特許異議申立
2023-701324
絶縁電線及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-701324
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-092611
- 登録番号
- 7300887
- 請求日
- 2023年12月15日
- 審決日
- 2025年12月10日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社クラベ
- 【異議申立人】堀木 忠司
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 中野 浩昌
- 審判官 河本 充雄
- 分類
- P1651.113-YAA(H01B) / P1651.121-YAA(H01B) / P1651.537-YAA(H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7300887号発明「絶縁電線及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7300887号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4、5について訂正することを認める。
特許第7300887号の請求項1~4に係る特許を維持する。
特許第7300887号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許第7300887号の請求項1~5に係る特許(以下、「本件特許」ともいう。)についての出願は、令和元年5月16日に出願され、令和5年6月22日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月15日 :特許異議申立人 堀木 忠司(以下、「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 2月28日付け:取消理由通知
同年 4月29日 :特許権者による意見書の提出
同年 6月26日 :取消理由通知(決定の予告)
同年 8月29日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年10月10日 :特許権者による意見書、訂正請求書についての手続補正書(方式)の提出
同年 同月18日 :特許権者による上申書の提出
同年11月25日 :申立人による意見書の提出
同年12月18日 :申立人による意見書についての手続補正書(方式)の提出
令和7年 2月21日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 4月30日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 8月 8日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年10月10日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 同月30日 :特許権者による訂正請求書についての手続補正書(方式)の提出
同年11月10日 :特許権者による訂正請求書についての手続補正書(方式)の提出
なお、令和6年8月29日にされ、同年10月10日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求(以下、「訂正請求1」という。)、及び、令和7年4月30日にされた訂正請求(以下、「訂正請求2」という。)については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
2 申立人に意見書を提出する機会を与えるか否かについて
訂正請求2による特許請求の範囲の記載と、令和7年10月10日にされ、同年11月10日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求(以下、「訂正請求3」という。)による特許請求の範囲の記載とを比較すると、前者の「導体」と後者の「導体線」とが異なっているだけであって、以下の第2 2(3)での検討のとおり、「導体」は「導体線」の誤記であるから、両者の内容は実質的に変わっていない。
そして、令和7年5月14日付けで申立人に対して訂正請求2があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から応答はなかった。
したがって、訂正請求3については、申立人に意見書を提出する機会は与えない。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
訂正請求3による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため合議体が付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「上記導体線の表面にスズ層が残存していること」と記載されているのを、「上記導体線の表面にスズ層が残存しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していないこと」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「該導体線が赤銅色の光沢を有していること」と記載されているのを、「該導体線が赤銅色の光沢を有しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していないこと」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
明細書の【0013】、【0017】、【0020】に「導体2」と記載されているのを「導体線2」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2について
訂正事項1、2による訂正は、導体線と被覆について、「上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していないこと」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、2による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0017】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1、2による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、本件明細書等の【0013】、【0017】、【0020】に記載の「導体2」を「導体線2」に訂正するものであるところ、同【0013】、【0017】には、「導体2」と「導体線2」とが混在して記載されている。
そして、本件明細書等の【請求項1】には、「導体線」と記載されている。
そうすると、上記「導体2」は「導体線2」の誤記といえる。
したがって、訂正事項4による訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4、5について訂正することを認める。
第3 本件発明
