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特許異議申立

2026-700065

ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法

審判番号
2026-700065
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-190795
登録番号
7712558
請求日
2026年01月21日
審決日
2026年03月19日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】トヨタ自動車株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】ジュネスプロパティーズ 株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 梶尾 誠哉
  • 審判官 須原 宏光
  • 審判官 ▲吉▼澤 雅博
分類
P1651.121-Y (H01M) / P1651.113-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
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特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号
データ出所
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特許第7712558号発明「ラミネート型電池、及びラミネート型電池の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7712558号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7712558号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和4年11月29日の出願であって、令和7年7月15日に特許権の設定登録がされ、令和7年7月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対して、令和8年1月21日に特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社により請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 固体電解質層を備える電極体と、 前記電極体を覆う一枚のラミネートシートと、を有し、 前記電極体を覆う前記一枚のラミネートシートの一端側と他端側とが融着された融着部を有し、 前記融着部は、前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有し、 前記電極体の外周長LEと、前記電極体を覆う前記ラミネートシートの内周長LS1との比率(LS1/LE)が、1.00以上1.05以下である、ラミネート型電池。 【請求項2】 前記比率(LS1/LE)が1.00である、請求項1に記載のラミネート型電池。 【請求項3】 前記段差部において、前記電極体側に近い領域におけるもっとも厚い箇所での厚みt1と、前記電極体側より遠い領域におけるもっとも薄い箇所での厚みt2との差(t1-t2)が10μm以上150μm以下である、請求項1又は請求項2に記載のラミネート型電池。 【請求項4】 固体電解質層を備える電極体と、 前記電極体を覆う一枚のラミネートシートと、を有し、 前記電極体を覆う前記一枚のラミネートシートの一端側と他端側とが融着された融着部を有するラミネート型電池の製造方法であって、 前記融着部は、位置をずらして行われる2回以上の融着工程により形成され、 1回目の融着工程では、2回目の融着工程で融着する領域よりも前記電極体側から遠い領域を融着し、 2回目の融着工程では、前記1回目の融着工程で融着する領域よりも前記電極体側に近い領域を融着し、前記1回目の融着工程での融着後且つ前記2回目の融着工程での融着前の前記ラミネートシートの内周長LS0から、前記1回目の融着工程で融着される領域の電極体側の端部から前記2回目の融着工程で融着される領域の電極体側の端部までの長さL2の2倍の値を引いた長さと、前記電極体の外周長LEとの比率((LS0-2×L2)/LE)が、1.00以上1.05以下となるよう、前記2回目の融着工程での融着を行う、ラミネート型電池の製造方法。 