審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-701088

二次電池

審判番号
2025-701088
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-547863
登録番号
7680551
請求日
2025年11月20日
審決日
2026年02月26日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
  • 【権利者代理人】飯田 雅人
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【異議申立人】ジュネスプロパティーズ 株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 梶尾 誠哉
  • 審判官 木村 貴俊
  • 審判官 須原 宏光
分類
P1651.121-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7680551号発明「二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7680551号の請求項1~19に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7680551号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願(特願2023-547863号)は、令和4年(2022年)12月13日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 同年1月4日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和7年5月12日にその特許権の設定登録がされ、同年5月20日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、同年11月20日に特許異議申立人 ジュネスプロパティーズ株式会社(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明19」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 電極組立体と、 前記電極組立体を収納する収納部、及びシーラント樹脂を含み、前記電極組立体を密封するために形成されたシーリング部を含むケースと、 前記ケースの少なくとも一部に形成されたベント領域と、 前記シーラント樹脂よりも融点の低い樹脂を含む第1層、及び前記第1層の少なくとも一面に位置して粘着性物質を含む第2層を含み、前記ベント領域に挿入されるベント部材と、を含み、 前記第2層の厚さが5μm以下であり、 前記ベント領域は、電極リードが外側に露出する側のシーリング部を除いたシーリング部に位置しており、 前記粘着性物質が、アクリル系高分子、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、またはこれらのうちの二つ以上を含む、二次電池。 【請求項2】 前記ベント部材が前記シーリング部よりも長く形成され、前記ケースの内側及び外側のそれぞれに前記ベント部材が露出している、請求項1に記載の二次電池。 【請求項3】 前記第2層が前記ケースの外側に露出した第1層の少なくとも一面に位置している、請求項2に記載の二次電池。 【請求項4】 前記シーラント樹脂よりも融点の低い樹脂が炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池。 【請求項5】 前記シーラント樹脂よりも融点の低い樹脂が炭素数6~8のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項4に記載の二次電池。 【請求項6】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンにおいて、前記炭素数6以上のコモノマーの含量が前記炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレン100重量%に対して15重量%以下である、請求項4に記載の二次電池。 【請求項7】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンの多分散性指数が4以下である、請求項4に記載の二次電池。 【請求項8】 前記シーラント樹脂の結晶化温度と前記炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンの結晶化温度との差が10℃以下である、請求項4に記載の二次電池。 【請求項9】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンの結晶化温度が90℃~115℃である、請求項8に記載の二次電池。 【請求項10】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンの重量平均分子量が100,000g/mol~400,000g/molである、請求項4に記載の二次電池。 【請求項11】 前記ベント部材が100℃~120℃でベンティングする、請求項1に記載の二次電池。 【請求項12】 前記ベント部材が1.5atm以上の圧力でベンティングする、請求項1に記載の二次電池。 