特許拒絶査定不服審判
2022-016370
薄い吸収体を有する極紫外線マスクブランク作製システム及びその製造システム
- 審判番号
- 2022-016370
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-161641外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月13日
- 審決日
- 2023年08月28日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 分類
- P18 .575-Z (G03F) / P18 .121-Z (G03F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-161641号「薄い吸収体を有する極紫外線マスクブランク作製システム及びその製造システム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月18日出願公開、特開2021-21948号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)7月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年(平成26年)7月11日、2015年(平成27年)2月11日 米国)を国際出願日とする特願2017-500345号の一部を令和2年9月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は、以下のとおりである。
令和2年10月23日 :翻訳文、手続補正書の提出
令和3年 8月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年10月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年12月 6日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和4年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 6月 8日付け:令和4年3月1日にされた手続補正について
の補正の却下の決定、拒絶査定
令和4年10月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 2月17日 :上申書の提出
第2 令和4年10月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年10月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により請求項3の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「極紫外線(EUV)マスクブランクシステムであって、
超低膨張基板と、
前記超低膨張基板の上の多層スタックと、
前記多層スタックの上の吸収層であって、80nm未満の厚さと、13.5nmの波長における極紫外線(EUV)光の2%未満の反射率を有する吸収層と、
前記多層スタック上に形成され、窒化チタン、炭化ホウ素、及び炭化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、キャッピング層と、
前記吸収層上の、オキシ窒化タンタル、及び酸化ホウ素タンタルから選択される、反射防止コーティングとを備え、
前記キャッピング層を露出するように、パターンが前記反射防止コーティングと前記吸収層にエッチングされ、
前記吸収層が、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、又はテルル(Te)の単層である、システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の請求項3の記載は次のとおりである。
「極紫外線(EUV)マスクブランクシステムであって、
超低膨張基板と、
前記超低膨張基板の上の多層スタックと、
前記多層スタックの上の吸収層であって、80nm未満の厚さと、13.5nmの波長における極紫外線(EUV)光の2%未満の反射率を有する吸収層とを備え、
前記多層スタック上に形成され、窒化チタン、炭化ホウ素、及び炭化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、キャッピング層、又は前記吸収層上の、オキシ窒化タンタル、及び酸化ホウ素タンタルから選択される、反射防止コーティングをさらに備え、
前記吸収層が、錫(Sn)、鉛(Pb)、ハフニウム(Hf)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、又はテルル(Te)の単層を含む、システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「吸収層」が、「錫(Sn)、鉛(Pb)、ハフニウム(Hf)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、又はテルル(Te)の単層を含む」ものであったものを、「鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、又はテルル(Te)の単層である」ものに限定するとともに、「キャッピング層」又は「反射防止コーティングをさらに備え」るものであったものを、「キャッピング層と」「反射防止コーティングとを備え」るものとした上で、「前記キャッピング層を露出するように、パターンが前記反射防止コーティングと前記吸収層にエッチングされ」るとの構成を付加して限定するものであって、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項3に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項3に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の最先の優先権主張の日(以下、この日を「本願の優先日」という。)