特許異議申立
2024-700016
フィルム、該フィルムから構成される包装袋、該フィルムを備える積層体及び該積層体から構成される包装袋
- 審判番号
- 2024-700016
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-111564外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7310342
- 請求日
- 2024年01月09日
- 審決日
- 2024年10月04日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第2条第3項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7310342号発明「フィルム、該フィルムから構成される包装袋、該フィルムを備える積層体及び該積層体から構成される包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7310342号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7310342号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。
特許第7310342号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立を却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7310342号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和1年6月14日を出願日とする特許出願であって、令和5年7月10日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和6年1月9日に特許異議申立人 浅野 幸義(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし5)がされ、同年4月1日付けで取消理由が通知され、同年6月3日に特許権者 大日本印刷株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月7日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年7月3日に特許異議申立人から意見書が提出されたものものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7310342号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
令和6年6月3日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載のフィルムにより構成される包装袋であって、」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルムにより構成される包装袋であって、前記フィルムは、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、前記フィルムは、白色顔料を含み、前記白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下であり、」に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1に記載のフィルムと、シーラント層とを備える積層体であって、」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルムと、シーラント層とを備える積層体であって、前記フィルムは、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、前記フィルムは、白色顔料を含み、前記白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下であり、」に訂正する。
請求項3の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項4及び5についても同様に訂正する。
(4) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項1を引用する形式で記載されていたものを、他の請求項の記載を引用しないものと書き改めるとともに、「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルム」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許の明細書の記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項3の訂正は、請求項1を引用する形式で記載されていたものを、他の請求項の記載を引用しないものと書き改めるとともに、「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルム」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、本件特許の明細書の記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項3の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項4及び5についても同様である。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」を総称し「本件特許発明」ということがある。)は、令和6年6月3日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルムにより構成される包装袋であって、
前記フィルムは、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、
前記フィルムは、白色顔料を含み、前記白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、
前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下であり、
前記フィルムは、その一方の面にのみ電子線照射処理が施され、
電子線非照射面が内側となるように配置されていることを特徴とする、包装袋。
【請求項3】
バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルムと、シーラント層とを備える積層体であって、
前記フィルムは、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、
前記フィルムは、白色顔料を含み、前記白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、
