特許異議申立
2024-700437
インクセット及びインクジェット記録方法
- 審判番号
- 2024-700437
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-097291
- 登録番号
- 7376974
- 請求日
- 2024年05月09日
- 審決日
- 2025年04月16日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日本化薬株式会社
- 【権利者代理人】落 直之
- 【異議申立人】砂川 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 山本 一
- 分類
- P1651.121-ZAA(B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7376974号発明「インクセット及びインクジェット記録方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7376974号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第7376974号の請求項1~9に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7376974号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和元年5月24日(優先権主張 平成30年7月10日(以下「優先日」という。))に出願され、令和5年10月31日にその特許権の設定登録がされ、同年11月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年5月9日に特許異議申立人 砂川 幸子により請求項1~9に対して特許異議の申立てがされたものである。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和6年 6月19日付け:取消理由通知書
同年 8月 8日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 9月18日 :意見書の提出(特許異議申立人)
同年10月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年12月 4日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
以下、令和6年12月4日付け訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
なお、本件訂正により、同年8月8日付け訂正請求書による訂正は、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。
また、本件訂正があったため、特許法120条の5第5項の規定により、令和7年1月22日付けで特許異議申立人に通知をし、相当の期間(通知の発送の日から30日以内)を指定して、意見書を提出する機会を設けたが、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
本件訂正は、本件訂正請求書の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第7376974号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至9について訂正することを求める。」とするものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下の訂正事項1からなる(訂正事項1についての下線は、請求人が付した訂正事項である。)。
<訂正事項1>
訂正前の請求項1に、
「着色剤、バインダー、及び水を含有するインク」と記載されているのを、
「着色剤、バインダー、ブロック共重合体及び水を含有するインク」
に訂正する。請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。
3 本件訂正の適否に関する当審の判断
(1)一群の請求項についての説明
本件訂正前の請求項2~9は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~9に対応する本件訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項である本件訂正前の請求項1~9についてなされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
(2)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「インク」が、「着色剤、バインダー、及び水」を含有することが特定されるまでであったところ、さらに、「ブロック共重合体」も含有することを限定するものである。そうすると、訂正事項1の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記(2)のとおり、訂正事項1の訂正は、訂正前の請求項1の「インク」について減縮する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書等には、次の記載がある。なお、下線は、合議体が付した。以下、同じ。
「【0023】
前記インクが水不溶性の着色剤を含有するときは、さらに分散剤を含有するのが好ましい。分散剤としては、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和性カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;アクリル酸及びその誘導体;マイレン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;ファール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びそれらの誘導体等よりなる群の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)から構成される共重合体が挙げられる。
共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。・・・。」
「【0077】
[ポリマーAの調製]
ジョンクリル678(MW:8500)25部、及びトリエタノールアミン14.3部をイオン交換水60.7部に溶解し、一時間撹拌して溶液を得た。得られた溶液を、ポリマーA溶液とする。なお、ポリマーAは分散剤ではなく、バインダーである。
【0078】
[着色剤の分散液の調製]
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られたブロック共重合体(5部)を、2-ブタノン20部に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、水酸化ナトリウム(0.4部)を水(50.6部)に溶解させた液を加え、ポリマーA溶液(4部)を添加後、1時間攪拌して乳化液を得た。この乳化液にC.I.Pigment Yellow 74(20部、クラリアント社製HANSA YELLOW 5GX01-JP)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行って液を得た。得られた液に水(100部)を滴下した後、この液をろ過し濾液を得た。得られたろ液から、エバポレータで2-ブタノン、及び水の一部を減圧留去することにより、顔料含有量が12.4%の着色剤の分散液(Dp1)を得た。
得られた分散液中の顔料含有量は、株式会社エイ・アンド・デイ社製、MS-70を用いて、乾燥重量法により、液中の全固形分から、顔料含有量の換算値として求めた。
【0079】[ポリマーBの調製]
国際公開第2015/147192号ガゼットの調製例4を追試することにより、酸価が6KOHmg/g、Tgが0℃、固形分が25%の樹脂エマルションを調製した。これを「ポリマーB」とする。ポリマーBは、バインダーである。
【0080】
[インク1及び2の調製]
下記表4に記載の各成分を混合して総量100部の液を得た後、得られた液を3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、評価試験に用いるインク1及び2をそれぞれ得た。
・・・。
【0082】
【表4】
[図:0001425733000001.jpg]
」
したがって、上記記載から、インク1及び2が着色剤の分散液(Dp1)、バインダー(ポリマーB)と水を含有し、当該分散液(Dp1)は、バインダー(ポリマーA溶液)とブロック共重合体を含むことが読み取れるから、着色剤、バインダー、及び水とともにブロック共重合体を含有するインクとする訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
(5)特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件特許についての特許異議の申立て事件は、訂正前の全ての請求項1~9に対して特許異議申立てがなされているので、訂正後の請求項1~9に係る発明に、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、令和6年8月8日に特許権者が行った本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2から、本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明9」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
着色剤、バインダー、ブロック共重合体及び水を含有するインクと、少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する洗浄液と、を有するインクと洗浄液のセットであって、洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり、他方の界面活性剤のHLB値が3.0以上10.0未満であり、前記洗浄液が含有する、HLB値が10.0~20.0の界面活性剤(界面活性剤A)と、HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤(界面活性剤B)の総質量中における、界面活性剤AとBの含有比が、 6/1~1/ 6であるインクと洗浄液のセット。
但し、界面活性剤のHLB値は以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で撹拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。
【化1】
HLB値=0.89×Q+1.11 (1)
【請求項2】
前記HLB値が10.0~20.0の界面活性剤が、ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である、請求項1に記載のインクと洗浄液のセット。
【請求項3】
前記HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤が、ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である請求項1または請求項2に記載のインクと洗浄液のセット。
【請求項4】
前記の洗浄液が、グリコールエーテルを含有する請求項1乃至請求項3に記載のインクと洗浄液のセット。
【請求項5】
前記バインダーが、ポリマー及びワックスから選択される、1種類以上である請求項1に記載のインクと洗浄液のセット。
【請求項6】
前記ワックスが、ポリアルキレンワックス、酸化ポリアルキレンワックス、及びパラフィンワックスから選択される1種類以上である、請求項5に記載のインクと洗浄液のセット。
【請求項7】
前記ワックスが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックスから選択される1種類以上である、請求項5又は請求項6に記載のインクと洗浄液のセット。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のインクが付着した記録装置を、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の洗浄液で洗浄する、記録装置の洗浄方法。
【請求項9】
前記の記録装置が、インクジェットプリンタである請求項8に記載の洗浄方法。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件特許について、当審において令和6年10月7日付けで特許権者に通知した取消理由(進歩性欠如)の概要は、次のとおりである。
請求項1~9に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記文献に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:国際公開第2018/124120号
甲第2号証:特開2018-104637号公報
甲第3号証:試験結果報告書
作成年月日:2024年4月19日
作成者:東レテクノ株式会社
甲第4号証:特開2017-105134号公報
甲第5号証:特開2016-222754号公報
甲第6号証:特開2009-291976号公報
甲第7号証:特開2013-108022号公報
甲第8号証:特開2012-255088号公報
甲第9号証:特開2014-91772号公報
甲第10号証:特開2013-129711号公報
参考文献1:特開2013-119190号公報
参考文献2:特開2014-19842号公報
参考文献3:特開2012-184376号公報
第5 当審の判断
1 各文献について
(1)甲第1号証
本願の優先日前の2018年(平成30年)7月5日に公開された国際公開第2018/124120号(以下、「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 甲1に記載の事項
(ア)「[0005] 一方、インクジェットプリンターやグラビアプリンターに用いられる水系インクとして、顔料の分散性の向上や得られる印刷物の定着性を向上するために、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクが用いられる。このような水系インクの顔料と水不溶性ポリマーが固化すると、顔料とポリマー間、又はポリマー間の結合が強固となる。そのため、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクに対してより高い洗浄性を有する洗浄液が望まれる。また、顔料や水不溶性ポリマーに対する洗浄性を高めるため、固化した水不溶性ポリマーと親和性の高い界面活性剤を用いると洗浄液中の該界面活性剤の溶解性が低下する。さらに、洗浄後にノズル、インク経路、記録ヘッド、グラビア版シリンダー等の被洗浄部材に洗浄液が残留すると吐出不良が発生したり、印刷品質の低下の原因となる。そのため、被洗浄部材に残留し難い洗浄液が求められている。
本発明は、水系インクの洗浄性及び界面活性剤の溶解性に優れ、被洗浄部材に残留し難い水系インク用の洗浄液、その製造方法及び該洗浄液を用いた水系インクの洗浄方法に関する。
[0006] 本発明者は、エチレンオキシドの平均付加モル数が特定の範囲のアセチレングリコールと、該アセチレングリコールよりエチレンオキシドの平均付加モル数が大きいアセチレングリコール又は特定の炭素数のアルキル基を有するポリエチレングリコールアルキルエーテルと、特定の水溶性有機溶媒を含有する洗浄液により、水系インクの洗浄性及び界面活性剤の溶解性が向上し、洗浄液が被洗浄部材に残留し難くなることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]~[3]に関する。
[1] 顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インク用の洗浄液であって、
該洗浄液が、エチレンオキシドの平均付加モル数が0モル以上2モル以下のアセチレングリコール(A)と、エチレンオキシドの平均付加モル数が4モル以上のアセチレングリコール(b-1)、及び炭素数が8以上のアルキル基を有するポリエチレングリコールアルキルエーテル(b-2)から選ばれる1種以上の化合物(B)と、水溶性有機溶媒(C)と、水とを含有し、
水溶性有機溶媒(C)が沸点90℃以上の水溶性有機溶媒を1種以上含有し、
水溶性有機溶媒(C)の沸点が、各水溶性有機溶媒の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値で250℃以下であり、
水溶性有機溶媒(C)の該洗浄液中の含有量が20質量%以下である、水系インク用の洗浄液。
[2] 顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクに対して、前記[1]に記載の洗浄液を接触させる、水系インクの洗浄方法。」
(イ)「[0010] <アセチレングリコール(A)>
本発明の洗浄液は、インクの洗浄性を向上させる観点から、界面活性剤としてEOの平均付加モル数が0モル以上2モル以下のアセチレングリコール(A)を含有する。
・・・
[0013] <化合物(B)>
本発明の洗浄液は、インクの洗浄性及び界面活性剤の溶解性を向上させる観点から、界面活性剤として、EOの平均付加モル数が4モル以上のアセチレングリコール(b-1)、及び炭素数が8以上のアルキル基を有するポリエチレングリコールアルキルエーテル(b-2)から選ばれる1種以上の化合物(B)を含有する。」
(ウ)「[0027] (アセチレングリコール(A)と化合物(B)の質量比〔成分(A)/成分(B)〕)
アセチレングリコール(A)と化合物(B)の質量比〔成分(A)/成分(B)〕(即ち、質量比〔(A)/(B)〕)は、インクの洗浄性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上であり、そして、界面活性剤の溶解性を向上させる観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下である。」
(エ)「[0032] 本発明の洗浄液は、インクの洗浄性及び界面活性剤の溶解性に優れ、被洗浄部剤に残留し難いため、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクの洗浄液として用いることができ、フレキソ印刷用、グラビア印刷用、又はインクジェット記録用の水系インクの洗浄液として用いてもよく、インクの洗浄性に優れ、被洗浄部剤に残留し難いため、グラビア印刷用又はインクジェット記録用の水系インクの洗浄液として用いることが好ましい。
[0033] <水系インク>
水系インクに含まれる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料は、水系インク中に、自己分散型顔料、分散剤で分散された顔料、又は顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の形態として含有されてもよい。
