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特許異議申立

2022-700814

活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いたフィルム

審判番号
2022-700814
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-200262外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7024309
請求日
2022年08月18日
審決日
2023年05月22日
公報発行日
2023年08月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7024309号発明「活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いたフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7024309号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7024309号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。
特許第7024309号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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1 特許異議申立の経緯

特許第7024309号(請求項の数5。以下、「本件特許」という。)は、平成29年10月16日の出願(特願2017-200262号)に係るものであって、令和4年2月15日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は、令和4年2月24日である)。

その後、令和4年8月18日に、本件特許の請求項1~5に係る特許に対して、特許異議申立人である前田 洋志(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされた。

以降の手続の経緯は、以下のとおりである。

令和4年11月29日付け 取消理由通知書

令和5年 1月31日 訂正請求書、意見書(特許権者)

同年 2月13日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)

令和5年2月13日付け通知書に対する意見書は、申立人から、提出されなかった。

2.証拠方法

申立人が、特許異議申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開2011-225796号公報
甲第2号証:特開2012-102166号公報
甲第3号証:共栄社化学株式会社従業員の落合一真が2022年5月16日に作成した「UA-306Hの水酸基価について」と題した報告書
甲第4号証:特開2009-275088号公報
甲第5号証:国際公開2014/156812号

(以下、甲第1号証~甲第5号証を、それぞれ、「甲1」~「甲5」という。)

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和5年1月31日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~5について訂正することを求めた(以下、「本件訂正」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を、「本件明細書」という。)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1を、

「水酸基価が3~32mgKOH/g以下である活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)と、有機溶剤(C)とを含有し、
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)が、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物、及び/又は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物を含有するものであり、
前記樹脂(B)は、4級アンモニウム塩を少なくとも有する重合性単量体(b1)、重合性単量体(b2)、及び脂環構造を有する重合性単量体(b3)を共重合したものであり、
前記重合性単量体(b1)は、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムブマイド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、及び3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホネートからなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記重合性単量体(b2)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びメタクリル酸からなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記重合性単量体(b3)は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記樹脂(B)の配合量が、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、15~30質量部の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。」

に訂正する。

(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。なお、請求項3は、訂正事項2により削除される。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項4を、

「請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。」に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項5を、

「請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とするフィルム。」に訂正する。

(5)一群の請求項

本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、請求項1が訂正されるのに伴い訂正されるから、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の〔1~5〕について請求されたものである。

2 訂正の適否の判断

(1)訂正事項1について

訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において、

(i)活性エネルギー線硬化性化合物(A)の水酸基価が本件訂正前には、「60mgKOH/g以下」であったのを、「3~32mgKOH/g」とする訂正(以下、「訂正事項1-1」という。)

(ii)「重合性単量体(b2)」として、本件訂正前に記載された、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレートを含む複数の化合物から、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレートを削除する訂正(以下、「訂正事項1-2」という。)

(iii)樹脂(B)の配合量について、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、15~30質量部の範囲である」ことを追加する訂正(以下、「訂正事項1-3」という。)

とを組み合わせたものといえる。

ア 訂正事項1-1は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)の水酸基価が「60mgKOH/g以下である」とあったのを、本件明細書の【0013】及び【0067】の【表1】の記載に基づいて、「3~32mgKOH/g」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項1-1が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。

イ 訂正事項1-2は、重合性単量体(b2)としてあげられた複数の化合物から、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレートを削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項1-2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。

ウ 訂正事項1-3は、活性エネルギー線硬化性組成物において、樹脂(B)の配合量を、本件訂正前の請求項3並びに本件明細書の【0039】及び【0067】の【表1】の記載に基づいて、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、15~30質量部の範囲」であるとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項1-3が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。

エ よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2

訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。

よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3、4

訂正事項3、4は、訂正前の請求項4、5が請求項3の記載を引用するものであったところ、訂正事項2で請求項3が削除されたことに伴い、請求項3を引用しないこととする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項3、4が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。

