特許拒絶査定不服審判
2023-004928
極端紫外線光源のチャンバ内の光学系の表面の洗浄
- 審判番号
- 2023-004928
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-521945外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月24日
- 審決日
- 2024年07月08日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-521945号「極端紫外線光源のチャンバ内の光学系の表面の洗浄」拒絶査定不服審判事件〔令和元年5月9日国際公開、WO2019/086397号、令和3年1月21日国内公表、特表2021-501907号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月30日(優先権主張2017年(平成29年)11月2日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和2年 6月18日 :手続補正書・上申書
令和4年 7月15日付け:拒絶理由通知書
同年10月14日 :意見書、手続補正書
同年11月21日付け:拒絶査定
令和5年 3月24日 :審判請求書、手続補正書
令和6年 2月 5日付け:拒絶理由通知書
同年 4月26日:意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)
第2 当審における拒絶の理由
令和6年2月5日付けで当審が通知した拒絶理由通知書の拒絶の理由は、次の内容を含むものである。
1 (新規性)本件補正前の請求項15に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 (進歩性)本件補正前の請求項15に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.米国特許出願公開第2017/0215265号明細書
第3 当審の判断
1 本願発明の認定
本件補正後の請求項16は、本件補正前の請求項15に対応するものであるところ、当該請求項16に係る発明(以下「本願発明」という。)は、当該請求項16に記載された事項により特定されるものであって、当該請求項の記載は以下のとおりである。
「極端紫外線(EUV)光源のチャンバ内の光学系の表面を洗浄する方法であって、前記チャンバは大気圧よりも低い圧力に保持され、前記方法は、
前記光表面(当審注:「前記光表面」の前に「光表面」がないため、「前記」は明らかな誤記と認められるので、以下では「光表面」と解することとする。)に隣接した前記チャンバ内の位置においてプラズマ状態の材料を発生させることを含み、前記発生させることは、
前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で電流を電磁的に誘導することにより、前記真空チャンバ(当審注:「前記真空チャンバ 」の前に「真空チャンバ 」がないため、「前記」は明らかな誤記と認められるので、以下では「前記チャンバは真空チャンバであって、前記真空チャンバ」の意味であると解することとする。)内の材料を第1の状態から前記プラズマ状態に変換することを含み、
前記材料の前記プラズマ状態は前記材料のフリーラジカルを含み、
前記プラズマ状態の前記材料を発生させることは、前記プラズマ状態の前記材料を前記光表面全体へ移動させて、前記EUV光源から前記光学系を取り出すことなく前記光表面からのデブリの除去を可能とすることを含み、
前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で前記電流を誘導することは、プラズマジェネレータの導電体に、該導電体の両端部が接続された電源によって時変電流を流すことを含み、
前記プラズマジェネレータは前記導電体を少なくとも部分的に包囲する誘電材料であって、前記導電体との間にギャップが存在しないように、前記導電体の一部に接触している誘電材料を含む、方法。」
2 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
当審拒絶理由通知書が引用した、本願の優先日前に発行された米国特許出願公開第2017/0215265号明細書(以下「引用文献1」という。)には次の記載がある(日本語訳は、引用文献1に係る出願に基づく優先権を主張する特表2019-504356号公報を参酌して当審が作成して付した。また、下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 特許請求の範囲の記載事項
「14: A method of cleaning target material debris deposits in an EUV light source while simultaneously generating EUV light in the EUV light source comprising:
generating a quantity of hydrogen radicals within an EUV vessel of the EUV light source using a capacitively coupled hydrogen plasma chamber;
outputting the generated quantity of hydrogen radicals proximate to the target material deposit on a surface inside the EUV vessel;
forming a first quantity of a volatile compound containing at least a portion of a first target material deposit;
dispensing a quantity of purge gas into the EUV vessel;
and
purging the first quantity of a volatile compound out of the EUV vessel, the first quantity of a volatile compound being purged through an EUV vessel purge outlet.」
(日本語訳:請求項14:同時にEUV光源内でEUV光を発生しながら、前記EUV光源内のターゲット材料デブリ堆積をクリーニングする方法であって、
容量結合されたプラズマチャンバを用いて、EUV光源のEUV容器内で所定量の水素のラジカルを発生すること、
前記EUV容器の内側の表面上の前記ターゲット材料の堆積の直近に前記発生した所定量の水素ラジカルを出力すること、
元のターゲット材料の堆積物の少なくとも一部を含有する第1の量の揮発性化合物を形成すること、
前記容器内へ所定量のパージガスの量を供給すること、及び、
前記第1の量の揮発性化合物を前記EUV容器からパージすることであって、前記第1の量の揮発性化合物がEUV容器のパージアウトレットを通ってパージされることと、
を含む、方法。)
イ 発明の詳細な説明の記載事項
