特許異議申立
2017-700763
インクジェット記録装置
- 審判番号
- 2017-700763
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-142803
- 登録番号
- 特許第6080711号(P6080711)
- 請求日
- 2017年08月03日
- 審決日
- 2018年11月06日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社ミマキエンジニアリング
- 【権利者代理人】井上 義隆
- 【権利者代理人】安井 友章
- 【権利者代理人】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
- 【異議申立人】山本 喜一
- 審判長/審判官
- 審判長 森次 顕
- 審判官 尾崎 淳史
- 審判官 藤本 義仁
- 分類
- P1651.121-ZDA(B41J) / P1651.536-ZDA(B41J) / P1651.537-ZDA(B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6080711号発明「インクジェット記録装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6080711号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕,4について訂正することを認める。
特許第6080711号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。
同請求項4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6080711号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は,平成25年7月8日に特許出願され,平成29年1月27日にその特許権の設定登録がされ,その後,請求項1ないし4に係る特許について,平成29年8月3日に特許異議申立人山本喜一により特許異議の申立てがされ,当審において平成29年11月29日付けで取消理由を通知し,その指定期間内である平成30年2月1日付けで特許権者から意見書の提出,及び訂正の請求がなされ,同年3月7日付けで特許異議申立人山本喜一から意見書が提出され,当審において平成30年5月15日付けで取消理由(決定の予告)を通知し,その指定期間内である同年7月13日付けで特許権者から意見書(以下,「特許権者意見書」という。)の提出,及び訂正の請求(以下,「本件訂正請求」という。)がなされ,同年8月29日付けで 特許異議申立人山本喜一から意見書(以下,「申立人意見書」という。)が提出されたものである。
なお,特許法第120条の5第7項の規定により,本件訂正請求がされたことにより,先にした訂正の請求である平成30年2月1日付けの訂正の請求は,取り下げられたものとみなされる。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項A
訂正前の請求項2及び3は,いずれも訂正前の請求項1を引用するものであって,訂正前の請求項1の訂正により連動して訂正されるものであるから,訂正事項Aは,訂正前の請求項1について訂正するものであって,訂正前の請求項1ないし3を訂正後の請求項1ないし3である一群の請求項について下記アないしオの事項について訂正するものである。
ア 訂正事項A-1
特許請求の範囲の請求項1の「インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において,」を
「インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動させながら,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により該記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返すことにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置において,」と訂正する(下線は訂正箇所を示すため当審で付した。以下同じ。)。
イ 訂正事項A-2
特許請求の範囲の請求項1の「前記検出手段は,前記記録媒体もしくは前記載置部を把持する把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と,を有し,」を
「前記検出手段は,前記載置部を把持する把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と,を有し,」と訂正する。
ウ 訂正事項A-3
特許請求の範囲の請求項1の「前記把持手段は,前記把持部によって前記記録媒体もしくは前記載置部を把持することにより,前記記録媒体もしくは前記載置部の移動に連動して移動し,」を
「前記把持手段は,前記把持部によって前記載置部を把持することにより,前記載置部の移動に連動して移動し,」と訂正する。
エ 訂正事項A-4
特許請求の範囲の請求項1の「前記制御手段は,前記移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を把持するように制御し,」を
「前記制御手段は,前記移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が該記録媒体を載置する載置部を把持するように制御し,」と訂正する。
オ 訂正事項A-5
特許請求の範囲の請求項1の「前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動の制御を行う」を
「前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」と訂正する。
(2)訂正事項B
訂正事項Bは,訂正前の請求項1ないし3を引用する請求項4を実質的に請求項2及び3の引用を削除した上で,請求項1を引用する請求項4を書き下した訂正をし,その上で,上記訂正事項A-1及びA-5と同様の限定をする訂正をし,さらに,把持手段の把持部が把持する対象について択一的に記載されていた「記録媒体もしくは載置部」を「記録媒体」に訂正するものであって,
特許請求の範囲の請求項4の「前記把持部は,上下方向に密着・解離可能に配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。」を
「 インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動させながら,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により該記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返すことにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置において,
前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と,
前記記録媒体もしくは前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段と,
前記移動手段および前記検出手段の制御を行う制御手段と,を備え,
前記検出手段は,前記記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と,を有し,
前記把持手段は,前記把持部によって前記記録媒体を把持することにより,前記記録媒体の移動に連動して移動し,
前記制御手段は,
前記移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が前記記録媒体を把持するように制御し,
前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行うこと
を特徴とするインクジェット記録装置。」に訂正するものである。
また,訂正後の請求項4に係る訂正について,特許権者は,当該訂正が認められるときに請求項1ないし3とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
(3)上記のとおり,本件訂正請求は,請求項1ないし4に係る一群の請求項について訂正が請求されている。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項Aについて
ア 訂正事項A-1は,訂正前の請求項1に記載の「インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置」を「該記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動させながら,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により該記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返すことにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置」に限定するものであるから,当該訂正事項A-1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして,本件明細書の段落【0021】には「・・・図2に示すように,上ボディ部15の内部には左右に延びたガイドレール16が設けられ,このガイドレール16に対して左右に往復移動可能にヘッドユニット20が取り付けられている。このヘッドユニット20は,左右移動機構により駆動されて上ボディ部15の内部においてガイドレール16に沿って左右に搬送移動されるようになっている。」と記載され,同段落【0038】には「通常印刷時において,インクジェット記録装置10は,ベルト30に載置された記録媒体Mに対して,ヘッドユニット20をガイドレール16に沿って左右に往復移動させながら,記録ヘッド22の下面に設けられたノズルから下方に向けてインクの液滴を吐出させて,所望のパターンで記録媒体Mに付着させる。記録媒体M上の所定前後幅に対する印刷が完了すると,移動手段31(駆動ローラである第1ローラ31Aおよび従動ローラである第2ローラ31B)を駆動することによってベルト30を前後にスライド移動させ,再びヘッドユニット20を左右に往復移動させながら,インクの液滴を吐出させる。このような作動を繰り返すことにより,記録媒体Mの印刷領域全体に所望の文字や図柄が印刷される。」と記載されていることからすれば,上記訂正事項A-1が本件明細書に記載された事項の範囲内における訂正であるといえるから,同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項A-2ないしA-4について
