特許拒絶査定不服審判
2023-003340
光照射方法、機能素子の製造方法および光照射装置
- 審判番号
- 2023-003340
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-191950外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月28日
- 審決日
- 2024年03月11日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-Z (G03F) / P18 .121-Z (G03F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-191950号「光照射方法、機能素子の製造方法および光照射装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月16日出願公開、特開2020-60690号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月10日の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
令和4年 5月27日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年11月24日付け:拒絶査定
令和5年 2月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年2月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年2月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
300nm以下の波長の光を出力するコヒーレントな光源からの出力光を波面整形後に2以上に分岐させ、分岐した前記出力光を20°以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させる工程と、
基板を前記干渉光に対して連続して搬送させながら、前記干渉光を前記基板に照射する工程と、を含み、
前記干渉光を発生させる工程では、
スペイシャルフィルタを含む光整形素子により前記光源の出力光を波面整形し、
前記光整形素子により整形された前記出力光を光分岐素子により2以上に分岐し、
前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、ミラー素子に含まれる取付位置が可変な角度可変ミラーの角度および取付位置を調整して前記干渉角度を調整し、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する
ことを特徴とする光照射方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
300nm以下の波長の光を出力するコヒーレントな光源からの出力光を波面整形後に2以上に分岐させ、分岐した前記出力光を20°以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させる工程と、
基板を前記干渉光に対して連続して搬送させながら、前記干渉光を前記基板に照射する工程と、を含むことを特徴とする光照射方法。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「干渉光を発生させる工程」が、「スペイシャルフィルタを含む光整形素子により前記光源の出力光を波面整形し、前記光整形素子により整形された前記出力光を光分岐素子により2以上に分岐し、前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、ミラー素子に含まれる取付位置が可変な角度可変ミラーの角度および取付位置を調整して前記干渉角度を調整し、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する」ものに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である米国特許第06882477号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は当審が作成して付した。また、下線は当審が付した。以下同じ。)
a 「1. Field of the Invention
The invention relates to interference lithography (IL), also known as interferometric lithography or holographic lithography, a method wherein periodic or quasi-periodic patterns are exposed into a photosensitive material (in thin-film form, usually called a resist), by overlapping pairs of phase-locked beams from a laser or other intense source of radiation. In general, a beam, such as emitted from a laser, is split into pairs of beams, which are then directed to recombine at a resist-coated substrate. At the intersection of the beams a periodic interference pattern is created with period p=λ/(2sinθ), where is the beam wavelength and is intersection half-angle of a particular beam pair.」(第1欄第19行-第31行)
(日本語訳:1.発明の分野
本発明は、干渉リソグラフィ又はホログラフィックリソグラフィとしても知られる干渉リソグラフィ(IL)であって、周期的又は準周期的パターンが、レーザー又は他の強力な放射源からの位相ロックされたビームの対をオーバーラップさせることにより感光性材料(薄膜の形態で、通常はレジストと呼ばれる)に曝露される方法に関する。一般に、レーザーから照射されるなどのビームは、ビームの対に分割され、これらは次にレジストでコーティングされた基板での再結合へと方向付けられる。ビームの交差時に、周期的干渉パターンが周期p=λ/(2sinθ)で生成され、ここでλはビーム波長であり、θは特定のビーム対の交差半角θである。)
b 「FIG. 5a depicts a preferred method for“ parallel scanning ”small grating image 38, with fringes parallel to the y-axis, over a large substrate 17, resulting in a large grating 39. For clarity, FIG. 5b depicts image 38, as it would appear on a stationary substrate. Substrate 17 is chucked to precision motion stage 30. For clarity rotary stage 30b is not depicted. The range of motion of stage 30 is typically larger than the size of substrate 17. Mirror 43a, attached to stage 30, is used by the x-axis stage interferometer, and mirror 43b, also attached to stage 30, is used by the y-axis stage interferometer. The writing interferometer is carefully adjusted so that the grating fringes in image 38 are parallel to the y-axis. Stage 30 is first positioned such that grating image 38 is placed in the stage lower left-hand corner, beyond substrate 