[0034] 水系インクに含まれる水不溶性ポリマーは、顔料分散作用を発現する顔料分散剤としての機能と、記録媒体への定着剤として機能の少なくともいずれかの機能のために含有される。
ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味する。その水不溶性ポリマーの前記溶解量は、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。水不溶性ポリマーがカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくはビニルモノマー(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーである。
[0035] 水不溶性ポリマーがビニル系ポリマーである場合、該ビニル系ポリマーは、イオン性モノマー由来の構成単位、疎水性モノマー由来の構成単位、及び親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位から選ばれる1種以上を有することが好ましく、これらの構成単位のうち、2種以上を有することがより好ましい。例えば、イオン性モノマー及び疎水性モノマーの組み合わせ、イオン性モノマー、疎水性モノマー、及び親水性ノニオン性モノマーの組み合わせが挙げられる。
ビニル系ポリマーは、例えば、イオン性モノマー、疎水性モノマー、及び親水性ノニオン性モノマーを含むモノマー混合物を公知の方法により付加重合して得ることができる。
[0036] イオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等のアニオン性モノマー;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド等のカチオン性モノマーが挙げられる。なお、イオン性モノマーには、酸やアミンなどの中性ではイオンではないモノマーであっても、酸性やアルカリ性の条件でイオンとなるモノマーを含む。
疎水性モノマーとしては、炭素数1以上22以下のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート、及びスチレン系マクロモノマー等が挙げられる。スチレン系マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物である。
親水性ノニオン性モノマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
[0037] 水不溶性ポリマーは、顔料含有ポリマー粒子、又は顔料を含有しないポリマー粒子の形態としてインク中に含まれることが好ましい。本発明の洗浄液は、インクの洗浄性及び界面活性剤の溶解性に優れ、被洗浄部材に洗浄液が残留し難いため、顔料含有ポリマー粒子又は顔料を含有しないポリマー粒子を含む水系インクにおいて、その効果をより享受することができる。
水系インクは、インクの分散安定性及び吐出安定性の観点から、顔料含有ポリマー粒子を含むことが好ましい。顔料含有ポリマー粒子は、顔料と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよく、インク中で顔料に水不溶性ポリマーが吸着されてなる。該粒子の形態として、例えば、該ポリマーに顔料が内包された粒子形態、該ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、該ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
顔料含有ポリマー粒子は、顔料、水不溶性ポリマー、必要に応じて中和剤、界面活性剤等を公知の方法により分散処理して得ることができる。
[0038] 水系インクは、記録媒体への定着性、及び印刷物の耐擦過性の観点からは、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を含むことが好ましく、インクの分散安定性及び吐出安定性、記録媒体への定着性、印刷物の耐擦過性の観点からは、顔料含有ポリマー粒子、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を含むことがより好ましい。
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、取り扱い性の観点から、分散体として用いることが好ましく、乳化重合等により合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。顔料を含有しないポリマー粒子の分散体の市販品としては、例えば、「Neocryl A1127」(DSM NeoResins社製、アニオン性自己架橋水系アクリル樹脂)、「ジョンクリル390」(BASFジャパン株式会社製)等のアクリル系樹脂、「WBR-2018」「WBR-2000U」(以上、大成ファインケミカル株式会社製)等のウレタン系樹脂、「SR-100」、「SR102」(以上、日本エイアンドエル株式会社製)等のスチレン-ブタジエン系樹脂、「ジョンクリル7100」、「ジョンクリル734」、「ジョンクリル538」(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン-アクリル系樹脂及び「ビニブラン701」(日信化学工業株式会社製)等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
・・・
[0040] 水系インクは、顔料、水不溶性ポリマー及び水を含み、さらに必要に応じて有機溶媒を含んでもよい。また、水系インクは、任意成分として、保湿剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を含んでもよい。」
(オ)「[0045] [水系インクの洗浄方法]
本発明の水系インクの洗浄方法は、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクに対して、前記洗浄液を接触させる方法である。接触させる方法としては、塗布法、噴霧法、浸漬法等が挙げられる。
前記洗浄方法として、前記洗浄液を不織布等の拭き取り部材にしみこませ、ノズル面や吐出口に付着した余分なインクを拭き取る方法;種類の異なるインクを使用する際に、インク変更の前後にプリンター内のインクの経路を、プリンターの供給機構及び取引機構を用いて、洗浄液の入ったカートリッジから該洗浄液をインクの経路内に供給し、排出を繰り返すことにより洗浄する方法;長期間記録ヘッドを使用しない場合に、記録ヘッドからインクを抜き取り、洗浄液を充填しキャッピングして保存する方法等が挙げられる。これらの中でも、被洗浄部材に残留し難い洗浄液を得る観点から、前記洗浄液を拭き取り部材にしみこませ、ノズル面や吐出口に付着した余分なインクを拭き取る方法が好ましい。拭き取り部材としては、液体吸収性であれば特に制限はなく、織物、編み物、不織布等の布帛、スポンジ、パルプ等が挙げられる。」
(カ)「[0055] 実施例1(洗浄液1の製造)
(A)成分としてサーフィノール104PG-50(商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのプロピレングリコール溶液、有効分50%、EO平均付加モル数:0)1.0gに、(B)成分としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)を0.5g、(C)成分としてプロピレングリコールを3.0g、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを2.5g添加して撹拌した。次いで水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)を0.2g、防腐剤JCL-400(商品名、城北化学工業株式会社製)を0.02g添加した後、全量が100gとなるようにイオン交換水を添加して混合液を得た。
得られた混合液を1.5μmフィルターで濾過し、洗浄液1(粘度;1.17mPa・s、pH9.5)を得た。
[0056] 実施例2~7、比較例1~6及び参考例1(洗浄液2~14の製造)
実施例1において、表3の配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にして洗浄液2~13(粘度;1.05~2mPa・s、pH9~9.6)を得た。
・・・
[0057] なお、表3中の各成分は下記のとおりである。
サーフィノール420:商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物(EO平均付加モル数:1.3モル)、有効分100%
サーフィノール485:商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物(EO平均付加モル数:30モル)、有効分100%
サーフィノール465:商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物(EO平均付加モル数:10モル)、有効分100%」
(キ)「[0058] 製造例1(水系インクの製造)
(1)水不溶性ポリマー溶液の製造
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」に記載の各成分を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
次に、表1の「滴下モノマー溶液1」及び「滴下モノマー溶液2」に記載の各成分をそれぞれ混合して、滴下モノマー溶液1及び滴下モノマー溶液2を得、滴下ロート1内及び滴下ロート2内にそれぞれ入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素ガス雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を撹拌しながら77℃に維持し、滴下ロート1中の滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を77℃で0.5時間撹拌した。
次いで重合開始剤〔2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)〕1.1部をメチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)47.3部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、77℃で0.5時間撹拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に12回行った。次いで反応容器内の反応溶液を80℃に1時間維持し、固形分濃度は36%になるようにMEK8,456部を加えて水不溶性ポリマー(i-1)の溶液を得た。水不溶性ポリマー(i-1)の重量平均分子量は67,000であった。
なお、表1中の各成分の詳細は下記のとおりである。
・スチレン系マクロマー:AS-6S、東亜合成株式会社製(有効分濃度50質量%、数平均分子量6,000)
・NKエステルM-40G:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)、新中村化学工業株式会社製
・V-65:重合開始剤〔2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)〕
・2-メルカプトエタノール:重合連鎖移動剤
[0059] [表1]
[図:0001425733000002.jpg]
[0060] (2)顔料含有ポリマー粒子の水分散体の製造
得られた水不溶性ポリマー(i-1)の溶液(固形分濃度36%)178.7部を、MEK45部と混合し、水不溶性ポリマー(i-1)のMEK溶液を得た。容積が2Lのディスパーに該水不溶性ポリマー(i-1)のMEK溶液を投入し、1,400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水511.4部、5N水酸化ナトリウム水溶液22.3部、及び25%アンモニア水溶液1.7部を添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が78.8モル%、アンモニアによる中和度が21.2モル%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、1,400rpmで15分間撹拌した。
次いで黒色顔料であるカーボンブラック(キャボット社製、商品名:モナーク717)150部を加え、6,400rpmで1時間撹拌した。得られた顔料混合物をマイクロフルイダイザー「M-7115」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で9パス分散処理し、分散処理物(固形分濃度は25%)を得た。
得られた分散処理物324.5部を2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水216.3部を加え(固形分濃度15%)、回転式蒸留装置「ロータリーエバポレーター」(N-1000S、東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50r/minで、32℃に調整した温浴中にて、0.09MPaの圧力で3時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を0.07MPaに下げて固形分濃度25%になるまで濃縮した。
得られた濃縮物を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機(himac CR22G、日立工機株式会社製、設定温度20℃)を用いて7,000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を1.2μmのフィルター(MAP-010XS、ロキテクノ社製)で濾過し、顔料含有ポリマー粒子(I-1)(黒色)を含む濾液を回収した。
得られた濾液300部(顔料52.5部、水不溶性ポリマー(i-1) 22.5部)にプロキセルLVS(アーチケミカルズジャパン株式会社製、防黴剤、有効分20%、水80%)0.68部を添加し、更に固形分濃度が22%になるようにイオン交換水40.23部を添加し、室温で1時間撹拌して顔料含有ポリマー粒子(I-1)(黒色)の水分散体を得た。
[0061] (3)顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の水分散体の製造
滴下ロートを備えた反応容器内に、表2の「初期仕込みモノマー乳化物」に示す各成分を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー乳化物を得た。また、表2の「滴下モノマー乳化物」に示す各成分を混合して、滴下モノマー乳化物を得、滴下ロート内に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素ガス雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー乳化物を撹拌しながら室温から80℃まで30分かけて昇温し、80℃に維持したまま、滴下ロート中のモノマーを3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の温度を維持したまま、1時間撹拌した。次いで200メッシュで濾過し、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子(II-1)を含む濾液を回収し、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子(II-1)の水分散体を得た(固形分濃度40%)。・・・
[0062] [表2]
[図:0001425733000003.jpg]
[0063] (4)水系インクの製造
顔料含有ポリマー粒子(I-1)の水分散体(固形分濃度22%)、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子(II-1)の水分散体(固形分濃度40%)を用いて、水系インク1を製造した。インク中に顔料を5%、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子(II-1)を2%となるようにイオン交換水を加えた後、pH8.5~10.0となるよう1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて、以下の組成にて配合し、混合液を得た。得られた混合液を前記1.5μmフィルターで濾過し、水系インク1を得た。
・・・
<組成>
顔料含有ポリマー粒子(I-1)の水分散体(固形分22%、黒色顔料を5部、水不溶性ポリマー(i-1)を2.15部含む) 32.5部
顔料を含有しないポリマー粒子(II-1)の水分散体(固形分40%) 5.0部
非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、トリプロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレンオキシドの平均付加モル数:3モル) 1.5部
プロピレングリコール 20.0部
サーフィノール104PG-50(日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系非イオン性界面活性剤のプロピレングリコール溶液、有効分50%) 2.0部
エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル) 2.0部
1N水酸化ナトリウム水溶液 0.5部
なお、水の配合量は全量が100部となるように調整した量である。」
(ク)「[0064] 上記で得られた洗浄液1~14について、以下の方法により評価した。結果を表3に示す。
<インクの洗浄性の評価>
製造例1で得られたインク(水系インク1)10μLをシャーレに入れ、40℃3時間の条件で乾燥した後、該シャーレに洗浄液を5g添加し1分間振とうした。必要に応じてデカンテーションで洗浄液を除去した後のインクの残っている程度を以下の評価基準により0~5の6段階で目視にて評価した。・・・
[0067] [表3]
[図:0001425733000004.jpg]
[0068] 表3中の各表記は下記のとおりである。
*1:グラビアインキ用洗浄液NT602(東洋インキ株式会社製、有機溶媒:酢酸エチル)
*2:界面活性剤が分離するため洗浄液として機能しない。
*3:イオン交換水の配合量は、洗浄液の全量を100gとしたときの残量である。
*4:水溶性有機溶媒(C)の洗浄液中の含有量を示す。アセチレングリコール(A)としてサーフィノール104PG-50(有効分50%)を用いた場合には、水溶性有機溶媒(C)の前記含有量は、水溶性有機溶媒(C)の配合量とサーフィノール104PG-50からのプロピレングリコールの持ち込み量との合計量である。
・・・
[0069] 表3から、実施例1~7は、比較例1~6に比べて、インクの洗浄性及び界面活性剤の溶解性に優れ、被洗浄部材に残留し難いことが分かる。」
イ 甲1の記載から把握できる事項
