特許異議申立
2023-701000
熱転写プリンタ、インクリボン、制御装置、及びデータ処理方法
- 審判番号
- 2023-701000
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-248019
- 登録番号
- 7243189
- 請求日
- 2023年09月21日
- 審決日
- 2024年08月30日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 嵯峨根 多美
- 審判官 殿川 雅也
- 分類
- P1651.537-ZDA(B41J) / P1651.121-ZDA(B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7243189号発明「熱転写プリンタ、インクリボン、制御装置、及びデータ処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7243189号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~6]、7、8、9、10について訂正することを認める。
特許第7243189号の請求項1~3、5、6に係る特許を取り消す。
特許第7243189号の請求項9、10に係る特許を維持する。
特許第7243189号の請求項4、7、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7243189号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年12月28日に出願され、令和5年3月13日にその特許権の設定登録がされ、同年3月22日に特許掲載公報が発行された。その後、同年9月21日に特許異議申立人 藤江 桂子により請求項1~10に対して特許異議の申立てがされ、同年12月1日付けで取消理由が通知され、令和6年2月5日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、同年4月16日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたが、特許権者から応答はなく、同年7月26日付けで特許法第120条の5第5項に基づき特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知がされたところ、同年8月13日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨
本件訂正請求は、その請求の趣旨を「特許第7243189号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6、7、8、9、10について訂正することを求める。」とするものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(訂正事項の項番は当審にて付し直した。下線は、訂正箇所を示す。)
(1)一群の請求項1~6に係る訂正
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の「事前設定された数N以下の利用可能な有彩色」を「候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2-6も同様に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の「前記基本色群とは異なる有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「利用可能な有彩色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写プリンタで最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせ」及び「Nは2以上の整数であり」を、それぞれ「前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写プリンタで最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせ」及び「Mは2以上の整数であり、M<Nであり」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2-6も同様に訂正する。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1の「を備える」」を、「を備え、前記記憶部は、印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された前記第1のプロファイル情報を格納する」と訂正する。
請求項1を引用する請求項2-6も同様に訂正する。
エ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
オ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1~4のいずれか1項に記載の熱転写プリンタ」を「請求項1に記載の熱転写プリンタ」に訂正する。
(2)請求項7に係る訂正
ア 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(3)請求項8に係る訂正
ア 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(4)請求項9に係る訂正
ア 訂正事項6-1
特許請求の範囲の請求項9の「事前設定された数N以下の利用可能な有彩色」を「候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色」に訂正する。
イ 訂正事項6-2
特許請求の範囲の請求項9の「前記基本色群とは異なる有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「利用可能な有彩色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせ」及び「Nは2以上の整数である」を、それぞれ「前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせ」及び「Mは2以上の整数であり、M<Nである」に訂正する。
ウ 訂正事項6-3
特許請求の範囲の請求項9の「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーションを利用して」を、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して」に訂正する。
(5)請求項10に係る訂正
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項10の「事前設定された数N以下の利用可能な有彩色」を「候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色」に訂正する。
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項10の「前記基本色群とは異なる有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「利用可能な有彩色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせ」及び「Nは2以上の整数である」を、それぞれ「前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせ」及び「Mは2以上の整数であり、M<Nである」に訂正する。
ウ 訂正事項7-3
特許請求の範囲の請求項10の「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーションを利用して」を、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して」に訂正する。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)一群の請求項についての説明
本件訂正前の請求項2~6は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1-1~訂正事項1-3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~6に対応する本件訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)一群の請求項1~6に係る訂正について
ア 訂正事項1-1について
(ア)訂正の目的について
本件訂正前の請求項1の「事前設定された数N以下の利用可能な有彩色」との記載では、「事前設定された数N」が何の数であるのか、別の言い方をすると「事前設定された数N以下」との記載があることで「利用可能な有彩色」のどのような構成が特定されるのか、不明であったところ、訂正事項1-1は、Nが「候補色として事前設定された」「色」の数であって、「利用可能な有彩色」が「候補色として事前設定されたN色」のものであることを明確にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1-1は、「利用可能な有彩色」が「候補色として事前設定されたN色」のものであることを明確にする訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書【0026】には「有彩色(以下、特色)」、【0134】には「S202は、特色の候補となる候補色染料を用意する作業工程である。候補色染料の数QはM以上である。ここでは説明の都合上、候補色としてS1、…、SQが用意されたものとする。S203は、熱転写プリンタ10で受像紙12上に印刷したパッチを用いて分光反射率を測定し、下地色の分光濃度Dp(λ)(上記の式(2)を参照)と、基本色及び候補色のそれぞれについてのベタ塗り印刷時の分光濃度Dq(100,λ)(q=Y,M,C,S1,…,SQ)とを取得する作業工程である。」と記載されていて、明細書の「候補色染料の数Q」が訂正事項1-1の「候補色として事前設定されたN色」に対応することは明らかであるから、熱転写プリンタが「利用可能な有彩色」を「候補色として事前設定されたN色」と特定する訂正事項1-1は、明細書等に記載された範囲内においてする訂正である。
したがって、当該訂正事項1-1は、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
イ 訂正事項1-2について
(ア)訂正の目的について
本件訂正前の請求項1の熱転写プリンタが利用する「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数であり、選択された「有彩色の組み合わせの中から選択された」「有彩色」の色数でもある色数を、訂正事項1-2は「M色」と特定した上で、当該Mの数値範囲が「Mは2以上の整数であり、M<Nであ」ることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1の熱転写プリンタが利用する「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数であり選択された「有彩色の組み合わせ」の色数でもある色数を、「M色」と特定した上で、当該Mの数値範囲が「Mは2以上の整数であり、M<Nであ」ることを限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書の【0026】には「有彩色(以下、特色)」、【0132】には「(S201)シミュレーション装置30は、特色の数M及びサンプル色q1、q2を設定する。」、【0134】には「S202は、特色の候補となる候補色染料を用意する作業工程である。候補色染料の数QはM以上である。」、【0141】には「(S210)シミュレーション装置30は、用意されたQ色の候補色から、M色の候補色を含む候補色セット(c1、…、cM)を選択する。なお、S210以降の処理は繰り返し実行されるため、S210では未選択の候補色セットが選択される。」、【0027】には「図3の例では、特色のインク層として、インクリボン11に特色S1、S2のインク層(S1層、S2層)が設けられている。」、【0153】には「既に述べた通り、本実施形態の技術を適用可能なインクリボンの構成は図3の例に限定されず、特色の数、各色の並び順、非有彩色の追加など、様々な変形が可能である。」と記載されている。
明細書の「候補色染料の数Q」及び「特色の数M」が、それぞれ訂正事項1-2の「利用可能な有彩色」の色数である「N色」及び「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数である「M色」に対応することは明らかであるから、熱転写プリンタが利用する「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数である「M色」と「利用可能な有彩色」の色数である「N色」との関係を、「Mは2以上」かつ「M<N」と限定する訂正事項1-2は、明細書等に記載された範囲内においてする訂正である。
したがって、当該訂正事項1-2は、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項1-3について
(ア)訂正の目的について
本件訂正前の請求項1の「第1のプロファイル情報が格納される記憶部」について、訂正事項1-3は、「前記記憎部は、印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された前記第1のプロファイル情報を格納する」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1-3は、本件訂正前の請求項1の「第1のプロファイル情報が格納される記憶部」について「第1のプロファイル情報」の作成過程を限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
