特許拒絶査定不服審判
2015-017788
ウェハを恒久的にボンディングするための方法
- 審判番号
- 2015-017788
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-503003外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年09月30日
- 審決日
- 2017年01月06日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】久野 琢也
- 【請求人代理人】バーナード 正子
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-503003「ウェハを恒久的にボンディングするための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日国際公開,WO2012/136267,平成26年 7月10日国内公表,特表2014-516470〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2011年4月8日を国際出願日とする出願であって,平成26年9月18日付けで拒絶理由が通知され,同年12月19日に意見書と誤訳訂正書が提出され,平成27年5月29日付けで拒絶査定がなされ,同年9月30日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正書が提出され,その後,平成28年3月22日に上申書が提出されたものである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年9月30日に提出された手続補正書による補正を却下する。
[理 由]
1 補正の内容
平成27年9月30日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1-16を補正して,補正後の請求項1-15とするものであって,補正前後の請求項1は次のとおりである。
<補正前>
「【請求項1】
下記のステップで,下記の順番で第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法であって,
前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップであって,前記表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される,ステップと,
第1の出発原料または出発原料の第1のグループで前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップと,
プレボンド接続の形成のために前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させるステップと,
前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップと
を含むことを特徴とする方法。」
<補正後>
「【請求項1】
下記のステップで,下記の順番で第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法であって,
前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップであって,前記表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される,ステップと,
第1の出発原料または出発原料の第1のグループで前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップと,
プレボンド接続の形成のために前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させるステップと,
前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップと
を含み,
前記貯留部(5)が,
前記第1の接触表面(3)を,高い酸素および/または水分含有量を有する雰囲気に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,主に,H2Oおよび/またはH2O2からなる流体に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ,
のうちの1つまたは複数のステップによって満たされることを特徴とする方法。」
2 補正事項の整理
本件補正の請求項1についての補正事項を整理すると次のとおりである。
(1)補正事項1
補正前の請求項1の「恒久的な結合を形成するステップとを含むこと」を補正して,補正後の請求項1の「恒久的な結合を形成するステップとを含み,
前記貯留部(5)が,
前記第1の接触表面(3)を,高い酸素および/または水分含有量を有する雰囲気に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,主に,H2Oおよび/またはH2O2からなる流体に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ,
のうちの1つまたは複数のステップによって満たされること」とすること。
3 新規事項追加の有無,発明の特別な技術的特徴の変更の有無,及び,補正の目的の適否についての検討
(1)補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たす。
(2)さらに,補正事項1による補正は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。また,本願の願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」という。)に記載されているものと認められるから,補正事項1は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(3)そして,補正事項1は,発明の特別な技術的特徴を変更するものではないと認められるから,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものといえる。
(4)以上検討したとおりであるから,本件補正の補正事項1を含む請求項1についての補正は,特許法第17条の2第3項,第4項,及び,第5項に規定する要件を満たす。
4 独立特許要件についての検討
本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項1を含むから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定によって,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることを要する。
そこで,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,本件補正がいわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かについて,請求項1に係る発明について,更に検討を行う。
(1)補正後の発明
本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲又は図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
以下,再掲する。
「【請求項1】
下記のステップで,下記の順番で第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法であって,
前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップであって,前記表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される,ステップと,
第1の出発原料または出発原料の第1のグループで前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップと,
プレボンド接続の形成のために前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させるステップと,