よって、訂正事項3~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)小括

以上のとおりであるから、訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】

水酸基価が3~32mgKOH/g以下である活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)と、有機溶剤(C)とを含有し、

前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)が、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物、及び/又は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物を含有するものであり、

前記樹脂(B)は、4級アンモニウム塩を少なくとも有する重合性単量体(b1)、重合性単量体(b2)、及び脂環構造を有する重合性単量体(b3)を共重合したものであり、

前記重合性単量体(b1)は、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムブマイド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、及び3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホネートからなる群より選択される1種以上の単量体であり、

前記重合性単量体(b2)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びメタクリル酸からなる群より選択される1種以上の単量体であり、

前記重合性単量体(b3)は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体であり、

前記樹脂(B)の配合量が、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、15~30質量部の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。

【請求項2】

前記樹脂(B)が、原料として前記重合性単量体(b3)を5~55質量%用いた重合体である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。

【請求項3】(削除)

【請求項4】

請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。

【請求項5】

請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とするフィルム。

第4 特許異議申立理由および取消理由の概要

1 特許異議申立書の申立理由

(1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(甲1を主引例とする進歩性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(甲2を主引例とする新規性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)申立理由4(甲2を主引例とする進歩性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 令和4年11月29日付け取消理由通知で通知した取消理由

(1)取消理由1(甲1を主引例とする新規性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)取消理由2(甲1を主引例とする進歩性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)取消理由3(甲2を主引例とする新規性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)取消理由4(甲2を主引例とする進歩性)

本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 当審の判断

申立理由1、申立理由2、取消理由1、及び取消理由2は、いずれも甲1を主引例とするので、まとめて検討し(後記1)、申立理由3、申立理由4、取消理由3、及び取消理由4は、いずれも甲2を主引例とするので、まとめて検討する(後記2)。

1 申立理由1、申立理由2、取消理由1、及び取消理由2について

(1)甲1に記載された発明

甲1の実施例10(【0051】、【0052】、【0057】、【0060】、【0071】、【0073】の【表1】、【0075】)に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARADDPHA)40重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARADPET30)10重量部に、ポリエチレンオキサイド付加ステアリルアルコールとメタクリル酸メチルとをエステル交換反応させて得たエチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物30重量部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50重量部、及びシクロヘキシルメタクリレート20重量部を重合した帯電防止性共重合体のエタノール溶液を、帯電防止性共重合体が固形分で5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部添加してなる組成物であって、溶剤として、EtOH(エチルアルコール)とEtAc(酢酸エチル)を含む、帯電防止組成物。」(以下、「甲1発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア) 甲1発明の「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)」及び「ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)」はいずれも、甲1において、「3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)」(請求項1、【0030】)であり、これらを含む甲1発明の帯電防止組成物は、光重合開始剤を含んで、紫外線照射により硬化せしめられる(【0061】、【0071】)のだから、上記3種の化合物は、いずれも「活性エネルギー線硬化性化合物」であることは明らかである。

実際、本件明細書にも、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)」として、「ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート」及び「ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート」が例示されているし((【0014】)、本件明細書の【0018】~【0023】の記載にしたがった、脂肪族イソシアネートとしてのヘキサメチレンジイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとしてのペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレートは、上記「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」に他ならない。

そして、「日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA」は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物であり、「日本化薬(株)製:KAYARAD PET30」は、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物である(甲4【0075】)。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「活性エネルギー線硬化性化合物」を含有し、「活性エネルギー線化合物」が、「ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物」、及び、「ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物」を含有する点において、一致する。

