特許異議申立
2022-700474
膜密度が向上したレジスト下層膜を形成するための組成物
- 審判番号
- 2022-700474
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-514629
- 登録番号
- 6974799
- 請求日
- 2022年06月01日
- 審決日
- 2023年03月31日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日産化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
- 【異議申立人】村野 親
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 石附 直弥
- 審判官 里村 利光
- 分類
- P1651.113-YAA(G03F) / P1651.121-YAA(G03F) / P1651.536-YAA(G03F) / P1651.537-YAA(G03F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第113条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6974799号発明「膜密度が向上したレジスト下層膜を形成するための組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6974799号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9]について訂正することを認める。
特許第6974799号の請求項1、4~9に係る特許を維持する。
特許第6974799号の請求項2~3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6974799号(請求項の数9。以下「本件特許」という。)についての出願(特願2018-514629号)は、2017年(平成29年)4月25日(先の出願に基づく優先権主張 2016年4月28日)を国際出願日とする出願であって、令和3年11月9日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月1日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和4年6月1日に、特許異議申立人 村野 親(以下「特許異議申立人」という。)から、本件特許の全請求項に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた(異議2022-700474号、以下「本件事件」という。)。
本件事件についての、その後の手続等の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 9月22日付け: 取消理由通知書
令和4年11月25日 : 訂正請求書の提出
令和4年11月25日 : 意見書(特許権者)の提出
令和4年12月19日付け: 手続補正指令書(方式)
令和5年 1月17日 : 手続補正書(特許権者)の提出
令和5年 2月22日 : 意見書(特許異議申立人)の提出
第2 本件訂正請求について
令和4年11月25日に提出された訂正請求書であって、令和5年1月17日に提出された手続補正書で補正された当該訂正請求書でなされた訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6974799号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至請求項9について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、本件訂正は、一群の請求項である、請求項1~9についてなされたものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、
「下記式(1):
【化1】
[図:0001400444000001.jpg]
(式(1)において、基A及び基Bはそれぞれ独立して、芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基であって、メチル基、スルフィド基、又はその組み合わせである化学基(a)、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、エーテル基、又はその組み合わせである化学基(b)、及びフルオロアルキル基である化学基(c)からなる群より選ばれた同種又は異種の2つ以上の1価又は2価の化学基が、該基Aもしくは基B又はその両方の基中の、芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環上の炭素原子に結合する水素原子と、それぞれ置換した構造を有する有機基であり、前記化学基が2価の場合、前記環同士は該化学基を介して結合もしくは該化学基とともに縮合していてもよい。)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂を含み、
前記2つ以上の1価又は2価の化学基のうち、少なくとも1つが化学基(b)から選ばれ、
400℃で焼成したレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターンが43.9nm以下である、
レジスト下層膜形成組成物
(ただし、上記ノボラック樹脂は下記の式で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂を除く。)。
【化2】
[図:0001400444000002.jpg]
」と記載されているのを、
「下記式(1):
【化1】
[図:0001400444000003.jpg]
(式(1)において、基Aは、カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基であり、基Bは、ベンゼン、又はナフタレンを有する有機基であって、メチル基、スルフィド基、又はその組み合わせである化学基(a)、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、エーテル基、又はその組み合わせである化学基(b)、及びフルオロアルキル基である化学基(c)からなる群より選ばれた同種又は異種の2つ以上の1価又は2価の化学基が、該基Aもしくは基B又はその両方の基中の、芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環上の炭素原子に結合する水素原子と、それぞれ置換した構造を有する有機基であり、前記化学基が2価の場合、前記環同士は該化学基を介して結合もしくは該化学基とともに縮合していてもよい。)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂であって、
前記ノボラック樹脂が、化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造を有するノボラック樹脂を含み、
前記2つ以上の1価又は2価の化学基のうち、少なくとも1つが化学基(b)から選ばれ、
400℃で焼成した、半導体基板上のレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターンが43.5nm以上43.9nm以下である、
レジスト下層膜形成組成物
(ただし、上記ノボラック樹脂は下記の式で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂を除く。)。
【化2】
[図:0001400444000004.jpg]