【請求項5】 前記2回目の融着工程を経た後の前記融着部が、前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有し、 前記段差部において、前記電極体側に近い領域におけるもっとも厚い箇所での厚みt1と、前記電極体側より遠い領域におけるもっとも薄い箇所での厚みt2との差(t1-t2)が10μm以上150μm以下である、請求項4に記載のラミネート型電池の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立理由1 請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 申立理由2 請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 申立理由3 請求項1~3、5に係る発明は明確でないため、請求項1~3、5係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 <証拠方法> 甲第1号証:国際公開第2019/123910号 甲第2号証:実願昭56-157108号(実開昭58-61759号)のマイクロフィルム 甲第3号証:実願昭61-29615号(実開昭62-141190号)のマイクロフィルム 第4 甲号証の記載事項、引用発明 1 甲第1号証 (1)甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。 「[0005] 特許文献1の上述した例のように積層体の表面に沿って外装材が積層体に接するように積層体を封止すると、外装材の一部分がその他の領域よりも外側に向けて突出することを本発明者は新規に見出した。 [0006] 本発明の目的は、外装材の一部分の外側への突出を抑えることにある。 課題を解決するための手段」 「[0013] 図1を用いて、電池10の概要を説明する。電池10は、積層体100及び外装材200を備えている。積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含んでいる。外装材200は、積層体100を包んでいる。 [0014] 上述した構成によれば、外装材200の一部分、すなわち、第2部分200bの外側への突出を抑えることができる。詳細を後述するように、積層体100の表面に沿って外装材200が積層体100に接するように積層体100を封止すると、外装材200の第2部分200bが外装材200の第1部分200aよりも外側に突出することを本発明者は新規に見出した。外装材200の第1部分200aの突出は、一定の条件において、特に、積層体100の第1側面104aが下方を向くように電池10を載置する場合に望ましくない。上述した構成においては、外装材200の第2部分200bが、第1方向(図内のX方向)に交わる方向に沿って折り曲げられており、したがって、外装材200の第2部分200bの外側への突出を抑えることができる。 [0015] 次に、図2を用いて、積層体100の詳細を説明する。 [0016] 積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含んでいる。第1電極110及び第2電極120は、互いに異なる極性を有しており、それぞれ、正極及び負極であってもよいし、又は、それぞれ、負極及び正極であってもよい。第1電極110、第2電極120及びセパレータ130は、第1電極110と第2電極120がセパレータ130によって隔てられるように一方向(図内のZ方向)に積層されている。積層体100は、複数の第1電極110及び複数の第2電極120を含んでいてもよい。この場合、隣り合う第1電極110と第2電極120がセパレータ130によって隔てられる。」 「[0021] 次に、図3を用いて、外装材200の詳細を説明する。 [0022] 外装材200は、筒状の形状を有している。外装材200は、シール部202を有している。シール部202では、外装材200の一部分同士が例えば溶着によって互いに貼り合わされている。シール部202によって外装材200の側面が封止されている。 [0023] 外装材200は、ある程度の柔軟性を有している。したがって、図1に示すように外装材200によって積層体100を封止する場合に、積層体100の表面に沿って外装材200が接するように外装材200は変形することができる。」 「[0025] 図2、図3及び図4を用いて、図1に示した電池10の製造方法を説明する。 [0026] まず、図2に示した積層体100を図3に示した外装材200に挿入する。 [0027] 次いで、外装材200の内側の領域の圧力を外装材200の外側の領域の圧力よりも低くして(例えば、積層体100及び外装材200を大気圧下に置いて、外装材200の内部の領域の圧力を負圧にする。)、積層体100の表面に沿って外装材200が積層体100に接するようにする。 [0028] 次いで、積層体100の周囲において、外装材200のうちの互いに重なる部分同士を互いに溶着させる。このようにして、図4に示すように、外装材200によって積層体100が封止される。溶着によって、外装材200には、図1に示したように、シール部204が形成される。シール部204は、積層体100の第3側面104c、第2側面104b及び第4側面104dに沿って連続的に広がっている。シール部204によって積層体100を封止することができる。」 「[0033] さらに、図1に示す例では、外装材200のうちのシール部202及びその周辺(図4)が除去されている。」 「 [図:0001434211000001.jpg] 」 「 [図:0001434211000002.jpg] 」 (2)甲1発明A 上記(1)の記載より、甲第1号証には、次の事項が記載されている。 ・[0013]によれば、電池10は、積層体100及び外装材200を備えており、積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含んでおり、外装材200は、積層体100を包んでいる。 ・[0022]によれば、外装材200は、筒状の形状を有しているところ、図1より、外装材200は一枚のシート状部材であることが見て取れる。 ・[0023]によれば、積層体100の表面に沿って外装材200が接するように外装材200は変形している。 ・[0028]によれば、積層体100の周囲において、外装材200の互いに重なる部分同士を互いに溶着させたシール部204が形成され、シール部204は、積層体100の第3側面104c、第2側面104b及び第4側面104dに沿って連続的に広がっている。 ・図1によれば、シール部204は外装材200の端まで広がっていることが見て取れる。 上記記載事項より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認められる。 「積層体100及び外装材200を備えている電池10であって、 積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含んでおり、 外装材200は、積層体100を包んでいる一枚のシート状部材であり、 積層体100の表面に沿って外装材200が接するように外装材200は変形しており、 積層体100の周囲において、外装材200の互いに重なる部分同士を互いに溶着させたシール部204を備え、 シール部204は、積層体100の第3側面104c、第2側面104b及び第4側面104dに沿って連続的に、且つ外装材200の端まで広がっている、 電池10。」 (3)甲1発明B 上記(1)の記載より、電池10の製造方法に着目すると、甲第1号証には、次の事項が記載されている。 ・[0021]及び[0022]によれば、図3の外装材200は、溶着によって貼り合わされているシール部202を有する筒状である。 ・[0026]によれば、まず、積層体100を図3に示した外装材200に挿入する。 ・[0027]及び[0028]によれば、次いで、外装材200の内側の領域の圧力を外装材200の外側の領域の圧力よりも低くし、積層体100の表面に沿って外装材200が積層体100に接するようにし、積層体100の周囲において、外装材200の互いに重なる部分同士を互いに溶着させシール部204を形成する。 ・[0033]によれば、さらに、外装材200のシール部202及びその周辺を除去する。 上記記載事項及び上記(2)の甲1発明Aの電池10の構成より、甲第1号証には電池10の製造方法として、次の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認められる。 「積層体100及び外装材200を備えている電池10であって、 積層体100は、第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含んでおり、 外装材200は、積層体100を包んでいる一枚のシート状部材であり、 積層体100の表面に沿って外装材200が接するように外装材200は変形しており、 積層体100の周囲において、外装材200の互いに重なる部分同士を互いに溶着させたシール部204を備え、 シール部204は、積層体100の第3側面104c、第2側面104b及び第4側面104dに沿って連続的に、且つ外装材200の端まで広がっている電池10の製造方法において、 まず、積層体100を、溶着によって貼り合わされているシール部202を有する筒状の外装材200に挿入し、 次いで、外装材200の内側の領域の圧力を外装材200の外側の領域の圧力よりも低くし、積層体100の表面に沿って外装材200が積層体100に接するようにし、 積層体100の周囲において、外装材200の互いに重なる部分同士を互いに溶着させシール部204を形成し、 さらに、外装材200のシール部202及びその周辺を除去する、 電池10の製造方法。」 2 甲第2号証 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 「シールは袋物1の周縁を高周波接合等により加熱圧着し第2図に示したように凹凸シール部2を形成し、さらにこの凹凸シール部2の内側に沿って適宜巾の平シール部3を形成し、全体として二重にシール部を形成する。なお、4は収納物である。」(第2頁第18行~第3頁第3行) 3 甲第3号証 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 「本考案は以上述べたように、真空断熱パネルを構成するフィルムの接着層を相互に接着してなる接着部に、その一部を薄肉にした薄肉条部を設けたところに特徴を有するもので、この結果、接着部を通って侵入する空気量を著しく減少されることができ、もって長期間にわたり優れた断熱性能を発揮させることができるという優れた効果を奏するものである。」(第8頁第19行~第9頁第6行) 第5 当審の判断 1 申立理由1(第29条第1項第3号)、申立理由2(第29条第2項)について (1)本件特許発明1 ア 対比 本件特許発明1と甲1発明Aを対比すると、次のことがいえる。 (ア)甲1発明Aの「第1電極110、第2電極120及びセパレータ130を含んで」いる「積層体100」は、電極を含んでいるので電極体といえるものである。 そうすると、甲1発明Aの「積層体100」と本件特許発明1の「固体電解質層を備える電極体」とは、「電極体」である点で共通する。 