訂正事項A-2ないしA-4は,いずれも,訂正前の請求項1において,把持手段の把持部が把持する対象として択一的に記載されていた「記録媒体」若しくは「載置部」から「記録媒体」を削除する訂正をするものであるから,これらの訂正事項は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,いずれも本件明細書,本件特許請求の範囲又は本件図面に記載した事項の範囲内でするものであることは明らかであるから,同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項A-5について
訂正事項A-5は,請求項1の「制御手段」に関して,訂正前の請求項1において,「制御手段」が「把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動の制御を行う」ものとの特定を「把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」ものとより具体的に特定する訂正をするものであるから,訂正事項A-5は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして,本件明細書の段落 【0011】には「・・・前記制御手段は,前記移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を把持するように制御し,前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動の制御を行うことを特徴とする。これによれば,把持手段は,把持部によって載置部を把持することにより,載置部の移動に連動して移動することとなる。したがって,このときの把持手段の移動量を検出部によって連続的に検出することにより,極めて正確に載置部の移動量を検出することが可能となる。当該検出値に基づいて移動手段の移動を補正しながら制御することによって,載置部に載置された記録媒体の正確な位置決めが可能となるため,高画質の記録を行うことが可能となる。」と記載され,段落【0031】には「上記の構成によれば,移動手段31の駆動によりベルト30が移動する際に,コントロールユニット28からの制御信号によって把持部44でベルト30を把持させることにより,移動するベルト30に連動して把持手段42が前後方向に移動する作用が得られる。」と記載され,同段落【0032】には「また,検出部48は,把持手段42が前後方向に移動する際に,当該移動(移動量)を連続的に検出する構成を備えている。より具体的には,本実施形態に係る検出部48としてのリニアスケールは,ヘッド部48aおよびスケール部48bを備えて構成されている。このリニアスケール48によって,把持手段42の前後方向の移動(移動量)が検出可能となっている。」と記載され,同段落【0033】には「これによれば,把持手段42は把持部44によってベルト30を把持した状態で当該ベルト30と連動して前後方向に移動するため,把持手段42の移動量を検出することで,ベルト30の移動量を検出することができる。本実施形態においては上記の通り,リニアスケール48によって検出を行うことができるため,従来のエンコーダ等による検出機構と比較して,極めて正確にベルト30の移動量を検出することが可能となる。」と記載され,同段落【0034】には「より詳しくは,例えば従来のエンコーダによる検出機構の場合,無端状のベルトには繋ぎ目が存在してベルトの厚さ変動が生じるため,当該ベルトの厚さ変動が原因となって検出値に誤差が生じてしまう課題があった。しかし,本実施形態によれば,ベルト30の移動量を把持手段42の移動量としてリニアスケール48によって検出することができるため,上記のような検出誤差の課題を解決することが可能となる。また,従来の方式において課題となっていたベルトの表面粗さに起因するすべりの発生を原因とする検出誤差に対しても,本実施形態によれば,把持部44がベルト30を把持して当該ベルト30に連動して移動する構成によって解決することが可能となる。 さらには,従来の方式において課題となっていたベルトの蛇行を原因とする検出誤差に対しても,本実施形態によれば,把持部44がベルト30を把持して当該ベルト30に連動して移動する構成で,且つ,ベルト30の移動量を左右二つの検出手段40A,40Bによって検出する構成によって解決することが可能となる。」と記載され,同段落【0035】には「このように,検出手段40によって極めて正確にベルト30の実際の移動量を検出することが可能となる。したがって,当該検出値に基づいて移動手段31の移動(すなわち電気モータ35の駆動)を精緻に補正しながら,ベルト30すなわちベルト30に載置された記録媒体Mが正確な位置となるように移動手段31の移動(すなわち電気モータ35の駆動)の制御を行うことが可能となる。その結果,記録媒体Mへの高画質の記録を行うことが可能となる。」と記載されていることからすれば,本件明細書には,「制御手段」が「把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」ことが記載されているものといえるから,同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 以上のとおり,訂正事項A-1ないしA-5はいずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,これらの訂正が実質的に特許請求の範囲を拡張するものではないことは明らかであり,これらの訂正事項による訂正により,訂正後の請求項1に係る発明の解決しようとする課題が訂正前の請求項1に係る発明の課題と異なるものとなるものでもないことに鑑みると,特許請求の範囲を実質的に変更するものに該当するものでもないことは明らかである。
したがって,訂正事項A-1ないしA-5による訂正は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項Bについて
訂正事項Bは,上記1の(2)において説示したように,訂正前の請求項1ないし3を引用する請求項4を実質的に請求項2及び3の引用を削除した上で,請求項1を引用する請求項4を書き下した訂正をし,その上で,上記訂正事項A-1及びA-5と同様の限定をする訂正をし,さらに,把持手段の把持部が把持する対象について択一的に記載されていた「記録媒体もしくは載置部」を「記録媒体」とする訂正をするものである。
ア 訂正前の請求項1ないし3を引用する請求項4を実質的に請求項2及び3の引用を削除した上で,請求項1を引用する請求項4を書き下した訂正について(以下,訂正事項B-1という。)
訂正事項が,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に該当するためには,(a)当該訂正により他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとされることに加えて,(b)当該他の請求項の記載を引用しないものとした訂正後の発明が,訂正前の他の請求項の記載を引用する請求項から把握される対応する発明の発明特定事項を欠くものではないことという,2つの条件を充足することが必要であると解される。
本件訂正事項B-1は,訂正前の請求項1ないし3を引用する請求項4を請求項1を引用する請求項4を書き下した訂正をするものであり,請求項1ないし3を引用しないものへと訂正するものであるから,上記(a)を充足することは明らかであり,また,訂正後の請求項4は,訂正前の請求項1を引用する請求項4に対応するものであり,後述するように,訂正後の請求項4に係る発明は,訂正前の請求項1を引用する請求項4に係る発明をさらに減縮するものであるから,(b)の条件を充足することは明らかである。
そして,請求項4について,実質的に請求項2及び3の引用を削除する訂正は,他の請求項を択一的に引用している請求項について,択一的に引用している請求項を削除する訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして,当該訂正B-1は,本件明細書,本件特許請求の範囲又は本件図面に記載した事項の範囲内でするものであることは明らかであるから,同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 請求項4について,上記訂正事項A-1及びA-5と同様の限定をする訂正について(以下,「訂正事項B-2」という。)
訂正事項B-2は,書き下した訂正前の請求項1を引用する請求項4の「インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において,」を「インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動させながら,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により該記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返すことにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置において,」と訂正する訂正事項と,書き下した訂正前の請求項1を引用する請求項4の「前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動の制御を行う」を「前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」と訂正するものであるから,上記(1)ア及びウで検討したように,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 請求項4について,把持手段の把持部が把持する対象について択一的に記載されていた「記録媒体もしくは載置部」を「記録媒体」とする訂正について(以下,「訂正事項B-3」という。)
訂正事項B-3は,いずれも,訂正前の請求項1を引用する請求項4において,把持手段の把持部が把持する対象として択一的に記載されていた「記録媒体」もしくは「載置部」から「載置部」を削除する訂正をするものであるから,これらの訂正事項は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,いずれも本件明細書,本件特許請求の範囲又は本件図面に記載した事項の範囲内でするものであることは明らかであるから,同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
オ 以上のとおり,訂正事項B-1ないしB-3は,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするもの又は同項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり,また,訂正後の請求項4に係る発明は,上述のとおり,訂正前の請求項1を引用する請求項4に係る発明をさらに減縮するものであるから,これらの訂正が実質的に特許請求の範囲を拡張するものではないことは明らかであり,これらの訂正事項による訂正により,訂正後の請求項4に係る発明の解決しようとする課題が訂正前の請求項1を引用する請求項4に係る発明の課題と異なるものとなるものでもないことに鑑みると,特許請求の範囲を実質的に変更するものに該当するものでもないことは明らかである。
