特許拒絶査定不服審判
2019-000335
構造化された基板を搬送する収容装置
- 審判番号
- 2019-000335
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-553043
- 請求日
- 2019年01月11日
- 審決日
- 2020年02月17日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】二宮 浩康
- 【請求人代理人】上島 類
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 浩一
- 審判官 小川 将之
- 審判官 恩田 春香
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-553043「構造化された基板を搬送する収容装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日国際公開、WO2014/111288、平成28年 3月22日国内公表、特表2016-508667〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)1月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)1月21日 独国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 8月18日 翻訳文及び34条補正翻訳文の提出
平成30年 1月25日付け 拒絶理由通知書
平成30年 4月26日 意見書及び手続補正書の提出
平成30年 9月12日付け 拒絶査定
平成31年 1月11日 審判請求書の提出
2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年4月26日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。
「 【請求項1】
構造化部(3)が構造化された基板(1)を搬送する収容装置であって,
前記構造化された基板(1)を収容面(5o)に収容する軟性の材料層(5)を備え,
前記構造化された基板(1)の構造化部(3)は,少なくとも部分的に,前記材料層(5)内へ収容可能である,
収容装置において,
前記構造化された基板(1)を固定する固定手段が,前記収容面に設けられており,
前記材料層(5)は,100GPa未満の弾性率を有しており,
前記材料層(5)は,ポリマーから形成されており,
前記構造化部(3)の周囲の前記材料層(5)の完全な変形によって,前記構造化部(3)は,前記材料層(5)内へ収容される,
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1,5に係る発明は,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1~2に記載された発明に基づいて,請求項2~4,6~8に係る発明は,本願の優先権主張日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1~4に記載された発明に基づいて,その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用例1.特開2000-158334号公報
引用例2.特開2007-250789号公報
引用例3.米国特許出願公開第2011/0198817号明細書
引用例4.特開2012-064710号公報
4 引用例の記載と引用発明
(1)引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000―158334号公報(引用例1)には,図1~5とともに,次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。
「【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態として,半導体ウェーハの研削時に用いる作業用トレー及びそれを用いた研削方法について説明する。
【0013】図1は,本発明に係る作業用トレー10を示しており,この作業用トレー10は,硬質基台11と弾性パッド12とが一体となった構成になっている。
【0014】硬質基台11は,図2に示すように,例えばアルミニウム,プラスチック等の硬質部材からなり,数mm程度の厚みを有して撓むことがないよう構成され,表面に開口する複数のエアー供給孔13を備えている。なお,図1の例においては硬質基台11は円形に形成されているが,被加工物の形状に合わせた形状とするのが望ましい。
【0015】一方,弾性パッド12は,図3において誇張して示すように,無数の気孔14が少なくとも表面15に形成され,合成樹脂等の弾性のある部材により硬質基台11の形状に対応した形状に形成されている。また,隣り合う気孔と気孔との間には,幅が数十μm程度の隙間16が形成され,ここをエアーが流通可能となっている。このような弾性パッド13は,例えば,ダースボンド社から提供されており,また,その厚さは被加工物の性質を考慮して決められるが,500μm前後が好ましい。なお,弾性パッド13には粘着層は形成されていない。
【0016】このように硬質基台11と弾性パッド12とが一体となった作業用トレー10に半導体ウェーハを保持させて,例えば裏面の研削を行うときは,図4に示すように,弾性パッド12の上に裏面側21を上にして半導体ウェーハ20を載置して上方から押圧する。すると,図3に示した気孔14がつぶれ,押圧を解除すると,弾性パッド12が有する弾性による復元力と密着性とによって気孔14に負圧が生じ,この負圧が吸引力となって表面15において半導体ウェーハ20の表面を吸引し,図5に示すように,弾性パッド12と半導体ウェーハ20とが一体となる。