但し、電極体が、本件特許発明1は「固体電解質層を備える」のに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点で相違する。 (イ)甲1発明Aの「外装材200」は積層体100を包んでいるので、積層体100をラミネートしているといえる。 したがって、甲1発明Aの「積層体100を包んでいる一枚のシート状部材であ」る「外装材200」は、本件特許発明1の「前記電極体を覆う一枚のラミネートシート」に相当する。 (ウ)甲1発明Aの「溶着」は、「融着」といえるから、甲1発明Aの外装材200の互いに重なる部分同士を互いに溶着させた「シール部204」は、「融着部」といえる。 また、甲1発明Aは「シール部204は、」「外装材200の端まで広がっている」ので、「一枚のシート状部材である」外装材200の一端側と他端側とが溶着(融着)されている。 したがって、甲1発明Aの「積層体100の第3側面104c、第2側面104b及び第4側面104dに沿って連続的に、且つ外装材200の端まで広がっている」「シール部204」は、本件特許発明1の「前記電極体を覆う前記一枚のラミネートシートの一端側と他端側とが融着された融着部」に相当する。 但し、融着部について、本件特許発明1は「前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有」するのに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点で相違する。 (エ)甲1発明Aの「積層体100を包んでいる一枚のシート状部材」である「外装材200」を備えている「電池10」は、本件特許発明1の「電極体を覆う一枚のラミネートシート」を有する「ラミネート型電池」に相当する。 但し、本件特許発明1は「前記電極体の外周長LEと、前記電極体を覆う前記ラミネートシートの内周長LS1との比率(LS1/LE)が、1.00以上1.05以下である」のに対して、甲1発明Aは「積層体100の表面に沿って外装材200が接するように外装材200は変形して」いるにとどまり、「積層体100」の外周長と「外装材200」の内周長との比率について特定がない点で相違する。 以上によれば、本件特許発明1と甲1発明Aとは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「電極体と、 前記電極体を覆う一枚のラミネートシートと、を有し、 前記電極体を覆う前記一枚のラミネートシートの一端側と他端側とが融着された融着部を有する、 ラミネート型電池。」 (相違点1) 電極体が、本件特許発明1は「固体電解質層を備える」のに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点。 (相違点2) 融着部について、本件特許発明1は「前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有」するのに対して、甲1発明Aはそのような特定がない点。 (相違点3) 本件特許発明1は「前記電極体の外周長LEと、前記電極体を覆う前記ラミネートシートの内周長LS1との比率(LS1/LE)が、1.00以上1.05以下である」のに対して、甲1発明Aは「積層体100の表面に沿って外装材200が接するように外装材200は変形して」いるにとどまり、「積層体100」の外周長と「外装材200」の内周長との比率について特定がない点。 イ 判断 (ア)第29条第1項第3号について a 本件特許発明1と甲1発明Aとは上記相違点1~3を有しているので、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明でない。 b 特許異議申立人の主張について (a)特許異議申立人は、相違点2について、甲第1号証の【0022】及び【0028】の記載によれば、甲第1号証では、積層体100から遠いシール部202、及びシール部202よりも積層体100に近いシール部204の順に形成されるため、甲1発明Aは、本件特許発明1の「段差部」を有する旨主張する。 しかしながら、甲第1号証をみても、シール部202及びシール部204が順に形成されることが理解できるにとどまり、これらのシール部がどのような手段によって形成されるのか、どのような位置関係で形成されるのかは何ら開示されていないから、本件特許発明1で特定する段差部を有しているとはいえない。 (b)また、特許異議申立人は、相違点3について、甲第1号証の段落【0027】の「・・・、積層体100の表面に沿って外装材200が積層体100に接するようにする。」という事項によれば、甲第1号証に記載の電池において、積層体100の外周長LEと、積層体100を覆う外装材200の内周長Ls1とは、実質的に等しく、比率(Ls1/LE)は、約1.00である旨主張する しかしながら、甲第1号証には、積層体100を、溶着によって貼り合わされているシール部202を有する筒状の外装材200に挿入し([0022]、[0026])、外装材200の内側の領域の圧力を外装材200の外側の領域の圧力よりも低くし、積層体100の表面に沿って外装材200が積層体100に接するようにすることが記載されている([0027])だけであって、積層体100を筒状の外装材200に挿入した際の、積層体100の外周長と外装材200の内周長との比率については何ら記載されていないし、圧力差により外装材200を積層体100に接するようにした際に、外装材200にシワが発生しないようにすることの記載もない。 