」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4乃至請求項9も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に記載された「請求項3」を、「請求項1」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に記載された「請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載」を、「請求項1又は請求項4に記載」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に記載された「請求項1乃至請求項5」を、「請求項1、請求項4及び請求項5」と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に記載された「請求項1乃至請求項6」を、「請求項1、請求項4乃至請求項6」と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に記載された「請求項1乃至請求項6」を、「請求項1、請求項4乃至請求項6」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に記載された「請求項1乃至請求項6」を、「請求項1、請求項4乃至請求項6」と訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0034】に記載された
「【化3】
[図:0001400444000005.jpg]
」を、
「【化3】
[図:0001400444000006.jpg]
」と訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0081】を削除する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0102】に記載された「実施例4乃至21」を、「実施例4乃至7、実施例9乃至21」と訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の段落【0104】に記載された
「【表1】
[図:0001400444000007.jpg]
」を、
「【表1】
[図:0001400444000008.jpg]
」と訂正する。
(14)訂正事項14
明細書の段落【0107】に記載された「実施例4乃至21」を、「実施例4乃至7、実施例9乃至21」と訂正する。
(15)訂正事項15
明細書の段落【0108】に記載された
「【表4】
[図:0001400444000009.jpg]
」を、
「【表4】
[図:0001400444000010.jpg]
」と訂正する。
(16)訂正事項16
明細書の段落【0110】に記載された「実施例4乃至21」を、「実施例4乃至7、実施例9乃至21」と訂正する。
(17)訂正事項17
明細書の段落【0111】に記載された
「【表6】
[図:0001400444000011.jpg]
」を、
「【表6】
[図:0001400444000012.jpg]
」と訂正する。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
(ア)基A及び基B
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「基A及び基Bはそれぞれ独立して、芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基」という発明特定事項について、基Aを「カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基」に減縮し、基Bを「ベンゼン、又はナフタレンを有する有機基」に減縮するものである。
よって、訂正事項1による上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)化学基(a)、(b)及び(c)
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「下記式(1):・・・中略・・・で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂」という発明特定事項について、「下記式(1):・・・中略・・・で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂であって、前記ノボラック樹脂が、化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造を有するノボラック樹脂」に減縮するものである。
よって、訂正事項1による上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
(ウ)パターンの対象
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「400℃で焼成したレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターン」という発明特定事項について、「400℃で焼成した、半導体基板上のレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターン」に訂正するものである。
すなわち、訂正事項1は、取消理由通知書において、「パターンの対象が不明である」とされたことに対し、「wigglingが発生する最小パターン」の対象が「半導体基板上のレジスト下層膜」であることを明確にするものである。
よって、訂正事項1による上記訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
(エ)最小パターンの下限値
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「wigglingが発生する最小パターンが43.9nm以下」という発明特定事項について、「wigglingが発生する最小パターン」の下限値を「43.5nm以上」に減縮するものである。
よって、訂正事項1による上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
(オ)小括
したがって、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項
(ア)基A及び基B
基A及び基Bに関する訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0020】の記載に基づくものである。
(イ)化学基(a)、(b)及び(c)
化学基(a)、(b)及び(c)に関する訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0010】の記載に基づくものである。
(ウ)パターンの対象
「wigglingが発生する最小パターン」の対象が「半導体基板上のレジスト下層膜」であることに関する訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0017】及び【0113】の記載に基づくものである。
(エ)最小パターンの下限値
「wigglingが発生する最小パターン」の下限値を「43.5nm以上」とすることに関する訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0114】の【表8】(特に、実施例4)記載に基づくものである。
(オ)小括
したがって、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ 拡張又は変更
上記アに照らせば、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(2)訂正事項2~3について
訂正事項2~3による訂正は、請求項2~3を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、これらの訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。
(3)訂正事項4~9について
訂正事項4~9による訂正は、請求項の削除に伴い、引用する請求項から削除された請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、これらの訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。
(4)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項10は、明細書の段落【0034】中の式(1-8)で表される単位構造を削除するものである。
