特許異議申立
2016-700168
リボンカセット
- 審判番号
- 2016-700168
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2010-163024外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月25日
- 審決日
- 2017年03月14日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ゼネラル株式会社
- 【権利者代理人】溝上 哲也
- 【権利者代理人】岩原 義則
- 【権利者代理人】山本 進
- 【異議申立人】ジュネスプロパティーズ 株式会社
- 分類
- P1651.112-ZAA(B41J) / P1651.121-ZAA(B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5785699号発明「リボンカセット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5785699号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
特許第5785699号の請求項2に係る特許を取り消す。
特許第5785699号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5785699号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成27年7月31日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社より請求項1、2に対して特許異議の申立てがされ、平成28年5月16日付けで取消理由が通知され、同年7月15日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年12月6日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成29年2月2日付けで意見書が提出がされたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
ア 訂正事項1
「特許請求の範囲の請求項1を削除する。」
イ 訂正事項2(下線は当審において引いたものである。以下も同じ。)
特許請求の範囲の請求項2に、
「移動禁止部材は、1枚分の厚みのインクリボンが通過する駆動部材の付勢状態を基準として、2~7枚分の厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容する位置に設けたことを特徴とする請求項1記載のリボンカセット。」とあったのを、
「ドットインパクトプリンタに装着されて使用されるリボンカセットであって、開閉可能で本体と蓋とからなる筐体と、この筐体内に形成され、端同士を繋いだ無端状のファブリックリボンあるいは繋ぎ目のないファブリックシームレスリボンにインクを含浸させたインクリボンを密集状態で収納する収納部と、この収納部のインクリボンの戻り部位に平面視略直角三角形とされ、斜辺が前記収納部に臨むように設けられた枢支部材を介して設けられ、対向間に前記インクリボンを挟み込んだ対をなす駆動部材と、対をなす駆動部材を互いに密着させるべく少なくとも一方側の前記枢支部材を該駆動部材の対向方向に付勢するために該枢支部材の下端と、本体の上下方向の下内面との間に設けた付勢部材とを備え、対をなす駆動部材を枢支した枢支部材のうち前記付勢部材を設けた側の前記枢支部材が傾動可能とされ、傾動ストロークを一定範囲内に規制する移動禁止部材を、1枚分の厚みのインクリボンが通過する駆動部材の付勢状態を基準として、2枚分の厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容する位置に設けると共に、前記筐体の蓋側に設けて該蓋を開けることで該移動禁止部材による前記枢支部材の傾動禁止状態が解除されるようにしたことを特徴とするリボンカセット。」と、訂正する。
ウ 訂正事項3
明細書の段落【0014】に、
「本発明は、ドットインパクトプリンタに装着されて使用されるリボンカセットであって、開閉可能で本体と蓋とからなる筐体と、この筐体内に形成され、端同士を繋いだ無端状のファブリックリボンあるいは繋ぎ目のないファブリックシームレスリボンにインクを含浸させたインクリボンを密集状態で収納する収納部と、この収納部のインクリボンの戻り部位に枢支部材を介して設けられ、対向間にインクリボンを挟み込んだ対をなす駆動部材と、対をなす駆動部材を互いに密着させるべく少なくとも一方側の枢支部材を該駆動部材の対向方向に付勢するために該枢支部材に設けた付勢部材とを備え、対をなす駆動部材を枢支した枢支部材のうち付勢部材を設けた側の枢支部材が傾動可能とされ、傾動ストロークを一定範囲内に規制する移動禁止部材を筐体の蓋側に設けて該蓋を開けることで該移動禁止部材による前記枢支部材の傾動禁止状態が解除されるようにしたことを最も主要な特徴とする。」とあったのを、