訂正請求3により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であり、上記導体線がスズメッキ銅線またはスズメッキ銅合金線であり、上記導体線の表面にスズ層が残存しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していないことを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】 上記シリコーンゴムにおける8量体シロキサンの残留量が30ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
【請求項3】 上記導体線に銅-スズ金属間化合物層が存在し、且つ、該銅-スズ金属間化合物層が上記スズ層よりも厚さが薄いか、または、上記導体線に銅-スズ金属間化合物層が存在していないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の絶縁電線。
【請求項4】 導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であり、上記導体線が軟銅線であり、該導体線が赤銅色の光沢を有しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していないことを特徴とする絶縁電線。
【請求項5】 (削除)」
第4 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第21号証(以下、「甲1」~「甲21」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~5に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(進歩性)
請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2~甲21に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(サポート要件)
請求項1~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
なお、請求項5は、本件訂正により削除されたため、請求項5に係る発明に対する申立理由1(進歩性)については、以下では判断しない。
[証拠方法]
甲1:特許第3464581号公報
甲2:特許第3644489号公報
甲3:特開2001-176330号公報
甲4:特開2001-164112号公報
甲5:特許第5768923号公報
甲6:特許第5709569号公報
甲7:特開2003-297153号公報
甲8:特許第6228692号公報
甲9:特許第2632607号公報
甲10:特開2003-86024号公報
甲11:特開2016-113695号公報
甲12:特開2014-129611号公報
甲13:国際公開第2007/004581号
甲14:「神戸製鋼技報」、Vo.59、No.1、2009年4月、133~136ページ
甲15:特開2015-109168号公報
甲16:特開2008-59814号公報
甲17:特許第6228692号公報
甲18:特開2016-126923号公報
甲19:特開2015-118835号公報
甲20:特開2015-90756号公報
甲21:「図解入門 よくわかる最新「銅」の基本と仕組み」、株式会社 秀和システム、2010年8月1日、10~11ページ、76~77ページ
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1 当審において、令和6年6月26日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1-1(新規性)
請求項5に係る発明は、甲8に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由1-2(進歩性)
請求項1~4に係る発明は、甲6に記載された発明及び甲8に記載された事項に基いて、また、請求項5に係る発明は、甲8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、請求項5は、本件訂正により削除されたため、請求項5に係る発明に対する、取消理由1-1(新規性)及び取消理由1-2(進歩性)については、以下では判断しない。
2 当審において、令和7年2月21日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由2(明確性要件)
請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 当審において、令和7年8月8日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由3(明確性要件)
請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等
1 甲1(特許第3464581号公報)
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(当審注:下線は合議体が付与した。以下、同様である。)。
「【請求項1】 (A)平均組成式RaSiO(4-a)/2(式中、Rは置換または非置換の1価炭化水素基であり、aは1.95~2.05の数である。)で示される
ジオルガノポリシロキサン生ゴム 100重量部、
(B)微粉末状シリカ 10~150重量部、
(C)亜鉛化合物 0.01~20重量部
および
(D)メチル基置換ベンゾイルパーオキサイド 0.1~10重量部
からなることを特徴とする電線被覆用シリコーンゴム組成物。」
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電線被覆用シリコーンゴム組成物に関し、詳しくは、電気導体(例えば、銅線,スズメッキ銅線等)をシリコーンゴムで被覆したとき、電気絶縁抵抗値が高く、かつ、電気導体とシリコーンゴムとの接着あるいは密着(以下、芯線密着と称する)を防止し得る電線被覆用シリコーンゴム組成物に関する。」
「【0011】本発明組成物を電線に適用してシリコーンゴム被覆電線を製造するには、本発明組成物を周知の電線被覆用押出成形機に導入して電気導体上に被覆し、次いで、本発明組成物で被覆された電気導体を熱風加熱炉に導入して、200~500℃の温度条件下で数秒~数分間加熱する方法が一般的である。」
(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「シリコーンゴム組成物を電気導体上に被覆し、次いで、加熱することにより製造したシリコーンゴム被覆電線であって、
電気導体は、銅線又はスズメッキ銅線であり、
シリコーンゴム組成物は、(A)平均組成式RaSiO(4-a)/2(式中、Rは置換または非置換の1価炭化水素基であり、aは1.95~2.05の数である。)で示される
ジオルガノポリシロキサン生ゴム 100重量部、
(B)微粉末状シリカ 10~150重量部、
(C)亜鉛化合物 0.01~20重量部
および
(D)メチル基置換ベンゾイルパーオキサイド 0.1~10重量部
からなるシリコーンゴム被覆電線。」
2 甲2(特許第3644489号公報)
甲2には、以下の記載がある。
「【請求項5】
電線被覆用である請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項6】
請求項5記載のシリコーンゴム組成物を銅線又は錫メッキ銅線からなる芯線のまわりに押し出し成形したことを特徴とするシリコーンゴム被覆電線。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機過酸化物硬化型のシリコーンゴム組成物、特に電線被覆用として有用なシリコーンゴム組成物及びシリコーンゴムスポンジ組成物並びにシリコーンゴム被覆電線に関する。」