すなわち、訂正事項10は、取消理由通知書において、上記式(1-8)が「-O-CH2CH2-OH」を有することを根拠に、「本件請求項1の「エーテル基」が、「-O-」と理解するのか、それとも、「-O-CH2CH2-」(アルキレンオキシ基と呼ぶのが技術常識である。)や「-O-CH2CH3」(アルコキシ甚と呼ぶのが技術常識である。)等を含むと理解するのか不明である」とされたことに対し、上記式(1-8)を削除することで、請求項1の「エーテル基」は「-O-」であることを明確にするものである。
したがって、訂正事項10による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項
訂正事項10は、式(1-8)で表される単位構造を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであることは明らかである。
ウ 拡張又は変更
上記アに照らせば、訂正事項10による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(5)訂正事項11~17について
訂正事項11~17による訂正は、上記訂正事項10による式(1-8)で表される構造単位の削除に伴い、当該式(1-8)のポリマーを合成した合成例8及び当該合成例8を用いた実施例8に関する記載を削除するものであるから、上記訂正事項10と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
また、これらの訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。
(6)小括
訂正事項1~17による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、かつ、同法同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなったことから、本件特許の請求項1及び4~9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明4」~「本件特許発明9」という。また、請求項1及び4~9に係る発明を、「本件特許発明」と総称する。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び4~9に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[図:0001400444000013.jpg]
(式(1)において、基Aは、カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基であり、基Bは、ベンゼン、又はナフタレンを有する有機基であって、メチル基、スルフィド基、又はその組み合わせである化学基(a)、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、エーテル基、又はその組み合わせである化学基(b)、及びフルオロアルキル基である化学基(c)からなる群より選ばれた同種又は異種の2つ以上の1価又は2価の化学基が、該基Aもしくは基B又はその両方の基中の、芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環上の炭素原子に結合する水素原子と、それぞれ置換した構造を有する有機基であり、前記化学基が2価の場合、前記環同士は該化学基を介して結合もしくは該化学基とともに縮合していてもよい。)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂であって、
前記ノボラック樹脂が、化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造を有するノボラック樹脂を含み、
前記2つ以上の1価又は2価の化学基のうち、少なくとも1つが化学基(b)から選ばれ、
400℃で焼成した、半導体基板上のレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターンが43.5nm以上43.9nm以下である、
レジスト下層膜形成組成物
(ただし、上記ノボラック樹脂は下記の式で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂を除く。)。
【化2】
[図:0001400444000014.jpg]
」
「【請求項4】
式(1)で表されるノボラック樹脂は、化学基(b)から選ばれた同種又は異種の2つの化学基、又は化学基(a)と化学基(b)からそれぞれ選ばれた2種類の化学基が、基A及び基Bの両方の基中の芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環上の炭素原子に結合する水素原子とそれぞれ置換して、単位構造中に2種類の化学基が導入された構造を有するものである請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
更に架橋剤を含む請求項1又は請求項4に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
更に酸及び/又は酸発生剤を含む請求項1、請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
請求項1、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによって得られるレジスト下層膜の製造方法。
【請求項8】
半導体基板上に請求項1、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、その上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及びパターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板上に請求項1、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、その上にハードマスクを形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、形成されたレジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。」
第4 取消しの理由及び証拠
1 取消しの理由
特許権者に対して、当合議体が令和4年9月22日付け取消理由通知書により通知した取消しの理由の概要は、下記のとおりである。
理由1:(明確性要件、サポート要件、実施可能要件)
本件特許は、特許を受けようとする発明が、明確であるということができないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
また、本件特許は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
加えて、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
したがって、本件特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2:(新規性)本件特許の請求項1~7に係る発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前(以下「先の出願前」という。)に、日本国内又は外国において、頒布された下記刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、また、(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法29条の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠
甲1:国際公開第2014/030579号
甲3:特開2012-145897号公報
甲6:J. Kim, et al., "Sub-0.1 μm nitride hard mask open process without precuring the ArF photoresist", Journal of Vacuum Science & Technology B: Microelectronics and Nanometer Structures Processing, Measurement, and Phenomena, 2003, Vol. 21, No. 2, p.790-794, 2003.3.12.
