特許異議申立
2025-700980
電池
- 審判番号
- 2025-700980
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-129241
- 登録番号
- 7661944
- 請求日
- 2025年10月10日
- 審決日
- 2025年11月27日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】トヨタ自動車株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】ジュネスプロパティーズ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 涌井 智則
- 審判官 久々宇 篤志
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7661944号発明「電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7661944号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7661944号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和4年8月15日に出願され、令和7年4月7日にその特許権が設定登録され、令和7年4月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年10月10日に特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7661944号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電極体と、
前記電極体の側面部に配置された集電端子と、
前記電極体を覆うラミネートフィルムと、
を備える電池であって、
前記電池を前記集電端子側から側面視した場合に、前記集電端子の外縁は、前記電極体の外縁より内側に位置し、
前記ラミネートフィルムは、前記集電端子の前記外縁を構成する面、および、前記電極体の前記外縁を構成する面を覆うように配置され、
前記集電端子の角部に、前記ラミネートフィルムの内面同士が溶着した溶着部が配置され、
前記ラミネートフィルムは、少なくとも金属層を有し、
前記溶着部において、対向する前記金属層の間に第1樹脂層が配置され、
前記金属層および前記集電端子の間に、第2樹脂層が配置され、
前記第1樹脂層の厚さをTaとし、前記第2樹脂層の厚さをTbとした場合に、前記Taおよび前記Tbは、Ta>Tbを満たし、
前記溶着部における前記金属層の厚さをTcとした場合に、前記Taおよび前記Tcは、0.5≦Ta/Tc≦4を満たし、
前記電池を集電端子側から側面視した場合、前記集電端子の形状は四角形であり、
前記溶着部は、前記集電端子の外縁を構成する4つの角部に配置されている、電池。
【請求項2】
前記ラミネートフィルムは、前記金属層の前記集電端子側の面に、内側樹脂層を有し、
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、それぞれ、前記内側樹脂層を含む、 請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記内側樹脂層および前記集電端子の間に、樹脂フィルムが配置され、
前記第1樹脂層は、前記樹脂フィルムを含む、 請求項2に記載の電池。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1ないし3号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。このため、本件請求項1ないし3に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
[証拠]
甲第1号証:国際公開第2019/142702号
甲第2号証:特開2018-181622号公報
甲第3号証:特開2019-96469号公報
第4 甲第1号証の記載
1 記載事項
甲第1号証には、「電池」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「[0012](実施形態) 図1は、実施形態に係る電池10の上面図である。図2は、図1に示した電池10の右側面図である。図3は、図1に示した電池10の左側面図である。図4は、図1に示した電池10の正面図である。図5は、図1に示した電池10の背面図である。図6(a)は、図1から図5に示した電池10に用いられている積層体100の上面図である。図6(b)は、図6(a)に示した積層体100の右側面図である。
[0013] 図1から図5を用いて、電池10の概要を説明する。電池10は、積層体100及び外装材200を備えている。積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含んでいる。外装材200は、積層体100を包んでいる。図1から図3に示すように、積層体100は、第1側面104aを有している。外装材200は、第1封止部210を有している。第1封止部210は、積層体100の第1側面104aの外側にある。図4に示すように、第1封止部210は、第1部分212、第2部分214及び第3部分216を含んでいる。第2部分214は、第1部分212と重なっている。第3部分216は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれている。