前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-114336号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審が付した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光などの短波長域の露光光を使用するリソグラフィー法において好ましく用いられる反射型マスクブランク用基板の製造方法、該基板を用いた反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業において、半導体デバイスの高集積化に伴い、従来の紫外光を用いたフォトリソグラフィー法の転写限界を上回る微細パターンが必要とされている。このような微細パターンの転写を可能とするため、より波長の短い極端紫外光(Extreme Ultra Violet;以下、EUV光と呼ぶ。)を用いた露光技術であるEUVリソグラフィーが有望視されている。なお、ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2~100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィーにおいて用いられる露光用マスクとしては、例えば特許文献1に記載されたような反射型マスクが提案されている。
このような反射型マスクは、基板上に露光光であるEUV光を反射する多層反射膜を有し、更に、多層反射膜上にEUV光を吸収する吸収体膜がパターン状に設けられた構造をしている。このような反射型マスクを搭載した露光機(パターン転写装置)を用いてパターン転写を行なうと、反射型マスクに入射した露光光は、吸収体膜パターンのある部分では吸収され、吸収体膜パターンのない部分では多層反射膜により反射された光が反射光学系を通して半導体基板(レジスト付きシリコンウエハ)上に転写される。」
「【0024】
次に、本発明の反射型マスクブランク用基板を用いた反射型マスクブランクの製造方法について説明する。
図1(a)は、本発明により得られる反射型マスクブランクの一実施の形態の断面図である。これによると、反射型マスクブランク10は、前述の基板(本発明による反射型マスクブランク用基板1)上に、多層反射膜2、バッファ膜3、吸収体膜4を順に有する構成である。(・・・省略・・・)
【0025】
本発明では、基板1の材料としては、ガラスを主成分とするガラス基板である。ガラス基板は良好な平滑性と平坦度が得られ、特に反射型マスク用基板として好適である。ガラス基板材料としては、低熱膨張係数を有するアモルファスガラス(例えばSiO2-TiO2系ガラス等)、石英ガラス、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等が挙げられる。(・・・省略・・・)
【0026】
上記基板1上に形成する多層反射膜2は、屈折率の異なる材料を交互に積層させた構造をしており、特定の波長の光を反射することが出来る。例えば13~14nmのEUV光に対する反射率が高い、MoとSiを交互に40周期程度積層したMo/Si多層反射膜が挙げられる。(・・・省略・・・)
【0029】
吸収体膜4の材料としては、露光光の吸収率が高く、吸収体膜の下側に位置する膜(本実施の形態ではバッファ膜であるが、バッファ膜を設けない構成では多層反射膜である。)とのエッチング選択比が十分大きいものが選択される。(・・・省略・・・)
【0030】
他の吸収体膜の材料としては、Crを主成分とする材料(クロム、窒化クロム等)、タングステンを主成分とする材料(窒化タングステン等)、チタンを主成分とする材料(チタン、窒化チタン)等を用いることができる。
これらの吸収体膜は、通常のスパッタ法(DCスパッタ、RFスパッタ)、イオンビームスパッタ法等の成膜法で形成することが出来る。吸収体膜の膜厚は、露光光である例えばEUV光が十分に吸収できる厚みであればよいが、通常は30~100nm程度である。
また、上記バッファ膜3は、吸収体膜4に転写パターンを形成する際に、エッチング停止層として下層の多層反射膜を保護する機能を有し、本実施の形態では多層反射膜と吸収体膜との間に形成される。なお、バッファ膜は必要に応じて設ければよい。
バッファ膜の材料としては、吸収体膜とのエッチング選択比が大きい材料が選択される。バッファ膜と吸収体膜のエッチング選択比は5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。(・・・省略・・・)
【0032】
以上のようにして得られる反射型マスクブランクの吸収体膜に所定の転写パターンを形成することにより、露光用反射型マスクが得られる。
吸収体膜へのパターン形成は、リソグラフィーの手法を用いて形成することができる。図1の(b)乃至(d)を参照して説明すると、まず、この反射型マスクブランク10(図1(a)参照)の吸収体膜4上にレジスト層を設け、このレジスト層に所定のパターン描画、現像を行ってレジストパターン5aを形成する(図1(b)参照)。次に、このレジストパターン5aをマスクとして、吸収体膜4にエッチングなどの手法でパターン4aを形成する。例えばTaを主成分とする吸収体膜の場合には、塩素ガスやトリフロロメタンを含むガスを用いるドライエッチングを適用することが出来る。
【0033】
残存するレジストパターン5aを除去して、図1(c)に示すように所定の吸収体膜パターン4aが形成されたマスク11が得られる。