(ア)上記ア(エ)から、水系インクは、水不溶性ポリマー粒子として、顔料含有ポリマー粒子及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含み、当該顔料含有ポリマー粒子及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、インクの分散安定性及び吐出安定性、記録媒体への定着性、印刷物の耐擦過性の観点から水系インクに含まれるものと認められる。また、上記ア(キ)から、水系インク1の上記顔料含有ポリマー粒子は、顔料を含み([0060])、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーを含む([0058]、表1)と認められる。一方、水系インク1の上記顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含む([0061]、表2)と認められる。
(イ)上記ア(カ)と上記ア(ク)の表3から、実施例1の洗浄液1は、(A)成分としてサーフィノール104PG-50(有効分50%、EO平均付加モル数:0)1.0g、(B)成分としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)0.5g、(C)成分としてジエチレングリコールモノブチルエーテル2.5gとイオン交換水等を含むと認められ、実施例4の洗浄液4は、(A)成分としてサーフィノール420(有効分100%、EO平均付加モル数:1.3モル)0.5g、(B)成分としてサーフィノール465(有効分100%、EO平均付加モル数:10モル)0.5g、(C)成分としてジエチレングリコールモノブチルエーテル2.5gとイオン交換水等を含むと認められる。また、上記ア(イ)から、(A)成分と(B)成分は、界面活性剤である。
(ウ)上記ア(オ)に記載のとおり、水系インクと洗浄液は、水系インクに対して洗浄液を接触させる方法で用いられるから、製造例1の水系インク1と実施例1の洗浄液1、製造例1の水系インク1と実施例4の洗浄液4は、それぞれ組み合わせて用いられると認められる。
(エ)上記ア(オ)には、洗浄液を拭き取り部材にしみこませ、プリンタのノズル面や吐出口に付着した余分なインクを拭き取る洗浄方法が記載されており、上記ア(ウ)の「インクジェット記録用の水系インクの洗浄液として用いることが好ましい。」との記載から、上記プリンタはインクジェット記録用プリンタを含むと認められる。上記(ウ)の製造例1の水系インク1と実施例1の洗浄液1の組み合わせ、製造例1の水系インク1と実施例4の洗浄液4の組み合わせが、当該インクジェット記録用プリンタの洗浄方法に用いることができることは明らかである。
ウ 甲1に記載の発明
上記ア及びイから、甲1には次の発明が記載されていると認められる。
<甲1-1発明>
「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インク1と、(A)成分として界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%、EO平均付加モル数:0)1.0g、(B)成分として界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)0.5g、(C)成分としてジエチレングリコールモノブチルエーテル2.5gとイオン交換水等を含む洗浄液1と、からなり、
水系インク1の上記水不溶性ポリマーは、顔料含有ポリマー粒子及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ、
顔料含有ポリマー粒子は、顔料と、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含み、
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含み、
顔料含有ポリマー粒子、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、インクの分散安定性及び吐出安定性、記録媒体への定着性、印刷物の耐擦過性の観点から、水系インク1に含まれる、
水系インク1と洗浄液1との組み合わせ。」
<甲1-2発明>
「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インク1と、(A)成分として界面活性剤サーフィノール420(有効分100%、EO平均付加モル数:1.3モル)0.5g、(B)成分として界面活性剤サーフィノール465(有効分100%、EO平均付加モル数:10モル)0.5g、(C)成分としてジエチレングリコールモノブチルエーテル2.5gとイオン交換水等を含む洗浄液4と、からなり、
水系インク1の上記水不溶性ポリマーは、顔料含有ポリマー粒子、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ、
顔料含有ポリマー粒子は、顔料と、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含み、
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを含むモノマーを反応させたポリマーを含み、
顔料含有ポリマー粒子、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、インクの分散安定性及び吐出安定性、記録媒体への定着性、印刷物の耐擦過性の観点から、水系インク1に含まれる、
水系インク1と洗浄液4との組み合わせ。」
<甲1-3発明>
「前記甲1-1発明又は前記甲1-2発明の水系インク1が付着したインクジェット記録用プリンタのノズル面や吐出口を、前記甲1-1発明の洗浄液1又は前記甲1-2発明の洗浄液4で洗浄する洗浄方法。」
(2)甲第2号証
本願の優先日前の平成30年7月5日に公開された特開2018-104637号公報(以下、「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 甲2に記載の事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、水系インク用の洗浄液に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、インクジェットプリンターやグラビアプリンターに用いられる水系インクとして、顔料の分散性の向上や得られる印刷物の定着性を向上するために、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクが用いられる。このような水系インクの顔料と水不溶性ポリマーが固化すると、顔料とポリマー間、又はポリマー間の結合が強固となる。そのため、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクに対してより高い洗浄性を有する洗浄液が望まれる。
本発明は、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクに対する洗浄性に優れる水系インク用の洗浄液及び該洗浄液を用いた水系インクの洗浄方法を提供することを課題とする。」
(イ)「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の界面活性剤と、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを含む水溶性有機溶媒と、水とを含有する洗浄液により、前記の課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1] 顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インク用の洗浄液であって、
該洗浄液が、界面活性剤(A)と、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(b-1)を含む水溶性有機溶媒(B)と、水とを含有し、
界面活性剤(A)が、アセチレングリコール又はそのエチレンオキシド付加物(a-1)、及び炭素数が8以上のアルキル基を有するポリエチレングリコールアルキルエーテル又は炭素数が6以上のアリール基を有するポリエチレングリコールアリールエーテル(a-2)から選ばれる1種以上を含み、
水溶性有機溶媒(B)の洗浄液中の含有量が、5質量%以上30質量%以下である、
水系インク用の洗浄液。
[2] 顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクに対して、前記[1]に記載の洗浄液を接触させる、水系インクの洗浄方法。
・・・
【0010】
<界面活性剤(A)>
界面活性剤(A)(以下、単に「(A)成分」ともいう)は、アセチレングリコール又はそのエチレンオキシド付加物(a-1)、及び炭素数が8以上のアルキル基を有するポリエチレングリコールアルキルエーテル又は炭素数が6以上のアリール基を有するポリエチレングリコールアリールエーテル(a-2)から選ばれる1種以上を含む。これにより、ポリマーへの浸透性が向上し、インクの洗浄性が向上する。
・・・
【0028】
(a-1)成分と(a-2)成分を併用する場合、(a-1)成分と(a-2)成分との質量比〔(a-1)/(a-2)〕は、インクの洗浄性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下である。」
(ウ)「【0033】
本発明の洗浄液は、インクの洗浄性に優れるため、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクの洗浄液として用いることができ、フレキソ印刷用、グラビア印刷用、又はインクジェット記録用の水系インクの洗浄液として用いてもよく、グラビア印刷用又はインクジェット記録用の水系インクの洗浄液として用いることが好ましい。」
(エ)「【0034】
<水系インク>
水系インクは、顔料と水不溶性ポリマーを含む。
(顔料)
水系インクに含まれる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料は、水系インク中に、自己分散型顔料、分散剤で分散された顔料、又は顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の形態として含有されてもよい。
【0035】
(水不溶性ポリマー)
水系インクに含まれる水不溶性ポリマーは、顔料分散作用を発現する顔料分散剤としての機能と、記録媒体への定着剤として機能の少なくともいずれかの機能のために含有される。
ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味し、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。水不溶性ポリマーがカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
【0036】
顔料分散剤として機能する水不溶性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくはビニルモノマー(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーであり、より好ましくはアクリル系ポリマー及びスチレン-アクリル系ポリマーから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはスチレン-アクリル系ポリマーである。
水不溶性ポリマーがビニル系ポリマーである場合、イオン性モノマー由来の構成単位、疎水性モノマー由来の構成単位、及び親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位から選ばれる1種以上を有することが好ましく、これらの構成単位のうち、2種以上を有することがより好ましい。例えば、イオン性モノマー及び疎水性モノマーの組み合わせ、イオン性モノマー、疎水性モノマー、及び親水性ノニオン性モノマーの組み合わせが挙げられる。
ビニル系ポリマーは、例えば、イオン性モノマー、疎水性モノマー、及び親水性ノニオン性モノマーを含むモノマー混合物を公知の方法により付加重合して得ることができる。
【0037】
イオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等のアニオン性モノマー;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド等のカチオン性モノマーが挙げられる。これらの中でも、アニオン性モノマーが好ましく、カルボン酸モノマーがより好ましく、(メタ)アクリル酸が更に好ましい。なお、イオン性モノマーには、酸やアミンなどの中性ではイオンではないモノマーであっても、酸性やアルカリ性の条件でイオンとなるモノマーを含む。
疎水性モノマーとしては、炭素数1以上22以下のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート、スチレン系マクロモノマー等が挙げられる。スチレン系マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物である。
親水性ノニオン性モノマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
【0038】
スチレン-アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸由来の構成単位と、スチレン系モノマー由来の構成単位と、スチレン系マクロモノマー由来の構成単位と、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート由来の構成単位を有するアクリル-スチレン系ポリマーが好ましい。
【0039】
水系インクは、インクの分散安定性及び吐出安定性の観点から、水不溶性ポリマーとして前述のビニル系ポリマーを用いた、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)を含むことが好ましい。顔料含有ポリマー粒子は、顔料と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよく、インク中で顔料に水不溶性ポリマーが吸着されてなる。該粒子の形態として、例えば、該ポリマーに顔料が内包された粒子形態、該ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、該ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
顔料含有ポリマー粒子は、顔料、水不溶性ポリマー、必要に応じて中和剤、界面活性剤等を公知の方法により分散処理して得ることができる。
【0040】
記録媒体への定着剤として機能する水不溶性ポリマーとしては、アクリル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、スチレン-ブタジエン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン-(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、スチレン系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、より好ましくはアクリル系ポリマー及びスチレン-アクリル系ポリマーから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはアクリル系ポリマーである。
【0041】
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、取り扱い性の観点から、分散体として用いることが好ましく、乳化重合等により合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。顔料を含有しないポリマー粒子の分散体の市販品としては、例えば、「Neocryl A1127」(DSM NeoResins社製、アニオン性自己架橋水系アクリルポリマー)、「ジョンクリル390」(BASFジャパン株式会社製)等のアクリル系ポリマー、「WBR-2018」「WBR-2000U」(以上、大成ファインケミカル株式会社製)等のウレタン系ポリマー、「SR-100」、「SR102」(以上、日本エイアンドエル株式会社製)等のスチレン-ブタジエン系ポリマー、「ジョンクリル7100」、「ジョンクリル734」、「ジョンクリル538」(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン-アクリル系ポリマー及び「ビニブラン701」(日信化学工業株式会社製)等の塩化ビニル系ポリマー等が挙げられる。
【0042】
水不溶性ポリマーは、顔料含有ポリマー粒子、又は顔料を含有しないポリマー粒子の形態としてインク中に含まれることが好ましく、水系インクは、顔料含有ポリマー粒子、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を含むことがより好ましい。
本発明の洗浄液は、インクの洗浄性及び界面活性剤の溶解性に優れるため、顔料含有ポリマー粒子又は顔料を含有しないポリマー粒子を含む水系インクにおいて、その効果をより享受することができる。
・・・
【0044】
水系インクは、顔料、水不溶性ポリマー及び水以外の成分として、さらに必要に応じて有機溶媒を含んでもよい。また、水系インクは、任意成分として、保湿剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を含んでもよい。」
(オ)「【0049】
[水系インクの洗浄方法]
本発明の水系インクの洗浄方法は、顔料と水不溶性ポリマーを含む水系インクに対して、前記洗浄液を接触させる方法である。接触させる方法としては、塗布法、噴霧法、浸漬法等が挙げられる。水系インクは、本発明の洗浄性の効果を発揮する観点から、グラビア印刷用又はインクジェット記録用であることが好ましく、インクジェット記録用であることがより好ましい。
前記洗浄方法として、前記洗浄液を不織布等の拭き取り部材にしみこませ、ノズル面や吐出口に付着した余分なインクを拭き取る方法;種類の異なるインクを使用する際に、インク変更の前後にプリンター内のインクの経路を、プリンターの供給機構及び排出機構を用いて、洗浄液の入ったカートリッジから該洗浄液をインクの経路内に供給し、排出を繰り返すことにより洗浄する方法;長期間記録ヘッドを使用しない場合に、記録ヘッドからインクを抜き取り、洗浄液を充填しキャッピングして保存する方法等が挙げられる。拭き取り部材としては、液体吸収性であれば特に制限はなく、織物、編み物、不織布等の布帛、スポンジ、パルプ等が挙げられる。」
(カ)「【0059】
実施例1(洗浄液1の製造)
(a-1)成分としてサーフィノール104PG-50(商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのプロピレングリコール溶液、有効分50%)1.0gに、(a-2)成分として界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)を0.5g、(b-1)成分としてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを10g、(b-2)成分としてプロピレングリコールを5g添加して撹拌した。次いで水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)を0.2g、防腐剤JCL-400(商品名、城北化学工業株式会社製)を0.02g添加した後、全量が100gとなるようにイオン交換水を添加して混合液を得た。
