特許異議申立
2024-700904
フッ素樹脂及びその製造方法
- 審判番号
- 2024-700904
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-014119
- 登録番号
- 7451871
- 請求日
- 2024年09月19日
- 審決日
- 2025年06月19日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東ソー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 【異議申立人】武田 朋美
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 藤井 勲
- 審判官 加藤 幹
- 分類
- P1652.113-YAA(C08F) / P1652.121-YAA(C08F) / P1652.536-YAA(C08F) / P1652.537-YAA(C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第2条第3項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7451871号発明「フッ素樹脂及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7451871号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5~9〕について訂正することを認める。
特許第7451871号の請求項6~9に係る特許を維持する。
特許第7451871号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7451871号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成31年1月30日に出願され、令和6年3月11日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和6年9月19日に、本件特許の請求項5~9に係る特許に対して、特許異議申立人 武田 朋美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
以後の手続は以下のとおりである。
令和 6年12月19日付け 取消理由通知
令和 7年 2月20日 訂正請求書、意見書
同年 3月10日付け 手続補正指令書(方式)
同年 3月14日 手続補正書(方式)
同年 3月27日付け 訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
なお、令和7年3月27日付けの訂正請求があった旨の通知に対し申立人は意見書を提出しなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正請求の趣旨
令和7年2月20日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7451871号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5~9について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものであって、その内容は以下のとおりである。
ここで、訂正前の請求項5~9について、請求項6~9は請求項5を引用しているものであって、以下の訂正事項1によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項5~9に対応する訂正後の請求項5~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
なお、令和7年3月14日提出の手続補正書(方式)による訂正請求書の補正は、補正をすべきことを命じられた事項について、訂正請求書の「7 請求の理由」の軽微な瑕疵を正すものであるから、当該手続補正書による訂正請求書の補正を認める(特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項)。
(2)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に「上記一般式(2)で表される単量体、開始剤、有機溶媒の少なくともいずれか一つを濾過フィルター、イオン交換樹脂、金属イオン除去フィルター又は金属イオン除去剤の少なくともいずれか一つで精製した後に重合を行うことを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載のフッ素樹脂の製造方法。」と記載されているのを、「上記一般式(2)で表される単量体、開始剤、有機溶媒の少なくともいずれか一つを濾過フィルター、イオン交換樹脂、金属イオン除去フィルター又は金属イオン除去剤の少なくともいずれか一つで精製した後に重合を行うことを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載のフッ素樹脂の製造方法。」に訂正する。
(4)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「フッ素樹脂は、クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が5質量ppb以上500質量ppb以下である、請求項1乃至6いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。」と記載されているのを、「フッ素樹脂は、クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が5質量ppb以上500質量ppb以下である、請求項1乃至4及び6いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。」に訂正する。
(5)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に「フッ素樹脂は、ナトリウムの含有量が1000質量ppb以下である、請求項1乃至7いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。」と記載されているのを、「フッ素樹脂は、ナトリウムの含有量が1000質量ppb以下である、請求項1乃至4及び6乃至7いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。」に訂正する。
(6)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「フッ素樹脂は、体積平均粒子径が5μm以上500μm以下であり粒子形状を有する、請求項1乃至8いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。」と記載されているのを、「フッ素樹脂は、体積平均粒子径が5μm以上500μm以下であり粒子形状を有する、請求項1乃至4及び6乃至8いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。」に訂正する。