前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップと
を含み,
前記貯留部(5)が,
前記第1の接触表面(3)を,高い酸素および/または水分含有量を有する雰囲気に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,主に,H2Oおよび/またはH2O2からなる流体に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ,
のうちの1つまたは複数のステップによって満たされることを特徴とする方法。」
(2)引用例とその記載事項,及び,引用発明
拒絶査定の理由で引用した,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用例1には,図面とともに次の事項が記載されている。(なお,下線は,当合議体において付したものである。以下同じ。)
ア 引用例1:特表2008-535230号公報
(1a)「【請求項1】
半導体材料から選択された材料で作られた2つのウェハを貼り合わせる方法で,貼り合わせる前記2つのウェハの少なくとも1つの表面のプラズマ活性化を実行するものであって,プラズマ活性化中に,表面が活性化されている前記ウェハの表面領域の厚さに,制御された厚さの乱れ領域を生じさせるために,プラズマに含まれた種の運動エネルギーを変更するように活性化パラメータを制御するステップを備える方法。」
(1b)「【請求項5】
前記種が,プラズマイオンである,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記制御ステップが,10eV~2keVの範囲のレベルでプラズマに含まれた前記種の運動エネルギーを得ようとする,請求項1に記載の方法。」
(1c)「【請求項22】
前記活性化パラメータの前記制御ステップが,前記プラズマを生じさせるガスの組成を制御することによって,運動エネルギーを制御する工程を備える,請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ガス組成の前記制御が,前記プラズマを発生するために使用されるガスの性質の制御された変動を得るように実行される,請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記変動が,第1のガスから得られたプラズマと,引き続き,第2のガスから得られたプラズマで活性化される表面を処理することで得られる,請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のガスが,前記第2のガスより軽量である1つ以上の種で構成される,請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のガスがヘリウムであり,前記第2のガスが酸素またはアルゴンであり,または前記第1のガスが酸素であり,前記第2のガスがアルゴンである,請求項25に記載の方法。」
(1d)「【0025】
(本発明の内容)
本発明は,半導体材料の2つのウェハの貼り合わせに関する。材料の各々は,Siまたは何らかの他の半導体材料であってもよい。
【0026】
2つのウェハを貼り合わせるための表面はまた,活性化前に酸化されてもよい。より正確には,貼り合わせるための表面の一方または他方が酸化されてもよく,またはそれらの両方が酸化されてもよい。
【0027】
以下に説明するように,貼り合わせるための表面の両方,またはそれらの一方のみに活性化が実行され得る。本発明の1つの利点は,貼り合わせるための2つの表面の一方しか活性しなくても,貼り合わせ後に十分に高い結合エネルギーを得ることができることである。」
(1e)「【0040】
この乱れ領域は,貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用すると思われる。このように,上記ガスおよび他の元素を誘引し捕捉することによって,乱れ領域は,貼り合わせを高めるように思われる。
【0041】
乱れ/無秩序Dは,乱れ/無秩序Dと活性化される表面との間に挟まれた乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が「供給」されるのに適していると考えられ,乱れ/無秩序Dおよびdは,ウェハの深さに延在するある種の捕捉格子を形成する(プラズマ活性ウェハの厚さで得られた分布を示す図1を参照されたい)。
【0042】
本明細書において使用する「乱れ領域」という用語は,プラズマに露出されることによって変更される領域を意味し,この変更は,乱れ領域内に,欠陥,乱れ,および原子スケールでの無秩序の導入に相当する(原子結合の弱化,結合角度の変化など)。
【0043】
この変更は,ウェハ間の貼り合わせを高め,特に,結合エネルギーを高めるように働く。」
(1f)「【0092】
さらに詳しく言えば,これにより,
・活性化の開始時,活性化されるウェハ内に第1のガス種をより深く浸透させることができ,
・活性化の終了時に向けて,より重く,したがって,活性化されるウェハに浸透する深度がより浅い第2の種を活性化されるウェハ内に浸透させることによって,乱れ領域を作ることを終了することができる。
【0093】
例えば,第1のガスはヘリウムであり,第2のガスは酸素またはアルゴンであってもよい。別の例において,第1のガスは酸素であり,第2のガスはアルゴンであってもよい。」
(1g)「【0103】
本発明により,少なくとも1つの表面が本発明により活性化された表面を貼り合わせた後に得られた結合エネルギーを著しく上昇させることが可能である。
【0104】
この点に関して,図4は,4つの異なる活性化で得られる結合エネルギー(mJ/m2)を示し,貼り合わせられる表面の1つのみ,詳しく言えば,表面酸化され,引き続き,Smart Cut(商標)タイプの方法によって薄層を転写するために注入されたSiウェハの表面ですべての活性化が実行された。
【0105】
他の表面(Siウェハのもの)は,同図に示す例では活性化されていない。
【0106】
同図は,特に,得られた結合エネルギーに及ぼす活性化出力の変動を適切に選択する影響を示す(他の活性化パラメータは,すべての4つの活性化に対して同一のままである)。
【0107】
同図のグラフの下側部分にある点線は,活性化なしに得られる結合エネルギーレベルを表す。
【0108】
各活性化は,複数の測定点の平均によってそれぞれ表される。
【0109】
同図の左側から右側に向かって,図示した4つの活性化は,以下の出力条件セットに相当する。
・一定の出力値(30s間,250W)
・一定の出力値(30s間,1000W)
・15s間,250Wの後,15s間,1000Wが続く変動出力
・15s間,1000Wの後,15s間,250Wが続く変動出力
【0110】
4番目の条件セットで,結合エネルギーの著しい上昇が観察される。
【0111】
このように,同図は,出力を制御することで,結合エネルギーが著しく上昇することを示す。」
(1h)「【0119】
(実施例)
非制限的な例として,上記に設定した値に加えて,活性化を実施し,以下のシーケンスを実行することによって表面酸化された別のSiウェハとSiウェハを貼り合わせることが可能である。
・2つの貼り合わせ表面を準備する(RCA(Radio Corporation of America)タイプなどのウェット洗浄,研磨など)。
・「二重出力」処理によって貼り合わせる表面の一方または両方をプラズマ活性化する。例えば,「Tokyo Electron Limited」(登録商標)プラズママシンは,200mmの直径を有するウェハに対して,O2の大気下で50ミリトールの圧力を用いて,75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO2,15s間で1000Wの出力,次の15s間で250Wで使用される。
・貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス,RCAタイプまたはNH4OHタイプの洗浄,水でスクラブなど)。
・貼り合わせる表面を接触状態にし,貼り合わせを開始する。
・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)。
【0120】
上述したように,本発明は,(特に,シリコン・オン・インシュレータ(SOI)タイプの)多層ウェハを製造するための転写方法,例えば,Smart Cut(商標)タイプの方法に関連して実施され得る。」