a 明細書等には、以下の記載がある。
(a)「【0048】
・・・色変換プロファイルは、例えば、インクリボン11を実際に用いてパッチを印刷し、印刷したパッチの測色結果に基づいて作成される。
・・・
【0053】
・・・Nが3又は4の場合(特色を利用する場合)に利用される色変換プロファイルを「多色プロファイル」(多色プロファイル151)と表記する場合がある。多色プロファイル151及び基本色プロファイル152は、記憶装置105に予め格納される。」
(b)「【0109】
・・・熱転写印刷には、複数色を重ねて印刷するときに先に転写した染料(以下、先刷り染料)の一部が受像紙12から抜けてしまう現象(以下、キックバック)が生じるため、この現象に伴う非線形特性も考慮する必要がある。以下の説明では、キックバックにより先刷り染料が減少する性質を「減色特性」と表記する場合がある。
・・・
【0112】
下記の式(9)に含まれるW(t1,t2)は、キックバックによる先刷り染料q1の減少量を示す指標(以下、減色係数)である。」
(c)「【0130】
以下、図10及び図11を参照しながら、本実施形態に係る特色の選択方法について、さらに説明する。・・・
【0140】
(S209)シミュレーション装置30は、S205で取得した単色印刷時の分光濃度Dq(t,λ)を利用し、上記の式(9)に基づいて減色係数W(t1,t2)を計算する。
・・・
【0142】
(S211)・・・
【0143】
また、シミュレーション装置30は、減色係数W(t1,t2)及び単色の分光濃度Dq(tq,λ)に基づいて、{Y、M、C、c1、…、cM}から選択された2以上の色による混色の分光濃度を計算する。・・・
【0145】
(S212)シミュレーション装置30は、既知の光源分光分布及び等色関数を用いて、S211で計算した各分光反射率を標準色空間の表色値に変換する。・・・
【0146】
(S213)シミュレーション装置30は、標準色空間における表色値の分布から色域の形状及び色域のサイズを特定する。
・・・
【0149】
(S215)シミュレーション装置30は、S213で今回特定した色域サイズが過去にS213で特定した色域サイズ(既に保持している色域サイズ)より大きい場合に、既に保持している色域サイズに代えて、今回特定した色域サイズを保持する。既に保持している色域サイズの方が今回特定した色域サイズより大きい場合、シミュレーション装置30は、既に保持している色域サイズを保持し続ける。
・・・
【0151】
(S217)シミュレーション装置30は、保持している色域サイズに対応する候補色セット(最大色域の候補色セット)を示す情報を保存する。つまり、限られた数Nの特色を用いて色域を効果的に拡張できる候補色の組み合わせが選択される。S217の処理が完了すると、図10及び11に示した一連の処理は終了する。」
b 前記a(b)から、明細書等には、複数色を重ねて印刷するときに先に転写した染料の一部が受像紙12から抜けてしまう減少量を示す減色係数W(t1,t2)が記載されていると認められる。前記a(c)から、明細書等には、減色係数W(t1,t2)及び単色の分光濃度Dq(tq,λ)に基づいてコンピュータシミュレーション装置30が色域のサイズを特定し、最も大きい色域サイズに対応する候補色セット(最大色域の候補色セット)を選択することが記載されており、当該候補色セットは前記a(c)の【0130】と前記イ(ウ)に摘記した【0026】、【0134】、【0141】等の記載から、有彩色(特色)の組み合わせについてのものと認められる。前記a(a)から、明細書等には、当該有彩色(特色)の組み合わせを有するインクリボンに基づいて作成された多色プロファイルが記憶装置に予め格納されることが記載されていると認められる。
したがって、訂正事項1-3は、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
エ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
オ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が「請求項1~4のいずれか1項」を引用していたところ、「請求項1」のみ引用するように、請求項の引用請求項数を削減するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、請求項の引用請求項数を削減するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項の引用請求項数を削減するものにすぎないから、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(3)請求項7に係る訂正について
ア 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項7を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(4)請求項8に係る訂正について
ア 訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項8を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(5)請求項9に係る訂正について
ア 訂正事項6-1について
(ア)訂正の目的について
本件訂正前の請求項9の「事前設定された数N以下の利用可能な有彩色」との記載では、「事前設定された数N」が何の数であるのか、別の言い方をすると「事前設定された数N以下」との記載があることで「利用可能な有彩色」のどのような構成が特定されるのか、不明であったところ、訂正事項6-1は、Nが「候補色として事前設定された」色の数であって、「利用可能な有彩色」が「候補色として事前設定されたN色」のものであることを明確にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6-1は、「利用可能な有彩色」が「候補色として事前設定されたN色」のものであることを明確にする訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項6-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項1と請求項9とは、「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタ」と「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する方法」と発明のカテゴリーが異なるが、請求項1に係る訂正事項1-1と請求項9に係る訂正事項6-1との実質的な訂正内容は同じであるから、前記(2)ア(ウ)と同様に、訂正事項6-1も、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
イ 訂正事項6-2について
(ア)訂正の目的について
本件訂正前の請求項9の熱転写印刷が利用する「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数であり選択された「利用可能な有彩色」の色数でもある色数を、訂正事項6-2は「M色」と特定した上で、当該Mの数値範囲が「Mは2以上の整数であり、M<Nであ」ることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6-2は、本件訂正前の請求項9の熱転写印刷が利用する「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数であり選択された「利用可能な有彩色」の色数でもある色数を、「M色」と特定した上で、当該Mの数値範囲が「Mは2以上の整数であり、M<Nであ」ることを限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項6-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項1と請求項9とは、「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタ」と「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する方法」と発明のカテゴリーが異なるが、請求項1に係る訂正事項1-2と請求項9に係る訂正事項6-2との実質的な訂正内容は同じであるから、前記(2)イ(ウ)と同様に、訂正事項6-2も、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事6-3について
(ア)訂正の目的について
請求項9に係る「方法」における「インクリボンにおける有彩色の組み合わせを選択すること」が、本件訂正前は「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーションを利用」することまでしか特定されていなかったところ、訂正事項6-3は、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用」することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6-3は、本件訂正前の請求項9の「方法」において利用する「コンピュータシミュレーション」について限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項6-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項1と請求項9とは、「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタ」と「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する方法」と発明のカテゴリーが異なるが、請求項1に係る訂正事項1-3と請求項9に係る訂正事項6-3との実質的な訂正内容は同じであるから、前記(2)ウ(ウ)と同様に、訂正事項6-3も、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(6)請求項10に係る訂正について
ア 訂正事項7-1について
(ア)訂正の目的について
本件訂正前の請求項10の「事前設定された数N以下の利用可能な有彩色」との記載では、「事前設定された数N」が何の数であるのか、別の言い方をすると「事前設定された数N以下」との記載があることで「利用可能な有彩色」のどのような構成が特定されるのか、不明であったところ、訂正事項7-1は、Nが「候補色として事前設定された」色の数であって、「利用可能な有彩色」が「候補色として事前設定されたN色」のものであることを明確にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7-1は、「利用可能な有彩色」が「候補色として事前設定されたN色」のものであることを明確にする訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項7-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項1と請求項10とは、「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタ」と「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する装置」と発明の対象が異なるが、請求項1に係る訂正事項1-1と請求項10に係る訂正事項7-1との実質的な訂正内容は同じであるから、前記(2)ア(ウ)と同様に、訂正事項7-1も、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
イ 訂正事項7-2について
(ア)訂正の目的について
本件訂正前の請求項10の熱転写印刷が利用する「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数の色数であり選択された「有彩色の組み合わせ」の色数でもある色数を、訂正事項7-2は、「M色」と特定した上で、当該Mの数値範囲が「Mは2以上の整数であり、M<Nであ」ることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7-2は、本件訂正前の請求項10の熱転写印刷が利用する「インクリボン」が有する「有彩色のインク層」の色数であり選択された「有彩色の組み合わせ」の色数でもある色数を、「M色」と特定した上で、当該Mの数値範囲が「Mは2以上の整数であり、M<Nであ」ることを限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項7-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項1と請求項10とは、「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタ」と「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する装置」と発明の対象が異なるが、請求項1に係る訂正事項1-2と請求項10に係る訂正事項7-2との実質的な訂正内容は同じであるから、前記(2)イ(ウ)と同様に、訂正事項7-2も、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項7-3について
(ア)訂正の目的について