2 各訂正事項の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1による請求項5についての訂正は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2~5
訂正事項2~5による請求項6~9についての訂正は、訂正事項1により削除される請求項5を引用しないようにするものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正事項1~5は特許異議の申立てがされている請求項である訂正前の請求項5~9に係るものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5~9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正が認められたため、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明9」といい、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】
下記一般式(2)で表される単量体、ラジカル重合開始剤、及び有機溶媒の存在下、反応系中の水分量1000質量ppm以下で沈殿重合させる沈殿重合工程を有することを特徴とする、下記一般式(1)で表される残基単位を含み、クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が500質量ppb以下であるフッ素樹脂の製造方法。
【化1】
[図:0001426833000001.jpg]
(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子または炭素数1~7のエーテル性酸素原子を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基を示し、かつ少なくともいずれか1種が炭素数1~7の直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基である。また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロ脂肪族環を形成してもよい。)
【化2】
[図:0001426833000002.jpg]
(式(2)中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8はそれぞれ独立してフッ素原子または炭素数1~7のエーテル性酸素原子を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基を示し、かつ少なくともいずれか1種が炭素数1~7の直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基である。また、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8は互いに連結して炭素数4以上8以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロ脂肪族環を形成してもよい。)
【請求項2】
ラジカル重合開始剤、上記一般式(2)で表される単量体および上記一般式(2)で表される単量体を溶解し、上記一般式(1)で表される残基単位を含む樹脂を析出させる有機溶媒中で重合させる工程を有する請求項1に記載の樹脂の製造方法。
【請求項3】
ハンセン溶解度パラメーターから下記の式(3)によって計算される樹脂との溶解指標Rが4以上である有機溶媒を用いることを特徴とする請求項1乃至2いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
R=4×{(δD1-δD2)2+(δP1-δP2)2+(δH1-δH2)2}0.5
・・・(3)
(ここでδD1、δP1、δH1はそれぞれ前記樹脂粒子のハンセン溶解度パラメーターの分散項、極性項および水素項、δD2、δP2、δH2はそれぞれ前記有機溶媒のハンセン溶解度パラメーターの分散項、極性項および水素項である。)
【請求項4】
分子内にフッ素原子と水素原子を含む有機溶媒を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフッ素樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
上記一般式(2)で表される単量体、開始剤、有機溶媒の少なくともいずれか一つを濾過フィルター、イオン交換樹脂、金属イオン除去フィルター又は金属イオン除去剤の少なくともいずれか一つで精製した後に重合を行うことを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載のフッ素樹脂の製造方法。
【請求項7】
フッ素樹脂は、クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が5質量ppb以上500質量ppb以下である、請求項1乃至4及び6いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項8】
フッ素樹脂は、ナトリウムの含有量が1000質量ppb以下である、請求項1乃至4及び6乃至7いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項9】
フッ素樹脂は、体積平均粒子径が5μm以上500μm以下であり粒子形状を有する、請求項1乃至4及び6乃至8いずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載された取消理由
1 特許異議申立書に記載された申立理由
(1)特許異議申立書に記載された申立理由の概要
ア 申立理由1(甲第1号証を主引用例とする新規性)
本件発明5~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性)
本件発明5~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 申立理由3(サポート要件)
本件発明5~9についての特許は、以下の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由)本件発明5~9が解決しようとする課題は「加熱時の着色が低減されたフッ素樹脂の製造方法を提供する」ことであり、本件発明5~9は「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものであるところ、(a)本件明細書の発明の詳細な説明には系内の水分量が100ppmである態様が比較例1すなわち課題を解決することができない態様として記載されており、また(b)本件明細書の発明の詳細な説明には比較例1すなわち課題を解決することができない態様が記載されているのみであるから、本件発明5~9は発明の詳細な説明に記載したものではない。
エ 申立理由4(明確性)