【請求項13】 前記ベント部材の100℃以上における最大シーリング強度が6kgf/15mm未満である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項14】 前記ベント部材の100℃以上における平均シーリング強度が4.5kgf/15mm未満である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項15】 前記ベント部材の常温~60℃における最大シーリング強度が6kgf/15mm以上である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項16】 前記ベント部材の常温~60℃における平均シーリング強度が4.5kgf/15mm以上である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項17】 前記シーラント樹脂よりも融点の低い樹脂が100℃~130℃の融点を有する、請求項1に記載の二次電池。 【請求項18】 前記電極組立体は電極リードが取り付けられており、 前記電極リードの外面の一部を覆い包み、前記電極リードと前記ケースとの間に介在されたリードフィルムをさらに含む、請求項1に記載の二次電池。 【請求項19】 前記二次電池がパウチ型二次電池である、請求項1に記載の二次電池。」 第3 申立理由の概要 1 異議申立人の提出した証拠 異議申立人は、次の甲第1号証~甲第8号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲8」という。)を証拠として提出している。 甲第1号証(甲1):特開2003-242952号公報 甲第2号証(甲2):特開2010-257948号公報 甲第3号証(甲3):特開2008- 84666号公報 甲第4号証(甲4):特開2008-293992号公報 甲第5号証(甲5):特開2008-130370号公報 甲第6号証(甲6):特開2005-103955号公報 甲第7号証(甲7):特表2004-501986号公報 甲第8号証(甲8):特開2021-136061号公報 2 特許異議の申立理由 異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由(進歩性欠如)の概要は、本件発明1~19は、甲1~甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである、というものである。 第4 異議申立人の提出した証拠の記載 1 甲1について (1) 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある(下線加筆、以下同じ。)。 「【0018】前記目的を達成するために、本発明はまた、2つの電極タブを有する電極組立て体と、前記電極組立て体が安着する安着部及び縁部に第1の接合部を有する本体部と、前記縁部に第2の接合部を有して前記第1の接合部と接合されてシーリング部をなし、前記電極タブがシーリング部の一側に突出されるように電極組立て体を包む外装フィルム容器と、前記シーリング部をなす第1及び第2の接合部の間に挟まれて融着され、前記電極組立て体から発生した熱により溶融されることにより破損される安全手段と、を備えてなることを特徴とする。」 「【0022】図面を参照すれば、本発明による2次電池は、各々の集電体に活物質及び添加剤よりなる活物質層が形成された正極板31と、負極板32、及びこれらの間に挟まれて正極板31と負極板32とを絶縁させるセパレータ33が所定の広さに切り取られて交互に積層されるかロール状に巻かれてなる。また、2次電池は、前記各正極板31に電気的に接続された正極タブ34と、前記各負極板32に電気的に接続された負極タブ35とを有する電極組立て体30を備える。 【0023】そして、電極組立て体30は、可撓性素材よりなる外装フィルム容器40に包まれて密封されるが、前記正極タブ34及び負極タブ35は外装フィルム容器40の外部に露出されて電池端子としての役割を果たす。前記外装フィルム容器40は、アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされてなる。前記容器の材料は前述した実施の形態により限定されず、所定の引張り力を有して前記電極組立て体30と絶縁可能な可撓性材質であれば、いかなるものも採用可能である。 【0024】前記電極組立て体30を包む外装フィルム容器40は、電極組立て体30が安着する安着部42aを有して縁部に第1の接合部41を有した本体部42と、前記本体部42から延び、その縁部に第2の接合部43が設けられて前記第1の接合部41と接合されることにより電極組立て体30が安着する安着部42aを密封するカバー部44とを備える。前記第1及び第2の接合部41及び43は互いに融着されてシーリング部45をなす。 【0025】前記本体部42の第1の接合部41とカバー部44の第2の接合部43との間には、これらと共に融着されるものであり、図4に示されたように、前記外装フィルム容器40より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープ50が挟まれる。前記テープ50は低融点の合成樹脂材よりなるが、この合成樹脂材は、溶融点が60ないし100℃であるエチレンビニールアセテート、溶融点が90ないし120℃である直鎖状の低密度ポリエチレン、溶融点が110ないし180℃であるポリプロピレンよりなる。 【0026】前記テープ50は、前記材質のうちいずれか一つの層よりなるか、図2A及び図2Bに示されたように、少なくとも2つまたは3つの層よりなる。前記テープ50が3つの層よりなる場合には、直鎖状の低密度ポリエチレン層51と、この両面にポリプロピレン層52が形成される。前記テープ50は前述した実施の形態により限定されず、溶融点が低い材質を用いて様々に製作できるが、前記テープ50は、その厚み方向の中央部の溶融点が上下部の溶融点より低いことが好ましい。 【0027】そして、電極組立て体30の電極タブ34、35はシーリング部45、すなわち、第1及び第2の接合部41及び43に間に挟まれて電極組立て体30が安着する安着部42aの内部と外部との気密を保持するが、電極タブ34、35と第1及び第2の接合部41及び43との間には気密部材60が挟まれる。前記気密部材60は、前述の如きテープ50よりなる。気密部材60が前述の如きテープ50よりなる場合、テープはその厚み方向の中心部の溶融点が低い必要はない。 