したがって,訂正事項Bによる訂正は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
なお,訂正事項B,すなわち,請求項4に係る訂正について,特許権者は,当該訂正が認められるときに請求項1ないし3とは別の訂正単位として扱われることを求めているものである。
3 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に規定する事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,本件特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1ないし3],4について訂正することを認める。
第3 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)の概要
平成30年5月15日付けで当審が特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)(以下,「本件決定の予告」という。)の取消理由の概要は次のとおりのものである。
請求項1,3及び4に係る発明は,甲1号証に記載された発明及び甲3号証に記載された発明に基づいて,請求項2に係る発明は,甲1号証に記載された発明及び甲3号証に記載された発明又は甲1号証に記載された発明並びに甲3号証及び甲7号証に記載された発明に基づいて,いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1ないし4に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
2 本件訂正請求による訂正後の請求項1~4に係る発明
上記第2の訂正の適否についての判断において説示したように,本件訂正請求による訂正が認められることから本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし4に係る発明(以下,それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明4」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動させながら,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により該記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返すことにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置において,
前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と,
前記記録媒体もしくは前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段と,
前記移動手段および前記検出手段の制御を行う制御手段と,を備え,
前記検出手段は,前記載置部を把持する把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と,を有し,
前記把持手段は,前記把持部によって前記載置部を把持することにより,前記記録載置部の移動に連動して移動し,
前記制御手段は,
前記移動手段によって前記記録媒体若しくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が該記録媒体を載置する載置部を把持するように制御し,
前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行うこと
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記移動手段を駆動させることによって,または前記把持手段を駆動させることによって前記記録媒体もしくは前記載置部を移動させる駆動力を発生する駆動手段を備えることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記移動手段は,一対のローラであり,
前記載置部は,前記一対のローラに掛け回されたベルトであること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動させながら,該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により該記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返すことにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置において,
前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と,
前記記録媒体もしくは前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段と,
前記移動手段および前記検出手段の制御を行う制御手段と,を備え,
前記検出手段は,前記記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と,を有し,
前記把持手段は,前記把持部によって前記記録媒体を把持することにより,前記記録媒体の移動に連動して移動し,
前記制御手段は,
前記移動手段によって前記記録媒体若しくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が前記記録媒体を把持するように制御し,
前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行うこと
を特徴とするインクジェット記録装置。」
3 甲各号証の記載
(1)甲1号証
本件決定の予告の取消理由で引用した甲1号証(特開2006-281750号公報)には,次の事項が記載されている。
ア 「用紙を搬送する用紙搬送ベルトと,
該用紙搬送ベルトを駆動する駆動手段と,
前記用紙搬送ベルトに設けられており,位置情報が示されると共にその一部にスケール継ぎ目が存在するスケールと,
前記スケールから位置情報を読み取る位置検出手段と,
前記位置検出手段からの出力から位置情報を生成し,該位置情報に基づき前記駆動手段を制御して前記用紙搬送ベルトの駆動制御を行う制御手段とを有する画像形成装置において,
前記位置検出手段として前記スケールから位置情報を読み取る第1のセンサーと第2のセンサーを設けると共に,該第1及び第2のセンサーを前記スケール継ぎ目の隙間以上に離間するよう配設し,
かつ,前記制御手段が,前記第1のセンサーから出力される第1のセンサー出力及び第2のセンサーから出力される第2のセンサー出力に重み付けを行った後に合成したものを位置情報として用いるよう構成したことを特徴とする画像形成装置。」(【請求項1】)
イ 「このセンサー8は検出装置9に接続されており,この検出装置9ではセンサー8から送られるセンサー出力に基づき,紙搬送ベルト2の移動に対応して発生する正弦波状の山の数(パルス数)をカウントする。この紙搬送ベルト2の移動に対応したカウント値は,制御装置10に送られ,制御装置10はこれに基づきモータ3を駆動制御する駆動装置11を制御する。これにより,紙搬送ベルト2の移動速度は規定の速度に制御され,よって高品質の画像生成が可能となる。」(段落【0005】)
ウ 「図2は,本発明の一実施例である画像形成装置20を示す構成図である。同図に示す画像形成装置20は,モータ23により駆動ローラ24を駆動し,これにより駆動ローラ24と従動ローラ25との間に配設された紙搬送ベルト22を回転させ,紙搬送ベルト22上に載置された用紙(図示せず)を搬送する機構とされている。」(段落【0024】)
エ 「IJキャリッジ26は,紙搬送ベルト22の上面(即ち,用紙上)を矢印X方向に移動可能な構成とされている。そして,紙搬送ベルト22により用紙が搬送される過程においてIJキャリッジ26はY方向に移動し,その過程において用紙に対し印刷(画像形成)を行う。この用紙に対して高品質の印刷(画像形成)を行うには,IJキャリッジ26の駆動制御と共に,紙搬送ベルト22の駆動制御が重要である。」(段落【0027】)
オ 「加算器50は,スケール継ぎ目37の検出信号に基づき,カウンタ44から送られる第1のセンサー出力に基づくカウントと,カウンタ45から送られる第1のセンサー出力に基づくカウントとを重み付けして乗算器49に送る。乗算器49では,第2の補正器52で求められる補正係数(これについては後述する)を乗算することにより補正処理を行う。上記のようにして生成されたカウント値(以下,カウント値Yという)は,制御装置30に送られる。そして,制御装置30では,検出装置29から送られるカウント値Yに基づきモータ23の駆動制御を行う。」(段落【0037】)
カ 上記イには,従来技術において,制御装置がカウント値に基づいて紙搬送ベルトの移動速度を規定の速度に制御していることが記載され,一方,上記オには,発明を実施するための最良の形態において,制御装置がカウント値に基づいてモータを駆動制御,すなわちモータにより駆動される紙搬送ベルト(用紙搬送ベルト)の移動を制御していることが記載されているから,上記イの記載を踏まえると,「制御装置がカウント値に基づいて紙搬送ベルトの移動速度を規定の速度に制御している」といえる。
してみると,上記「制御装置」に相当する上記アの請求項1に記載の「制御手段」は,「用紙搬送ベルトの移動を補正しながら用紙搬送ベルトの移動を制御している」といえる。
キ これらの記載を総合すると,甲1号証には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「モータ23により駆動ローラ24を駆動し,これにより駆動ローラ24と従動ローラ25との間に配設された紙搬送ベルト22を回転させ,紙搬送ベルト22上に載置された用紙を搬送する機構と,
用紙に対し印刷(画像形成)を行うIJキャリッジ26と,
IJキャリッジ26は,紙搬送ベルト22の上面(即ち,用紙上)を矢印X方向に移動可能な構成とされ,紙搬送ベルト22により用紙が搬送される過程においてIJキャリッジ26はY方向に移動し,その過程において用紙に対し印刷(画像形成)を行うものであり,
ベルトに設けられており,位置情報が示されると共にその一部にスケール継ぎ目が存在するスケールと,
前記スケールから位置情報を読み取る位置検出手段と,
前記位置検出手段からの出力から位置情報を生成し,該位置情報に基づき前記駆動手段を制御して前記用紙搬送ベルトの移動を補正しながら前記用紙搬送ベルトの駆動制御を行う制御手段とを有する画像形成装置において,