吸収体膜4にパターン4aを形成した後、バッファ膜3を吸収体膜パターン4aにしたがって除去し、吸収体膜パターン4aのない領域では多層反射膜2を露出させた反射型マスク20が得られる(図1(d)参照)。ここで、例えばCr系材料からなるバッファ膜の場合は、塩素と酸素を含む混合ガスでのドライエッチングを用いることが出来る。尚、バッファ膜3を除去しなくても必要な反射率が得られる場合は、図1(c)のように、バッファ膜3を吸収体膜と同様のパターン状に加工せず、多層反射膜2上に残すこともできる。(・・・省略・・・)」
「【実施例】
【0034】
次に、実施例により本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)(・・・省略・・・)
【0036】
次に、上記基板上に、多層反射膜として、露光波長13~14nmの領域の反射膜として適したMoとSiからなる交互積層膜を形成した。成膜はイオンビームスパッタリング装置を用いて行ない、まずSiターゲットを用いて、Si膜を4.2nm成膜し、その後、Moターゲットを用いて、Mo膜を2.8nm成膜し、これを1周期として40周期積層した後、最後にSi膜を4nm成膜した。合計膜厚は、284nmである。
また、得られた多層反射膜表面の表面粗さを測定したところ、0.13nmRmsとなり、得られた多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0°で反射率を測定したところ、67.1%と高い反射率であった。(・・・省略・・・)」
(イ)図1(a)は次のとおりである。
[図:0001406339000001.jpg]
上記図1(a)から、「吸収体膜」は単層であることが見て取れる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、図1(a)に係る反射型マスクブランク用基板を用いた反射型マスクブランクについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(以下、引用発明1の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)
「極端紫外光を使用するリソグラフィー法に用いられる反射型マスクブランク用基板を用いた反射型マスクブランクであって(【0001】)、
前記反射型マスクブランクは、反射型マスクブランク用基板上に、多層反射膜、バッファ膜、吸収体膜を順に有する構成であり(【0024】)、
前記反射型マスクブランク用基板の材料としては、低熱膨張係数を有するアモルファスガラス(例えばSiO2-TiO2系ガラス等)が挙げられ(【0025】)、
前記反射型マスクブランク用基板上に形成する多層反射膜は、Mo/Si多層反射膜が挙げられ(【0026】)、
前記吸収体膜の材料としては、露光光の吸収率が高く、吸収体膜の下側に位置するバッファ膜とのエッチング選択比が十分大きいものが選択され(【0029】)、
前記吸収体膜は、通常のスパッタ法(DCスパッタ、RFスパッタ)、イオンビームスパッタ法等の成膜法で形成することが出来、前記吸収体膜の膜厚は、露光光であるEUV光が十分に吸収できる厚みであって、30~100nm程度であり(【0030】)、
前記バッファ膜は、前記吸収体膜に転写パターンを形成する際に、エッチング停止層として下層の多層反射膜を保護する機能を有し、多層反射膜と吸収体膜との間に形成され、バッファ膜の材料としては、前記吸収体膜とのエッチング選択比が大きい材料が選択されており(【0030】)、
前記吸収体膜は、単層であり(上記(イ))、
反射型マスクブランクの吸収体膜に所定の転写パターンを形成することにより、露光用反射型マスクが得られ(【0032】)、
吸収体膜4にパターン4aを形成した後、バッファ膜3を吸収体膜と同様のパターン上に加工せず、多層反射膜2上に残すことができる(【0033】)、
反射型マスクブランク。」
イ 引用文献2及び3
(ア)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2004-6798号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0021】
また、図2に示すように、本発明の反射型マスク2は、このようなマスクブランクス1における少なくとも前記吸収体層16、すなわち低反射層15及び露光光吸収体層14がパターン状に形成されたものである。
本発明の反射型マスクは、マスク表面の吸収体層を露光光を吸収する層とマスクパターン検査波長に対する反射率の小さい層とにそれぞれ機能を分離して積層構成することにより、マスクパターン検査時のコントラストが十分得られるようにしている。」
「【0025】
吸収体層16は、すでに述べたように、下層をEUV領域を含む短波長域の露光光の吸収体層14とし、上層をマスクパターンの検査に使用する検査光の低反射層15とした二層構造で構成されている。本発明は、このように吸収体層16を露光光の吸収層と検査光の低反射層とに機能を分離した積層構成としている。下層の露光光吸収体層14は、EUVなどの短波長域の光を吸収する材質で構成される。このような露光光吸収体としては、たとえばクロム、マンガン、コバルト、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、モリブデン、パラジウム、銀、カドミウム、錫、アンチモン、テルル、沃素、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、金及びこれらの元素を含む合金、並びに、これらの元素又はこれらの元素を含む合金と窒素及び/又は酸素を含む物質から選ばれる少なくとも1種の物質で構成することが好ましい。(・・・省略・・・)」
「【0042】
次に、EUV光の吸収体である露光光吸収体層14及び検査光の低反射層15からなる吸収体層16を加工して所定のパターンを有する吸収体パターンを形成する(パターニング工程、同図(b)参照)。通常は、吸収体層16の表面に電子線描画プロセスにより所定のパターンを有するレジストパターンを形成し、次いで吸収体層のエッチング処理を行う。エッチング処理はドライエッチングあるいはウェットエッチングでもよく、材質によって適当な方法とその条件を選択する。(・・・省略・・・)」