イ 引用発明1,引用発明2
引用例1の上記摘記(1a)-(1h)の記載から,引用例1には,請求項1,請求項22,請求項23,請求項24及び請求項25を引用する請求項26に係る以下の発明(以下「引用発明1」という。),並びに,引用例1の特許請求の範囲に記載された発明の「(実施例)」として上記摘記(1h)に開示された,以下の発明(以下「引用発明2)とが記載されていると認められる。
・引用発明1
「半導体材料から選択された材料で作られた2つのウェハを貼り合わせる方法で,貼り合わせる前記2つのウェハの少なくとも1つの表面のプラズマ活性化を実行するものであって,プラズマ活性化中に,表面が活性化されている前記ウェハの表面領域の厚さに,制御された厚さの乱れ領域を生じさせるために,プラズマに含まれた種の運動エネルギーを変更するように活性化パラメータを制御するステップを備える方法であって,
前記活性化パラメータの前記制御ステップが,前記プラズマを生じさせるガスの組成を制御することによって,運動エネルギーを制御する工程を備えるものであり,
ガス組成の前記制御が,前記プラズマを発生するために使用されるガスの性質の制御された変動を得るように実行されるものであり,
前記変動が,第1のガスから得られたプラズマと,引き続き,第2のガスから得られたプラズマで活性化される表面を処理することで得られるものであり,
前記第1のガスが,前記第2のガスより軽量である1つ以上の種で構成されるものであり,
前記第1のガスがヘリウムであり,前記第2のガスが酸素である方法。」
・引用発明2
「以下の工程を,以下の順序で実行することによって表面酸化された別のSiウェハとSiウェハを貼り合わせる方法であって,
2つの貼り合わせ表面を準備する(RCA(Radio Corporation of America)タイプなどのウェット洗浄,研磨など)工程と,
「二重出力」処理によって貼り合わせる表面の一方または両方をプラズマ活性化する。例えば,「Tokyo Electron Limited」(登録商標)プラズママシンは,200mmの直径を有するウェハに対して,O2の大気下で50ミリトールの圧力を用いて,75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO2,15s間で1000Wの出力,次の15s間で250Wで使用される工程と,
貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス,RCAタイプまたはNH4OHタイプの洗浄,水でスクラブなど)工程と,
貼り合わせる表面を接触状態にし,貼り合わせを開始する工程と,
熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)工程と,
を含む方法。」
(3)引用発明1を主引用例とした,本願補正発明1の進歩性について
ア 本願補正発明1と引用発明1との対比
(ア)引用発明1の「ウェハ」は,基板の一種といえる。また,2つのウェハを貼り合わせ,すなわち,ボンディングする場合に,一方のウェハの「接触表面」と,他方のウェハの「接触表面」とを貼り合わすこととなるのは自明である。したがって,引用発明1の「2つのウェハを貼り合わせる方法」は,以下の相違点1,2を除いて,本願補正発明1の「第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法」に相当する。
(イ)引用発明1は,「貼り合わせる前記2つのウェハの少なくとも1つの表面のプラズマ活性化を実行する」ものであるから,「貼り合わせる前記2つのウェハ」の,両方の表面について,プラズマ活性化を実行するものを含むと解される。
そして,引用例1の上記摘記(1e)の「この乱れ領域は,貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した『リザーバ』として作用すると思われる。・・・乱れ/無秩序Dは,乱れ/無秩序Dと活性化される表面との間に挟まれた乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が『供給』されるのに適していると考えられ,乱れ/無秩序Dおよびdは,ウェハの深さに延在するある種の捕捉格子を形成する」との記載から,引用発明1の「乱れ領域」は,「リザーバ」,「捕捉格子」として作用するものと理解される。
してみれば,引用発明1の「ヘリウム」から得られた「プラズマ」で活性化される表面を処理することで得られる「乱れ領域」は,本願補正発明1の「貯留部」に相当するといえる。
そして,当該「乱れ領域」を形成する,引用発明1における,前記「ヘリウム」から得られた「プラズマ」で,貼り合わせる前記2つのウェハの両方の表面をプラズマで活性化する工程は,本願補正発明1の「前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップ」に相当するものと認められる。
(ウ)引用発明1は,「半導体材料から選択された材料で作られた2つのウェハを貼り合わせる方法」であるから,引用発明1が,「第1の接触表面を第2の接触表面と接触させるステップ」を含むことは自明である。
したがって,上記の対応関係から,本願補正発明1と引用発明1との一致点及び相違点は,次のとおりといえる。
<一致点>
「下記のステップで,下記の順番で第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法であって,
前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップと,
前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させるステップ
を含む方法。」
<相違点>
・相違点1:本願補正発明1が,「第1の出発原料または出発原料の第1のグループで前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップ」であって,
「前記貯留部(5)が,
前記第1の接触表面(3)を,高い酸素および/または水分含有量を有する雰囲気に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,主に,H2Oおよび/またはH2O2からなる流体に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ,
のうちの1つまたは複数のステップによって満たされる」ものを含むのに対して,引用発明1では,このような特定がされていない点。
・相違点2:本願補正発明1の,第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップが,「前記表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される,ステップ」であるのに対して,引用発明1は,「貼り合わせる前記2つのウェハの少なくとも1つの表面のプラズマ活性化を実行するものであって,プラズマ活性化中に,表面が活性化されている前記ウェハの表面領域の厚さに,制御された厚さの乱れ領域を生じさせる」工程を含むものである点。
すなわち,本願補正発明1が,「少なくとも主として自然酸化物物質から構成される」表面層内に貯留部を形成するものであるのに対して,引用発明1では,プラズマ活性化を実行して,「リザーバ」,「捕捉格子」として作用する「乱れ領域」を形成することとなる,「ヘリウム」から得られた「プラズマ」で活性化する対象であるウェハの表面の状態が特定されていない点。
・相違点3:本願補正発明1が,プレボンド接続の形成のために,前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させ,その後,「前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成する」ものであるのに対して,引用発明1では,2つのウェハを貼り合わせる具体的な手順が特定されていない点。
イ 相違点についての判断
・相違点1について
引用発明1は,請求項1,請求項22,請求項23,請求項24及び請求項25を引用する請求項26に係る発明である。
そして,引用発明1が引用する当該請求項1について,引用例1の上記摘記(1b)には,「前記種が,プラズマイオンである,請求項1に記載の方法」,「前記制御ステップが,10eV~2keVの範囲のレベルでプラズマに含まれた前記種の運動エネルギーを得ようとする,請求項1に記載の方法」と記載されている。