17.Stage 30 is then moved smoothly in the y direction, while being held at a fixed x position, such that a long, narrow grating strip is exposed into resist coating 18 on substrate 17. Stage 30 is allowed to continue moving in they direction such that grating image 38 moves off of substrate 17. Stage 30 is then stopped and held at a fixed y position, and subsequently moved in the x direction by a distance Δx=Mp, such that Δx<<dpar is a modest fraction of the parallel image diameter dpar, say 10-50%, while simultaneously being an exact integer multiple M of grating period p. Stage 30 is then moved smoothly in the +y direction, while being held at fixed x-Δx position, such that a second, long, narrow grating strip, adjacent and in phase with the first scan, is exposed into resist 18. Successive scans are then repeated, in a boustrophedonic fashion, until the exposure of the desired region is completed. In this way, if the interferometer is sufficiently stable, the interferometer optics are of sufficient quality, and the x-y stage motion is sufficiently smooth and accurate, then large-area low-distortion gratings on substrate 17 are achieved. 」(第13欄第25行-第58行)
(日本語訳:図5aは、y軸に平行な縞を持つ小さな格子画像38を大きな基板17上に「平行走査」して、大きな格子39を得るための好ましい方法を描いている。明確化のため、図5bは、画像38を、それが静止した基板上に現れるように描いている。基板17は精密動作ステージ30にチャックされている。明確化のため回転ステージ30bは描かれていない。ステージ30の動作の範囲は、典型的には、基板17のサイズよりも大きい。ステージ30に取り付けられるミラー43aはx軸ステージ干渉計により使用され、またステージ30に取り付けられるミラー43bはy軸ステージ干渉計により使用される。書き込み干渉計は、画像38の格子縞がy軸に平行になるように注意深く調整される。ステージ30は最初に、格子画像38が基板17を越えてステージ下方左手側隅に配置されるように位置付けられる。ステージ30は次に、長く細い格子片が基板17上のレジストコーティング18に曝露されるように、固定されたx位置に保持されたまま、-y方向に滑らかに移動される。ステージ30は、格子画像38が基板17から外れるような方向に移動し続けることが可能とされている。ステージ30は、次に停止され、固定されたy位置に保持され、続いて距離Δx=Mpだけ-x方向に移動され、Δx<<dparが平行画像直径dparの適度な割合、例えば10~50%であり、同時に格子周期pの正確な整数倍Mであるようになっている。ステージ30は、次に固定されたx-Δx位置で保持されながら、+y方向に滑らかに移動され、最初の走査に隣接して同位相の、第2の長く細い格子片がレジスト18に曝露されるようになっている。連続的な走査が、所望の領域の曝露が完了するまで、ブーストロフェドニック方式で次に繰り返される。このようにして、干渉計が十分に安定であり、干渉計光学系が十分な品質であり、x-yステージの動作が十分に滑らかで正確であれば、基板17上の大面積で低歪みの格子が達成される。)
c 「The description of ways interference lithography (IL) can be performed on moving substrates by using the method of phase locking has now been provided. Further benefits of narrow beams in IL, and a number of ways the beams could be split and recombined on a substrate, generating image periods both statically and under electronic control will now be provided. With reference to FIG. 14, the method for splitting and recombining beams, depicted earlier in FIGS. 1-3, is examined in further detail. In particular, with reference to FIG. 14a, beam from laser 11 passes through shutter/attenuator 12 and is then spatially filtered by means of focusing lens 85, pinhole 86, and collimating lens 87. The spatial filter ensures good wavefront quality of the beam (flat phase), which will nominally ensure that the interferometer image has straight grating lines. The beam is then split into left and right beams by dielectric beamsplitter 14. Left beam is adjusted by attenuator 15 in order to balance the intensity of both interferometer arms, and is then directed to substrate 17 by left mirror 16a. Right beam is directed to the substrate by right mirror 16b. Substrate 17 is attached to x-y stage 30, to which is attached interferometer reference mirror 43. Stage 30 is interferoinetrically controlled and scanned, as described previously. FIG. 14b depicts a grating image that would obtain if spatial filter 85-87 had been designed to transmit a beam of large diameter to beamsplitter 14. A large distortion is evident in the image, which represents the combined optical manufacturing figure errors in the regions sampled by the beam due to beamsplitter 14, attenuator 15 and mirrors 16. However, if spatial filter 85-87 is designed to transmit a beam of smaller diameter, then a smaller region of the optical components will be sampled and an image with reduced distortion, such as depicted in FIG. 14c, will result.」(第21欄第1-33行)
