特許異議申立
2023-701033
レーザ印字方法
- 審判番号
- 2023-701033
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-125731
- 登録番号
- 7246842
- 請求日
- 2023年09月28日
- 審決日
- 2024年04月23日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人R&C
- 【異議申立人】中野 善和
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 嵯峨根 多美
- 分類
- P1651.121-Y (B41J) / P1651.536-Y (B41J) / P1651.537-Y (B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7246842号発明「レーザ印字方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7246842号の請求項1乃至4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7246842号の請求項1乃至4に係る特許についての出願は、平成28年6月24日に出願され、令和5年3月17日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和5年9月28日に特許異議申立人 中野 善和(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年1月10日に取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、同年3月14日に意見書を提出した。
第2 本件特許発明
特許第7246842号の請求項1乃至4に係る特許発明(以下それぞれ「本件特許発明1」乃至「本件特許発明4」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その願書に添付した特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。
「【請求項1】
黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップに文字や記号を印字する印字方法であって、
前記キャップの外表面に設けられた印字領域に対して、レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより前記キャップを構成する樹脂を発泡させて文字や記号を印字することを特徴とする印字方法。
【請求項2】
前記キャップは、開栓によって容器本体から取り外し可能なキャップ本体と、開栓前は前記キャップ本体と連結されており、開栓後は前記キャップ本体と切り離されて前記容器本体側に残るTEバンドと、を有し、
前記印字領域は前記TEバンドの側面にあることを特徴とする請求項1に記載の印字方法。
【請求項3】
前記キャップに、当該キャップが備えられた商品の少なくとも流通履歴を確認可能な文字や記号を印字することを特徴とする請求項1又は2に記載の印字方法。
【請求項4】
前記レーザは、YVO4レーザであること特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の印字方法。」
第3 取消理由の概要
当審において、請求項1乃至4に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)請求項1乃至4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1乃至7号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1乃至4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(サポート要件)請求項1乃至4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
(1)本件特許明細書には、「印字された文字や記号が判読しやすく、耐久性に優れた印字方法を提供すること」(【0008】参照。)を目的として、黒色顔料を含有させたポリプロピレン樹脂製又はポリエチレン樹脂製のキャップに対して、532~1064nmの波長域のレーザ光でマーキングすること、及び、レーザ光として波長1064nm又は第二高調波の532nmのYV04レーザを用いること等が記載されているが、黒色顔料以外の添加剤の有無については何ら記載がない。
甲第2、4及び5号証の記載からすると、黒色顔料以外の物質を何ら添加しない本件特許発明1乃至4では、カーボンブラック以外の添加剤が用いられていないのであるから、印字された文字や記号の判読性が低いおそれがある。
すなわち、「印字された文字や記号が判読しやす」い「印字方法を提供する」という本件特許発明の課題を解決できないおそれがある。
(2)そうすると、本件特許発明1乃至4は、その出願時の技術常識を参酌しても、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識し得る範囲内のものである、とはいえない。
(3)また、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載に照らせば、黒色顔料以外の添加剤を含まない熱可塑性樹脂においては、YV04レーザのように532~1064nmの波長域のレーザ光を照射しても発泡が生じないか、又は不十分な発泡しか生じないおそれがある。
(4)すなわち、本件特許明細書に記載された発明は、黒色顔料を含有するポリプロピレン樹脂製又はポリエチレン樹脂製のキャップに対して波長が532~1064nmの範囲のレーザを照射することにより、キャップを構成する樹脂を溶融、炭化させて印字を施すものに過ぎず、実質的には発泡を生じさせることなく印字が施されたおそれがある。