前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下であり、
前記シーラント層は、前記フィルムと同一の材料により構成され、
前記同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とする、積層体。
【請求項4】
前記シーラント層が、バイオマス由来のポリエチレンまたはバイオマス由来のポリプロピレンを含む、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項3または4に記載の積層体により構成されることを特徴とする、包装袋。」
第4 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由2及び申立理由3の具体的理由は次のとおりである。
(1) 申立理由2-1及び申立理由3-1
「本件特許発明の第一の課題は、ポリオレフィンから構成される樹脂フィルムの強度及び耐熱性を向上させることにより、ポリオレフィンから構成される樹脂フィルムを異種の樹脂材料と組み合わせなくても単独で包装袋などを構成するための基材として使用できるようにし、樹脂材料ごとの分離を不要としてリサイクルしやすくすることである。
そして、本件特許発明1の「延伸処理又は電子線照射処理の特徴」は、本件特許発明の第一の課題の解決手段である。本件特許明細書の【0020】には、「該延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方の処理を施すことにより、その耐熱性および強度を著しく向上させることができ、包装袋などを構成する材料として好適に使用することができる。」と記載されている。
しかしながら、現状の本件特許の請求項1では、「延伸処理」の条件を何ら限定していないので、「延伸処理」には、あらゆる延伸倍率での処理が包含されることになる。同様に、現状の本件特許の請求項1では、「電子線照射処理」の条件を何ら限定していないので、「電子線照射処理」には、あらゆる線量、加速電圧、照射エネルギーの電子線を使用した処理が包含されることになる。
このような現状の請求項1の記載のままでは、実際問題として、あらゆる延伸倍率での処理やあらゆる線量、加速電圧、照射エネルギーの電子線を使用した処理の全てが本件特許発明の第一の課題を解決することができるということはあり得ない。例えば、延伸倍率が極端に低い場合や、電子線の線量、加速電圧、照射エネルギーが極端に低い場合は、たとえ「延伸処理」や「電子線照射処理」をフィルムに施したとしても、フィルムの強度や耐熱性が十分に向上するはずがなく、本件特許発明の第一の課題を解決することができるはずがない。
従って、本件特許発明1の「延伸処理」及び「電子線照射処理」に関して、具体的な条件を何ら限定していない現在の広い請求項1に規定される範囲まで拡張ないし一般化できるとは言えず、本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
そうすると、本件特許発明1は、「延伸処理」及び「電子線照射処理」の点で発明の詳細な説明に記載したものではなく、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。
同様の理由により、本件特許発明1に直接的又は間接的に従属する本件特許発明2~5も、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。」(特許異議申立書第27頁ないし第28頁)
(2) 申立理由2-2及び申立理由3-2
「本件特許発明1で規定されるフィルムの厚さ(「10μm以上50μm以下」)について、本件特許明細書の実施例で検証しているのは、「25μm」だけである(本件特許明細書の【0183】~【0184】参照)。
即ち、本件特許発明1で規定されるフィルムの厚さ(「10μm以上50μm以下」)のうち、 実際に効果を検証しているのは、規定範囲の中央付近の厚さ(25μm)のみであり、この数値から離れる上下限に近いフィルム厚さについては、何ら検証されていない。また、フィルムの厚さが25μm以外の全ての範囲(即ち、下限の10μmに近い厚さや上限の50μmに近い厚さ)まで同様の効果を奏するとは予測できない。また、このことは、当業者の技術常識でもない。
従って、本件特許発明1の「フィルムの厚さ」に関して、25μm以外の現在の広い請求項1に規定される範囲まで拡張ないし一般化できるとは言えず、本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
そうすると、本件特許発明1は、「フィルムの厚さ」の点で発明の詳細な説明に記載したものではなく、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。
同様の理由により、本件特許発明1に直接的又は間接的に従属する本件特許発明2~5も、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。」(特許異議申立書第28頁ないし第29頁)
(3) 申立理由2-3及び申立理由3-3
「本件特許発明1で規定される白色顔料の含有量(「2質量%以上20質量%以下」)について、本件特許明細書の実施例で検証しているのは、「4質量%」だけである(本件特許明細書の【0183】~【0184】参照)。
即ち、本件特許発明1で規定される白色顔料の含有量(「2質量%以上20質量%以下」)のうち、実際に効果を検証しているのは、規定範囲のうち4質量%のみであり、この数値から離れる上下限に近い含有量については、何ら検証されていない。また、白色顔料の含有量が4質量%の半分に相当する2質量%の下限に近い場合には、白色顔料による効果は、当然、少ないはずであり、4質量%の5倍に相当する20質量%の上限に近い場合には、当然、技術的な弊害があると考えられる。また、白色顔料の含有量が4質量%以外の全ての範囲(即ち、下限の2質量%に近い含有量や上限の20質量%の含有量)まで同様の効果を奏するとは予測できない。また、このことは、当業者の技術常識でもない。
従って、本件特許発明1の「白色顔料の含有量」に関して、4質量%以外の現在の広い請求項1に規定される範囲まで拡張ないし一般化できるとは言えず、本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
そうすると、本件特許発明1は、「白色顔料の含有量」の点で発明の詳細な説明に記載したものではなく、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。
同様の理由により、本件特許発明1に直接的又は間接的に従属する本件特許発明2~5も、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。」(特許異議申立書第29頁ないし第30頁)
(4) 申立理由2-4及び申立理由3-4
「本件特許発明1では、フィルムの構成材料は「ポリエチレンまたはポリプロピレン」であると規定されている。