【0028】前記安全手段は前述した実施の形態により限定されず、第1及び第2の接合部41及び43が融着されてなるシーリング部45の一部が電極組立て体30の異常充放電により発生する熱によって外装フィルム容器40より低温で溶融可能な構造であれば、いかなるものであっても良い。 【0029】前述の如き構成された本発明による2次電池は、充電時の異常によって過充電された場合、両極側において電解液の熱分解反応が起こり、これにより熱及びガスが発生する。この時に発生した熱は外装フィルム容器40のシーリング部45に融着された安全手段であるテープ50に伝わってテープが外部フィルム容器40より早く溶融されて破損されることにより内部のガスを放出し、電池が爆発することを防止できる。 【0030】前記シーリング部45の第1及び第2の接合部41及び43の間に挟まれるテープ50は、その厚み方向の中央部の溶融点が相対的に低いため、第1及び第2の接合部の融着時に表面が第1及び第2の接合部41及び43と融着されても中央部は保護されて熱により容易に溶融される。 【0031】一方、前記第1及び第2の接合部41及び43の間に挟まれる電極タブ34、35には、第1及び第2の接合部41及び43と電極タブ34、35とのシーリング性を高めるために気密部材60が設けられるが、前記気密部材60は相対的に低い溶融点の合成樹脂材であるテープ、すなわち、エチレンビニールアセテート、直鎖状の低密度ポリエチレン、ポリプロピレンよりなるので、第1及び第2の接合部41及び43のシーリング時に気密性を向上させられる。 【0032】 【発明の効果】上述したように、本発明による2次電池は、第1及び第2の接合部の間に溶融点が低いテープを挟んだ状態で融着してシーリング部を形成することにより、電池の異常作動により発生する熱により外装フィルム容器より早く溶融せしめて内部のガスを放出して電池が爆発することを防止できる。 【0033】本発明は図面に示された一実施の形態を参考として説明されたが、これは単なる例示的なものに過ぎず、この技術分野における当業者であれば、これより各種の変形及び均等な他の実施の形態が可能であるという点は理解できるであろう。よって、本発明の真の技術的な保護範囲は請求範囲の技術的な思想によって定まるべきである。 【図1】「 [図:0001433139000001.jpg] 」 【図2B】「 [図:0001433139000002.jpg] 」 【図3】「 [図:0001433139000003.jpg] 」 【図4】「 [図:0001433139000004.jpg] 」 ア 上記第22段落によれば、甲1には、2次電池の発明が記載されているところ、2次電池は、各正極板31に電気的に接続された正極タブ34と、各負極板32に電気的に接続された負極タブ35とを有する電極組立て体30を備えるものである。 イ 上記第23段落によれば、電極組立て体30は、可撓性素材よりなる外装フィルム容器40に包まれて密封される。 また、同段落によれば、外装フィルム容器40は、アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされてなる。 ウ 上記第24段落によれば、外装フィルム容器40は、電極組立て体30が安着する安着部42aを有して縁部に第1の接合部41を有した本体部42と、前記本体部42から延び、その縁部に第2の接合部43が設けられて前記第1の接合部41と接合されることにより電極組立て体30が安着する安着部42aを密封するカバー部44とを備え、前記第1及び第2の接合部41及び43は互いに融着されてシーリング部45をなす。 エ 上記第25段落によれば、前記本体部42の第1の接合部41とカバー部44の第2の接合部43との間には、これらと共に融着されるものであり、前記外装フィルム容器40より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープ50が挟まれる。 オ 上記第26段落によれば、前記テープ50が3つの層よりなる場合には、直鎖状の低密度ポリエチレン層51と、この両面にポリプロピレン層52が形成される。 カ 上記第29段落によれば、充電時の異常によって過充電された場合、両極側において電解液の熱分解反応が起こり、これにより熱及びガスが発生し、この時に発生した熱は外装フィルム容器40のシーリング部45に融着された安全手段であるテープ50に伝わってテープが外部フィルム容器40より早く溶融されて破損されることにより内部のガスを放出し、電池が爆発することを防止できる。 キ 上記エのとおり、テープ50は、外装フィルム容器40の本体部42の第1の接合部41とカバー部44の第2の接合部43との間に挟まれている。 また、上記第18段落の「前記電極タブがシーリング部の一側に突出されるように電極組立て体を包む外装フィルム容器」との記載によれば 、甲1に記載された2次電池において、電極タブである正極タブ34と負極タブ35は、外装フィルム容器40のシーリング部45の一側に突出している。 そして、上記図3をみると、テープ50が挟まれているシーリング部45の領域は、正極タブ34と負極タブ35が突出しているシーリング部45の領域とは異なる領域に位置していることを看取することができる。 (2) 甲1発明 上記(1)によれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 [甲1発明] 「 各正極板31に電気的に接続された正極タブ34と、各負極板32に電気的に接続された負極タブ35とを有する電極組立て体30を備える2次電池であって、 電極組立て体30は、可撓性素材よりなる外装フィルム容器40に包まれて密封されており、 外装フィルム容器40は、アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされてなり、 外装フィルム容器40は、電極組立て体30が安着する安着部42aを有して縁部に第1の接合部41を有した本体部42と、本体部42から延び、その縁部に第2の接合部43が設けられて第1の接合部41と接合されることにより電極組立て体30が安着する安着部42aを密封するカバー部44とを備え、第1及び第2の接合部41及び43は互いに融着されてシーリング部45をなし、 本体部42の第1の接合部41とカバー部44の第2の接合部43との間には、これらと共に融着されるものであり、外装フィルム容器40より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープ50が挟まれ、 テープ50が3つの層よりなる場合には、直鎖状の低密度ポリエチレン層51と、この両面にポリプロピレン層52が形成され、 安全手段は、第1及び第2の接合部41及び43が融着されてなるシーリング部45の一部が電極組立て体30の異常充放電により発生する熱によって外装フィルム容器40より低温で溶融可能な構造であり、 充電時の異常によって過充電された場合、両極側において電解液の熱分解反応が起こり、これにより熱及びガスが発生し、この時に発生した熱は外装フィルム容器40のシーリング部45に融着された安全手段であるテープ50に伝わってテープが外部フィルム容器40より早く溶融されて破損されることにより内部のガスを放出し、電池が爆発することを防止でき、 テープ50が挟まれているシーリング部45の領域は、正極タブ34と負極タブ35が突出しているシーリング部45の領域とは異なる領域に位置している、 2次電池。」 2 甲2について 甲2には、以下の記載がある。 「【0015】 外装体20における上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの外周縁部には、その一辺が収容部23に連通し、その他の辺が接合部22に包囲された、平面が略矩形の非接合部位24が形成されている。この非接合部位24が形成された領域には、上部外装フィルム21Aを貫通する孔口部26と、この孔口部26を包囲するよう形成された、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの一部分が相互に接合されてなるシール部25とからなる安全弁27が、非接合部位24が形成された領域における中心位置以外の位置に形成されている。図示の例では、非接合部位24における収容部23に連通する一辺と垂直な他辺において、安全弁27のシール部25が接合部22に一体に形成され、当該シール部25の一部が接合部22から連続して非接合部位24に半円状に突出するよう形成されている。 また、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの各々の非接合部位24の間には、当該非接合部位24と同様の平面形状を有する非熱融着性シート30が介在されており、この非熱融着性シート30は、粘着剤層31によって例えば上部外装フィルム21Aに固定されている。」 3 甲3について 甲3には、以下の記載がある。 「【0034】 また、耐熱材は、その片面に粘着材層を有する態様のものが好ましい。このような態様の耐熱材は、粘着材層に係る粘着材によってラミネートシートに接着させることができる。粘着材層を形成するための粘着材としては、シリコーン系の粘着材、アクリル樹脂系の粘着材など、耐熱性に優れた粘着材が好ましい。粘着材層の厚みは、5~20μmであることが好ましい。」 4 甲4について 甲4には、以下の記載がある。 「【0054】 フィルム外装電池1においては、好ましい設計上の開放圧力は、大気圧からの上昇分として0.05MPa~1MPaであり、より好ましくは0.1MPa~0.2MPaである。開放圧力が低すぎると、一時的に大電流が流れたり一次的に高温になったりしたときなどの軽微なトラブルでも開放してしまい、フィルム外装電池1が作動しなくなるという不具合を招く。一方、開放圧力が高すぎると、ガス開放部7まで剥離が進行する前に他の部位で開放し、意図しない方向へガスが噴出してしまう危険性が増大する。」 「【0073】 また、上述した例では外装フィルム自身に架橋構造部を形成した例を示したが、架橋構造部は、外装フィルム自身に形成するのではなく、架橋させた樹脂シートを対向する外装フィルム間に挟むこと、言い換えれば、対向する外装フィルムの一方に、架橋させた樹脂シートを融着させることによって形成してもよい。その例の、熱融着部近傍での断面図を図12に示す。図12に示す例では、熱融着部76の一部において、2枚の外装フィルム74,75間に、架橋処理された樹脂シート78が挟み込まれている。樹脂シート78は、一部位が、電池要素72を収納している電池要素収納部に露出し、他の一部位がガス開放部77に露出しており、この条件を満たしていれば、そのサイズや形状等は特に限定されず、他の構造も含めて、上述した各例と同様に配置することができる。」 5 甲5について 甲5には、以下の記載がある。 「【0014】 (構成) 図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池20は、電池容器に2枚の矩形状の可撓性フィルムのラミネートフィルム(以下、単に、フィルムという。)1、1’が使用されている。 【0015】 図2に示すように、フィルム1は、内層にガスバリア層となるアルミニウム箔1bを有している。アルミニウム箔1bの一方の面には溶着層となる熱溶着性フィルムとしてのポリプロピレン(以下、PPと略記する。)フィルム1aが貼り合わされており、他方の面にはポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)フィルム1cが貼り合わされている。フィルム1は、本例では、厚さ約120μmに設定されている。フィルム1’は、フィルム1と同様に、PPフィルム1’a、アルミニウム箔1’bおよびPETフィルム1’cで構成されている。図1に示すように、フィルム1’は平面状の平面状フィルムであり、フィルム1は略中央部が凸状に成形されたカップ状フィルムである。フィルム1、1’は、PPフィルム1a、1’aが対向するように配置されている。フィルム1、1’の間には、電極群4が配置されている。