そうすると,上記摘記(1b)の記載に基づいて,引用発明1の「プラズマに含まれた種」は,「プラズマイオン」を含むものと理解できる。
さらに,引用発明1の「前記活性化パラメータの前記制御ステップ」,すなわち,「第1のガス(ヘリウム)から得られたプラズマ」と,引き続き,「第2のガス(酸素)から得られたプラズマ」で活性化される表面を処理することで変動を得るように実行される「前記制御ステップ」は,上記摘記(1b)の記載に基づいて,「10eV~2keVの範囲のレベル」で,「ヘリウムガスのプラズマイオン」及び「酸素ガスのプラズマイオン」の運動エネルギーを得ようとする制御ステップを想定しているものと理解することができる。
加えて,引用例1の上記摘記(1f)には,「さらに詳しく言えば,これにより,・活性化の開始時,活性化されるウェハ内に第1のガス種をより深く浸透させることができ,・活性化の終了時に向けて,より重く,したがって,活性化されるウェハに浸透する深度がより浅い第2の種を活性化されるウェハ内に浸透させることによって,乱れ領域を作ることを終了することができる。例えば,第1のガスはヘリウムであり,第2のガスは酸素またはアルゴンであってもよい。」と記載されている。
そうすると,引用例1の上記各記載から,引用発明1において,(a)「第1のガス」,すなわち,「ヘリウム」から得られたプラズマを用いた活性化中に,ウェハの表面領域の厚さに,「乱れ領域」が形成されること,(b)前記「乱れ領域」は,「リザーバ」,「捕捉格子」として作用すること,(c)前記「『第1のガス』,すなわち,『ヘリウム』から得られたプラズマを用いた活性化」後に,引き続き,「第2のガス」,すなわち,「酸素」から得られたプラズマを用いた活性化を行うこと,(d)前記第1のガス(ヘリウム)種はウェハにより深く浸透し,第2の種(酸素)は,ウェハにより浅い深度で浸透すること,及び,(e)「ヘリウムガスのプラズマイオン」及び「酸素ガスのプラズマイオン」は,いずれも,「10eV~2keVの範囲のレベル」で運動エネルギーを得ようとするように制御され得ることが理解される。
してみれば,「第2のガス」,すなわち,「酸素」から得られたプラズマを用いた活性化を行う際にウェハに浸透する第2の種(酸素)は,前記浸透に先立つ「ヘリウム」を用いた活性化中に「より深い深度」にまでわたって形成された「乱れ領域」の,「より浅い深度」の領域に捕捉され,当該「乱れ領域」を少なくとも部分的に満たすものと認められる。
したがって,引用発明1は,「酸素」すなわち「第1の出発原料または出発原料の第1のグループ」で「前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップ」を含むものといえるから,この点で,引用発明1は,本願補正発明1と一致する。
さらに,第2の種(酸素)がウェハに浸透して「乱れ領域」を少なくとも部分的に満たす際の,「酸素」から得られたプラズマを用いた活性化の条件として,引用例1の上記摘記(1b)には,「酸素ガスのプラズマイオン」が「10eV~2keVの範囲のレベル」で運動エネルギーを得ようとするように制御されることが記載されているのであるから,引用発明1において,前記「乱れ領域」を,第2の種(酸素)で少なくとも部分的に満たすことを,「ウェハの接触表面を,10eV~2keVの範囲のレベルのイオンエネルギーを有するO2ガスに曝すステップ」によってなされるようにすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。
してみれば,引用発明1において,相違点1について,本願補正発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
・相違点2について
(ア)引用例1の上記摘記(1d)には,「2つのウェハを貼り合わせるための表面はまた,活性化前に酸化されてもよい。より正確には,貼り合わせるための表面の一方または他方が酸化されてもよく,またはそれらの両方が酸化されてもよい。」と記載されている。
そうすると,引用発明1は,プラズマ活性化を実行する前の,ウェハの両方の表面の状態として,酸化の有無は問わず,ウェハの両方の表面が酸化されているものをも含む発明であると理解される。
そして,引用例1には,引用発明1が所定の効果を奏するために,前記「酸化」が,特定の厚さを有し,あるいは,特定の作製方法によって形成されたものであることを必要とすることは,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1における,前記「酸化」は,特定の態様のものであることを必要とせず,任意の酸化膜を含むものと理解することが自然といえる。
他方,拒絶査定で引用した本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である以下の周知例1,2にも記載されているように,第1及び第2のシリコン基板の雰囲気への曝露から生じる自然酸化物層(天然酸化物層)を有する面に,酸化ガスに基づくプラズマ(酸素プラズマ)活性化を行い,前記第1および第2のシリコン基板を結合する手順は周知技術と認められる。
そうすると,引用発明1における,プラズマ活性化を実行する前の,ウェハの両方の表面の状態を,「表面層が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される」状態のものとすることは,前記周知例1,2から認められる周知技術を参酌すれば,当業者が適宜なし得たことといえる。また,このような構成を採用したことによる効果も,当業者が予測する範囲のものと認められる。
したがって,引用発明1において,相違点2について,本願補正発明1の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。
(イ)なお,審判請求人は,平成28年3月22日に提出した上申書において,「しかしながら,基板上の表面を酸化シリコン(酸化物物質)で構成する場合と,自然酸化物物質で構成する場合とでは,以下のような大きな違いがあります。まず,酸化シリコン(酸化物物質)は,一般的には,自然界では通常発生しない非常に高い温度,例えば,800℃以上,特に1000℃以上で,意図的に,熱処理が施こされた酸化物であり,一般に,このような熱酸化物は自然酸化物よりも厚い酸化物層を形成します。」,「それ故,自然酸化物の成長過程は,極めて低い温度に基づき非常に早く終了するため,自然酸化物の層の厚さは,一般に,熱酸化物の層よりも薄くなり,たいていは,10オングストローム以内です。よって,上記のように,自然酸化物層と,自然酸化物ではない意図的に作製された酸化物層とでは,通常,層の厚さが大きく異なります。・・・したがって,ウェハ基板上に,一般的に自然酸化物層よりも層が厚い酸化物層を意図的に形成している引用文献1に記載されている発明では,上記の本願発明を採用すること,すなわち,表面層を,少なくとも主として自然酸化物物質から構成することにより奏される上述の有利な効果を奏しません。」と主張する。
しかしながら,基板上に形成される自然酸化物層の厚さは,基板の材料,表面の結晶方位,基板にドーピングされている不純物濃度,大気中の湿度,大気中に保持される期間等の種々の条件によって異なる。
例えば,周知例1の摘記(周1h)の「基板は,これらの表面に,該基板の周囲空気への曝露から生じる自然層,例えば,約2~3nm・・・の厚さを有する自然酸化物をもたらしてもよい」との記載,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である以下の周知例3の摘記(周3a)の「表面の自然酸化膜の厚さは25nm」との記載,すなわち,250オングストロームの厚さを有する自然酸化物の記載,さらに,周知例4の摘記(周4a)の「自然酸化膜は,3~50Åの厚さを有する」との記載から,「10オングストローム」を超える自然酸化膜は周知といえる。
他方,周知例1の摘記(1g)には,「プラズマ酸化処理が,酸素を用いて行う場合,2nm~15nmの厚さを有する絶縁層3を形成するために,圧力範囲は,約5~200mTであり,電力範囲は,約10~4000Wであり,出力は,約10~1000sccmであり,およびこのことは,1秒~300秒続く」と記載されており,プラズマ酸化処理によって,2nm(20オングストローム)の厚さを有する絶縁層を形成する方法が知られていたことが明らかである。