一方、本件特許発明1で規定されるフィルムの構成材料(「ポリエチレンまたはポリプロピレン」)のうち、実際に実施例で効果を検証しているのは、「ポリエチレン」のみである(本件特許明細書の【0183】~【0189】参照)。「ポリプロピレン」については、実施例で何ら効果を検証していない。「ポリエチレン」で効果が認められたからといって、「ポリプロピレン」まで同様の効果が奏されるとは限らない。また、「ポリエチレン」と「ポリプロピレン」が同様の効果を必ずしも奏さないことは、当業者の常識である。
従って、本件特許発明1のフィルムの構成材料に関して、「ポリエチレ ン」以外に「ポリプロピレン」も含む現在の広い請求項1に規定される範囲まで拡張ないし一般化できるとは言えず、本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
そうすると、本件特許発明1は、フィルムの構成材料の点で発明の詳細な説明に記載したものではなく、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。
同様の理由により、本件特許発明1に直接的又は間接的に従属する本件特許発明2~5も、サポート要件違反であるとともに実施可能要件違反である。」(特許異議申立書第30頁ないし第31頁)
4 証拠方法
・甲第1号証:特開2010-77297号公報
・甲第2号証:国際公開第2017/073751号
・甲第3号証:国際公開第2012/020833号
第5 令和6年4月1日付けで特許権者に通知した取消理由について
令和6年4月1日付けで特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。
なお、取消理由には、上記第4の特許異議申立理由のうち、申立理由1のうちの請求項1に係る部分が包含される。
●取消理由(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
以下のとおり、当審は、取消理由及び申立理由は何れもその理由がないものと判断する。
1 令和6年4月1日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由についての判断
上記第2のとおり、本件訂正により取消理由の対象であった請求項1は削除されたため、取消理由は解消したものと判断される。
2 令和6年4月1日付け取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について
(1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性について)
ア 証拠の記載事項等
(ア) 甲第1号証の記載事項等
A 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法」に関して、次の記載がある。
「【請求項1】
下記(a)~(c)の工程を含むことを特徴とする平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子及び平均粒子径0.8~10μmの微粒子とポリプロピレン系樹脂からなる空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
(a)ポリプロピレン系樹脂、平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子及び平均粒子径0.8~10μmの微粒子を混合して二軸押出機で溶融混練し、冷却固化することなく溶融状態のままで一軸押出機で更に溶融混練した後、冷却固化した微粒子マスターバッチを作製する工程、
(b)上記マスターバッチとポリプロピレン系樹脂を混合して一軸押出機でフィルム状に溶融押出しして冷却固化して未延伸フィルムを作製する工程、
(c)未延伸フィルムを少なくとも1方向に延伸する工程。
【請求項2】
微粒子マスターバッチの組成が、ポリプロピレン系樹脂40~60質量%、平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子10~50質量%、及び平均粒子径0.8~10μmの微粒子10~50質量%である請求項1に記載の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
【請求項3】
平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子が二酸化チタンである請求項1又は2に記載の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
【請求項4】
平均粒子径0.8~10μmの微粒子が炭酸カルシウムである請求項1~3いずれかに記載の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。」
「【背景技術】
【0002】
空洞を含有した白色ポリプロピレン系樹脂フィルムは、合成紙として、一般包装用、ラベル用、記録シートなどに広く用いられている。
こうした白色ポリプロピレン系樹脂フィルムは、無機粒子をポリプロピレン系樹脂に添加した原料からシートを作製して、それを一軸又は二軸に延伸することによって空洞(ボイド)を発現させる方法によって得られることが知られている。
【0003】
この方法においては、いかに無機粒子を均一にポリプロピレン系樹脂に分散した原料を得て、無機粒子の凝集物欠点の少ないフィルムを得るかが重要となる。
原料となる無機粒子を含有するポリプロピレン系樹脂を製造する方法としては、ニーディングディスクで混練させるタイプの噛合い二軸押出機を使用して、粉体を均一に分散させる方法が例示されている。(例えば、特許文献1参照)
しかし、噛合いタイプの二軸押出機の場合、生産性を上げようとして、スクリュー回転数を上げても、樹脂押出量を上げることができない。所謂、フィードネック現象が発生しやすいという問題があった。
【0004】
また、無機粒子を均一に分散させるの方法として、二軸押出機のスクリューせん断速度を規定以上にする方法が例示されている。(例えば、特許文献2参照)
しかし、この方法も単に二軸押出機のスクリューせん断速度を上げるだけの手段を紹介するにすぎず、この方法で実施した所、せん断による樹脂の発熱が発生して、溶融粘度が下がり粉体の凝集体を十分に分散することができずに、凝集物が多く、またせん断発熱による樹脂焼けの問題も発生した。
【0005】
また、非噛み合い型の異方向回転方式の二軸押出混練装置を用いて、生産性向上と混練時の発熱を抑制する方法が例示されている。(例えば、特許文献3参照)
しかし、この方法も押出機の混練ゾーンのローターの種類の組み合わせを変更し、ある一種類の紛体を熱可塑性樹脂中に、分散させる技術を示すのみであり、本発明が示すような異なる比重の複数種類の無機粒子を均一に分散させる方法を示していない。
【0006】
また、炭酸カルシウムと二酸化チタンとポリプロピレンの複合マスターバッチの使用した空洞含有ポリプロピレンフィルムを含む積層フィルムが開示されている。(例えば、特許文献4参照)