フィルム1、1’の対向する2辺には、正極端子2及び負極端子3がそれぞれ2つずつ先端部を互いに反対方向の外側に突出させて配設されている。フィルム1、1’ は、周縁部にPPフィルム1a、1’a同士が熱溶着された溶着部9を有している。このため、電極群4は周縁部に溶着部9を有するフィルム状密閉容器に収容されており、リチウムイオン二次電池20は密閉構造とされている。溶着部9には、各正極端子2および各負極端子3が封止材10を介して挟み込まれ熱溶着されている。 【0016】 また、図2に示すように、溶着部9には、正極端子2および負極端子3がそれぞれ配設された2辺以外の辺の一方の略中央部に、矩形状の樹脂フィルム11が挟み込まれて熱溶着されている。樹脂フィルム11には、軟化温度がPPフィルム1a、1’aの軟化温度より低い材質が選択されている。すなわち、樹脂フィルム11は、PPフィルム1a、1’aより低融点である。本例では、PPフィルム1a、1’aの軟化温度が約150°Cであるのに対して、樹脂フィルム11には、軟化温度約80°Cのポリエチレン(以下、PEと略記する。)フィルムが使用されている。樹脂フィルム11は、本例では、フィルム1、1’の辺に沿う長手方向の長さが約30mmであり、長手方向と直交する幅方向の大きさが溶着部9の溶着幅より大きく、厚さが約30μmである。 【0017】 電極群4は、正極板19枚と負極板20枚とが交互に重ねられている。各正極板は、熱溶着で袋状に成形されたセパレータに挿入されている。セパレータには、例えば、厚さ25μm、幅100mmのポリエチレン製多孔膜が用いられている。正極板および負極板は、正極端子2および負極端子3が互いに反対方向に導出されるように重ねられている。2つの正極端子2、2つの負極端子3は、フィルム1、1’の対向する2辺と直交する中心線Mに対して対称となるようにそれぞれ配設されている。 【0018】 正極端子2と一体に形成された正極ストラップ部5には、厚さ0.3mmのアルミニウム合金A3003-H12が用いられており、電解液に接するおそれのない正極端子2の部分(電池外部に露出した部分)にのみ、片面に厚さ0.1mmのニッケル板がクラッド加工されている。一方、負極端子3と一体に形成された負極ストラップ部7には、厚さ0.3mmの銅板C1020-1/2Hが用いられており、電池外部に露出した負極端子3の部分にのみ両面に厚さ0.05mmのニッケル板がクラッド加工されている。正極ストラップ部5、負極ストラップ部7は、正極集電体の無地部6、負極集電体の無地部8にそれぞれ超音波溶接で接合されている。電極群4の厚さはおよそ4.8mmである。 【0019】 リチウムイオン二次電池20の組立時には、電極群4がフィルム1の略中央部に載置され、電極群4の上側にフィルム1’が載せられ、4辺が熱溶着されて溶着部9が形成される。この際、正極端子2、負極端子3を配設していない辺の一部に熱溶着せずに残しておいたフィルム1、1’の合わせ面から注射器を用いて所定量の非水電解液が注入される。この合わせ面の熱溶着時には、樹脂フィルム11が挟み込まれて熱溶着される。フィルム1、1’の4辺が熱溶着で封止されてリチウムイオン二次電池20を完成した。溶着部9の溶着幅は、本例では、全周にわたって約10mmに設定されている。正極端子2、負極端子3は、それぞれ正極ストラップ部5、負極ストラップ部7を介して電池容器の対向する2辺から2つずつ導出されている。 【0020】 電極群4を構成する正極板の作製時には、正極活物質としてマンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複酸化物と、導電材として炭素粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとが、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドンに分散して混合されてスラリが作製される。このスラリが正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布され、乾燥後、プレスされて一体化される。このとき、アルミニウム箔の1辺には、スラリが塗工されない無地部6が形成される。その後、幅94mmに切断されて短冊状の正極板が作製される。塗工部の幅86mm、無地部6の幅10mmに設定されている。 【0021】 一方、負極板の作製時には、負極活物質として炭素粒子と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとが溶媒であるN-メチル-2-ピロリドンに投入され混合されて、スラリ状の溶液が作製される。このスラリが負極集電体である厚さ10μmの銅箔の両面に塗布され、乾燥後、プレスされて一体化される。このとき、銅箔の1辺には、スラリが塗工されない無地部8が形成される。その後、幅96mmに切断されて短冊状の負極板が作製される。塗工部の幅88mm、無地部8の幅10mmに設定されている。 【0022】 (作用等) 次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池20の作用等について説明する。 【0023】 本実施形態のリチウムイオン二次電池20では、電池容器としてフィルム1、1’で構成されたフィルム状密閉容器が用いられているので、鉄系材料の電池容器を用いた電池と比較して、電池の軽量化を図ることができる。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池20では、PPフィルム1a、1’a同士が熱溶着された溶着部9に樹脂フィルム11が挟み込まれて熱溶着されている。樹脂フィルム11には、軟化温度がPPフィルム1a、1’aより低いPEフィルムが使用されている。このため、温度上昇を伴う電池異常時には、樹脂フィルム11がPPフィルム1a、1’aより早く軟化ないし溶融する。樹脂フィルム11が軟化すると、電池内圧が上昇していることから、溶着部9に隙間が生じて電池内で発生したガスを放出する放出経路(電池内圧を解放する解放経路)が形成される。