そうすると、甲1発明Aにおいて、積層体100の外周長LEと、積層体100を覆う外装材200の内周長Ls1とは、実質的に等しく、比率(Ls1/LE)は、約1.00であるとはいえない。 したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。 (イ)第29条第2項について 事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。 甲第1号証に記載された課題は、積層体の表面に沿って外装材が積層体に接するように積層体を封止すると、外装材の一部分がその他の領域よりも外側に向けて突出することを防止することであり([0005]、[0006])、外装材200のシワが発生しないようにすることや、「積層体100」の外周長と「外装材200」の内周長との関係を調整することについては、何ら記載されていない。 そうすると、甲1発明Aにおいて、「積層体100」の外周長と「外装材200」の内周長との比率を、上記相違点3のように構成しようとする動機はない。 そして、特許異議申立の証拠として提出された甲第2号証及び甲第3号証をみても(上記第4の2及び3参照。)、上記相違点3に係る構成について記載も示唆もない。 したがって、甲1発明Aにおいて、上記相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、本件特許発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2及び3 本件特許発明2及び3は、本件特許発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加して限定したものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、本件特許発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明4 ア 対比 本件特許発明4と甲1発明Bを対比すると、次のことがいえる。 (ア)甲1発明Bは、「溶着によって貼り合わされているシール部202」を有し、「外装材200の互いに重なる部分同士を互いに溶着させシール部204」が形成されているものの、上記(1)イ(ア)b(a)のとおり、甲第1号証には、シール部202及びシール部204がどのような手段によって形成されるのか、どのような位置関係で形成されるのかは何ら開示されていない。 そうすると、甲1発明Bの「シール部202」及び「シール部204」は、本件特許発明4のように、「位置をずらして行われる2回以上の融着工程により形成され」ているとはいえないから、本件特許発明4と甲1発明Bとは、本件特許発明4が「前記融着部は、位置をずらして行われる2回以上の融着工程により形成され、 1回目の融着工程では、2回目の融着工程で融着する領域よりも前記電極体側から遠い領域を融着し、 2回目の融着工程では、前記1回目の融着工程で融着する領域よりも前記電極体側に近い領域を融着し、前記1回目の融着工程での融着後且つ前記2回目の融着工程での融着前の前記ラミネートシートの内周長LS0から、前記1回目の融着工程で融着される領域の電極体側の端部から前記2回目の融着工程で融着される領域の電極体側の端部までの長さL2の2倍の値を引いた長さと、前記電極体の外周長LEとの比率((LS0-2×L2)/LE)が、1.00以上1.05以下となるよう、前記2回目の融着工程での融着を行う」のに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点で相違する。 (イ)したがって、上記(1)の本件特許発明1と甲1発明Aとの対比を踏まえると、本件特許発明4と甲1発明Bとは、次の一致点及び相違点を有するといえる。 (一致点) 「電極体と、 前記電極体を覆う一枚のラミネートシートと、を有し、 前記電極体を覆う前記一枚のラミネートシートの一端側と他端側とが融着された融着部を有する、 ラミネート型電池の製造方法。」 (相違点4) 電極体が、本件特許発明4は「固体電解質層を備える」のに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点。 (相違点5) 本件特許発明4は「前記融着部は、位置をずらして行われる2回以上の融着工程により形成され、 1回目の融着工程では、2回目の融着工程で融着する領域よりも前記電極体側から遠い領域を融着し、 2回目の融着工程では、前記1回目の融着工程で融着する領域よりも前記電極体側に近い領域を融着し、前記1回目の融着工程での融着後且つ前記2回目の融着工程での融着前の前記ラミネートシートの内周長LS0から、前記1回目の融着工程で融着される領域の電極体側の端部から前記2回目の融着工程で融着される領域の電極体側の端部までの長さL2の2倍の値を引いた長さと、前記電極体の外周長LEとの比率((LS0-2×L2)/LE)が、1.00以上1.05以下となるよう、前記2回目の融着工程での融着を行う」のに対して、甲1発明Bはそのような特定がない点。 イ 判断 事案に鑑み、まず、上記相違点5について検討する。 