本件発明5~9についての特許は、以下の理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由)本件発明5~9は「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものであるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には比較例1すなわち系内の水分量が100ppm以上である態様が記載されているのみであって、具体的にどのようにして「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながら」フッ素樹脂を析出させるのかが明確ではないから、本件発明5~9は明確ではない。
オ 申立理由5(実施可能要件)
本件特許の請求項5~9に係る発明についての特許は、以下の理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由)本件発明5~9は「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものであるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には比較例1すなわち系内の水分量が100ppm以上である態様が記載されているのみであって、「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながら」フッ素樹脂を析出させるに際し過度の試行錯誤を要するから、本件明細書の発明の詳細な説明は当業者が本件発明5~9の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(2)特許異議申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証:Macromolecules,2005,38,4237-4245及びその抄訳
甲第2号証:国際公開第2010/073940号
甲第3号証:国際公開第99/50319号
甲第4号証:特開2000-1518号公報
甲第5号証:特開2000-159948号公報
以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。
2 取消理由通知書に記載された取消理由
(1)令和6年12月19日付けの取消理由通知書に記載された取消理由の概要
ア 取消理由1(サポート要件)
本件特許の請求項5~9に係る発明についての特許は、以下の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由)本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明5~9について、「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる析出工程を有する」こと、及び製造されたフッ素樹脂が「クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が500質量ppb以下である」ことを同時に満たすことにより、前記発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。
イ 取消理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項5~9に係る発明についての特許は、以下の理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由)「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる析出工程を有する」こと、及び製造されたフッ素樹脂が「クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が500質量ppb以下である」ことを同時に満たすことができる程度の記載が本件明細書の発明の詳細な説明にあるということはできない。
第5 当審の判断
1 判断の概要
当審判合議体は、本件発明6~9に係る特許は申立理由1~5並びに取消理由1及び2によっては取り消されるべきものではないと判断する。その理由は以下のとおりである。
2 取消理由1及びこれと同旨の申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平17.11.11平成17(行ケ)10042号参照。)。
(2)本件発明6~9が解決しようとする課題
【0002】~【0008】をはじめとする本件明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、本件発明6~9が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「加熱時の着色が低減されたフッ素樹脂の製造方法を提供すること」であると認められる。
(3)本件発明6について
ア 検討
本件発明6は、本件発明1を引用するものであって、「反応系中の水分量1000質量ppm以下で沈殿重合させる沈殿重合工程を有すること」及び製造されたフッ素樹脂が「クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が500質量ppb以下である」ことを特定事項として備えるものである。
これに対し、本件明細書の発明の詳細な説明には、前記一般式(1)で表される残基単位を含むフッ素樹脂について、「一般式(1)で表される残基単位を含み、クロム、鉄、及びニッケルの金属の含有量の合計が500質量ppb以下の樹脂である。」(【0013】)と記載され、「本発明の樹脂はクロム、鉄及び、ニッケルの金属の含有量の合計が500質量ppb以下である。これにより、加熱時の着色が低減されたフッ素樹脂が得られる。」(【0021】)と記載されている。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、前記フッ素樹脂の製造方法について、前記一般式(1)と同義である一般式(5)及び前記一般式(2)と同義である一般式(4)を用いて「一般式(4)で表される単量体、ラジカル重合開始剤、及び有機溶媒の存在下、反応系中の水分量1000質量ppm以下で沈殿重合させる沈殿重合工程を有するフッ素樹脂の製造方法を挙げることができる。」(【0034】)と記載され、「重合溶媒として一般式(4)で表される単量体を溶解し、一般式(5)で表される残基単位を含む樹脂を析出させる有機溶媒(以下、「沈殿重合溶媒」と記載する)を用いることにより、重合反応によって生成した樹脂を、特定の体積平均粒子径を有する粒子として析出させることができ、結果として成形性・充填性に優れる粒子形状の樹脂を製造することができる。また、乳化剤および分散剤などの重合助剤を用いることがないため、透明性や耐熱性を損なう原因となる乳化剤および分散剤を含まない樹脂粒子を製造することができる。」(【0040】)と記載され、「ある有機溶媒が、ある樹脂を析出させる有機溶媒であるかどうかは、該有機溶媒が有する極性がある特定の範囲にあるかどうかで判断できる。本発明においては、沈殿重合溶媒としてハンセン溶解度パラメーター(Hansensolubilityparameters)に基づいて、ある特定の範囲の極性を有する有機溶媒を選択することが好ましい。」(【0041】)と記載されている。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例1、2において、沈殿重合において、反応系中の水分量1000質量ppm以下で重合を行うことにより、クロム、鉄、及びニッケルの金属の含有量の合計が500質量ppb以下であるパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)樹脂粒子が得られ、当該樹脂粒子のYI値がそれぞれ0.39、0.62であり、前記発明の課題を解決することを当業者が確認できる記載がある(【0063】~【0066】及び【0070】)。