「[0047]Referring again to FIG. 1A, the EUV light source 20 may also include a target material delivery system 24, for delivering portions (e.g., droplets) of a target material into the interior of a EUV vessel 26 to the irradiation region 28, where the droplets 102A, 102B will interact with one or more light pulses 23, e.g., one or more pre-pulses and thereafter one or more irradiating pulses, to ultimately produce a plasma and a corresponding emission of EUV light 34. The unused or unirradiated droplets 102C are collected in a target material catch 200. The target material may include, but is not necessarily limited to, a material that includes tin, lithium, xenon, etc., or combinations thereof. The EUV emitting element, e.g., tin, lithium, xenon, etc., may be in the form of liquid droplets and/or solid particles contained within liquid droplets 102A, 102B or other forms as described elsewhere herein.」
(日本語訳:[0047]もう一度、図1Aを参照すると、EUV光源20は、ターゲット材料の複数部分(例えば小滴)をEUV容器26の内部に照射領域28まで送り出すためのターゲット材料デリバリシステム24も含むことができ、その照射領域28では、小滴102A、102Bは1つ以上の光パルス23、例えば1つ以上の前パルスと、その後の1つ以上の照射パルスと相互作用して、最終的にプラズマ及び対応するEUV光34の放出を生成することになる。未使用又は未照射の小滴102Cはターゲット材料キャッチ200で収集される。ターゲット材料は、スズ、リチウム、キセノンなど、又はこれらの組み合わせを含む材料を含むことができるが、必ずしもこれに限定されない。例えば、スズ、リチウム、キセノンなどのEUV放出元素は、液体小滴及び/又は液体小滴102A、102B内に含有される固体粒子の形であるか、或いは本明細書の他の箇所に記載されている他の形である可能性がある。)
「[0062]FIG. 1C is a schematic diagram of the EUV collector 30 with target material debris deposits 161A-D and 162, in accordance with embodiments of the disclosed subject matter. The target material debris deposits 161A-D and 162 can be present in many forms. By way of example, relatively small particulates 161A, can deposit on the surface of the collector 30 that are discernible by the naked eye. Larger deposits 161B, 161D can include multiple small particulates that coagulate or otherwise accumulate and/or aggregate into larger deposits and/or target material debris deposits that initially formed on the baffle assembly 150 and were released from the baffle assembly and subsequently deposited on the collector 30. Even larger target material debris deposits 161C can also form for various reasons on the collector 30. In addition to the called out target material debris deposits 161A-D, a very fine layer of target material debris deposits 162 can coat substantially the entire surface of the collector 30 and other surfaces internal to the EUV vessel 26. The very fine layer of target material debris deposits 162 can be made up of substantial microscopic target material debris such as might resemble a substantially uniform coating of dust on the surface of the collector 30.」
(日本語訳:[0062]図1Cは、開示されている主題の諸実施形態によるターゲット材料デブリ堆積161A~D及び162を含むEUVコレクタ30の概略図である。ターゲット材料デブリ堆積161A~D及び162は多くの形で存在する可能性がある。例として、肉眼で識別可能な比較的小さい粒子161Aはコレクタ30の表面上に堆積する可能性がある。より大きい堆積161B、161Dは、凝固又はその他の方法で蓄積及び/又は集合して、より大きい堆積及び/又はターゲット材料デブリ堆積になる複数の小さい粒子を含むことができ、そのターゲット材料デブリ堆積は最初にバッフルアセンブリ150上に形成され、バッフルアセンブリから解放され、その後、コレクタ30上に堆積したものである。更に大きいターゲット材料デブリ堆積161Cも様々な理由でコレクタ30上に形成される可能性がある。上記のターゲット材料デブリ堆積161A~Dに加えて、非常に微細な層のターゲット材料デブリ堆積162は実質的にコレクタ30の表面全体及びEUV容器26の内側のその他の表面をコーティングする可能性がある。非常に微細な層のターゲット材料デブリ堆積162は、コレクタ30の表面上の実質的に均一なダストコーティングに似ている可能性のある、実質的な顕微鏡的ターゲット材料デブリで構成される可能性がある。)
「[0076]FIG. 8 is a simplified schematic side view of an inductive hydrogen radical generator 800, in accordance with embodiments of the disclosed subject matter. FIG. 9 is a simplified schematic top view of the inductive hydrogen radical generator 800, in accordance with embodiments of the disclosed subject matter. The inductive hydrogen radical generator 800 includes multiple hydrogen nozzles 802 disposed around the perimeter of the collector 30. An inductive coil 804 is disposed between the hydrogen nozzles and the rim 30B of the collector 30.