請求項10に係る「装置」における「インクリボンにおける有彩色の組み合わせを選択するプロセッサ」が、本件訂正前は「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーションを利用」することまでしか特定されていなかったところ、訂正事項7-3は、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用」することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7-3は、本件訂正前の請求項10の「装置」において「インクリボンにおける有彩色の組み合わせを選択するプロセッサ」が利用する「コンピュータシミュレーション」について限定する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張するものではなく、発明の対象やカテゴリー、目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項7-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項1と請求項10とは、「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタ」と「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する装置」と発明の対象が異なるが、請求項1に係る訂正事項1-3と請求項10に係る訂正事項7-3との実質的な訂正内容は同じであるから、前記(2)ウ(ウ)と同様に、訂正事項7-3も、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(7)特許出願の際に独立して特許を受けることができるか否か
本件においては、訂正前の全ての請求項1~10について特許異議申立てがなされているので、訂正前の請求項1~10に、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(8)訂正の適否のまとめ
令和6年2月5日に特許権者が行った本件訂正は、訂正事項1-1~7-3に関して、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~10について訂正を認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~10に係る発明(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明10」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタであって、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写プリンタで最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nであり、前記熱転写プリンタは、
前記インクリボンを加熱するためのサーマルヘッドと、
指定された色を、前記基本色群に含まれる色と前記有彩色との混色で再現するための第1のプロファイル情報が格納される記憶部と、
前記指定された色が印刷媒体上で表現されるように前記第1のプロファイル情報に基づいて前記サーマルヘッドを制御する制御部と
を備え、前記記憎部は、印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された前記第1のプロファイル情報を格納する熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、L*a*b*色空間におけるa*-b*平面の第2象限及び第4象限で色域が拡張される有彩色の組み合わせである、
請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、グリーン及びブルーを含む、
請求項2に記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記記憶部には、前記指定された色を、前記基本色群に含まれる色の混色で再現するための第2のプロファイル情報が格納され、
前記制御部は、前記熱転写プリンタの動作モードが第1の動作モードに設定されているとき、前記第1のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御し、前記熱転写プリンタの動作モードが第2の動作モードに設定されているとき、前記第2のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御する
請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、前記熱転写プリンタの動作モードが前記第2の動作モードに設定されているとき、前記インクリボンの前記基本色群のインク層のみを利用し、前記指定された色が印刷媒体上で表現されるように前記第2のプロファイル情報に基づいて前記サーマルヘッドを制御する
請求項5に記載の熱転写プリンタ。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する方法であって、前記方法は、
印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせを選択することであって、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nである、こと、
を含む、方法。
【請求項10】
イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する装置であって、前記装置は、
印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせを選択するプロセッサを含み、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nである、装置。」
第4 取消理由
訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、令和5年12月1日付け取消理由通知で通知した取消理由は、以下の理由を含むものである。
取消理由1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由4(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由5(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 当審の判断
1 取消理由1(明確性)について
(1)請求項1~3、5、6
ア 請求項1には、「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なる有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタ」の発明であることが特定された上で、「前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写プリンタで最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり」との事項(以下、記載事項1という。)が記載されている。さらに、請求項1には、「前記熱転写プリンタは、」「指定された色を、前記基本色群に含まれる色と前記有彩色との混色で再現するための第1のプロファイル情報が格納される記憶部」を備えることが特定された上で、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された前記第1のプロファイル情報」との事項(以下、記載事項2という。)が記載されている。
イ まず、前記記載事項1について検討する。
前記記載事項1は、インクリボンの有彩色の組み合わせが、どのように選択されるかというインクリボンの有彩色の組み合わせの選択方法を特定しようとするものといえるが、請求項1に係る発明は熱転写プリンタの発明である。請求項1に記載のインクリボンは熱転写プリンタにより利用される対象ではあるものの、熱転写プリンタが備える構成の一部として特定されているものではないので、前記記載事項1により「熱転写プリンタ」自体のどのような構造若しくは機能を特定しているのか明確でない。
例えば、基本色群と前記記載事項1により選択されたレッド、グリーンの有彩色の組み合わせを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタと、前記基本色群と前記記載事項1による選択がなされずに用意されたレッド、グリーンの有彩色の組み合わせを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタとは、熱転写プリンタという物としての構造や機能は同じなので、前記記載事項1により熱転写プリンタ自体の構造若しくは機能が特定されると認めることはできない。
ウ 次に、前記記載事項2について検討する。
前記記載事項2に記載の「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された」との事項は、記憶部に格納される第1のプロファイル情報の作成方法を特定しようとするものといえる。しかし、前記記載事項2が特定しようとする第1のプロファイル情報の作成方法が、請求項1に係る発明の構成要素である「前記第1のプロファイル情報」自体のどのような構造若しくは機能を特定しているのか明確でない。
例えば、前記記載事項2に記載の作成方法により選択された有彩色の組み合わせ(例えば、レッド、グリーン)と基本色群とに基づいて作成された第1のプロファイル情報と、前記記載事項2に記載の作成方法によらずに用意された有彩色の組み合わせ(例えば、レッド、グリーン)と基本色群とに基づいて作成された第1のプロファイル情報とは、同じ有彩色の組み合わせ(例えば、レッド、グリーン)であれば同じ第1のプロファイル情報となり得て、両者におけるプロファイル情報の構造や機能の違いは判別し得ないから、前記記載事項2に記載の第1のプロファイル情報の作成方法により請求項1に係る発明の構成要素である「第1のプロファイル情報」自体の構造若しくは機能が特定されると認めることはできない。
エ よって、本件訂正発明1は明確でない。
請求項1を引用する請求項2、3、5、6に係る本件訂正発明2、3、5、6についても、同様に明確でない。
2 取消理由4(新規性)について
(1)証拠について
ア 甲第1号証
本願の出願前の平成2年9月21日に公開された特開平2-238990号公報(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下、同じ。)。
(ア)甲1に記載の事項
a 1頁右下欄19行-2頁左上欄6行
「[産業上の利用分野]
この発明は,被印刷面にフルカラーの印刷を行うフルカラ一画像印刷方法に関する。
近年、電子処理による画像処理が進歩して、その出力信号などから、階調記録可能な熱転写フルカラー印刷などが行われるようになってきている。」
b 2頁右上欄6行-左下欄10行
「[発明が解決しようとする課題]
しかし,上述のようにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色の色材によってフルカラーを表現しようとすると、それら4色の成分は原画に忠実に再現されるが、光の三原色であるレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の3色の成分は色の再現範囲が制限されて狭くなってしまう。
例えば、ディスプレイ画面からのハードコピーとして、フルカラー記録画像を得るには、光の3原色であるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)を効率良くイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)に変換し、表現することが望まれる。ところが、従来の記録方法では、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の透過光をイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の反射光で換算しているため、どうしてもレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の色再現範囲に制限を受け、原画に忠実なフルカラー記録画像を得られないという欠点があった.
この発明は、そのような従来の欠点を解消し、全色成分の範囲にわたって色再現性のよいフルカラー画像印刷方法を提供することを目的とする。」
c 3頁左上欄1行-右上欄17行
「 第3図中、11は、カラー原稿l2をスキャンして光の三原色であるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の三色成分の電気信号を出力する三色分解部である。
13は、そのレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の信号を印刷の三原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三色成分の電気信号に変換して出力する三色変換部である。ここまでの構成は公知なので,その詳細な説明は省略する。
l4は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三色成分の信号をイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の七色の成分の信号に変換して出力する七色変換部である。
・・・
インクシ一ト20は、この実施例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)ブルー(B)の七色のシートを順次並べたものである。第2図はインクシート20の断面構造を示しており,21は、厚さ5μmのPETフィルムからなる基材、22は、基材21上にバーコータ塗布装置により塗布形成された厚さ1μmのポリエステル樹脂よりなる中間接着層である。23はインク層であり,充填材のカーボンブラック24と、低融点材と染料とを混合してなるインク材料(色材)25を、バーコータ塗布装置で塗布することで形成されている.」