そうすると,上記周知例3,4に記載された自然酸化物の層の厚さである,250オングストローム,及び,50オングストロームの厚さよりも薄い,20オングストロームの厚さを有する「意図的に作製された酸化物層」が存在するのであるから,「自然酸化物の層」の厚さが,「自然酸化物ではない意図的に作製された酸化物層」の厚さよりも薄いとは必ずしもいうことはできない。
したがって,審判請求人の前記主張は前提を欠き採用することはできない。
(ウ)また,審判請求人は,「ここで,引用文献1に記載されている発明は,ウェハの表面領域の厚さに,制御された厚さの乱れ領域を生じさせることを必須の技術的思想としています(引用文献1の請求項1)。そして,このような乱れ領域の厚さは,10オングストローム~250オングストロームであることが教示されており(引用文献1の請求項4,明細書の段落番号0021),ウェハを表面酸化した際に形成された酸化シリコン層として,例えば,37オングストロームの酸化シリコン層が例示されています(引用文献1の明細書の段落番号0046)。それ故,引用文献1に記載されている発明は,ウェハ基板上に意図的に表面酸化した酸化物層を形成しているため,ウェハ基板上には,自然酸化物層よりも厚い層厚を有する酸化物層が形成されています。」と主張する。
しかしながら,引用発明1は,酸化膜の厚さ,及び,乱れ領域の深さを特定していないから,引用例1の請求項4,及び,【0021】の記載に基づく前記主張は前提を欠き採用することはできない。
しかも,仮に,乱れ領域の深さが,「10オングストローム~」であるとしても,上記(イ)で検討したように,自然酸化物の層の厚さとして,250オングストローム,あるいは,50オングストロームのように,10オングストロームよりも厚い場合があることは明らかであるから,この点においても,審判請求人の主張は採用することはできない。
さらに,引用例1の【0046】における「酸化シリコン層:37Å」との記載は,「乱れ」の程度による,エッチング速度の違いを説明する際の例示であって,引用発明1における,基板表面に形成された酸化膜の厚さを説明したものではないから,審判請求人の主張は前提を欠き採用することはできない。
(エ)さらに,審判請求人は,「一方,本願発明は,表面層を,少なくとも主として自然酸化物物質から構成していることから,基板上に可能な限り薄い自然酸化物層を形成することができ,その結果,反応相手との間の距離(第1の出発原料と,第2の出発原料との間の距離)が狭くなり,第1の出発原料と,第2の出発原料との反応が加速し,基板間の結合力を高めることが可能となります(本願の明細書の段落番号0009)。したがって,ウェハ基板上に,一般的に自然酸化物層よりも層が厚い酸化物層を意図的に形成している引用文献1に記載されている発明では,上記の本願発明を採用すること,すなわち,表面層を,少なくとも主として自然酸化物物質から構成することにより奏される上述の有利な効果を奏しません。」と主張する。
しかしながら,上記(イ)で検討したように,「自然酸化物の層」の厚さが,「自然酸化物ではない意図的に作製された酸化物層」の厚さよりも薄いとは必ずしもいうことはできないから,審判請求人の主張は前提を欠き採用することはできない。
しかも,仮に,「自然酸化物の層」の厚さが薄いとしても,本願補正発明1は,前記「自然酸化物の層」に貯留部を形成した後に,「前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ」を経る発明であるところ,当該「前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ」によって形成されることが予想される,窒化膜,酸化膜等の厚さが厚い場合には,審判請求人の主張する前記「反応相手との間の距離(第1の出発原料と,第2の出発原料との間の距離)が狭くなり,第1の出発原料と,第2の出発原料との反応が加速し,基板間の結合力を高めることが可能となります」との効果は奏しないから,この点においても審判請求人の主張は採用することはできない。
(オ)そして,審判請求人は,「そして,本願の課題の1つに,可能な限り低温で恒久的な結合を形成させることが挙げられています・・・引用文献1には,・・・当該構成により,「可能な限り低温で恒久的な結合を形成させる」といった上記本願の課題の一部を解決し得ることについて教示されていない以上,引用文献1において,本願の上記課題を解決するために本願発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等は一切されていません。」とも主張する。
しかしながら,本願補正発明1は,「前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップ」を含むと規定するだけであって,当該結合を形成する際の温度が低温であることを特定していないから,前記審判請求人の主張は,請求項の記載に基づかない主張であって採用することはできない。
しかも,引用例1の上記摘記(1h)に記載された実施例における「熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)」との温度は,本願明細書の【0069】に記載された「図4に示したプロセスステップでは,温度は,最大500℃まで・・・上昇される。」との温度よりも低いから,「低温で恒久的な結合を形成させる」との,審判請求人が主張する前記課題は,引用発明1で既に解決されているものと認められる。
したがって,審判請求人の前記主張は,この点においても採用することができない。
・周知例1:特開2009-111381号公報
(周1a)「【請求項1】
2~25nmの厚さを有する微細な埋め込み絶縁層を有する半導体構造体(6,6’,6’’’)を形成する方法であって
第1の基板(1)の表面(3’)および/または第2の基板(2)の表面(4’)に少なくとも1つの絶縁層(3,4)を形成する工程であり,前記表面(3’,4’)が,絶縁体を有しない面,または,前記基板の雰囲気への曝露から生じる自然酸化物層を有する面である,工程と,
前記第1の基板(1)および前記第2の基板(2)を組み付ける工程と,
前記第1の基板(1)を薄層化して前記半導体構造体を得る工程と
を含む方法において,
前記絶縁層形成工程が,酸化ガスおよび/または窒化ガスに基づくプラズマ活性化においてなされることを特徴とする,方法。」
(周1b)「【請求項4】
前記第1の基板(1)および前記第2の基板(2)がシリコンから形成され,前記絶縁層(3,4)が,酸化シリコン(SiO2),窒化シリコン(Si3N4)または酸窒化シリコン(SixOyNz)層であることを特徴とする,請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。」
(周1c)「【請求項14】
前記第1の基板(1)および前記第2の基板(2)の組付けの前に,弱められた領域(5)が,前記第1の基板(1)内に形成され,この領域(5)が,前記基板の部分(100)の薄い活性層(10)を画成し,前記第1の基板(1)の薄層化が,前記弱められた領域(5)に沿って,前記部分(100)を切り離すことによって実施されることを特徴とする,請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。」
(周1d)「【0002】
具体的には,この最終構造体は,極端に薄い(50nm未満)埋め込み絶縁膜を特徴とするSeOI(Semiconductor On Insulator),より具体的には,SOI(Silicon On Insulator)基板である。この薄い絶縁膜が酸化物である場合には,該基板は,超薄膜埋め込み酸化物(ultra-thin buried oxide;UTBOX)といわれている。この最終構造体は,いわゆる「ドナー」基板と,いわゆる「レシーバ」基板をウェーハ直接貼り合わせによって得られその後,材料物質から構成される概して薄い層を上記ドナー基板から該レシーバ基板へ移すことを目的として,該ドナー基板を薄くすることによって得られる。」
(周1e)「【0005】
これらの異なる方法によるウェーハ直接貼り合わせによって得られるSOI基板は,埋め込み絶縁層を含む。従って,シリコン酸化物(SiO2)から構成される絶縁層を,元のシリコン基板上に形成するため,該基板の表面において,シリコンの湿式または乾式の熱酸化を実現するために,熱処理を施すことができる。別法として,CVD(化学気相堆積),LPCVD(低圧化学気相堆積)およびPCVD(プラズマ気相堆積)等の一般的な薄膜形成技術も用いることができる。」