前記位置検出手段として前記スケールから位置情報を読み取る第1のセンサーと第2のセンサーを設けると共に,該第1及び第2のセンサーを前記スケール継ぎ目の隙間以上に離間するよう配設し,かつ,前記制御手段が,前記第1のセンサーから出力される第1のセンサー出力及び第2のセンサーから出力される第2のセンサー出力に重み付けを行った後に合成したものを位置情報として用いるよう構成した画像形成装置。」
ク 特許権者は,「引用発明1の「制御手段」は,引用例1の段落【0005】に記載されているとおり,「紙搬送ベルト2の移動に対応して発生する正弦波状の山の数(パルス数)をカウントする。この紙搬送ベルト2の移動に対応したカウント値は,制御装置に送られ,制御装置10はこれに基づきモータ3を駆動制御する駆動装置11を制御する。これにより,紙搬送ベルト2の移動速度は規定の速度に制御され」るものである。つまり,引用発明1においては,「紙搬送ベルト2」はパルス数に応じて「規定」の移動速度で移動するよう制御されているにすぎず,その「移動を補正しながら」制御されるものではない」と主張している。(特許権者意見書6頁)
(ア)そこで,本件各訂正発明における「前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」ことの意味する内容について検討する。
本件特許明細書には,「移動手段の移動を補正しながら,移動手段の移動の制御を行う」ことに関して,「【0011】・・・把持手段は,把持部によって載置部を把持することにより,載置部の移動に連動して移動することとなる。したがって,このときの把持手段の移動量を検出部によって連続的に検出することにより,極めて正確に載置部の移動量を検出することが可能となる。当該検出値に基づいて移動手段の移動を補正しながら制御することによって,載置部に載置された記録媒体の正確な位置決めが可能となるため,高画質の記録を行うことが可能となる。」,「【0033】これによれば,把持手段42は把持部44によってベルト30を把持した状態で当該ベルト30と連動して前後方向に移動するため,把持手段42の移動量を検出することで,ベルト30の移動量を検出することができる。本実施形態においては上記の通り,リニアスケール48によって検出を行うことができるため,従来のエンコーダ等による検出機構と比較して,極めて正確にベルト30の移動量を検出することが可能となる。」,「【0035】このように,検出手段40によって極めて正確にベルト30の実際の移動量を検出することが可能となる。したがって,当該検出値に基づいて移動手段31の移動(すなわち電気モータ35の駆動)を精緻に補正しながら,ベルト30すなわちベルト30に載置された記録媒体Mが正確な位置となるように移動手段31の移動(すなわち電気モータ35の駆動)の制御を行うことが可能となる。その結果,記録媒体Mへの高画質の記録を行うことが可能となる。」との記載があり,これらの記載によれば,本件各訂正発明の「前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら・・・制御を行う」とは,従来のエンコーダ等による検出機構と比較して,極めて正確にベルトの実際の移動量を検出する把持手段の移動を検出する検出手段の検出値に基づいて移動手段の移動を精緻に制御することが含まれるものと解される。
(イ)そして,上記カにおいて検討したように,引用発明1においては,制御装置がカウント値に基づいて紙搬送ベルトの移動速度を規定の速度に制御していることが記載され,一方,上記オには,発明を実施するための最良の形態において,制御装置がカウント値に基づいてモータを駆動制御,すなわちモータにより駆動される紙搬送ベルト(用紙搬送ベルト)の移動を制御していることが記載されており(なお,この点が甲1号証に記載されていることは特許権者も認めているところである。),ここでの「紙搬送ベルトの移動に対応して発生する正弦波状の山の数(パルス数)」である制御装置がカウントするカウント値とは,紙搬送ベルトの内側に配設されているベルト1周にわたってベルト位置を計測するリニアスケールの読み取りパルスのカウントである(甲1号証の段落【0004】等の記載を参照)から,従来のエンコーダに比較して,紙搬送ベルトの実際の移動量を精緻に制御することが可能なものであることは明らかである。
したがって,甲1号証には,本件各訂正発明と同様に,「検出手段によって極めて正確にベルトの実際の移動量を検出することが可能」であり,「当該検出値に基づいて移動手段の移動を精緻に補正しながら,ベルトが正確な位置となるように移動手段の移動の制御を行う」ものが記載されているというべきであるから,特許権者の主張は採用することができない。
(2)甲3号証
本件決定の予告の取消理由で引用した甲3号証(特許第2516694号公報)には,次の事項が記載されている。
ア 「エンドレスベルトを間欠駆動するための直流モータ或いは交流サーボモータ,エンドレスベルトのリピート長をパルス数に変換設定するためのデジタルスイッチ,エンドレスベルトの移動に伴ってその実際の送り長さをパルス数として直線的に検出するリニアスケールを用いるエンドレスベルトの送り長さ検出機構,前記設定パルス数に対応して,モータへの起動,加速駆動,低速駆動及び減速駆動,停止の信号を発信させるためのデジタル制御機構,及び前記デジタル制御機構からの信号に基づいて,前記モータへの入力を制御して,該モータを起動,加速駆動,低速駆動及び減速駆動,停止させるためのモータ制御機構より成り,
前記エンドレスベルトの送り長さ検出機構が,エンドレスベルトの側縁を開放自在に挟持するクランプ機構,クランプ機構をエンドレスベルトと共に移動可能に支承する移動機構,移動したクランプ機構を原点位置に戻す復帰機構,及びパルス検知ヘッドとパルス検知ヘッドの移動に伴いその移動距離をパルス数として直線的に検出するリニアメインスケールより成るリニアスケールを備えており,且つ該リニアスケールはエンドレスベルトの側方に平行して機台に配設され,該パルス検知ヘッドが前記クランプ機構に一体に取付けられているものであり,
前記デジタル制御機構は,前記設定パルス数から検出パルス数を減算演算し,設定パルス数に対応するリピート長でエンドレスベルトを停止させるように減速信号を発生する演算機構を備えていることを特徴とする自動スクリーン捺染機におけるエンドレスベルトの間欠的駆動装置。」(1頁1欄2行~2欄15行)
イ 「クランプ機構10は,エンドレスベルト4の間欠駆動に先立ち,エンドレスベルト4の一側縁部を挟持し,エンドレスベルト4の間欠駆動時エンドレスベルト4と共に移動する。1リピート長の移動を終了するとエンドレスベルト4は止まり,その時点で直ちにクランプ機構10はエンドレスベルト4の挟持を開放する。」(3頁6欄10~15行)
ウ 「エンドレスベルトの間欠的駆動は,第4図に示す自動スクリーン捺染機の捺染運転時の各動作のタイムチャートに示されるようなプログラムによって自動的に行なわれる。」(4頁7欄31~34行)
エ 「機台1の一端には,駆動ローラ2が,他端には被動ローラ3が設けられ,この両ローラ間にエンドレスベルト4が張架されている。
駆動ローラ2は減速機6を介して駆動モータ5により間欠駆動が行なわれ,これに従ってエンドレスベルト4も設定されたリピート長Pにて間欠駆動される。」(4頁8欄13~18行)
オ 「間欠搬送される被染布8に対し,公知方法のスキージ操作により捺染を施す。」(4頁8欄25~26行)
カ 「クランプ機構10は,ブラケット13,これに固着されたクランプ用エアーシリンダ14及びエアーシリンダ14のピストンロッド15に固着され,共に上下動するクランププレート16から成っている。」(5頁9欄10~14行)
キ 第4図から,「エンドレスベルト間欠送り,クランプシリンダーのON,OFF等の捺染運転時の1サイクルにおけるタイムチャート」が看取できる。
ク 上記ウ及びキの記載を踏まえると,自動スクリーン捺染機の捺染運転時のエンドレスベルト間欠送り,クランプシリンダーのON,OFF等の動作のタイムチャートは,プログラムによって自動的に行われるから,「エンドレスベルト間欠送り及びクランプシリンダーのON,OFF等の一連の動作の制御は,制御手段が行っている」ことは明らかである。
ケ 上記アの記載から,「エンドレスベルトの間欠的駆動装置を備えた自動スクリーン捺染機」が示されているといえる。
コ これらの記載を総合すると,甲3号証には,次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「エンドレスベルトを間欠駆動するための直流モータ或いは交流サーボモータ,エンドレスベルトのリピート長をパルス数に変換設定するためのデジタルスイッチ,エンドレスベルトの移動に伴ってその実際の送り長さをパルス数として直線的に検出するリニアスケールを用いるエンドレスベルトの送り長さ検出機構,前記設定パルス数に対応して,モータへの起動,加速駆動,定速駆動及び減速駆動,停止の信号を発信させるためのデジタル制御機構,及び前記デジタル制御機構からの信号に基づいて,前記モータへの入力を制御して,該モータを起動,加速駆動,低速駆動及び減速駆動,停止させるためのモータ制御機構より成り,
前記エンドレスベルトの送り長さ検出機構が,エンドレスベルトの側縁を開放自在に挟持するクランプ機構,クランプ機構をエンドレスベルトと共に移動可能に支承する移動機構,移動したクランプ機構を原点位置に戻す復帰機構,及びパルス検知ヘッドとパルス検知ヘッドの移動に伴いその移動距離をパルス数として直線的に検出するリニアメインスケールより成るリニアスケールを備えており,且つ該リニアスケールはエンドレスベルトの側方に平行して機台に配設され,該パルス検知ヘッドが前記クランプ機構に一体に取付けられているものであって,
クランプ機構は,ブラケット13,これに固着されたクランプ用エアーシリンダ14及びエアーシリンダ14のピストンロッド15に固着され,共に上下動するクランププレート16から成り,エンドレスベルトの間欠駆動に先立ち,エンドレスベルトの一側縁部を挟持し,エンドレスベルトの間欠駆動時エンドレスベルトと共に移動し,1リピート長の移動を終了するとエンドレスベルトは止まり,その時点で直ちにクランプ機構はエンドレスベルトの挟持を開放し,
制御手段は,エンドレスベルト間欠送り及びクランプシリンダーのON,OFF等の動作の制御を行い,
機台の一端には,駆動ローラが,他端には被動ローラが設けられ,この両ローラ間にエンドレスベルトが張架されており,駆動ローラは駆動モータにより間欠駆動が行なわれ,これに従ってエンドレスベルトも間欠駆動され,
間欠搬送される被染布に対し,捺染を施す,
エンドレスベルトの間欠的駆動装置を備えた自動スクリーン捺染機。」
(3)甲7号証
本件決定の予告の取消理由で引用した甲7号証(特開平4-7179号公報)には,次の事項が記載されている。
ア 「プラテンローラとこのプラテンローラに圧接可能に対向配置された感熱記録ヘッドとからなる記録部と,
被転写体である記録用紙に重ねあわされて前記プラテンローラと感熱記録ヘッドとの間の転写部に挿通され記録用紙の移動と同調して移動する複数色のインクが付着された転写型記録媒体と,
を有し,前記感熱記録ヘッドによって前記転写型記録媒体の複数のインクを選択的に転写して記録を行うカラーサーマルプリンタにおいて,
前記プラテンローラと所定間隔をおいて平行に配置されたサポートローラとの間にベルトが懸架された回転自在の記録用紙搬送手段と,