(日本語訳:干渉リソグラフィ(IL)が位相ロックの方法を使用することにより移動する基板上で行われ得る方式の説明が提供されてきた。ILにおける細いビームの更なる利益と、ビームが基板上で分割され再結合されて、静的に及び電子制御下の両方で画像周期を生成し得る多くの方式が、ここで提供されることになる。図14を参照して、先に図1~3に描かれた、ビームを分割して再結合する方法が更に詳細に検討される。特に、図14aを参照すると、レーザー11からのビームは、シャッター/減衰器12を通過し、次に集光レンズ85、ピンホール86、及びコリメートレンズ87により空間的にフィルタリングされる。空間フィルタは、ビームの良好な波面品質(平坦な位相)を確実にし、これは干渉計画像が真っ直ぐな格子線を有することを名目上確実にすることになる。ビームは次に誘電体ビームスプリッタ14により左と右のビームに分割される。左ビームは、両方の干渉計アームの強度をバランスさせるために減衰器15により調整され、次に左ミラー16aにより基板17に方向付けられる。右ビームは、右ミラー16bにより基板に方向付けられる。基板17は、x-yステージ30に取り付けられ、これに干渉計基準ミラー43が取り付けられる。ステージ30は、先に説明されたように、干渉計により制御されて走査される。図14bは、空間フィルタ85~87がビームスプリッタ14に大きい直径のビームを透過させるように設計されていた場合に得られるであろう格子画像を描いている。大きな歪みが画像から明らかであり、これはビームスプリッタ14、減衰器15及びミラー16ゆえにビームによりサンプリングされた領域における光学的な製造時形状誤差の組み合わせを表している。しかし、空間フィルタ85~87がより小さな直径のビームを透過させるように設計されている場合、光学部品のより小さな領域がサンプリングされ、図14cに描かれているような低減された歪みの画像が得られることになる。)
d 「With reference to FIG. 20a, a scanning scheme for writing gratings with period varying in one dimension is described. Substrate 17 is chucked to x-y stage 30 described previously, and scanned in a boustrophedonic fashion, similar as described previously and depicted in FIG. 5, writing variable-period grating 39.」(第23欄第29-34行)
(日本語訳:図20aを参照して、1次元で変化する周期を有する格子を書き込むための走査スキームが説明される。基板17は、先に説明されたx-yステージ30にチャックされ、先に説明され図5に描かれたのと同様にブーストロフェドニック方式で走査され、可変周期の格子39を書き込む。)
e 「With reference to FIG. 21, a writing interferometer design is depicted which allows continuous control of grating period. Beam from laser 11 transmits through shutter/attenuator 12 and is split by beamsplitter 14. Left and right beams are directed by mirrors 16 to substrate 17, where they overlap and interfere. Mirrors 16 are attached to motorized stages 98, which allow translation and rotation in the x-z plane. Stages 98 can be continuously adjusted to overlap beams on substrate 17 within a range of intersection angles 2, corresponding to a range of grating periods.」(第23欄第63行-第24欄第5行)
(日本語訳:図21を参照すると、格子周期の連続制御を可能にする書き込み干渉計設計が描かれている。レーザー11からのビームは、シャッター/減衰器12を通って進行し、ビームスプリッタ14により分割される。左と右のビームは、ミラー16により基板17に方向付けられ、そこでそれらはオーバーラップして干渉する。ミラー16は、電動ステージ98に取り付けられ、これはx-z平面内での並進と回転を可能にする。ステージ98は、格子周期の範囲に対応する交差角度2θの範囲内で、基板17上のビームをオーバーラップさせるように連続的に調整され得る。)
f 「An alternative writing interferometer design is depicted in FIG. 23. The advantage of this design over the mirror interferometer described previously, and depicted in FIG. 22, is the improved control of the angle, amplitude and phase of the individual interferometer arms, the benefits of which will become clear. With reference to FIG. 23a, beam from laser 11 passes through shutter/attenuator 12 and reflects from optional turning mirror 13 to beamsplitter 5, splitting into left and right beams. Alternatively, cube beamsplitter 5 may be substituted with a flat beamsplitter, or a transmission or reflection grating. Left and right beams reflect from turning mirrors 6 and impinge on electro-optic deflectors (EOD) 10, described previously. Alternatively, beam deflectors 10 may be mechanically actuated mirrors or acousto-optic deflectors, as described previously and depicted in FIG. 22. Phase may be controlled by pushing either mirrors 6 with an actuator. Left and right beams are superimposed into a common diverging path by flat beamsplitter 3, which has been designed with optional reflective surface 4 on the right half. Alternatively, beam superimposer 3 may be a cube beamsplitter. Alternatively it may be shortened such that beams from deflector 10a travel to lens 71 unimpeded, while beams from deflector 10b reflect from The shorted mirror. Alternatively, it may be a reflection or transmission grating as depicted in FIG. 23c and described below. The resulting virtual image is projected onto substrate 17 by the objective lens, comprising lens 71, aperture 72, and lens 70.