【0017】このとき,両者は密着していて吸着力は安定しており,時間が経過しても弱まることがなく,半導体ウェーハ20の裏面21を研削する際も両者の一体性は維持される。このように,弾性パッド12に半導体ウェーハ20の表面を押圧するだけで容易かつ強固に半導体ウェーハ20を保持することができる。
【0018】こうして作業用トレー10に保持された半導体ウェーハ20は,例えば,図6に示す研削装置22に搬送されてその裏面が研削される。」
「【0027】なお,研削される半導体ウェーハ20が,CSP(Chip ScalePackage)等に対応したものである場合は,その表面にバンプと呼ばれる突起が形成されており,このバンプが原因で研削時の研削手段31,35からの押圧力により半導体ウェーハ20が割れてしまうこともあり得るが,本発明のように弾性パッド12を用いて半導体ウェーハ20を保持した場合には,弾性パッド12にバンプが埋没するため,半導体ウェーハ20が割れることがない。」
(2)引用例1の記載事項の整理
以上の摘記を整理すると,引用例1には次の事項が記載されていると理解できる。
ア 段落[0027]から,引用例1には,「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20」を研削することが記載されている。
イ 段落[0013],[0018]から,引用例1には,「弾性パッド12」を備える「作業用トレー10」が記載され,当該「作業用トレー10」に保持された「半導体ウェーハ20」を研削装置22に「搬送」することが記載されている。
ここで,上記アから,「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20」も研削装置に搬送されるものと理解できるから,引用例1には,「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20を搬送する作業用トレー10」が記載されているといえる。
ウ 段落[0015]から,引用例1の「弾性パッド12」の「表面15」に無数の気孔が形成されていること,段落[0016]から,当該気孔に生じた「負圧が吸引力となって」,「弾性パッド12」の「表面15において半導体ウェーハ20の表面を吸引」し,「弾性パッド12と半導体ウェーハ20とが一体」となることが記載されている。
当該記載及び上記イから,「弾性パッド12」は「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20」を「表面15」に保持するものであると理解できる。また,「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20」が,「弾性パッド12の表面15の負圧により」保持されることが理解できる。
エ 段落[0027]の「弾性パッド12を用いて半導体ウェーハ20を保持した場合には,弾性パッド12にバンプが埋没する」との記載から,引用例1には,「バンプを弾性パッド12に埋没可能である」こと,及び,「バンプは,弾性パッド12へ埋没される」ことが記載されているといえる。
オ 段落[0015]から,引用例1には,「弾性パッド12」が「合成樹脂」から形成されていることが記載されている。
(3)引用例1に記載された発明
上記(2)によれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20を搬送する作業用トレー10であって,
前記バンプが形成された半導体ウェーハ20を表面15に保持する弾性パッド12を備え,
前記バンプは,前記弾性パッド12に埋没可能である,
作業用トレー10であって,
前記バンプが形成された半導体ウェーハ20は,弾性パッド12の表面15の負圧により,前記弾性パッド12の表面15に保持されており,
前記弾性パッド12は,合成樹脂から形成されており,
前記バンプは,前記弾性パッド12に埋没される,
作業用トレー10。」
(4)引用例2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2007―250789号公報(引用例2)には,次の記載がある。
「【0050】
粘着剤層22の厚さは,その材質にもよるが,通常は3~100μm程度であり,好ましくは10~50μm程度である。
粘着剤層22は,23℃における弾性率が,好ましくは5.0×104~1.0×108Pa,より好ましくは7.0×104~8.0×107Pa,特に好ましくは8.0×104~5.0×107Paの範囲にある。さらに,粘着シート2が中間層23を有する場合,粘着剤層22の23℃における弾性率は,5.0×104~1.0×107Paの範囲にあり,好ましくは6.0×104~5.0×106Pa,より好ましくは8.0×104~1.0×106Paの範囲にある。なお,粘着剤層22を後述するエネルギー線硬化型粘着剤で形成する場合には,上記弾性率はエネルギー線照射前の粘着剤層の弾性率を示す。
【0051】
粘着剤層22の23℃における弾性率が5.0×104Paより低いと粘着シートの端部より粘着剤がしみだしたり,凝集力の不足により,研削による力に対し剪断変形しやすくなり,研削後のウエハの厚さのバラツキが大きくなってしまう。また,半導体ウエハの回路面に形成されるバンプの凹部にもぐりこんだ粘着剤に剪断力が加わると,ウエハ面に粘着剤が残留するおそれが高くなる。反対に粘着剤層22の23℃における弾性率が1.0×108Paよりも高くなると,粘着剤層が硬くなり,バンプの凹凸に追従しにくくなり,研削後のウエハの厚さのバラツキを大きくしたり,バンプと粘着シートのすきまから研削加工の冷却水が侵入するなどの問題が起こりやすくなる。」