d 4頁右上欄13-17行
「 第3図に戻って、30は印刷用紙であり、回転ドラム3lの外周に載せられていて、インクシ一ト20がサーマルヘッドl5で各ドット毎に加熱して押しつけられ、各色ごとの熱転写印刷が重ね合わせて行われる。」
e 4頁左下欄5-6行
「 また階調記録を得るために熱転写記録装置のサーマルヘッドに印加する印加電力を・・・」
f 4頁左下欄15行-5頁左下欄12行
「第4図及び第5図は、熱転写カラー印刷を行うに際して、七色変換部l4で行われる色成分の信号の変換を例示したものである。
即ち、第4図に示されるように、七色変換部l4にイエロー(Y)とマゼンタ(M)だけが入力したときには、そのイエロー(Y)とマゼンタ(M)を同レベル分だけレッド(R)に置換して、その残り(この場合の入力はY>MなのでYが残る)を、元の色成分Yのまま出力している。
また、第5図に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)が入力するときには、その三原色の存在するレベル分をブラック(K)に置換し、残った二色(この場合にはYとM)の成分を同レベル分だけその合成色(この場合にはR)で置換し、さらに最後に残る一色の成分(この場合にはY)を、元の色成分のまま出力している。
このようにして七色の色信号に変換された出力信号がサーマルヘッド15に送られる。そして、サーマルヘッド15は、各色のシート別にその入力信号に応じた熱エネルギをインクシ一トに印加する。その結果、各色別に印刷用紙30に階調記録が行われ、それが重ね合わされてフルカラー印刷が行われる。
第6図は、そのようにしてブルカラー印刷を行ったときの色再現性を、色度座標で示したものである。破線は従来のYMC方式の場合を示している。このように、本実施例では、RGBの色再現の範囲が拡大し、ディスプレイなどと同等の色再現範囲を得ることができる。
なお、上記実施例においては、七色変換部14において、少ない色成分のレベルにあわせて、そのレベルを全て黒又はRGBに変換したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、従来公知の下色除去の際の墨版への置換と同様に、YMC各色の色成分の一部をRGBに置換し、一部はそのまま残すようにしてもよい。」
g 5頁左上欄19行-右上欄6行
「 本発明のフルカラー画像印刷方法によれば、色再現範囲の広範な記録画像が得られ、しかもレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の3色についてみれば転写濃度も高く、色相面でも理想的なRGB色を表現することができる。これにより、高品位なフルカラー記録画像を実現することができる。」
h
「
[図:0001418212000001.jpg]
」
「
[図:0001418212000002.jpg]
」
(イ)甲1の記載から把握できる事項
上記h第6図と上記fから、フルカラー印刷を行ったときの色再現範囲は、色度座標において、従来のYMC方式の場合の色度空間を全て含んで、従来のYMC方式よりも色度空間が拡大することが看取できる。
(ウ)甲1発明
上記(ア)及び(イ)から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)ブルー(B)の七色のインク層23を有するインクシート20を利用する熱転写記録装置であって、前記熱転写記録装置は、
前記インクシート20を加熱するためのサーマルヘッドと、
レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の信号を印刷の三原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三色成分の電気信号に変換して出力する三色変換部13と、
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三色成分の信号をイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の七色の成分の信号に変換して出力する七色変換部14と、を備え、
前記七色変換部14から出力された信号に基づいて前記サーマルヘッドにより印刷用紙30にフルカラー印刷を行い、
当該フルカラー印刷を行ったときの色再現範囲は、色度座標において、従来のYMC方式の場合の色度空間を全て含んで、従来のYMC方式よりも色度空間が拡大する、熱転写記録装置。」
イ 甲第3号証
本願の出願前の平成5年8月3日に公開された特開平5-193166号公報(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)甲3に記載の事項
a 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の基本色の他に、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)、BK(ブラック)の色を追加したカラーの熱転写記録装置に関するものである。」
b 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来の熱転写記録装置では、使用しているインクシートのバインダー剤の透過率が低く、基本色であるイエロー、マゼンタ及びシアンの3色を複数重ねることにより基本色以外の色を再現しているため、印画紙のインク層が厚くなり色材からの十分な反射光を得ることができない、すなわち、完全な混色状態が得られないという問題点があった。
【0007】この発明は、前述した問題点を解決するためになされたもので、色再現性を向上することができる熱転写記録装置を得ることを目的とする。」
c 「【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係る熱転写記録装置は、次に掲げる手段を備えたものである。
〔1〕 入力された3色のRi、Gi及びBi信号のレベルを比較して最大値、中間値及び最小値を決定し、前記最大値から前記中間値を減算することによりRo、Go及びBoデータを生成し、前記中間値から前記最小値を減算することによりYo、Mo及びCoデータを生成し、かつ最大階調レベルから前記最小値を減算することによりBKoデータを生成する色変換手段。
〔2〕 イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックの7色が塗布されたインクシートを画面単位で駆動するインクシート駆動手段。
〔3〕 前記インクシートにより前記各出力データを印画紙に記録する記録手段。」
d 「【0013】ところで、この発明の色変換手段は、前述したこの発明の実施例1では外部インタフェイス1、CPU3及び色変換回路4Aから構成され、この発明のインクシート駆動手段は、実施例1ではインクシート駆動部5Aに相当し、この発明の記録手段は、実施例1ではヘッド駆動回路6及び印字ヘッド7から構成されている。」
e 「【0020】この発明の実施例1は、前述したように、3色の入力Ri、Gi、Bi信号から7色の出力Yo、Mo、Co、Ro、Go、Bo、BKo信号を生成する色変換回路4A、及びイエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー、ブラックの7色のインクシート8を搬送駆動するインクシート駆動部5Aを備えているので、各色でのインク層厚が一定で薄くなることにより、入射された光に対して色材からの十分な光量の反射光を得ることができ、色再現性を向上することができるという効果を奏する。」
(イ)甲3発明
上記アから、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックの7色が塗布されたインクシートを利用する熱転写記録装置であって、
前記熱転写記録装置は、
3色の入力Ri、Gi、Bi信号から7色の出力Yo、Mo、Co、Ro、Go、Bo、BKoデータを生成する色変換回路4Aと、
前記インクシートにより前記各出力データを印画紙に記録する記録手段である印字ヘッド7を備え、色再現性を向上することができる熱転写記録装置。」
ウ 参考文献2
本願の出願前の平成19年8月16日に公開された特開2007-208582号公報(以下「参考文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)参考文献2に記載の事項
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対してハーフトーン処理を行う技術に関するものであり、特に、出力するドットのサイズを多値化してハーフトーン処理を行う技術に関する。」
b 「【0005】
しかし、画質の向上の要求は留まることがなく、より多くの種類のインク滴を使い分けることによって、画質の向上を図りたいといった要請があった。
【0006】
かかる要請に応えるために、より多くの種類のインク滴を吐出するには、ピエゾ素子の駆動制御をより精密に行うことにより達成することができる。しかし、画像の中間調の色を、各サイズのドットの粗密で表すハーフトーン処理を行う際には、今まで、4値化で済んでいた処理を、例えば、6値化することが必要となり、このような処理を行うためのハードウェアやソフトウェアを新たに設計する必要性が生じていた。
【0007】
このような問題は、ピエゾ素子によってインクを吐出する印刷方式による多値化に限らず、例えば、インクヘッド内のインク通路に泡を生じさせてインクを吐出する印刷方式による多値化や、ドットインパクト、熱転写、レーザー方式等によってドットを多値化する場合にも同様に生じ得る問題であった。」
c 「【0036】
プリンタ100は、後述するように、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロ(Y)、ブラック(K)の6色のインクを用いて、カラー印刷を行う機能を有している。また、この6色のインクのうち、淡インク色系のライトシアン(LC)とライトマゼンタ(LM)とを省き、濃インク色系の他の4色によってカラー印刷を行う機能も有している。・・・」
d 「【0050】
色変換ユニット300は、R,G,Bの階調値の組み合わせによって表現されている画像データの色を、キャリッジ210に備えられたインク各色についての階調値の組み合わせによって表現された色に変換する回路である。前述したように、プリンタ100は、C,M,Y,K,Lc,Lmの最大6色のインクを用いて画像を印刷する。そこで、色変換ユニット300は、RGB各色によって表現された画像データを、これら6色の階調値によって表現された画像データに変換する。
【0051】
色変換ユニット300は、RAM152に記憶された色変換テーブルLUTと呼ばれるテーブルを参照することで前述した色変換を行う。この色変換テーブルLUTには、RGBの階調値とCMYKLcLmの階調値とが予め対応付けて記憶されている。色変換ユニット300は、この色変換テーブルLUTを参照することにより、RGB形式によって表された画像データを、迅速にCMYKLcLm形式の画像データに変換することができる。色変換後の画像データは、各色、256階調(0~255)の階調値を有するものとする。
【0052】
なお、本実施例のプリンタ100は、印刷モードとして、6色(CMYKLcLm)のインクを用いて印刷を行うモードと、4色(CMYK)のインクを用いて印刷を行うモードとを有している。そのため、色変換ユニット300は、操作パネル140を通じてユーザによって設定された印刷モードに応じて、色変換に用いる色変換テーブルLUTを切り換え、RGB形式の画像データを、CMYKLcLm形式、もしくは、CMYK形式の画像データに変換する。・・・」
(イ)参考文献2の記載から把握できる事項
基本色(CMY)に加えて基本色(CMY)以外の有彩色インクを使用可能で色変換テーブルLUTを記憶するプリンタにおいて、有彩色として基本色のみのインク(CMY)を用いて印刷を行うモードと、有彩色として基本色に加えて基本色以外の色のインク(LcLm)も用いて印刷を行うモードとを有し、ユーザによって設定された前記印刷モードに応じて、色変換テーブルLUTを切り替えることは、例えば上記(ア)c及びdに記載のように、周知技術(以下「周知技術2」という。)である。
(2)本件訂正発明1
ア 上述の取消理由1(明確性)が存在するので、請求項1に記載の「前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写プリンタで最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nであり」とは、「前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、M色で構成される有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり」と善解し、また、請求項1に記載の「前記記憶部は、印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された前記第1のプロファイル情報を格納する」とは、「前記記憶部は、前記有彩色の組み合わせに基づいて作成された前記第1のプロファイル情報を格納する」と善解して、以下検討する。
イ 甲1発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)ブルー(B)の七色のインク層23を有するインクシート20」、「前記インクシート20を加熱するためのサーマルヘッド」及び「熱転写記録装置」は、本件訂正発明1の「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「前記インクリボンを加熱するためのサーマルヘッド」及び「熱転写プリンタ」に相当する。