(イ)a 甲1発明の「帯電防止性共重合体」を構成する、「ポリエチレンオキサイド付加ステアリルアルコールとメタクリル酸メチルとをエステル交換反応させて得たエチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物」は、本件発明1の「重合性単量体(b2)」のうちの、「ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート」に相当する。

b 甲1発明の「帯電防止性共重合体」を構成する、「メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド」は、本件発明1の「4級アンモニウム塩を少なくとも有する重合性単量体(b1)」のうちの、「2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド」に相当する。

c 甲1発明の「帯電防止性共重合体」を構成するシクロヘキシルメタクリレートは、本件発明1の「脂環構造を有する重合性単量体(b3)」のうちの、「シクロヘキシル(メタ)アクリレート」に相当する。

d 上記a~cより、甲1発明の「ポリエチレンオキサイド付加ステアリルアルコールとメタクリル酸メチルとをエステル交換反応させて得たエチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物30重量部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50重量部、及びシクロヘキシルメタクリレート20重量部を重合した帯電防止性共重合体」は、本件発明1の、「4級アンモニウム塩を少なくとも有する重合性単量体(b1)、重合性単量体(b2)、及び脂環構造を有する重合性単量体(b3)を共重合したもの」である「4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)」であって、「重合性単量体(b1)」は、「2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド」であり、「重合性単量体(b2)」は、「ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート」であり「重合性単量体(b3)」は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートである、「樹脂(B)」に相当する。

(ウ)甲1発明の「帯電防止組成物」が含む、溶剤としての「EtOH(エチルアルコール)」と「EtAc(酢酸エチル)」は、いずれも本件発明1の「有機溶剤(C)」に相当する。

(エ)甲1発明の「帯電防止組成物」は、上記(ア)のとおり、「活性エネルギー線硬化性化合物」を含み、紫外線照射により硬化せしめられるのだから、「活性エネルギー線硬化性組成物」である。

(オ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、

「活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)と、有機溶剤(C)とを含有し、
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)が、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物、及び/又は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物を含有するものであり、
前記樹脂(B)は、4級アンモニウム塩を少なくとも有する重合性単量体(b1)、重合性単量体(b2)、及び脂環構造を有する重合性単量体(b3)を共重合したものであり、
前記重合性単量体(b1)は、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムブマイド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、及び3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホネートからなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記重合性単量体(b2)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びメタクリル酸からなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記重合性単量体(b3)は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体である、活性エネルギー線硬化性組成物。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]

本件発明1では、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)」の水酸基価が「3~32mgKOH/g」であるのに対して、甲1発明では、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)40重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)10重量部」である活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価(以下、「甲1発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価」ということがある。)が不明である点

[相違点2]

本件発明1では、樹脂(B)の配合量が、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、15~30質量部」であるのに対して、甲1発明では、「帯電防止性共重合体」の配合量が、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)」50重量部、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)」40重量部、及び「ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)」10重量部の合計100重量部に対して、「5重量部」である点

イ 上記相違点について、検討する。

(ア)相違点1について

a 甲1発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価について

(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)」及び「ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)」の水酸基価は、それぞれ、48.1mgKOH/g、127.6mgKOH/gである(甲4【0075】)。

(b)「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H」の水酸基価は、14.6mgKOH/gである(甲3)。

(c)上記(a)及び(b)から、甲1発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価は、以下のとおりである。

14.6×0.5+48.1×0.4+127.6×0.1=39.3(mgKOH/g)

b 上記aのとおり、甲1発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価は39.3mgKOH/gであり、「3~32mgKOH/g」の範囲内にはないから、相違点1は、実質的な相違点である。

c 次に、相違点1に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。

甲1には、活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価については記載も示唆もなく、ましてや、活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価を「3~32mgKOH/g」にすることについては、何ら記載も示唆もされていない。

また、甲2~5のいずれをみても、甲1発明において、活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価を「3~32mgKOH/g」にすることが動機付けられたとするに足りる記載はない。

そうすると、当業者が、甲1発明において、甲1発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価を「3~32mgKOH/g」とすることが動機付けられたとはいえないから、相違点1に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。

(イ)上記(ア)のとおり、相違点1は実質的な相違点であり、当該相違点1に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2、4、5について

本件発明2、4及び5は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(2)のとおり、本件発明1が甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、4及び5のいずれも、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)小括

よって、本件発明1、2、4及び5は、いずれも甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1、申立理由2、取消理由1及び取消理由2のいずれによっても、本件特許を取り消すことはできない。