5 対比
(1)本願発明と引用発明の対比
本願発明と,引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「バンプ」及び「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20」が,本願発明における「構造化部(3)」及び「構造化部(3)が構造化された基板(1)」に相当する。
イ 引用発明における「作業用トレー10」,「表面15」及び「弾性パッド12」が,本願発明における「収容装置」,「収容面(5o)」及び「軟性の材料層(5)」に相当する。
ウ 引用発明における「バンプ」が「弾性パッド12に埋没可能」であることは,本願発明における「構造化部(3)」が「少なくとも部分的に,前記材料層(5)内へ収容可能である」ことに相当する。
そうすると,本願発明と引用発明は,「前記構造化された基板(1)の構造化部(3)は,少なくとも部分的に,前記材料層(5)内へ収容可能である」点で一致する。
エ 本願発明における「前記収容面に設けられて」いる「固定手段」について本願明細書では,段落[0015]~[0016]において「体積流」による吸引が,段落[0018]において「静電固定」が例示されている。このように,本願「固定手段」が「体積流」及び「静電固定」という機構の異なる手段を含むものであることから,本願「固定手段」は,収容面に設けられており,かつ,基板を固定することが可能な,任意の手段を含み得るものと理解できる。
一方,引用発明における「負圧」は,「弾性パッド12の表面15」に生じるものであり,この「負圧」が吸引力となって「表面15」において「半導体ウェーハ20」の表面を吸引し,「表面にバンプが形成された半導体ウェーハ20」を「表面15」に「保持」するものであるから(4.(2)ウ),当該「負圧」は本願発明における「固定手段」に相当するものと認められる。
そうすると,本願発明と引用発明は,「前記構造化された基板(1)を固定する固定手段が,前記収容面に設けられており」との点で一致する。
オ 「合成樹脂」が「ポリマー」を主成分とすることは技術常識であるから,本願発明と引用発明は,「前記材料層(5)は,ポリマーから形成されており」との点で一致する。
カ 引用発明の「前記バンプは,前記弾性パッド12に埋没される」ことは,本願発明における「前記構造化部(3)は,前記材料層(5)内へ収容される」ことに相当する。
(2)一致点及び相違点
上記ア~カによれば,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりとなる。
<一致点>
「構造化部(3)が構造化された基板(1)を搬送する収容装置であって,
前記構造化された基板(1)を収容面(5o)に収容する軟性の材料層(5)を備え,
前記構造化された基板(1)の構造化部(3)は,少なくとも部分的に,前記材料層(5)内へ収容可能である,
収容装置において,
前記構造化された基板(1)を固定する固定手段が,前記収容面に設けられており,
前記材料層(5)は,ポリマーから形成されており,
前記構造化部(3)は,前記材料層(5)内へ収容される,
ことを特徴とする収容装置。」
である点。
<相違点1>
本願発明では,「前記材料層(5)は,100GPa未満の弾性率を有して」いるのに対し,引用発明では,弾性パッド12の弾性率が特定されていない点。
<相違点2>
本願発明では,「前記構造化部(3)は,前記材料層(5)内へ収容される」のが,「前記構造化部(3)の周囲の前記材料層(5)の完全な変形によって」収容されるのに対し,引用発明では,「バンプが弾性パッド12に埋没される」際の弾性パッドの変形について,特定されていない点。
6 相違点についての判断
(1)相違点1について
上記引用例1の段落[0027]の記載から,引用発明の弾性パッド12は,バンプが埋没する程度の弾性率を有するものと理解できる。
一方,上記引用例2の段落[0051]には,合成樹脂材料である粘着層について,バンプの凹凸に追従可能な弾性率の上限値が1.0×108Pa(0.1GPa)であることが示されている。また,下記の周知例1には,段落[0017]に記載されたいずれかの合成樹脂からなるゲルシートについて,バンプ付き基板のバンプがゲルシート内に埋設されるような弾性率の範囲として,1~7Kgf/cm2(98~686kPa)が示されている(段落[0012])。
引用例2及び周知例1に示された上記の記載事項によれば,バンプを埋没させることができる合成樹脂の弾性率として,100GPa未満のものが周知であったと認められる。
そうすると,引用発明の弾性パッド12を100GPa未満の弾性率を有するものとすることは,上記周知の事項に照らし当業者が容易になし得たことであるといえる。
・周知例1
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2011-222877号公報には,次の記載がある。
「【0012】
ゲルシートのショア硬度A(JIS K7312)を0~50,粘着強度(JIS Z0237)を0.01~100gf/25mm幅としたことにより吸着パッドの減圧度90KPa以上でバンプ付き基板裏面を吸着パッドで吸着してチャックのゲルシート面から剥離し次工程へ移送することができる。この際,バンプへのゲル屑の付着がない。ゲルシートの圧縮弾性率(JIS K7312)が1~7Kgf/cm2であるので,バンプ付き基板裏面をゴムローラやゲルローラで押圧しながら基板とゲルシート間の空気溜まりをチャック外へ排気することができるとともに,バンプ付き基板のバンプ電極がゲルシート厚み内に埋設される。また,バンプ付き基板裏面研削加工後,砥石が基板面より遠ざかるとゲルシートの弾性回復力によりゲルシート厚みが元の厚みに戻り,バンプ付き基板のゲルシート面からの剥離を容易とする。」
