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特許拒絶査定不服審判

2024-001835

装置、方法、プログラム、感光性樹脂組成物の製造方法および感光性樹脂積層体の製造方法

審判番号
2024-001835
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-117572
請求日
2024年02月02日
審決日
2026年01月27日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】旭化成株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 関根 洋之
  • 審判官 川村 大輔
分類
P18 .121-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-117572「装置、方法、プログラム、感光性樹脂組成物の製造方法および感光性樹脂積層体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月14日出願公開、特開2021- 4933〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特願2019-117572号(以下「本件出願」という。)は、2019年(平成31年)6月25日の出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和5年 2月20日付け:拒絶理由通知書 令和5年 4月26日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 6月19日付け:拒絶理由通知書 令和5年 8月22日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年11月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和6年 2月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年2月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された。 「 液状の感光性樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部と、 前記感光性樹脂組成物の特性を示す特性データを取得する特性取得部と、 取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部と、 を備え、 前記感光性樹脂組成物の特性は、前記感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の特性の少なくとも1つを含み、 前記感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の特性は、伸度、低温伸度、ヤング率、破断強度、降伏点応力、熱膨張係数、残留応力、リフロー時収縮率、リフロー時脱ガス、熱伝導度、吸水率、比誘電率、誘電正接、絶縁性、信頼性試験後伸度、Cuボイド、閉環率、複屈折率、耐電圧、マイグレーション耐性、落下試験耐性、スクラッチ耐性、硬度、体積抵抗、表面抵抗、透水率、および、EKL保護性から選択される少なくとも一つである、装置。」 (下線は補正箇所である。) (2)本件補正前の請求項1の記載 本件補正前の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 液状の感光性樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部と、 前記感光性樹脂組成物の特性を示す特性データを取得する特性取得部と、 取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行する学習処理部と、 を備える装置。」 2 補正の適否 (1)補正の目的について 本件補正における請求項1において追加された「前記感光性樹脂組成物の特性は、前記感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の特性の少なくとも1つを含み、 前記感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の特性は、伸度、低温伸度、ヤング率、破断強度、降伏点応力、熱膨張係数、残留応力、リフロー時収縮率、リフロー時脱ガス、熱伝導度、吸水率、比誘電率、誘電正接、絶縁性、信頼性試験後伸度、Cuボイド、閉環率、複屈折率、耐電圧、マイグレーション耐性、落下試験耐性、スクラッチ耐性、硬度、体積抵抗、表面抵抗、透水率、および、EKL保護性から選択される少なくとも一つである」という事項については、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である感光性樹脂組成物の特性を特定のものに限定する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (2)独立特許要件について ア 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 イ 引用文献に記載された事項 本願出願前の平成29年(2017年)4月27日に頒布され、下記第3の2で述べる原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(先端素材産業のイノベーションについて,https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/016_05_00.pdf)には、以下の記載がある。 (ア)スライド6 「 [図:0001433482000001.jpg] 」 (イ)スライド9 「 [図:0001433482000002.jpg] 」 (ウ)スライド10 「 [図:0001433482000003.jpg] 」 (エ)スライド12 「 [図:0001433482000004.jpg] 」 ウ 引用発明 (ア)配合データ 上記イ(エ)のスライド12(以下「スライド12」という。)における「配合データ」は、技術的にみて、フォトレジストの「配合データ」である。 (イ)評価結果・諸物性値 スライド12における「評価結果」及び「諸物性値」は、それぞれ、上記(ア)と同様、フォトレジストの「評価結果」及び「諸物性値」である。 (ウ)重要特性 スライド12における「重要特性」等の記載の右部の右向き矢印中に「顧客要求」と記載されていることから、当該「重要特性」は、「顧客が要求」するものといえる。 (エ)機械学習 機械学習は、一般にAIが行うものであることを考慮すると、スライド12における「機械学習」は、AIが行うものといえる。 (オ)AIによる機械学習 スライド12には、「構造化情報を基礎学習」の項目として「配合データ」、「評価結果」及び「諸物性値」が記載され、またこれらと「機械学習」の枠部の間に枠部に向けられた2つの矢印が記載されている。 これら記載は、「配合データ」、「評価結果」及び「諸物性値」を用いてAIが機械学習することを意味するものといえる。 (カ)サンプル調製に用いられる配合データ スライド12には、「機械学習」という枠部の右部にある「配合データ」とその下部にある「サンプル調製」との間に下向き矢印が記載されている。 当該記載より、上記「配合データ」は、「フォトレジストのサンプル調製」に用いられるものといえる。 (キ)入出力 スライド12には、「重要特性」等の記載の右部の右向き矢印は、「機械学習」の枠部中に向けられ、かつ当該枠部と当該枠部の右部の「配合データ」との間に、「材料設計」と記載した右向き矢印が記載されている。 当該記載及び上記(エ)によれば、スライド12に示される「材料開発フロー」は、「重要特性」等をAIに入力し、当該AIが「配合データ」を出力するものといえる。 (ク)フォトレジストの材料開発に用いられる装置 上記イ(ウ)のスライド10によれば、材料開発においては、これまで開発者の勘、経験等に頼っていたところ、スライド12には、機械学習を用いた材料開発フローが記載されている。そして、材料開発分野における機械学習の活用に関する本件出願当時の技術水準(例えば、後記エ(ウ)c(a)ii参照)に照らせば、スライド12の上記記載事項は、フォトレジストの材料開発に用いられる装置を実質的に開示していると認められる。 (ケ)以上より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「 フォトレジストの配合データと、 フォトレジストの評価結果及び諸物性値を用いてAIが機械学習し、 顧客が要求する重要特性等を当該AIに入力し、当該AIがフォトレジストのサンプル調製に用いられる配合データを出力する、フォトレジストの材料開発に用いられる装置。」 エ 対比及び判断 (ア)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 a 組成データ、組成取得部 引用発明の「フォトレジストの配合データ」は、技術的にみて、本件補正発明の「感光性樹脂組成物の組成を示す組成データ」に相当する。 また、引用発明は、「フォトレジストの配合データ」を用いるものであるから、「フォトレジストの配合データ」を「取得」するものといえる。 そうしてみると、引用発明は、本願発明における「感光性樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部」を備えるという要件を満たすものである。 b 特性データ、特性取得部 引用発明の「フォトレジストの評価結果又は諸物性値」は、技術的にみて、フォトレジストの特性に関するものであることは明らかである。 そうしてみると、引用発明の「フォトレジストの評価結果又は諸物性値」は、本件補正発明の「感光性樹脂組成物の特性を示す特性データ」に相当する。 また、引用発明は、「フォトレジストの評価結果又は諸物性値」を用いるものであるから、「フォトレジストの評価結果又は諸物性値」を「取得」するものといえる。 そうしてみると、引用発明は、本願発明における「感光性樹脂組成物の特性を示す特性データを取得する特性取得部」を備えるという要件を満たすものである。 c 装置 引用発明の「フォトレジストの材料開発に用いられる装置」は、技術的にみて、本件補正発明の「装置」に相当することは明らかである。 (イ)一致点及び相違点 上記(ア)より、本件補正発明と引用発明は、 「 感光性樹脂組成物の組成を示す組成データを取得する組成取得部、 前記感光性樹脂組成物の特性を示す特性データを取得する特性取得部を備える、装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1)本件補正発明の「感光性樹脂組成物」は「液状」のものであるのに対して、引用発明の「フォトレジスト」は「液状」であるか否か特定するものではない点。 (相違点2)本件補正発明は、「取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて、目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデルの学習処理を実行」する「学習処理部」を備えるものであるのに対し、引用発明は、このような「学習処理部」を備えることを特定するものではない点。 (相違点3)前記感光性樹脂組成物の特性について、本件補正発明は、「前記感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の特性の少なくとも1つを含み、前記感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の特性は、伸度、低温伸度、ヤング率、破断強度、降伏点応力、熱膨張係数、残留応力、リフロー時収縮率、リフロー時脱ガス、熱伝導度、吸水率、比誘電率、誘電正接、絶縁性、信頼性試験後伸度、Cuボイド、閉環率、複屈折率、耐電圧、マイグレーション耐性、落下試験耐性、スクラッチ耐性、硬度、体積抵抗、表面抵抗、透水率、および、EKL保護性から選択される少なくとも一つである」と特定しているのに対して、引用発明は、「フォトレジストの評価結果又は諸物性値」がどのようなものであるのかを特定していない点。 (ウ)判断 以下、事案に鑑み、相違点1、相違点3、相違点2について順次判断する。 a 相違点1について 一般に成膜前のフォトレジストが液状のものであることは、文献を提示するまでもなく本件出願時における技術常識である。 そうしてみると、引用発明において、配合データとして液状のフォトレジストのデータを用いることは、当業者が適宜なし得ることである。 また、本件補正発明において液状の感光性樹脂組成物の配合データを用いることによって奏される効果は、勘や経験による試行錯誤を必要とせずに効率的に材料開発を行うことができる(本件明細書の段落【0026】)ことであるが、このような効果は機械学習を用いた場合の効果として、当業者が予測し得る範囲を超えた格別なものではない。(後記c(a)ii参照)。 b 相違点3について (a) ソルダーレジスト等の硬化膜として用いられるフォトレジストの硬化膜の特性として、伸度、破断強度、残留応力、熱膨張係数、吸水率、絶縁性及び誘電正接を評価することは、本件出願時における周知技術である(例えば、国際公開第2018/230144号(特に[0001]、[0054]、実施例参照)では伸度が測定されている。特開平9-258440号公報(特に【0001】、【0002】、【0004】、【実施例】、【0110】参照)では破断強度及び残留応力が測定されている。特開2003-344999号公報(特に【請求項1】、【請求項2】、【0001】、【0002】、【0007】、【実施例】参照)では、熱膨張係数及び吸水率が測定されている。特開2007-208299号公報(特に【0009】-【0012】、【0058】、【実施例】参照)では吸水率が測定されている。国際公開第2018/225441号(特に[0007]、[0013]、実施例参照)では絶縁性、熱膨張係数及び誘電正接が測定されている。)。 (b) そうしてみると、引用発明において、硬化膜としたフォトレジストの伸度、破断強度、残留応力、熱膨張係数、吸水率、絶縁性及び誘電正接のいずれかを「評価結果」、「諸物性値」及び「重要特性」とし、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、上記周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。 (c) また、本件明細書には、感光性樹脂組成物の特性として、「感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜」における「伸度、低温伸度、ヤング率、破断強度、降伏点応力、熱膨張係数、残留応力、リフロー時収縮率、リフロー時脱ガス、熱伝導度、吸水率、比誘電率、誘電正接、絶縁性、信頼性試験後伸度、Cuボイド、閉環率、複屈折率、耐電圧、マイグレーション耐性、落下試験耐性、スクラッチ耐性、硬度、体積抵抗、表面抵抗、透水率、および、EKL保護性から選択される少なくとも一つ」の特性(以下、「本件硬化膜特性」という。)とすることによる特有の効果は記載されておらず、本件補正発明において、感光性樹脂組成物の特性を本件硬化膜特性に限定することによって奏される効果が、引用発明の当業者が予測し得る範囲を超えた格別なものであるとはいえない。 なお、請求人は、令和6年2月2日に提出された審判請求書において、概略、以下のように主張しているが、上記(a)のとおり、フォトレジストを硬化膜として用いることは周知技術であるから、当該主張は採用できない。 「 引用文献1には、「構造化情報を基礎学習」の項目「配合データ」、「評価結果」および「諸物性値」が「機械学習」に供されること、「膜厚」、「基板」、「用途」、「パターンサイズ」および「重要特性」が「顧客要求」として「機械学習」に供されること、「機械学習」から「材料設計」として「配合データ」が出力されること、配合データによってフォトレジストが生成されることなどが記載されている。ここで、フォトレジストとは、照射領域または非照射領域が除去された後、配線形成などの後に残りの領域が除去されるものであり、硬化膜として利用されるものではない(例えば下記の参考文献1~3参照)。従って、引用文献1には、レジストについて硬化膜としての特性を示す特性データを取得して学習データに用い、目標特性に応じた組成を出力するモデルを学習することについて、何らの記載も示唆もされていない。 (参考文献1)古川など、「超微細加工入門」、オーム社、1989年6月20日、p4-5 (参考文献2)フォトポリマー懇話会、「フォトポリマーハンドブック」、工業調査会、p214 (参考文献3)東レリサーチセンター調査研究部門、「エレクトロニクス用レジストの最新動向」、東レリサーチセンター調査研究部門、2003年1月5日、p5」 c 相違点2について 相違点2について、引用発明が、本件補正発明における、以下の3つの要件をそれぞれ満たすものであるのか、あるいは当該要件を満たすものとすることを当業者が容易に想到し得たものであるのか、順次検討する。 1)「モデルの学習処理を実行する学習処理部」を備えるという要件 2)「取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて」、「モデルの学習処理を実行する」という要件 3)「モデル」が「目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力する」という要件 (a)「モデルの学習処理を実行する学習処理部を備え」るという要件について i 引用発明は、「AIが機械学習」するものであるから、本件補正発明の「学習処理部」に相当する構成を有するものといえる。 ii ここで、材料の構成比とその特性値を教師データとしてニューラルネットワークモデルに学習させ、学習後のネットワークに材料特性情報を入力し、その材料特性を持つ構成比を得ることが、尾田 十八、岡田 裕康、ニューラルネットワークを用いた多成分材料の材料設計法、材料システム、1995年、14巻、51~56頁(特に51頁右欄第1行~52右欄10行、54頁右欄6~55頁左欄12行、Table VI、)56頁右欄1~21行に記載されていることからも理解できるように、学習データを用いて所望の特性を有する材料の構成比を出力するモデルを作成することができることは、本件出願時の技術常識(技術水準)であったといえる。 iii そして、引用発明は、「フォトレジストの配合データと、フォトレジストの評価結果及び諸物性値を用いてAIが機械学習」するものであるから、当該「配合データ」、「評価結果及び諸物性値」は、技術的にみて、本件補正発明の「学習データ」に相当し、引用発明は、「学習データ」を用いるものといえる。 iv) 上記ii及びiiiに加え、引用発明は、「顧客が要求する重要特性を当該AIに入力し、当該AIがフォトレジストのサンプル調製に用いられる配合データを出力する」ものであることをふまえると、引用発明は、学習データを用いて、「顧客が要求する重要特性」を「入力」し、「フォトレジストのサンプル調製に用いられる配合データを出力する」モデルを形成するものといえる。 v そして、当該モデルの形成は、技術的にみて、本件補正発明の「学習処理部」に相当する引用発明の構成によってなされるものといえる。 vi 以上より、引用発明は、本件補正発明の「モデルの学習処理を実行する学習処理部」を備えるという要件を満たすものといえる。あるいは、仮に、引用発明が当該要件を満たすものでないとしても、上記技術常識に基づいて、当該要件を満たすものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (b)「取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用いて」、「モデルの学習処理を実行する」という要件 i 上記(a)iiiに記載したとおり、引用発明は、学習データを用いるものであり、かつ上記(ア)a及びbに記載したとおり、引用発明の「配合データ」及び「評価結果及び諸物性値」は、それぞれ、本件補正発明の「組成データ」及び「特性データ」に相当するものであるから、引用発明は、「配合データ」及び「評価結果及び諸物性値」を「学習データ」として用いるものである。 ii ここで、引用発明における学習データは、技術的にみて「モデルの学習処理を実行する」ために用いられるものといえる。 iii そうしてみると、引用発明は、本件補正発明の「取得された前記組成データおよび前記特性データを含む学習データを用い」て「モデルの学習処理を実行」するという要件を満たす。 (c)「モデル」が「目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力する」という要件について i 引用発明は、「顧客が要求する重要特性を当該AIに入力し、当該AIがフォトレジストのサンプル調製に用いられる配合データを出力する」ものであるから、引用発明は、「顧客が要求する重要特性」を入力し、「サンプル調製に用いられる配合」を「出力する」モデルを実質的に備えている。仮にそうでなかったとしても、そのような構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 ii また、引用発明の「顧客が要求する重要特性」は、技術的にみて、顧客が使用するフォトレジストの重要特性であるといえる。 また、引用発明の「重要特性」は、その文言どおり、本件補正発明の「特性」に相当することは明らかである。 さらに、引用発明の「顧客が要求する重要特性」は、顧客の要求するものであるから、「目標特性」であるといえる。 加えて、顧客が使用するフォトレジストは、目標とするフォトレジストであるといえる。 さらに加えて、引用発明の「顧客が要求する重要特性」は、「AIに入力」するものであるから、データであるといえる。 そうしてみると、引用発明の「顧客が要求する重要特性」は、本件補正発明の「目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データ」に相当する。 iii 引用発明の「フォトレジスト」の「サンプル調製に用いられる配合」は、技術的にみて、本件補正発明の「推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成」に相当する。 