しかし、この方法でフィルムを製造した場合、無機粒子の分散が不十分である為、無機粒子の凝集物が核となる目視欠点が多く、また、押出し工程でのフィルター昇圧が激しく、フィルター交換周期が短い為、生産性が悪いという問題があった。
【特許文献1】特開平2-3407号公報
【特許文献2】特開2003-127133号公報
【特許文献3】特開2005-335240号公報
【特許文献4】特開2007-45046号公報」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、白色度と隠蔽性に優れ、凝集粒子や熱劣化物などが原因となる欠点が実質的に無い空洞含有ポリプロピレン系樹脂フィルムを提供するものである。」
「【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、本発明を完成するに到った。
即ち本発明は、以下の構成よりなる。
(1) 下記(a)~(c)の工程を含むことを特徴とする平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子及び平均粒子径0.8~10μmの微粒子とポリプロピレン系樹脂からなる空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
(a)ポリプロピレン系樹脂、平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子及び平均粒子径0.8~10μmの微粒子を混合して二軸押出機で溶融混練し、冷却固化することなく溶融状態のままで一軸押出機で更に溶融混練した後、冷却固化した微粒子マスターバッチを作製する工程、
(b)上記マスターバッチとポリプロピレン系樹脂を混合して一軸押出機でフィルム状に溶融押出しして冷却固化して未延伸フィルムを作製する工程、
(c)未延伸フィルムを少なくとも1方向に延伸する工程。
(2) 微粒子マスターバッチの組成が、ポリプロピレン系樹脂40~60質量%、平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子10~50質量%、及び平均粒子径0.8~10μmの微粒子10~50質量%である(1)に記載の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
(3) 平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子が二酸化チタンである(1)又は(2)に記載の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。
(4) 平均粒子径0.8~10μmの微粒子が炭酸カルシウムである(1)~(3)いずれかに記載の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法。」
「【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
・・・
【0013】
(平均粒子径0.1~0.5μmの微粒子)
本発明に用いられる0.1~0.5μmの微粒子は、空洞含有ポリプロピレン系フィルムの白色度と隠蔽性を高めるために配合する。
平均粒子径は、0.1μm未満であると、粒子が凝集し易くなり、フィルター昇圧による生産性の悪化や、フィルムの欠点の発生による品位低下が起こり易くなる。平均粒子径が0.5μmを超えると、隠蔽性が低くなる。
【0014】
本発明に用いられる0.1~0.5μmの微粒子としては、具体的には、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム等の微粒子を例示することができる。特に、白色度と隠蔽性が良好であることから二酸化チタンが好ましい。特に隠蔽性の点より二酸化チタンの平均粒子径が、0.2~0.4μmであることがより好ましい。
二酸化チタン粒子としては、例えばルチル型、アナターゼ型又はブルッカイト型の二酸化チタン粒子を用いることができる。
・・・
【0016】
本発明に使用される平均粒子径が0.1~0.5μmの微粒子の濃度は、空洞含有ポリプロピレン系フィルム中に5~15質量%が好ましい。平均粒子径が0.1~0.5μmの微粒子の濃度が15質量%を超えると、フィルムの機械的強度や断熱性、クッション性が悪化する。空洞が多くなり過ぎて、フィルムの引張強度や劈開強度などが低下する。また、フィルム製造時に破れ易くなり、生産性が悪くなり好ましくない。濃度が5質量%未満であると、光線を十分に遮蔽する隠蔽力が得られない。」
「【0035】
((b)未延伸フィルム作製工程)
本発明の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法においては、次に、上記方法で作製したマスターバッチとポリプロピレン系樹脂を混合して押出機へ供給してTダイ法やインフレーション法などの方法よりフィルム状に溶融押出ししてから冷却固化して未延伸フィルムを得る。
この際に別の層を共押出しすることで多層にすることで、機能を付与することもできる。例えば、空洞含有フィルム層より融点の低い共重合ポリオレフィンを共押出ししてヒートシールができる機能を持つ空洞含有白色フィルムを得られる。
空洞含有フィルム層以外の層の他の機能としては、例えば、シール性、滑り性、易接着性、帯電防止性、自己粘着性、タック性、表面平滑性、光反射性等を挙げる事ができる。
【0036】
((c)延伸工程)
本発明の空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造方法においては、次に、上記方法で作製した未延伸フィルムを少なくとも一方向に延伸する工程を含む。
得られた未延伸フィルムはそのまま或は所定の幅にスリツトしたものを流れ方向又は幅方向に一軸延伸、逐次二軸延伸、又は同時二軸延伸することにより、空洞を生成させるとともに機械的強度や耐熱性を向上することができる。
【0037】
逐次二軸延伸の場合は縦方向(フィルムの流れ方向)に延伸後に横方向(フィルムの幅方向)の延伸を行うか、又はその逆の順序で行なわれる。また同時二軸延伸は縦方向と横方向の延伸をほぼ同時進行で行う方法で、パンタグラフテンター法やリニアモーター駆動クリップを利用したテンター法やインフレーション法などが採用できる。」
「【0046】
〔実施例1〕
(二酸化チタンと重質炭酸カルシウムの混合マスターバッチ原料の製造方法)
材料として、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製FS2011DG3、MFR=2.5g/10分)40質量%、重質炭酸カルシウム(密度2.7g/cm3、平均粒子径1.7μm)48質量%、ルチル型二酸化チタン(密度4.2g/cm3、平均粒子径0.2μm)12質量%を使用した。スーパーミキサーSMG-1000(株式会社カワタ製)に250kgの上記混合原料を入れて、500rpmで3分間混合した。この混合した材料を65ΦHTM型二軸連続混練押出機(株式会社シーティーイー製)を用いて、表1の条件でマスターバッチ原料を製造した。得られたマスターバッチ原料のMFRは、2.8g/10分で、マスターバッチ原料中の各材料組成比率のバラツキは、ポリプロピレン樹脂:重質炭酸カルシウム:二酸化チタン=0.078:0.158:0.113と良好であった。