得られた混合液を1.5μmフィルターで濾過し、洗浄液1(粘度;1.25mPa・s、pH9.5)を得た。
【0060】
実施例2~7、比較例1~6及び参考例1(洗浄液2~14の製造)
実施例1において、表3の配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にして洗浄液2~13(粘度;1.05~3mPa・s、pH9~9.6)を得た。」
(キ)「【0061】
製造例1(水系インクの製造)
(1)水不溶性ポリマー溶液の製造
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」に記載の各成分を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
次に、表1の「滴下モノマー溶液1」及び「滴下モノマー溶液2」に記載の各成分をそれぞれ混合して、滴下モノマー溶液1及び滴下モノマー溶液2を得、滴下ロート1内及び滴下ロート2内にそれぞれ入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素ガス雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を撹拌しながら77℃に維持し、滴下ロート1中の滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を77℃で0.5時間撹拌した。
次いで重合開始剤〔2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)〕1.1部をメチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)47.3部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、77℃で0.5時間撹拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に12回行った。次いで反応容器内の反応溶液を80℃に1時間維持し、固形分濃度は36%になるようにMEK8,456部を加えて水不溶性ポリマー1の溶液を得た。水不溶性ポリマー1の重量平均分子量は67,000であった。
なお、表1中の各成分の詳細は下記のとおりである。
・スチレン系マクロマー:AS-6S、東亜合成株式会社製(有効分50%、数平均分子量6,000)
・NKエステルM-40G:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(EOの平均付加モル数:4モル)、新中村化学工業株式会社製
・V-65:重合開始剤〔2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)〕
・2-メルカプトエタノール:重合連鎖移動剤
【0062】
【表1】
[図:0001425733000005.jpg]
【0063】
(2)顔料含有ポリマー粒子の水分散体の製造
得られた水不溶性ポリマー1の溶液(固形分濃度36%)178.7部を、MEK45部と混合し、水不溶性ポリマー1のMEK溶液を得た。容積が2Lのディスパーに該水不溶性ポリマー1のMEK溶液を投入し、1,400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水511.4部、5N水酸化ナトリウム水溶液22.3部、及び25%アンモニア水溶液1.7部を添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が78.8モル%、アンモニアによる中和度が21.2モル%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、1,400rpmで15分間撹拌した。
次いで黒色顔料であるカーボンブラック(キャボット社製、商品名:モナーク717)150部を加え、6,400rpmで1時間撹拌した。得られた顔料混合物をマイクロフルイダイザー「M-7115」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で9パス分散処理し、分散処理物(固形分濃度は25%)を得た。
得られた分散処理物324.5部を2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水216.3部を加え(固形分濃度15%)、回転式蒸留装置「ロータリーエバポレーター」(N-1000S、東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50r/minで、32℃に調整した温浴中にて、0.09MPaの圧力で3時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を0.07MPaに下げて固形分濃度25%になるまで濃縮した。
得られた濃縮物を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機(himac CR22G、日立工機株式会社製、設定温度20℃)を用いて7,000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を1.2μmのフィルター(MAP-010XS、ロキテクノ社製)で濾過し、顔料含有ポリマー粒子1(黒色)を含む濾液を回収した。
得られた濾液300部(顔料52.5部、水不溶性ポリマー122.5部)にプロキセルLVS(アーチケミカルズジャパン株式会社製、防黴剤、有効分20%、水80%)0.68部を添加し、更に固形分濃度が22%になるようにイオン交換水40.23部を添加し、室温で1時間撹拌して顔料含有ポリマー粒子1(黒色)の水分散体を得た。
【0064】
(3)顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の水分散体の製造
滴下ロートを備えた反応容器内に、表2の「初期仕込みモノマー乳化物」に示す各成分を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー乳化物を得た。また、表2の「滴下モノマー乳化物」に示す各成分を混合して、滴下モノマー乳化物を得、滴下ロート内に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素ガス雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー乳化物を撹拌しながら室温から80℃まで30分かけて昇温し、80℃に維持したまま、滴下ロート中のモノマーを3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の温度を維持したまま、1時間撹拌した。次いで200メッシュで濾過し、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子2を含む濾液を回収し、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子2の水分散体を得た(固形分濃度40%)。該ポリマー粒子2の重量平均分子量は550,000であった。・・・
【0065】
【表2】
[図:0001425733000006.jpg]
【0066】
(4)水系インクの製造
顔料含有ポリマー粒子1の水分散体(固形分濃度22%)、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子2の水分散体(固形分濃度40%)を用いて、水系インク1を製造した。インク中に顔料を5%、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子2を2%となるようにイオン交換水を加えた後、pH8.5~10.0となるよう1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて、以下の組成にて配合し、混合液を得た。得られた混合液を前記1.5μmフィルターで濾過し、水系インク1を得た。
なお、水系インク1中のポリマーの含有量は、水不溶性ポリマー1と顔料を含有しないポリマー粒子2の合計量で4.15%であり、水の含有量は、インクの全量を100%としたときの残量である。
<組成>
顔料含有ポリマー粒子1の水分散体(固形分22%、黒色顔料を5部、水不溶性ポリマー1を2.15部含む) 32.5部
顔料を含有しないポリマー粒子2の水分散体(固形分40%) 5.0部
非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、トリプロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレンオキシドの平均付加モル数:3モル) 1.5部
プロピレングリコール 20.0部
サーフィノール104PG-50(エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのプロピレングリコール溶液、有効分50%) 2.0部
エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル) 2.0部
1N水酸化ナトリウム水溶液 0.5部」
(ク)「【0067】
上記の洗浄液1~14について、以下の方法により評価した。結果を表3に示す。
<洗浄性の評価>
製造例1で得られたインクを用いて印刷した後、洗浄液を用いて記録ヘッド及びグラビア版シリンダーを洗浄した後の回収洗浄液の吸光度を、株式会社日立ハイテクサイエンス製「紫外可視分光光度計U-3900」を用いて測定し、下記式によりインク洗浄率を算出した。
・・・
【0070】
表3中の各表記は下記のとおりである。
*1:グラビアインキ用洗浄液NT602(東洋インキ株式会社製、有機溶媒:酢酸エチル)
*2:イオン交換水の配合量は、洗浄液の全量を100gとしたときの残量である。
*3:洗浄液中の水溶性有機溶媒(B)の含有量(%)を示す。
〔(a-1)成分〕
サーフィノール104PG-50(商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのプロピレングリコール溶液、有効分50%)
サーフィノール104:商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、有効分100%
サーフィノール420:商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物(EO平均付加モル数:1モル)、有効分100%
サーフィノール465:商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物(EO平均付加モル数:10モル)、有効分100%
サーフィノール485:商品名、エアープロダクツアンドケミカル社製、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物(EO平均付加モル数:30モル)、有効分100%
〔(a-2)成分〕
界面活性剤2-1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EOの平均付加モル数:12モル)
界面活性剤2-2:下記合成例1で得られたポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(EOの平均付加モル数:13モル)
・・・
【0072】
【表3】
[図:0001425733000007.jpg]
【0073】
表3から、実施例1~7は、界面活性剤(A)とジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(b-1)を含む水溶性有機溶媒(B)を用いているため、比較例1~6に比べて、インクの洗浄性に優れることが分かる。」
イ 甲2の記載から把握できる事項
(ア)上記ア(エ)から、水系インクは、水不溶性ポリマーは、顔料含有ポリマー粒子、又は顔料を含有しないポリマー粒子の形態として含まれ、当該顔料含有ポリマー粒子、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、インクの分散安定性及び吐出安定性、記録媒体への定着性、印刷物の耐擦過性の観点から含まれるものと認められる。また、上記ア(キ)から、水系インクの上記顔料含有ポリマー粒子は、顔料を含み(【0063】)、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーを含む(【0061】、表1)と認められる。一方、上記顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含むと認められる。
(イ)上記ア(カ)と上記ア(ク)の表3から、実施例1の洗浄液1は、(a-1)成分として界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)を1.0g、(a-2)成分として界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)を0.5g、(b-1)成分としてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを10gとイオン交換水等を含むと認められ、実施例7の洗浄液7は、(a-1)成分として界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)1.0gとサーフィノール465を1.0g、(b-1)成分としてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを10gとイオン交換水等を含むと認められる。
(ウ)上記ア(ク)に記載のとおり、製造例1で得られたインクを用いて印刷した後、洗浄液を用いて記録ヘッド及びグラビア版シリンダーを洗浄するから、製造例1の水系インクと実施例1の洗浄液1、製造例1の水系インクと実施例7の洗浄液7は、それぞれ組み合わせて用いられると認められる。
(エ)上記ア(オ)には、洗浄液を拭き取り部材にしみこませ、プリンタのノズル面や吐出口に付着した余分なインクを拭き取る洗浄方法が記載され、上記プリンタはインクジェット記録用プリンタを含むと認められる。上記(ウ)の製造例1の水系インクと実施例1の洗浄液1の組み合わせ、製造例1の水系インクと実施例7の洗浄液7の組み合わせが、当該インクジェット記録用プリンタの洗浄方法に用いることができることは明らかである。
ウ 甲2に記載の発明
上記ア及びイから、甲2には次の発明が記載されていると認められる。
<甲2-1発明>
「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インクと、(a-1)成分として界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)を1.0g、(a-2)成分として界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)を0.5g、(b-1)成分としてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを10gとイオン交換水等を含む洗浄液1と、からなり、
水系インクの上記水不溶性ポリマーは、顔料含有ポリマー粒子及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ、
顔料含有ポリマー粒子は、顔料と、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含み、
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含み、
顔料含有ポリマー粒子、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、インクの分散安定性及び吐出安定性、記録媒体への定着性、印刷物の耐擦過性の観点から、水系インクに含まれる、
水系インクと洗浄液1との組み合わせ。」
<甲2-2発明>
「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インクと、(a-1)成分として界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)1.0gと界面活性剤サーフィノール465を1.0g、(b-1)成分としてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを10gとイオン交換水等を含む洗浄液7と、からなり、
水系インクの上記水不溶性ポリマーは、顔料含有ポリマー粒子及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ、
顔料含有ポリマー粒子は、顔料と、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含み、
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含み、
顔料含有ポリマー粒子、及び顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、インクの分散安定性及び吐出安定性、記録媒体への定着性、印刷物の耐擦過性の観点から、水系インクに含まれる、
水系インクと洗浄液7との組み合わせ。」
<甲2-3発明>
「前記甲2-1発明又は前記甲2-2発明の水系インクが付着したインクジェット記録用プリンタのノズル面や吐出口を、前記甲2-1発明の洗浄液1又は前記甲2-2発明の洗浄液7で洗浄する洗浄方法。」
(3)甲第3号証
試験結果報告書 作成年月日:2024年4月19日 作成者:東レテクノ株式会社(以下、「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001425733000008.jpg]
」
(4)甲第4号証~甲6号証、参考文献1
ア 甲4記載事項
本願の優先日前の平成29年6月15日に公開された特開2017-105134号公報(以下、「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0074】
〔インク組成物〕
本実施形態のインク組成物は、色材とポリマー粒子とを含む。・・・
【0075】
<色材>
色材としては、顔料を用いることができる。」
(イ)「【0107】
・・・インク組成物中の水分が・・・」
(ウ)「【0127】
<ワックス>
本実施形態のインク組成物は、ワックスをさらに含むことが好ましい。記録用ヘッドが加熱された場合、水分の蒸発に伴いポリマー粒子が凝集固着し、記録用ヘッドのノズル目詰まりをひきおこして、安定した吐出が妨げられる可能性がある。これに対してワックスを含むことにより、水分蒸発の際のポリマー粒子の凝集が抑制される傾向にある。これにより、記録用ヘッドのノズルへのポリマー粒子の固着による、吐出不良、目詰まりを抑制することができ、ひいては記録安定性に優れるインク組成物となる。また、高温記録時において、ワックスはポリマー粒子による被膜が脆くなりすぎることを抑制する傾向にある。そのため、高温記録したとしても耐擦性が劣化しにくいインク組成物となる。