The purpose of beamsplitter 3 is to create a virtual grating image from the superposition of the left and right beams. Voltage applied to the EOD by controller 151 effects a range of angles, represented in the figure by a solid line for a beam path corresponding to angle 2θ(max) near the lens NA limit, and by a dotdash line for angle 2θ(min) near zero. Large 2θ angles correspond to the finest periods that may be written, while small 2θ angles correspond to periods that approach the size of the beam. The use of optional reflective coating 4 on beamsplitter 3 improves the efficiency of the system since nearly all light from the right arm may be projected onto substrate 17; however, its use precludes the writing of gratings with periods approaching the size of the beam, due to beam clipping near zero angle.」(第26欄第5行-第45行)
(日本語訳:代替的な書き込み干渉計設計が図23に描かれている。先に説明され図22に描かれたミラー干渉計に対するこの設計の利点は、個々の干渉計アームの角度、振幅、及び位相の改善された制御であり、その利点が明らかになるであろう。図23aを参照すると、レーザー11からのビームは、シャッター/減衰器12を通過してオプションの折り返しミラー13からビームスプリッタ5に反射し、左と右のビームに分割する。代替的には、キューブビームスプリッタ5は、平坦なビームスプリッタ、又は透過格子或いは反射格子で代用されてもよい。左と右のビームは、折り返しミラー6で反射し、先に説明された電気光学偏向器(EOD)10に当たる。代替的には、ビーム偏向器10は、先に説明され図22に描かれたように、機械的に作動されるミラー又は音響光学偏向器であってもよい。位相は、アクチュエータでいずれかのミラー6を押すことにより制御されてもよい。左と右のビームは、平坦なビームスプリッタ3により共通の発散経路に重ね合わされ、これは右半分にオプションの反射表面4で設計されている。代替的には、ビーム重ね合わせ器3はキューブビームスプリッタであってもよい。代替的には、それは短くされて、偏向器10aからのビームが妨げられることなくレンズ71に進行し、偏向器10bからのビームが短くされたミラーで反射するようになっていてもよい。代替的には、それは図23cに描かれ以下に説明されるような反射又は透過格子であってもよい。得られた仮想画像は、レンズ71、絞り72、及びレンズ70を備えた対物レンズにより基板17上に投影される。
ビームスプリッタ3の目的は、左と右のビームの重なりから仮想格子画像を生成することである。制御装置151によりEODに印加される電圧は、レンズNA限界付近の角度2θ(max)に対応するビーム経路を実線により、ゼロ付近の角度2θ(min)を点鎖線により図内に表された角度の範囲に影響を与える。大きな2θ角度は、書き込まれてもよい最も細かい周期に対応し、小さな2θ角度は、ビームのサイズに近づく周期に対応する。ビームスプリッタ3へのオプションの反射コーティング4の使用は、右アームからのほぼ全ての光が基板17上に投影されてもよいため、システムの効率を向上させるが、しかしその使用は、角度ゼロ付近でのビームクリッピングゆえに、ビームのサイズに近づく周期での格子の書き込みを不可能にする。)
g 「In FIGS. 23a and 23b were depicted means for generating grating images using AO and EO deflectors and an objective lens recombiner. Both these designs have limitations in Doppler scanning applications. To review, in FIG. 23a an EO deflector was utilized, so this design cannot be used for Doppler scanning, while the design depicted in FIG. 23b utilizes a AO deflector, and so can be used. However, at the short UV wavelengths of interest for lithography, EO deflectors are generally capable of a much larger angular range of deflection than AO deflectors, when expressed as a ratio of the angular range divided by the angular divergence of the beam (the so-called number of resolvable spots, see Yariv and Yey, ibid., Chapter 10.2). The number of resolvable spots essentially determines the number of distinct spatial frequency components in the image that are available, and it is desirable to have this as large as possible.」(第34欄第44行-第59行)