甲8:G. Wakamatsu, et al., "Investigation of pattern wiggling for spin-on organic hardmask materials", Proceedings of SPIE, Advances in Resist Materials and Processing Technology XXIX, 2012, Vol. 8325, p. 83250T-1-83250T-9, 2012.3.20.
(当合議体注:甲1は主引用例であるとともに、周知技術を示す文献でもある。甲3は、主引用例である。甲6は、副引用例であるとともに、技術常識を示す文献でもある。甲8は、技術常識を示す文献である。)
なお、特許権者は、令和4年11月25日提出の意見書に添付して、以下の証拠書証の申出をしている。
乙1:特開2008-203625号公報
乙2:特表2014-530386号公報
第5 取消しの理由についての当合議体の判断(明確性、実施可能要件、サポート要件)
1 (明確性)wiggling
本件訂正請求により、「wiggling」に関して、本件請求項1の記載は、「400℃で焼成した、半導体基板上のレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターンが43.5nm以上43.9nm以下である」と訂正された。
(1)対象
本件訂正請求により、本件請求項1の「wigglingが発生する最小パターン」の対象が「半導体基板上のレジスト下層膜」のパターン幅であることが明確になった。
したがって、本件特許発明1は明確である。
本件特許発明4~9も同様である。
(2)形成条件
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断するのが相当である。
これを、本件請求項1の「wigglingが発生する最小パターン」の形成条件において検討するに、当該「wigglingが発生する最小パターン」は、エッチングガスの種類、エッチングガスのエネルギー、エッチング時間、エッチング温度、圧カ、隣接する層に用いられる材料、等によっても大きく変化するものであることが技術上の常識である(例えば、甲6のI. INTRODUCTIONの第1段落と第2段落、C. Methodologies for preventing striation and wigglingの第1段落、第2段落、第4段落と、甲8の第2頁第12行~第3頁第3行などを参照。)。
一方、「wigglingが発生する最小パターン」を測定する際に、測定条件の設定の仕方が適切でない場合に、同じ「レジスト下層膜形成用組成物」を用いて測定した「wigglingが発生する最小パターン」が変動することがあり得るとすれば、同じ「レジスト下層膜形成用組成物」を測定しても、測定結果である「wigglingが発生する最小パターン」が「43.5nm以上43.9nm以下」の範囲に入ったり入らなかったりすることがあり得ることとなる。しかし、本件訂正請求が認められた結果、本件特許発明1では式(1)において、基Aはカルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基であり、基Bはベンゼン、又はナフタレンを有する有機基であって、また、ノボラック樹脂は、化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造を有するノボラック樹脂であることが特定され、本件特許発明1に係るレジスト下層膜形成組成物は相当程度特定された化学構造を有するものである。とすると、当業者であれば、「wigglingが発生する最小パターン」の測定に係るパターンの形成方法として当該相当程度特定された化学構造を有する組成物に適切な測定条件を自ずと選択するものであって、「wigglingが発生する最小パターン」の測定結果に著しい変動が生じないような測定条件を設定することになると解されるので、本件特許発明1が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。
したがって、本件特許発明1は明確である。
本件特許発明4~9も同様である。
2 (明確性)エーテル基
本件請求項1の「エーテル基」は、エーテル構造である「-O-」と解することが、技術常識に基づく解釈である(例えば、大辞泉 増補・新装版、第609頁「官能基」、1998年12月1日第1版<増補・新装版>第2刷発行、を参照。)。
そして、本件訂正請求により、本件明細書の発明の詳細な説明の【0033】~【0034】から、「式(1)の単位構造」の例示として、「基B」の「芳香族環」の置換基が「-O-CH2CH2-OH」である「式(1-8)」が削除された。そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、「-O-CH2CH2-」が「エーテル基」に該当すると解釈され得るといった、上記技術常識と矛盾した記載はもはや存在しない。
そうしてみると、本件請求項1に係る認定の際に、本件請求項1の「エーテル基」が「-O-」であると理解することが明確である。
したがって、本件特許発明1は明確である。
本件特許発明4~9も同様である。
3 (実施可能要件)wiggling