[0077]The inductive coil 804 has a first end coupled to a signal source 212C. The inductive coil 804 has a second end coupled to ground. It should be noted that the inductive coil 804 is shown making only one substantial loop around the perimeter of the collector 30, however this is shown to simplify the description of the inductive coil and that the inductive coil can include one or more loops around the perimeter of the collector.
[0078]The signal source 212C outputs and induction signal of suitable frequency amplitude and duty cycle. As the induction signal passes through the induction coil 804, a magnetic field is induced into the center of the coil as shown in FIG. 9. The hydrogen nozzles 802 to inject hydrogen into the center of the coil and a hydrogen plasma 810 can be created. The hydrogen plasma generates the hydrogen radicals H*proximate to the surface 30A of the collector 30 where the hydrogen radicals H* can interact with any target material deposits that may be present.」
(日本語訳:[0076]図8は、開示されている主題の諸実施形態による誘導水素ラジカルジェネレータ800の簡易概略側面図である。図9は、開示されている主題の諸実施形態による誘導水素ラジカルジェネレータ800の簡易概略上面図である。誘導水素ラジカルジェネレータ800はコレクタ30の外周部の周りに配置された複数の水素ノズル802を含む。水素ノズルとコレクタ30のリム30Bとの間には誘導コイル804が配置される。
[0077]誘導コイル804は信号源212Cに結合された第1の端部を有する。誘導コイル804はアースに結合された第2の端部を有する。誘導コイル804はコレクタ30の外周部の周りに1つの実質的なループのみを作成して示されているが、これは誘導コイルの説明を簡略化するために示されており、誘導コイルはコレクタの外周部の周りに1つ以上のループを含むことができることに留意されたい。
[0078]信号源212Cは適切な周波数、振幅、及びデューティサイクルの誘導信号を出力する。誘導信号が誘導コイル804を通過すると、図9に示されているように磁界がコイルの中心に誘導される。コイルの中心に水素を注入するための水素ノズル802により、水素プラズマ810を作成することができる。水素プラズマはコレクタ30の表面30Aの直近に水素ラジカルH*を発生し、そこで水素ラジカルH*は存在する可能性のあるターゲット材料堆積と相互作用することができる。)
ウ 図面の記載事項
FIG.1A
「
[図:0001417099000001.jpg]
」
FIG.1C
「
[図:0001417099000002.jpg]
」
FIG.8
「
[図:0001417099000003.jpg]
」
FIG.9
「
[図:0001417099000004.jpg]
」
エ 上記イの記載を踏まえて、上記ウのFIG.9を見ると、水素ノズル802は、コレクタ30の周囲に時計回りの各時の位置であって、3時の方向を除いて、おおむね各時の方向に11個配置されていることが見てとれる。
(2)引用発明の認定
上記(1)から、引用文献1には、図8及び9の誘導水素ラジカルジェネレータ800を用いて、請求項14のとおりの方法によりEUV光源内のターゲット材料デブリ堆積をクリーニングする方法の下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。以下同じ。)。
<引用発明>