(日本語訳:図23a及び23bには、AO及びEO偏向器と対物レンズ再結合器を使用して格子画像を生成するための手段が描かれた。これらの両方の設計は、ドップラー走査用途での限界を有する。見直すと、図23aではEO偏向器が利用されたため、この設計はドップラー走査には使用され得ないが、図23bに描かれた設計はAO偏向器を利用するため使用され得る。しかし、リソグラフィの対象となる短いUV波長では、角度範囲をビームの角度発散で割った比で表された場合(いわゆる分解可能スポット数、ヤリフ及びイェイ、同上、10.2章を参照)、EO偏向器は一般に、AO偏向器よりもはるかに大きな角度範囲の偏向が可能である。解像可能なスポットの数は、本質的に、利用可能な画像中の別個の空間周波数成分の数を決定し、これを可能な限り大きく有することが望ましい。)
(イ)FIG.5a、14a、21及び23aは次のとおりである。
【FIG.5a】
「
[図:0001409839000001.jpg]
」
【FIG.14a】
「
[図:0001409839000002.jpg]
」
【FIG.21】
「
[図:0001409839000003.jpg]
」
【FIG.23a】
「
[図:0001409839000004.jpg]
」
(ウ)引用発明の認定
上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、図14aに係るビームが基板上で分割され再結合されて、静的に及び電子制御下の両方で画像周期を生成することで、ビームを分割して再結合する方法(上記(ア)c)であって、ステージ30が、干渉計により制御されて走査される方法として、図5aのようにy軸に平行な縞を持つ小さな格子画像38を大きな基板17上に連続的に平行走査して、大きな格子39を得るための方法(上記(ア)b)について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)
「レーザー11からのビームは、シャッター/減衰器12を通過し、次に集光レンズ85、ピンホール86、及びコリメートレンズ87により空間的にフィルタリングされ、
前記ビームは次に誘電体ビームスプリッタ14により左と右のビームに分割され、
左ビームは、両方の干渉計アームの強度をバランスさせるために減衰器15により調整され、次に左ミラー16aにより基板17に方向付けられ、右ビームは、右ミラー16bにより基板に方向付けられ、
ビームが基板17上で分割され再結合されて、静的に及び電子制御下の両方で画像周期を生成し、
前記基板17は、x-yステージ30に取り付けられ、これに干渉計基準ミラー43が取り付けられ、ステージ30は、干渉計により制御されて走査される方法であって、(上記(ア)c)
ビームの交差時に、周期的干渉パターンが周期p=λ/(2sinθ)で生成され、ここでλはビーム波長であり、θは特定のビーム対の交差半角であり、(上記(ア)a)
前記ステージ30が、干渉計により制御されて走査される方法が、
前記ステージ30は最初に、格子画像38が基板17を越えてステージ下方左手側隅に配置されるように位置付けられ、ステージ30は次に、長く細い格子片が基板17上のレジストコーティング18に曝露されるように、固定されたx位置に保持されたまま、-y方向に滑らかに移動され、ステージ30は、格子画像38が基板17から外れるような方向に移動し続け、連続的な走査が、所望の領域の曝露が完了するまで、ブーストロフェドニック方式で次に繰り返され、干渉計が十分に安定であり、干渉計光学系が十分な品質であり、x-yステージの動作が十分に滑らかで正確であれば、基板17上の大面積で低歪みの格子が達成される方法。(上記(ア)b)」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2017/051443号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「 [0001] 本発明は、微細周期パターンを基板上に実現するための露光方法、それを用いた微細周期構造体の製造方法、グリッド偏光素子の製造方法、及び露光装置に関する。」
「[0028] 最適なマスクの矩形開口のサイズは露光条件によって異なる。例えば、波長λ=266nm、干渉角度θ=47.6°(干渉縞L&Sピッチ180nm)、照射領域(ビームの1/e2直径)φ82mm、干渉縞のコントラスト70%、レーザー出力100mW、レジストの感光閾値を5mJ/cm2、ワークとして8インチウェハを使用し、面積の90%を露光領域とする。(・・・省略)・・・)」
「[0031] 図3は、ワークW上の有効照射領域E0を示す平面図である。ここで、図3の左右方向がX方向、図3の上下方向がY方向である。この図3に示すように、有効照射領域E0のX方向中央部に干渉領域E1が形成され、その両側に非干渉領域E2が形成される。干渉領域E1においては干渉縞が形成され、非干渉領域には干渉縞は形成されない。
例えば、光源2の波長λ=266nm、干渉角度15°≦θ≦60°とした場合、干渉領域E1では、隣接するライン間のピッチが154nm~514nmであるストライプ状の干渉縞が形成される。干渉縞のピッチは、干渉角度θ、光源2の波長λ及び露光環境の屈折率nに依存し、λ/(2n・sinθ)である。すなわち、干渉縞のピッチは、n=1(空気中での露光)とすると、光源2のレーザー光の波長λの半分近くまで短くすることができる。」
(イ)引用文献2に記載された技術的事項の認定
上記(ア)から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「微細周期パターンを基板上に実現するための露光方法において([0001])、レジストの感光閾値である、波長λ=266nm等の露光条件を満たす([0028])、波長λ=266nmのレーザー光を光源として用いること([0031])。」