(イ)引用文献3
本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特許第3078163号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】 原版としてのパターンが形成され光源からの軟X線あるいは真空紫外線を反射して露光対象に前記パターンを投影するために使用されるリソグラフィ用反射型マスクにおいて、前記パターンが、前記軟X線あるいは真空紫外線を反射する反射部の上に設けられた吸収体パターンで構成され、前記軟X線あるいは真空紫外線の波長をλとし、前記吸収体パターンをなす物質の光学定数を1-δ-ik(δ,kは実数、iは虚数単位)と表わす時、0.29<k/|δ|<1.12が成立し、前記吸収体パターンの厚さdが3λ/(16|δ|)<d<5λ/(16|δ|)を満たすことを特徴とするリソグラフィ用反射型マスク。(・・・省略・・・)」
「【請求項3】 軟X線あるいは真空紫外線の波長が13nm近傍であり、前記吸収体パターンが、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ag,Cd,In,Sn,Sb,ランタノイド元素,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Tl,Pb,Biの中から選ばれた1種の単体、あるいはこれらの中の少なくとも1つの元素を含む物質からなる、請求項1に記載のリソグラフィ用反射型マスク。」
「【0040】次に上記説明したマスクや露光装置を利用したデバイスの製造方法の実施例を説明する。図20は微小デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造工程を示すフローチャートである。ステップ71(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ72(マスク製作)では設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。このマスクは反射型マスクであって、上記説明した特徴を有している。一方、ステップ73(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ74(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意したマスクとウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。(・・・省略・・・)」
(ウ)周知技術Aの認定
前記(イ)に摘記した引用文献3の「ステップ72(マスク製作)では設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。」(【0040】)が、吸収体をエッチング等によってパターン化して回路パターン製作することを意味することは、本願の優先日当時の技術常識であり、また、「波長が13nm近傍」の「軟X線あるいは真空紫外線」(【請求項3】)は、EUVの一般的な波長である13.5nmを含むことを踏まえると、前記(ア)及び(イ)に摘記した引用文献2及び3の記載事項から、次の技術的事項は本願の優先日前に周知技術(以下「周知技術A」という。)であると認められる
「極紫外線(EUV)マスクにおいて、エッチングされる吸収層に用いるEUV光の吸収係数が高い材料として、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)またはテルル(Te)が存在したこと。」
ウ 引用文献4及び5
(ア)引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である米国特許出願公開第2007/0090084号明細書(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。(日本語訳は当審が作成して付した。)
「[0003] EUVL masks may be patterned from multilayer (ML) mask blanks. (・・・省略・・・)」
(日本語訳:[0003] EUVLマスクは多層(ML)マスクブランクから形成されてもよい。)
[0023] The buffer layer 230 may facilitate the etching and repair of the absorber layer 240. Buffer layer 230 may be a buried silicon oxide and may have a thickness of approximately 20 nm to 100 nm. A buffer layer 230 may not be necessary in some applications. The absorber layer 240 may allow a pattern to be formed through lithography.
(日本語訳:[0023] バッファ層230は、吸収体層240のエッチング及び修理を容易にする。バッファ層230は、シリコン酸化物でもよく、約20nm~100nmの厚さを有することができる。バッファ層230は、いくつかの用途では必要ではないかもしれない。吸収体層240により、リソグラフィーによってパターンを形成することができる。)