甲1発明の「インクシート20」は、レッド(R)、グリーン(G)ブルー(B)のインク層23を有するので、本件訂正発明1の「インクリボン」と甲1発明の「インクシート20」とは、有彩色のインク層の色数であるMが、3の整数である点で一致する。
したがって、上記(2)アを踏まえて、本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、両者は、
<一致点>
「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタであって、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写プリンタで最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nであり、前記熱転写プリンタは、
前記インクリボンを加熱するためのサーマルヘッドと、
を備える、熱転写プリンタ。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
<一応の相違点1>
本件訂正発明1は、「指定された色を、前記基本色群に含まれる色と前記有彩色との混色で再現するための第1のプロファイル情報が格納される記憶部と、前記指定された色が印刷媒体上で表現されるように前記第1のプロファイル情報に基づいて前記サーマルヘッドを制御する制御部」を備え「前記記憶部は、印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された前記第1のプロファイル情報を格納する」のに対して、甲1発明はそのような構成を有するか明らかでない点。
しかし、甲1発明は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の信号を印刷の三原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三色成分の電気信号に変換して出力する三色変換部13と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三色成分の信号をイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の七色の成分の信号に変換して出力する七色変換部14を備えているので、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の三色成分の信号をイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の七色の成分の信号に変換しており、この変換に用いるためのレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の有彩色の組み合わせに基づいて作成された情報を記憶していることは明らかである。そして、当該情報はプロファイル情報とみることができるので、甲1発明が有彩色の組み合わせに基づいて作成されたプロファイル情報を格納する記憶部を備えていることは自明である。また、甲1発明は、前記七色変換部14から出力された信号に基づいて前記サーマルヘッドにより印刷用紙30にフルカラー印刷が行うので、そのようなフルカラー印刷を制御する制御部を有することは自明である。
よって、上記(2)アも踏まえると、上記一応の相違点1は、実質的な相違点とはいえないから、本件訂正発明1と甲1発明とに差異はない。
ウ 甲3発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックの7色が塗布されたインクシート」、「前記インクシートにより前記各出力データを印画紙に記録する記録手段である印字ヘッド7」及び「熱転写記録装置」は、本件訂正発明1の「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボン」、「前記インクリボンを加熱するためのサーマルヘッド」及び「熱転写プリンタ」に相当する。
したがって、上記(2)アを踏まえて、本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、両者は、
<一致点>
「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写プリンタであって、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写プリンタで最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nであり、前記熱転写プリンタは、
前記インクリボンを加熱するためのサーマルヘッドと、
を備える、熱転写プリンタ。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
<一応の相違点2>
本件訂正発明1は、「指定された色を、前記基本色群に含まれる色と前記有彩色との混色で再現するための第1のプロファイル情報が格納される記憶部と、前記指定された色が印刷媒体上で表現されるように前記第1のプロファイル情報に基づいて前記サーマルヘッドを制御する制御部」を備え「前記記憶部は、印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して選択される前記有彩色の組み合わせについての選択結果に基づいて作成された前記第1のプロファイル情報を格納する」のに対して、甲3発明はそのような構成を有するか明らかでない点。
しかし、甲3発明は、3色の入力Ri、Gi、Bi信号から7色の出力Yo、Mo、Co、Ro、Go、Bo、BKo信号を生成する色変換回路4Aを備えているので、Ri、Gi、Bi信号を7色の出力Yo、Mo、Co、Ro、Go、Bo、BKo信号に変換しており、この変換に用いるためのRo、Go、Boの有彩色の組み合わせに基づいて作成された情報を記憶していることは明らかである。そして、当該情報はプロファイル情報とみることができるので、甲3発明が有彩色の組み合わせに基づいて作成されたプロファイル情報を格納する記憶部を備えていることは自明である。また、甲3発明は、色変換回路4Aからの出力データを印画紙に記録するので、そのような記録を制御する制御部を有することは自明である。
よって、上記(2)アも踏まえると、上記一応の相違点2は,実質的な相違点とはいえないから、本件訂正発明1と甲3発明とに差異はない。
(3)本件訂正発明2について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
甲1発明において「フルカラー印刷を行ったときの色再現範囲は、色度座標において、従来のYMC方式の場合の色度空間を全て含んで、従来のYMC方式よりも色度空間が拡大する」ことから、L*a*b*色空間におけるa*-b*平面でも、すべての象限で色域は拡張していると解される。
よって、上記(2)イを踏まえると、本件訂正発明2と甲1発明とに差異はない。
イ 甲3発明を主引用発明とした場合
甲3発明の熱転写記録装置は、「イエロー、マゼンタ、シアンに加え、レッド、グリーン、ブルー及びブラックを有するインクシートを利用」し、「色再現性を向上することができる」ので、イエロー、マゼンタ、シアン3色のインクシートを利用する場合に比べて、L*a*b*色空間におけるa*-b*平面における第2象限及び第4象限で色域が拡張されている蓋然性が極めて高い。
よって、上記(2)ウを踏まえると、本件訂正発明2と甲3発明とに差異はない。
(4)本件訂正発明3について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
甲1発明のインクシート20は、グリーン(G)、ブルー(B)のインク層23を有する。
よって、上記(2)イ及び上記(3)アから、本件訂正発明3と甲1発明とに差異はない。
イ 甲3発明に対して
甲3発明のインクシートは、グリーン、ブルーを有する。
よって、上記(2)ウ及び上記(3)イから、本件訂正発明3と甲3発明とに差異はない。
3 取消理由5(進歩性)について
(1)証拠について
「2 取消理由4(新規性)」の上記(1)を参照。
(2)本件訂正発明1について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明1と甲1発明との対比は、「2 取消理由4(新規性)」の上記(2)イのとおりであり、仮に、「2 取消理由4(新規性)」の上記(2)イの一応の相違点1が実質的な相違点であったとしても、熱転写記録装置において、指定された色を、複数色のインク層を有するインクリボンで印刷するために、プロファイル情報を記憶しておくことは、技術の具体的適用に伴う設計的事項であるから、本件訂正発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 甲3発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明1と甲3発明との対比は、「2 取消理由4(新規性)」の上記(2)ウのとおりであり、仮に、「2 取消理由4(新規性)」の上記(2)ウの一応の相違点2が実質的な相違点であったとしても、熱転写記録装置において、指定された色を、複数色のインク層を有するインクリボンで印刷するために、プロファイル情報を記憶しておくことは、技術の具体的適用に伴う設計的事項であるから、本件訂正発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正発明2について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明2と甲1発明との対比は、「2 取消理由4(新規性)」の上記(3)アのとおりであるが、仮に両者が「インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、L*a*b*色空間におけるa*-b*平面の第2象限及び第4象限で色域が拡張される有彩色の組み合わせである」点で相違するとしても、甲1発明において「当該フルカラー印刷を行ったときの色再現範囲は、色度座標において、従来のYMC方式の場合の色度空間を全て含んで、従来のYMC方式よりも色度空間が拡大する」ものであるから、色再現性をより向上するために、少なくともL*a*b*色空間におけるa*-b*平面における第2象限及び第4象限で色域が拡張されようにすることは設計的事項の範囲でなし得ることである。したがって、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(2)アも踏まえると、本件訂正発明2は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 甲3発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明2と甲3発明との対比は、「2 取消理由4(新規性)」の上記(3)イのとおりであるが、仮に両者が「インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、L*a*b*色空間におけるa*-b*平面の第2象限及び第4象限で色域が拡張される有彩色の組み合わせである」点で相違するとしても、甲3発明において「色再現性を向上する」という効果を高めるために、少なくともL*a*b*色空間におけるa*-b*平面における第2象限及び第4象限で色域が拡張されようにすることは設計的事項の範囲でなし得ることである。したがって、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(2)イも踏まえると、本件訂正発明2は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件訂正発明3について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明2と甲1発明との対比は、「2 取消理由4(新規性)」の上記(4)アのとおりであり、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(2)ア及び上記(3)アから、本件訂正発明3は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 甲3発明を主引用発明とした場合
本件訂正発明3と甲3発明との対比は、「2 取消理由4(新規性)」の上記(4)イのとおりであり、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(2)イ及び上記(3)イから、本件訂正発明3は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件訂正発明5について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
(ア)本件訂正発明5と甲1発明とを対比すると、両者は、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件訂正発明5である熱転写プリンタの「記憶部には、前記指定された色を、前記基本色群に含まれる色の混色で再現するための第2のプロファイル情報が格納され、前記制御部は、前記熱転写プリンタの動作モードが第1の動作モードに設定されているとき、前記第1のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御し、前記熱転写プリンタの動作モードが第2の動作モードに設定されているとき、前記第2のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御する」のに対して、甲1発明の熱転写記録装置は、「指定された色を基本色群に含まれる色の混色で再現するための第2のプロファイル情報」を格納しておらず、「熱転写プリンタの動作モードが第1の動作モードに設定されているとき、前記第1のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御し、前記熱転写プリンタの動作モードが第2の動作モードに設定されているとき、前記第2のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御する」ことは行われていない点。