(周1f)「【0008】
実際には,UTBOXの場合,水,水素,炭化水素,または,注入段階によって生じる活性種等の貼り合わせ界面に存在する活性種は,薄い酸化物層内にはもはや十分な捕獲サイトを見つけることができず,該活性種が融合する貼り合わせ界面に沿って拡散することもできず,多くの構造的欠陥を生じる。」
(周1g)「【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に,第1の実施形態における異なる連続的な工程について簡単に説明する。
【0036】
図2Aは,前面3’を有する第1の半導体基板1を示し,図2Bは,前面4’を有する第2の基板2を示す。基板1および2の前面の各々は,図2Cおよび図2Dに従ってプラズマ処理を受ける。絶縁層は,基板1および2が,本発明によるプラズマ処理を受ける前に,該基板1および2の表面には意図的に形成されていない。さらに,該基板の雰囲気への曝露から生じる自然酸化物層が,これらの基板の表面に存在する可能性がある。
【0037】
従って,第1の基板1の前面3’は,基板1の表面に絶縁層3を形成するために,酸素,水または窒素初級酸化物等の酸化ガスに基づく処理を受ける。プラズマ酸化処理が,酸素を用いて行う場合,2nm~15nmの厚さを有する絶縁層3を形成するために,圧力範囲は,約5~200mTであり,電力範囲は,約10~4000Wであり,出力は,約10~1000sccmであり,およびこのことは,1秒~300秒続く。
【0038】
例証として,第1の基板1は,8nmの厚さを有するSiO2絶縁層3を形成するために,圧力15mT,電力1000Wおよび出力100sccmで30秒間,酸素プラズマにさらされる。」
(周1h)「【0047】
プラズマ処理の前の該基板の前面3’および4’の調整は,例えば,洗浄,ブラッシングまたは乾燥処理が想定される。従って,例えば,該基板を,水酸化アンモニウム(NH4OH),過酸化水素(H2O2)および脱イオン水から構成される混合物で作られた第1の溶液に,およびその後に,塩酸(HCl),過酸化水素(H2O2)および脱イオン水から構成される混合物を備える第2の溶液にさらすことを含むRCA処理等の標準的な洗浄処理を,2つの基板の少なくとも一方に施すことができる。
【0048】
基板1および2の前面3’および4’は,酸化および窒化しなくてもよく,換言すれば,絶縁体がなくてもよく,あるいは,該基板は,これらの表面に,該基板の周囲空気への曝露から生じる自然層,例えば,約2~3nm,より具体的には,3nm未満の厚さを有する自然酸化物をもたらしてもよい。」
・周知例2:特表2003-523627号公報
(周2a)「【請求項1】 第1,第2の結合面を形成すること;
前記第1,第2の結合面をエッチングすること;および
前記エッチング工程後に室温で前記第1,第2の結合面を共に結合すること
を含む結合方法。」
(周2b)「【請求項47】 前記第1,第2の結合面をそれぞれ天然酸化物層を有するシリコンとして形成すること,および
前記第1,第2の結合面を酸素プラズマに曝して前記天然酸化物層をエッチングすること
を含む請求項1記載の方法。
【請求項48】 プラズマエッチング中に欠陥領域を前記シリコンに創る請求項47記載の方法。」
(周2c)「【0068】
前記シリコン結合は,ベアシリコンウェハ,すなわち天然酸化物を有するまたは前述のようにその面に形成された酸化物層を有するシリコンウェハで処理されてもよい。酸素プラズマ処理の間,ベアシリコンウェハに形成されるかもしれない天然酸化物はスパッタエッチングされ,かつシリコン面に形成された酸化物層エッチングされる。最終の面は,活性された(天然または形成された)酸化物である。脱イオン水でリンスされた場合,活性される酸化物面はSi-OH基で主に停止される。酸素プラズマ中での酸化物成長は一般の天然酸化物層に比べて少ない水を有することがわかっているので,初期結合ブリッジからの水および次の高分子化反応(6)によって発生する水は直ぐにプラズマ酸化物に吸収することができる。
【0069】
Si-OH+Si-OH→Si-O-Si+H2O (6)
図5の(A)~(E)は,2つのシリコンウェハの結合を示す。ウェハ50,52は,それぞれVSEプロセスに委ねられた天然酸化物(図示せず)を持つ面51,53を有する。図5の(C)で示される面53は,所望の化学種54で停止されている。前記2つのウェハは,接合され,結合55が形成し始める(図5の(D))。この結合は伝達し,かつ結合副産物,この場合H2ガス,は除去される。除去された前記副産物は図5の(E)に矢印で示される。
【0070】
酸化物シリコンウェハのプラズマ活性酸化物に溶解することによって結合界面からの水の除去に加えて,前記水は薄い酸化物を通してベアシリコンウェハに拡散でき,シリコンと反応する。前記酸化物下の前記シリコン面はわずかの単一層に広がる損傷または欠陥の領域を有し,前記酸化物層を通して拡散し,かつ前記損傷または欠陥の領域に達する水分子は室温で水素に転換でき,直ぐに除去することができる;Si+2H2O→SiO2+2H2 (7)。
【0071】
(6)の可逆的反応は,したがって回避され,かつ室温結合エネルギーは共有Si-O-Si結合の形態により非常に増加する。
【0072】
比較的厚い(~5nm)酸化物層が形成されると,前記水分子がこの厚い層を通して拡散すために長い時間を取る。一方,プラズマ処理後に薄い層が置かれるか,または過度に近くに欠陥領域が形成されると,シリコンウェハに達する水はシリコンと十分に反応せず,水素に転換されないかもしれない。両方の場合において,結合エネルギー増加は限界がある。好ましい酸素プラズマ処理はしたがって最小のプラズマ酸化物厚さ(例えば約0.1~1.0nm)およびシリコン面上に妥当な厚さの欠陥領域(例えば約0.1~0.3nm)に置く。」
(周2d)「【0079】
低温または室温で増加された結合エネルギーを左右する機構はいずれも似ている。プラズマによる結合ウェハの非常に僅かなエッチング(VSE)は前記面を洗浄し,活性し,かつ望ましくない可逆反応を防ぐために高分子化界面の副産物の除去を改善し,室温で共有結合を促進する所望の化学種で面を停止するために適切な液でリンスする。前記酸化物被覆ウェハである場合,異なる面停止を除いて同様に好ましい。ベアウェハ結合において,水吸収をなし,かつ水素に転換するために酸化物の非常に高い反応面およびシリコンは,形成されるべきである。非常に高い反応層は,プラズマ薄膜酸化物層および損傷シリコン面層でできる。前記シリコンウェハ上の前記酸化物はある損傷を有してもよい。O2プラズマのみならず他のガスプラズマ(Ar,CF4のような)は適切である。VSE中および後にシリコンウェハは湿気と直ぐに反応し,酸化物層を形成するので,下方の損傷シリコン層がVSEによって創られる。前記VSEおよび副産物除去方法は,事実上,むしろ一般であるので,このアプローチは多くの手段および多くの材料の適用によって履行できる。」
・周知例3:国際公開2009/016794号
(周3a)「(実施例1)
まず,直径200mmのN型シリコン単結晶基板を準備した。準備したN型シリコン単結晶基板の抵抗率は10Ωcmであり,表面の自然酸化膜の厚さは25nmであり,ドーパントにはPを用いた。」(第11ページ14-17行)
・周知例4:特開2007-173840号公報
(周4a)「【請求項18】
・・・自然酸化膜は,3~50Åの厚さを有する・・・」(特許請求の範囲)
・相違点3について
引用例1の上記摘記(1h)には,「・貼り合わせる表面を接触状態にし,貼り合わせを開始する。・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)。」と記載されている。
そして,上記摘記(1h)は,引用例1の特許請求の範囲に記載された発明の「(実施例)」を開示する説明である。
してみれば,請求項1,請求項22,請求項23,請求項24及び請求項25を引用する請求項26に係る発明である引用発明1における,2つのウェハを貼り合わせる具体的な手順として,上記「・貼り合わせる表面を接触状態にし,貼り合わせを開始する。・熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)。」を採用することは,当業者が容易になし得たことである。