「同時にEUV光源内でEUV光を発生しながら、前記EUV光源内のターゲット材料デブリ堆積をクリーニングする方法であって、
容量結合されたプラズマチャンバを用いて、EUV光源のEUV容器内で所定量の水素のラジカルを発生すること、
前記EUV容器の内側の表面上の前記ターゲット材料の堆積の直近に前記発生した所定量の水素ラジカルを出力すること、
元のターゲット材料の堆積物の少なくとも一部を含有する第1の量の揮発性化合物を形成すること、
前記容器内へ所定量のパージガスの量を供給すること、及び、
前記第1の量の揮発性化合物を前記EUV容器からパージすることであって、前記第1の量の揮発性化合物がEUV容器のパージアウトレットを通ってパージされることと、
を含み、(請求項14)
当該EUV容器の内側の表面上の前記ターゲット材料の堆積の直近で所定量の水素ラジカルを出力するために、(請求項14)
誘導水素ラジカルジェネレータ800を用いるものであって、
前記誘導水素ラジカルジェネレータ800は、コレクタ30の外周部の周りに配置された複数の水素ノズル802を含み、水素ノズルとコレクタ30のリム30Bとの間には誘導コイル804が配置され、([0076])
前記水素ノズル802は、コレクタ30の周囲に時計回りの各時の位置であって、3時の方向を除いて、おおむね各時の方向に11個配置され、(上記(1)オ)
前記誘導コイル804は信号源212Cに結合された第1の端部と、アースに結合された第2の端部を有し、前記誘導コイル804はコレクタ30の外周部の周りに1つ以上のループを含み、([0077])
前記信号源212Cは適切な周波数、振幅、及びデューティサイクルの誘導信号を出力し、前記誘導信号が誘導コイル804を通過すると、磁界が誘導コイル804の中心に誘導され、誘導コイル804の中心に水素を注入するための水素ノズル802により、水素プラズマ810を作成することができ、前記水素プラズマはコレクタ30の表面30Aの直近に水素ラジカルH*を発生し、そこで水素ラジカルH*は存在する可能性のあるターゲット材料堆積と相互作用し、([0078])
前記揮発性化合物は、揮発性化合物をパージするか又は排気することによりEUV容器から除去することができ([0089])、
インサイチュクリーニングプロセスは、約90slmの流量でアパーチャ32付近に水素ラジカルを発生して注入することと、約1.3Torrの圧力を維持しながら、約90slmの流量でEUVコレクタ30の外周部付近に水素ラジカルを発生して注入することを含む、([0090])
方法。」
3 対比・判断
(1)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)「極端紫外線(EUV)光源のチャンバ内の光学系の表面を洗浄する方法」との発明特定事項について
引用発明の「EUV光源」、「EUV容器」、「コレクタ30」、「コレクタ30の表面30A」及び「クリーニングする方法」は、本願発明の「極端紫外線(EUV)光源」、「チャンバ」、「光学系」、「光学系の表面」及び「洗浄する方法」にそれぞれ相当する。
したがって、引用発明の「誘導水素ラジカルジェネレータ800を用い」、「同時にEUV光源内でEUV光を発生しながら、前記EUV光源内のターゲット材料デブリ堆積をクリーニングする方法」は、本願発明の「極端紫外線(EUV)光源のチャンバ内の光学系の表面を洗浄する方法」に相当するから、引用発明は、上記発明特定事項を備える。
(イ)「前記チャンバは大気圧よりも低い圧力に保持され」るとの発明特定事項について
引用発明は、「揮発性化合物」を「パージするか又は排気することによりEUV容器から除去する」「インサイチュクリーニングプロセス」において、「約90slmの流量でアパーチャ32付近に水素ラジカルを発生して注入することと、約1.3Torrの圧力を維持しながら、約90slmの流量でEUVコレクタ30の外周部付近に水素ラジカルを発生して注入することを含」むとされるから、「EUV光源のEUV容器内」は、「インサイチュクリーニングプロセス」中は「約1.3Torr」の低い圧力、すならち、大気圧(1気圧=760Torr)よりも低い圧力に保持されているといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を備える。
(ウ)「光表面に隣接した前記チャンバ内の位置においてプラズマ状態の材料を発生させることを含」むとの発明特定事項について
引用発明の「水素プラズマ」は、本願発明の「プラズマ状態の材料」に相当する。また、「水素のラジカル」は、「EUV光源のEUV容器内」で「出力する」ものである。さらに、「水素プラズマ」は、「コレクタ30の外周部の周りに配置された」「水素ノズル802により」「作成すること」により、「コレクタ30の表面30Aの直近に水素ラジカルH*を発生」するものである。