3 甲3(特開2001-176330号公報)
甲3には、以下の記載がある。
「【請求項4】請求項1~3の何れか1項記載の電線用シリコーンゴム組成物を銅線または錫メッキ銅線からなる芯線の周りに加硫成形したことを特徴とするシリコーンゴム被覆電線。」
「【0001】
【発明の技術分野】本発明は電線用シリコーンゴム組成物、特には安全衛生性に優れ、電線加硫時にボイドや表面タックの発生なしに連続常圧熱気加硫によりシリコーンゴムとすることのできるシリコーン被覆電線の製造に好適に使用し得る電線用シリコーンゴム組成物、及びその電線用シリコーンゴム組成物を銅線または錫メッキ銅線からなる芯線の周りに加硫成形したことを特徴とするシリコーンゴム被覆電線に関する。」
4 甲4(特開2001-164112号公報)
甲4には、以下の記載がある。
「【請求項5】熱気加硫可能な電線用シリコーンゴム組成物である請求項1~4の何れか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項6】請求項5記載の電線用シリコーンゴム組成物を銅線または錫メッキ銅線からなる芯線の周りに加硫成形したことを特徴とするシリコーンゴム被覆電線。」
「【0001】
【発明の技術分野】本発明はシリコーンゴム組成物、特にはボイドや表面タック性、安全衛生上の問題がなく、耐熱性、透明性の優れた電線被覆用などに有用とされる、常圧熱気加硫型のシリコーンゴム組成物およびシリコーンゴム被覆電線に関するものである。」
5 甲5(特許第5768923号公報)
甲5には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル、筐体付きケーブルおよびケーブルの製造方法に関し、より詳細には、導体を樹脂材料による絶縁体で被覆した絶縁電線を複数心まとめて、これを樹脂材料によるシースで被覆したケーブル、筐体付きケーブルおよびケーブルの製造方法に関する。」
「【0020】
図1は、本発明によるケーブルの構成例を示す図である。ケーブル1は、絶縁コアを構成する2心の絶縁電線4と、絶縁電線4の周囲を被覆するシース(外被)5からなっている。絶縁電線4は、ノイズの影響を受けにくくするために、2本の絶縁電線が撚られた対撚り線とすることができる。絶縁電線4は、導体2と、導体2の周囲を被覆した樹脂材料による絶縁体3とからなっている。
導体2は、例えば高屈曲性を有する錫メッキ銅合金線からなる。また、絶縁体3は、架橋された樹脂材料により成形される。
絶縁体3として、例えば架橋したポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を用いる。架橋PVCにより、対半田特性、耐熱性があるケーブルとなる。また、シース5として、例えば耐熱性のPVC樹脂が用いられる。耐熱PVCにより耐熱性と同時に耐油性のあるケーブルとなる。シース5は機械強度や耐熱性の要求を満たす限り非架橋の樹脂が好ましい。
【0021】
ケーブル1を構成する材料は、上記の例に限定されることなく、他の材料を適宜適用することができる。例えば、絶縁電線4の絶縁体3またはシース5の樹脂材料には、下記の群から選ばれた一つ以上の樹脂またはゴムもしくはエラストマーを使用することができる。
ポリオレフィン樹脂(超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、エチレン-メチルアクリレート共重合樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂など)、
ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、
ゴムもしくはエラストマー(塩素化ポリエチレン樹脂、エチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、スチレン系エラストマー、シリコーンゴムなど)。
これらの樹脂またはゴムもしくはエラストマーに添加剤(難燃剤、酸化防止剤、滑剤、架橋助剤、各種フィラーなど)を組み合わせて耐熱性や機械強度などの要求を満たすことができる。
これらの樹脂を架橋することで、耐熱性や耐半田性の要求を満たすことができる。」
6 甲6(特許第5709569号公報)
(1)甲6の記載
甲6には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドケーブルに関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシールドケーブルを示す構成図であって、(a)は断面図であり、(b)は側面図である。同図に示すシールドケーブル1は、1本の導体10と、導体10上に被覆された絶縁体20と、絶縁体20の外周に設けられたシールド層30とを備えている。
【0016】
導体10は、例えば軟銅線、銀メッキ軟銅線、錫メッキ軟銅線、及び錫メッキ銅合金線などが用いられる。なお、本実施形態において導体10は1本であるが、複数本であってもよい。また、導体10は、仕様により径等が適宜設定される。
【0017】
絶縁体20は、導体10上に被覆される部材であって、硬度10以上90以下の素材によって形成されている。ここで、硬度はJISK6253デュロメータタイプA(ショアA)で測定した値である。具体的に絶縁体20は、シリコーンゴム、フッ素樹脂、エチレンプロピレンゴム、及び、クロロプレンゴムなどにより形成されている。」
(2)甲6に記載された発明
上記(1)の記載によれば、甲6には、以下の発明(以下、「甲6発明」という。
)が記載されているといえる。
「導体10と、導体10上に被覆された絶縁体20と、絶縁体20の外周に設けられたシールド層30とを備えているシールドケーブル1であって、
導体10は、軟銅線、錫メッキ軟銅線、又は錫メッキ銅合金線であり、
絶縁体20は、シリコーンゴムにより形成されているシールドケーブル1。」
7 甲7(特開2003-297153号公報)
甲7には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁電線およびその製造方法に係り、特に、液晶表示装置(LCD)用バックライトの高圧リード線など半田付けによる接続部を含む耐屈曲性および端面加工性に優れた絶縁電線に関する。」
「【0037】ここで素線は直径0.08mmの絶縁被覆錫めっき硬銅線からなり、中心部を構成する1本の錫めっき銅合金線からなる第1の素線1cと、前記第1の素線の中心を中心とする第1の円周上で撚りあわせられた6本の錫めっき銅合金線からなる第2の素線1mの撚り構造体からなる中間層と、さらに前記中間層の外側に位置し、前記第1の素線の中心を中心とする第2の円周上で撚りあわせられた12本錫めっき銅合金線からなる第3の素線1nの撚り構造体からなる外側層とを含む。ここでは、耐屈曲性の向上のために、前記第3の素線は前記第1および第2の素線よりも機械的強度が小さくなるようにしている。」
「【0061】また絶縁被覆層を構成する絶縁材料としては、架橋難燃ポリエチレンを用いることにより、架橋の際の電子線照射量を調整することにより、容易にセカントモジュラスを調整することが可能である。また絶縁材料としては、架橋難燃ポリエチレンに限定されるものではなく、シリコーン、架橋フッ素樹脂、架橋ポリ塩化ビニルなどを使用し、モジュラスを調整するようにすればよい。」
8 甲8(特許第6228692号公報公報)
甲8には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム組成物、その製造方法およびシリコーンゴム押出し成形品に関し、特にはミラブル型のシリコーンゴム組成物、その製造方法およびシリコーンゴム押出し成形品に関する。」