・・・
【0130】
ワックスとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリルワックス、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、及びパラフィンワックスが挙げられる。ポリエチレンワックスとしては、特に限定されないが、例えば、AQUACER593 ポリオレフィンワックス(BYK社製)、ノプコートPEM―17(サンノプコ社製)ポリロンL787、ポリロンL788(以上、中京油脂社製)、及びケミパールW4005(三井化学社製)が挙げられる。ワックスは、常法により合成されたものであってもよい。ワックスは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」
イ 甲5記載事項
本願の優先日前の平成28年12月28日に公開された特開2016-222754号公報(以下、「甲5」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
顔料、アニオン性基含有樹脂、エマルジョン、界面活性剤、水溶性溶剤、及び水を含有する水性インクジェット用インク組成物であって、・・・」
(イ)「【0070】
<ポリエチレンワックス>
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、さらに、ポリレチレンワックスを含むことが好ましい。
・・・
【0072】
前記ポリエチレンワックスの具体例としては、AQUACER507、AQUACER515、AQUACER531(いずれもビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」
ウ 甲6記載事項
本願の優先日前の平成21年12月17日に公開された特開2009-291976号公報(以下、「甲6」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0007】
1.少なくとも、顔料、定着樹脂、融点55℃以上200℃未満のワックスを含有する水性インクを吐出して記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法において、該記録媒体を加熱しながら該水性インクを吐出して該記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法であり、かつ、該記録媒体の加熱温度が該ワックスの融点より20℃~100℃低い温度であることを特徴とするインクジェット記録方法。」
(イ)「【0081】
(ワックス)
本発明に用いる水性インクは融点55℃以上200℃未満のワックスを含有する。ワックスとしては、動物系ワックス、植物系ワックス、石油系ワックス、鉱物系ワックスなどの天然ワックス、もしくは合成ワックスから選択することができる。
・・・
【0086】
合成ワックスとしては、主にエチレンの重合や、ポリエチレンの熱分解により製造するポリエチレンワックスを好ましく用いることができる。
【0087】
市販のポリエチレンワックスを用いることができ、例えば、ビックケミージャパン(株)製のAQUACER、BASFジャパン社のJONCRYL WAX26Jなどを好ましく用いることができる。」
エ 参考文献1記載事項
本願の優先日前の平成25年6月17日に公開された特開2013-119190号公報(以下、「参考文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0065】
(5)色材 本実施形態のインクには、色材として顔料、染料、金属酸化物および中空構造を有する粒子から選択される少なくとも1種を含有させてもよい。」
(イ)「【0084】
(ベースインクの組成)
表1に示す配合量で、色材、有機溶剤、界面活性剤およびイオン交換水等を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過し、真空ポンプを用いて脱気処理をした。・・・
【0085】
(補助液の組成)
補助液1~5の組成を表2に示す。補助液1~3には保湿剤として、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いた。補助液4及び5には樹脂(定着剤)として、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスを用いた。組成物の濃度の単位は質量%である。
【表2】
[図:0001425733000009.jpg]
【0086】
上記ベースインクと、上記ベースインクに補助液を混合したインクとで記録媒体に記録を行い、その結果を評価した。」
(ウ)上記(イ)に示した表2の中の「ポリエチレンワックス(AQ515)」と「パラフィンワックス(AQ539)」が、それぞれAQUACER515とAQUACER539であることは、当業者には明らかである。
オ 周知技術1
上記ア~エから、顔料と水等を含むインクに、ポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))を含有させることは、当業者に周知の事項(以下、「周知技術1」という。)と認められる。
(5)甲第10号証、参考文献1~2
ア 甲10記載事項
本願の優先日前の平成25年7月4日に公開された特開2013-129711号公報(以下、「甲10」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0032】
〔樹脂分散剤〕
上記の顔料をインクに含有させる際、顔料が水中で安定的に分散保持できるようにするとよい。そのような分散方法として、特に限定されないが、例えば、水溶性樹脂や水分散性樹脂などの樹脂分散剤を用いて分散させる方法(以下、この方法により処理された顔料を「樹脂分散顔料」と言う。)が主に挙げられる。中でも、分散安定性に優れるため、水溶性樹脂が好ましい。
ここで、上記の水溶性樹脂は、樹脂分散剤に限らず他の用途で用いてもよい。換言すれば、用途に関係なく、本実施形態におけるインクが水溶性樹脂を含有していればよい。したがって、水溶性樹脂は、インクを調製する前の顔料分散液を調製する段階で添加(前添加)してもよく(例えば樹脂分散剤として用いる場合)、インクを調製する際に一成分として添加(後添加)してもよい(例えば定着性や耐擦性を良好にする目的で用いる場合)。
【0033】
上記インクが樹脂分散顔料を含むことにより、これらの中でも、インクが被記録媒体に付着したときに、被記録媒体とインクとの間及びインク中の固化物間のうち少なくともいずれかの密着性を良好なものとすることができる。
【0034】
上記水溶性樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、及び酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、並びにこれらの塩が挙げられる。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のいずれの形態も用いることができる。」
イ 参考文献1記載事項
参考文献1には、次の事項が記載されている。
「【0055】
(インク組成物)
上述のようにして調整された第1インクおよび第2インクに含まれる成分について説明する。第1インクおよび第2インクは、互いに異なる成分を含有してもよいし、互いに同じ成分を含有して各成分の含有量が異なっていてもよい。したがって、以下では、特に断りがない限り、第1インクおよび第2インクのいずれか一種のインクを単に「インク」と称して説明する。
【0056】
(1)樹脂成分(補助剤) 調整されたインクは、樹脂成分を含有する。樹脂成分の機能の一つとしては、インクを固化させ、さらにインク固化物を被記録媒体上に強固に定着させることが挙げられる。
【0057】
このような樹脂成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体または共重合体、あるいはその変性体、あるいはポリウレタン、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でもよい。」
ウ 参考文献2記載事項
本願の優先日前の平成26年2月3日に公開された特開2014-19842号公報(以下、「参考文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0008】
1.インク組成物
1.1.色材
本実施の形態に係るインク組成物は、色材を含んでなる。色材としては、染料または顔料が挙げられるが、耐水性、耐ガス性、耐光性等を有する観点から顔料であることが好ましい。
このような顔料としては、公知の無機顔料、有機顔料、カーボンブラックのいずれも用いることができる。これらの顔料は、インク組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。
【0009】
前記顔料をインク組成物に適用するためには、顔料が水中で安定的に分散保持できるようにする必要がある。その方法としては、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂等の樹脂分散剤にて分散させる方法(以下、この方法により処理された顔料を「樹脂分散顔料」と記載する)、水溶性界面活性剤および/または水分散性界面活性剤の界面活性剤にて分散させる方法(以下、この方法により処理された顔料を「界面活性剤分散顔料」と記載する)、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、前記の樹脂あるいは界面活性剤等の分散剤なしで水中に分散および/または溶解可能とする方法(以下、この方法により処理された顔料を「表面処理顔料」と記載する)等が挙げられる。本実施の形態に係るインク組成物は、前記の樹脂分散顔料、界面活性剤分散顔料、表面処理顔料のいずれも用いることができ、必要に応じて複数種混合した形で用いることもできるが、少なくとも樹脂分散顔料を含有していることが好ましい。
【0010】
樹脂分散顔料に用いられる樹脂分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α―メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α―メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。」
エ 周知技術2
上記ア~ウから、インクジェット記録用のインクに含有させる各種樹脂の共重合体の形態として、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体とともに、ブロック共重合体でもよいことは、当業者に周知の事項(以下、「周知技術2」という。)と認められる。
2 進歩性欠如について
(1)甲1-1発明を主引用発明とした場合
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と甲1―1発明とを対比する。
a 甲1-1発明の「水系インク1」、「洗浄液1」及び「水系インク1と洗浄液1との組み合わせ」は、本件訂正発明1の「インク」、「洗浄液」及び「インクと洗浄液のセット」に相当する。
b 甲1-1発明の「顔料」は、本件訂正発明1の「着色剤」に相当する。
c 甲1-1発明の「水不溶性ポリマー」は「顔料含有ポリマー粒子、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ」、このうち、「顔料含有ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)」を重合反応させたポリマーを含むから、技術常識を踏まえれば、共重合体であることは明らかである。さらに、「水不溶性ポリマー」は、「記録媒体への定着性」「の観点から、水系インク1に含まれる」ものであるから、「バインダー」として機能する(必要であれば、特開2018-1735号公報の【0003】【0004】を参照)。
したがって、甲1-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料含有ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「共重合体」に相当し、甲1-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「バインダー」に相当し、本件訂正発明1の「インク」と甲1-1発明の「水系インク1」とは、「着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有する」点で共通する。
d 甲1-1発明の「洗浄液1」は、少なくとも「(A)成分として界面活性剤サーフィノール104PG-50」、「(B)成分として界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル」と、「イオン交換水」とを含むから、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-1発明の「洗浄液1」とは「少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する」ものである点で一致する。
e 甲3によると、「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%、EO平均付加モル数:0)」を、有効分が0.5gとなるよう1.0gを測定に供して、本件特許の請求項1の測定方法により求めたHLB値は、8.4であるから、本件訂正発明1の「界面活性剤B」と甲1-1発明の(A)成分である「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%、EO平均付加モル数:0)」とは、HLB値が8.4である点で一致し、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-1発明の「洗浄液1」とは、他方の界面活性剤のHLB値が8.4である点で一致する。
f したがって、本件訂正発明1と甲1-1発明を対比すると、両者は、
<一致点>
「 着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有するインクと、少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する洗浄液と、を有するインクと洗浄液のセットであって、洗浄液中の他方の界面活性剤のHLB値が8.4であるインクと洗浄液のセット。
但し、界面活性剤のHLB値は以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で撹拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。
【化1】
HLB値=0.89×Q+1.11 (1)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<一応の相違点1-1>
本件訂正発明1の「洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり」、当該界面活性剤を「HLB値が10.0~20.0の界面活性剤(界面活性剤A)」として、「総質量中における、界面活性剤AとB(HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤)の含有比が、6/1~1/ 6である」ことが特定されるのに対して、甲1-1発明における「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)」のHLB値が明らかでなく、そのことに付随してHLB値が10.0~20.0の界面活性剤と「界面活性剤サーフィノール104PG-50」の含有比も明らかでない点。
<相違点2-1>
本件訂正発明1の「インク」が、「ブロック共重合体」を含有するのに対して、甲1-1発明の「水系インク1」は「共重合体」を含有するものの、ブロック共重合体であるか否か不明な点。
(イ)判断
a 上記一応の相違点1-1について検討する。
上記1(1)ア(キ)に水系インク1の組成として示されるエマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)はEO平均付加モル数12モルである(必要であれば、特開2014-117208号公報の【0066】、特開2012-126778号公報の【0033】を参照)から、甲1-1発明の「洗浄液1」に含まれる(B)成分である「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)」も「エマルゲン120」である蓋然性が高い。
そして、甲3によると、「エマルゲン120」を、本件特許の請求項1に記載の測定方法により求めたHLB値は、17.7であるから、本件訂正発明1の「界面活性剤A」と甲1-1発明の(B)成分である「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)」は、HLB値が17.7である点で一致し、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-1発明の「洗浄液1」とは、洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が17.7である点で一致する。
b 甲1-1発明の「洗浄液1」に含まれる「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)」と「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%、EO平均付加モル数:0)」は、それぞれ「0.5g」と「1.0g」であり、後者のみ有効分が50%であるから、両者の界面活性剤の含有比は1/1である。上記aと上記(ア)dから、甲1-1発明の「洗浄液1」に含まれる「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)」が本件訂正発明1の「界面活性剤A」に、甲1-1発明の「洗浄液1」に含まれる「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%、EO平均付加モル数:0)」が本件訂正発明1の「界面活性剤B」に相当するので、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-1発明の「洗浄液1」とは、「総質量中における、界面活性剤AとBの含有比が」1/1である点で一致する。
c したがって、上記一応の相違点1-1は,実質的な相違点とはいえない。
d 仮に上記一応の相違点1-1が実質的な相違点であったとしても、エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EO平均付加モル数12モル)は慣用の材料である(必要であれば、特開2014-117208号公報の【0066】、特開2012-126778号公報の【0033】を参照)から、甲1-1発明の(B)成分である「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)」として、エマルゲン120を採用することは、技術の具体的適用に伴い当業者が適宜なし得る設計変更である。