すなわち,前記「貼り合わせる表面を接触状態にし,貼り合わせを開始する」工程,及び,「熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)」工程は,それぞれ,本願補正発明1の「プレボンド接続の形成のために」前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させるステップ及び「前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップ」に相当する。
加えて,引用例1の上記摘記(1d)の「本発明は,半導体材料の2つのウェハの貼り合わせに関する。材料の各々は,Siまたは何らかの他の半導体材料であってもよい。」との記載から,半導体材料として「Si」を用いることは自然であり,この場合,引用発明1の「ウェハ」を構成する「Si」は,本願補正発明1の「第2の出発原料」ということができる。
そして,引用発明1における「第1の出発原料」である「酸素」が,「熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)」工程の際に,ウェハ表面の自然酸化膜の内部を拡散して移動すること,及び,酸素とSiが結合して酸化物となる反応を生じることは周知の事項である。
すなわち,引用発明1の,半導体材料から選択された材料で作られた2つのウェハを貼り合わせる方法において,「熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)」際に,一方のウェハの「乱れ領域」に捕捉された「第1の出発原料」である「酸素」と,他方のウェハに含まれる「Si」とが反応することによって,少なくとも部分的強化された結合が形成されるものと認められる。
したがって,引用発明1において,相違点3について,本願補正発明1の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。
(4)引用発明2を主引用例とした,本願補正発明1の進歩性について
ア 本願補正発明1と引用発明2との対比
(ア)引用発明2の「Siウェハ」は,基板の一種といえる。また,2つのウェハを貼り合わせる場合に,一方のウェハの接触表面と,他方のウェハの接触表面とを貼り合わすこととなるのは自明である。したがって,引用発明2の「表面酸化された別のSiウェハとSiウェハを貼り合わせる方法」は,以下の相違点4を除いて,本願補正発明1の「第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法」に相当する。
(イ)引用発明2は,「『二重出力』処理によって貼り合わせる表面の一方または両方をプラズマ活性化する」ものであるから,貼り合わせる表面の両方について,プラズマ活性化を実行するものを含むと解される。
そして,引用例1の上記摘記(1e)の「本明細書において使用する『乱れ領域』という用語は,プラズマに露出されることによって変更される領域を意味し,この変更は,乱れ領域内に,欠陥,乱れ,および原子スケールでの無秩序の導入に相当する(原子結合の弱化,結合角度の変化など)。」との記載に照らして,引用発明2の「例えば,『Tokyo Electron Limited』(登録商標)プラズママシンは,200mmの直径を有するウェハに対して,O2の大気下で50ミリトールの圧力を用いて,75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO2,15s間で1000Wの出力,次の15s間で250Wで使用される工程」は,貼り合わせる表面の両方について,「プラズマに露出されることによって変更される領域」,すなわち,「乱れ領域」を導入するものと理解される。
さらに,引用例1の上記摘記(1e)の「この乱れ領域は,貼り合わせる表面上に存在するガスおよび他の元素を受け入れるのに適した「リザーバ」として作用すると思われる。・・・乱れ/無秩序Dは,乱れ/無秩序Dと活性化される表面との間に挟まれた乱れ/無秩序dによって捕捉するためのガスおよび他の元素が「供給」されるのに適していると考えられ,乱れ/無秩序Dおよびdは,ウェハの深さに延在するある種の捕捉格子を形成する」との記載を参酌すれば,引用発明2の「『二重出力』処理によって貼り合わせる表面の一方または両方をプラズマ活性化する。例えば,『Tokyo Electron Limited』(登録商標)プラズママシンは,200mmの直径を有するウェハに対して,O2の大気下で50ミリトールの圧力を用いて,75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO2,15s間で1000Wの出力,次の15s間で250Wで使用される工程」は,本願補正発明1の「前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップ」に相当すると認められる。
(ウ)引用発明2の「貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス,RCAタイプまたはNH4OHタイプの洗浄,水でスクラブなど)工程」は,接触表面を,水,すなわち,「H2O」からなる流体に曝すことであり,しかも,前記工程に先立って,前記接触表面には,「乱れ領域」が導入されており,当該「乱れ領域」は,「リザーバ」,「捕捉格子」として作用するのであるから,前記「乱れ領域」は,「水」,すなわち,「H2O」によって,少なくとも部分的に満たされるものと認められる。
そして,当該「水」,すなわち,「H2O」は,引用発明2において,「第1の出発原料または出発原料の第1のグループ」に該当するといえる。
したがって,引用発明2の「貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス,RCAタイプまたはNH4OHタイプの洗浄,水でスクラブなど)工程」は,本願補正発明1の「『前記第1の接触表面(3)を,主に,H2O・・・からなる流体に曝すステップ・・・によって満たされる』『第1の出発原料または出発原料の第1のグループで前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップ』」に相当するから,本願補正発明1と,引用発明2は,
「前記貯留部(5)が,
前記第1の接触表面(3)を,高い酸素および/または水分含有量を有する雰囲気に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,主に,H2Oおよび/またはH2O2からなる流体に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ,
のうちの1つまたは複数のステップによって満たされる」点で一致すると認められる。
(エ)引用発明2において,「第1の出発原料」である「水」,すなわち,「H2O」が,「熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)」工程の際に,ウェハ表面の自然酸化膜の内部を拡散して移動すること,及び,「水」,すなわち,「H2O」が,Siと結合して酸化物となることは,上記周知例2の上記摘記(周2c)に「酸化物シリコンウェハのプラズマ活性酸化物に溶解することによって結合界面からの水の除去に加えて,前記水は薄い酸化物を通してベアシリコンウェハに拡散でき,シリコンと反応する。前記酸化物下の前記シリコン面はわずかの単一層に広がる損傷または欠陥の領域を有し,前記酸化物層を通して拡散し,かつ前記損傷または欠陥の領域に達する水分子は室温で水素に転換でき,直ぐに除去することができる;Si+2H2O→SiO2+2H2 (7)。」と記載されているように周知の事項である。
そうすると,引用発明2は,「貼り合わせのすぐ前に表面を光学洗浄する(脱イオン水でリンス,RCAタイプまたはNH4OHタイプの洗浄,水でスクラブなど)工程と,貼り合わせる表面を接触状態にし,貼り合わせを開始する工程と,熱処理によって貼り合わせを強化する(低温,例えば,200℃で)工程」を経ることによって,「第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料」である「Si」との,「第1の出発原料」である「H2O」の反応によって,「少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成」されるものと理解されるから,本願補正発明1と,引用発明2は,
「前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップ」を含む点で一致すると認められる。