本件特許発明1は、「wigglingが発生する最小パターン」の上限値が「43.9nm以下」と規定されているとともに、本件訂正請求において、その下限値が「43.5nm以上」と規定された。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明において、当該最小パターンは、実施例4として「43.5nm」、実施例9として「43.9nm」を実施できることが具体的に記載されている。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができる。
本件特許発明4~9についても同様である。
4 (サポート要件)wiggling
本件特許発明1は、「wigglingが発生する最小パターン」の上限値が「43.9nm以下」と規定されているとともに、本件訂正請求において、その下限値が「43.5nm以上」と規定された。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明において、当該最小パターンは、実施例4として「43.5nm」、実施例9として「43.9nm」を実施できることが具体的に記載されている。
このため、出願時の技術常識に照らし、本件特許発明1の範囲まで発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化することができる。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。
本件特許発明4~9についても同様である。
5 (サポート要件)同種の2つ以上の化学基
本件請求項1には、「式(1)において、・・・中略・・・メチル基、スルフィド基、又はその組み合わせである化学基(a)、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、エーテル基、又はその組み合わせである化学基(b)、及びフルオロアルキル基である化学基(c)からなる群より選ばれた同種又は異種の2つ以上の1価又は2価の化学基が、該基Aもしくは基B又はその両方の基中の、芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環上の炭素原子に結合する水素原子と、それぞれ置換した構造を有する有機基であり」と記載されている。
また、本件訂正請求により、本件請求項1に、「化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造」との発明特定事項が追加された。
ここで、発明の詳細な説明の【0019】には、「式(1)において、・・・中略・・・酸化により質量増を生じる化学基(a)、加熱により架橋形成を生じる化学基(b)、及び硬化中に相分離を誘発する化学基(c)からなる群より選ばれた2種類以上の1価又は2価の化学基が、・・・中略・・・それぞれ置換した構造を有する有機基である。」と記載されており、当該「化学基」としては、「2種類以上」と記載されている。
そして、発明の詳細な説明の【0033】~【0037】には、「式(1)の単位構造」である、式(1-1)、式(1-4)~式(1-7)及び式(1-9)~式(1-21)が例示されているが、ここに記載されているのは、すべて、当該「化学基」が「2種類以上」のものである。加えて、発明の詳細な説明の実施例には、当該式(1-1)~式(1-4)、式(1-7)及び式(1-9)~式(1-21)に相当するポリマーを用いた実施例1、4~7及び9~21が記載されている。
一方、発明の詳細な説明の実施例には、当該「化学基」が3つの「ヒドロキシ基」のみであるポリマーを用いた比較例3と6も記載されている。
そうしてみると、本件明細書の【0019】、【0033】~【0037】、実施例1、4~7及び9~21、比較例3と6とに照らし、式(1)において、当該「化学基」が「2種類以上」である場合が、発明の課題を解決する手段といえる。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決する手段が反映されたものであるので、発明の詳細な説明に記載したものである。
本件特許発明4~9も同様である。
第6 取消しの理由についての当合議体の判断(新規性・進歩性)
1 引用発明について
(1)甲1の実施例4に基づく発明
甲1の実施例4に記載された「レジスト下層膜形成組成物」であって、同[0061]から、「400℃2分間焼成」した「レジスト下層膜」の「パターンの曲がり(wiggling)が発生し始める限界加工線幅」が「43.78nm」であると理解される「レジスト下層膜形成組成物」を、「甲1実施例4発明」という。
(2)甲1の[0027]等に基づく発明
甲1の請求項2及び6を直列的に引用する請求項7に記載された、「フェノールノボラック樹脂」を含む「レジスト下層膜形成組成物」であって、当該「フェノールノボラック樹脂」が、同[0027]の「式(8-1)」~「(8-19)」で表される単位構造を有する「レジスト下層膜形成組成物」を、それぞれ、「甲1式8-1発明」~「甲1式8-19発明」という。
(3)甲3に基づく発明
甲3の実施例に記載された、「SOL-1」~「SOL-12」から理解される「レジスト下層膜形成用溶液」を、それぞれ、「甲3SOL1発明」~「甲3SOL12発明」という。
2 甲1の実施例4に基づく発明を主引用発明とした場合
(1)対比
本件特許発明1と甲1実施例4発明を対比する。
ア ノボラック樹脂
甲1実施例4発明に含まれる「式(8-5)のポリマー」は、ヒドロキシ基を4つ含むため、本件特許発明1の「式(1)」において、「ヒドロキシ基」「である化学基(b)」「より選ばれた同種」「の2つ以上の1価」「の化学基が、該基A」「の基中の、芳香族環」「の炭素原子に結合する水素原子と、それぞれ置換した構造を有する有機基」である、「繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂」に相当する。