「【0145】
【表2】
[図:0001433045000001.jpg]
」
「【0155】
本発明のシリコーンゴム組成物による押出し成形品の表面はすべり性に優れることからブロッキングの発生が殆どない。本発明のシリコーンゴム組成物は、パッキン、チューブ、ケーブル等の押出成形品の製造に好適である。また、表面に露出した粒状の突起物によって、押し出し成形品が、艶消しで粘着感のない表面質感が得られるため、ウェアラブルデバイス、自動車用ウェザーストリップ等の用途に好適である。」
9 甲9(特許第2632607号公報)
甲9には、以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、揮発性の低分子シロキサンを含まない付加硬化型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。」
「【0035】
【表1】
[図:0001433045000002.jpg]
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、硬化特性等を損うことなく、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の低分子シロキサン成分含量を100ppm以下に抑制することが可能となる。この組成物は、接点障害を生ぜず、電気・電子分野において有効に使用される。」
10 甲10(特開2003-86024号公報)
甲10には、以下の記載がある。
「【請求項2】前記Sn系めっき層は、純Sn系めっき部分の層と当該純Sn系めっき部分の層と前記導体の間に形成される金属間化合物層から成り、前記純Sn系めっき部分の層の厚さV1と、前記金属間化合物層の厚さV2の比が、以下の(1)式で規定されることを特徴とする請求項1記載のSn系めっき平角導体。
2<V1/V2<20 (1)」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フレキシブル・フラット・ケーブルなどの電子機器用のケーブルの導体として使用されるSn系めっき平角導体およびそれを用いたフラットケーブルに関するものである。」
「【0013】Sn系めっき平角導体の製造工程において、最終工程の焼鈍条件を調整することにより、Sn系めっき層2中の純Sn系めっき部分の層3の厚さV1と金属間化合物(Cu3Sn、Cu6Sn5等)層4の厚さV2を制御し、それらの厚さの比が以下の(1)式で規定される構成にする(すなわち、純Sn系めっき部分の層3の体積量と金属間化合物層4の体積量の比を規定したのと略同じである)。これによって、耐屈曲性、コネクタとの接合性、耐磨耗性、はんだ付性を兼ね備えることができる。」
11 甲11(特開2016-113695号公報)
甲11には、以下の記載がある。
「【請求項1】
銅合金材のスズめっき方法であって、
スズめっきされる銅合金材を電解脱脂する電解脱脂ステップ、
電解脱脂された銅合金材を酸洗する酸洗ステップ、
酸洗された銅合金材を銅下地めっき液に浸漬して銅下地めっきするステップ、
銅下地めっきされた銅合金材を予備浸漬液に予備浸漬する予備浸漬ステップ、
予備浸漬された銅合金材をスズめっきするステップ、
スズめっきされた銅合金材を5℃~30℃で5秒~10秒間酸化防止剤でフラックス処理するフラックスステップ、
収得された銅合金材を500℃~600℃で1分~3分間リフロー処理するリフローステップ、及び
収得された銅合金材を100℃~300℃で1分~5分間乾燥する乾燥ステップ
を含み、前記フラックスステップにおいて、酸化防止剤はミスト噴射方式で噴射される銅合金材のスズめっき方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金材のスズめっき方法に関する。本発明は、特に、スズめっき方法のうち、フラックス(flux)ステップで二流体(空気及び薬品の混合状態)をミストの形態で噴射する方式を使用することを特徴とする銅合金材のスズめっき方法に関する。」
12 甲12(特開2014-129611号公報)
甲12には、以下の記載がある。
「【請求項4】
CuまたはCu合金からなる基材上に、厚さ0.8~1.2μmのCuまたはCu合金からなる下地めっき層を形成し、
前記下地めっき層上に、厚さ1.0~2.5μmのSnまたはSn合金からなる表面めっき層を形成した後、
さらに、260~320℃の温度雰囲気に60~120秒保持する加熱処理を行い、前記下地めっき層と表面めっき層との間に合金層を形成する
ことを特徴とするめっき材料の製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明はめっき材料とその製造方法に関し、詳しくは、Cu(銅)等の導電性基材上に設けられた下地めっき層と、Sn(錫)やSn合金からなる表面めっき層との間に形成される合金層(金属間化合物層)の成長速度を遅くしためっき材料とその製造方法に関する。」
13 甲13(国際公開第2007/004581号)
甲13には、以下の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、コネクタ、端子、リレー、スイッチ等の導電性材料として好適な、良好な疲労特性を有する銅合金Snめっき条に関する。」
「[0011] リフロー後のSn相の厚みは約0.02~約2.0μmとするのが好ましい。Sn相が約0.02μm未満になると半田濡れ性が低下し、約2.0μmを超えると、疲労特性が低下する傾向にあるからである。
リフロー処理によって形成されるSn-Cu合金相の厚みは約0.1~約2.0μmとするのが好ましい。特許3391427号等に開示されているように、 Sn-Cu合金相は硬質なため、約0.1μm以上の厚さで存在すると、挿入力の低減に寄与する。一方、Sn-Cu合金相の厚さが約2.0μmを超えると、疲労特性が低下する傾向にあるからである。
電気めっき時のSnめっきの厚みを約0.4~約2.2μmの範囲で適宜調整し、約230~600℃、約3~約30秒間の範囲における適当な条件でリフロー処理を行うことにより、上記めっき構造が得られる。」
「請求の範囲
[1] 銅合金条の表面に、電気めっきおよびリフロー処理によりSnまたはSn合金めっき皮膜が形成され、平均水素濃度が約2質量ppm以下であることを特徴とする銅合金Snめっき条。」
14 甲14(「神戸製鋼技報」、Vo.59、No.1、2009年4月、133~136ページ)
甲14には、以下の記載がある。
「2) 耐めっきはく離性
すずめっき銅合金が加熱されると,すず中に銅が拡散して銅とすずの金属間化合物を形成する。このとき,銅合金の組成や加熱温度条件によっては,すずめっき層および銅とすずの合金層と材料の界面に空孔(ボイド)が発生し,めっきがはく離する現象が起きる。」(134ページ左欄12~17行)
15 甲15(特開2015-109168号公報)
甲15には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスに関し、さらに詳しくは、電線導体と端子金具の電気接続部の防食性に優れた端子付き被覆電線、およびそれを用いたワイヤーハーネスに関する。」
「【0025】
銅または銅合金よりなる母材55の表面に、電解めっき等によってスズ層を形成し、適宜加熱することで、スズ層と母材55の銅の間の合金化による銅スズ合金層56を形成することができる。長時間加熱を行えば、最終的に、図3のように、最初に形成したスズ層の全てを銅スズ合金層56とすることができる。合金化を行う際の加熱温度としては、150~200℃の範囲を例示することができる。この範囲の加熱温度を選択すれば、合金化が効果的に進行するとともに、厚さの均一性が高い銅スズ合金層56を形成することができる。」