その記録用紙搬送手段の搬送面のベルトと記録用紙とを固定又は固定解除可能に保持するグリッパと,
そのグリッパを前記転写部近傍から所定範囲の間を位置制御可能に揺動させるグリッパ移動手段と,
を備え,前記グリッパで前記記録用紙搬送手段のベルトと記録用紙とを固定して前記グリッパ移動手段で移動させつつ記録用紙の搬送及び転写を行うようにしたことを特徴とするカラーサーマルプリンタ。」(1頁左下欄5行~右下欄9行)
イ 「前記グリッパ移動手段は,この実施例では第2図に示すように,グリッパ30端部にネジ溝37が切られ,そのネジ溝37と係合してグリッパ30を図の左右方向に移動させる回転可能なボールネジ36と,そのボールネジ36と一体化して回転する従動プーリ40と,その従動プール40に回転力を伝えるベルト42と,そのベルト42を回転駆動させる駆動プーリ44及び駆動モータ46とで構成されている。」(5頁左上欄6~14行)
ウ これらの記載を総合すると,甲7号証には,次の発明(以下,「引用発明7」という。)が記載されているものと認められる。
「プラテンローラとこのプラテンローラに圧接可能に対向配置された感熱記録ヘッドとからなる記録部と,
被転写体である記録用紙に重ねあわされて前記プラテンローラと感熱記録ヘッドとの間の転写部に挿通され記録用紙の移動と同調して移動する複数色のインクが付着された転写型記録媒体と,
を有し,前記感熱記録ヘッドによって前記転写型記録媒体の複数のインクを選択的に転写して記録を行うカラーサーマルプリンタにおいて,
前記プラテンローラと所定間隔をおいて平行に配置されたサポートローラとの間にベルトが懸架された回転自在の記録用紙搬送手段と,
その記録用紙搬送手段の搬送面のベルトと記録用紙とを固定又は固定解除可能に保持するグリッパと,
そのグリッパを前記転写部近傍から所定範囲の間を位置制御可能に揺動させるグリッパ移動手段と,
を備え,
前記グリッパ移動手段は,グリッパ端部にネジ溝が切られ,そのネジ溝と係合してグリッパを移動させる回転可能なボールネジと,そのボールネジと一体化して回転する従動プーリと,その従動プールに回転力を伝えるベルトと,そのベルトを回転駆動させる駆動プーリ及び駆動モータとで構成されており,
前記グリッパで前記記録用紙搬送手段のベルトと記録用紙とを固定して前記グリッパ移動手段で移動させつつ記録用紙の搬送及び転写を行うようにしたカラーサーマルプリンタ。」
4 判断
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「IJキャリッジ26」は,その構造,機能,作用等からみて,本件訂正発明1の「記録ヘッド」に相当し,以下同様に,「用紙」は「記録媒体」に,「画像形成装置」は「インクジェット記録装置」に,「『紙搬送ベルト22』及び『用紙搬送ベルト』」は「載置部」に,「『駆動ローラ24』及び『従動ローラ25』」は「移動手段」に,「『スケール』及び『位置検出手段』」は「『検出手段』及び『検出部』」に,「制御手段」は「制御手段」に,それぞれ相当する。
(イ)引用発明1の「IJキャリッジ26」は,紙搬送ベルト22の上面(即ち,用紙上)を矢印X方向に移動可能な構成とされ,紙搬送ベルト22により用紙が搬送される過程においてIJキャリッジ26はY方向に移動し,その過程において用紙に対し印刷(画像形成)を行うものであるから,引用発明1の「IJキャリッジ26」は,「X方向に往復移動させながら」印字を行うものであり,Y方向に記録媒体を移動させることにより,印刷範囲に対して印刷を行うものであることは明らかである。
してみると,本件訂正発明1と引用発明1とは,「インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドを往復移動させながら,該記録ヘッドからインク液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により記録媒体を該往復移動に交差する方向に移動させることにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行う」ものである点で共通するものといえる。
(ウ)a 引用発明1の「制御手段」は,位置検出手段からの出力から生成された位置情報に基づき,モータ23により駆動される駆動ローラ24と従動ローラ25との間に配設された紙搬送ベルト22の駆動制御を行うから,「モータ23により駆動される駆動ローラ24と従動ローラ25」からなる「紙搬送ベルト22」の移動手段を備え,「位置検出手段による検出結果に基づいて」移動手段である「駆動ローラ24及び従動ローラ25の移動の制御を行っている」といえる。
b 引用発明1の「位置検出手段」は,用紙搬送ベルトに設けられたスケールからの位置情報を読み取るから,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する」といえる。
c 引用発明1の「制御手段」は,位置検出手段からの出力から位置情報を生成し,該位置情報に基づき駆動手段を制御して用紙搬送ベルトの移動を補正しながら前記用紙搬送ベルトの駆動制御を行うから,「位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを回転させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」といえる。
d 以上のことを総合すると,引用発明1は,「モータにより駆動される駆動ローラと従動ローラ」からなる「用紙搬送ベルト」の移動手段と,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段」と,「前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御する制御手段」とを備え,「制御手段」は,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを移動させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」ものを備えているといえる。
e してみると,本件訂正発明1が「前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と,前記記録媒体もしくは前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段と,前記移動手段および前記検出手段の制御を行う制御手段と,を備え,前記検出手段は,前記載置部を把持する把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と,を有し,前記把持手段は,前記把持部によって前記載置部を把持することにより,前記記録載置部の移動に連動して移動し,前記制御手段は,前記移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が該記録媒体を載置する載置部を把持するように制御し,前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」ものであることと,
引用発明1が「モータにより駆動される駆動ローラと従動ローラ」からなる「用紙搬送ベルト」の移動手段と,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段」と,「前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御する制御手段」とを備え,「制御手段」は,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを移動させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」引用発明1の「制御手段」が「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを回転させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」ものであることとは,
共に,「記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段」と,「前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段」と,「前記移動手段の制御を行う制御手段」とを備え,「前記制御手段は,前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」ものである点で共通するといえる。
(エ)したがって,両者は,
「 インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドを往復移動させながら,該記録ヘッドからインク液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により記録媒体を該往復移動に交差する方向に移動させることにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置において,
前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と,
前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段と,
前記移動手段の制御を行う制御手段と,を備え,
前記制御手段は,
前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う
インクジェット記録装置。」
の点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1]
本件訂正発明1の「インクジェット記録装置」が「記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動」させるものであるのに対して,引用発明1の「IJキャリッジ26」がガイドレールに沿って往復移動されるものであるか否かが特定されない点。
[相違点2]
本件訂正発明1が「記録媒体を載置する載置部」により「記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返す」ことにより,記録媒体を移動させるものであるのに対して,引用発明1は「Y方向に記録媒体を移動させる」ことが特定される点。
[相違点3]
制御手段が,本件訂正発明1においては,「検出手段の制御を行う」のに対し,引用発明1においては,そのようなものでない点。
[相違点4]
検出手段が,本件訂正発明1においては,「載置部を把持する把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部」と,を有するのに対し,引用発明1においては,把持手段を有していない点。
[相違点5]
本件訂正発明1においては,「把持手段は,前記把持部によって前記載置部を把持することにより,前記載置部の移動に連動して移動」するのに対し,引用発明1においては,把持手段を有していない点。