(イ)上記相違点3-1について検討する。
周知技術2における「有彩色として基本色のみのインク(CMY)を用いて印刷を行うモード」と「有彩色として基本色に加えて基本色以外の色のインク(LcLm)も用いて印刷を行うモード」は、それぞれ、本件訂正発明5における「第2の動作モード」と「第1の動作モード」に相当する。周知技術2において、プリンタが「ユーザによって設定された前記印刷モードに応じて、色変換テーブルLUTを切り替える」からには、「有彩色として基本色のみのインク(CMY)を用いて印刷を行うモード」用の「色変換テーブルLUT」と、「有彩色として基本色に加えて基本色以外の色のインク(LcLm)も用いて印刷を行うモード」用の「色変換テーブルLUT」とを記憶している必要があることは明らかである。してみると、上記相違点3-1の事項は、周知技術2である。
(ウ)甲1発明と周知技術2は、基本色(CMY)に加えて基本色(CMY)以外の有彩色インクを使用可能なプリンタである点で共通している。イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)ブルー(B)の七色のインク層23を有するインクシート20を利用する熱転写記録装置である甲1発明において、ユーザの求める色再現性のレベル(画質の向上)に応じて使用する色を切り替えるよう、上記周知技術2を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(2)アを踏まえると、本件訂正発明5は、甲1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 甲3発明を主引用発明とした場合
(ア)本件訂正発明5と甲3発明とを対比すると、両者は、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
本件訂正発明5である熱転写プリンタの「記憶部には、前記指定された色を、前記基本色群に含まれる色の混色で再現するための第2のプロファイル情報が格納され、前記制御部は、前記熱転写プリンタの動作モードが第1の動作モードに設定されているとき、前記第1のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御し、前記熱転写プリンタの動作モードが第2の動作モードに設定されているとき、前記第2のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御する」のに対して、甲3発明の熱転写記録装置は、「指定された色を基本色群に含まれる色の混色で再現するための第2のプロファイル情報」を格納しておらず、「熱転写プリンタの動作モードが第1の動作モードに設定されているとき、前記第1のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御し、前記熱転写プリンタの動作モードが第2の動作モードに設定されているとき、前記第2のプロファイル情報を用いて前記サーマルヘッドを制御する」ことは行われていない点。
(イ)上記相違点4-1について検討する。
上記相違点4-1の事項が、周知技術2であることは、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(5)ア(イ)と同様である。
(ウ)甲3発明と周知技術2は、基本色(CMY)に加えて基本色(CMY)以外の有彩色インクを使用可能なプリンタである点で共通している。イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックの7色が塗布されたインクシートを利用する熱転写記録装置である甲3発明において、ユーザの求める色再現性のレベル(画質の向上)に応じて使用する色を切り替えるよう、上記周知技術2を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(2)イを踏まえると、本件訂正発明5は、甲1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件訂正発明6について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
(ア)本件訂正発明6と甲1発明とを対比すると、両者は、上記相違点3-1に加え、以下の点で相違する。
<相違点3-2>
本件訂正発明6である熱転写プリンタの「制御部は、前記熱転写プリンタの動作モードが前記第2の動作モードに設定されているとき、前記インクリボンの前記基本色群のインク層のみを利用し、前記指定された色が印刷媒体上で表現されるように前記第2のプロファイル情報に基づいて前記サーマルヘッドを制御する」のに対して、甲1発明の熱転写記録装置は、そのような制御を行っていない点。
(イ)上記相違点3-2について検討する。
周知技術2における「有彩色として基本色のみのインク(CMY)を用いて印刷を行うモード」は、本件訂正発明5における「第2の動作モード」に相当する。周知技術2であるプリンタは、「ユーザによって設定された前記印刷モードに応じて、色変換テーブルLUTを切り替える」からには、「有彩色として基本色のみのインク(CMY)を用いて印刷を行うモード」に設定されているとき、基本色のみのインク(CMY)を用いて「有彩色として基本色のみのインク(CMY)を用いて印刷を行うモード」用の「色変換テーブルLUT」に基づいて、指定された色を印刷媒体上に表現することは明らかである。してみると、上記相違点3-2の事項は、周知技術2である。
(ウ)甲1発明と周知技術2は、基本色(CMY)に加えて基本色(CMY)以外の有彩色インクを使用可能なプリンタである点で共通している。イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)ブルー(B)の七色のインク層23を有するインクシート20を利用する熱転写記録装置である甲1発明において、ユーザの求める色再現性のレベル(画質の向上)に応じて使用する色を切り替えるよう、上記周知技術2を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、上記(2)ア及び上記(5)アを踏まえると、本件訂正発明6は、甲1発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 甲3発明を主引用発明とした場合
(ア)本件訂正発明6と甲3発明とを対比すると、両者は、上記相違点4-1に加え、以下の点で相違する。
<相違点4-2>
本件訂正発明6である熱転写プリンタの「制御部は、前記熱転写プリンタの動作モードが前記第2の動作モードに設定されているとき、前記インクリボンの前記基本色群のインク層のみを利用し、前記指定された色が印刷媒体上で表現されるように前記第2のプロファイル情報に基づいて前記サーマルヘッドを制御する」のに対して、甲3発明の熱転写記録装置は、そのような制御を行っていない点。
(イ)上記相違点4-2について検討する。
上記相違点4-2の事項が、周知技術2であることは、「3 取消理由5(進歩性)」の上記(5)ア(イ)と同じである。
(ウ)甲3発明と周知技術2は、基本色(CMY)に加えて基本色(CMY)以外の有彩色インクを使用可能なプリンタである点で共通している。イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックの7色が塗布されたインクシートを利用する熱転写記録装置である甲3発明において、ユーザの求める色再現性のレベル(画質の向上)に応じて使用する色を切り替えるよう、上記周知技術2を組み合わせることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、上記(2)イ及び上記(5)イを踏まえると、本件訂正発明6は、甲3発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
請求項9、10に対し、特許異議申立人が主張する特許異議申立理由のうち、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった理由は、以下のとおりである。
(1)明確性要件違反
本件特許の請求項9、請求項10に係る特許は、下記のとおり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
記
本件特許の請求項4には、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーション」という記載がある。
しかしながら、「考慮した」という記載は、人の思考に関する記載であり、種々の解釈が可能なものである。その結果、本件発明4の技術的範囲に、発明の詳細な説明に記載された次の(例1) のものに加えて、以下の(例2)や(例3)に挙げるような「コンピュータシミュレーション」が含まれるか否かが不明となっている。
(例1)減色特性を含む式(11)及び減色係数W(t1,t2)のデータを用いた、色域のコンピュータシミュレーション。
(例2)融点又は昇華温度が互いに異なる染料の組合せを前提にして行われる、色域のコンピュータシミュレーション。
(例3)印刷により色票を複数パターン作成し、その測色結果に基づいて行われる、色域のコンピュータシミュレーション。
したがって、本件発明9は、権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うものであるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどのものということができ、本件発明9は、明確であるということができない。同様の理由により、本件発明10も、明確であるということができない。
(特許異議申立書の40頁10行~41頁14行、126頁2~6行)
(2)サポート要件違反
請求項9及び請求項10に係る特許は、下記のとおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
記
ア コンピュータシミュレーション
本件特許の請求項4には、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーション」という記載がある。
しかしながら、「コンピュータシミュレーション」に関して、本件特許の明細書には、減色特性を含む式(11)及び減色係数W(t1,t2)のデータを用いた色域のコンピュータシミュレーションしか開示されていない。
したがって、本件発明4は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。請求項4の記載を引用して記載された請求項に係る本件発明5及び本件発明6も、発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。本件発明4と同様の理由により、本件発明9及び本件発明10も、発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。
イ 発明の課題
本件特許の明細書の【0006】の記載を形式的に理解すると、本件発明4~本件発明6が解決しようとする課題は、「熱転写印刷における色表現力を向上させることが可能な熱転写プリンタを提供すること」にあるようにみえる。
しかしながら、このような課題は、理由3及び理由4で挙げるような、公知の「イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン及びブルーの6色からなるインクリボン」を利用する「熱転写プリンタ」より解決することができる。換言すると、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーション」の構成を具備しなくとも、解決することができる。
したがって、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーション」という記載によって特定されてなる本件発明4~本件発明6の発明が解決しようとする課題は、「熱転写印刷における色表現力を向上させることが可能な熱転写プリンタを提供すること」にとどまらないと理解するのが相当であり、この点は、本件特許の明細書の【0006】に「本発明の1つの観点によれば」と記載され、異なる観点も存在することが示されていることからみても、明らかである。
本件発明4~本件発明6がサポート要件を満たすことについての立証責任は特許権者にある。そして、本件特許の明細書を参酌しても本件発明4~本件発明6の発明の課題が明確であるということができないからには、本件発明4~本件発明6がサポート要件を満たすか否かも不明というよりほかないから、本件発明4~本件発明6は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。
本件発明4~本件発明6と同様の理由により、本件発明9及び本件発明10も、発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。
(特許異議申立書の42頁2行~43頁11行、126頁7~13行)
(3)甲第4号証に基づく進歩性欠如
本件発明9及び本件発明10は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項9及び請求項10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(特許異議申立書の109~125頁全文、126頁26行~127頁3行)
2 当審の判断
(1)明確性要件違反