(5)しかしながら、本件特許発明1は「キャップを構成する樹脂を発泡」させることを発明特定事項として含む。そうすると、本件特許発明1は、明細書の発明の詳細に記載された発明とは異なるものとなり、本件特許発明1は、本件特許発明の課題を解決できるものとは認識できない。
(6)また、本件特許発明2乃至4にも、同様の理由がある。
(7)よって、請求項1乃至4に係る特許は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
取消理由3(実施可能要件)請求項1乃至4に係る特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
(1)甲第2号証によれば、判読性及び耐久性に優れたマーキングを得るためには、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂に対して、アルカリ金属加工物やフィラー等の添加剤を含有させることが必須と理解できる。
(2)しかしながら、本件特許明細書にはそのような添加剤に関して何ら記載がない。
(3)そうすると、本件特許発明の課題を解決するためには、黒色顔料以外の添加剤の選択等に関して当業者に過度の試行錯誤を強いることとなる。
(4)よって、本件特許発明の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分になされていない点で不備があり、本件特許発明1乃至4についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第4 甲各号証の記載
ア 甲第1号証
本件特許の出願日前の平成13年4月24日に公開された特開2001-114312号公報(甲第1号証)には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、口部外周に雄ネジが形成された容器に螺子嵌合して該容器口部を閉止する合成樹脂製キャップに関する。」
(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のキャップ31にあっては、一旦開栓されTEリング部9が主部8から切り離された後に再び閉栓され、主部8とTEリング部9とが互いに近接または接した状態とされた場合に、これを未開栓のものと区別するのが難しかった。このため、キャップ31が開栓済みのものであるか未開栓のものであるかを判別するのが難しく、開封明示性の点で改善が望まれていた。本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、開封明示性を高めることができるキャップを提供することを目的としている。」
(ウ)「【0007】キャップ本体4の筒部3は、水平スコア6によって水平スコア6より上部の主部8と、多数の細いブリッジ7によって主部8の下端に連結されたTEリング部9とに区画されている。…
【0008】本実施形態のキャップでは、主部8外周の最下部付近に主部側連結位置表示マーク12が形成され、TEリング部9外周の最上部付近にTEリング部側連結位置表示マーク13が形成されている。…
【0009】連結位置表示マーク12、13は、レーザ光照射により形成されたものであり、色や凹凸によって識別できるようになっている。連結位置表示マーク12、13は、例えば製造日、製造番号などの数字、社名などの文字、記号や、ロゴマークなどの図形を形取った形状とすることができる。…
【0010】キャップ本体4には、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料が用いられる。…」
(エ)「【0013】…次いで、主部8外周とTEリング部9外周とにレーザ光を照射し、連結位置表示マーク12、13を連続的に形成する。レーザ光照射には、通常、レーザ加工で用いられる汎用のものを用いることができ、例えばエキシマレーザ、YAGレーザ、CO2レーザ、COレーザなどが使用可能である。
【0014】レーザ光を照射すると、照射部分が溶融、炭化などにより変色したり凹凸が形成されることによって、連結位置表示マーク12、13が形成される。…
【0015】上記キャップ1を容器口部21aに装着した後、このキャップ1を開栓方向に回すと、TEリング部9の内面に設けられた多数のタブ11が容器口部21aの膨出段部23下端に係止することから、キャップ本体4の主部8は回転に従って上昇する一方、TEリング部9は上方への移動が阻止され、その結果、キャップの主部8とTEリング部9とを連結している多数の細いブリッジ7に引張力が作用し、これらブリッジ7が破断し、TEリング部9が主部8から切り離されてキャップ1が開栓される。
…
【0017】上記構成のキャップ1では、主部8外周とTEリング部9外周とに、TEリング部9が主部8に対し連結した状態において周方向位置が互いにほぼ一致する連結位置表示マーク12、13が形成されているので、これらマーク12、13の周方向位置が一致しているかどうかを目視により確認することにより、キャップ1が開栓済みであるかどうかを容易に判別することができるようになる。このため、開封明示性を高めることができる。…」
(オ)「【0023】また、本発明の合成樹脂製キャップでは、キャップ本体に、各種添加剤、例えば酸化防止剤(フェノール系化合物、リン系化合物等)、耐候剤(ヒンダード・アミン系化合物等)、滑剤(高級脂肪酸アミド、フッ素系樹脂等)、紫外線防止剤、顔料、難燃剤などを含有させてもよい。」
(カ)YAGレーザの波長が1,064μmであること、及び上記(エ)より、TEリング部9外周の連結位置表示マーク13は、波長が1,064μmのYAGレーザのレーザ光を照射することにより形成されることからすると、甲第1号証には、キャップの筒部3のTEリング部9外周に、波長が、1,064μmのYAGレーザのレーザ光を照射することにより、連結位置表示マーク13を形成する形成方法が記載されているといえる。
上記記載事項(ア)乃至(オ)、及び認定事項(カ)より、甲第1号証には、