・・・中略・・・
[0015] 図4に示す例では、第1封止部210は、第4部分218を含んでいる。第4部分218は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれている。したがって、第1封止部210の第3部分216と同様にして、の第1封止部210の第4部分218の外側への突出を抑えることができる。
・・・中略・・・
[0017] 上述した構成によれば、第1封止部210及び第2封止部220のそれぞれの高強度を実現することができる。具体的には、上述した構成においては、第1封止部210の第3部分216及び第4部分218は、第1封止部210の第1部分212と第2部分214の間に折り込まれており、第2封止部220の第3部分226及び第4部分228は、第2封止部220の第1部分222と第2部分224の間に折り込まれている。したがって、第1部分212、第2部分214及び第3部分216の重なり部並びに第1部分212、第2部分214及び第4部分218の重なり部は、幾重にも重なった外装材を有しており、これによって第1封止部210の高強度が実現される。同様にして、第1部分222、第2部分224及び第3部分226の重なり部並びに第1部分222、第2部分224及び第4部分228の重なり部は、幾重にも重なった外装材を有しており、これによって第2封止部220の高強度が実現される。」
「[0020] 積層体100は、実質的に直方体の形状を有している。積層体100は、第1面102a、第2面102b、第1側面104a、第2側面104b、第3側面104c及び第4側面104dを有している。第2面102bは、第1面102aの反対側にある。第1側面104aは、第1面102aと第2面102bの間にある。第2側面104bは、第1側面104aの反対側にある。第3側面104cは、第1側面104aと第2側面104bの間にある。第4側面104dは、第3側面104cの反対側にある。積層体100は、第1面102aと第2面102bの間に厚さTを有しており、第1側面104aと第2側面104bの間に長さLを有しており、第3側面104cと第4側面104dの間に幅Wを有している。
・・・中略・・・
[0022] 積層体100の第1側面104aからは、第1リード112が突出している。第1リード112は、積層体100の第1電極110に電気的に接続している。」
「[0025] 図1に示すように、外装材200は、第1封止部210、第2封止部220及び第3封止部230を有している。第1封止部210は、積層体100の第1側面104aの外側にある。第2封止部220は、積層体100の第2側面104bの外側にある。第3封止部230は、積層体100の第4側面104dの外側にある。第1封止部210、第2封止部220及び第3封止部230においては、外装材200のうちの一部分同士が例えば溶着によって互いに貼り合わされている。このようにして、外装材200は、積層体100を封止している。
[0026] 図1から図3に示すように、第1リード112のうちの積層体100に近い部分は、第1封止部210によって封止されており、第1リード112のうちの積層体100から離れた部分は、第1封止部210から露出している。したがって、積層体100の第1電極110は、第1リード112を介して、外装材200の外部の部材と電気的に接続することができる。」
「[0036] 次いで、図7(b)に示すように、第3部分216及び第4部分218が第1部分212と第2部分214の間に入り込むように第1封止部210を形成する。第1封止部210のうちの重なり部を例えば溶着によって互いに接合させることで、図4に示したように、第3部分216及び第4部分218を第1部分212と第2部分214の間に折り込ませることができる。図7(a)及び図7(b)に示した例と同様にして、第2封止部220を形成することができる。」
「[図1]
[図:0001430052000001.jpg]
[図2]
[図:0001430052000002.jpg]
」
「[図4]
[図:0001430052000003.jpg]
」
「[図6]
[図:0001430052000004.jpg]
」
「[図7]
[図:0001430052000005.jpg]
」
「[図8]
[図:0001430052000006.jpg]
」
「[図10]
[図:0001430052000007.jpg]
」
2 記載された技術事項
上記記載事項より、甲第1号証には次の技術事項が記載されているといえる。
(1)[0013]の記載によれば、「電池10は、積層体100及び外装材200を備え」、「積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含」み、「外装材200は、積層体100を包んでいる」。
(2)[0020]の記載によれば、「積層体100は、実質的に直方体の形状を有し」ている。