【0047】
(空洞含有ポリプロピレン系フィルムの製造)
ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製FS2011DG3、MFR=2.5g/10分)79.2質量%、上記で製造した二酸化チタンと重質炭酸カルシウムの混合マスターバッチ原料20.8質量%を混合後、250℃の樹脂温度でTダイにて溶融押出し、50℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.0倍の延伸を行った上で、フィルムワインダーにより巻き取ってフィルムを得た。最終的なフィルム厚みは、25μmである。
本フィルムは、隠蔽性(全光線透過率が低い方が隠蔽性が良好)、凝集異物の欠点は良好であり、特性値を表2に示す。
(凝集異物検査用サンプルの製造)
このサンプルの目視欠点の検査を行なった所、0個/m2と極めて良好であった。」
「【表1】
[図:0001419342000001.jpg]
【表2】
[図:0001419342000002.jpg]
」
B 甲第1号証に記載された発明
上記Aの記載、特に実施例1の記載を中心に整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「材料として、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製FS2011DG3、MFR=2.5g/10分)40質量%、重質炭酸カルシウム(密度2.7g/cm3、平均粒子径1.7μm)48質量%、ルチル型二酸化チタン(密度4.2g/cm3、平均粒子径0.2μm)12質量%を使用し、スーパーミキサーSMG-1000(株式会社カワタ製)に250kgの上記混合原料を入れて、500rpmで3分間混合し、この混合した材料を65ΦHTM型二軸連続混練押出機(株式会社シーティーイー製)を用いて、マスターバッチ原料を製造し、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製FS2011DG3、MFR=2.5g/10分)79.2質量%、上記で製造した二酸化チタンと重質炭酸カルシウムの混合マスターバッチ原料20.8質量%を混合後、250℃の樹脂温度でTダイにて溶融押出し、50℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得、引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.0倍の延伸を行った上で、フィルムワインダーにより巻き取って得られた、厚み25μmのフィルム。」(以下、「甲1発明」という。)
(イ) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「ポリエチレンフィルム、積層体およびこれらを用いた包装体」に関し、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、ポリエチレンフィルムに関し、より詳細には、表裏で物性が異なる単層のポリエチレンフィルム、およびそれを用いた包装体に関する。
また、本発明は、積層体に関し、より詳細には、両面が電子線照射されたポリエチレンフィルム基材と、少なくとも片面が電子線照射されていないポリエチレンフィルム層と、を備える積層体およびそれを用いた包装体に関する。」
「[0006] 本発明者らは今般、ポリエチレンフィルムに電子線を照射することによって、電子線が照射されたフィルム表面近傍のポリエチレンを硬化ないし架橋することができることがわかった。
また、電子線を照射したポリエチレンフィルムを用いることにより、従来包装体に使用されていた異種の樹脂フィルムを貼り合わせた積層体に代えて、ポリエチレンフィルムのみによって、高い耐熱性および強度を有すると共に、リサイクルに適した包装体を得ることができるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
[0007] したがって、本発明の目的は、包装体に使用されていた従来の積層フィルムに代えて、単層のポリエチレンフィルムのみによって包装体を作製できるポリエチレンフィルムおよびポリエチレンフィルム基材を備える積層体を提供することである。また、本発明の別の目的は、そのようなポリエチレンフィルムおよび積層体を使用した包装体を提供することである。」
「[0034] また、本発明においては、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたポリエチレンを用いてもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンはカーボニュートラルな材料であるため、より一層、環境負荷の少ない包装体とすることができる。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されているような方法にて製造することができる。また、市販されているバイオマス由来のポリエチレン樹脂(例えば。ブラスケム社から市販されているグリーンPE等)を使用してもよい。」
(ウ) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「gntRを破壊することによって生産性が向上したイソプロピルアルコール生産細菌」に関し、次の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、イソプロピルアルコール生産細菌及びこれを用いたイソプロピルアルコール生産方法に関する。」
「背景技術
[0002] プロピレンは、ポリプロピレンなどの合成樹脂や石油化学製品の重要な基礎原料であり、自動車用バンパーや食品容器、フィルム、医療機器などに幅広く使われている。
植物由来原料から製造されたイソプロピルアルコールは、脱水工程を経てプロピレンに変換できることから、カーボンニュートラルなプロピレンの原料として有望である。またアセトンも溶剤、プラスチックの原料として幅広く使われている。京都議定書によって2008年から2012年の間に先進国全体で二酸化炭素排出量を1990年比で5%削減することが義務付けられている現在、カーボンニュートラルなプロピレンはその汎用性から地球環境上極めて重要である。」
「発明が解決しようとする課題
[0015] しかしながら、イソプロピルアルコールを生産可能な上記大腸菌のいずれも、充分な生産能力を有しているとは言い難く、イソプロピルアルコール生産大腸菌においてイソプロピルアルコールの生産性を向上させることは、解決すべき大きな課題であった。また、得られたイソプロピルアルコールを効果的に利用する方法を提供することも求められていた。