16 甲16(特開2008-59814号公報)
甲16には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は平角導体の製造方法およびフラットケーブルの製造方法に係り、例えば電子機器の配線に用いられる可撓性があるフラットケーブルを製造するための平角導体の製造方法およびフラットケーブルの製造方法に関するものである。」
「【0003】
ところで、平角導体における純錫メッキ層を錫銅合金化する際に通電加熱を行うが、このときの電圧を上げすぎると、急激な加熱により焼入れ状態となって平角導体の伸び特性が悪化してしまうことがある。また、温度を上げすぎることにより、錫メッキ層が流れて銅が露出してしまうことがある。」
17 甲17(特許第6228692号公報)
甲17には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム組成物、その製造方法およびシリコーンゴム押出し成形品に関し、特にはミラブル型のシリコーンゴム組成物、その製造方法およびシリコーンゴム押出し成形品に関する。」
「【0006】
また、上記生ゴム状の高重合度ポリオルガノシロキサンは、低分子の環状シロキサンをアルカリ触媒による開環重合により製造するのが一般的であるが、この反応は平衡化であり、未反応の低分子シロキサンが一定量ポリマー中に残存する。近年、低分子シロキサンの低減が要求されているが、生ゴム状のベースポリマーから低分子シロキサンを除去することが困難なため、硬化後の成形品を高温でポストキュアせざるを得ず、コスト増加が避けらない。さらに、高温でのポストキュアは、特に熱可塑性のプラスチックのような、熱に弱い材料との複合成形を行う際に材料選択の幅を狭める。」
「【0070】
シロキサンポリマーに含まれる低分子シロキサン成分を低減する方法としては、減圧状態で100~300℃程度の高温加熱下に低分子シロキサン成分を気化除去する方法や、該気化除去中あるいはこの気化除去の後に、さらに不活性ガスを吹き込んで気化を促進する方法等の従来公知の方法が挙げられる。」
「【0102】
好ましくは、(A)成分が含有する(A1)成分のポリオルガノシロキサンジオールの末端シラノール基と(B)成分のシリカ粉末の表面のシラノール基の縮合反応を十分に行わせるために、(A)成分、(B)成分および(C)成分を混練して、ベースコンパウンドを調製した後、ベースコンパウンドに(D)成分の硬化剤を配合する。ベースコンパウンドの調製は、(A)成分を混練しながら、そこに(B)成分および(C)成分をそれぞれ徐々に加える方法が好ましい。(B)成分、(C)成分の添加は断続的であってもよく、連続的であってもよい。具体的には、(A)成分に、(B)成分および(C)成分を、複数回に分けて添加する、所定の速度で連続的に添加する等が挙げられる。
【0103】
なお、(A)成分、(B)成分および(C)成分を混練する際の温度は100℃以下が 好ましく、20~70℃の範囲がより好ましい。また、(A)成分、(B)成分および(C)成分を均一に混練した後、得られた混合物を、(D)成分の硬化剤を配合する前に、 アンモニア、ヘキサメチルジシロキサン等の低分子シロキサン、未反応の(C)成分等を除去する目的で、100~200℃で加熱する工程を設けることが好ましい。加熱工程は、具体的には、加熱混練により行うことが好ましく、時間は0.5~12時間が好ましい。さらに、このようにして得られるベースコンパウンドを冷却後、(D)成分の硬化剤を配合するのが好ましい。」
「【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明のシリコーンゴム組成物は、硬化物の強度を十分に維持しながら、成形性、特に押出成形性が良好である。また、本発明のシリコーンゴム組成物における好ましい態様である低粘度(A)成分含有シリコーンゴム組成物を用いれば、あらかじめ(A)成分中に含有される低分子シロキサンを十分に低減することができるため、ポストキュアすることなく低分子シロキサン含有量が十分に低減された硬化物、例えば、常圧、200℃、4時間の熱処理前後における質量減少率が0.5%以下であるシリコーンゴム成形品が得られる。
【0154】
このようなシリコーンゴム成形品は、揮発性の低分子量シロキサンに起因する電子機器の接点障害の発生が殆どないことから、自動車用や電子機器用のコネクターシール/ガスケット/パッキン/緩衝材等として好適である。また、揮発性の低分子シロキサンの量が十分に少ないため、医療用のチューブ、カテーテル、逆止弁、パッキン、創傷ケア用品として、また、ベビーニップル等のヘルスケア用途、キッチン用品等の用途に好適である。さらに、これらの用途に用いるにあたって、高温でのポストキュアが必要ないので、熱可塑性プラスチックのような、熱に弱い素材等、幅広い素材との複合成形が可能である。」
18 甲18(特開2016-126923号公報)
甲18には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁電線に関し、さらに詳しくは、自動車等の車両に好適に用いられる絶縁電線に関するものである。」
「【0044】
〔実施例1~7〕
表1に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、未架橋のシリコーンゴムを含む絶縁層用のゴム組成物を調製した。次いで、押出成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積0.5mm2)の外周に絶縁層用のゴム組成物を0.2mm厚で押出被覆し、この架橋シリコーンゴムを含有する絶縁層にフッ素ガスを接触させる処理を行った後、200℃×4時間の条件で熱処理を行った。以上により、実施例1~7の絶縁電線を得た。」
19 甲19(特開2015-118835号公報)
甲19には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁電線に関し、特に自動車、電機・電子機器等に好適に使用される絶縁電線に関するものである。」
「【0052】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
[実施例1~7]
表1に示す配合組成で、未架橋のシリコーンゴム、フィラー、架橋剤を含む絶縁層用のゴム組成物をバンバリーミキサーを用いて常温にて混合した。その後、押出成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積0.5mm2)の外周に絶縁層用のゴム組成物を0.2mm厚に押出し被覆して、未架橋のゴムを含む絶縁層を形成した。次いで、絶縁電線を熱風により200℃×4時間加熱して、絶縁層の熱処理を行うことにより、未架橋のゴムを架橋させて、実施例1~7の絶縁電線を得た。」
20 甲20(特開2015-90756号公報)
甲20には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁電線に関し、さらに詳しくは、自動車等の車両に好適に用いられる絶縁電線に関するものである。」
「【0049】
〔実施例1~8〕
表1に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、未架橋のシリコーンゴムを含む絶縁層用のゴム組成物を調製した。次いで、押出成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積0.5mm2)の外周に絶縁層用のゴム組成物を0.2mm厚で押出被覆した(180℃×5分)。次いで、200℃×4時間の条件で被覆層の熱処理を行うことにより、被覆層のシリコーンゴムの架橋を完了させた。これにより、実施例1~8の絶縁電線を得た。」