訂正前の請求項9及び請求項10には「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に前記第1の染料の量が減少する減色特性を考慮したコンピュータシミュレーション」と記載されていたため、「コンピュータシミュレーション」がどのようなものを含むのか不明確であったが、本件訂正により訂正後の請求項9及び請求項10は、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーション」と記載されるものとなったことで、「コンピュータシミュレーション」は、前記減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとから色域をシミュレーションするものであることが明確になった。
よって、本件訂正発明9及び本件訂正発明10は、明確であり、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
(2)サポート要件違反
ア コンピュータシミュレーションについて
(ア)発明の詳細な説明には、上記「第2 訂正の適否」の3(2)ウ(ウ)aに示した記載の他に、以下の記載がある。
a 「【0005】
従来の熱転写プリンタは、基本色の混色で有彩色を再現するため、色域の一部で銀塩プリントより色表現が見劣りする傾向にある。例えば、銀塩プリントは、シャドー部のコントラストが高く、明るくはっきりとした色表現が特徴的である一方、従来の熱転写プリンタは、このような銀塩プリントに特徴的な色表現の部分で改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の1つの観点によれば、本発明の目的は、熱転写印刷における色表現力を向上させることが可能な熱転写プリンタ、インクリボン、制御装置、及びデータ処理方法を提供することにある。」
b 「【0087】
[4.特色の選択方法]
上記の通り、本実施形態ではインクリボン11に特色インク層を設けることで色域を広げ、銀塩プリントに迫る色表現を実現することができる。」
c 「【0118】
減色係数W(t1,t2)のデータは、減色特性を示す情報として記憶装置105に格納される。」
d 「【0127】
上記のコンピュータシミュレーションでは減色特性を考慮しているため、より忠実に熱転写プリンタ10の印刷結果に対応する色域が得られる。
【0128】
例えば、減色特性を考慮したコンピュータシミュレーションをシミュレーションA、減色特性を考慮しないコンピュータシミュレーションをシミュレーションBと呼ぶことにする。この場合、ある色の組み合わせを持つインクリボン(以下、リボンサンプル)を対象に、シミュレーションAで計算した色域Aと、熱転写プリンタ10で実際にパッチを印刷して再現される色域Rとの差は、シミュレーションBで計算した色域Bと色域Rとの差より小さくなる。つまり、シミュレーションAの方が実際の印刷結果に近くなる。
【0129】
なお、シミュレーションBは、減色係数Wを固定値1に設定した場合に相当する。より忠実な色再現性を有するコンピュータシミュレーションを利用することで、より好適な特色選択が可能になる。」
(イ)上記「第2 訂正の適否」の3(2)ウ(ウ)bに示したとおり、発明の詳細な説明には、減色係数W(t1,t2)及び単色の分光濃度Dq(tq,λ)に基づいてコンピュータシミュレーション装置30が色域のサイズを特定し、最も大きい色域サイズに対応する候補色セット(最大色域の候補色セット)を選択することが記載されている。このコンピュータシミュレーション装置30により特定される色域は、上記(ア)c、dから、減色特性を示す情報である減色係数W(t1,t2)に基づきコンピューシミュレーションされることで、より忠実に熱転写プリンタ10の印刷結果に対応する色域が得られ、より好適な特色選択を可能となり、上記(ア)bから、より好適な特色を選択して色域が広がることで、銀塩プリントに迫る色表現を実現することができることに資すると認められる。してみると、発明の詳細な説明には、減色特性を示す情報である減色係数W(t1,t2)に基づきコンピューシミュレーションされることで、上記(ア)aに示した、色域の一部で銀塩プリントより色表現が見劣りする傾向にある従来の熱転写プリンタに対して、「熱転写印刷における色表現力を向上させる」という課題を解決していると認められる。
(ウ)訂正後の請求項9及び請求項10には、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーション」と記載されており、この記載は、上記(イ)に示したとおり、発明の詳細な説明に記載したものであり、発明の課題を解決するための手段を反映したものである。してみると、本件訂正発明9及び本件訂正発明10は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(エ)訂正後の請求項9及び請求項10には、上記1(2)アに示した出願人の主張にある「減色特性を含む式(11)」(発明の詳細な説明の【0121】に記載の「V(t1R)=Avλ{W(t1,t2)×Dq1(t1,λ)/Dq1(100,λ)}…(11)」、ここでt1Rは1番目の残留染料の分光濃度に対応するデバイス設定値、V(t1R)は階調係数(【0120】)、λは光源の波長を(【0094】)、Avλはλについての平均値を計算するための関数(【0098】)、を表す)に該当する事項は記載されていない。
しかし、発明の詳細な説明の記載の全体を見た当業者であれば、上記(ア)aに示した「熱転写印刷における色表現力を向上させる」という課題を解決するためには、減色係数を用いてコンピュータシミュレーションすることが必要であると理解できるのであって、上記式(11)はコンピュータシミュレーションの具体的な計算の一例と解される。したがって、訂正後の請求項9及び請求項10に上記式(11)に該当する事項が記載されていないからといって、本件訂正発明9及び本件訂正発明10が、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるとはいえない。
イ 発明の課題
上記ア(イ)に示したとおり、発明の詳細な説明には、減色特性を示す情報である減色係数W(t1,t2)に基づきシミュレーションされることで、上記(ア)aに示した、色域の一部で銀塩プリントより色表現が見劣りする傾向にある従来の熱転写プリンタに対して、「熱転写印刷における色表現力を向上させる」という課題が解決できることが記載されている。したがって、本件訂正発明9及び本件訂正発明10は、「熱転写印刷における色表現力を向上させる」という課題に対応するものであって、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーションを利用して」、「熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせ」を選択することで、上記課題を解決するものであるから、発明の詳細な説明に記載したものである。
ウ よって、本件訂正発明9及び本件訂正発明10は、発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
(3)甲第4号証に基づく進歩性欠如
ア 甲第4号証に記載の事項
本願の出願前の平成10年10月13日に公開された特開平10-272852号公報(以下「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感熱色素転写式画像形成系の色域を改良する又は拡大するための手段に関する。」
(イ)「【0007】
【従来の技術】米国特許第5,514,637号明細書に、感熱色素転写画像形成に用いられる色素供与体要素はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックその他の色素のような異なる色素の領域を交互に有することができ、そのため一色、二色、三色又は四色の要素(又はさらに5色以上のものも)を使用できることが記載されている。しかしながら、この特許明細書には、このような他の色素を、減法混色系三原色の色素セットの色域を拡大するように選定する方法については何ら開示がない。米国特許第4,923,846号明細書に、感熱色素転写画像形成用の三種類の減法混色系原色色素(シアン、マゼンタ及びイエロー)の一組を、色再現又は色域が改良されるように選定することが記載されている。色素の選定基準は、色素の吸収特性の比較的粗野な分析によるものである。米国特許第4,812,439号明細書にも、感熱色素転写画像形成用の三種類の減法混色系原色色素(シアン、マゼンタ及びイエロー)の一組を選定することが記載されているが、その基準は、色素の吸収特性のより正確な数学的記述を単に含むものにすぎない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】これらの従来技術の特許明細書における色素選定法には、選ばれた色素セットの色域が望まれるほどには大きくないという問題がある。本発明の目的は、色域が拡大又は改良された感熱色素転写用色素供与体要素を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】これら及びその他の目的は、高分子バインダー中にイエロー像色素、マゼンタ像色素及びシアン像色素がそれぞれ分散している色素パッチを順次繰り返したもの一組を支持体上に有して成る感熱色素転写用多色色素供与体要素であって、該要素は、高分子バインダー中に色素が分散している少なくとも一種の追加の色素パッチをも含み、前記追加の色素パッチの各々の色素は、原色のイエロー像色素、マゼンタ像色素及びシアン像色素の転写前又は転写後に色素像受容性層へ転写された際に、その最高濃度で測定された色相が、転写された原色のイエロー像色素、マゼンタ像色素及びシアン像色素の色相によって画定される色域よりもCIELABΔEc 単位で5単位分を超えて外側にある、改良された色域を生ぜしめることができる感熱色素転写用多色色素供与体要素に関する本発明により達成される。」
(ウ)「【0027】本発明の色素供与体要素において有用な色素は、米国特許第4,541,830号、同第4,698,651号、同第4,695,287号、同第4,701,439号、同第4,757,046号、同第4,743,582号、同第4,769,360号及び同第4,753,922号明細書に記載されている。色素は単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。色素は0.05~1g/m2の被覆量で使用することができ、また疎水性であることが好ましい。本発明の色素供与体要素から色素を転写させるのに使用することができる感熱印刷ヘッドは市販されている。
・・・
【0030】
【実施例】本発明を説明するため、以下に実施例を提供する。
実施例1
以下の実施例では下記の色素及び色素セットを使用した。
a)色素セットA:市販のKodak Xtralife(商標)感熱印刷媒体(Y-1、M-1及びC-1として表示される像色素供与体)
b)色素セットB:(像色素Y-2、M-2及びC-2、下記の構造式を参照されたい)米国特許第4,812,439号明細書に大きな色域にとって好ましいことが記載されている。
c)色素セットC:色素セットAに、上記Y-1、M-1及びC-1をバランスさせた混合物によるブラック供与体(B-1)を加えたもの。
d)色素セットD:色素セットBに、上記Y-2、M-2及びC-2をバランスさせた混合物によるブラック供与体(B-2)を加えたもの。
米国特許第4,812,439号明細書からの像色素
【0031】
【化1】
[図:0001418212000003.jpg]
【0032】
【化2】
[図:0001418212000004.jpg]
【0033】
【化3】
[図:0001418212000005.jpg]
【0034】下記の色素は、色域を拡大するために上記の基本色素セットに追加して使用することができる分光的に独立した追加の像色素を代表するものである。
【0035】
【化4】
[図:0001418212000006.jpg]
【0036】
【化5】
[図:0001418212000007.jpg]
【0037】
【化6】
[図:0001418212000008.jpg]
」
(エ)「【0041】感熱色素転写像の作成及び評価
上記の色素供与体要素及びKodak Xtralife(商標)色素受容体から感熱色素転写像を作成した。・・・
【0043】印刷後、色素供与体要素と画像化された受容性要素とを分離し、そしてキセノンパルス源及び公称アパーチャー10mmを有する MacBeth Model 2145 反射型分光光度計を使用して各パッチの分光吸収曲線を測定した。反射率の測定は、測定配置45/0を使用し、380~750ナノメートルの波長範囲にわたり行った。
【0044】図1は、色素セットAの転写後のシアン、マゼンタ及びイエロー像色素(C-1、M-1及びY-1)の全濃度範囲にわたる反射率測定データを最良に代表する特性ベクトル計算値(正規化分光透過濃度対波長)を示す。図2は、色素セットBの転写後のシアン、マゼンタ及びイエロー像色素(C-2、M-2及びY-2)の全濃度範囲にわたる反射率測定データを最良に代表する特性ベクトル計算値(正規化分光透過濃度対波長)を示す。図3は、転写後の追加の像色素(P-1、P-2及びP-3)の全濃度範囲にわたる反射率測定データを最良に代表する特性ベクトル計算値(正規化分光透過濃度対波長)を示す。
【0045】各像色素のDmax曲線をその特性ベクトルから得た。各像色素の特性ベクトルを、反射率に変換され反射受容体のDmin曲線に付加された場合に透過色素のλ-maxにおける反射濃度として2.5が得られるように、透過空間において比例させた。同様に、反射率に変換され反射受容体のDmin 曲線に付加された場合に、複合色素混合物のピーク吸収のλ-max における反射濃度が2.5となる視覚的に中性な(a* =b* =0)転写像が得られるように、各色素セット(A及びB)の減法混色系原色の特性ベクトルを足し合わせることによって、ブラック混合物を調製した。反射率に変換し戻した後、D5000イルミナントを用いて各像色素及びブラック混合物のDmaxにおける対応するCIELAB座標を計算し、表2に示した。
【0046】
【表2】