本発明は、イソプロピルアルコールの生産性を大幅に向上させた大腸菌、該大腸菌を用いたイソプロピルアルコール生産方法及びアセトン生産方法、更には該大腸菌を用いて得られたアセトンを含有するイソプロピルアルコールから、プロピレンを生産する方法を提供することを目的とする。」
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリプロピレン樹脂」を用いて得られる「フィルム」は、本件特許発明2の「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルム」との特定事項のうち、「ポリプロピレンから構成されるフィルム」の限りにおいて一致する。
また、甲1発明のフィルムは、材料を混合後、「250℃の樹脂温度でTダイにて溶融押出し、50℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得、引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.0倍の延伸を行った上で、フィルムワインダーにより巻き取って得られた」もの、すなわち、「延伸処理」を施したものであるから、本件特許発明2の「延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており」との特定事項を満たす。
さらに、甲1発明のフィルムには、マスターバッチ由来の「ルチル型二酸化チタン」が含まれるものであるところ、「ルチル型二酸化チタン」は「白色度と隠蔽性に良好な微粒子である」(【0014】)との記載から見て、本件特許発明2の「白色顔料」に相当するものである。また、フィルムにおける「ルチル型二酸化チタン」の割合は、フィルム原料におけるマスターバッチの割合(20.8%)×マスターバッチにおけるルチル型二酸化チタンの割合(12%)から、概ね2.5%と算出されるから、甲1発明における「ルチル型二酸化チタン」の含有量は、本件特許発明2の「白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、」との特定事項を満たす。
そして、甲1発明のフィルムの厚みは「25μm」であるから、本件特許発明2の「前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下であり」との特定事項を満たす。
してみると、本件特許発明2と甲1発明との間の一致点・相違点は次のとおりである。
(一致点)
「ポリプロピレンから構成されるフィルムであって、
前記フィルムは、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、
前記フィルムは、白色顔料を含み、前記白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、
前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下である、フィルム。」
(相違点)
・相違点1-1
本件特許発明2は「フィルムにより構成される包装袋」と特定するのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-2
フィルムの材質に関し、本件特許発明2は「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成される」と特定するのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-3
フィルムに関して、本件特許発明2は「前記フィルムは、その一方の面にのみ電子線照射処理が施され、電子線非照射面が内側となるように配置されている」と特定するのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
甲1発明のフィルムは、材料を混合後、「250℃の樹脂温度でTダイにて溶融押出し、50℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得、引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.0倍の延伸を行った上で、フィルムワインダーにより巻き取って得られた」もの、すなわち、「延伸処理」を施したものであるものの、特定の面に電子線照射をするものではない。
そして、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1発明において、電子線照射を行うにあたり、包装袋の内側となる面を電子線非照射面とする動機付けもない。
よって、甲1発明において、相違点1-3に係る本件特許発明2の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリプロピレン樹脂」を用いて得られる「フィルム」は、本件特許発明3の「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成されるフィルム」との特定事項のうち、「ポリプロピレンから構成されるフィルム」の限りにおいて一致する。
また、甲1発明のフィルムは、材料を混合後、「250℃の樹脂温度でTダイにて溶融押出し、50℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得、引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.0倍の延伸を行った上で、フィルムワインダーにより巻き取って得られた」もの、すなわち、「延伸処理」を施したものであるから、本件特許発明3の「延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており」との特定事項を満たす。
さらに、甲1発明のフィルムには、マスターバッチ由来の「ルチル型二酸化チタン」が含まれるものであるところ、「ルチル型二酸化チタン」は「白色度と隠蔽性に良好な微粒子である」(【0014】)との記載から見て、本件特許発明3の「白色顔料」に相当するものである。また、フィルムにおける「ルチル型二酸化チタン」の割合は、フィルム原料におけるマスターバッチの割合(20.8%)×マスターバッチにおけるルチル型二酸化チタンの割合(12%)から、概ね2.5%と算出されるから、甲1発明における「ルチル型二酸化チタン」の含有量は、本件特許発明3の「白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、」との特定事項を満たす。
そして、甲1発明のフィルムの厚みは「25μm」であるから、本件特許発明3の「前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下であり」との特定事項を満たす。
してみると、本件特許発明3と甲1発明との間の一致点・相違点は次のとおりである。
(一致点)
「ポリプロピレンから構成されるフィルムであって、
前記フィルムは、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、
前記フィルムは、白色顔料を含み、前記白色顔料の含有量が2質量%以上20質量%以下であり、