この放出経路を介してガスが放出され始めると、電池内圧が上昇していることとも相俟って、樹脂フィルム11の長さの範囲で、溶着部9に生じた隙間が広がる(フィルム1、1’間が剥がれる)。これにより、電池内で発生したガスの放出が促進されるので、電池内圧を低下させることができる。更に、ガス放出に伴う非水電解液の揮発により気化熱が奪われるので、電池温度を低下させることができる。従って、リチウムイオン二次電池20では、電池機能を穏やかに終了させることができ、電池異常時の安全性を確保することができる。」 6 甲6について 甲6には、以下の記載がある。 「【請求項2】 熱接着性樹脂層(B)がメタロセン化合物を触媒としてエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られる直鎖状エチレン系共重合体を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンフィルム。 【請求項3】 熱接着性樹脂層(B)を構成する直鎖状エチレン系共重合体が、エチレン70~99重量%と炭素数が3~12のα-オレフィン30~1重量%とを共重合して得られ、かつ、前記直鎖状エチレン系重合体の密度が0.870~0.905g/cm3、MFRが2~150g/10分であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンフィルム。」 「【0036】 このようなメタロセンポリエチレンは、好ましくは55~95℃、更に好ましくは60~85℃にその融解ピークを有するものであると好ましい。また、高温側の融点ピークを100~125℃、好ましくは105~120℃とするためには、同様な融点ピークを有するポリエチレン系樹脂を含有させることが好ましく、メタロセンポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体、等のエチレン系ポリマー、エチレンプロピレン共重合体、エチレンプロピレンブテン3元共重合体等のプロピレン系共重合体あるいはブテン系共重合体が例示される。これらの中で、エチレン系ポリマーが相溶性に優れるため特に好ましい。」 7 甲7について 甲7には、以下の記載がある。 「【0177】 【表5】 [図:0001433139000005.jpg] 」 8 甲8について 甲8には、以下の記載がある。 「【0102】 [端子用樹脂フィルムの作製] (実施例1~16及び比較例1~4) 表2に示した樹脂層の各成分を、同表に示す配合量(単位:質量%、表中では「%」と略記)で配合し、ドライブレンドして樹脂層の母材を調製した。次いで、住友重機モダン社製のインフレーション式フィルム押出製造装置(Co-OI型)を用いて、溶融温度210℃で母材を押し出し成形することで、厚さ100μmの樹脂層単層からなる端子用樹脂フィルムを得た。なお、DSCにより各フィルムの融解熱量を測定したところ、各樹脂成分の融点に相当するピークが検出された。」 「【0105】 [対外装材初期(室温)ヒートシール強度の測定] 端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部を165℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ナイロンフィルム(厚さ25μm)/接着剤/アルミニウム箔(厚さ40μm)/ポリプロピレンシーラント層(厚さ80μm)の積層構造を有する外装材のシーラント層が端子用樹脂フィルムに接するよう2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部(端子用樹脂フィルムとアルミニウム箔とをヒートシールした箇所と同じ箇所)を190℃/0.5MPa/5秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を15mm幅で切り出し(図4を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。本評価において、図4中の積層体100は、外装材/端子用樹脂フィルム/アルミニウム箔/端子用樹脂フィルム/外装材からなる積層体である。このサンプルのヒートシール部に対し、室温(25℃)環境下、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、外装材と端子用樹脂フィルムとの間のT字剥離試験を行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて対外装材初期ヒートシール強度を評価した。評価がA、B又はCの場合は合格、Dの場合は不合格である。結果を表2に示す。 A:ヒートシール強度が100N/15mm以上 B:ヒートシール強度が90N/15mm以上、100N/15mm未満 C:ヒートシール強度が80N/15mm以上、90N/15mm未満 D:ヒートシール強度が80N/15mm未満」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1) 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 ア 甲1発明の「電極組立て体30」は、本件発明1の「電極組立体」に相当する。 イ 甲1発明において、「電極組立て体30」は「可撓性素材よりなる外装フィルム容器40に包まれて密封されて」いるから、「外装フィルム容器40」の収納部に収納されているといえるところ、「外装フィルム容器40」はケースということもできる。 そして、甲1発明の「外装フィルム容器40」において、「第1及び第2の接合部41及び43は互いに融着されてシーリング部45をなし」ているから、「外装フィルム容器40」は「電極組立て体30」を密封するために形成されたシーリング部を含んでいるといえる。 