囲を満たさないものも存在しているところ、甲1発明のカチオン性ヒドロキシエチルセルロースが前記窒素含有量の範囲を満たすとは推認できない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点である。
(イ)相違点1の容易想到性について
甲1には、「カチオン性布地柔軟化物質(カチオン性ヒドロキシエチルセルロース等)をアニオン性/非イオン性界面活性剤マトリクス中で特定種類の香料付着促進ポリマー(Lupasol HF又はWF等)と組み合わせると・・・見苦しい斑点又は塊として容器の壁上に固着する沈殿」(段落0005)が形成されるとの課題が開示されているものの、「低分子量カチオン性補助界面活性剤を・・・洗剤組成物に添加すること」(段落0034)を主たる解決手段としており、また、「製剤の粘度が高くなりすぎるのを防ぐため、ヒドロトロープを利用することが好ましい」(段落0088)、「有用なヒドロトロープとしては・・・クメンスルホン酸・・・が挙げられる」(段落0087)との記載はあるものの、クメンスルホン酸のスルホン基のモル数Xとカチオン性ヒドロキシエチルセルロースのカチオン基のモル数Yとのモル比(X/Y)を調整することについて、記載も示唆もされていない。
甲2、甲4には、カチオン性ヒドロキシエチルセルロースを含む洗濯洗剤組成物にクメンスルホン酸等の短鎖アルキルを有する芳香族スルホン酸(塩)からなるヒドロトロープを含有させることは記載も示唆もされておらず、甲3には、「ケーキング防止剤として・・・パラトルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩・・・を配合することができる」(段落0087)と記載されているものの、パラトルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩を用いた実施例はなく、パラトルエンスルホン酸塩のスルホン基のモル数Xとカチオン性ヒドロキシエチルセルロースのカチオン基のモル数Yとのモル比(X/Y)に着目し、その値を調整することについて、記載も示唆もされていない。また、その他の甲号証においても同様である。
そうすると、甲1発明において、クメンスルホン酸のスルホン基のモル数Xとカチオン性ヒドロキシセルロースのカチオン基のモル数Yとのモル比(X/Y)を「30以上200以下」に調整する動機付けがあるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和6年11月28日に提出した上申書において、概略以下A~Cのとおり主張する。
A 本件明細書の記載から、X/Yの上限値として200以下とすることの臨界的意義はおろか、技術的意義も全く読み取ることができず、その上、本件発明における「流動性に優れ、例えば固形物が析出しても接触面に固形物が付着しにくい、繊維製品用液体洗浄剤組成物を提供する」という目的でX/Yを調整するという技術的思想は、甲1においても(固体物の付着の原因となるカチオン基を有する多糖ポリマーの濃度を調整するという形で)実質的に開示されており、何ら特殊な技術的思想を開示するものではないから、本件訂正に係るX/Yの200以下という上限値は、当業者の通常の創作能力の発揮として行う設計事項に過ぎず、当業者が予測し得ない格別の効果など認められる余地はない。
B 甲2~甲4には、カチオン性ポリマー(カチオン性ヒドロキシエチルセルロース)の好ましい例(市販品)として、「UCARE Polymer JR30M」、「レオガードGPS」等、窒素含有量が「0.70872%以上4.7248%以上」のものが挙げられており、それら市販品の大部分が前記範囲に含まれ、それらの使用が阻害される要因も認められないところ、本件発明1のX/Yの数値範囲は、甲1に適宜甲2~4の記載を参酌することによって、当業者が極めて容易に想到し得たものである。加えて、乙1~乙3にも、窒素含有量が0.70872%以上4.7248%以下のカチオン性ヒドロキシエチルセルロースを用いることを支持する記載がある。
C 被申立人は、カチオン化セルロースについて、乙4の実施例4に窒素含有量6.4%であることが記載されており、窒素含有量が4.7248%より大であるヒドロキシカチオン性セルロースが知られていたと主張しているが、乙4のカチオン性セルロース誘導体は甲1発明のカチオン性ヒドロキシエチルセルロースに該当しないから、甲1発明で用いられるカチオン性ヒドロキシエチルセルロースの候補となり得ない。
(イ)前記(ア)A、Bの主張について、洗濯洗剤組成物の用途に好適なカチオン性ヒドロキシエチルセルロースとして、窒素含有量(質量%)が「0.70872以上4.7248以下」を満たす市場製品が甲2~甲4に記載のとおり公知であり、また、乙1~乙3に前記窒素含有量の数値範囲を示唆する記載があるとしても、それら文献において、前記モル比(X/Y)に着目することについての記載や示唆があるとはいえないから、前記イで相違点1について判断したとおり、前記モル比(X/Y)を「30以上200以下」に調整する動機付けがあるとはいえない。加えて、乙1~乙3に記載のカチオン性ヒドロキシエチルセルロースを含有する組成物は、洗濯洗剤用途を対象とするものではなく、繊維製品の柔軟化等の目的でカチオン性ポリマーを使用する本願発明や甲1発明とはその技術背景や技術課題を異にするものであるから、その点においても、乙1~乙3に記載の前記技術思想を甲1発明と組み合わせる動機付けがあるとはいえない。