また、[0022]の記載によれば、「積層体100の第1側面104aからは、第1リード112が突出し」ている。
そして、図1、図4および図6の記載からみて、第1リード112は積層体100より小さい実質的に直方体の形状を有し、電池10を第1リード112側(図1、図6におけるX軸方向)から側面視した場合に、第1リード112の外縁は、積層体100の外縁より内側に位置するように第1リード112は配置されていることが見てとれる。
さらに、[0022]の記載によれば、「第1リード112は、積層体100の第1電極110に電気的に接続」されている。
(3)[0025]の記載によれば、「外装材200は、第1封止部210」「を有し」、「第1封止部210は、積層体100の第1側面104aの外側にあ」り、「第1封止部210」「においては、外装材200のうちの一部分同士が」「溶着によって互いに貼り合わされて」、「外装材200は、積層体100を封止して」いる。
また、[0026]の記載によれば、「第1リード112のうちの積層体100に近い部分は、第1封止部210によって封止されて」いる。
(4)[0013]の記載によれば、「第1封止部210は、第1部分212、第2部分214及び第3部分216を含んで」おり、「第2部分214は、第1部分212と重なって」おり「第3部分216は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれている」。
また、[0015]の記載によれば、「第1封止部210は、第4部分218を含んで」おり、「第4部分218は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれている」。
そして、[0017]の記載によれば、「第1部分212、第2部分214及び第3部分216の重なり部並びに第1部分212、第2部分214及び第4部分218の重なり部は、幾重にも重なった外装材を有しており、これによって第1封止部210の高強度が実現される」。
(5)[0036]の記載によれば、「第1封止部210のうちの重なり部を」「溶着によって互いに接合させることで、」「第3部分216及び第4部分218を第1部分212と第2部分214の間に折り込ませる」。
3 記載された発明
上記「2(1)」ないし「2(5)」の技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、電池として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「電池10は、積層体100及び外装材200を備え、
積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含み、
外装材200は、積層体100を包んでおり、
積層体100は、実質的に直方体の形状を有し、積層体100の第1側面104aからは、第1リード112が突出し、第1リード112は積層体100より小さい実質的に直方体の形状を有し、電池10を第1リード112側から側面視した場合に、第1リード112の外縁は、積層体100の外縁より内側に位置するように第1リード112は配置され、
第1リード112は、積層体100の第1電極110に電気的に接続され、
外装材200は、第1封止部210を有し、第1封止部210は、積層体100の第1側面104aの外側にあり、第1封止部210においては、外装材200のうちの一部分同士が溶着によって互いに貼り合わされて、外装材200は、積層体100を封止し、第1リード112のうちの積層体100に近い部分は、第1封止部210によって封止されており、
第1封止部210は、第1部分212、第2部分214及び第3部分216を含んでおり、第2部分214は、第1部分212と重なっており、第3部分216は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれ、また、第1封止部210は、第4部分218を含んでおり、第4部分218は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれており、
第1部分212、第2部分214及び第3部分216の重なり部並びに第1部分212、第2部分214及び第4部分218の重なり部は、幾重にも重なった外装材を有しており、これによって第1封止部210の高強度が実現され、
第1封止部210のうちの重なり部を溶着によって互いに接合させることで、第3部分216及び第4部分218を第1部分212と第2部分214の間に折り込ませる、
電池。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「積層体100」は、「第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含」むものであるから、本件発明1の「電極体」に相当する。
イ 甲1発明の「第1リード112」は、「積層体100の第1側面104aから」「突出」しており、「外部の部材と電気的に接続」されるものであるから、本件発明1の「前記電極体の側面部に配置された集電端子」に相当する。
ウ 甲1発明の「外装材200」は、「積層体100を包んで」いるから、当該「外装材200」と本件発明1の「前記電極体を覆うラミネートフィルム」とは、「前記電極体を覆う外装」である点で一致するといえる。