21 甲21(「図解入門 よくわかる最新「銅」の基本と仕組み」、株式会社 秀和システム、2010年8月1日、10~11ページ、76~77ページ)
甲21には、以下の記載がある。
「つまり、純銅は赤みをおびた光沢のある美しい金属であり、赤銅(しゃくどう、あかがね)とも呼ばれます。」(11ページ6~7行)
「200℃での加熱で褐色になり、温度の上昇と共に、ばら色、紫色、青色、黄銅色、緑色、灰色となり、約300℃で黒色の酸化銅(CuO)になります。」(77ページ下から2行~最下行)
第7 取消理由1-2(進歩性)について
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
ア 甲6発明の「シールドケーブル1」は、「導体10と、導体10上に被覆された絶縁体20と」を備え、「絶縁体20は、シリコーンゴムにより形成されている」から、「導体10」の外周に「シリコーンゴムにより形成されている」「絶縁体20」からなる被覆が形成されているといえる。
そうすると、甲6発明の「導体10」は、本件発明1の「導体線」に相当し、甲6発明の「導体10と、導体10上に被覆された絶縁体20と」を備え、「絶縁体20は、シリコーンゴムにより形成されているシールドケーブル1」は、本件発明1の「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線」に相当する。
また、甲6発明の「錫メッキ軟銅線、又は錫メッキ銅合金線」は、本件発明1の「スズメッキ銅線またはスズメッキ銅合金線」に相当する。
イ 以上によれば、本件発明1と甲6発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記導体線がスズメッキ銅線またはスズメッキ銅合金線である絶縁電線。」
<相違点>
相違点1:本件発明1は、「上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下」であるのに対し、甲6発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点2:本件発明1は、「上記導体線の表面にスズ層が残存しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」のに対し、甲6発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲8には、相違点2に係る本件発明1の構成である「上記導体線の表面にスズ層が残存しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」ことについては、記載も示唆もされていない。
したがって、甲6発明に甲8に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成は得られない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明及び甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲6発明及び甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明4について
(1)対比
本件発明4と甲6発明とを対比する。
ア 甲6発明の「シールドケーブル1」は、「導体10と、導体10上に被覆された絶縁体20と」を備え、「絶縁体20」は、「シリコーンゴムにより形成されている」から、「導体10」の外周に「シリコーンゴムにより形成されている」「絶縁体20」からなる被覆が形成されているといえる。
そうすると、甲6発明の「導体10」は、本件発明4の「導体線」に相当し、甲6発明の「導体10と、導体10上に被覆された絶縁体20と」を備え、「絶縁体20」は、「シリコーンゴムにより形成されているシールドケーブル1」は、本件発明4の「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線」に相当する。
また、本件発明4と甲6発明とは、「導体線が軟銅線であ」る点で共通する。
イ 以上によれば、本件発明4と甲6発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記導体線が軟銅線である絶縁電線。」
<相違点>
相違点3:本件発明4は、「上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下」であるのに対し、甲6発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
相違点4:本件発明4は、「該導体線が赤銅色の光沢を有しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」のに対し、甲6発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4から検討する。
甲8には、相違点4に係る本件発明4の構成である「該導体線が赤銅色の光沢を有しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」ことについては、記載も示唆もされていない。
したがって、甲6発明に甲8に記載された事項を適用しても、相違点4に係る本件発明1の構成は得られない。
よって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明4は、甲6発明及び甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 小括
以上によれば、取消理由1-2(進歩性)は理由がない。
第8 申立理由1(進歩性)について
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「スズメッキ銅線」、「電気導体」は、それぞれ、本件発明1の「スズメッキ銅線」、「導体線」に相当する。
また、甲1発明の「シリコーンゴム被覆電線」は、「電気導体」の外周に「シリコーンゴム」からなる被覆が形成されているといえ、また、「シリコーンゴム」が絶縁体であることは技術常識であるから、本件発明1の「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線」に相当する。
イ 以上から、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記導体線がスズメッキ銅線である絶縁電線。」
<相違点>
相違点5:本件発明1は、「上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下」であるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。
相違点6:本件発明1は、「上記導体線の表面にスズ層が残存しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点6から検討する。
甲2~甲21のいずれにも、相違点6に係る本件発明1の構成である「上記導体線の表面にスズ層が残存しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」ことについては、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に甲2~甲21に記載された事項のいずれを適用しても、相違点6に係る本件発明1の構成は得られない。