「顔料を含有する高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料が用いられる主部とTEリング部からなるキャップの筒部のTEリング部外周に、波長が1,064μmのYAGレーザのレーザ光を照射することにより、照射部分が溶融、炭化などにより変色したり凹凸が形成されることによって、製造日、製造番号などの数字、社名などの文字、記号や、ロゴマークなどの図形を形取った形状である連結位置表示マークを形成する形成方法。」
なる発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
第5 当審の判断
1 取消理由1(進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
そこで、本件特許発明1と、甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「顔料」、「高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料が用いられるキャップ」、「社名などの文字、記号」、及び「波長が1,064μmのYAGレーザのレーザ光」は、それぞれ、前者の「顔料」、「ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」、「文字や記号」、及び「レーザマーカから波長が532~1064nmの範囲のレーザ」に相当する。
(イ)後者の「YAGレーザのレーザ光」の波長と前者の「レーザマーカ」の波長とは1064nmである点で一致する。
(ウ)後者の「形成方法」は製造日、製造番号などの数字、社名などの文字、記号を形成するものであるから、「文字や記号を印字する印字方法」といえる。
(エ)後者の「キャップの筒部のTEリング部外周」には、連結位置表示マークが形成されるから、前者の「キャップの外表面に設けられた印字領域」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップに文字や記号を印字する印字方法であって、B 前記キャップの外表面に設けられた印字領域に対して、レーザマーカから波長が1064nmの範囲のレーザを照射することにより前記キャップを構成する樹脂に文字や記号を印字する印字方法。」
[相違点1]
「顔料」が、本件特許発明1は「黒色」顔料であるのに対し、甲1発明は、黒色か否か定かでない点。
[相違点2]
本件特許発明1が、レーザを照射することにより前記キャップを構成する樹脂を「発泡」させて文字や記号を印字する印字方法であるのに対し、引用発明1は、レーザ光を照射することにより、照射部分が溶融、炭化などにより変色したり凹凸が形成されることによって、製造日、製造番号などの数字、社名などの文字、記号や、ロゴマークなどの図形を形取った形状である連結位置表示マークを形成する形成方法である点。
イ 上記各相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2から検討する。
(ア)相違点2について
甲1発明は、レーザ光を照射することにより、照射部分が溶融、炭化などにより変色したり凹凸が形成されることによって、製造日、製造番号などの数字、社名などの文字、記号や、ロゴマークなどの図形を形取った形状である連結位置表示マークを形成する形成方法であるところ、乙第1号証(“レーザーマーカーの活用情報サイト マーキング学習塾|基礎知識編|FAQ”,[online],令和4年7月1日,株式会社キーエンス,[令和6年3月1日検索],インターネット,<URL:https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/faq/basics.jsp>)を参酌すると、その原理は、「炭化」であって、本件特許発明1の「発泡」とは異なる原理であると認められる。
また、甲第1号証においては、「溶融、炭化」以外の原理による印字の方法が開示されていないこと、および、キャップ本体4の材料として、マイカを含有する合成樹脂材料を用いることにより、レーザ光照射部分の溶融、炭化を促していることからすると、「溶融、炭化」以外の原理に置き換える動機付けは存在しない。
(イ)相違点1について
上記(ア)の通り、甲1発明における印字の原理が炭化である以上、印字される文字は濃色であり、黒色の印字対象物において可読性が高い印字を望みえないことが明らかである。
してみると、甲1発明における印字対象物として「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」を選択した場合、甲1発明における「連結位置表示マーク」の表示が不明瞭になって、開封明示性を高めるという甲1発明の課題を解決しない。
ポリエチレン樹脂製品またはポリプロピレン樹脂製品に対するレーザマーキング方法において、前記樹脂製品に含有させる顔料として、カーボンブラック(黒色顔料)は、周知の技術手段である(例えば、甲第2号証(【0006】参照。)、甲第3号証(【0074】参照。)、甲第4号証(【0014】参照。)、甲第5号証(【0017】参照。)。以下、「周知技術1」という。)ものの、前述の通り、「黒色顔料を含有するキャップ」を選択した場合、甲1発明の課題を解決し得ないこととなるから、甲1発明において、「黒色顔料を含有する、ポリエチレン樹脂製またはポリプロピレン樹脂製のキャップ」を印字対象物とする動機付けは認められないし、阻害要因があるといえる。
(ウ)以上の通りであるから、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではない。
ウ 小括
したがって、本件特許発明1は、上記甲第1号証に記載された発明及び周知技術1から、当業者が容易に想到し得るものではない。
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1に対し、さらに、「前記キャップは、開栓によって容器本体から取り外し可能なキャップ本体と、開栓前は前記キャップ本体と連結されており、開栓後は前記キャップ本体と切り離されて前記容器本体側に残るTEバンドと、を有し、 前記印字領域は前記TEバンドの側面にあること」(スペースは改行を意味する。以下同様。)という技術的事項を追加したものである。