そうしてみると、引用発明の「フォトレジストのサンプル調製に用いられる配合データ」は、本件補正発明の「推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データ」に相当する。 iv また、学習モデルは、一般にデータを入力したことに応じて出力をするものである。 v さらに、配合データとして液状のフォトレジストのデータを用いること及び「感光性樹脂組成物の特性」として本件硬化膜特性を用いることは、それぞれ、上記a及びbで述べたとおり、当業者が適宜なし得ることである。 vi 以上より、「顧客が要求する重要特性を当該AIに入力し、当該AIがフォトレジストのサンプル調製に用いられる配合データを出力する」引用発明において、「目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データ」を入力したことに応じて「推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データ」を出力するモデルを備える構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 以上より、引用発明において、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 なお、請求人は、令和5年8月22日に提出された意見書において、概略、以下のように主張しているが、上述(特に上記(a)iv及びv参照)のとおり、当該主張は採用できない。 「 特許・実用新案審査基準第III部第2章第3節「新規性・進歩性の審査の進め方」の3.1.1(1)「刊行物に記載された発明」には、以下の通り記載されている。 「b 審査官は、刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握することができる発明であっても、以下の(i)又は(ii)の場合は、その刊行物に記載されたその発明を「引用発明」とすることができない。 (i) 物の発明については、刊行物の記載及び本願の出願時の技術常識に基づいて、当業者がその物を作れることが明らかでない場合」 この点、引用文献1には、「構造化情報を基礎学習」の項目「配合データ」、「評価結果」および「諸物性値」が「機械学習」に供されること、「膜厚」、「基板」、「用途」、「パターンサイズ」および「重要特性」が「顧客要求」として「機械学習」に供されること、「機械学習」から「材料設計」として「配合データ」が出力されることなどが記載されている。しかしながら、このような記載と、本願出願時の技術常識に基づいても、本願請求項1に係る発明を作れることは明らかではない。例えば、引用文献1には、「目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデル」についても、このような「モデルの学習処理を実行する学習処理部」についても記載されていない。このような引用文献1の記載と技術常識を用いても、本願請求項1に係る発明を作れることは決して明らかではない。 従って、引用文献1に記載の発明は、上記審査基準に照らして「引用発明」とすることができないものである。 ・・・略・・・ また、引用文献1には「目標とする感光性樹脂組成物の特性を示す目標特性データを入力したことに応じて推奨する感光性樹脂組成物の組成を示す推奨組成データを出力するモデル」についても、このような「モデルの学習処理を実行する学習処理部」についても記載されていない。 これに対して本願請求項1に係る発明によれば、上記の構成を有するので、熟練した作業者による試行錯誤を必要とせずに、目標特性の感光性樹脂組成物を作るための組成を得ることができる(段落0026)。」 オ 独立特許要件の小括 以上より、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正の却下の決定の理由のむすび 以上より、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和6年2月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-15に係る発明は、令和5年8月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。 理由1(進歩性)本件出願の請求項1、3-15に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:JSR株式会社、先端素材産業のイノベーションについて、2017年4月27日(開催日)、第16回 産業構造審議会 新産業構造部会 資料5、https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/016_05_00.pdf 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、前記第2の1(2)の下線部の構成(「感光性樹脂組成物の特性」に関する限定事項)を削除したものである。 そうしてみると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、上記周知技術は引用文献1に記載されていない上記限定事項に関するものであるから、上記限定事項を備えていない本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-001835

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