したがって、引用発明では、コレクタ30の表面30Aの直近である、EUV光源のEUV容器内の位置において、水素プラズマを出力させているといえる。
よって、引用発明は、上記発明特定事項を備える。
(エ)「前記発生させることは、前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で電流を電磁的に誘導することにより、前記真空チャンバ内の材料を第1の状態から前記プラズマ状態に変換することを含」むとの発明特定事項について
引用発明の「コレクタ30の外周部の周りに配置された複数の水素ノズル802を含み」、「誘導コイル804の中心に水素を注入するための水素ノズル802により、水素プラズマ810を作成することができ、前記水素プラズマはコレクタ30の表面30Aの直近に水素ラジカルH*を発生」することは、水素の状態のものを水素プラズマの状態に変換することであるから、本願発明の「真空チャンバ内の材料を第1の状態から前記プラズマ状態に変換すること」に相当する。
ここで、誘導コイル804を通過する誘導信号が所定の電圧値・電流値を有することは明らかである。
また、引用発明の「前記信号源212Cは適切な周波数、振幅、及びデューティサイクルの誘導信号を出力し、前記誘導信号が誘導コイル804を通過すると、磁界が誘導コイル804の中心に誘導され」ること(以下「構成A」という。)は、所定の電圧値・電流値を有する誘導信号が誘導コイル804を通過することにより、磁界が発生することである。ここで、誘導信号が誘導コイルを通過することにより、電磁界が発生することは技術常識である。
したがって、引用発明における構成Aは、所定の電圧値・電流値を有する誘導信号が、誘導コイル804を通過するよう誘導して電磁界を発生させているから、誘導信号による電流を電磁的に誘導しているといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を備える。
(オ)「前記材料の前記プラズマ状態は前記材料のフリーラジカルを含」むとの発明特定事項について
引用発明の「水素ラジカルH*」は、本願発明の「材料のフリーラジカル」に相当する。また、引用発明の「水素プラズマ」は「コレクタ30の表面30Aの直近に水素ラジカルH*を発生」するから、結果として「水素プラズマ」は「水素ラジカルH*」を含むものとなるといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を備える。
(カ)「前記プラズマ状態の前記材料を発生させることは、前記プラズマ状態の前記材料を前記光表面全体へ移動させて、前記EUV光源から前記光学系を取り出すことなく前記光表面からのデブリの除去を可能とすることを含」むとの発明特定事項について
引用発明の「当該EUV容器の内側の表面上の前記ターゲット材料の堆積の直近で所定量の水素ラジカルを発生させるために、コレクタ30の外周部の周りに配置された複数の水素ノズル802を含み」、「前記水素ノズル802は、コレクタ30の周囲に時計回りの各時の位置であって、3時の方向を除いて、おおむね各時の方向に11個配置され」、「誘導コイル804の中心に水素を注入するための水素ノズル802により、水素プラズマ810を作成すること」は、水素ノズル802がコレクタ30の3時の方向を除くほぼ全周囲に配置され、誘導コイル804の中心に水素を注入することで、作成した水素プラズマ810をコレクタ30の表面30Aの3時の方向を除くほぼ全体へ移動させていることであるといえる。そして、「非常に微細な層のターゲット材料デブリ堆積162は実質的にコレクタ30の表面全体」「をコーティングする可能性がある」([0062])と記載されていることに照らして、「EUV光源内のターゲット材料デブリ堆積をクリーニングする方法」である引用発明において、水素プラズマ810を作成する範囲からコレクタ30の3時の方向を除く格別の事由はなく、水素ノズル802により導コイル804の中心に注入された水素から作成された水素プラズマ810は、コレクタ30の3時の方向を含めてコレクタ30の表面全体に移動すると解するのが自然である。
また、引用発明が、「インサイチュクリーニングプロセス」であることは、本願発明の「前記EUV光源から前記光学系を取り出すことなく前記光表面からのデブリの除去を可能とする」ものであることに相当する。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を備える。
(キ)「前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で前記電流を誘導することは、プラズマジェネレータの導電体に、該導電体の両端部が接続された電源によって時変電流を流すことを含」むとの発明特定事項について