そうすると、上記(1)と同様の理由により、本件特許発明2は、上記甲第1号証に記載された発明及び上記周知技術1から、当業者が容易に想到し得るものではない。
(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1又は2に対し、さらに、「前記キャップに、当該キャップが備えられた商品の少なくとも流通履歴を確認可能な文字や記号を印字すること」という技術的事項を追加したものである。
そうすると、上記(1)と同様の理由により、本件特許発明3は、上記甲第1号証に記載された発明及び上記周知技術1から、当業者が容易に想到し得るものではない。
(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1から3のいずれか一項に対し、さらに、「前記レーザは、YVO4レーザであること」という技術的事項を追加したものである。
そうすると、上記(1)と同様の理由により、本件特許発明4は、上記甲第1号証に記載された発明、上記周知技術1及び「レーザマーキング方法に用いるレーザとして、波長が1,064μmのYVO4レーザであるという周知の技術手段(例えば、甲第2号証(【0119】参照。)、甲第6号証(【0069】参照。)、甲第7号証(【0016】、【0020】参照。)。「周知技術2」という。)」から、当業者が容易に想到し得るものではない。
(5)まとめ
上記のとおり、本件特許発明1乃至4は、特許法第29条第2項に該当するものではないから、上記取消理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(サポート要件)について
(1)本件特許発明と甲第2、4及び5号証に記載された発明の原理の違い
上記第5 1(1)イ(ア)の通り、本件特許発明における印字の原理は、「発泡」であるところ、乙第1号証を参酌すると、添加剤の添加を要するのは、「凝縮」及び「炭化」であって、「発泡」については、添加剤を添加することの記載はないし、乙第2号証(特開昭62-13287号公報)を参酌(2頁左上欄20行~右上欄10行)すると、添加剤が必須のものではないことが理解できる。
甲第2号証には、「本発明の樹脂組成物において、上記アルカリ金属化合物は、白色度発現に触媒作用をするものであって、上記アルカリ金属化合物はレーザー照射のとき、黒色顔料の分解を促進させ蒸発を誘発し、同時に黒色顔料が吸収したエネルギーを効果的に熱に発散させ、樹脂の溶融および発泡特性を向上させることにより、白色度と鮮明度を向上させる。」(【0007】参照。)と記載され、アルカリ金属化合物は、発泡特性を向上させるものではあるものの、発泡のメカニズムに関与するものとは認められない。
また、甲第4号証には、「すなわち、本発明において、カーボンブラック、低次酸化チタン、及び珪素含有化合物を含む特定の添加剤の作用機構を推測するに、カーボンブラックにより成形体の地色を黒色に着色する作用を奏するとともに、レーザー光線を照射した際には、カーボンブラックの脱色と低次酸化チタンの酸化反応により、白の色材であるTiO2の形成が起こり、より白く発色するものであると考えられる。そして、本発明では、さらに珪素含有化合物を含有することにより、上記白発色をより促進させる作用を有するものである。」(【0016】参照。)と記載されている通り、低次酸化チタンは、TiO2の形成を生起し、珪素含有化合物は、白発色をより促進させる作用を奏するものであって、いずれも、発泡に関与するものとは認められない。
さらに、甲第5号証には、「すなわち、本発明において、カーボンブラック及び低次酸化チタンを含む特定の添加剤の作用機構を推測するに、カーボンブラックにより成形体の地色を黒色に着色する作用を奏するとともに、レーザー光線を照射した際には、カーボンブラックの脱色と低次酸化チタンの酸化反応により、白の色材であるTiO2の形成が起こり、より白く発色するものであると考えられる。そして、本発明では、後述するように、(C)成分としてさらに珪素含有化合物を含有することにより、上記白発色をより促進させる作用を有するものである。なお、珪素含有化合物は摺動性の向上にも有効である。」(【0017】参照。)と記載されている通り、甲第4号証と同様に、低次酸化チタン及び珪素含有化合物は、発泡に関与するものとは認められない。
以上の通りであるから、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証には、いずれも、添加剤が発泡に直接関与することの記載はなく、発泡をさらに促進させるためか、または白色発色の現象が異なるものであるため、発泡させるために添加剤を必要とすることを立証するものとは認められない。
(2)まとめ
上記のとおり、本件特許発明1乃至4は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、上記取消理由2により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由3(実施可能要件)について
(1)上記2の通りであるから、本件特許発明を実施するにあたり、添加剤を要するものではないから、本件特許明細書は、当業者が、本件特許発明1乃至4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(2)まとめ
上記のとおり、本件特許発明1乃至4は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、上記取消理由3により、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
したがって、請求項1乃至4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由1乃至3及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1乃至4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701033