「[0026] The inner capping layer (ICL) 320 may provide protection for the ML reflector 310. In an embodiment, the ICL 320 may be made of a relatively chemically inert material. The difference between the refractive indices of the material for the inner capping layer 320 and the adjacent layer is typically high. In one embodiment, the material is one of gold (Au), baron nitride (BN), carbon (C), palladium (Pd), platinum (Pt), rhodium (Rh), ruthenium (Ru), silicon (Si), silicon carbide (SiC), boron carbide (B4C), silicon oxide (SiO2), and titanium nitride (TiN). Other potential materials may include transition-metal borides, carbides and nitrides, boron carbide and alumina. The thickness hi of the inner capping layer 320 may be selected to enable the constructive interference between the ML stack 330 and the ML reflector 310. The ICL 320 may also include more than one inner layer to provide more protection to the ML reflector during blank reclaiming and mask patterning.」
(日本語訳:[0026] 内側キャッピング層(ICL)320は、ML反射器310のための保護を提供することができる。一実施形態では、ICL320は、比較的化学的に不活性な材料で作られてもよい。内側キャッピング層320と隣接する層の材料の屈折率の間の差は、一般的に高い。一実施形態では、材料は、金(Au)、窒化ホウ素(BN)、炭素(C)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)、酸化シリコン(SiO2)、及び窒化チタン(TiN)の1つである。他の潜在的な材料は、遷移金属の硼化物、炭化物、窒化物、炭化ホウ素及びアルミナを含むことができる。内側キャッピング層320の膜厚h1は、ML積層体330と反射体310との間に建設的干渉を可能にするために選択することができる。ICL320は、また、ブランクの再生・マスクのパターニング中に、ML反射器により薄い保護を提供する1層以上の内層を含むことができる。)
(イ)引用文献5
本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2004-342867号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1の発明は、基板と、該基板上に設けられた露光光を反射する反射多層膜と、該反射多層膜上に設けられた露光光を吸収する吸収体層とを有する反射型マスクブランクスであって、前記反射多層膜と吸収体層の間に、吸収体層に所定のパターンを形成する際のエッチング環境に耐性を有するバッファー層を有しており、該バッファー層を構成する材料は、その膜厚方向で、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の値が異なっており、該バッファー層の反射多層膜に隣接する領域近傍は、バッファー層の他の部分と比較して、複素屈折率の虚数部の絶対値が小さくなっていることを特徴とする反射型マスクブランクスである。(・・・省略・・・)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
図1は反射型マスクブランクス及びこのマスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を示す概略断面図である。
反射型マスクブランクスの一実施形態としては、図1(a)に示すように、基板1上に反射多層膜2が形成され、更にその上に、バッファー層3及び吸収体層4の各層が形成された構造をしている。(・・・省略・・・)
【0015】(・・・省略・・・)
本発明では、バッファー層の材料として、以下の(a)、(b)及び(c)から選ばれる化合物を選択することが出来る。
(a)Zr,Nb,Y,Mo,Laから選ばれる少なくとも1種の元素と、B,C,N,O,Si,Sから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む化合物
(b)Siと、B,C,N,Oから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む化合物
(c)Bと、C又はNから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む化合物
【0016】(・・・省略・・・)上記のバッファー層材料は、その組成比を変えることで、例えば波長13~14nmのEUV光領域での複素屈折率の虚数部の絶対値を小さくできる材料である。
(・・・省略・・・)上記(b)の化合物としては、例えばSiC、SiB6、Si3N4、SiCO、SiCN、SiCON、SiCB,SiBN等の化合物が挙げられる。
また、上記(c)の化合物としては、例えばB4C、BN等の化合物が挙げられる。