引用発明の「誘導水素ラジカルジェネレータ800」は、本願発明の「プラズマジェネレクター」に相当する。また、引用発明の「誘導コイル804」は、本願発明の「導電体」に相当する。さらに、引用発明の「誘導コイル804」の「第1の端部」が「結合された」「信号源212C」は、本願発明の「導電体の両端部が接続された電源」と「導電体の一端部が接続された電源」の点で共通する。
引用発明の「誘導コイル804」は、「信号源212Cに結合された第1の端部と、アースに結合された第2の端部を有し、前記誘導コイル804はコレクタ30の外周部の周りに1つ以上のループを含」むものであるから、1つ以上のループの第1の端部は信号源212Cに結合され、第2の端部はアースに結合されているといえる。
引用発明の「誘導コイル804を通過する」「誘導信号」は、上記(エ)で説示したように、所定の電圧値・電流値を有することは明らかであるから、「信号源212C」が「出力」する「適切な周波数、振幅、及びデューティサイクルの誘導信号」は、所定の周波数の電流であって「時変電流」であるといえる。したがって、引用発明の「誘導信号」により誘導コイル804を通過する電流は、本願発明の「時変電流」に相当する。
以上の説示と上記(エ)での説示も踏まえると、引用発明の「前記信号源212Cは適切な周波数、振幅、及びデューティサイクルの誘導信号を出力し、前記誘導信号が誘導コイル804を通過すると、磁界が誘導コイル804の中心に誘導され、誘導コイル804の中心に水素を注入するための水素ノズル802により、水素プラズマ810を作成する」「誘導水素ラジカルジェネレータ800」の「誘導コイル804」は、「信号源212Cに結合された第1の端部と、アースに結合された第2の端部を有し、前記誘導コイル804はコレクタ30の外周部の周りに1つ以上のループを含」むことは、本願発明の「前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で前記電流を誘導することは、プラズマジェネレータの導電体に、該導電体の両端部が接続された電源によって時変電流を流すことを含」むことと、「前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で前記電流を誘導することは、プラズマジェネレータの導電体に、該導電体の一端部が接続された電源によって時変電流を流すことを含」む点で共通する。
(ク)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
極端紫外線(EUV)光源のチャンバ内の光学系の表面を洗浄する方法であって、前記チャンバは大気圧よりも低い圧力に保持され、前記方法は、
光表面に隣接した前記チャンバ内の位置においてプラズマ状態の材料を発生させることを含み、前記発生させることは、
前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で電流を電磁的に誘導することにより、前記真空チャンバ内の材料を第1の状態から前記プラズマ状態に変換することを含み、
前記材料の前記プラズマ状態は前記材料のフリーラジカルを含み、
前記プラズマ状態の前記材料を発生させることは、前記プラズマ状態の前記材料を前記光表面全体へ移動させて、前記EUV光源から前記光学系を取り出すことなく前記光表面からのデブリの除去を可能とすることを含み、
前記チャンバ内の前記光表面に隣接した前記位置で前記電流を誘導することは、プラズマジェネレータの導電体に、該導電体の一端部が接続された電源によって時変電流を流すことを含む、方法。
【相違点1】
電源がプラズマジェネレータの導電体に接続されるのが、本願発明は、両端部であるのに対して、引用発明は、第1の端部であって、第2の端部はアースに結合されている点。
【相違点2】
プラズマジェネレータが、本願発明は、「前記導電体を少なくとも部分的に包囲する誘電材料であって、前記導電体との間にギャップが存在しないように、前記導電体の一部に接触している誘電材料」を含むのに対して、引用発明は、このような誘電材料を含むとは特定されていない点。
イ 判断
(ア)相違点1について
引用発明の「誘導コイル804」は、「信号源212Cに結合された第1の端部と、アースに結合された第2の端部を有し、前記誘導コイル804はコレクタ30の外周部の周りに1つ以上のループを含み、前記信号源212Cは適切な周波数、振幅、及びデューティサイクルの誘導信号を出力し、前記誘導信号が誘導コイル804を通過すると、磁界がコイルの中心に誘導され」るものであるから、引用発明の「信号源212C」は、「誘導コイル804」の第1の端部に結合しているとともに、アースを介して「誘導コイル804」の第2の端部に結合しているといえる。