「【0017】
前記ゲルシート2の素材は,オルガノポリシロキサン系ゲル,ウレタン樹脂ゲル,架橋ポリビニールアルコールゲル,鹸化エチレン・酢酸ビニル共重合体ゲル,エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体ゴムに極性基(アルコキシ基,アミノ基,カルボキシル基など)を有するビニルシリコン化合物をグラフト重合させて得たゴムを更に鹸化することにより得たポリオレフィン系ゲル,エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴムに極性基(アルコキシ基,アミノ基,カルボキシル基など)を有するビニルシリコン化合物をグラフト重合させて得たゴムを更に鹸化することにより得たポリオレフィン系ゲル,スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物ゲル,シリコン架橋アクリル酸アルキルエステル樹脂系ゲルなどが利用できる。ゲルシート2の針入度(JIS K2207)は,一般に20~200,アスカC硬度が3~20度である。ゲルは,シリカやゴム成分(シリコンゴム,アクリルエラストマー,EPT,EPDM,SBRなど)を5~35重量%含有していてもよい。また,エチレン・アクリル酸共重合体,エチレン・メタクリル酸共重合体,アビエチン酸ロジン,テルペン・フェノール共重合体,マレイン化ミルセン,石油樹脂,アロオシメン・テルペン・フェノール共重合体などの粘着剤を0.5~1重量%含有していてもよい。」
(2)相違点2について
引用発明の弾性パッド12は,研削時に研削手段31,35から押圧力を印加しても,半導体ウェーハ20が割れることがない(段落[0027])ように,弾性パッド12にバンプを埋没させて,半導体ウェーハ20を保持するものである。そうすると,引用発明において半導体ウェーハ20を保持する際,弾性パッド12のバンプ周囲の部分は,弾性パッド内にバンプを完全に埋没させるように変形するものと認められる。
また,引用発明の弾性パッド12は,「弾性のある部材」(段落[0015])により構成され,「半導体ウェーハ20が離脱した後の弾性パッド12は,気孔14が元の形状に戻っていて吸着力も低下しないため,何回でも再利用することができる。」(段落[0028])ものであるから,引用発明における,「バンプが弾性パッド12に埋没される」際の弾性パッドの変形は,弾性パッドを構成する「弾性のある部材」の完全な弾性変形によるものと認められる。
以上を総合すると,引用発明におけるバンプの弾性パッド12への埋没は,バンプの周囲の弾性パッド12を構成する材料の「完全な変形によって」行われるといえるから,上記相違点2は実質的なものではない。
(3)小括
したがって,本願発明は,引用例2及び周知例1に示される周知の事項に照らし,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(4)請求人の主張について
ア 審判請求書において請求人は,引用例1との差異について次のように主張している。
「引例1の段落0016には,「図4に示すように,弾性パッド12の上に裏面側21を上にして半導体ウェーハ20を載置して上方から押圧する。すると,図3に示した気孔14がつぶれ,押圧を解除すると,弾性パッド12が有する弾性による復元力と密着性とによって気孔14に負圧が生じ,この負圧が吸引力となって表面15において半導体ウェーハ20の表面を吸引し,図5に示すように,弾性パッド12と半導体ウェーハ20とが一体となる。」と記載されています。この記載によれば,半導体ウェーハ20は,弾性パッド12内に収容されているわけではありません。すなわち,半導体ウェーハ20の下側面(裏面側21と反対側の面)は,弾性パッド12の上側面より弾性パッド12の内部に収容されることはなく,半導体ウェーハ20の下側面は,弾性パッド12の上側面と同一面上に存在します。
引例1の段落0004には,「半導体ウェーハ41の厚さが例えば数十μmと薄くなると,紙のようにペラペラの状態になって保持テープ46の剛性では半導体ウェーハ41を安定的に保持することができず,全体に撓みが生じて不安定な状態となり,研削及びその後の搬送に支障が生じるという問題がある。」と記載されているように,引例1では,数十μmの薄さの半導体ウェーハ20を想定しています。このような薄さの半導体ウェーハ20を,弾性パッド12の表面において支持するのではなく,弾性パッド12の内部に収容すると,半導体ウェーハ20の裏面側21を研磨する際に,半導体ウェーハ20の周囲の弾性パッド12が邪魔になると考えられます。それゆえ,引例1では,半導体ウェーハ20を弾性パッド12の内部に収容するという構成に変更するとは考えられません。」
イ しかしながら,本願の請求項1において特定されているのは,「前記構造化された基板(1)の構造化部(3)」が「前記材料層(5)内へ収容可能である」こと,及び,「前記構造化部(3)は,前記材料層(5)内へ収容される」ことであって,「構造化部(3)が構造化された基板(1)」全体を材料層(5)内へ収容することは特定されていない。
そして,上記3(2)ウで検討したとおり,引用例1には「バンプ」(構造化部(3))を弾性パッド12(材料層(5))に埋没(収容)させることが開示されている。
したがって,上記請求人の主張は請求項の記載に基づかない主張であるから,採用できない。
7 結言
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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