また、甲1-1発明の「洗浄液1」に含まれる(B)成分である「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO平均付加モル数:12モル)」と(A)成分である「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%、EO平均付加モル数:0)」の含有比は、1/1であるが、上記1(1)ア(ウ)に示した[0027]の、質量比〔(A)/(B)〕は、好ましくは0.1以上、2以下という示唆から、上記含有比を6/1~1/2程度とすることも、技術の具体的適用に伴い当業者が適宜なし得る設計変更である。
e 上記相違点2-1について、検討する。
上記1(5)エに示したとおり、インクジェット記録用のインクに含有させる樹脂の共重合体の形態として、ブロック共重合体が用いられることは、周知技術2のとおり、周知の事項である。
f ここで、本件特許の明細書の【0023】には、「前記インクが水不溶性の着色剤を含有するときは、さらに分散剤を含有するのが好ましい。分散剤としては、・・・共重合体が挙げられる。 共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。」(空白は改行を表す。)とあるとおり、本件特許におけるインクに配合されるブロック共重合体としては、通常知られる共重合体の一例として記載されるにすぎず、当該ブロック共重合体の採用に、特段の技術的な意義を見出すことはできない。
g そうすると、甲1-1発明の「顔料含有ポリマー粒子」は、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含むものであるところ、これを周知技術2のとおり周知の、ブロック共重合体とすることは、技術の具体的適用に伴う単なる設計的事項の採用にすぎない。
h そして、甲1-1発明及び周知技術2からみて、本件訂正発明1に格別顕著な効果を見出すこともできない。
i 上記a~hより、本件訂正発明1は、甲1-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件訂正発明2について
(ア)対比
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明2において付加された構成について、検討する。
エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)がノニオン界面活性剤(非イオン性界面活性剤)であることは、当業者には技術常識である(必要であれば、特開2014-117208号公報の【0066】を参照)。上記ア(イ)aを踏まえると、本件訂正発明2の「HLB値が10.0~20.0の界面活性剤」と甲1-1発明の「界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明2は、上記アを踏まえると、甲1-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件訂正発明3について
(ア)対比
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明3において付加された構成について、検討する。
サーフィノール104PG-50がノニオン界面活性剤であることは、甲1[0063]に「サーフィノール104PG-50(日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系非イオン性界面活性剤のプロピレングリコール溶液、有効分50%)」とあるとおり、当業者には技術常識である。上記ア(ア)eを踏まえると、本件訂正発明3の「HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤」と甲1-1発明の「界面活性剤サーフィノール104PG-50」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明3は、上記ア~イを踏まえると、甲1-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件訂正発明4について
(ア)対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明1~3のいずれかの構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明4において付加された構成について、検討する。
甲1-1発明の「洗浄液1」は、「(C)成分としてジエチレングリコールモノブチルエーテル」を含むから、本件訂正発明4の「洗浄液」と甲1-1発明の「洗浄液1」とは、「グリコールエーテルを含有する」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明4は、上記ア~ウを踏まえると、甲1-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明5において付加された構成について、検討する。
甲1-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含」み、上記ア(ア)bに示したとおり、本件訂正発明1の「バインダー」に相当する。してみると、本件訂正発明5の「前記バインダー」と甲1-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」とは、「ポリマー」「から選択される、1種類以上である」ものである点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明5は、上記アを踏まえると、甲1-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件訂正発明6~7について
(ア)対比
本件訂正発明6は、本件訂正発明5の構成を全て有し、さらに構成を付加したものであり、本件訂正発明7は、本件訂正発明6の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明6と甲1―1発明とを対比すると、上記相違点2-1に加え、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件訂正発明6におけるバインダーであるワックスは、「ポリアルキレンワックス、酸化ポリアルキレンワックス、及びパラフィンワックスから選択される」のに対して、甲1―1発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点。
また、本件訂正発明7と甲1―1発明とを対比すると、上記相違点2-1及び相違点3-1に加え、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
本件訂正発明7におけるバインダーであるワックスは、「ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックス」から選択される」のに対して、甲1―1発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点。
(イ)判断
上記相違点3-1と上記相違点4-1は、どちらもバインダーであるワックスの具体的材料に関する相違点であるから、まとめて検討する。
顔料と水等を含むインクに、ポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))を含有させることは、上記1(4)オに示したとおり、周知技術1である。そして、上記1(4)エ(イ)に明記されるとおり、顔料と水等を含むインクに含有されるポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))は、バインダー(定着剤)として機能する。
甲1―1発明を構成する「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インク1」に対して、記録媒体への定着性をより高めるために、前記周知技術1を付加することは、当業者が容易になし得ることである。
よって、本件訂正発明6~7は、上記ア、オを踏まえると、甲1-1発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)甲1-2発明を主引用発明とした場合
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲1-2発明とを対比する。
a 甲1-2発明の「水系インク1」、「洗浄液4」及び「水系インク1と洗浄液4との組み合わせ」は、本件訂正発明1の「インク」、「洗浄液」及び「インクと洗浄液のセット」に相当する。
b 甲1-2発明の「顔料」は、本件訂正発明1の「着色剤」に相当する。
c 甲1-2発明の「水不溶性ポリマー」は「顔料含有ポリマー粒子、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ」、このうち、「顔料含有ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)」を重合反応させたポリマーを含むから、技術常識を踏まえれば、共重合体であることは明らかである。さらに、「水不溶性ポリマー」は、「記録媒体への定着性」「の観点から、水系インク1に含まれる」ものであるから、「バインダー」として機能する(必要であれば、特開2018-1735号公報の【0003】【0004】を参照)。したがって、甲1-2発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料含有ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「共重合体」に相当し、甲1-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「バインダー」に相当し、本件訂正発明1の「インク」と甲1-2発明の「水系インク1」とは、「着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有する」点で共通する。
d 甲1-2発明の「洗浄液4」は、少なくとも「(A)成分として界面活性剤サーフィノール420」、「(B)成分として界面活性剤サーフィノール465」と、「イオン交換水」とを含むから、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-2発明の「洗浄液4」とは「少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する」ものである点で一致する。
e 甲3によると、「界面活性剤サーフィノール465」を、本件特許の請求項1に記載の測定方法により求めたHLB値は、14.4であるから、本件訂正発明1の「界面活性剤A」と甲1-2発明の(B)成分である「界面活性剤サーフィノール465」とは、HLB値が14.4である点で一致する。
f 甲3によると、「サーフィノール420」を、本件特許の請求項1の測定方法により求めたHLB値は、8.7であるから、本件訂正発明1の「界面活性剤B」と甲1-2発明の(A)成分である「界面活性剤サーフィノール420」とは、本件訂正発明1における「HLB値が8.7である点で一致する。
g 上記e及びfから、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-2発明の「洗浄液4」とは、洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が14.4であり、他方の界面活性剤のHLB値が8.7である点で一致する。
h 甲1-2発明の「洗浄液4」に含まれる(B)成分である「界面活性剤サーフィノール465」と(A)成分である「界面活性剤サーフィノール420」は、どちらも「0.5g」であるから、上記d及びeを踏まえると、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-2発明の「洗浄液4」とは、「界面活性剤AとBの含有比」が、1/1である点で一致する。
i したがって、本件訂正発明1と甲1-2発明を対比すると、両者は、
<一致点>
「着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有するインクと、少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する洗浄液と、を有するインクと洗浄液のセットであって、洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり、他方の界面活性剤のHLB値が3.0以上10.0未満であり、前記洗浄液が含有する、HLB値が10.0~20.0の界面活性剤(界面活性剤A)と、HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤(界面活性剤B)の総質量中における、界面活性剤AとBの含有比が、 1/1であるインクと洗浄液のセット。
但し、界面活性剤のHLB値は以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で撹拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。
【化1】
HLB値=0.89×Q+1.11 (1)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-2>
本件訂正発明1の「インク」が、「ブロック共重合体」を含有するのに対して、甲1-2発明の「水系インク1」は「共重合体」を含有するものの、ブロック共重合体であるか否か不明な点。
(イ)判断
a 上記相違点2-2について、検討する。
上記1(5)エに示したとおり、インクジェット記録用のインクに含有させる樹脂の共重合体の形態として、ブロック共重合体が用いられることは、周知技術2のとおり、周知の事項である。
b ここで、本件特許の明細書の【0023】には、「前記インクが水不溶性の着色剤を含有するときは、さらに分散剤を含有するのが好ましい。分散剤としては、・・・共重合体が挙げられる。 共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。」(空白は改行を表す。)とあるとおり、本件特許におけるインクに配合されるブロック共重合体としては、通常知られる共重合体の一例として記載されるにすぎず、当該ブロック共重合体の採用に、特段の技術的な意義を見出すことはできない。
c そうすると、甲1-2発明の「顔料含有ポリマー粒子」は、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含むものであるところ、これを周知技術2のとおり周知の、ブロック共重合体とすることは、技術の具体的適用に伴う単なる設計的事項の採用にすぎない。
d そして、甲1-2発明及び周知技術2からみて、本件訂正発明1に格別顕著な効果を見出すこともできない。
e なお、甲1-2発明の「洗浄液4」に含まれる(B)成分である「界面活性剤サーフィノール465」と(A)成分である「界面活性剤サーフィノール420」の含有比は、1/1であるが、上記1(1)ア(ウ)に示した[0027]の、質量比〔(A)/(B)〕は、好ましくは0.1以上、2以下という示唆から、上記含有比を6/1~1/2程度とすることも、技術の具体的適用に伴い当業者が適宜なし得る設計変更である。
f 上記a~eより、本件訂正発明1は、甲1-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件訂正発明2について
(ア)対比
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明2において付加された構成について、検討する。
サーフィノール465がノニオン界面活性剤(非イオン性界面活性剤)であることは、当業者には技術常識である。上記ア(ア)dを踏まえると、本件訂正発明2の「HLB値が10.0~20.0の界面活性剤」と甲1-2発明の「サーフィノール465」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明2は、上記アを踏まえると、甲1-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件訂正発明3について
(ア)対比
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明3において付加された構成について、検討する。
サーフィノール420がノニオン界面活性剤であることは、当業者には技術常識である。上記ア(ア)eを踏まえると、本件訂正発明3の「HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤」と甲1-2発明の「サーフィノール420」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明3は、上記ア~イを踏まえると、甲1-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件訂正発明4について
(ア)対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明1~3のいずれかの構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明4において付加された構成について、検討する。
甲1-2発明の「洗浄液4」は、「(C)成分としてジエチレングリコールモノブチルエーテル」を含むから、1発明の「洗浄液」と甲1-2発明の「洗浄液4」とは、「グリコールエーテルを含有する」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明4は、上記ア~ウを踏まえると、甲1-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明5において付加された構成について、検討する。
甲1-2発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含」み、上記ア(ア)bに示したとおり、本件訂正発明1の「バインダー」に相当する。してみると、本件訂正発明5の「前記バインダー」と甲1-2発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」とは、「ポリマー」「から選択される、1種類以上である」ものである点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明5は、上記アを踏まえると、甲1-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件訂正発明6~7について
(ア)対比
本件訂正発明6は、本件訂正発明5の構成を全て有し、さらに構成を付加したものであり、本件訂正発明7は、本件訂正発明6の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明6と甲1―2発明とを対比すると、上記相違点2-2に加え、以下の点で相違する。
<相違点3-2>