2 申立理由3、申立理由4、取消理由3、及び取消理由4について

(1)甲2に記載された発明

甲2の実施例10(【0052】~【0053】、【0058】、【0061】、【0072】、【0074】の【表1】、【0076】)に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)40重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARADPET30)10重量部に、ポリエチレンオキサイド付加ステアリルアルコールとメタクリル酸メチルとをエステル交換反応させて得たエチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物30重量部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50重量部、及びシクロヘキシルメタクリレート20重量部を重合した帯電防止性共重合体のエタノール溶液を、帯電防止性共重合体が固形分で5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部添加してなる組成物であって、溶剤として、EtOH(エチルアルコール)とDMC(炭酸ジメチル)を含む帯電防止組成物。」(以下、「甲2発明」という。)

(2)本件発明1について

ア 本件発明1と甲2発明とを対比する。

(ア) 甲2発明の「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)」及び「ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)」はいずれも、甲2において、「3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)」(請求項1、【0031】)であり、これらを含む甲2発明の帯電防止組成物は、光重合開始剤を含んで、紫外線照射により硬化せしめられる(【0062】、【0072】)のだから、上記3種の化合物は、いずれも、「活性エネルギー線硬化性化合物」であることは明らかである。

実際、本件明細書には「活性エネルギー線硬化性化合物(A)」として「ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート」及び「ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート」が例示され、また、本件明細書の【0018】~【0023】の記載にしたがった、脂肪族イソシアネートとしてのヘキサメチレンジイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとしてのペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレートは、上記「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」に他ならないことは、上記1(2)ア(ア)のとおりである。

そして、「ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)」は、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物である(甲4【0075】)。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「活性エネルギー線硬化性化合物」を含有し、「活性エネルギー線化合物が、「ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物」を含有する点において、一致する。

(イ)甲2発明の「ポリエチレンオキサイド付加ステアリルアルコールとメタクリル酸メチルとをエステル交換反応させて得たエチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物30重量部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50重量部、及びシクロヘキシルメタクリレート20重量部を重合した帯電防止性共重合体」は、上記1(2)ア(イ)と同様に、本件発明1の、「4級アンモニウム塩を少なくとも有する重合性単量体(b1)、重合性単量体(b2)、及び脂環構造を有する重合性単量体(b3)を共重合したもの」である「4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)」であって、「重合性単量体(b1)」は、「2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド」であり、「重合性単量体(b2)」は、「ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート」であり「重合性単量体(b3)」は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートである、「樹脂(B)」に相当する。

(ウ)甲2発明の帯電防止組成物に含まれる、溶剤としての、「EtOH(エチルアルコール)」と「DMC(炭酸ジメチル)」は、いずれも本件発明1の「有機溶剤(C)」に相当する。

(エ)甲2発明の「帯電防止組成物」は、上記(ア)のとおり、「活性エネルギー線硬化性化合物」を含み、紫外線照射により硬化せしめられるのだから、「活性エネルギー線硬化性組成物」である。

(オ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、

「活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)と、有機溶剤(C)とを含有し、
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)が、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物、及び/又は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物を含有するものであり、
前記樹脂(B)は、4級アンモニウム塩を少なくとも有する重合性単量体(b1)、重合性単量体(b2)、及び脂環構造を有する重合性単量体(b3)を共重合したものであり、
前記重合性単量体(b1)は、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムブマイド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、及び3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホネートからなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記重合性単量体(b2)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びメタクリル酸からなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記重合性単量体(b3)は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体である、活性エネルギー線硬化性組成物。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点3]

本件発明1では、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)」の水酸基価が「3~32mgKOH/g」であるのに対して、甲2発明では、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)40重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARADPET30)10重量部」である活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価(以下、「甲2発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価」ということがある。)が不明である点

[相違点4]

本件発明1では、樹脂(B)の配合量が、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、15~30質量部」であるのに対して、甲2発明では、「帯電防止性共重合体」の配合量が、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)」50重量部、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)」40重量部、及び「ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)」10重量部の合計100重量部に対して、「5重量部」である点