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開昭59-066117号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「産業上の利用分野
本発明は、パターン形成方法特に半導体装置の製造方法に関し、1ミクロンもしくはそれ以下のサブミクロンのルールを持つ半導体装置のパターン形成方法を与えるものである。」(第2頁左上欄第14行-18行)
「第1図は本発明による半導体装置を露光するためのレーザホログラフィー装置の原理図である。11はコヒーレントは(当審コメント:「な」の誤記と認める。)光の発生装置としてのレーザ、12はミラー、13はレンズと空間フィルタを組み合わせたビームエクスパンダー、14はコリーメータレンズ、16はビームスプリッター、16はレジストを塗布したウェハーサンプルである。レーザとしては、He-Cdレーザ(波長、3250Å、4416Å)Arイオンレーザ(波長 4579Å)、を用いることができ、レジストとしては通常ポジ型レジストとして用いるAZ1350(シップレー社)が、上記のレーザの発振波長に対して光感応領域があらため(当審コメント:「あるため」の誤記と認める。)使用可能である。レーザから出たコヒーレントな光は、ミラー12により反射され、ビームエクスパンダー13によってビームを拡げた後、コリメータンンズ14により平行ビームに修正した後、ビームはビームスプリッタ15により2つの方向に分割され、再びミラー12によって反射され、二方向からのビームがサンプル上のレジストに入射される。レーザの波長をλ、グレーティングのピッチをPサンプル上のレジストに二方向から照射するレーザビームのなす角を2θとすると、グレーティングピッチPは
P=λ/2Sinθ
で表わせる。
このようにして露光されたレジストを現像すると、ほぼグレーティングピッチPの約1/2の線巾の白黒のパターンが得られる。サンプルに対する入射角2θを調節することにより、グレーティンンピツチを0.2~2μm程度までマスクを用いることなく、ウェハ上にレジストパターンを形成することができる。」(第2頁左下欄第8行-右下欄最下行)
(イ)引用文献3に記載された技術的事項の認定
上記(ア)から、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「コヒーレントな光の発生装置としてのレーザ、ミラー、レンズと空間フィルタを組み合わせたビームエクスパンダー、コリーメータレンズ、ビームスプリッタ及びレジストを塗布したウェハーサンプルからなるパターン形成方法、特に半導体装置の製造方法に関し、1ミクロンもしくはそれ以下のサブミクロンのルールを持つ半導体装置のパターン形成方法において、
レーザの波長をλ、グレーティングのピッチをPサンプル上のレジストに二方向から照射するレーザビームのなす角を2θとすると、グレーティングピッチPは
P=λ/2Sinθ
で表わせるから、
サンプルに対する入射角2θを調節することにより、グレーティンンピツチを0.2~2μm程度までマスクを用いることなく、ウェハ上にレジストパターンを形成することができること。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)「300nm以下の波長の光を出力するコヒーレントな光源からの出力光を波面整形後に2以上に分岐させ、分岐した前記出力光を20°以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させる工程」との発明特定事項について
a レーザーからのビームがコヒーレントな光源からの出力であることは明らかであるから、引用発明の「レーザー11からのビーム」と、本件補正発明の「300nm以下の波長の光を出力するコヒーレントな光源からの出力光」は、「所定の波長以下の波長の光を出力するコヒーレントな光源からの出力光」の点で共通する。
b 引用発明の「集光レンズ85、ピンホール86、及びコリメートレンズ87により空間的にフィルタリング」することは、スペイシャルフィルタにより空間的にフィルタリングして波面整形をするといえるから、本件補正発明の「波面整形」することに相当する。
c 引用発明において「レーザー11からのビーム」が「空間的にフィルタリング」され、「次に誘電体ビームスプリッタ14により左と右のビームに分割され」ることは、本件補正発明の「光源からの出力光」を「波面整形」後に「2以上に分岐させ」ることに相当する。
d 引用発明の「左ビームは、両方の干渉計アームの強度をバランスさせるために減衰器15により調整され、次に左ミラー16aにより基板17に方向付けられ、右ビームは、右ミラー16bにより基板に方向付けられ」て、「ビームが基板17上で分割され再結合されて、静的に及び電子制御下の両方で画像周期を生成し」「ビームの交差時に、周期的干渉パターンが周期p=λ(2sinθ)で生成され、ここでλはビーム波長であり、θは特定のビーム対の交差半角であ」ることは、分割されたビームを左右のミラーで所定の角度で再結合させて画像周期を有する干渉光を生成させることであるといえるから、本件補正発明の「分岐した前記出力光を20°以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させる」ことと、「分岐した前記出力光を所定の角度以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させる」点で共通する。
e そして、方法発明である引用発明は上記aからdの構成をなす工程を備えるといえる。