電気回路において、信号源と誘導コイルを接続するに際して、誘導コイルの2つの端部を信号源の2つの電極をそれぞれ直接接続する構成も、誘導コイルの1つの端部と信号源の1つの電極を直接接続するとともに、誘導コイルの他方の端部と信号源の他方の電極を一旦アースに接続してアースを介して接続する構成もいずれも一般的に用いられている接続方法である。そうすると、引用発明の「信号源212C」は、「誘導コイル804」の第2の端部にアースを介して結合しているものといえるところ、「信号源212C」と「誘導コイル804」の第2の端部の接続を、アースを介して行うことに代えて、「信号源212C」と、「誘導コイル804」の第2の端部とを直接接続して、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
(イ)相違点2について
引用発明の「誘導コイル804」は「コレクタ30の外周部の周りに1つ以上のループを含」むものである。そして、誘導コイル804が2つ以上のループをなす場合には、各ループの間の短絡を防ぐ必要が生じることは、誘導コイル804の機能を維持するために当然であるとともに技術常識でもあるところ、短絡を防ぐために誘導結合プラズマを発生する装置の誘導コイルを誘電材料で被覆することは本願の優先日前に周知の技術的手段である。
(例えば、(a)特開2016-167602号公報「図1は誘導結合タイプのプラズマ処理装置の縦断面図を示す・・・真空処理室1の外側上面となる誘電体窓1aの上方には誘導アンテナが配置されている。この場合、誘導アンテナは、図2に示すように内径の異なる1ターンから成る誘導コイル4aないし4dが同芯上に配置されてなる。誘導コイル4aないし4dはそれぞれに両端に給電端(電源が交流のため両側が給電端となる)を有し、一方の給電端を始点として1周より長く巻回され一部が重なりを有して他端に給電端を設けた形状となっている。・・・誘導コイル4は、重なり部での接触を防ぐために、図3に示すように給電端部の立ち上がりも含め絶縁材で被覆してある。誘導コイル4は整合器7を介して第一の高周波電源8に接続されている。」(【0013】)、
(b)特開2006-278219号公報「本発明に係るプラズマ処理装置は、共振条件又は共振条件の許容動作範囲で誘導結合プラズマを発生させて被処理体を処理するプラズマ処理装置であって、・・・」(【0009】)「尚、本実施の形態では、高周波コイルとして1ターンコイルを用いているが、これに限定されるものではなく、高周波コイルとして複数回ターンコイルを用いることも可能であり、また1ターンコイルの形状を変更したものを用いることも可能である。」(【0025】)「高周波コイル16は、真空容器10内では、処理ガスに直接晒されないようにセラミックスで形成された鞘19で覆われている。・・・尚、本実施の形態では、高周波コイル16をセラミックスで形成された鞘19で覆っているが、高周波コイルをセラミックス膜で被覆することも可能である。」(【0026】)、及び、
(c)特開2011-135052号公報「本発明は、・・・誘導結合プラズマエッチング装置・・・にも適用可能である。」(【0133】)「両コイル104(1),104(2)をそれぞれ構成するコイル導線が、共通のボビン114の外周面に沿って図6に示すようにボビン軸方向に重なり合って並進しながら等しい巻線長で螺旋状に巻かれている。両コイル104(1),104(2)のそれぞれのコイル導線は、図7に示すように、好ましくは同一の断面積を有する薄板または平角の銅線からなり、両者間の短絡を防ぐために、片方の空芯コイル104(2)のコイル導線を絶縁被覆たとえばテフロン(登録商標)製のチューブ116で覆っている。」(【0059】)、図7
「
[図:0001417099000005.jpg]
」、上記【0059】の記載を踏まえて上記図7を見ると、「両者間の短絡を防ぐために、片方の空芯コイル104(2)のコイル導線を絶縁被覆たとえばテフロン(登録商標)製のチューブ116で覆っている」における「両者」は、コイル104(1)及び104(2)と解される。
そして、各周知文献の記載を踏まえると、誘導結合プラズマを発生する装置の誘導コイルの導電体を誘電材料で被覆することは周知の技術的手段であったといえる。)
そうすると、引用文献1の「コレクタ30の外周部の周りに1つ以上のループを含」む「誘導コイル804」も、誘導コイル804を誘電材料で被覆することは当業者が容易に想到し得たことである。そして、このように誘導コイル804を誘電材料で被覆したものは、誘電材料が誘導コイル804を少なくとも部分的に被覆・包囲することで結果として、誘導コイル804との間にギャップが存在することなく、誘導コイル804の一部に被覆・接触するものとなり、上記相違点2を満たすこととなる。