【0017】(・・・省略・・・)本発明では、バッファー層の複素屈折率の虚数部の絶対値は、反射多層膜に接する側近傍において、例えば0.0112(波長13.4nmにおけるSiO2の場合の値に相当)以下であるのが好ましい。このようにすれば、反射多層膜近傍のバッファー層におけるEUV光吸収が極めて少なくなるので、エッチング残渣があっても、反射率の低下はほとんど起こらないため好ましい。
【0018】(・・・省略・・・)
本発明によれば、例えば吸収体層とのエッチング選択比、マスク検査に使用する検査光に対するコントラストなどを最適化できるようなバッファー層材料の選択の自由度が広がる。つまり、従来の露光光吸収能が小さい材料という基準に拘らず、バッファー層の膜厚方向での組成分布を持たせることにより露光光吸収能が変えられるような材料も選択できるため、他層との関係を最適化できる材料を選択でき、しかもエッチング残渣による反射率低下を抑制できる。(・・・省略・・・)
【0019】
また、バッファー層へのパターン形成時、すなわち反射領域のバッファー層の除去時に、バッファー層の一部が反射多層膜上を覆うように例えば数nmの厚みで残存していてもよい。
このように、バッファー層を僅かに残すことにより、バッファー層のエッチング時の反射多層膜へのダメージを防止することが出来るとともに、バッファー層の除去により反射多層膜表面が大気中に露出して酸化され、その結果、反射率が低下するのを防止することが出来る。(・・・省略・・・)」
(ウ)周知技術Bの認定
前記(ア)及び(イ)に摘記した引用文献4及び5の記載事項から、次の技術的事項は本願の優先日前に周知技術(以下「周知技術B」という。)であると認められる
「極紫外線(EUV)マスクの吸収体層をエッチングする際に反射層を保護するエッチングストップ層の材料として、窒化チタン、炭化ホウ素、または炭化ケイ素が存在したこと。」
エ 引用文献6及び7
(ア)引用文献6
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2012-209481号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスクブランク、及び反射型マスクブランクの製造方法に関する。特に、極端紫外線(Extreme Ultra Violet;EUV)を光源とするEUVリソグラフィを用いた半導体装置などに利用される、反射型マスクブランク、及び反射型マスクブランクの製造方法に関する。」
「【0023】(・・・省略・・・)図1(c)の反射型マスクブランク200は基板11の表面に多層反射層22、緩衝層41、吸収層51、低反射層61が順次形成されている。(・・・省略・・・)」
「【0026】図1(c)及び図1(d)の低反射層61は、190nm~260nmの紫外光に対して反射防止機能を有し、Taの酸化窒化物(TaON)で構成される。他の材料としてタンタルホウ素酸化物(TaBO)やタンタルシリコン酸化物(TaSiO)でも良い。図1(b)及び図1(d)の導電膜71は、CrNで構成されている。(・・・省略・・・)」
(イ)引用文献7
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2011/115131号(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)リソグラフィ光学部材用基材およびその製造方法に関する。」
「[0004] まず第1手順として、光学部材の基材(EUVL光学部材用基材)として、表面粗さが非常に小さく、なだらかな凹凸のない平坦な表面を有するガラス基板を準備する。このガラス基板としては、EUV光照射下においても温度変化による伸縮が極力生じないように低い熱膨張性を有することが求められ、低熱膨張係数を有するガラス(シリカガラス(SiO2ガラス)やTiO2を含有するシリカガラス(以下、本明細書では、TiO2-SiO2ガラスと記す))製の基板が通常用いられる。
[0005] 第2手順として、ガラス基板の最終的にマスクパターンが形成される面(成膜面)上に、EUV光を反射する反射層を形成したMLブランクを作製する。反射層としては、EUV光における高屈折層(例えばSiなど)と低屈折層(例えばMoなど)とを交互に積層することで、EUV光を反射層表面に照射した際の光線反射率が高められた多層反射膜(ML膜)が通常使用される。また多層反射膜の劣化を防ぐために、ML膜の上に保護膜(例えばRuなど)が通常形成される。
[0006] 次いで第3手順として、MLブランクのML膜(保護膜が形成されている場合は保護膜)上に、EUV光を吸収する吸収層(例えばTaやTaNなど)を形成する。必要に応じて、マスクパターン検査光の波長にて低反射率を有する反射防止層(例えばTaONやTaOなど)を吸収層の上に形成してもよい。
このようにMLブランク上に吸収層、さらに必要に応じて反射防止層が形成されたものがマスクブランクである。」
(ウ)周知技術Cの認定
前記(ア)及び(イ)に摘記した引用文献6及び7の記載事項から、次の技術的事項は本願の優先日前に周知技術(以下「周知技術C」という。)であると認められる
「極紫外線(EUV)マスクブランクの吸収層上に、オキシ窒化タンタルまたは酸化ホウ素タンタルからなる反射防止層を備えること。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「極端紫外光を使用するリソグラフィー法に用いられる反射型マスクブランク用基板を用いた反射型マスクブランク」は、本件補正発明の「極紫外線(EUV)マスクブランクシステム」に相当する。
(イ)引用発明の「反射型マスクブランク用基板」は、「低熱膨張係数を有するアモルファスガラス(例えばSiO2-TiO2系ガラス等)」からなるところ、当該「反射型マスクブランク用基板」は、本件補正発明の「超低膨張基板」に相当するといえるのであり、このことは、本願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願明細書等」という。)の「EUVマスクブランク200は、ガラス、シリコン、又は他の超低熱膨張材料の超低熱膨張基板202を有しうる。超低熱膨張材料は、・・・酸化ケイ素-酸化チタン、又はこれらの材料の範囲内の熱膨張係数を有する他の材料を含む。」(【0023】)との記載に照らして明らかである。