(ウ)前記(ア)Cの主張について、前記イの相違点1についての判断は、乙4のカチオン性セルロース誘導体が甲1発明のカチオン性ヒドロキシエチルセルロースの候補となることを前提とするものではないから、前記(ア)Cの主張は前記イの相違点1についての判断に影響するものではない。
(エ)よって、前記申立人の主張はいずれも採用することができない。
オ 小括
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないし、甲1発明及び甲1~22、乙1~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではないから、同法第113条第2号の規定により、本件発明1に係る特許を取り消されるべきものであるとすることはできない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであり、前記本件発明1と甲1発明との相違点1、2と同じ相違点を有するものであるから、本件発明2~4は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないし、甲1発明及び甲1~甲22、乙1~乙4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、同法第113条第2号の規定により、本件発明2~4に係る特許を取り消されるべきものであるとすることはできない。
第6 申立理由1(サポート要件)についての当審における判断
1 前提
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
2 本件発明の課題
本件発明の課題は、本件特許の明細書の段落0005の記載からみて、「カチオン基を有する多糖ポリマー、所定量のアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を特定量以上、及び水を含有し、流動性に優れ、例えば固形物が析出しても接触面に固形物が付着しにくい、繊維製品用液体洗浄剤組成物を提供する」ことであると認める。
3 当審における判断
(1)X/Yの下限値、上限値について(前記第4 1(1)アに相当)
本件特許の明細書の段落0050~0064には、(a)成分として、窒素含有量がそれぞれ2.3%、0.93%、0.53%である(a-1)、(a-2)、(a-3)のカチオン化ヒドロキシエチルセルロースのいずれか、(b)成分として、(b-1)のp-クメンスルホン酸、(c)成分として、(c1-1)~(c1-5)、(c2-1)を任意に組み合わせ、残部に水を用いた実施例1~14、比較例1、2の態様において、X/Yモル比が12以上の実施例1~14の態様であれば、所定の流動性が得られ、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できることが具体的なデータの裏付けをもって示されている。
また、組成中の(a)成分の配合量のみを変化させた実施例1~3((a-1)を用いた態様)、実施例4~6((a-2)を用いた態様)の流動性の評価結果に着目すると、X/Yの値が小さくなれば流動性が低下し、逆に大きくなれば流動性が向上する傾向が理解できる。実施例では、X/Yが最大で132の態様しか示されていないものの、本件特許の明細書の段落0041における「X/Yの値は、本発明の課題をより解決できる観点から・・・好ましくは500以下・・・より更に好ましくは200以下である」との記載も勘案すれば、X/Yが30以上200以下の範囲において、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できるものと理解できる。
申立人は、申立書において、「実施例6では、X/Yの値が下限値30よりも大きい38でありながら、その流動性の評価結果は「○・・・」であり、X/Yの値が下限値30よりも小さい・・・実施例3,7と同じ値・・・その上、X/Yの値が下限値30である実施例2,12~14では「◎・・・」という評価になっている」ことを根拠に、「「X/Yが30以上」を充足することによって、必ずしも流動性に優れるものではなく、X/Yが30以上を満たすことによって却ってその効果が減退する場合も存在することが示されているのであるから、当該規定の臨界点的意義ないし技術的意義は不明という他ない」と主張し、また、「本件明細書の実施例では、最大でもX/Yの値が132の場合までしか示しておらず、殊にその値が上記段落【0041】で好ましいとされている上限値を上回る場合についても同様の効果が得られるとは認識し得ない」と主張している。