上記ア(ア)のとおり、甲1発明Bの「シール部202」及び「シール部204」は、「位置をずらして行われる2回以上の融着工程により形成され」ているとはいえない。 そして、甲1発明Bは「外装材200のシール部202及びその周辺を除去」するものであり、甲第1号証には、「シール部202」を除去せずに残すことの記載も示唆もない。 そうすると、甲1発明Bにおいて、「シール部202」をあえて残すことにより、「電池10」に「シール部202」及び「シール部204」を設けることにして、「電池10」の「シール部202」及び「シール部204」からなる溶着部を2回の溶着工程により形成することの動機はない。 さらに、甲第1号証に記載された課題は、積層体の表面に沿って外装材が積層体に接するように積層体を封止すると、外装材の一部分がその他の領域よりも外側に向けて突出することを防止することであるから([0005]、[0006])、外装材200のシワが発生しないようにするために、甲1発明Bにおいて、上記相違点5に係る構成を採用することの動機もない。 また、甲第2号証及び甲第3号証をみても、上記相違点5に係る構成について記載も示唆もない。 したがって、甲1発明Bにおいて、上記相違点5に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。 よって、本件特許発明4は、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明5 本件特許発明5は、本件特許発明4の構成を全て含み、更に他の構成を付加して限定したものであるから、上記(3)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 申立理由3(第36条第6項第2号)について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、次の(i)~(iii)の主張をし、本件特許発明1~3及び5は不明確であると主張するから、以下、それぞれ検討する。 (1) (i)の主張について ア 特許異議申立人の主張の概要 本件特許発明1は「前記融着部は、前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有し」という構成を有する。また、本件特許発明5も同様である。 しかしながら、本件特許発明1、5においては、電極体側に近い領域の数、および、電極体側より遠い領域の数が特定されていないため、本件特許発明1、5は、電極体側に近い領域、および、電極体側より遠い領域をそれぞれ複数有する場合を含み得る。 そうすると、電極体側に近い領域、および、電極体側より遠い領域は、任意の相対的な2か所の位置関係を特定するものであり、極めて曖昧な表現である。 したがって、本件特許発明1、本件特許発明1に関連する本件特許発明2、3及び本件特許発明5は不明確である。(特許異議申立書第21~23頁) イ 判断 本件特許発明1では、「前記融着部は、前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有し」と特定されており、「融着部」、「電極体側に近い領域」、「電極体側より遠い領域」及び「段差部」の記載は、それぞれ明確である。 また、「融着部」は「電極体側に近い領域」の厚みと、「電極体側より遠い領域」の厚みとの差により、「段差部」を有していることも明確である。 したがって、本件特許発明1における「前記融着部は、前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有し」との記載は明確である。 なお、特許異議申立人の上記主張のように、電極体側に近い領域、および、電極体側より遠い領域がそれぞれ複数あったとしても、何れか一組の「電極体側に近い領域」及び「電極体側より遠い領域」が、電極体側に近い領域の厚みが電極体側より遠い領域の厚みより薄い関係を満たし、それにより段差部を構成するのであれば、本件特許発明1で特定される「電極体側に近い領域」及び「電極体側より遠い領域」になることは明らかである。 したがって、特許異議申立人が主張するように、本件特許発明1が、電極体側に近い領域、および、電極体側より遠い領域をそれぞれ複数有する場合を含み得ても、本件特許発明1を不明確にするものではない。 また、本件特許発明1に関連する本件特許発明2、3及び本件特許発明5についても同様である。 よって、上記主張(i)は採用できない。 (2) (ii)の主張について ア 特許異議申立人の主張の概要 本件特許発明1は「前記融着部は、前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有し」という構成を有する。また、本件特許発明5も同様である。 しかしながら、段差部を構成する電極体側に近い領域の厚みと、電極体側より遠い領域の厚みの大小関係の程度が極めて曖昧である。 例えば、柔軟性および熱可塑性を備えたシーラント樹脂を備え、これを熱と圧力で溶かしたシーラント樹脂を重ねて冷えて固まった「融着部」において、断面を電子顕微鏡で撮影して「表側の表面」~「裏側の表面」までの厚みNを複数個所で測定すれば、Nの値は一定値ではなく、多少の変動が存在することは技術常識である。 そうすると、本件特許発明1、5において「厚みが違っている」ことにより特定される「段差部」は、厚み差の程度の匙加減によって、無数に存在することになる。 