そうすると、当業者は、前記【0034】に記載の沈殿重合による製造方法により前記【0013】に記載の樹脂を製造することで、すなわち本件発明6により、前記発明の課題を解決できると認識できる。
イ 申立人の主張について
申立人の主張は、前記第4の1(1)ウのとおり本件発明6が「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものであることを前提とするものであるところ、この析出は本件訂正による訂正前の請求項5の記載からみて、「溶液重合で得られたフッ素樹脂を含む溶液」において生じるものであるといえる。しかし、前記第2の3のとおり本件特許の特許請求の範囲が訂正されたため、前記第3のとおり本件発明6は「溶液重合で得られたフッ素樹脂を含む溶液」において「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものではないことになった。そのため、申立人の主張は結果として当を得ないものとなった。
ウ 本件発明6についてのまとめ
以上から、本件発明6は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
(4)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用するものであり、前記(3)と同様に、本件発明7~9は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
3 取消理由2及びこれと同旨の申立理由5(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
本件発明6~9は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明における発明の実施とは、その方法の使用をする行為、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するか否かについては、当業者が明細書の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載が明細書の発明の詳細な説明にあるか否かによるというべきである。
そして、実施可能要件についても特許権者がその証明責任を負う(知財高判令元.9.19平成30年(行ケ)10093号参照。)。
(2)本件発明6について
ア はじめに
当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、「反応系中の水分量1000質量ppm以下で」、「沈殿重合させる沈殿重合工程」を有し、製造されたフッ素樹脂が「クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が500質量ppb以下である」ものである本件発明6に係る方法の使用をすることができる程度の記載が本件明細書の発明の詳細な説明にあるか否かを検討する。
イ 反応系中の水分量について
本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例1、2においてオートクレープの内部を窒素置換したこと(【0065】及び【0070】)及び反応系中の水分量が1000質量ppm未満であったことが記載されている(【0066】)。そして、一般的にこうした窒素置換が反応系中への大気中の酸素や水分の混入を抑制するために行うものであることは技術常識である。また、一般的に反応系への水分の混入が忌避される場合に塩化カルシウムなどの化学的乾燥剤やモレキュラーシーブスなどの物理的乾燥剤により反応物から水分を除去することも技術常識である。さらに、1000質量ppm以下という水分量は一般的に格別低いものではない。
ウ 沈殿重合工程について
本件明細書の発明の詳細な説明には、前記一般式(2)と同義である一般式(4)で表される単量体を沈殿重合させる沈殿重合工程を有するフッ素樹脂の製造方法が第1の態様であることが記載されている(【0034】)。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、第1の態様における好ましい有機溶媒を選定する考え方が記載されており(【0035】~【0050】)、そのような考え方に基づいて選定される具体的な有機溶媒として1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル)などが記載されており(【0051】~【0053】)、実施例1、2として、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル)を有機溶媒として使用しパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)を沈殿重合してパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)樹脂粒子を得たことが記載されている(【0065】及び【0070】)。
エ フッ素樹脂のクロム、鉄及びニッケルの含有量について
本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例1、2として、SUS316製パドル型撹拌翼及びSUS316製又はガラス製オートクレープを使用し、パーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)を沈殿重合してクロム、鉄及びニッケルの含有量の合計が500質量ppb以下であるパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)樹脂粒子を得たことが記載されている(【0065】、【0066】及び【0070】)。さらに、一般的に製品への金属原子の混入が忌避される場合に少なくとも表面が非金属製である製造設備を使用することは技術常識である(甲4の【0017】~【0021】)。
オ 小括
以上から、本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例1、2に係る記載を中心として、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、「反応系中の水分量1000質量ppm以下で」、「沈殿重合させる沈殿重合工程」を有し、製造されたフッ素樹脂が「クロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が500質量ppb以下である」ものである本件発明6に係る方法の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
カ 申立人の主張について