[相違点6]
制御手段が,本件訂正発明1においては,「移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が該記録媒体を載置する載置部を把持するように制御」するのに対し,引用発明1においては,そもそも把持手段を有していない点。
[相違点7]
制御手段が,本件訂正発明1においては,「把持手段が移動したときの」検出部による検出結果に基づいて,制御を行うのに対し,引用発明1においては,そもそも把持手段を有していない点。
イ 判断
上記相違点について,以下検討する。
(ア)相違点1及び2について
記録ヘッドを往復移動させて所定範囲の印刷を行う方式のいわゆる「シリアル式」のインクジェット記録装置において,記録ヘッドをガイドレールにそって往復移動させるようにすることは,例えば異議申立人が提出した参考資料2(特開2002-240382号公報)の段落【0023】や同参考資料3(特開平5-50672号公報)の段落【0013】及び同参考資料4(特開平5-38853号公報)の段落【0016】に記載されているように,従来周知の技術である。
また,同じくシリアル式のインクジェット記録装置において,記録媒体を記録ヘッドの往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返すことにより該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うことは,例えば,異議申立人の提出した甲4号証(特開2003-89966号公報)の段落【0033】及び【0034】や同参考資料2の段落【0003】及び同参考資料3の段落【0024】(4頁5欄23~35行)に記載されているように,従来周知の技術である。
してみると,引用発明1において,上記周知技術に基づいて,「記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動」させるようにするとともに,「Y方向に記録媒体を移動させる」にあたって,「記録媒体」を「記録ヘッド」の「往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返す」ようにすることは,当業者が容易になし得る程度のことにすぎない。
(イ)相違点3,6及び7について
a 引用発明3は,上記3(2)コのとおりであって,引用発明3における「被染布」は,その構造,機能,作用等からみて,本件訂正発明1における「記録媒体」に相当し,以下同様に,「エンドレスベルト」は「載置部」に,「『駆動ローラ』及び『被動ローラ』」は「移動手段」に,「エンドレスベルトの送り長さ検出機構」は「検出手段」に,「制御手段」は「制御手段」に,「クランプ機構」は「把持部」に,「『クランプ機構』及び『移動機構』」は「把持手段」に,「パルス検知ヘッドとリニアメインスケールとより成るリニアスケール」は「検出部」に,それぞれ相当する。
b 引用発明3における「自動スクリーン捺染機」と本件訂正発明1における「インクジェット記録装置」とは,「画像記録装置」との概念で共通する。
c 引用発明3における「制御手段」は,デジタル制御機構及びモータ制御機構によりなされるエンドレスベルト間欠送り並びにクランプ機構のクランプシリンダーのON,OFF等の一連の動作の制御を行っているから,「駆動ローラ及び被動ローラ並びにエンドレスベルトの送り長さ検出機構の制御を行っている」といえる。
d 引用発明3における「制御手段」は,クランプ機構の制御を行って,クランプ機構が,エンドレスベルトの間欠駆動に先立ち,エンドレスベルトの一側縁部を挟持し,エンドレスベルトの間欠駆動時エンドレスベルトと共に移動し,1リピート長の移動を終了するとエンドレスベルトは止まり,その時点で直ちにクランプ機構はエンドレスベルトの挟持を開放するから,「駆動ローラ及び被動ローラによって被染布を載置するエンドレスベルトが移動する場合に,クランプ機構が前記被染布を載置するエンドレスベルトを把持するように制御している」といえる。
e 引用発明3における「制御手段」は,上記のとおり,駆動ローラ及び被動ローラによって被染布を載置するエンドレスベルトが移動する場合に,クランプ機構が前記被染布を載置するエンドレスベルトを把持するように制御し,またクランプ機構が把持する前記被染布を載置するエンドレスベルトの移動に伴ってその実際の送り長さをパルス数をリニアスケールにより検出して,設定パルス数に対応して,モータの駆動,言い換えれば駆動ローラ及び被動ローラの駆動を制御しているから,「クランプ機構が移動したときのリニアスケールによる検出結果に基づいて,駆動ローラ及び被動ローラの移動を制御している」といえる。
f 上記aないしeにおいて説示したことに照らせば,上記相違点3,6及び7に係る本件訂正発明1の発明特定事項は,引用発明3に示されている。
そして,引用発明1と引用発明3とは,画像記録装置という共通の技術分野に属し,記録媒体を搬送するベルトの搬送精度の向上という共通の課題を有するものであるから,引用発明1において,引用発明3を適用することは,当業者が容易に想到し得るものである。
g 特許権者は,引用発明3は,パルス数を都度検出し,検出されたパルス数に応じて駆動モータに(起動)加速,定速,減速,停止の制御を行うことによって,(載置部に相当する)「エンドレスベルト4」の移動速度を制御し,これを所定の移動量(「リピート長」)移動させるという,引用例1の「制御装置」と同様の構成を備えていることにすぎないから,本件訂正発明1の「前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら」移動手段の移動制御が行われることが充足されるものではない旨主張している。(特許権者意見書7頁1~30行)
これに対して検討すると,上記3(1)ク(ア)で説示したように,本件訂正発明1の「前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら・・・制御を行う」とは,従来のエンコーダ等による検出機構と比較して,極めて正確にベルトの実際の移動量を検出する把持手段の移動を検出する検出手段の検出値に基づいて移動手段の移動を精緻に制御することが含まれるものと解されるところ,上記3(2)コで認定したように,引用発明3のものは,「エンドレスベルトを間欠駆動するための直流モータ或いは交流サーボモータ,エンドレスベルトのリピート長をパルス数に変換設定するためのデジタルスイッチ,「エンドレスベルトの移動に伴ってその実際の送り長さをパルス数として直線的に検出するリニアスケールを用いるエンドレスベルトの送り長さ検出機構」により検出される検出結果によって移動制御を行うものである(なお,この点は,特許権者も認めているものと解される)から,従来のエンコーダ等による検出機構と比較して,極めて正確にベルトの実際の移動量を検出する検出手段の検出値に基づいて移動手段の移動を精緻に制御するものに相当するものであるといえる。
してみると,引用発明1に引用発明3の構成を適用した場合においても, 従来のエンコーダ等による検出機構と比較して,極めて正確にベルトの実際の移動量を検出する検出手段の検出値に基づいて移動手段の移動を精緻に制御することが達成できることは明らかであって,その結果,移動手段の移動を補正しながら,制御を行う」ことが達成できるものとなるから,特許権者の主張は採用できない。
(ウ)相違点4及5ついて
引用発明3は,上記(イ)のaないしeに加え,以下の事項を有するものといえる。
a 引用発明3における「エンドレスベルトの送り長さ検出機構」は,エンドレスベルトの側縁を開放自在に挟持するクランプ機構,及びパルス検知ヘッドとパルス検知ヘッドの移動に伴いその移動距離をパルス数として直線的に検出するリニアメインスケールより成るリニアスケールを備えているから,「エンドレスベルトを把持するクランプ機構が設けられた『クランプ機構』及び『移動機構』と,該『クランプ機構』及び『移動機構』の移動を連続的に検出するリニアスケール検出部とを有している」といえる。
b 引用発明3における「『クランプ機構』及び『移動機構』」は,クランプ機構が,エンドレスベルトの一側縁部を挟持し,エンドレスベルトの間欠駆動時エンドレスベルトと共に移動するから,「クランプ機構によってエンドレスベルトを把持することにより,前記エンドレスベルトの移動に連動して移動する」といえる。
c 上記(イ)のaないしe及び(ウ)のa及びbに照らせば,上記相違点2及3に係る本件訂正発明1の発明特定事項は,引用発明3に示されている。
そして,引用発明1において,引用発明3を適用することは,上記(イ)fにおいて示したと同様の理由により当業者が容易に想到し得るものである。
(エ)特許権者は,「引用発明1は,高精度な位置決め制御が要求されているインクジェット方式の画像形成装置において,「紙搬送ベルト」の移動を直接観測するために貼り付けたリニアスケールを読み取る場合に問題を生じさせていた同ベルトの継ぎ目部分であっても正確な読み取りを行うことを可能とした発明であって,そのようにしたことによって,引用発明1は,インクジェット方式の画像形成装置に求められる高精度な位置決め制御を既に実現しているにもかかわらず,引用発明1の構成を「紙搬送ベルト」の移動の直接観測ではなく,引用発明3の構成,すなわち,「エンドレスベルト4」を「パルス検出ヘッド19」を備えた「リニアメインスケール12」で読み取るという間接的な観測とする構成に変更する動機付けは一切認められない」旨主張する(特許権者意見書8頁1行~11頁5行)。
そこで,当該主張の当否について以下検討する。
a 引用発明1は,高度な位置決め制御が要求されているインクジェット方式の画像形成装置においては,紙搬送ベルトの移動を「直接観測することが望ましい」こと(甲1号証段落【0002】)が記載され,そのために,「リニアスケールを紙搬送ベルトの表面や裏面に張り付け,これをセンサーでカウントする方法」が用いられていたが,その場合には,「無端の紙搬送ベルトにおける継ぎ目部分では,リニアスケールの目盛間隔(位相)が不連続となることから,高度な位置決め制御が困難となっていたという課題」が生じることが記載されている。
b 一方,引用発明3は,甲3号証の2頁4欄の16~44行において「(発明が解決しようとする課題)これらの間欠的駆動装置は,機構的な送り精度自体は優秀のものであるが,エンドレスベルトの間欠駆動による送り長さをエンドレスベルトの駆動ローラを介して回転量としてのパルス検出を行っているため,駆動ローラの温度的な形状,寸法の変化及びエンドレスベルトの部分的な厚み,硬度の不均質等のエンドレスベルト自体に起因する送り誤差が不可避のものとなる。 本発明は,従来のエンドレスベルトの間欠的駆動装置の前記問題点を解消し,エンドレスベルトのリピート長の送り精度をより精度高く正確にするものである。即ち,本発明の目的は,従来のエンドレスベルトの間欠的駆動装置における駆動ローラの温度的な形状,寸法の変化及びエンドレスベルトの部分的な厚み,硬度等の変化により生じるエンドレスベルトの送り誤差を解消し,エンドレスベルトの送り精度をより精度高くより正確にしたエンドレスベルトの間欠的駆動装置を提供するにある。また本発明の目的は,被捺染材料を支持搬送するエンドレスベルトの実際の送り長さを設定されたリピート長(送り長さ)により精度高く一致させることが可能なエンドレスベルトの間欠的駆動装置を提供するにある。また本発明の目的は,エンドレスベルトのリピート長(送り長さ)をパルス数に変換して設定し,実際のエンドレスベルトの送り長さを直接により精度高く,パルス数として検出し,設定パルス数とこの検出されるパルス数との差に対応してエンドレスベルトの減速駆動及び停止をプログラムに従って自動的に行うことができるエンドレスベルトの間欠的駆動装置を提供するにある。」と記載されていることからすれば,引用発明3は,引用発明1と同様に,高度な位置決め制御が要求されているインクジェット方式の画像形成装置において,紙搬送ベルトの移動を「直接観測すること」により,,エンドレスベルトの送り精度をより精度高くより正確にが望ましいことを目的とするものと理解することができる。