よって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲21に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2~甲21に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明4について
(1)対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「電気導体」は、本件発明4の「導体線」に相当する。
また、甲1発明の「シリコーンゴム被覆電線」は、「電気導体」の外周に「シリコーンゴム」からなる被覆が形成されているといえ、また、「シリコーンゴム」が絶縁体であることは技術常識であるから、本件発明4の「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線」に相当する。
そして、甲1発明の「銅線」と、本件発明4の「軟銅線」とは、銅線である点で共通する。
イ 以上から、本件発明4と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記導体線が銅線である絶縁電線。」
<相違点>
相違点7:「導体線」について、本件発明4は、「軟銅線」であるのに対し、甲1発明は「銅線」である点。
相違点8:本件発明4は、「上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下」であるのに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。
相違点9:本件発明4は、「該導体線が赤銅色の光沢を有しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているか不明である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点9から検討する。
甲2~甲21のいずれにも、相違点9に係る本件発明4の構成である「該導体線が赤銅色の光沢を有しており、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」ことについては、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に甲2~甲21に記載された事項のいずれを適用しても、相違点9に係る本件発明4の構成は得られない。
よって、相違点7、8について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明及び甲2~甲21に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 小括
以上によれば、申立理由1(進歩性)は理由がない。
第9 取消理由2(明確性要件)、取消理由3(明確性要件)について
1 取消理由2(明確性要件)の概要は、以下のとおりである。
訂正請求1による請求項1及び請求項4の「上記導体と上記被覆が過剰に接着していない」との記載は、導体と被覆とがどの程度接着していなければ、過剰に接着していないといえるのか、本件明細書等の記載及び本件特許の出願当時の技術常識を参酌しても明確であるとはいえないし、また、請求項1の記載を引用する請求項2、3の記載も、請求項1の記載と同様に明確であるとはいえない。
2 取消理由3(明確性要件)の概要は、以下のとおりである。
訂正請求2による請求項1及び請求項4には、「上記導体」と記載されているが、この記載より前に「導体」との語句は記載されていないから、請求項1及び請求項4の記載は明確でないし、また、請求項1の記載を引用する請求項2、3の記載も、請求項1の記載と同様に明確でない。
3 しかし、訂正請求1による請求項1及び請求項4の「上記導体と上記被覆が過剰に接着していない」との記載、訂正請求2による請求項1及び請求項4の「上記導体」との記載は、本件訂正によって、「上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」と訂正されたため、明確になった。
4 小括
以上によれば、取消理由2(明確性要件)、取消理由3(明確性要件)は理由がない。
第10 申立理由2(サポート要件)について
1 訂正明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の記載
発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1~5にも記載があるが、従来は、シリコーンゴムを所定の形状に成型した後、180~230℃の加熱を行い、場合によっては並行して減圧処理を行い、低分子シロキサンを除去していた。しかしながら、従来のやり方では、低分子シロキサンの除去が十分でなく、低分子シロキサンの揮発による影響が生じてしまうことがあった。特に成型品の中心部に残留した低分子シロキサンの除去が十分ではなく、また、比較的分子量の大きい8量体シロキサンが残留していることとなっていた。更に、所定の形状に成型した後に加熱を行うため、膨張収縮による変形が生じるおそれや、複数の材料を複合した部材である場合、他の材料の組成が変化してしまうおそれもあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、低分子シロキサンの発生量が少ない絶縁電線を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明による絶縁電線は、導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であることを特徴とするものである。
また、上記シリコーンゴムにおける8量体シロキサンの残留量が30ppmであることが考えられる。
また、上記導体線がスズメッキ銅線またはスズメッキ銅合金線であり、上記導体線の表面にスズ層が残存していることが考えられる。
また、上記導体線に銅-スズ金属間化合物層が存在し、且つ、該銅-スズ金属間化合物層が上記スズ層よりも厚さが薄いか、または、上記導体線に銅-スズ金属間化合物層が存在していないことが考えられる。
また、上記導体線が軟銅線であり、該導体線が赤銅色の光沢を有していることが考えられる。
また、本発明によるチューブは、シリコーンゴムからなるチューブであって、上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であることを特徴とするものである。
また、本発明による絶縁電線の製造方法は、導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線の製造方法であって、予め加熱による低分子シロキサンの揮発処理をしたシリコーンゴムを、導体線の外周に押出成型することを特徴とするものである。
なお、本発明において、低分子シロキサンとは、環状シロキサンの3量体~8量体のものを示す。」
「【発明を実施するための最良の形態】
・・・
【0014】
被覆3を構成するシリコーンゴムは、導体線2の外周に成型する前に、予め加熱による低分子シロキサンの揮発処理がなされる。
・・・
【0017】