申立人の主張は、前記第4の1(1)オのとおり本件発明6が「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものであることを前提とするものであるところ、この析出は本件訂正による訂正前の請求項5の記載からみて、「溶液重合で得られたフッ素樹脂を含む溶液」において生じるものであるといえる。しかし、前記第2の3のとおり本件特許の特許請求の範囲が訂正されたため、前記第3のとおり本件発明6は「溶液重合で得られたフッ素樹脂を含む溶液」において「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものではないことになった。そのため、申立人の主張は結果として当を得ないものとなった。
キ 本件発明6についてのまとめ
以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明6に係る方法の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
(3)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用するものであり、前記(2)と同様に、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明7~9に係る方法の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
4 申立理由1(甲1を主引用例とする新規性)について
(1)引用発明の認定
甲1(4239頁左欄の「Scheme 1.」、4240頁左欄の「Polymerization.」の項、4240頁右欄の「Polymer Preparation.」の項の第2段落、4241頁左欄の「Figure 2.」並びに4242頁の「Table 2.」)には、sample no. 85、67、68、86及び92-94として、
「0.45μmのPradisc25TFでろ過された、開始剤を含有するPFMMD(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)
[図:0001426833000003.jpg]
を、ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン又はヘキサフルオロベンゼン(HFB)中で、モノマー/溶媒混合物比38/62(w/w)、重合温度60℃、重合時間24時間、開始剤(ペルフルオロジベンゾイルパーオキサイド)の条件下で溶液重合する、ポリ(PFMMD)(ポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン))
[図:0001426833000004.jpg]
を製造する方法」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明6について
ア 引用発明と本件発明6との対比
本件発明6が本件発明1を引用するものであることを踏まえて甲1発明を本件発明6と対比すると、両発明の構成の対応は以下のとおりとなる。
(a)甲1発明における「PFMMD(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)
[図:0001426833000005.jpg]
」
は、本件発明6が引用する本件発明1における
「下記一般式(2)」「
[図:0001426833000006.jpg]
(式(2)中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8はそれぞれ独立してフッ素原子または炭素数1~7のエーテル性酸素原子を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基を示し、かつ少なくともいずれか1種が炭素数1~7の直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基である。また、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8は互いに連結して炭素数4以上8以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロ脂肪族環を形成してもよい。)」「で表される単量体」
に相当する。
(b)甲1発明における「ポリ(PFMMD)(ポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン))
[図:0001426833000007.jpg]
」
は、本件発明6が引用する本件発明1における
「下記一般式(1)」「
[図:0001426833000008.jpg]
(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子または炭素数1~7のエーテル性酸素原子を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基を示し、かつ少なくともいずれか1種が炭素数1~7の直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基である。また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロ脂肪族環を形成してもよい。)」「で表される残基単位を含」む「フッ素樹脂」
に相当する。
(c)甲1発明における「ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン又はヘキサフルオロベンゼン(HFB)」は、本件発明6が引用する本件発明1における「有機溶媒」に相当する。
(d)甲1発明における「開始剤(ペルフルオロジベンゾイルパーオキシド)」は、甲1の4244頁右欄の「Conclusion」の4~8行の記載からみて、本件発明6が引用する本件発明1における「ラジカル重合開始剤」に相当する。
(e)甲1発明における「溶液重合する」は、本件発明6が引用する本件発明1における「沈殿重合工程」と「重合工程」という限りで一致する。
(f)甲1発明における「0.45μmのPradisc25TFでろ過された」「PFMMD(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」を「溶液重合する」は、Pradisc25TFはフィルタであるといえること及び前記(a)を踏まえると、本件発明6における「上記一般式(2)で表される単量体、開始剤、有機溶媒の少なくともいずれか一つを濾過フィルター、イオン交換樹脂、金属イオン除去フィルター又は金属イオン除去剤の少なくともいずれか一つで精製した後に重合を行う」に相当する。
イ 一致点、相違点
前記アから、本件発明6と甲1発明とは、
「一般式(2)で表される単量体、ラジカル重合開始剤、及び有機溶媒の存在下で重合させる重合工程を有することを特徴とする、一般式(1)で表される残基単位を含むフッ素樹脂の製造方法であって、
一般式(2)で表される単量体、開始剤、有機溶媒の少なくともいずれか一つを濾過フィルター、イオン交換樹脂、金属イオン除去フィルター又は金属イオン除去剤の少なくともいずれか一つで精製した後に重合を行う、フッ素樹脂の製造方法。
【化1】
[図:0001426833000009.jpg]