[図:0001418212000009.jpg]
」
(オ)「【0050】次いで、3~6種の各種色素系の色域を、上記のように計算し、その結果を表4に記載した。比較をより容易にするため、特定の色素セットの色域を適当な基本セットの色域で割り算することにより求められる色域の相対値も表記した。パントーン(商標)カラー・フォーミュラ・ガイドにあるカラーサンプルの色度座標を測定し、色域計算値と比較した。各色域計算値の範囲内にあるパントーン(商標)カラーの数も表4に示した。
【0051】
【表4】
[図:0001418212000010.jpg]
【0052】 【表5】
[図:0001418212000011.jpg]
【0053】1)適当な3種又は4種の色素による基本色素セットに対する当該色素セットの色域の比率
上記データは、3色(CMY)系又は4色(CMYB)系の色素基本セットに一種又は二種以上の追加の像色素供与体を組み合わせて使用すると、その追加の色素供与体が該基本セットの色域の外側に5ΔEc 単位を超えて外れたCIELAB色度座標を示す転写色素像を生ぜしめる場合には常に、転写色素セットの色域が大幅に拡大する。本発明により選ばれた追加の像色素供与体を使用した場合の色域の拡大幅は、基本セットの色域の外側に5ΔEc単位を超えて外れたCIELAB色度座標を示す転写色素像を生ぜしめない追加の像色素供与体を使用した場合よりも大きくなる。
【0054】表4の色素セット1~20の結果を見ると、基本セットAと共に色素C-1、M-1、Y-1、B-1又はB-2(色素セット2~6)を含有する追加の像色素供与体を使用しても、色域をわずかに拡大させるにすぎない(相対色域値1.03~1.12)。表3に示したように、これらの像色素供与体は、色素セットAの色域の外側に5ΔEc単位を超えて外れたCIELAB色度座標を示す転写色素像を生ぜしめるものではない。他方で、基本セットAと共に色素C-2、M-2、Y-2、P-1、P-2又はP-3(色素セット7~12)を含有する追加の像色素供与体を使用すると、色域が大幅に拡大することとなる(相対色域値1.14~1.28)。表3に示したように、これらの像色素供与体は、色素セットAの色域の外側に5ΔEc単位を超えて外れたCIELAB色度座標を示す転写色素像を生ぜしめる。
【0055】同様に、本発明の色素セット7~12により再現可能なパントーンカラーの数652~701は、対照用の色素セット2~6により再現可能なパントーンカラーの数592~650よりも大きくなる(表4参照)。また、表4に示したように、本発明により選ばれた二種又は三種の追加の像色素供与体(色素セット13~20)を使用すると、色域の拡大幅がさらに増大して相対色域値1.38~1.80が得られ、また再現可能なパントーンカラーの数も718~826となる。
【0056】基本色素セットB、C及びDと共に追加の像色素供与体を使用した場合の効果を示す表4のデータの同様の分析も(色素セット21~60参照)、本発明を例証するものである。図4は、色素セットB、色素セットD及び色素セットBに追加の像色素P-1を加えたものについて、L*=50における色域計算値を比較したものである。プロットは、色素セットBにブラック色素を追加した場合の色域の拡大幅が非常に小さいことを示している。しかしながら、本発明に従い色素セットBに色素P-1を追加した場合には、点を打った領域で示されるように、色域が大幅に拡大する。
【0057】
【発明の効果】色域が拡大又は改良された感熱色素転写用色素供与体要素が提供される。」
(キ)「【図4】
[図:0001418212000012.jpg]
」
イ 甲4の記載から把握できる事項
(ア)上記ア(オ)の【0051】【0052】に示した表4から、C-2、M-2、Y-2の基本色素セットBである色素セット21に対して、追加の色素の候補となるC-1、M-1、Y-1、P-1、P-2、P-3のうち、二種を追加する場合、P-1、P-2を追加する色素セット33において、色域計算値の絶対値が91,300と最大になると認められる。
(イ)上記ア(エ)の【0045】【0046】から、CIELAB座標色素において、色素P-1は、L* =79.1、a* =38.2、b* =70.2、色素P-2は、L* =36.1、a* =64.4、b* =-67.2、色素P-3は、L* =94.2、a* =-16.0、b* =87.3であることが看取できる。
ウ 甲4発明
上記ア及びイから、甲4には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明>
「高分子バインダー中にイエロー像色素、マゼンタ像色素及びシアン像色素がそれぞれ分散している色素パッチを順次繰り返したもの一組を支持体上に有して成る感熱色素転写用多色色素供与体要素であって、該要素は、高分子バインダー中に色素が分散している少なくとも一種の追加の色素パッチをも含み、前記追加の色素パッチの各々の色素は、原色のイエロー像色素、マゼンタ像色素及びシアン像色素の転写前又は転写後に色素像受容性層へ転写された際に、その最高濃度で測定された色相が、転写された原色のイエロー像色素、マゼンタ像色素及びシアン像色素の色相によって画定される色域よりもCIELABΔEc 単位で5単位分を超えて外側にある、改良された色域を生ぜしめることができる感熱色素転写用多色色素供与体要素であり、
具体的には、イエロー像色素Y-2、マゼンタ像色素M-2及びシアン像色素C-2の基本色素セットBである色素セット21に対して、追加の色素の候補となるC-1、M-1、Y-1、P-1、P-2、P-3から、追加の二種の色素P-1、P-2を含み、
前記追加の二種の色素P-1、P-2は候補となる色素C-1、M-1、Y-1、P-1、P-2、P-3の中で最大の色域を実現する二種の組み合わせであり、
CIELAB座標色素において、色素P-1は、L* =79.1、a* =38.2、b* =70.2、色素P-2は、L* =36.1、a* =64.4、b* =-67.2、色素P-3は、L* =94.2、a* =-16.0、b* =87.3であり、
市販の感熱印刷ヘッドにより色素を転写させられる
感熱色素転写用多色色素供与体要素。」
イ 本件訂正発明9について
(ア)対比
本件訂正発明9と甲4発明とを対比する。
a 甲4発明の「感熱色素転写用多色色素供与体要素」は、「市販の感熱印刷ヘッドにより色素を転写させられる」から、甲4発明の「色素」及び「感熱色素転写用多色色素供与体要素」がいわゆる「インク」及び「インクリボン」であることは明らかである。そして、甲4発明の「色素パッチ」は「支持体上に」有るから層を構成していると解される。してみると、甲4発明の「イエロー像色素、マゼンタ像色素及びシアン像色素がそれぞれ分散している色素パッチ」及び「感熱色素転写用多色色素供与体要素」は、本件訂正発明9の「イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層」及び「感熱色素転写用多色色素供与体要素」に相当する。
b 甲4発明の「色素P-1、P-2」は、いずれもCIELAB座標色素において、色度を表すa*とb*が「0」ではないので、有彩色である。してみると、甲4発明の「追加の二種の色素P-1、P-2」の「色素パッチ」は、本件訂正発明9の「前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層」に相当する。
c 甲4発明の「感熱色素転写用多色色素供与体要素」は、「改良された色域を生ぜしめる」ところ、色域が改良される程、感熱印刷ヘッドを用いた感熱色素転写にあたっての色再現性が高くなることは明らかであるから、本件訂正発明9の「インクリボンを利用する熱転写印刷」と甲4発明の「感熱色素転写用多色色素供与体要素」を用いた感熱色素転写とは、「インクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるため」との概念で一致する。
d 甲4発明における「追加の色素の候補」は「C-1、M-1、Y-1」以外に、「P-1、P-2、P-3」と3色あり、その中から実際に用いられる追加の色素が「P-1、P-2」の2色である。「色素P-1、P-2」だけでなく「色素P-3」もCIELAB座標色素におけるa*とb*が「0」ではなく有彩色であるから、甲4発明の3色の「『追加の色素の候補』であ『P-1、P-2、P-3』」及び「追加の二種の色素P-1、P-2」は、本件訂正発明9の「候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色」及び「M色で構成される有彩色の組み合わせ」に相当する。そして、甲4発明の「追加の二種の色素P-1、P-2」は「候補となる色素C-1、M-1、Y-1、P-1、P-2、P-3の中で最大の色域を実現する二種の組み合わせであ」るから、本件訂正発明9の「インクリボンにおける有彩色の組み合わせ」と甲4発明の「感熱色素転写用多色色素供与体要素」に実際に用いられる追加の色素「P-1、P-2」とは、「候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nである」点で一致する。
e 甲4発明の感熱色素転写用多色色素供与体要素が有する色素パッチのうちの「追加の二種の色素P-1、P-2」は、「候補となる色素C-1、M-1、Y-1、P-1、P-2、P-3」の中で最大の色域を実現する二種の組み合わせであるから、「候補となる色素C-1、M-1、Y-1、P-1、P-2、P-3」から最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせとして選択された色素である。してみると、甲4発明は、感熱色素転写用多色色素供与体要素の有する色素パッチの有彩色を選択するために、「有彩色を選択する方法」を実施していると認められる。
したがって、本件訂正発明9と甲4発明は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
イエロー、マゼンタ、シアンを含む基本色群のインク層と、前記基本色群とは異なるM色の有彩色のインク層とを有するインクリボンを利用する熱転写印刷の色再現性を高めるために、前記有彩色を選択する方法であって、前記方法は、
前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせを選択することであって、前記インクリボンにおける有彩色の組み合わせは、候補色として事前設定されたN色の利用可能な有彩色のうちのM色で構成される有彩色の組み合わせの中から選択された、前記熱転写印刷において最大の色域サイズを実現する有彩色の組み合わせであり、Mは2以上の整数であり、M<Nである、こと、
を含む、方法。
<相違点1>
本件訂正発明9は、「基本色群とは異なるM色の有彩色」を選択するにあたり、「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータと単色印刷時の分光濃度のデータとに基づく色域のコンピュータシミュレーション を利用」するのに対して、甲4発明の「追加の色素」はそのようなコンピュータシミュレーション を利用しているか不明な点。
(イ)判断
上記相違点1について検討する。
甲4には、上記ア(イ)に示した【0050】に「3~6種の各種色素系の色域を、上記のように計算」することは記載されているが、計算にあたり「印刷媒体に転写済みの第1の染料に重ねて第2の染料を転写する際に減少する前記第1の染料の減少量を示す減色係数のデータ」を用いることは、記載も示唆もされていない。相違点2については、特許異議申立人の提出したいずれの証拠にも記載も示唆もされていないから、甲4発明から相違点1に係る構成に想到することは当業者にとって容易とはいえない。
したがって、本件訂正発明9は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件訂正発明10について
本件訂正発明10は、本件訂正発明9の方法を実行する装置の発明であるから、上記イと同様の判断となり、本件訂正発明10も、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)むすび
上記(1)~(3)から、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠方法によって、本件訂正後の請求項9、10に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
第7 むすび
上記第5の「1 取消理由1(明確性)について」のとおり、本件訂正発明1~3、5、6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項1~3、5、6に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
上記第5の「2 取消理由4(新規性)について」のとおり、本件訂正発明1~3は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、上記第5の「3 取消理由5(進歩性)について」のとおり、本件訂正発明1~3、5、6は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~3、5、6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
請求項9,10に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由又は取消理由通知に記載した取消理由によって取り消すことはできない。また、他に本件発明9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項4、7、8に係る特許は,訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項4、7、8に対して特許異議申立人がした特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-701000