本件訂正発明6におけるバインダーであるワックスは、「ポリアルキレンワックス、酸化ポリアルキレンワックス、及びパラフィンワックスから選択される」のに対して、甲1―2発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点。
また、本件訂正発明7と甲1―2発明とを対比すると、上記相違点2-2及び相違点3-2に加え、以下の点で相違する。
<相違点4-2>
本件訂正発明7におけるバインダーであるワックスは、「ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックスから選択される」のに対して、甲1―2発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点。
(イ)判断
上記相違点3-2と上記相違点4-2は、どちらもバインダーであるワックスの具体的材料に関する相違点であるから、まとめて検討する。
顔料と水等を含むインクに、ポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))を含有させることは、上記1(4)オに示したとおり、周知技術1である。そして、上記1(4)エ(イ)に明記されるとおり、顔料と水等を含むインクに含有されるポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))は、バインダー(定着剤)として機能する。
甲1―2発明を構成する「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インク1」に対して、記録媒体への定着性をより高めるために、前記周知技術1を付加することは、当業者が容易になし得ることである。
よって、本件訂正発明6~7は、上記ア、オを踏まえると、甲1-2発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)甲1-3発明を主引用発明とした場合
ア 本件訂正発明8について
(ア)対比
本件訂正発明8は、本件訂正発明1~7のいずれかの構成のインクが付着した記録装置を、本件訂正発明1~7のいずれかの構成の洗浄液で洗浄することを特定した、記録装置の洗浄方法に係る発明である。
本件訂正発明8と甲1-3発明とを対比する。
甲1-3発明の「インクジェット記録用プリンタ」は、本件訂正発明8の「記録装置」に相当する。
(イ)判断
よって、上記(1)及び(2)も踏まえると、本件訂正発明8は、甲1-3発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件訂正発明9について
(ア)対比
本件訂正発明9は、本件訂正発明8の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明9において付加された構成について、検討する。
甲1-3発明の「インクジェット記録用プリンタ」は、本件訂正発明9の「インクジェットプリンタ」に相当する。
(イ)判断
よって、上記(1)、(2)及びアも踏まえると、本件訂正発明9は、甲1-3発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)甲2-1発明を主引用発明とした場合
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲2-1発明とを対比する。
a 甲2-1発明の「水系インク1」、「洗浄液1」及び「水系インク1と洗浄液1との組み合わせ」は、本件訂正発明1の「インク」、「洗浄液」及び「インクと洗浄液のセット」に相当する。
b 甲2-1発明の「顔料」は、本件訂正発明1の「着色剤」に相当する。
c 甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」は「顔料含有ポリマー粒子、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ」、このうち、「顔料含有ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)」を重合反応させたポリマーを含むから、技術常識を踏まえれば、共重合体であることは明らかである。さらに、「水不溶性ポリマー」は、「記録媒体への定着性」「の観点から、水系インクに含まれる」ものであるから、甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」は、本件訂正発明1の「バインダー」に相当する(必要であれば、特開2018-1735号公報の【0003】【0004】を参照)。
したがって、甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料含有ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「共重合体」に相当し、甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「バインダー」に相当し、本件訂正発明1の「インク」と甲2-1発明の「水系インク」とは、「着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有する」点で共通する。
c 甲2-1発明の「洗浄液1」は、少なくとも「(a-1)成分として界面活性剤サーフィノール104PG-50」、「(a-2)成分として界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」と、「イオン交換水」とを含むから、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲2-1発明の「洗浄液1」とは「少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する」ものである点で一致する。
d 甲3によると、「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)」を、有効分が0.5gとなるよう1.0gを測定に供して、本件特許の請求項1の測定方法により求めたHLB値は、8.4であるから、本件訂正発明1の「界面活性剤B」と甲2-1発明の(a-1)成分である「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)」とは、HLB値が8.4である点で一致し、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲2-1発明の「洗浄液1」とは、洗浄液中の他方の界面活性剤のHLB値が8.4である点で一致する。
f したがって、本件訂正発明1と甲2-1発明を対比すると、両者は、
<一致点>
「 着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有するインクと、少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する洗浄液と、を有するインクと洗浄液のセットであって、洗浄液中の他方の界面活性剤のHLB値が8.4であるインクと洗浄液のセット。
但し、界面活性剤のHLB値は以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で撹拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。
【化1】
HLB値=0.89×Q+1.11 (1)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<一応の相違点1-3>
本件訂正発明1の「洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり」、当該界面活性剤を「HLB値が10.0~20.0の界面活性剤(界面活性剤A)」として、「総質量中における、界面活性剤AとB(HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤)の含有比が、6/1~1/ 6である」ことが特定されるのに対して、甲2-1発明における「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」のHLB値が明らかでなく、そのことに付随してHLB値が10.0~20.0の界面活性剤と「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)」の含有比も明らかでない点。
<相違点2-3>
本件訂正発明1の「インク」が、「ブロック共重合体」を含有するのに対して、甲2-1発明の「水系インク」は「共重合体」を含有するものの、ブロック共重合体であるか否か不明な点。
(イ)判断
a 上記一応の相違点1-3について検討する。
上記1(1)ア(カ)に水系インク1の組成として示されるエマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)はEO平均付加モル数12モルである(必要であれば、特開2014-117208号公報の【0066】、特開2012-126778号公報の【0033】を参照)から、甲2-1発明の「洗浄液1」に含まれる(a-2)成分である「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」も「エマルゲン120」である蓋然性が高い。
そして、甲3によると、「エマルゲン120」を、本件特許の請求項1に記載の測定方法により求めたHLB値は、17.7であるから、本件訂正発明1の「界面活性剤A」と甲2-1発明の「(a-2)成分である「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」とは、HLB値が17.7である点で一致し、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲2-1発明の「洗浄液1」とは、「洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であ」る点でも一致する。
b 甲2-1発明の「洗浄液1」に含まれる「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」と「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)」は、それぞれ「0.5g」と「1.0g」であり、後者のみ有効分が50%であるから、両者の界面活性剤の含有比は1/1である。上記aと上記(ア)dから、甲2-1発明の「洗浄液1」に含まれる「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」が本件訂正発明1の「界面活性剤A」に、甲2-1発明の「洗浄液1」に含まれる「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)」が本件訂正発明1の「界面活性剤B」に相当するので、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲1-1発明の「洗浄液1」とは、「総質量中における、界面活性剤AとBの含有比が」1/1である点で一致する。
c したがって、上記一応の相違点1-3は,実質的な相違点とはいえない。
d 仮に上記一応の相違点1-3が実質的な相違点であったとしても、エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EO平均付加モル数12モル)は慣用の材料である(必要であれば、特開2014-117208号公報の【0066】、特開2012-126778号公報の【0033】を参照)から、甲2-1発明の「(a-2)成分である「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」として、エマルゲン120を採用することは、技術の具体的適用に伴い当業者が適宜なし得る設計変更である。
また、甲2-1発明の「洗浄液1」に含まれる(a-2)成分である「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」と(a-1)成分である「界面活性剤サーフィノール104PG-50(有効分50%)」の含有比は、1/1であるが、上記1(2)ア(イ)に示した【0028】の、質量比〔(a-1)/(a-2)〕は、好ましくは0.1以上、2以下という示唆から、上記含有比を6/1~1/2程度とすることも、技術の具体的適用に伴い当業者が適宜なし得る設計変更である。
e 上記相違点2-3について、検討する。
上記1(5)エに示したとおり、インクジェット記録用のインクに含有させる樹脂の共重合体の形態として、ブロック共重合体が用いられることは、周知技術2のとおり、周知の事項である。
f ここで、本件特許の明細書の【0023】には、「前記インクが水不溶性の着色剤を含有するときは、さらに分散剤を含有するのが好ましい。分散剤としては、・・・共重合体が挙げられる。 共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。」(空白は改行を表す。)とあるとおり、本件特許におけるインクに配合されるブロック共重合体としては、通常知られる共重合体の一例として記載されるにすぎず、当該ブロック共重合体の採用に、特段の技術的な意義を見出すことはできない。
g そうすると、甲1-1発明の「顔料含有ポリマー粒子」は、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含むものであるところ、これを周知技術2のとおり周知の、ブロック共重合体とすることは、技術の具体的適用に伴う単なる設計的事項の採用にすぎない。
h そして、甲1-1発明及び周知技術2からみて、本件訂正発明1に格別顕著な効果を見出すこともできない。
i 上記a~hより、本件訂正発明1は、甲2-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件訂正発明2について
(ア)対比
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明2において付加された構成について、検討する。
エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)がノニオン界面活性剤(非イオン性界面活性剤)であることは、当業者には技術常識である(必要であれば、特開2014-117208号公報の【0066】を参照)。上記ア(イ)aを踏まえると、本件訂正発明2の「HLB値が10.0~20.0の界面活性剤」と甲2-1発明の「界面活性剤2-1(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOの平均付加モル数:12モル)」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明2は、上記アを踏まえると、甲2-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件訂正発明3について
(ア)対比
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明3において付加された構成について、検討する。
サーフィノール104PG-50がノニオン界面活性剤であることは、当業者には技術常識である。上記ア(ア)eを踏まえると、本件訂正発明3の「HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤」と甲2-1発明の「界面活性剤サーフィノール104PG-50」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明3は、上記ア~イを踏まえると、甲2-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件訂正発明4について
(ア)対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明1~3のいずれかの構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明4において付加された構成について、検討する。
甲2-1発明の「洗浄液1」は、「(b-1)成分としてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル」を含むから、1発明の「洗浄液」と甲2-1発明の「洗浄液1」とは、「グリコールエーテルを含有する」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明4は、上記ア~ウを踏まえると、甲2-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明5において付加された構成について、検討する。
甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを含」み、上記ア(ア)bに示したとおり、本件訂正発明1の「バインダー」に相当する。してみると、本件訂正発明5の「前記バインダー」と甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」とは、「ポリマー」「から選択される、1種類以上である」ものである点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明5は、上記アを踏まえると、甲2-1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件訂正発明6~7について
(ア)対比
本件訂正発明6は、本件訂正発明5の構成を全て有し、さらに構成を付加したものであり、本件訂正発明7は、本件訂正発明6の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明6と甲2-1発明とを対比すると、上記相違点2-3に加え、以下の点で相違する。
<相違点3-3>
本件訂正発明6におけるバインダーであるワックスは、「ポリアルキレンワックス、酸化ポリアルキレンワックス、及びパラフィンワックスから選択される」のに対して、甲2-1発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点。
また、本件訂正発明7と甲2-1発明とを対比すると、上記相違点2-3及び相違点3-3に加え、以下の点で相違する。
<相違点4-3>
本件訂正発明7におけるバインダーであるワックスは、「ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックスから選択される」のに対して、甲2-1発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点。
(イ)判断
上記相違点3-3と上記相違点4-3は、どちらもバインダーであるワックスの具体的材料に関する相違点であるから、まとめて検討する。
顔料と水等を含むインクに、ポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))を含有させることは、上記1(4)オに示したとおり、周知技術1である。そして、上記1(4)エ(イ)に明記されるとおり、顔料と水等を含むインクに含有されるポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))は、バインダー(定着剤)として機能する。