前記フィルムの厚さは10μm以上50μm以下である、フィルム。」
(相違点)
・相違点1-4
本件特許発明3は「フィルムと、シーラント層とを備える積層体」と特定するのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-5
フィルムの材質に関し、本件特許発明3は「バイオマス由来のポリエチレンを含むポリエチレン、またはバイオマス由来のポリプロピレンを含むポリプロピレンから構成される」と特定するのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-6
シーラント層に関して、本件特許発明3は「前記シーラント層は、前記フィルムと同一の材料により構成され、前記同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンである」と特定するのに対して、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1-6について検討する。
甲第1号証には「別の層を共押出しすることで多層にすることで、機能を付与することもできる。例えば、空洞含有フィルム層より融点の低い共重合ポリオレフィンを共押出ししてヒートシールができる機能を持つ空洞含有白色フィルムを得られる」(【0035】)との記載があることから、甲1発明においてヒートシール層を設ける動機付けはあるといえるものの、その際には「空洞含有フィルム層より融点の低い共重合ポリオレフィン」を用いることからみて、「同一の材料」を採用する動機付けはないものといわざるを得ない。
また、甲第1号証の他の記載及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1発明において、「前記シーラント層は、前記フィルムと同一の材料により構成され、前記同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンである」ものとする動機付けがあるとまではいえない。
よって、甲1発明において、相違点1-6に係る本件特許発明3の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になしたこととはいえない。
なお、この点に関して、特許異議申立人は令和6年7月3日提出の意見書において、「フィルムの材料とシーラント層の材料を同一のものとすることは、近年の環境問題に配慮して積層体のリサイクル性を向上させたい当業者にとって適宜設定事項にすぎない」(第4頁)旨主張するが、甲第1号証の【0035】の記載も参酌するならば、「同一の材料」を採用するものではないと考えられるから、特許異議申立人の当該主張は採用できない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1発明に基いて当業者が様に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件特許発明4及び5について
本件特許発明4及び5は、本件特許発明3の発明特定事項の全てを含みさらに限定するものである。
そして、上記(イ)のとおり、本件特許発明3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明4及び5もまた、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1の理由では、本件特許発明2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 申立理由2(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
本件特許発明2ないし5は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすと言うことができる。
イ 実施可能要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、フィルム、該フィルムから構成される包装袋、該フィルムを備える積層体及び該積層体から構成される包装袋に関する」(【0001】)ものであって、「その解決しようとする課題は、十分な強度および耐熱性を有するフィルムであって、リサイクル性および内容物隠蔽性にも優れる包装袋などの作製を可能とする、フィルムを提供すること」(【0010】)であるとの記載がある。
そして、「本発明のフィルムは、ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成され、バイオマス由来のポリエチレンまたはバイオマス由来のポリプロピレンと、白色顔料とを含み、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されていることを特徴とする。
該延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方の処理を施すことにより、その耐熱性および強度を著しく向上させることができ、包装袋などを構成する材料として好適に使用することができる。
また、本発明のフィルムが、バイオマス由来のポリエチレンまたはバイオマス由来のポリプロピレンを含むことにより、このフィルムを用いて作製される包装袋の環境負荷を低減することができる」(【0020】)ことの記載、ポリエチレン及びポリプロピレン(いずれもバイオマス由来のものについての言及もあり)に関する記載(【0021】ないし【0043】)、白色顔料についての記載(【0044】ないし【0046】)、フィルムの多層構造に関する記載(【0048】ないし【0051】)、延伸処理に関する記載(【0052】)、電子線照射に関する記載(【0053】ないし【0061】)、フィルムの厚さに関する記載(【0064】)、包装袋に関する記載(【0095】ないし【0103】及び【0176】ないし【0181】)、積層体及びシーラント層に関する記載(【0104】ないし【0117】)があり、具体的な実施例の記載もある。
してみれば、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明2ないし5を実施できる程度に記載されているものと認識できる。
よって、本件特許発明2ないし5に関して、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合する。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第4 2の主張をするが、いずれも本件特許発明2ないし5を実施し得ないとする具体的な証拠を挙げるものではなく、各主張はいずれも、上記イの判断に影響するものではない。
また、特許異議申立人は、令和6年7月3日提出の意見書において、白色顔料を含むインキにより形成された層に関して新たな主張をするが、当該主張は訂正により新たに生じたものではなく、当初より主張可能なものであったから、時期に失したものであり採用できないし、さらに進んで検討しても、上記イの判断に何ら影響するものでもない。