「本発明は、ドットインパクトプリンタに装着されて使用されるリボンカセットであって、開閉可能で本体と蓋とからなる筐体と、この筐体内に形成され、端同士を繋いだ無端状のファブリックリボンあるいは繋ぎ目のないファブリックシームレスリボンにインクを含浸させたインクリボンを密集状態で収納する収納部と、この収納部のインクリボンの戻り部位に平面視略直角三角形状とされ、斜辺が前記収納部に臨むように設けられた枢支部材を介して設けられ、対向間に前記インクリボンを挟み込んだ対をなす駆動部材と、対をなす駆動部材を互いに密着させるべく少なくとも一方側の前記枢支部材を該駆動部材の対向方向に付勢するために該枢支部材の下端と、本体の上下方向の下内面との間に設けた付勢部材とを備え、対をなす駆動部材を枢支した枢支部材のうち前記付勢部材を設けた側の前記枢支部材が傾動可能とされ、傾動ストロークを一定範囲内に規制する移動禁止部材を、1枚分の厚みのインクリボンが通過する駆動部材の付勢状態を基準として、2枚分の厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容する位置に設けると共に、前記筐体の蓋側に設けて該蓋を開けることで該移動禁止部材による前記枢支部材の傾動禁止状態が解除されるようにしたことを最も主要な特徴とする。」と、訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1は、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2に対して行われたものである。
まず、訂正事項2により、訂正後の請求項2は、訂正前の引用形式から独立形式に書き改められたものであるから、引用関係の解消を目的とするものである。
訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2は以下のとおりであると認められる。
「ドットインパクトプリンタに装着されて使用されるリボンカセットであって、開閉可能で本体と蓋とからなる筐体と、この筐体内に形成され、端同士を繋いだ無端状のファブリックリボンあるいは繋ぎ目のないファブリックシームレスリボンにインクを含浸させたインクリボンを密集状態で収納する収納部と、この収納部のインクリボンの戻り部位に枢支部材を介して設けられ、対向間に前記インクリボンを挟み込んだ対をなす駆動部材と、対をなす駆動部材を互いに密着させるべく少なくとも一方側の前記枢支部材を該駆動部材の対向方向に付勢するために該枢支部材に設けた付勢部材とを備え、対をなす駆動部材を枢支した枢支部材のうち前記付勢部材を設けた側の前記枢支部材が傾動可能とされ、傾動ストロークを一定範囲内に規制する移動禁止部材を、1枚分の厚みのインクリボンが通過する駆動部材の付勢状態を基準として、2~7枚分の厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容する位置に設け、前記筐体の蓋側に設けて該蓋を開けることで該移動禁止部材による前記枢支部材の傾動禁止状態が解除されるようにしたことを特徴とするリボンカセット。」
そして、上記のとおり、訂正前の請求項2を独立形式に書き改めると共に、さらに以下のとおり、訂正するものであって、それぞれについて検討する。
(ア) 「平面視略直角三角形状とされ、斜辺が前記収納部に臨むように設けられた枢支部材」
これは、枢支部材の平面視の形状と、リボンカセットに組み付けられた状態での枢支部材の向きを限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書の段落【0032】に「すなわち、枢支部材3A,3Bは、図1(a)に示すように本実施例では平面視略直角三角形状とされ、斜辺が収納部2Cに臨むように設けられている。」と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ) (少なくとも一方側の)枢支部材の下端と、本体の上下方向の下内面との間に設けた付勢部材
これは、付勢部材を設けた場所を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書の段落【0034】に「枢支部材3Bの下端で枢支軸3bを設けた側と反対の端部(入口側)と、本体2Aの上下方向の下内面との間には、付勢部材としての例えば本実施例では巻きばね5を介設している。」と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ) 2枚分の(厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容する)
これは、枢支部材3Bが傾動することができる量を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書の段落【0037】に「インクリボンRの2枚分の厚み分だけ枢支部材3Bが傾動することができる位置に設けている。」と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3は、訂正事項2による訂正によって訂正された請求項2の記載と整合性を取るために、願書に添付した明細書のうち関連する発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2と同じ理由により、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項1、2は、請求項2が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1乃至3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2について、一群の請求項ごとに訂正を認める。