(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子または炭素数1~7のエーテル性酸素原子を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基を示し、かつ少なくともいずれか1種が炭素数1~7の直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基である。また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロ脂肪族環を形成してもよい。)
【化2】
[図:0001426833000010.jpg]
(式(2)中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8はそれぞれ独立してフッ素原子または炭素数1~7のエーテル性酸素原子を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基を示し、かつ少なくともいずれか1種が炭素数1~7の直鎖状、分岐状または環状のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される基である。また、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8は互いに連結して炭素数4以上8以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロ脂肪族環を形成してもよい。)」
という点で一致し、
(相違点1):重合工程が、本件発明6は沈殿重合であるのに対し、甲1発明は溶液重合である点
(相違点2):重合工程における反応系中の水分量が、本件発明6は1000質量ppm以下であるのに対し、甲1発明は不明である点
(相違点3):フッ素樹脂のクロム、鉄及び、ニッケルの含有量の合計が、本件発明6は500質量ppb以下であるのに対し、甲1発明は不明である点
で相違する。
そして、少なくとも相違点1が実質的な相違点であることは明らかである。
ウ 本件発明6についてのまとめ
以上のとおり、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明6が甲1発明であるとすることはできない。
(3)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用し、相違点1に係る構成を備えるものである。したがって、前記(2)と同様に、本件発明7~9が甲1発明であるとすることはできない。
5 申立理由2(甲1を主引用例とする進歩性)について
(1)本件発明6について
ア 相違点1についての検討
前記4(2)イで述べたとおり、本件発明6と甲1発明とは相違点1~3で相違するので、相違点1について検討する。
甲1には、製造したポリ(PFMMD)のHFB溶液にクロロホルムを添加してポリ(PFMMD)の沈殿物を得ることが記載されているにとどまり(4240頁左欄の「Polymerization.」の項)、PFMMDを沈殿重合することは記載も示唆もされていない。また、甲2~甲5にも、PFMMDを沈殿重合することは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において相違点1に係る構成を備えるようにすることは当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。
イ 本件発明6についてのまとめ
以上のとおり、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明6が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用し、相違点1に係る構成を備えるものである。したがって、前記(1)と同様に、本件発明7~9が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
6 申立理由4(明確性)について
(1)明確性要件の判断基準
特許法第36条第6項第2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである(知財高判平29.9.21平成28年(行ケ)10236号参照。)。
(2)本件発明6について
ア 反応系中の水分量について
本件発明6における反応系が当初は有機液体であることは当業者に自明であり、有機液体に含まれる水分量を測定する方法として例えばカールフィッシャー法等があることは技術常識である。
イ フッ素樹脂のクロム、鉄及びニッケルの含有量について
本件明細書の発明の詳細な説明には、クロム、鉄及びニッケルの金属の含有量はそれぞれ一般的な組成分析により計測することが可能であり、例えばIPC-MSを例示することができることが記載されている(【0022】)。また、実施例及び比較例に係るフッ素樹脂について、フッ素樹脂をヘキサフルオロベンゼンに溶解した後に希酸水溶液で抽出し、Perkin Elmer製 ELAN DRC IIを用いて、金属成分(単位ppb)を測定したことも記載されている(【0064】)。
そして、この実施例及び比較例に係るフッ素樹脂中の金属成分の測定における希酸水溶液での抽出条件は、フッ素樹脂中の金属成分が実質的に全量、フッ素樹脂のヘキサフルオロベンゼン溶液から希酸水溶液に抽出されるものである必要があり、かつそれで十分であることは当業者に自明である。
ウ 申立人の主張について
申立人の主張は、前記第4の1(1)エのとおり本件発明6が「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものであることを前提とするものであるところ、この析出は本件訂正による訂正前の請求項5の記載からみて、「溶液重合で得られたフッ素樹脂を含む溶液」において生じるものであるといえる。しかし、前記第2の3のとおり本件特許の特許請求の範囲が訂正されたため、前記第3のとおり本件発明6は「溶液重合で得られたフッ素樹脂を含む溶液」において「系内の水分量を100質量ppm以下に保持しながらフッ素樹脂を析出させる」ものではないことになった。そのため、申立人の主張は結果として当を得ないものとなった。
エ 本件発明6についてのまとめ
前記ア及びイで検討した反応系中の水分量並びにフッ素樹脂のクロム、鉄及びニッケルの含有量のほか、本件発明6の明確性に疑義を与えるような事情は見当たらない。したがって、本件発明6は明確であるといえる。
(3)本件発明7~9について
本件発明7~9は、本件発明6を引用するものであり、前記(2)と同様に、本件発明7~9は明確であるといえる。
第6 むすび
本件特許の請求項6~9に係る特許は、前記第5のとおり特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載された取消理由によっては、取り消すことができない。また、ほかに本件特許の請求項6~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項5は前記第2のとおり本件訂正により削除された。したがって、本件特許の請求項5に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700904