ただし、外装が、本件発明1では「ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明ではその旨特定されていない点で相違する。
エ 甲1発明の「電池10」は、本件発明1の「電池」に相当する。
オ 甲1発明が「電池10を第1リード112側から側面視した場合に、第1リード112の外縁は、積層体100の外縁より内側に位置するように第1リード112は配置され」ていることは、本件発明1の「前記電池を前記集電端子側から側面視した場合に、前記集電端子の外縁は、前記電極体の外縁より内側に位置」することに相当する。
カ 甲1発明は「外装材200は、第1封止部210を有し、第1封止部210は、積層体100の第1側面104aの外側にあり、」「外装材200は、積層体100を封止し、第1リード112のうちの積層体100に近い部分は、第1封止部210によって封止」されているから、甲1発明の外装材200は積層体100を封止すると共に第1リード112の一部を封止しており、このことは、本件発明1の「前記ラミネートフィルムは、前記集電端子の前記外縁を構成する面、および、前記電極体の前記外縁を構成する面を覆うように配置され」ることと「前記外装は、前記集電端子の前記外縁を構成する面、および、前記電極体の前記外縁を構成する面を覆うように配置され」る点で一致する。
ただし、外装が、本件発明1では「ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明ではその旨特定されていない点で相違する。
キ 本件発明1は、「集電端子の角部に、前記ラミネートフィルムの内面同士が溶着した溶着部が配置され」るとともに、「前記溶着部は、前記集電端子の外縁を構成する4つの角部に配置されている」ものである。
一方、甲1発明は「外装材200は、第1封止部210を有し、」「第1封止部210は、~(中略)~第3部分216を含んでおり、」「第3部分216は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれ、また、第1封止部210は、第4部分218を含んでおり、第4部分218は、第1部分212と第2部分214の間に折り込まれ」、「第1封止部210のうちの重なり部を溶着によって互いに接合させることで、第3部分216及び第4部分218を第1部分212と第2部分214の間に折り込ませる」ものである。
このため、甲1発明の第3部分216及び第4部分218は、外装材200の内面同士が溶着された部分といえ、本件発明1の「前記ラミネートフィルムの内面同士が溶着した溶着部」と対応する。
したがって、甲1発明の第3部分216及び第4部分218と、本件発明1の「前記ラミネートフィルムの内面同士が溶着した溶着部」とは、「前記外装の内面同士が溶着した溶着部」を有する点で一致する。
ただし、外装が、本件発明1では「ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明ではその旨特定されていない点で相違する。
また、溶着部が、本件発明1は「集電端子の角部に」「配置され」るとともに「前記集電端子の外縁を構成する4つの角部に配置されている」のに対し、甲1発明では「第1部分212と第2部分214の間」に配置されている点で相違する。
ク 本件発明1は「前記ラミネートフィルムは、少なくとも金属層を有し、前記溶着部において、対向する前記金属層の間に第1樹脂層が配置され、前記金属層および前記集電端子の間に、第2樹脂層が配置され、前記第1樹脂層の厚さをTaとし、前記第2樹脂層の厚さをTbとした場合に、前記Taおよび前記Tbは、Ta>Tbを満たし、前記溶着部における前記金属層の厚さをTcとした場合に、前記Taおよび前記Tcは、0.5≦Ta/Tc≦4を満たし」ているのに対し、甲1発明ではその旨特定されていない点で相違する。
ケ 甲1発明は「電池10は、積層体100」「を備え、」「積層体100の第1側面104aからは、第1リード112が突出し、第1リード112は積層体100より小さい実質的に直方体の形状を有し」たものであるから、電池10を第1リード112側から側面視した場合、第1リード112の形状は四角形であり、このことは、本件発明1の「前記電池を集電端子側から側面視した場合、前記集電端子の形状は四角形であ」ることに相当する。
コ 上記アないしケより、本件発明1と甲1発明とは、
「電極体と、
前記電極体の側面部に配置された集電端子と、
前記電極体を覆う外装と、
を備える電池であって、
前記電池を前記集電端子側から側面視した場合に、前記集電端子の外縁は、前記電極体の外縁より内側に位置し、
前記外装は、前記集電端子の前記外縁を構成する面、および、前記電極体の前記外縁を構成する面を覆うように配置され、
前記外装の内面同士が溶着した溶着部を有し、
前記電池を集電端子側から側面視した場合、前記集電端子の形状は四角形である、電池。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