3.当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 訂正後の請求項1に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明2」という。)は、上記2.(1)訂正の内容において示したとおりのものである。
イ 刊行物の記載
取消理由通知において引用した甲第1号証(INKED RIBBON CARTRIDGE AMANO Corporation 「CE-319250」)、甲第2号証(甲第1号証の「INKED RIBBON CARTRIDGEの外箱、外観、内部を撮影したもの)から、以下の事項が看て取れる。
A リボンカセットであって、開閉可能で本体と蓋とからなる筐体
B 筐体内に形成され、端同士を繋いだ無端状のファブリックリボンあるいは繋ぎ目のないファブリックシームレスリボンにインクを含浸させたインクリボンを密集状態で収納する収納部
C 収納部のインクリボンの戻り部位に設けられた枢支部材を介して設けられ、対向間に前記インクリボンを挟み込んだ対をなす駆動部材
D 対をなす駆動部材を互いに密着させるべく少なくとも一方側の前記枢支部材を該駆動部材の対向方向に付勢するために該枢支部材の下端と、本体の上下方向の下内面との間に設けた付勢部材
E 対をなす駆動部材を枢支した枢支部材のうち前記付勢部材を設けた側の傾動可能な枢支部材
F 傾動ストロークを一定範囲内に規制する、枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容する位置に設けた移動禁止部材
G 筐体の蓋側に設けて該蓋を開けることで該移動禁止部材による前記枢支部材の傾動禁止状態が解除されるリボンカセット
上記甲第1号証に係る「INKED RIBBON CARTRIDGE(以下「インクリボンカートリッジ」という。)」の外箱に記載された「【Homepage】 Japan: http://amano.co.jp/」は、「神奈川県横浜市港北区大豆戸275番地 アマノ株式会社」のホームページのウェブサイトのURLである。
甲第3号証には「電子タイムレコーダー CRX-200」に使用するリボンカセットは「CE-319250」であること及びアマノ株式会社の住所が「神奈川県横浜市港北区大豆戸275番地」であることが記載され、該カタログの写しにおいて、左右方向中央部近傍の最下段には「K9000S200-2007.11」なる表記も認められる。
さらに、甲第3号証の「電子タイムレコーダー CRX-200」の仕様から、電子タイムレコーダー CRX-200は「ドットプリンター方式」であることが認められ、インクを含浸させたインクリボンであることを踏まえると、ドットインパクトプリンタであることは当業者にとって自明である。
したがって、以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ドットインパクトプリンタに装着されて使用されるリボンカセットであって、
開閉可能で本体と蓋とからなる筐体と、
この筐体内に形成され、端同士を繋いだ無端状のファブリックリボンあるいは繋ぎ目のないファブリックシームレスリボンにインクを含浸させたインクリボンを密集状態で収納する収納部と、この収納部のインクリボンの戻り部位に設けられた枢支部材を介して設けられ、対向間に前記インクリボンを挟み込んだ対をなす駆動部材と、対をなす駆動部材を互いに密着させるべく少なくとも一方側の前記枢支部材を該駆動部材の対向方向に付勢するために該枢支部材に設けた付勢部材とを備え、対をなす駆動部材を枢支した枢支部材のうち前記付勢部材を設けた側の前記枢支部材が傾動可能とされ、傾動ストロークを一定範囲内に規制する移動禁止部材を前記筐体の蓋側に設けて該蓋を開けることで該移動禁止部材による前記枢支部材の傾動禁止状態が解除されるようにしたことを特徴とするリボンカセット。」
ウ 対比・判断
まず、甲1発明が公然実施されたものであるか、いつ実施されたものであるかについて検討する。
甲第3号証は、アマノ株式会社の電子タイムレコーダー「CRX-200」の製品カタログの写しであって、そこには「CE-319250」なる品番のリボンカセットと、「2007.11」という記載があり、一般常識に照らして、2007年11月(平成19年11月)発行のカタログに「CE-319250」なる品番のリボンカセットが掲載されていると認められる。
甲第4号証には、「アマノ インクリボンCE-319250」の「Amazon.co.jp」での取り扱い開始日が、2006年7月1日(平成18年7月1日)であると記載されている。
甲第1号証のインクリボンカートリッジ、甲第3号証に記載されたリボンカセット及び甲第4号証のインクリボンは、「アマノ」と「品番」が共通しているところから、すべてアマノ株式会社のCE-319250に係る証拠であると認められ、本件特許の出願日である平成22年7月20日より前の「平成18年7月1日」には、少なくとも公然実施されたものであるとも認められる。
したがって、甲1発明は、本件特許の出願日前に公然実施されたものと認める。
本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、本件訂正発明2は、
「(ア)平面視略直角三角形とされ、斜辺が前記収納部に臨むように設けられた枢支部材」、
「(イ)(少なくとも一方側の)枢支部材の下端と、本体の上下方向の下内面との間に設けた付勢部材」、