したがって,上記の対応関係から,本願補正発明1と引用発明2との一致点及び相違点は,次のとおりといえる。
<一致点>
「下記のステップで,下記の順番で第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法であって,
前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップと,
第1の出発原料または出発原料の第1のグループで前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップと,
プレボンド接続の形成のために前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させるステップと,
前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップと
を含み,
前記貯留部(5)が,
前記第1の接触表面(3)を,高い酸素および/または水分含有量を有する雰囲気に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,主に,H2Oおよび/またはH2O2からなる流体に曝すステップ,
前記第1の接触表面(3)を,0から2000eVの範囲内のイオンエネルギーを有するN2ガス,ならびに/またはO2ガス,ならびに/またはArガス,ならびに/または95%Arおよび5%H2からなるフォーミングガスに曝すステップ,
のうちの1つまたは複数のステップによって満たされることを特徴とする方法。」
<相違点>
・相違点4:本願補正発明1が,第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップにおいて,「前記表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される,ステップ」を含むのに対して,引用発明2は,「以下の工程を,以下の順序で実行することによって表面酸化された別のSiウェハとSiウェハを貼り合わせる方法であって」,2つの貼り合わせ表面を準備する(RCA(Radio Corporation of America)タイプなどのウェット洗浄,研磨など)工程を経た後に,「二重出力」処理によって貼り合わせる表面の一方または両方をプラズマ活性化する。例えば,「Tokyo Electron Limited」(登録商標)プラズママシンは,200mmの直径を有するウェハに対して,O2の大気下で50ミリトールの圧力を用いて,75標準立方センチメートル毎分(sccm)のO2,15s間で1000Wの出力,次の15s間で250Wで使用される工程を行うものである点。
すなわち,本願補正発明1が,「前記表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される」ものであり,当該「前記表面層(6,6’)」内に貯留部を形成するものであるのに対して,引用発明2では,2枚のSiウェハのうち,少なくとも1枚(「別のSiウェハ」)の表面が,「表面酸化された」ものであることは特定されているものの,前記表面層が,「少なくとも主として自然酸化物物質から構成される」ものであるか明らかでなく,さらに,他の1枚の「Siウェハ」の表面層の特性についても明記されていない点。
イ 相違点についての判断
・相違点4について
引用文献1の上記摘記(1d)には,「2つのウェハを貼り合わせるための表面はまた,活性化前に酸化されてもよい。より正確には,貼り合わせるための表面の一方または他方が酸化されてもよく,またはそれらの両方が酸化されてもよい。」と記載されている。
また,引用例1には,引用発明2が所定の効果を奏するために,前記「酸化」が,特定の厚さを有し,あるいは,特定の作製方法によって形成されたものであることを必要とすることは,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明2における,前記「酸化」は,特定の態様のものであることを必要とせず,任意の酸化膜を含むものと理解することが自然といえる。
他方,拒絶査定で引用した本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である上記周知例1,2にも記載されているように,第1及び第2のシリコン基板の雰囲気への曝露から生じる自然酸化物層(天然酸化物層)を有する面に,酸化ガスに基づくプラズマ(酸素プラズマ)活性化を行い,前記第1および第2のシリコン基板を結合する手順は周知技術と認められる。
そうすると,引用発明2における,プラズマ活性化を実行する前の,ウェハの両方の表面の状態を,「表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される」状態のものとして,当該「前記表面層(6,6’)」内に貯留部を形成することは,前記周知例1,2から認められる周知技術を参酌すれば,当業者が適宜なし得たことといえる。また,このような構成を採用したことによる効果も,当業者が予測する範囲のものと認められる。
したがって,引用発明2において,相違点4について,本願補正発明1の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。
(5)むすび
本願補正発明1は,引用例1に記載された引用発明1または引用発明2と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5 補正の却下の決定のむすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであり,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年9月30日に提出された手続補正書による補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1-16に係る発明は,平成26年12月19日に提出された誤訳訂正書によって訂正された明細書,特許請求の範囲又は図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1-16に記載されている事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうち請求項1に係る発明に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】
下記のステップで,下記の順番で第2の基板(2)の第2の接触表面(4)に第1の基板(1)の第1の接触表面(3)をボンディングするための方法であって,
前記第1の接触表面(3)上の表面層(6)内に第1の貯留部(5)および前記第2の接触表面(4)上の表面層(6’)内に第2の貯留部(5’)を形成するステップであって,前記表面層(6,6’)が少なくとも主として自然酸化物物質から構成される,ステップと,
第1の出発原料または出発原料の第1のグループで前記貯留部(5,5’)を少なくとも部分的に満たすステップと,
プレボンド接続の形成のために前記第1の接触表面(3)を前記第2の接触表面(4)と接触させるステップと,
前記第2の基板(2)の反応層(7)内に含有される第2の出発原料との前記第1の出発原料の反応によって少なくとも部分的に強化された,前記第1および第2の接触表面(3,4)間の恒久的な結合を形成するステップと
を含むことを特徴とする方法。」
2 進歩性について
(1)引用例及びその記載事項
原査定の拒絶理由に引用され,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用例1に記載されている事項は,上記「第2 4 (2)引用例とその記載事項,及び,引用発明」の項で指摘したとおりである。
(2)当審の判断
本願発明1を限定したものである本願補正発明1が,前記「第2 4 (3)引用発明1を主引用例とした,本願補正発明1の進歩性について」及び「第2 4 (4)引用発明2を主引用例とした,本願補正発明1の進歩性について」で判断したとおり,引用例1に記載された発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと判断されることから,本願発明1も同様に,引用例1に記載された発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2015-017788