しかしながら、前記のとおり、実施例1~3、実施例4~6の流動性の評価結果に着目すると、X/Yの値が小さくなれば流動性が低下し、逆に大きくなれば流動性が向上する傾向が理解でき、本件特許の明細書の段落0041における記載も勘案すれば、X/Yが30以上200以下の範囲において、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できるものと理解できるから、前記申立人の主張はいずれも採用できない。
(2)(a)成分、(b)成分及び(c)成分の濃度について(前記第4 1(1)イに相当)
前記(1)のとおり、X/Yが30以上200以下の範囲において、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できるものと理解できる。また、実施例1~3、実施例4~6の流動性の評価結果に着目すると、X/Yの値が小さくなれば((a)成分の含有量が増加すれば)流動性が低下し、逆に大きくなれば((a)成分の含有量が減少すれば)流動性が向上する傾向が理解できるし、実施例では、(a)成分の含有量が最大で2質量%の態様しか示されていないものの、本件特許の明細書の段落0039における「(a)成分の含有量は、繊維製品にソイルリリース性を付与する観点から0.1質量%以上であり・・・本発明の課題をより解決できる観点から、5質量%以下・・・である」との記載も勘案すれば、X/Yが30以上200以下の範囲を満たしていれば、(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下の範囲でおいて、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できるものと理解できる。(b)成分、(c)成分についても、本件特許の明細書の段落0040、0042の記載を勘案すれば、X/Yが30以上200以下の範囲を満たしていれば、(b)成分を0.1質量%以上10質量%以下、(c)成分を15質量%以上60質量%以下の範囲において、前記課題を解決できるものと理解できる。
申立人は、申立書において、「本件発明に規定する「下記(a)成分を0.1質量以上5質量%以下」をサポートするためには、その課題解決が困難になる(a)成分の上限値付近・・・についての実験データの裏付けが不可欠になるところ・・・本件明細書にはそのような実験データは一切示されていない。従って・・・所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に、具体例を開示しているとは到底認められない」と主張し、また、「本件発明では、カチオン基を有する多糖ポリマーとアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤との相互作用が問題となっているのであるから、これらの濃度もその課題解決において重要であることは疑いようもなく、故に実施例で示された(b)成分、(c)成分の極僅かな範囲のみで、本件発明1の広範な数値範囲全般がサポートされているとは到底認められない」と主張している。
しかしながら、前記のとおり、(a)成分を0.1質量%以上5質量%以下、(b)成分を0.1質量%以上10質量%以下、(c)成分を15質量%以上60質量%以下の範囲であれば、前記課題を解決できるものと理解できるから、前記申立人の主張はいずれも採用できない。
(3)(b)成分の種類(構造)について(前記第4 1(1)ウに相当)
本件特許の明細書の段落0050~0064には、(b)成分として(b-1)のp-クメンスルホン酸を用いた実施例1~14(X/Yが12以上の態様)において、(b)成分に代えて(b’)成分として(b’-1)のp-トルエンスルホン酸を用いた比較例3~5と比して、優れた流動性が得られ、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できることが具体的なデータの裏付けをもって示されている。(b)成分がp-クメンスルホン酸以外の態様は示されていないものの、本件特許の明細書の段落0024~0025における「(b)成分は、炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基を有することが特徴で・・・(a)成分(c)成分の界面活性剤と組み合わせることによる本発明の課題をより解決できる観点で、8以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3である」との記載に接した当業者は、(b)成分として炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩を用いれば、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できるものと理解できる。