したがって、本件特許発明1、本件特許発明1に関連する本件特許発明2、3及び本件特許発明5は不明確である。(特許異議申立書第23~25頁) イ 判断 上記(1)イのとおり、本件特許発明1における「前記融着部は、前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い段差部を有し」との記載は明確である。 特許異議申立人は、「融着部」において、断面を電子顕微鏡で撮影して「表側の表面」~「裏側の表面」までの厚みNを複数個所で測定すれば、Nの値は一定値ではなく、多少の変動が存在することは技術常識であり、本件特許発明1、5において「厚みが違っている」ことにより特定される「段差部」は、厚み差の程度の匙加減によって、無数に存在することになると主張するが、特許異議申立人の主張は、「領域」の厚みではなく、「断面」の厚みを前提とするものであって、本件特許発明1の構成に基づくものではない。 そして、本件特許発明1では、「領域」の厚みに差があることによって「段差部」が構成されるのであるから、電子顕微鏡で撮影した複数箇所の厚みに多少の変動が存在するからといって、「領域」の厚みに差がなければ「段差部」にはならず、「段差部」が無数に存在することにならない。 したがって、段差部を構成する電極体側に近い領域の厚みと、電極体側より遠い領域の厚みの大小関係の程度が特定されていなくても、本件特許発明1を不明確にするものではない。 また、本件特許発明1に関連する本件特許発明2、3及び本件特許発明5についても同様である。 よって、上記主張(ii)は採用できない。 (3) (iii)の主張について ア 特許異議申立人の主張の概要 本件特許発明3は、「前記段差部において、前記電極体側に近い領域におけるもっとも厚い箇所での厚みt1と、前記電極体側より遠い領域におけるもっとも薄い箇所での厚みt2との差(tl-t2)が10μm以上150μm以下である、」という構成を有する。本件特許発明3は、本件特許発明1に関連する発明である。 一方、本件特許発明1は、段差部について、「前記電極体側に近い領域の厚みが前記電極体側より遠い領域の厚みより薄い」ということが特定されている。すなわち、段差部においては、t1<t2であることが把握できる。 その結果、構成3Aにおける差(t1-t2)は、負の数になるため、構成3Aの意味を理解することができない。 このため、本件特許発明3は、不明確である。 また、本件特許発明5も同様である。 したがって、本件特許発明3及び本件特許発明5は不明確である。(特許異議申立書第25~26頁) イ 判断 本件特許発明3の「段差部」において「前記電極体側に近い領域におけるもっとも厚い箇所での厚みt1」は、本件特許発明1の「前記電極体側に近い領域の厚み」とは異なり、本件特許発明3の「段差部」において「前記電極体側より遠い領域におけるもっとも薄い箇所での厚みt2」は、本件特許発明1の「前記電極体側より遠い領域の厚み」とは異なる。 特許異議申立人の主張は、本件特許発明3と本件特許発明1で特定されたこれらの厚みが同じものであることを前提とした主張であると解されるところ、上述のとおり、これらの厚みは異なるものであるから、主張の前提を欠く。 また、本件特許明細書には「融着部20は、電極体側(図6における左側)に近い領域の厚みNが、電極体側より遠い領域の厚みMより薄い段差部を有する。・・・1回目の融着領域X1と2回目の融着領域X2とが重複する領域よりも、電極体側より遠い領域の厚みMが厚くなり、2回目の融着領域X2の厚みNは、厚みMよりも薄くなる。なお、厚みMよりもさらに電極体側より遠い領域の厚みLは、厚みMよりも薄くなる。」(【0022】)と記載されている。 そうすると、「厚みMよりもさらに電極体側より遠い領域の厚みL」の箇所からみれば、「厚みM」の箇所は「電極体側に近い領域」であるといえ、「厚みM」は本件特許発明3の「前記電極体側に近い領域におけるもっとも厚い箇所での厚みt1」に相当し、「厚みL」は本件特許発明3の「前記電極体側より遠い領域におけるもっとも薄い箇所での厚みt2」に相当するから、本件特許発明3における「差(t1-t2)」は正の数になり、特許異議申立人が主張するように、負の数にはならない。 したがって、本件特許発明1を引用する本件特許発明3が、不明確になることはない。 また、本件特許発明5についても同様である。 よって、上記主張(iii)は採用できない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項及び特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということはできず、請求項3~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということはできず、同法第113条第2号により取り消すことはできない。 また、請求項1~3、5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第4号により取り消すことはできない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700065

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