一方、当該「式(8-5)のポリマー」の「基A」は、芳香族環を有するものの、窒素原子を有しないため、本件特許発明1の「カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基」という構成要件を満足しない。
また、当該「式(8-5)のポリマー」の「基B」は、ピレンを有する有機基であるものの、本件特許発明1の「ベンゼン、又はナフタレンを有する有機基」という構成要件も満足しない。
イ 2種類以上の化学基
甲1実施例4発明に含まれる「式(8-5)のポリマー」は、ヒドロキシ基を4つ含むものの、2種以上の化学基で置換された構造を有しない。
よって、甲1実施例4発明に含まれる「式(8-5)のポリマー」は、本件特許発明1の「化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造を有する」という構成要件を満足しない。
ウ 少なくとも1つが化学基(b)
甲1実施例4発明に含まれる「式(8-5)のポリマー」は、「ヒドロキシ基」「である化学基(b)」を含むため、本件特許発明1の「前記2つ以上の1価又は2価の化学基のうち、少なくとも1つが化学基(b)から選ばれ、」という構成要件を満たす。
エ wiggling
甲1実施例4発明は、本件特許発明1の「400℃で焼成した、半導体基板上のレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターンが43.5nm以上43.9nm以下である、」という構成要件を満たす。
オ レジスト下層膜形成組成物
甲1実施例4発明の「レジスト下層膜形成組成物」は、本件特許発明1の「レジスト下層膜形成組成物」に相当する。
カ 除かれた樹脂
甲1実施例4発明に含まれる「式(8-5)のポリマー」は、本件特許発明1で除かれた「ノボラック樹脂」ではない。
(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と甲1実施例4発明は、次の構成で一致する。
「下記式(1):
【化1】
[図:0001400444000015.jpg]
(式(1)において、メチル基、スルフィド基、又はその組み合わせである化学基(a)、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸アルキルエステル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、エーテル基、又はその組み合わせである化学基(b)、及びフルオロアルキル基である化学基(c)からなる群より選ばれた同種又は異種の2つ以上の1価又は2価の化学基が、該基Aもしくは基B又はその両方の基中の、芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環上の炭素原子に結合する水素原子と、それぞれ置換した構造を有する有機基であり、前記化学基が2価の場合、前記環同士は該化学基を介して結合もしくは該化学基とともに縮合していてもよい。)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂であって、
前記2つ以上の1価又は2価の化学基のうち、少なくとも1つが化学基(b)から選ばれ、
400℃で焼成した、半導体基板上のレジスト下層膜はwigglingが発生する最小パターンが43.5nm以上43.9nm以下である、
レジスト下層膜形成組成物
(ただし、上記ノボラック樹脂は下記の式で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂を除く。)。
【化2】
[図:0001400444000016.jpg]
」
イ 相違点
本件特許発明1と甲1実施例4発明は、次の構成で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1の「基A」は、「カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基」であるのに対し、甲1実施例4発明の「基A」は、芳香族環を有するものの、窒素原子を有しないため、「カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基」ではない点。
(相違点2)
本件特許発明1の「基B」は、「ベンゼン、又はナフタレンを有する有機基」であるのに対し、甲1実施例4発明の「基B」は、ピレンを有する有機基であるものの、「ベンゼン、又はナフタレンを有する有機基」ではない点。
(相違点3)
本件特許発明1の「ノボラック樹脂」は、「化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造を有する」のに対し、甲1実施例4発明の「ノボラック樹脂」は、ヒドロキシ基を4つ含むものの、2種以上の化学基で置換された構造を有しないので、「化学基(b)、化学基(a)と化学基(b)の組み合わせ、化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、化学基(a)と化学基(b)と化学基(c)の組み合わせ、から選ばれた2種類以上の化学基で芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環の水素原子をそれぞれ置換した構造を有する」という要件を満足しない点。