また、導体線2として軟銅線を使用した絶縁電線の場合であっても、上記のように予め低分子シロキサンを除去することは非常に効果が高い。導体線2上にシリコーンゴムからなる被覆3を形成した後に低分子シロキサンを除去のための加熱処理をすると、発生した低分子シロキサンを起因として導体線2と被覆3が過剰に接着することがある。それにより、絶縁電線の端子加工として端部の被覆3を除去しようとしたとき、被覆3がきれいに剥がれず部分的に残存してしまうことがある。この部分的に残存した被覆3が端子と導体線2の間に入ってしまうと、導通不良を起こしてしまうこととなる。予め低分子シロキサンを除去する工法であれば、このように導体線2と被覆3が過剰に接着することはない。なお、導体線2として軟銅線を使用した場合、予め低分子シロキサンを除去したものは、導体線2が赤銅色の光沢を有しているが、導体線2上にシリコーンゴムからなる被覆3を形成した後に低分子シロキサンを除去のための加熱処理したものは、導体線2が酸化により黒っぽく変色している。このことから、両者の工法の違いは判別できる。」
2 本件発明が解決しようとする課題
発明の詳細な説明の【0006】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題(以下、「本件課題」という。)は、「低分子シロキサンの発生量が少ない絶縁電線を提供すること」である。
3 発明の詳細な説明に記載された発明
(1)上記1の【0007】の記載によれば、絶縁電線は、導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であり、上記導体線がスズメッキ銅線またはスズメッキ銅合金線であり、上記導体線の表面にスズ層が残存しているもの、又は、上記導体線が軟銅線であり、該導体線が赤銅色の光沢を有しているものである。
(2)上記1の【0014】の記載によれば、絶縁電線は、被覆3を構成するシリコーンゴムは、導体線2の外周に成型する前に、予め加熱による低分子シロキサンの揮発処理がなされたものであるといえる。
また、上記1の【0017】には、導体線2上にシリコーンゴムからなる被覆3を形成した後に低分子シロキサンを除去のための加熱処理をすると、発生した低分子シロキサンを起因として導体線2と被覆3が過剰に接着することがあり、それにより、絶縁電線の端子加工として端部の被覆3を除去しようとしたとき、被覆3がきれいに剥がれず部分的に残存してしまうことがあるのに対し、予め低分子シロキサンを除去する工法であれば、このように導体線2と被覆3が過剰に接着することはないことが記載されている。
そうすると、絶縁電線は、被覆3を構成するシリコーンゴムを、導体線2の外周に成型する前に、予め加熱による低分子シロキサンの揮発処理がなされたものであって、上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していないものといえる。
(3)上記(1)及び(2)によれば、発明の詳細な説明には、以下の2つの発明が記載されているといえる。
ア 「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であり、上記導体線がスズメッキ銅線またはスズメッキ銅合金線であり、上記導体線の表面にスズ層が残存しており、被覆をきれいに剥がすことができる程度に、導体と被覆が過剰に接着していない絶縁電線。」(以下、「発明の詳細な説明記載発明1」という。)
イ 「導体線の外周にシリコーンゴムからなる被覆が形成された絶縁電線であって、上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であり、上記導体線が軟銅線であり、該導体線が赤銅色の光沢を有しており、被覆をきれいに剥がすことができる程度に、導体と被覆が過剰に接着していない絶縁電線。」(以下、「発明の詳細な説明記載発明2」という。)
4 本件発明1、4について
上記3(3)ア、イで示した発明の詳細な説明記載発明1、2は、いずれも「上記シリコーンゴムにおける3量体~8量体シロキサンの残留量が、200ppm以下であり」との構成を備えているから、「低分子シロキサンの発生量が少ない絶縁電線を提供すること」の本件課題を解決し得るものであるといえる。
そして、本件発明1と発明の詳細な説明記載発明1とは同じ構成を有しており、また、本件発明4と発明の詳細な説明記載発明2とは同じ構成を有している。
そうすると、本件発明1、4は、いずれも、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
5 本件発明2、3について
本件発明2、3は、いずれも本件発明1の構成を有するものであるから、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
6 申立人の主張について
(1)申立人は、特許異議申立書の39ページ下から8行~40ページ最下行において、本件発明1及び本件発明4は、導体線2の外周にシリコーンゴムを押出成型して被覆3を形成した後、加熱をして低分子シロキサンの揮発処理を行った絶縁電線を権利範囲に含むことになり、一方、本件明細書の【0015】には、「導体線2としてスズメッキ銅線またはスズメッキ銅合金線を使用した絶縁電線の場合、上記のように予め低分子シロキサンを除去することは非常に効果が高い。」と記載されており、同【0017】には、「導体線2として軟銅線を使用した絶縁電線の場合であっても、上記のように予め低分子シロキサンを除去することは非常に効果が高い。」と記載されているにも係わらず、シリコーンゴムを押出成型して被覆3を形成した後、加熱をして低分子シロキサンの揮発処理を行うことは本件明細書に記載されていないから、本件発明1及び本件発明4は、本件明細書に記載されていない発明を権利範囲に含むことになり、本件特許に係る出願時の周知技術に照らしても、本件発明1及び本件発明4の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件発明1及び本件発明4は、本発明の課題を解決することができない構成も含むものであり、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)を満たしておらず、本件発明2、3も同様である旨主張している。
(2)申立人の上記(1)の主張を検討するに、本件明細書の【0017】の「導体線2上にシリコーンゴムからなる被覆3を形成した後に低分子シロキサンを除去のための加熱処理をすると、発生した低分子シロキサンを起因として導体線2と被覆3が過剰に接着することがある。それにより、絶縁電線の端子加工として端部の被覆3を除去しようとしたとき、被覆3がきれいに剥がれず部分的に残存してしまうことがある。この部分的に残存した被覆3が端子と導体線2の間に入ってしまうと、導通不良を起こしてしまうこととなる。予め低分子シロキサンを除去する工法であれば、このように導体線2と被覆3が過剰に接着することはない。」との記載によれば、導体線2上にシリコーンゴムからなる被覆3を形成した後に、加熱をして低分子シロキサンの揮発処理を行うと、発生した低分子シロキサンを起因として導体線2と被覆3が過剰に接着して、被覆3がきれいに剥がれず部分的に残存してしまう。
しかし、本件発明1及び本件発明4は、「上記被覆をきれいに剥がすことができる程度に、上記導体線と上記被覆が過剰に接着していない」との構成を備えているから、被覆がきれいに剥がれない絶縁電線、すなわち、導体線2の外周にシリコーンゴムを押出成型して被覆3を形成した後、加熱をして低分子シロキサンの揮発処理を行った絶縁電線は含まれない。
また、本件発明1の構成を有する本件発明2、3も同様である。
したがって、申立人の上記(1)の主張は採用できない。
7 小括
以上によれば、申立理由2(サポート要件)は理由がない。
第11 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項5は、本件訂正により削除されたため、請求項5に係る特許に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701324