申立人は、申立書において、「本件明細書の実施例・比較例のデータが正しければ、(b)成分としてp-クメンスルホン酸を用いた場合と、(b’-1)成分としてp-トルエンスルホン酸を用いた場合(比較例3~5)とで、その作用効果に大きな違いが生じていることに鑑みれば、芳香族スルホン酸塩に存在する分岐鎖アルキル基の炭素鎖の僅かな違いもその作用効果に大きく影響することが予想される・・・にも拘らず、本件明細書の実施例では、炭素数3の場合(p-クメンスルホン酸)のみしか開示していないのであるから、これのみを以って「炭素数3以上8以下の分岐鎖アルキル基」の範囲にまで、その効果を一般化・抽象化できるとは認められない」と主張している。
しかしながら、本件発明の(b)成分は、p-クメンスルホン酸の特徴部分であるアルキル基が分岐した短鎖である点を特定したものであるところ、p-クメンスルホン酸と同等の作用効果を示し、前記課題を解決できるものと理解できるから、前記申立人の主張は採用できない。
(4)(c)成分の種類について(前記第4 1(1)エに相当)
本件特許の明細書の段落0026には、「(c)成分は、アニオン界面活性剤・・・及びノニオン界面活性剤・・・から選ばれる1種以上の界面活性剤で・・・繊維製品に付着した汚れを洗浄する作用を有する」と記載され、段落0026~0035には、広範なアニオン界面活性剤、ノニオン活性剤が例示されている。また、段落0050~0064には、(c)成分として、それぞれ種類や構造が異なる(c1-1)~(c1-5)、(c2-1)を任意に組み合わせて用いた実施例1~14の態様において、所定の流動性が得られ、接触面への固形物の付着性を改善するという課題を解決できることが具体的なデータの裏付けをもって示されているところ、(c)成分として、洗濯洗剤組成物に通常使用されるアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を適用すれば、前記課題を解決できるものと理解できる。
申立人は、申立書において、「カチオン基を有する多糖ポリマーとアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤との相互作用は、当然にその種類によって大きく異なると考えられ・・・しかしながら、本件発明では、それがアニオン界面活性剤かノニオン界面活性剤かすら特定されていないのであるから、本件発明の技術的課題を解決できない態様を多分に含んでいる」と主張している。
しかしながら、前記のとおり、種類や構造が異なる(c1-1)~(c1-5)、(c2-1)を任意に組み合わせて用いた実施例1~14の態様において、前記課題が解決できることが示されているし、逆に(c1-1)~(c1-5)、(c2-1)等の特定の種類や構造のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤でなければ前記課題が解決できないと理解すべき事情も見当たらないから、前記申立人の主張は採用できない。
(5)繊維製品用液体洗浄剤組成物のpHについて(前記第4 1(1)オに相当)
本件特許の明細書の段落0050~0064に記載の実施例1~14、比較例1~6は、pHを8に調整した態様のみであるものの、段落0044には、「本発明の繊維製品用液体洗浄剤組成物は、25℃のpHが好ましくは3以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である」と記載されているところ、洗濯洗剤組成物において通常適用されるpH範囲であれば、前記課題を解決できるものと理解できる。
申立人は、申立書において、「カチオン基を有する多糖ポリマーとアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤との相互作用は、当然にそのpHに影響されると考えられる・・・ため、本件明細書の実施例、比較例のpHが8.0以外の値になれば、これと同様の効果が得られないことが合理的に推測され、特にその値が8.0から遠い値になるほど、本件発明に規定する各種パラメータの技術的意味が損なわれる」と主張している。
しかしながら、前記のとおり、洗濯洗剤組成物において通常適用されるpH範囲であれば、前記課題を解決できるものと理解されるし、pH8.0でなければ前記課題が解決できないと理解すべき事情も見当たらないから、前記申立人の主張は採用できない。
4 小括
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
第7 むすび
以上のとおり、申立書に記載した特許異議の申立ての理由、令和5年10月12日付けの取消理由通知の取消理由及び令和6年6月19日付け取消理由通知(決定の予告)の取消理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできず、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700611