イ 上記相違点について検討する。

(ア)相違点3について

a 甲2発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価について

(a)当審が職権調査により発見した文献1(特開2020-33425号公報)の【0072】の記載によれば、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)」の水酸基価は、「45mg KOH/g」である。ここで、文献1は、本件特許出願の出願日よりも後に公知になった文献であるが、「東亞合成(株)製:アロニックスM405」の物性は、そのような製品名である限りは、何れの時点であっても概略一定であると解するのが合理的であり、このことは、「水酸基価」についてもあてはまる。

(b)「ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)」の水酸基価は、127.6mgKOH/gである(甲4【0075】)。

(c)「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H」の水酸基価は、14.6mgKOH/gである(甲3)。

(d)上記(a)~(c)から、甲2発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価は、以下のとおりである。

14.6×0.5+45×0.4+127.6×0.1=38.1(mgKOH/g)

b 上記aのとおり、甲2発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価は38.1mgKOH/gであり、「3~32mgKOH/g」の範囲内にはないから、相違点3は、実質的な相違点である。

(e)なお、仮に、文献1を根拠に、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)」の水酸基価が「45mg KOH/g」であるということができないとしても、その場合には当該化合物の水酸基価は不明であるという他はなく、結局、甲2発明の活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価は不明であって「3~32mgKOH/g」の範囲内にあるとの根拠はないから、やはり相違点3は、実質的な相違点である。

c 次に、相違点3に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。

甲2には、活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価については記載も示唆もなく、ましてや、活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価を「3~32mgKOH/g」にすることについては、何ら記載も示唆もされていない。

また、甲1、3~5のいずれをみても、甲2発明において、活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価を「3~32mgKOH/g」にすることが動機付けられたとするに足りる記載はない。

そうすると、当業者が、甲2発明において、活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価を「3~32mgKOH/g」とすることが動機付けられたとはいえないから、相違点3に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。

(イ)上記(ア)のとおり、相違点3に係る事項は実質的な相違点であり、また、当該相違点に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 申立書の主張について

ここで、上記相違点3に関して、申立書には、以下の主張がある。

甲5の【0025】には、「東亞合成(株)製:アロニックスM405」はジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物であり、アロニックスM405中にジペンタエリスリトールペンタアクリレートが最大20質量%含有されていることが開示されているから、アロニックスM405中、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを20質量%とし、かつ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを80質量%とした際のアロニックスM405の水酸基価を算出すると「21.0mgKOH/g」となり、これに基づいて甲2の実施例10における活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価を計算すると、28.5mgKOH/gとなる(15頁24行~16頁9行)。

そこで検討するに、甲5には、「通常、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートは単体もしくは混合物の状態で製造販売されて」いること、及び、製品名として「アロニックスM-405(東亞合成社製、製品中のペンタアクリレートの割合:10~20重量%)」等が挙げられることについての記載があるものの([0025])、「アロニックスM405」の水酸基価が「21.0mgKOH/g」であるとは記載されていない。

また、上記イ(ア)a(a)のとおり、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)」の水酸基価を、「45mg KOH/g」と記載する文献が存在するところ、申立人は、アロニックスM405の水酸基価を算出すると「21.0mgKOH/g」であると主張するのみであって、その計算過程を明らかにしていないことからみれば、そのような主張をただちに採用することはできない。

よって、上記主張は採用できない。

(3)本件発明2、4、5について

本件発明2、4及び5は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(2)のとおり、本件発明1が甲2発明ではなく、また、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、4及び5のいずれも、甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)小括

よって、本件発明1、2、4及び5は、いずれも甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由3、申立理由4、取消理由3、及び取消理由4のいずれによっても、本件特許を取り消すことはできない。

第6 まとめ

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

本件請求項3は、本件訂正により、削除されたので、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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2022-700814

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    共通の審決分類: 113・C08F、121・C08F
  • 2024-701215異議申立 / 2026-03-10 / 請求成立(取消)組成物、重合体、硬化物、成形体及びポリメタクリル酸メチルの製造方法
    共通の審決分類: 113・C08F、121・C08F

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