「(ウ)2枚分の厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容する付勢部材」という事項を有するのに対し、甲1発明はそのような事項を有しない点で相違する。
上記相違点について検討すると、
(ア)枢支部材の平面視の形状、及びリボンカセットに組み付けられた状態での枢支部材の向きについて「平面視略直角三角形」とし、「斜辺が前記収納部に臨む」ようにすることに、技術的困難性はなく、当業者が適宜選択する程度の設計的事項にすぎない。
権利者は、平成28年7月15日付け意見書において、相違点(ア)の発明特定事項を備えることによって、「駆動部材間の距離は、移動禁止部材の移動許容量(配置位置)とイコールの関係になる」という効果を主張しているが、明細書に基づかない効果の主張であり、採用することはできない。
したがって,相違点(ア)に係る本件訂正発明2の発明特定事項は,本件特許の出願日より前に公然実施された甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(イ)付勢部材を設けた場所を「(少なくとも一方側の)枢支部材の下端と、本体の上下方向の下内面との間」とすることに、技術的困難性はなく、当業者が適宜選択する程度の設計的事項にすぎない。
権利者は、上記意見書において、相違点(イ)の発明特定事項を備えることによって、「駆動部材間の距離は、移動禁止部材の移動許容量(配置位置)とイコールの関係になる」という効果を主張しているが、これも相違点(ア)と同様、明細書に基づかない効果の主張であり、採用することはできない。
したがって,相違点(イ)に係る本件訂正発明2の発明特定事項は,本件特許の出願日より前に公然実施された甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
なお、相違点(ア)、(イ)に関して、権利者は、平成29年2月2日付け意見書において、相違点(ア)、(イ)の発明特定事項を備えることによって、「駆動部材(間)直下の、つまり駆動部材が枢支部材を介して下方へ直線的に移動する(傾動)量を直接示していることに基づいて、駆動部材間の距離を該枢支部材の移動量でもって正確に測ることができる(第3頁第25行~第4頁17行)」旨、主張しているが、本件訂正発明2においても、甲1発明においても、枢支部材は、その斜辺の下側の頂点に存在する枢支軸を中心に回動しているものであるから、「枢支部材の移動量の正確さ」も、枢支部材の全体形状や寸法によって決まる程度の設計的事項に過ぎず、本件訂正発明2のように構成することによって、格別の作用効果が生じたと認めることができず、甲1発明に比して、「枢支部材の移動量」が正確であったとしても、それは当業者が予測しうる範囲内のものに過ぎない。
(ウ)2枚分の厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容するについては、甲1発明においても、何枚分かのインクリボンの厚みだけ枢支部材を介した駆動部材の反対向方向への移動を許容していたことは自明であり、その許容量として「2枚分の厚みだけ」とすることに、技術的困難性はなく、当業者が適宜選択する程度の設計的事項にすぎない。
権利者は、上記意見書において、相違点(イ)の発明特定事項を備えることによって、「2枚分、つまり積層された状態の最小単位である3枚分が積層された状態で駆動部材間を通過することが許容されないので、何らかの要因で駆動部材間に3枚分が積層されたインクリボンが挟まって該駆動部材の駆動が停止することがあっても、該駆動部材の逆回転による収納部からの漏出はほとんどない。」という効果を主張しているが、これは単に「2枚分」という数値限定に伴う効果の主張にすぎず、機械設計の常識に基づく効果であって、格別の効果を奏しているとまではいえない。
したがって,相違点(ウ)に係る本件訂正発明2の発明特定事項は,本件特許の出願日より前に公然実施された甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
なお、相違点(ウ)に関して、権利者は、平成29年2月2日付け意見書において、相違点(ウ)の発明特定事項は、「駆動部材間を通過しようとするインクリボンの枚数において「2枚」と「3枚以上」とでは駆動部材の逆回転防止に関しては不可能と可能とでその作用効果及び技術的意義が全く異なる(第5頁第29行~第6頁25行)」旨、主張しているが、これは、付勢部材の「駆動部材の反対向方向への移動を許容する量」が、「駆動部材間を通過しようとするインクリボンの枚数」を決定するという、つまり、「許容する量」が、多ければ多くの枚数のインクリボンが通過でき、少なければ少ない枚数のインクリボンしか通過できないという、機械設計上当然のことを述べているに過ぎず、権利者が主張する「2枚分の(許容量)」の作用効果は、当業者が予測しうる範囲内のものに過ぎない。
4.むすび
以上のとおり、本件訂正発明2は本件特許の出願日より前に公然実施された甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件訂正発明2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して特許異議申立人がした特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700168