したがって、引用発明に上記周知の技術的手段を適用して、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
(ウ)本願発明の効果について
本願発明の奏する、プラズマ状態の材料を発生させるため、少なくとも、プラズマ状態の材料を光表面全体へ移動させて、EUV光源から光学系を取り出すことなく光表面からのデブリの除去を可能とする作用効果(【0005】)は、インサイチュクリーニングプロセスを含み、同時にEUV光源内でEUV光を発生しながら、前記EUV光源内のターゲット材料デブリ堆積をクリーニングする方法である引用発明が当然に奏する効果にすぎない。
また、プラズマジェネレータの導電体と誘電材料との間に空気ギャップが存在せず、EUVチャンバが空気及び酸素に暴露されるこのリスクを低減するという効果(【0064】)は、上記(イ)で説示したとおり、引用発明に上記周知の技術的手段を適用したものが結果として奏する効果であって、格別顕著なものということはできない。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、令和6年4月26日に提出された意見書において、引用文献1には、誘電コイル804が2つ以上のループをなす場合について、その課題、当該課題に対する対策、方法、及び、当該課題を解決するための手段、構成について記載されていないと主張するが、上記(1)イ(イ)で説示した通りであって、むき出しの導体の誘導コイル804で2つ以上のループを構成した場合に、各誘導コイル804のループ間で短絡の危険性があることは明らかであって、当該課題は、引用文献1に記載がなくとも当然に考慮すべき課題であったといえる(課題)。そして、発明を実施するに際しては、当該課題を解決しなければならないことも明らかであるところ(当該課題に対する対策、方法)、上記(1)イ(イ)で説示したように、誘導結合プラズマを発生する装置の誘導コイルを誘電材料で被覆することは周知の技術的手段であったから、当該周知の技術的手段を採用して上記課題を解決すること(当該課題を解決するための手段、構成)は、当業者が発明を具体的に実施するに際して適宜採用することである。
イ 請求人は、同意見書において、短絡の問題に対しては、様々な対策、方法が考えられるため、ループ間の短絡を防ぐことは、唯一の対策、方法ではなく、経験則から明らかな事項ではないと主張するが、唯一の対策、方法ではないときは、同一ではないとはいえるが、解決手段が複数ある場合には必要に応じて選択すればよく、唯一の対策、方法ではないことが容易とはいえないことの根拠にはなっていないし、上記(1)イ(イ)で説示した通り、誘導結合プラズマを発生する装置の誘導コイルを誘電材料で被覆することは本願の優先日前に周知の技術的手段にすぎない。
ウ 請求人は、同意見書において、導電体との間にギャップが存在しないように、導電体の一部に接触している誘電材料を含む構成を備えることにより、プラズマジェネレータが破損した場合であっても、UVチャンバが空気及び酸素に暴露されるリスクを低減することができる、という顕著な作用効果を奏すると主張する。
引用発明は、インサイチュクリーニングプロセスにおいても約1.3Torrの圧力を維持するものであって、EUV光源のEUV容器内に不要な空気や酸素が混入することが望ましくないことは明らかである。
また、引用文献1には、誘導コイルの周囲に空気が存在することが必須であることは記載されておらず、示唆もされていないし、技術常識であるともいえない。
そして、誘電体と誘導コイルのギャップに空気や酸素を含む誘導コイルを用いるプラズマジェネレータを前提とする請求人の主張は、導電体581と誘電材料(管582又はビード583)との間に、(プラズマジェネレータ480にあったような)空気ギャップが存在するという、本願明細書に記載された一実施例を前提とするものであって、およそプラズマジェネレータの通常の構成とまではいえない構成を前提としているから、その前提において誤りがあり、請求人が主張する危険性は一般的なものではなく、特定の前提に基づく効果の主張が格別顕著なものとはいえない。
エ さらに、本願発明の奏する効果は、前記(1)イ(ウ)のとおりであるから、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、請求人の同意見書における主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上によれば、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-004928