(ウ)引用発明の「多層反射膜」は、本件補正発明の「多層スタック」に相当する。そして、当該「多層反射膜」は、「反射型マスクブランク用基板上に形成する」ものであるから、本件補正発明でいう「前記超低膨張基板の上の」ものといえる。
(エ)引用発明の「吸収体膜」は、本件補正発明の「吸収層」に相当する。また、当該「吸収体膜」は、「多層反射膜」の上にあるといえるから、本件補正発明の「前記多層スタックの上の」ものといえる。
そして、引用発明の「反射型マスクブランク」が「極端紫外光を使用するリソグラフィー法に用いられる」ことにも照らせば、本件補正発明と引用発明とは、「多層スタックの上の吸収層であって、所定の厚さと、13.5nmの波長における極紫外線(EUV)光の所定の反射率を有する吸収層」を備える点で共通するといえる。
(オ)引用発明の「バッファ層」は、「多層反射膜」の上に存在するとともに、「前記吸収体膜に転写パターンを形成する際に、エッチング停止層として下層の多層反射膜を保護する機能を有」することから、本件補正発明の「キャッピング層」に相当するといえるとともに、本件補正発明でいう「前記多層スタック上に形成され」るものといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「多層スタック上に形成され、所定の材料を含むキャッピング層」を備える点で共通するといえる。
(カ)引用発明は、「反射型マスクブランクの吸収体膜に所定の転写パターンを形成することにより、露光用反射型マスクが得られ、吸収体膜4にパターン4aを形成した後、バッファ膜3を吸収体膜と同様のパターン上に加工せず、多層反射膜2上に残すことができる」ものであるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記キャッピング層を露出するように、パターンが」「前記吸収層にエッチングされ」る点で共通する。
(キ)引用発明の「吸収体膜」は「単層」であることから、本件補正発明と引用発明とは、「前記吸収層が、単層である」点で共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「極紫外線(EUV)マスクブランクシステムであって、
超低膨張基板と、
前記超低膨張基板の上の多層スタックと、
前記多層スタックの上の吸収層であって、所定の厚さと、13.5nmの波長における極紫外線(EUV)光の所定の反射率を有する吸収層と、
前記多層スタック上に形成され、所定の材料を含む、キャッピング層と、
前記キャッピング層を露出するように、パターンが前記吸収層にエッチングされ、
前記吸収層が、単層である、システム。」
【相違点1】
所定の厚さと、13.5nmの波長における極紫外線(EUV)光の所定の反射率を有する「吸収層」が、本件補正発明は、「80nm未満の厚さと」、13.5nmの波長における極紫外線(EUV)光の「2%未満の反射率を有する」、「鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、又はテルル(Te)」の単層であるのに対し、引用発明は、「膜厚は、露光光である例えばEUV光が十分に吸収できる厚みであって、30~100nm程度」の単層であり、「露光光の吸収率が高く、吸収体膜の下側に位置するバッファ膜とのエッチング選択比が十分大きいものが選択され」るものである点。
【相違点2】
「キャッピング層」が、本件補正発明は、「窒化チタン、炭化ホウ素、及び炭化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む」のに対して、引用発明は、「前記吸収体膜に転写パターンを形成する際に、エッチング停止層として下層の多層反射膜を保護する機能を有し」、「前記吸収体膜とのエッチング選択比が大きい材料が選択され」るものである点。
【相違点3】
本件補正発明は、「吸収層上のオキシ窒化タンタル、及び酸化ホウ素タンタルから選択される、反射防止コーティング」を備えており、キャッピング層を露出するようにパターンが吸収層にエッチングされる際に、吸収層のみならず反射防止コーティングもパターンがエッチングされるのに対して、引用発明は、このような「反射防止コーティング」を備えない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)引用発明から出発した当業者は、実施に当たり、「吸収体膜」に係る条件を検討する必要があるところ、まずは「吸収体膜」の材料を「露光光の吸収率が高く、吸収体膜の下側に位置するバッファ膜とのエッチング選択比が十分大きい」ものから選択し、その上で、「吸収体膜」の膜厚を「露光光であるEUV光が十分に吸収できる厚みであって、30~100nm程度」となるように設定するような検討順序とすることは、材料が定まると他の要素がおおむね定まることが多いことからみて、当業者にとって通常採用し得ることであるといえる。
(イ)そこで、まず、当業者が引用発明の「吸収体膜」の材料としてどのようなものを選択できるかを検討する。
本願の優先日前に「極紫外線(EUV)マスクにおいて、エッチングされる吸収層に用いるEUV光の吸収係数が高い材料として、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)またはテルル(Te)が存在した」ことは周知である(周知技術A)。そして、このような材料が(エッチング停止層たる)バッファ膜とのエッチング選択比が十分に大きいものであることも、吸収層がエッチングされる以上、当然のことである。よって、引用発明の「吸収体膜」の材料として、相違点1に係る本件補正発明で特定されたもののうち、「ビスマス(Bi)」、「アンチモン(Sb)」又は「テルル(Te)」のいずれかを選択することは、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)その上で、上記当業者が、これらの材料からなる「吸収体膜」の膜厚をどの程度に設定できるかを検討する。