c してみると,当業者であれば,引用発明1に引用発明3を適用することにより,高度な位置決め制御が要求されているインクジェット方式の画像形成装置においては,望ましいとされている,紙搬送ベルトの移動を「直接観測すること」を実現可能であることは容易に想到し得ることであるから,引用発明1の「紙搬送ベルト」の移動を直接観測する方式である「リニアスケールを紙搬送ベルトの表面や裏面に張り付け,これをセンサーでカウントする方式」を,引用発明3の構成,すなわち,「エンドレスベルト4」を「パルス検出ヘッド19」を備えた「リニアメインスケール12」で読み取るという間接的な観測とする方式に変更することに動機付けが存在するものといえる。
そして,そのように構成した場合には,引用発明1の無端の紙搬送ベルトにおける継ぎ目に関する課題がもはや生じなくなることも当業者であれば容易に理解し得ることである。
d 以上のとおりであるから,特許権者の主張は採用することができない。
(オ)特許権者は,引用発明1に引用発明3を適用すると移動開始位置の正確性が損なわれるものであるとし,その根拠として,引用発明3のリニアメインスケール等の構成は,捺染の前後において位置ずれが生じることから,そもそも移動開始位置の正確性が既に失われていることを前提に採用されていることを理由に,引用発明1に引用発明3を適用することには阻害要因があると主張しているので以下検討する。
a 甲3号証において,捺染の前後でエンドレスベルトの位置ずれが生じることについては記載されていないから,引用発明3において,捺染の前後でエンドレスベルトの位置ずれが生じることを前提とする特許権者の主張は根拠がない。
b そもそも,引用発明3のクランプ機構は,上記3(2)イで説示した記載事項からみて「エンドレスベルト4の間欠駆動に先立ち,エンドレスベルト4の一側縁部を挟持し,エンドレスベルト4の間欠駆動時エンドレスベルト4と共に移動」し,「1リピート長の移動を終了するとエンドレスベルト4は止まり,その時点で直ちにクランプ機構10はエンドレスベルト4の挟持を開放する」のであるから,たとえ,「捺染の前後でエンドレスベルトの位置ずれ」が生じるとしても,その位置ずれがエンドレスベルトの移動量の検出に影響するものでないことは明らかであるから,そのような事実があるとしても,引用発明3のリニアメインスケール等の構成がエンドレスベルトの移動量を正確に検出できること自体には変わりはない。
してみると,仮に請求人の主張するように,捺染の前後において位置ずれが生じることから,そもそも移動開始位置の正確性が既に失われていることを前提に採用されるものであると解されるとしても,そのことが引用発明1に引用発明3を適用する阻害事由となるものではないというべきである。
c 以上のとおりであるから,特許権者の主張は採用することができない。
(カ)本件訂正発明1の発明特定事項の全体によって奏される効果について検討しても,当該効果は,引用発明1及び3並びに上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
ウ 小括
以上のとおりであるから,本件訂正発明1は,引用発明1及び3並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と引用発明1とを対比すると,上記(1)アでの検討を踏まえるに,両者は,上記(1)ア(エ)において示した一致点があり,また引用発明1における「モータ」は,その構造,機能,作用等からみて,本件訂正発明2における「駆動手段」に相当するから,両者は,「移動手段を駆動させることによって,載置部を移動させる駆動力を発生する駆動手段を備える」点でも一致する。
してみると,本件訂正発明2と引用発明1とは,上記(1)ア(エ)において示した相違点1~7の点で相違する。
イ 判断
上記相違点1ないし7については,上記(1)イにおいて既に検討したとおり,いずれも,当業者が容易に想到し得るものである。
なお,引用発明7における「グリッパ」は,その構造,機能,作用等からみて,本件訂正発明2における「把持手段」に相当し,以下同様に,「ベルト」は「載置部」に,「駆動モータ」は「駆動手段」に相当するから,本件訂正発明2において,「把持手段を駆動させることによって載置部を移動させる駆動力を発生する駆動手段を備える」点は,引用発明7に示されている。
ウ 小括
以上のとおりであるから,本件訂正発明2は,引用発明1及び3並びに周知技術,または引用発明1,3及び7並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正発明3について
ア 対比
本件訂正発明3と引用発明1とを対比すると,上記(1)アでの検討を踏まえるに,両者は,上記(1)ア(エ)において示した一致点があり,また両者は,「移動手段は,一対のローラであり,載置部は,前記一対のローラに掛け回されたベルトである」点でも一致する。
してみると,本件訂正発明3と引用発明1とは,上記(1)ア(エ)において示した相違点1~7の点で相違する。
イ 判断
上記相違点1ないし7については,上記(1)イにおいて既に検討したとおり,いずれも,当業者が容易に想到し得るものである。
また, 「把持手段を駆動させることによって載置部を移動させる駆動力を発生する駆動手段を備える」点は,引用発明7に示されていることも上述のとおりである。
ウ 小括
以上のとおりであるから,本件訂正発明3は,引用発明1及び3並びに周知技術,または引用発明1,3及び7並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明4と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「IJキャリッジ26」は,その構造,機能,作用等からみて,本件訂正発明4の「記録ヘッド」に相当し,以下同様に,「用紙」は「記録媒体」に,「画像形成装置」は「インクジェット記録装置」に,「『紙搬送ベルト22』及び『用紙搬送ベルト』」は「載置部」に,「『駆動ローラ24』及び『従動ローラ25』」は「移動手段」に,「『スケール』及び『位置検出手段』」は「『検出手段』及び『検出部』」に,「制御手段」は「制御手段」に,それぞれ相当する。
(イ)引用発明1の「IJキャリッジ26」は,紙搬送ベルト22の上面(即ち,用紙上)を矢印X方向に移動可能な構成とされ,紙搬送ベルト22により用紙が搬送される過程においてIJキャリッジ26はY方向に移動し,その過程において用紙に対し印刷(画像形成)を行うものであるから,引用発明1の「IJキャリッジ26」は,「X方向に往復移動させながら」印字を行うものであり,Y方向に記録媒体を移動させることにより,印刷範囲に対して印刷を行うものであることは明らかである。
してみると,本件訂正発明4と引用発明1とは,「インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドを往復移動させながら,該記録ヘッドからインク液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により記録媒体を該往復移動に交差する方向に移動させることにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行う」ものである点で共通するものといえる。
(ウ)a 引用発明1の「制御手段」は,位置検出手段からの出力から生成された位置情報に基づき,モータ23により駆動される駆動ローラ24と従動ローラ25との間に配設された紙搬送ベルト22の駆動制御を行うから,「モータ23により駆動される駆動ローラ24と従動ローラ25」からなる「紙搬送ベルト22」の移動手段を備え,「位置検出手段による検出結果に基づいて」移動手段である「駆動ローラ24及び従動ローラ25の移動の制御を行っている」といえる。
b 引用発明1の「位置検出手段」は,用紙搬送ベルトに設けられたスケールからの位置情報を読み取るから,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する」といえる。
c 引用発明1の「制御手段」は,位置検出手段からの出力から位置情報を生成し,該位置情報に基づき駆動手段を制御して用紙搬送ベルトの移動を補正しながら前記用紙搬送ベルトの駆動制御を行うから,「位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを回転させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」といえる。
d 以上のことを総合すると,引用発明1は,「モータにより駆動される駆動ローラと従動ローラ」からなる「用紙搬送ベルト」の移動手段と,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段」と,「前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御する制御手段」とを備え,「制御手段」は,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを移動させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」ものを備えているといえる。
e してみると,本件訂正発明4が「前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と,前記記録媒体もしくは前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段と,前記移動手段および前記検出手段の制御を行う制御手段と,を備え,前記検出手段は,前記記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と,を有し,前記把持手段は,前記把持部によって前記記録媒体を把持することにより,前記記録媒体の移動に連動して移動し,前記制御手段は,前記移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が前記記録媒体を把持するように制御し,前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」ものであることと,