f したがって、引用発明の「レーザー11からのビームは、シャッター/減衰器12を通過し、次に集光レンズ85、ピンホール86、及びコリメートレンズ87により空間的にフィルタリングされ、前記ビームは次に誘電体ビームスプリッタ14により左と右のビームに分割され、左ビームは、両方の干渉計アームの強度をバランスさせるために減衰器15により調整され、次に左ミラー16aにより基板17に方向付けられ、右ビームは、右ミラー16bにより基板に方向付けられ」、「ビームが基板17上で分割され再結合されて、静的に及び電子制御下の両方で画像周期を生成することで、ビームを分割して再結合し」「ビームの交差時に、周期的干渉パターンが周期p=λ(2sinθ)で生成され、ここでλはビーム波長であり、θは特定のビーム対の交差半角であ」る工程は、上記発明特定事項と、「所定の波長以下の波長の光を出力するコヒーレントな光源からの出力光を波面整形後に2以上に分岐させ、分岐した前記出力光を所定の角度以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させる工程」の点で共通する。
(イ)「基板を前記干渉光に対して連続して搬送させながら、前記干渉光を前記基板に照射する工程」との発明特定事項について
a 引用発明は「ビームが基板17上で分割され再結合されて、静的に及び電子制御下の両方で画像周期を生成」し「ビームの交差時に、周期的干渉パターンが周期p=λ/(2sinθ)で生成され、ここでλはビーム波長であり、θは特定のビーム対の交差半角である」ものであって、「前記ステージ30が、干渉計により制御されて走査される方法が、前記ステージ30は最初に、格子画像38が基板17を越えてステージ下方左手側隅に配置されるように位置付けられ、ステージ30は次に、長く細い格子片が基板17上のレジストコーティング18に曝露されるように、固定されたx位置に保持されたまま、-y方向に滑らかに移動され、ステージ30は、格子画像38が基板17から外れるような方向に移動し続け」ることは、基板17を画像周期に対して連続的な走査となるよう、基板17を取り付けたx-yステージ30を十分に滑らかに動作させながら生成した画像周期が基板17に方向付けられることであるといえるから、本件補正発明の「基板を前記干渉光に対して連続して搬送させながら、前記干渉光を前記基板に照射する」ことに相当する。
b また、方法発明である引用発明は上記aの構成をなす工程を備えるといえる
c したがって、引用発明の上記aの構成は、上記発明特定事項に相当する。
(ウ)「スペイシャルフィルタを含む光整形素子により前記光源の出力光を波面整形し、前記光整形素子により整形された前記出力光を光分岐素子により2以上に分岐し、前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、ミラー素子に含まれる取付位置が可変な角度可変ミラーの角度および取付位置を調整して前記干渉角度を調整し、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する」との発明特定事項について
a 上記(ア)bでの説示を踏まえると、引用発明の「集光レンズ85、ピンホール86、及びコリメートレンズ87により空間的にフィルタリングされ」ることは、本件補正発明の「スペイシャルフィルタを含む光整形素子により前記光源の出力光を波面整形」することに相当する。
b 上記(ア)cでの説示を踏まえると、引用発明の「前記ビームは次に誘電体ビームスプリッタ14により左と右のビームに分割され」ることは、本件補正発明の「前記光整形素子により整形された前記出力光を光分岐素子により2以上に分岐」することに相当する。
c 上記(ア)d及びeでの説示を踏まえると、引用発明の「左ビームは、両方の干渉計アームの強度をバランスさせるために減衰器15により調整され、次に左ミラー16aにより基板17に方向付けられ、右ビームは、右ミラー16bにより基板に方向付けられ」ることは、本件補正発明の「前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、ミラー素子に含まれる取付位置が可変な角度可変ミラーの角度および取付位置を調整して前記干渉角度を調整し、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する」ことと、「前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する」点で共通する。
したがって、引用発明の「集光レンズ85、ピンホール86、及びコリメートレンズ87により空間的にフィルタリングされ」、「前記ビームは次に誘電体ビームスプリッタ14により左と右のビームに分割され」、「左ビームは、両方の干渉計アームの強度をバランスさせるために減衰器15により調整され、次に左ミラー16aにより基板17に方向付けられ、右ビームは、右ミラー16bにより基板に方向付けられ」ることは、上記発明特定事項と、「スペイシャルフィルタを含む光整形素子により前記光源の出力光を波面整形し、前記光整形素子により整形された前記出力光を光分岐素子により2以上に分岐し、前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する」点で共通する。
(エ)引用発明の「レーザー11からのビーム」であって、「左ビームは、両方の干渉計アームの強度をバランスさせるために減衰器15により調整され、次に左ミラー16aにより基板17に方向付けられ、右ビームは、右ミラー16bにより基板に方向付けられ」る「ビームが基板上で分割され再結合されて、静的に及び電子制御下の両方で画像周期を生成する」「方法」は、光であるビームを基板に方向付けて基板上に照射して再結合する方法であるといえるから、本件補正発明の「光照射方法」に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「所定の波長以下の波長の光を出力するコヒーレントな光源からの出力光を波面整形後に2以上に分岐させ、分岐した前記出力光を所定の角度以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させる工程と、
基板を前記干渉光に対して連続して搬送させながら、前記干渉光を前記基板に照射する工程と、を含み、
前記干渉光を発生させる工程では、
スペイシャルフィルタを含む光整形素子により前記光源の出力光を波面整形し、
前記光整形素子により整形された前記出力光を光分岐素子により2以上に分岐し、