引用発明の「吸収体膜」の「EUV光を十分に吸収できる厚みであって、30~100nm程度」の大きさとして、「80nm未満」とすることは、引用文献1の【0037】に、露光光を十分に吸収できる厚さとして「70nm」という値が記載されていることからみても、当業者が適宜設定できたことといえる。そして、上記(イ)のとおりの材料を選択しつつ、そのような厚さにした場合のEUV光の反射率は、客観的に定まり、その結果、2%未満となるはずであるところ、そのことは、本願明細書等の【0051】の記載からみて明らかである。
また、引用発明の「吸収体膜」において、EUV光の反射率を2%未満程度にすることは、吸収体膜である以上、当業者が適宜設定し得たことといえるところ、上記の材料を選択した場合に、そのような反射率にすると、結果的に、当該「吸収体膜」の膜厚が「80nm未満」となるともいえる。
(エ)以上の次第で、引用発明から出発した当業者は、相違点1に係る本件補正発明の構成に容易に至る。
イ 相違点2について
引用発明から出発した当業者は、実施に当たり、「バッファ層」の材料を具体化する必要がある。そして、本願の優先日前に、「極紫外線(EUV)マスクの吸収体層をエッチングする際に反射層を保護するエッチングストップ層の材料として、窒化チタン、炭化ホウ素、または炭化ケイ素が存在した」ことは周知である(周知技術B)。
そうすると、「バッファ層」の具体的な材料として、「窒化チタン、炭化ホウ素、または炭化ケイ素」のいずれかを採用して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことであるといえる。
ウ 相違点3について
「極紫外線(EUV)マスクブランクの吸収層上に、オキシ窒化タンタルまたは酸化ホウ素タンタルからなる反射防止層を備えること」が、本願の優先日前に周知技術(周知技術C)である。そうすると、当業者であれば、引用発明の「吸収体膜」の上にオキシ窒化タンタルまたは酸化ホウ素タンタルからなる反射防止層を設けて、相違点3に係る本件補正発明の構成のうち「吸収層上のオキシ窒化タンタル、及び酸化ホウ素タンタルから選択される、反射防止コーティング」を備えるようにすることは、適宜なし得たことである。
そして、引用発明において上記のとおり構成すれば、相違点3に係るその余の構成である「キャッピング層を露出するようにパターンが吸収層にエッチングされる際に、吸収層のみならず反射防止コーティングもパターンがエッチングされる」ことを満たすのは、明らかである。
エ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び上記各周知技術に基づいて当業者が予測することができなかった顕著なものということはできない。
(5)請求人の主張
請求人は、引用文献2(特開2004-6798号公報)に記載された吸収体層は二層構造(【0025】)であるから、これを引用発明に適用すると、吸収層が「単層」であるという本件補正発明の構成に至らない旨主張する。
しかしながら、上記(3)イのとおり、「極紫外線(EUV)マスクにおいて、エッチングされる吸収層に用いるEUV光の収係数が高い材料として、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)またはテルル(Te)が存在した」ことが周知(周知技術A)であることが認定できるのであり、引用文献2もそれを開示することに変わりないから、請求人が主張する事情は、周知技術Aの認定を左右するものではなく、よって、その認定を前提とする上記(4)アの判断も左右しない。
さらにいえば、請求人が主張する引用文献2の上記【0025】に記載された「吸収体層16」は、確かに、下層と上層の二層構造となっているものの、同段落には、下層が「EUV領域を含む短波長域の露光光の吸収体層」である一方で、上層が「マスクパターンの検査に使用する検査光の低反射層」であることが記載されている。つまり、このような二層の吸収体層16のうち、上層は、EUV用の反射型マスクに通常備わっている吸収体層とは異なるものであることが明らかである。そうすると、当該上層は、上記(4)アで説示したとおり、引用発明から出発して、「吸収体膜」の材料を「露光光の吸収率が高く、吸収体膜の下側に位置するバッファ膜とのエッチング選択比が十分大きい」ものから選択しようとしている当業者が参照するものとはいえず、むしろ、当該当業者は、下層のみを参照するのが自然である。よって、この点からも、請求人が主張する事情は、上記(4)アの判断を左右しない。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年10月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項3に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項3に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記キャッピング層を露出するように、パターンが前記反射防止コーティングと前記吸収層にエッチングされ」るとの限定事項を削除し、「吸収層」について、選択肢として錫(Sn)及びハフニウム(Hf)を付加し、「キャッピング層と」、「反射防止コーティングとを備え」るものと「キャッピング層」又は「反射防止コーティングをさらに備え」るものとしたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)で説示したとおり、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-016370