引用発明1が「モータにより駆動される駆動ローラと従動ローラ」からなる「用紙搬送ベルト」の移動手段と,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段」と,「前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御する制御手段」とを備え,「制御手段」は,「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを移動させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」引用発明1の「制御手段」が「用紙搬送ベルトの移動を連続的に検出する位置検出手段による検出結果に基づいて,用紙搬送ベルトを回転させる駆動ローラと従動ローラの移動を補正しながら前記駆動ローラと前記従動ローラの移動を制御している」ものであることとは,
共に,「記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段」と,「前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段」と,「前記移動手段の制御を行う制御手段」とを備え,「前記制御手段は,前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う」ものである点で共通するといえる。
d したがって,両者は,
「 インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え,該記録ヘッドを往復移動させながら,該記録ヘッドからインク液滴を吐出して記録媒体に記録を行い,該記録媒体を載置する載置部により記録媒体を該往復移動に交差する方向に移動させることにより,該記録媒体の印刷領域全体に所望の文字や図柄の印刷を行うインクジェット記録装置において,
前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と,
前記記録媒体の移動を連続的に検出する検出手段と,
前記移動手段の制御を行う制御手段と,を備え,
前記制御手段は,
前記検出部による検出結果に基づいて,前記移動手段の移動を補正しながら前記移動手段の移動の制御を行う
インクジェット記録装置。」
の点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1]
本件訂正発明4の「インクジェット記録装置」が「記録ヘッドをガイドレールに沿って往復移動」させるものであるのに対して,引用発明1の「IJキャリッジ26」がガイドレールに沿って往復移動されるものであるか否かが特定されない点
[相違点2]
本件訂正発明4が「記録媒体を載置する載置部」により「記録媒体を該往復移動に交差する方向にスライド移動させる作動を繰り返す」ことにより,記録媒体を移動させるものであるのに対して,引用発明1は「Y方向に記録媒体を移動させる」ことが特定される点
[相違点3’]
制御手段が,本件訂正発明4においては,「検出手段の制御を行う」のに対し,引用発明1においては,そのようなものでない点。
[相違点4’]
検出手段が,本件訂正発明4においては,「記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段と,該把持手段の移動を連続的に検出する検出部」と,を有するのに対し,引用発明1においては,把持手段を有していない点。
[相違点5’]
本件訂正発明4においては,「把持手段は,把持部によって前記記録媒体を把持することにより,前記記録媒体の移動に連動して移動」するのに対し,引用発明1においては,把持手段を有していない点。
[相違点6’]
制御手段が,本件訂正発明4においては,「移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に,前記把持手段が前記記録媒体を把持するように制御」するのに対し,引用発明1においては,そもそも把持手段を有していない点。
[相違点7’]
制御手段が,本件訂正発明4においては,「把持手段が移動したときの」検出部による検出結果に基づいて,制御を行うのに対し,引用発明1においては,そもそも把持手段を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み,相違点4’について検討する。
相違点4’に係る本件訂正発明4の「記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段」について検討する。
(ア)上記(1)イの(ウ)の相違点4及び5において検討したように, 引用発明3における「エンドレスベルトの送り長さ検出機構」は,エンドレスベルトの側縁を開放自在に挟持するクランプ機構,及びパルス検知ヘッドとパルス検知ヘッドの移動に伴いその移動距離をパルス数として直線的に検出するリニアメインスケールより成るリニアスケールを備えているから,「エンドレスベルトを把持するクランプ機構が設けられた『クランプ機構』及び『移動機構』と,該『クランプ機構』及び『移動機構』の移動を連続的に検出するリニアスケール検出部とを有している」といえ,引用発明3における「『クランプ機構』及び『移動機構』」は,クランプ機構が,エンドレスベルトの一側縁部を挟持し,エンドレスベルトの間欠駆動時エンドレスベルトと共に移動するから,「クランプ機構によってエンドレスベルトを把持することにより,前記エンドレスベルトの移動に連動して移動する」といえる。
(イ)しかしながら,甲3号証においては,当該クランプ機構及び移動機構が記録媒体を直接把持するものであるとは記載されておらず,当該クランプ機構及び移動機構が記録媒体を把持するようにしてもよいことが示唆される記載もない。
また,本件異議申立人の提出した各証拠に,この点が記載されているものはない。
(ウ)特許異議申立人は,「インクジェット記録装置の搬送機構として,ベルトのような記録媒体が載せ置かれる載置部を備えず,2個のローラに直接掛け渡された記録媒体を搬送する搬送機構は,甲4号証(特開2003-89966号公報)に記載されている通り周知な構成にすぎない。したがって,このような搬送機構を備えるインクジェット記録装置において,画像記録装置という共通の技術分野に属する甲第3発明を適用する場合,甲第3発明の「エンドレスベルトの送り長さ機構」の「クランプ機構」が把持する対象を記録媒体の側縁部とする程度のことは当業者の創作能力の発揮にすぎない」旨主張している(申立人意見書23頁下から2行~24頁11行)。
異議申立人の当該主張する理由については,下記ウ(イ)で検討するとおりであるが,ここでは,引用発明1に甲4号証記載の事項が周知であることを前提に想到容易性について検討する。
引用発明1は,甲4号証と異なり「インクジェット記録装置の搬送機構として,ベルトのような記録媒体が載せ置かれる載置部」を備えるものであることから,引用発明1において,クランプ機構が記録媒体を直接把持するものとすることが容易に想到し得るものということはできない。
(エ)以上のとおり,上記相違点4’は当業者が容易に想到し得るものということはできないから,本件訂正発明4は,その他の相違点について検討するまでもなく,引用発明1に引用発明3及び引用発明7並びに周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ 取消理由で採用しなかったその他の本件訂正発明4に係る特許についての異議申立理由について
(ア)甲2号証に記載の発明及び引用発明3に基づく進歩性欠如
特許異議申立人は,本件訂正発明4に関して,甲2号証(特開2012-24932号公報)に記載の発明に引用発明3を適用することによる想到容易性について主張しているが,甲2号証には,上記相違点4’に係る「記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段」については記載も示唆もされていないから,本件訂正発明4について,甲2号証記載の発明及び引用発明3を適用することにより容易に想到し得るものとはいえない。
また,甲1号証やその他の異議申立人が提出した証拠においても,「記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段」が記載されていないことは,上述したとおりである。
(イ)甲4号証に記載の発明及び引用発明3に基づく進歩性欠如
引用発明3は,上記3(2)コで認定したとおりのものであり,引用発明3のクランプ機構である把持部は,記録媒体を載置する載置部であるところのエンドレスベルトを把持するものである。
甲4号証に記載の発明は,異議申立人の主張のとおり,「インクジェット記録装置の搬送機構として,ベルトのような記録媒体が載せ置かれる載置部」を備えないものであるところ,このようにベルトを備えないものについて,エンドレスベルトを把持する引用発明3のクランプ機構を適用することを動機付けるものはない。
また,本件訂正発明4の上記相違点4’に係る「記録媒体を把持する上下方向に密着・解離可能に配設されている把持部が設けられた把持手段」が本件特許に係る出願前に公知の技術であったことを根拠付ける証拠は見受けられない。
(ウ)本件特許明細書又は特許請求の範囲の記載不備
特許異議申立人は,本件訂正請求による訂正前の請求項2に係る「前記把持手段を駆動させることによって前記記録媒体もしくは前記載置部を移動させる駆動力を発生する駆動手段」の構成を実施できる程度に発明の詳細な説明には記載されておらず,また,発明の詳細な説明には,このような構成により発明の課題を解決し得るものと当業者が認識し得ないことを理由として,本件訂正前の請求項4に係る特許について取り消されるべきものである旨主張している。
しかしながら,本件訂正請求後の本件訂正発明4は,上記第2の2(2)で説示したように,訂正前の請求項1ないし3を引用する請求項4を実質的に請求項2及び3の引用を削除した上で,請求項1を引用する請求項4を書き下した訂正をするものであるから,当該請求項2に係る構成についての記載不備をいう異議申立理由が本件訂正発明4において妥当しないことは明らかである。
エ 小括
上記のとおり,本件訂正発明4については,本件決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立人が主張する異議申立理由によっては,取り消すことができない。
第4 むすび
以上のとおり,本件訂正発明1~3は,引用発明1及び3並びに周知技術,または引用発明1,3及び7並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし3に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
また,本件訂正請求による訂正後の請求項4に係る特許は,本件決定の予告に記載した取消理由または異議申立理由によっては取り消すことができない。さらに,他に当該請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2017-700763