(3)判断(新規性及び進歩性)
事案に鑑み、相違点1を検討する。
甲1には、本件特許発明1の「式(1)」の「基A」に相当する有機基について、「カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基」とすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
(4)本件特許発明4~9について
本件特許の特許請求の範囲の請求項4~9は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明4~9は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。
したがって、上記(3)と同様に、本件特許発明4~9は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
3 甲1の[0027]等に基づく発明を主引用発明とした場合
本件特許発明と甲1式8-1発明~甲1式8-19発明のいずれかを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1と同様の点で相違し、その判断も上記2(3)で説示したとおりである。
したがって、本件特許発明は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
4 甲3に基づく発明を主引用発明とした場合
本件特許発明と甲3SOL1発明~甲3SOL12発明のいずれかを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1と同様の点で相違し、その判断も上記2(3)で説示したとおりである。
したがって、本件特許発明は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
第7 特許異議申立人の意見について
1 明確性について
特許異議申立人は、令和5年2月22日提出の意見書の1~4頁において、「乙第1号証及び乙第2号証に記載された各々の実験条件は、互いに一致するものではなく、数値や記載の仕方もそれぞれ大きく異なるものである。
したがって、乙第1号証及び乙第2号証の上記記載に基づいたとしても、パターン形成における具体的な実験条件を一義的に導き出すことはできず、いずれの実験条件を採用するかについては判断することはできない。
以上より、本件特許発明に触れた当業者は、本件特許明細書を参酌しても、いかなる実験条件で「Wigglingが発生する最小パターンが43.5nm以上43.9nm以下」となるかを明確に理解することができない。それにより、第三者は、本件特許発明に関連する発明を実施するにあたり、本件特許発明の外延が不明確であることにより不測の不利益を受けることになる。」と述べた上で、明確性要件を充足しないと主張する。
しかしながら、上記第5の1(2)で説示したとおりであるので、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
2 実施可能要件について
特許異議申立人は、令和5年2月22日提出の意見書の4頁において、「本件特許は、本件特許明細書の記載及び出願時の技術常識を参酌したとしても、本件特許の請求項1で特定された数値範囲を得るためのパターン形成の具体的な実験条件が不明であることから、「Wigglingが発生する最小パターンが43.5nm以上43.9nm以下」とすることを、どのようにすれば実施できるかを見出すために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるといえる。」と主張する。
しかしながら、特許異議申立人の上記主張は、訂正の請求の内容に付随して生じる理由に係るものではなく、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合に係るものともいえず、かつ、実質的に新たな取消し理由を追加主張するものといえるため、採用しない。
第8 取消理由通知において採用しなかったその他の特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書の76~82、95~109頁において、甲2、甲4、甲5を主引用文献とした進歩性欠如の理由を主張する。
しかしながら、甲2、甲4、甲5には、wigglingについて記載も示唆もされていない。また、本件特許発明1の「式(1)」の「基A」に相当する有機基を「カルバゾール、又はジフェニルアミンを有する有機基」とすることについても記載も示唆もされていない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
第9 むすび
請求項1及び4~9に係る特許は、いずれも、令和4年9月22日付け取消理由通知書に記載した取消しの理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び4~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2~3は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てのうち、本件特許の請求項2~3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700474