エ 申立理由2についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、申立理由2の理由では、本件特許発明2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 申立理由3(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 特許請求の範囲の記載
上記第3のとおりである。
ウ サポート要件についての判断
本件特許の発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「十分な強度および耐熱性を有するフィルムであって、リサイクル性および内容物隠蔽性にも優れる包装袋などの作製を可能とする、フィルムを提供すること」(【0010】)、「該フィルムにより構成される包装袋、該フィルムを備える積層体、及びこの積層体により構成される包装袋を提供すること」(【0011】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明者らは、ポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムに対し、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方を施すことにより、その強度および耐熱性を著しく改善することができ、包装袋などの作製に使用される積層体が備える基材としての使用が可能となるとの知見を得た。
そして、基材と同様に、シーラント層をポリオレフィンから構成することにより、積層体のリサイクル性を顕著に高めることができるとの知見を得た。
また、本発明者らは、ポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムの一方の面に電子線を照射することによって、電子線が照射されたフィルム表面近傍のポリエチレンまたはポリプロピレンを硬化ないし架橋することができ、その結果、表裏で異なる物性を有するフィルムが実現できることがわかった。さらに、このような表裏で物性が異なるフィルムを使用すれば、従来包装体に使用されていた積層体に代えて、フィルムのみによって包装袋を作製できるとの知見を得た。
さらに、本発明者らは、ポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムに白色顔料を含有させることにより、層間のラミネート強度および包装袋の手切れ性を低下させることなく、内容物を効果的に隠蔽することができるとの知見を得た」(【0007】ないし【0009】)こと、「本発明のフィルムは、ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成され、白色顔料を含み、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、バイオマス由来のポリエチレンまたはバイオマス由来のポリプロピレンを含む」(【0012】)こと、「本発明の包装袋は、上記フィルムにより構成され、該フィルムは、その一方の面にのみ電子線照射処理が施され、電子線非照射面が内側となるように配置されている」(【0014】)こと、「本発明の積層体は、上記フィルムと、シーラント層とを備え、シーラント層は、フィルムと同一の材料により構成され、同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであること」(【0015】)、「該延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方の処理を施すことにより、その耐熱性および強度を著しく向上させることができ、包装袋などを構成する材料として好適に使用することができる」(【0020】)こと、「本発明のフィルムが、バイオマス由来のポリエチレンまたはバイオマス由来のポリプロピレンを含むことにより、このフィルムを用いて作製される包装袋の環境負荷を低減することができる」(【0020】)こと、「本発明のフィルムは、白色顔料を含む。これにより、フィルム上に画像を形成した場合における、該画像の視認性を向上することができる。また、本発明のフィルムを用いて作製される包装袋に充填される内容物を隠蔽することができる。また、フィルムの遮光性を向上することができる」(【0044】)ことがそれぞれ記載され、さらに、具体的な実施例を通じた効果の検証もある。
これらの記載に接した当業者であれば、「ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成され、白色顔料を含み、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、バイオマス由来のポリエチレンまたはバイオマス由来のポリプロピレンを含む」ものであって、「一方の面にのみ電子線照射処理が施され、電子線非照射面が内側となるように配置されている」フィルムにより構成されたとの特定事項を満たす包装袋であれば、上記の発明の課題を解決できると認識できるし、また、「ポリエチレンまたはポリプロピレンから構成され、白色顔料を含み、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、バイオマス由来のポリエチレンまたはバイオマス由来のポリプロピレンを含む」フィルムを用いた積層体であって、「フィルムと、シーラント層とを備え、シーラント層は、フィルムと同一の材料により構成され、同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンである」との特定事項を満たす積層体であれば、上記の発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明2及び3ないし5はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有しさらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明2ないし5はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第4 3の主張をするが、いずれも本件特許発明2ないし5において、発明の課題を解決し得ないものとする具体的な証拠を挙げるものではなく、上記ウの判断に影響するものではない。
また、特許異議申立人は、令和6年7月3日提出の意見書において、白色顔料を含むインキにより形成された層に関して新たな主張をするが、当該主張は訂正により新たに生じたものではなく、当初より主張可能なものであったから、時期に失したものであり採用できないし、さらに進んで検討しても、上記ウの判断に何ら影響するものでもない。
オ 申立理由3についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由3の理由では、本件特許発明2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700016