本件発明1では、外装が「ラミネートフィルム」であり、「前記ラミネートフィルムは、少なくとも金属層を有し、前記溶着部において、対向する前記金属層の間に第1樹脂層が配置され、前記金属層および前記集電端子の間に、第2樹脂層が配置され、前記第1樹脂層の厚さをTaとし、前記第2樹脂層の厚さをTbとした場合に、前記Taおよび前記Tbは、Ta>Tbを満たし、前記溶着部における前記金属層の厚さをTcとした場合に、前記Taおよび前記Tcは、0.5≦Ta/Tc≦4を満たし」ているのに対して、甲1発明ではその旨特定されていない点。
〈相違点2〉
溶着部が、本件発明1は「集電端子の角部に」「配置され」るとともに「「前記集電端子の外縁を構成する4つの角部に配置されている」のに対し、甲1発明では「第1部分212と第2部分214の間」に配置されている点。
(2)判断
ア 相違点1について
甲第3号証の【0184】~【0193】の記載によれば、蓄電装置用外装材の基材層の厚さを15μm、金属箔層の厚さを35μm、シーラント層としての金属箔側の層及び最内層の厚さをそれぞれ8.3μm、16.7μmとする技術が記載されている。
しかしながら、甲第3号証には、ラミネートフィルムの内面同士が溶着した溶着部を設けること、また、溶着部において、対向する金属層の間に第1樹脂層が配置され、金属層および集電端子の間に第2樹脂層が配置され、第1樹脂層の厚さをTaとし、第2樹脂層の厚さをTbとした場合に、TaおよびTbはTa>Tbを満たし、溶着部における金属層の厚さをTcとした場合に、前記Taおよび前記Tcは、0.5≦Ta/Tc≦4を満たす構成とすることは、記載も示唆もされていない。
ここで、甲第2号証にも、ラミネートフィルムの内面同士が溶着した溶着部を設けることや、溶着部において、対向する金属層の間に第1樹脂層が配置され、金属層および集電端子の間に第2樹脂層が配置され、第1樹脂層の厚さをTaとし、第2樹脂層の厚さをTbとした場合に、TaおよびTbはTa>Tbを満たし、溶着部における金属層の厚さをTcとした場合に、前記Taおよび前記Tcは、0.5≦Ta/Tc≦4を満たす構成とすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術に基づいて本件発明1の相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
そして、本件の明細書段落【0018】、【0031】の記載によれば、本件発明1は、Ta>Tbを満たすことにより溶着部における密着性が向上し、0.5≦Ta/Tc≦4を満たす構成とすることにより熱衝撃による密着部の破損が顕著に抑制されるという効果を奏するものである。
イ 相違点2について
甲第2号証には、積層型二次電池に関して正極端子150を電極体400と同程度の厚さとすることが見てとれる(図1ないし図7)。また、甲第3号証には、上記アで述べた技術が記載されている。しかしながら、甲第2号証、甲第3号証のいずれにも、溶着部を集電端子の外縁を構成する4つの角部に配置することは記載も示唆もされていない。
したがって、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術に基づいて本件発明1の相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
ここで、申立人は特許異議申立書において、「(ix)甲第2号証の図1等は、正極端子150が電極体400と同程度の厚さを有することが把握できる。当業者であれば、例えば、より多くの電力を出力する等の目的のため、甲第2号証の記載に基づいて、甲第1号証の第1リード112の厚さを大きくすることに容易に想到することができる。第1リード112の外縁が積層体100の外縁よりも内側の範囲において第1リード112の厚さを厚くした場合、第3部分216および第4部分218は、第1リード112の角部に配置される。」(第20頁第12ないし18行)と主張している。
しかしながら、第1リード112の外縁が積層体100の外縁よりも内側の範囲において第1リード112の厚さを厚くした場合、第3部分216および第4部分218は、その突出量が小さくなるとは考えられるものの、直ちに角部に配置されるとまではいえない。このため、申立人の主張は採用できない。
なお、甲1号証には、[0039]~[0045]、図8~図10に、変形例1および変形例2として上記甲1発明とは異なる溶着部の配置が記載されているものの、本件発明1の「溶着部を集電端子の外縁を構成する4つの角部に配置する」ことは記載も示唆もされていない。
ウ まとめ
よって、本件の請求項1に係る発明は甲第1号証及び甲第2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められず、本件の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件発明2ないし3について
本件の請求項2ないし3は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件の請求項2ないし3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
したがって、本件の請求項2ないし3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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