また、甲1発明の「シーリング部45」を含む「外装フィルム容器40」は「アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされて」いるところ、「ナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなど」は樹脂といえるものである。 そうすると、本件発明1の「前記電極組立体を収納する収納部、及びシーラント樹脂を含み、前記電極組立体を密封するために形成されたシーリング部を含むケース」と、甲1発明とは、「前記電極組立体を収納する収納部、及び樹脂を含み、前記電極組立体を密封するために形成されたシーリング部を含むケース」を含む点で共通する。 ウ 本件発明1の「ベント領域」及び「ベント部材」について、本件明細書の第32段落には、「本発明の一実施形態による二次電池は、ケースのシーラント樹脂よりも融点の低い樹脂を含むベント部材を備えることで、前記ベント部材が位置した方向にガス排出を誘導することができる。」と記載されているから、本件発明1における「ベント部材」とは、ガス排出を誘導する部材であるということができる。 一方、甲1発明の「テープ50」は「外部フィルム容器40より早く溶融されて破損されることにより内部のガスを放出」するものである。 そうすると、甲1発明の「テープ50」は、本件発明1の「ベント部材」に相当する。 また、甲1発明の「テープ50」は、「外装フィルム容器40」の「本体部42の第1の接合部41とカバー部44の第2の接合部43との間」に挟まれているから、「テープ50」(ベント部材)が挟まれている領域は「外装フィルム容器40」の少なくとも一部に形成された「ベント領域」ということができる。 以上によれば、本件発明1と甲1発明は、「前記ケースの少なくとも一部に形成されたベント領域」を含む点で一致する。 エ 甲1発明では、「テープ50が3つの層よりなる場合には、直鎖状の低密度ポリエチレン層51と、この両面にポリプロピレン層52が形成され」ているから、「直鎖状の低密度ポリエチレン層51」(便宜のため「第1層」ともいう。)の両面に「ポリプロピレン層52」(便宜のため「第2層」ともいう。)が位置している。 そして、甲1発明の「安全手段」、すなわち、「テープ50」は、「第1及び第2の接合部41及び43が融着されてなるシーリング部45の一部が電極組立て体30の異常充放電により発生する熱によって外装フィルム容器40より低温で溶融可能な構造」であるから、甲1発明の「第1層」である「直鎖状の低密度ポリエチレン層51」は「外装フィルム容器40」にコーティングされている「アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなど」の樹脂より、融点の低い樹脂を含んでいるということができる。 また、上記ウによれば、甲1発明は、本件発明1と同様、「前記ベント領域に挿入されるベント部材」を含んでいるといえる。 そうすると、本件発明1の「前記シーラント樹脂よりも融点の低い樹脂を含む第1層、及び前記第1層の少なくとも一面に位置して粘着性物質を含む第2層を含み、前記ベント領域に挿入されるベント部材」と、甲1発明とは、「前記樹脂よりも融点の低い樹脂を含む第1層、及び前記第1層の少なくとも一面に位置する第2層を含み、前記ベント領域に挿入されるベント部材」を含む点で共通する。 オ 甲1発明では、「テープ50が挟まれているシーリング部45の領域は、正極タブ34と負極タブ35が突出しているシーリング部45の領域とは異なる領域に位置している」ところ、電極タブである「正極タブ34」及び「負極タブ35」は「電極リード」であるといえ、「テープ50が挟まれているシーリング部45の領域」(ベント領域)は、「正極タブ34と負極タブ35が突出しているシーリング部45の領域」を除いた「シーリング部45」に位置しているといえる。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、「前記ベント領域は、電極リードが外側に露出する側のシーリング部を除いたシーリング部に位置しており」という構成を備える点で一致する。 以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。 [一致点] 電極組立体と、 前記電極組立体を収納する収納部、及び樹脂を含み、前記電極組立体を密封するために形成されたシーリング部を含むケースと、 前記ケースの少なくとも一部に形成されたベント領域と、 前記樹脂よりも融点の低い樹脂を含む第1層、及び前記第1層の少なくとも一面に位置する第2層を含み、前記ベント領域に挿入されるベント部材と、を含み、 前記ベント領域は、電極リードが外側に露出する側のシーリング部を除いたシーリング部に位置している、 二次電池。 [相違点] [相違点1] 「シーリング部」の「樹脂」について、本件発明1は「シーラント樹脂」であるのに対して、甲1発明は、その点が不明であり、「ベント部材」の「第1層」の「樹脂」について、本件発明1は、「シーラント樹脂よりも融点の低い樹脂」であるのに対し、甲1発明は、その点も不明な点。 [相違点2] 「ベント部材」の「第2層」について、本件発明1は、「アクリル系高分子、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、またはこれらのうちの二つ以上」の「粘着性物質」を含み、「厚さが5μm以下」であるのに対して、甲1発明は、「粘着性物質」を含んでいるのか不明であり、「厚さが5μm以下」であるのかも不明な点。 (2) 判断 ア 検討 (ア) 事案に鑑みて、相違点2について検討する。 甲2の第15段落には、「また、上部外装フィルム21Aおよび下部外装フィルム21Bの各々の非接合部位24の間には、当該非接合部位24と同様の平面形状を有する非熱融着性シート30が介在されており、この非熱融着性シート30は、粘着剤層31によって例えば上部外装フィルム21Aに固定されている。」と記載されているが、甲2の「非熱融着性シート30」は、本件発明1の「ベント部材」や甲1発明の「テープ50」のように、ガス排出を誘導する部材ではない。 