前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する
光照射方法。」
【相違点1】
所定の波長が、本件補正発明は300nmであるのに対して、引用発明は300nmとは特定されない点。
【相違点2】
所定の角度が、本件補正発明は20°であるのに対して、引用発明は20°とは特定されない点。
【相違点3】
本件補正発明は、「ミラー素子」について、「ミラー素子に含まれる取付位置が可変な角度可変ミラーの角度および取付位置を調整して前記干渉角度を調整」できると特定されるのに対して、引用発明はこのように特定されない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「レーザー11からのビームは」、「レジストコーティング18に曝露される」ものであるところ、当該「レーザー11」の波長に関して、引用文献1には「リソグラフィの対象となる短いUV波長」(上記(2)ア(ア)g)であることが示唆されていることから、一般に、リソグラフィの技術分野において、当業者は、微小なパターンを露光するためにレジストに適した短いUV波長の光を用いることに動機付けがあるといえる。
一方、引用文献2に記載された技術的事項のように、半導体装置のパターン形成方法において波長λ=266nmのレーザー光が300nm以下の短いUV波長であることは技術常識である。
したがって、引用発明における所定の波長以下の波長として、レジストに適した300nm以下のリソグラフィの対象となる短いUV波長の光を用いて、上記相違点1に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2及び3について
引用文献1に「制御装置151によりEODに印加される電圧は、レンズNA限界付近の角度2θ(max)に対応するビーム経路を実線により、ゼロ付近の角度2θ(min)を点鎖線により図内に表された角度の範囲に影響を与える。大きな2θ角度は、書き込まれてもよい最も細かい周期に対応し、小さな2θ角度は、ビームのサイズに近づく周期に対応する。」(上記(2)ア(ア)f)と記載されていることを踏まえると、引用発明において、ビームの書き込みに際しては、大きな2θ角度や角度ゼロ付近を含む小さな2θ角度とすることが示唆されているといえる。
一方、引用文献3に記載された技術的事項のとおり、レーザがサンプルに対して入射する入射角2θを調節することにより、マスクを用いることなくウェハ上にレジストパターンを形成する方法においてμmサイズの格子周期を作成することは公知であったといえる。
これに対して、作成する格子周期(グレーティングピッチP)と波長(λ)から角度(θ)が定まるところ(P=λ/2Sinθ)、これを20°以下とすることは実質的に、格子周期(グレーティングピッチP)を所定以上と特定していることに他ならない。
そして、格子周期(グレーティングピッチP)をどの程度とするかは設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明において、分岐した前記出力光を所定の角度以下の干渉角度で交差させて干渉光を発生させるにあたり、引用文献3に記載された技術的事項を踏まえて、角度ゼロ付近を含む小さな2θ角度を考慮して、所定の角度以下の角度を20°以下となして、上記相違点2に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。
また、引用文献1には、引用発明の図14aの実施形態とは異なる、図21に係る「格子周期の連続制御を可能にする書き込み干渉計設計」の実施形態として、「ミラー16は、電動ステージ98に取り付けられ、これはx-z平面内での並進と回転を可能にする」構成が記載されているところ、当該構成は、いずれかのミラーを、並進させて位置を調整するとともに、回転させて角度を調整することで、ビームの干渉角度を調整し、格子周期を連続制御する構成であるといえるから、引用発明において、ビームの書き込みに際してビームが交差する角度を大きな2θ角度や角度ゼロ付近を含む小さな2θ角度とするにあたり、図21に係る上記構成を適用して、上記相違点3に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて当業者が予測することができなかった顕著なものということはできない。
(5)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、「引用文献1のミラー16a、16bは、電導ステージ98に取り付けられており、XZ面内での回転角度は調整可能であるが、取付位置は固定である。そのため、交差角度(2θ)を小さくするためにはステージ30の高さを下げる必要が出てくる。このように、引用文献1には、本願請求項1に係る発明の構成およびその作用効果について、何ら開示も示唆もされていない。」と主張する。
しかしながら、上記(4)イのとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年7月26日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1-3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記干渉光を発生させる工程では、
スペイシャルフィルタを含む光整形素子により前記光源の出力光を波面整形し、
前記光整形素子により整形された前記出力光を光分岐素子により2以上に分岐し、
前記光分岐素子により分岐されたそれぞれの前記出力光を前記干渉角度で交差させるべく、ミラー素子に含まれる取付位置が可変な角度可変ミラーの角度および取付位置を調整して前記干渉角度を調整し、前記分岐されたそれぞれの前記出力光を前記ミラー素子により前記基板へ向けて偏向する」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)で説示したとおり、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-003340