甲2―1発明を構成する「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インク1」に対して、記録媒体への定着性をより高めるために、前記周知技術1を付加することは、当業者が容易になし得ることである。
よって、本件訂正発明6~7は、上記ア、オを踏まえると、甲2-1発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)甲2-2発明を主引用発明とした場合
ア 本件訂正発明1について
(ア)対比
本件訂正発明1と甲2-2発明とを対比する。
a 甲2-2発明の「水系インク1」、「洗浄液7」及び「水系インク1と洗浄液7との組み合わせ」は、本件訂正発明1の「インク」、「洗浄液」及び「インクと洗浄液のセット」に相当する。
b 甲2-2発明の「顔料」は、本件訂正発明1の「着色剤」に相当する。
c 甲2-2発明の「水不溶性ポリマー」は「顔料含有ポリマー粒子、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の形態として含まれ」、このうち、「顔料含有ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)」を重合反応させたポリマーを含むから、技術常識を踏まえれば、共重合体であることは明らかである。さらに、「水不溶性ポリマー」は、「記録媒体への定着性」「の観点から、水系インクに含まれる」ものであるから、甲2-2発明の「水不溶性ポリマー」は、本件訂正発明1の「バインダー」に相当する(必要であれば、特開2018-1735号公報の【0003】【0004】を参照)。
したがって、甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料含有ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「共重合体」に相当し、甲2-1発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、本件訂正発明1の「バインダー」に相当し、本件訂正発明1の「インク」と甲2-2発明の「水系インク1」とは、「着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有する」点で共通する。
d 甲2-2発明の「洗浄液7」は、少なくとも「界面活性剤サーフィノール104PG-50」、「界面活性剤サーフィノール465」と、「イオン交換水」とを含むから、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲2-2発明の「洗浄液7」とは「少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する」ものである点で一致する。
e 甲3によると、「界面活性剤サーフィノール465」を、本件特許の請求項1に記載の測定方法により求めたHLB値は、14.4であるから、甲2-2発明の(B)成分としての「界面活性剤サーフィノール465」は、本件訂正発明1における「HLB値が10.0~20.0の界面活性剤(界面活性剤A)」に相当する。
f 甲3によると、「界面活性剤サーフィノール104PG-50」を、本件特許の請求項1の測定方法により求めたHLB値は、8.4であるから、甲2-2発明の「界面活性剤サーフィノール104PG-50」は、本件訂正発明1における「HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤(界面活性剤B)」に相当する。
g 上記d及びeから、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲2-2発明の「洗浄液7」とは、「洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり、他方の界面活性剤のHLB値が3.0以上10.0未満であ」る点で一致する。
h 甲2-2発明の「洗浄液7」に含まれる(a-2)である「界面活性剤サーフィノール465」と(a-1)である「界面活性剤サーフィノール104PG-50」は、どちらも「1.0g」であるから、上記d及びeを踏まえると、本件訂正発明1の「洗浄液」と甲2-2発明の「洗浄液7」とは、「界面活性剤AとBの含有比」が、含有比は1/1である点で一致する。
i したがって、本件訂正発明1と甲2-2発明を対比すると、両者は、
<一致点>
「着色剤、バインダー、共重合体及び水を含有するインクと、少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する洗浄液と、を有するインクと洗浄液のセットであって、洗浄液中の一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり、他方の界面活性剤のHLB値が3.0以上10.0未満であり、前記洗浄液が含有する、HLB値が10.0~20.0の界面活性剤(界面活性剤A)と、HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤(界面活性剤B)の総質量中における、界面活性剤AとBの含有比が、 1/1であるインクと洗浄液のセット。
但し、界面活性剤のHLB値は以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で撹拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。
【化1】
HLB値=0.89×Q+1.11 (1)」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-4>
本件訂正発明1の「インク」が、「ブロック共重合体」を含有するのに対して、甲2-2発明の「水系インク」は「共重合体」を含有するものの、ブロック共重合体であるか否か不明な点。
(イ)判断
a 上記1(5)エに示したとおり、インクジェット記録用のインクに含有させる樹脂の共重合体の形態として、ブロック共重合体が用いられることは、周知技術2のとおり、周知の事項である。
b ここで、本件特許の明細書の【0023】には、「前記インクが水不溶性の着色剤を含有するときは、さらに分散剤を含有するのが好ましい。分散剤としては、・・・共重合体が挙げられる。 共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。」(空白は改行を表す。)とあるとおり、本件特許におけるインクに配合されるブロック共重合体としては、通常知られる共重合体の一例として記載されるにすぎず、当該ブロック共重合体の採用に、特段の技術的な意義を見出すことはできない。
c そうすると、甲2-2発明の「顔料含有ポリマー粒子」は、メタクリル酸、スチレン、スチレン系マクロマー、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4)を重合反応させたポリマーとを含むものであるところ、これを周知技術2のとおり周知の、ブロック共重合体とすることは、技術の具体的適用に伴う単なる設計的事項の採用にすぎない。
d そして、甲2-2発明及び周知技術2からみて、本件訂正発明1に格別顕著な効果を見出すこともできない。
e なお、甲2-2発明の「洗浄液7」に含まれる(a-2)である「界面活性剤サーフィノール465」と(a-1)である「界面活性剤サーフィノール104PG-50」の含有比は、1/1であるが、上記1(2)ア(イ)に示した【0028】の、質量比〔(a-1)/(a-2)〕は、好ましくは0.1以上、2以下という示唆から、上記含有比を6/1~1/2程度とすることも、技術の具体的適用に伴い当業者が適宜なし得る設計変更である。
f よって、本件訂正発明1は、甲2-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件訂正発明2について
(ア)対比
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明2において付加された構成について、検討する。
サーフィノール465がノニオン界面活性剤(非イオン性界面活性剤)であることは、当業者には技術常識である。上記ア(ア)dを踏まえると、本件訂正発明2の「HLB値が10.0~20.0の界面活性剤」と甲2-2発明の「界面活性剤サーフィノール465」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明2は、上記アを踏まえると、甲2-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件訂正発明3について
(ア)対比
本件訂正発明3は、本件訂正発明1又は2の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明3において付加された構成について、検討する。
サーフィノール104PG-50がノニオン界面活性剤であることは、当業者には技術常識である。上記ア(ア)eを踏まえると、本件訂正発明3の「HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤」と甲2-2発明の「界面活性剤サーフィノール104PG-50」とは、「ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明3は、上記ア~イを踏まえると、甲2-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件訂正発明4について
(ア)対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明1~3のいずれかの構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明4において付加された構成について、検討する。
甲2-2発明の「洗浄液7」は、「(b-1)成分としてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル」を含むから、本件訂正発明4の「洗浄液」と甲2-2発明の「洗浄液7」とは、「グリコールエーテルを含有する」点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明4は、上記ア~ウを踏まえると、甲2-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件訂正発明5について
(ア)対比
本件訂正発明5は、本件訂正発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明5において付加された構成について、検討する。
甲2-2発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、「メタクリル酸、メチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートを重合反応させたポリマーを含」み、上記ア(ア)bに示したとおり、本件訂正発明1の「バインダー」に相当する。してみると、本件訂正発明5の「前記バインダー」と甲2-2発明の「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」とは、「ポリマー」「から選択される、1種類以上である」ものである点で一致する。
(イ)判断
よって、本件訂正発明5は、上記アを踏まえると、甲2-2発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件訂正発明6~7について
(ア)対比
本件訂正発明6は、本件訂正発明5の構成を全て有し、さらに構成を付加したものであり、本件訂正発明7は、本件訂正発明6の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明6と甲2-2発明とを対比すると、上記相違点2-4に加え、以下の点で相違する。
<相違点3-4>
本件訂正発明6におけるバインダーであるワックスは、「ポリアルキレンワックス、酸化ポリアルキレンワックス、及びパラフィンワックスから選択される」のに対して、甲2-2発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点で相違する。
また、本件訂正発明7と甲2-2発明とを対比すると、上記相違点2-4及び相違点3-4に加え、以下の点で相違する。
<相違点4-4>
本件訂正発明7におけるバインダーであるワックスは、「ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックスから選択される」のに対して、甲2-2発明においてバインダーとして機能する「水不溶性ポリマー」の「顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子」は、そのようなワックスでない点。
(イ)判断
上記相違点3-4と上記相違点4-4は、どちらもバインダーであるワックスの具体的材料に関する相違点であるから、まとめて検討する。
顔料と水等を含むインクに、ポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))を含有させることは、上記1(4)オに示したとおり、周知技術1である。そして、上記1(4)エ(イ)に明記されるとおり、顔料と水等を含むインクに含有されるポリエチレンワックスやパラフィンワックス(具体例としてAQUACER(登録商標))は、バインダー(定着剤)として機能する。
甲2-2発明を構成する「顔料、水不溶性ポリマー及び水を含む水系インク1」に対して、記録媒体への定着性をより高めるために、前記周知技術1を付加することは、当業者が容易になし得ることである。
よって、本件訂正発明6~7は、上記ア、オを踏まえると、甲2-2発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)甲2-3発明を主引用発明とした場合
ア 本件訂正発明8について
(ア)対比
本件訂正発明8は、本件訂正発明1~7のいずれかの構成のインクが付着した記録装置を、本件訂正発明1~7のいずれかの構成の洗浄液で洗浄することを特定した、記録装置の洗浄方法に係る発明である。
本件訂正発明8と甲2-3発明とを対比する。
甲2-3発明の「インクジェット記録用プリンタ」は、本件訂正発明8の「記録装置」に相当する。
(イ)判断
よって、上記(1)及び(2)も踏まえると、本件訂正発明8は、甲2-3発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件訂正発明9について
(ア)対比
本件訂正発明9は、本件訂正発明8の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
本件訂正発明9において付加された構成について、検討する。
甲2-3発明の「インクジェット記録用プリンタ」は、本件訂正発明9の「インクジェットプリンタ」に相当する。
(イ)判断
よって、上記(1)及び(2)及びアも踏まえると、本件訂正発明9は、甲2-3発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)特許権者の意見書における主張について
ア 特許権者は、令和6年12月4日に提出した意見書の5(4)ア(イ)において、概略、以下のように主張している。
「m インクにブロック共重合体を含むことの効果立証
本発明の効果を奏するために、インク中にブロック共重合体を含むことが重要であることを、下記比較試験を行い効果立証することとしました。
[比較試験]
(着色剤の分散液Dp2の調製)
ジョンクリル68(MW:10000、酸価:195、ランダム共重合体)25部、及びトリエタノールアミン13部をイオン交換水62部に溶解し、一時間撹拌して溶液を得た。得られた溶液を、ポリマーC溶液とする。この乳化液20部にイオン交換水60部、顔料C. I. Pigment Yellow 74(20部、クラリアント社製HANSA YELLOW 5GX01-JP)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行って液を得た。得られた液に水(50部)を滴下した後、この液をろ過し、顔料含有量が13.7%の着色剤の分散液(Dp2)を得た。
(インクNO.3の調製)
下記表1に記載の各成分を使用する以外は、インクNO.1と同様にして、比較用のインクNO.3を得た。
(表1省略)
インクNO.3と洗浄液NO.1を組み合わせたものを追加比較例3、インクNO.3と洗浄液NO.5を組み合わせたものを追加比較例4、とし、本願の[OO84]、[OO86]に記載の評価を行った。
結果を下記表2に示す。
(表2省略)
n 進歩性について
上記しましたとおり、甲1、甲2、甲4~甲10、参1~参3には、いずれも、ブロック共重合体をインクに含むことで本願効果を奏することについて、開示も示唆もありません。
また、上記追加比較例3と追加比較例4では、ブロック共重合体に代え、ランダム共重合体を用いた場合、擦過性と洗浄性に顕著に劣ることが分かります。
これらより、甲1、甲2、甲4~甲10、参1~参3を参考にしたとしても、本発明の効果を期待し、ブロック共重合体をインクに含ませることは容易には想到し得ないものと思料いたします。
以上より、本発明は、甲1、甲2、甲4~甲10あるいは周知技術(参1~参3)に基づいて当業者が容易に想到できた発明ではありません。」
イ 当審の判断
(ア)特許法第29条第2項の要件充足性を判断するに当たり、明細書に「発明の効果」について、何らの記載がないにもかかわらず、出願後に実験結果等を提出して、主張又は立証することは、先願主義を採用し、発明の開示の代償として特許権(独占権)を付与するという特許制度の趣旨に反することになるので、許されないというべきである。本件特許の明細書等には、権利者が比較試験により証明しようとしているインクにブロック共重合体を含むことの効果が何ら記載されていないし、また、技術常識を踏まえても、本件特許の明細書等から当業者がその効果を推論できる根拠を見いだせない。
(イ)また、仮に意見書における比較実験を参酌するとしても、当該実験のDp2と、本件特許の明細書中のDp1との差は、特定のブロック共重合体の有無によるものと理解できるところ、一概にブロック共重合体が他の形態の共重合体に比べて擦過性と洗浄性において顕著に優れることが把握できるものではない。
(ウ)したがって、特許権者の主張は採用できず、上記(1)ア(イ)f等の判断において示したとおり、インクに含有させる共重合体として、当該ブロック共重合体の採用に、特段の技術的な意義を見出すことはできない。
第6 まとめ
以上、第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第7376974号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲〔1-9〕のとおり訂正することを認める
そして、第5のとおり、本件訂正発明1~9は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、同条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700437