また、甲3の第34段落には、「また、耐熱材は、その片面に粘着材層を有する態様のものが好ましい。」と記載されているが、甲3の「耐熱材」も、ガス排出を誘導する部材ではない。 そうすると、相違点2のうち、「ベント部材」の「第2層」が「粘着性物質」を含んでいることは、異議申立人が主張の根拠とする甲2や甲3、さらに、甲4~甲8をみても何ら記載されておらず、他に周知技術であるという証拠もないし、甲1発明の「第2層」である「ポリプロピレン層52」に「粘着性物質」を含むように構成しようとする動機付けもないから、甲1発明において、相違点2の構成を採用することは当業者であっても容易になし得るものではない。 そして、本件発明1は、「ベント部材」の「第2層」が「粘着性物質」を含んでおり、「厚さが5μm以下」であることによって、本件明細書の第80段落に記載されているように、「電池の正常作動時には電池を密封し、電池の異常作動時のみにガス排出を誘導することができる」という効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1~甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ) これに対して、異議申立人は、本件明細書には、「ベント部材」の「第2層」の厚さが5μm以下である点について、その数値の臨界的意義は何ら記載されていないから、厚さを5μm以下とすることは当業者が適宜実施し得る設計事項であると主張する。 しかしながら、本件発明1のように、「ベント部材」の「第2層」の厚さを5μm以下とすることで効果を奏することは、上記(ア)のとおりである。 そして、本件明細書の第81段落に、「前記第2層15bの厚さが5μmを超過すると、シーリング部13bと第1層15aとが重なるとき、粘着性物質を含む第2層15bが過度に厚くなってシーリング部13bと第1層15aとの間のシーリング強度が低下する。これにより、電池の正常作動時に所望のシーリング強度を確保し難い。」と記載されているように、厚さが5μmを超過すると、所望のシーリング強度を確保し難いという問題が生じるのであるから、厚さが5μm以下であることには、臨界的意義があるといえる。 したがって、異議申立人の主張はその前提を欠いており、採用できない。 イ 本件発明1についてのまとめ 以上によれば、本件発明1は、甲1~甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本件発明2~19について 本件発明2~19は、本件発明1を直接あるいは間接的に限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記1(1)の[相違点]を有するところ、本件発明1が上記1(2)のとおり、甲1~甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明2~19も甲1~甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-701088

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決164件(エルジー エナジー ソリューション リミテッド、ジュネスプロパティーズ 株式会社)
  • 2026-700247異議申立 / 2026-07-31 / 維持ウインドレギュレータ及びガイドレールの取付け方法
    同じ当事者: ジュネスプロパティーズ 株式会社
  • 2026-700004異議申立 / 2026-06-08 / 維持二次電池パウチケースの製造方法、二次電池パウチフィルム及び二次電池パウチケース
    同じ当事者: エルジー エナジー ソリューション リミテッド
  • 2025-700813異議申立 / 2026-05-25 / 請求成立(取消)
    同じ当事者: エルジー エナジー ソリューション リミテッド
  • 2026-700065異議申立 / 2026-03-19 / 維持ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法
    同じ当事者: ジュネスプロパティーズ 株式会社
  • 2025-701011異議申立 / 2026-02-17 / 維持腐食を防止することができるカバー部材を備えたフレキシブルバスバー及びこれを含む電…
    同じ当事者: エルジー エナジー ソリューション リミテッド
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,628件(121・H01M)
  • 2026-700447異議申立 / 2026-08-26 / 維持窒素含有多孔質炭素及びその製造方法、並びに燃料電池用電極触媒
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2025-701066異議申立 / 2026-07-16 / 維持二次電池バインダー、スラリー、電極、二次電池の製造方法、及び二次電池
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2026-700397異議申立 / 2026-07-16 / 維持非水電解質電池用リード線、絶縁膜及び非水電解質電池
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2026-700436異議申立 / 2026-07-08 / 維持ラミネート型電池、電池モジュール、およびラミネート型電池の製造方法
    共通の審決分類: 121・H01M
  • 2026-700195異議申立 / 2026-06-29 / 維持電気化学セル、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置
    共通の審決分類: 121・H01M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存