特許異議申立
2023-700257
長鎖分岐プロピレンポリマー組成物
- 審判番号
- 2023-700257
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-578164
- 登録番号
- 7134370
- 請求日
- 2023年03月09日
- 審決日
- 2024年01月10日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ボレアリス エージー
- 【権利者代理人】林 一好
- 【権利者代理人】芝 哲央
- 【権利者代理人】岩池 満
- 【異議申立人】村川 明美
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 小出 直也
- 審判官 近野 光知
- 分類
- P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7134370号発明「長鎖分岐プロピレンポリマー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7134370号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
特許第7134370号の請求項1、3、4、14、15に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
特許第7134370号の請求項2、5~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7134370号(以下、「本件特許」という。)は、令和2年6月19日(優先権主張 令和1年7月4日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願(特願2021-578164号)に係るものであって、令和4年9月1日にその特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年3月9日に特許異議申立人 村川 明美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の主な経緯は以下のとおりである。
令和5年 6月28日付け 取消理由通知
同年 9月29日 訂正請求書・意見書の提出(特許権者)
同年10月17日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛て)
同年11月15日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年9月29日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線は訂正箇所である。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の」と記載されているのを削除し、文頭に「長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、a)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、115℃未満の液晶化温度Tcと、b)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、155℃未満の融解温度Tmと、c)ISO 16790:2005に準拠して決定される、5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、d)ISO 16790:2005に準拠して決定される、190mm/s超のV30溶融伸展性とを有し、」との記載を付加する訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の」と記載されているのを「請求項2に記載の」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1~15について、請求項2~15は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~15に対応する訂正後の請求項1~15は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1~7による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、3、4、6、7について
訂正事項1、3、4、6、7は、訂正前の請求項1、3、4、14、15を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1を引用していたところ、訂正事項1によって請求項1が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1~4を引用していたところ、訂正事項1、3、4によって請求項1、3、4が削除されたことに伴い、請求項2を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 本件訂正後の独立特許要件について
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~15に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、順に「本件発明1」、「本件発明2」のようにいい、本件発明1~15を総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
a)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、115℃未満の結晶化温度Tcと、
b)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、155℃未満の融解温度Tmと、
c)ISO 16790:2005に準拠して決定される、5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
d)ISO 16790:2005に準拠して決定される、190mm/s超のV30溶融伸展性と
を有し、
ISO 16152、第5版;2005-07-01に従って25℃で決定される、前記プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、3.0重量%未満の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有するプロピレンポリマー組成物。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
請求項2に記載のプロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)プロピレンと、4~12個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択されるコモノマーとを、シングルサイト触媒系の存在下で重合して、プロピレンコポリマーを生成する工程と、
b)前記プロピレンコポリマーを回収する工程と、
c)前記プロピレンコポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で前記プロピレンコポリマーを押し出す工程と、
d)前記プロピレンポリマー組成物を回収する工程と、
を含む方法。
【請求項6】
前記シングルサイト触媒系が、
(i)式(I)のメタロセン錯体であって、
【化1】
[図:0001409103000001.jpg]
前記式(I)中、
MはZr又はHfであり、
各Xは、独立に、σ-ドナー配位子であり、
Lは、-R’2C-、-R’2C-CR’2-、-R’2Si-、-R’2Si-SiR’2-、-R’2Ge-から選択される2価の橋架け基であり、式中、各R’は、独立に、水素原子、若しくは周期表の第14~16族の1種以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であるか、又は任意に2つのR’基が一緒になって環を形成することができ、
各R1は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基、C6~20-アリール基、又はOY基であり、式中、YはC1~10-ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR1基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部となることができ、
各R2は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、CH2-R8基であり、R8は、H、又は直鎖状若しくは分枝状のC1~6-アルキル基、C3~8-シクロアルキル基、C6~10-アリール基であり、
R3は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基、又はC6~C20-アリール基であり、
R4は、C(R9)3基であり、R9は、直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基であり、
R5は、水素、又は元素周期表の第14~16族からの1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり、
R6は、水素、又は元素周期表の第14~16族からの1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり、
R5及びR6は、n個の基R10で置換されていてもよいインデニルと縮合した5員環の一部として結合することができ、nは0~4であり、
各R10は、同一であるか又は異なっており、C1~C20-ヒドロカルビル基、又は元素周期表の第14~16族に属する1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビルラジカルであってもよく、
R7は、H、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、又は1~3個の基R11で置換されていてもよい6~20個の炭素原子を有するアリール基若しくはヘテロアリール基であり、
各R11は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基、C6~20-アリール基、又はOY基であり、式中、YはC1~10-ヒドロカルビル基である
メタロセン錯体と、
(ii)アルミノキサン共触媒を含む共触媒系と、
(iii)シリカ担体と
を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
重合工程a)におけるコモノマー単位の量が、定量的13C-NMR分光法によって決定する場合、前記プロピレンコポリマーのモノマー単位の総量に基づいて、0.5重量%超~10.0重量%である請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回収された前記プロピレンコポリマーの粒子が、DIN 661133に準拠した水銀ポロシメトリーとDIN 66137-2に準拠したヘリウム密度測定との組み合わせによって決定する場合、10.0%未満の空隙率、及び/又は0.12cm3/g未満の比細孔容積を有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
回収された前記プロピレンコポリマーの粒子が、ISO 3310に準拠したふるい分析によって決定する場合、150~1000μmのメジアン粒子サイズd50、及び/又は500~2500μmのトップカット粒子サイズd95を有する請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロピレンコポリマー及び前記過酸化物が、溶融混合装置内で、160~280℃の範囲のバレル温度で溶融混合される請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記過酸化物が160~280℃の溶融温度で6分以下の半減期(t1/2)を有し、かつ/又は前記過酸化物が、プロピレンコポリマー100重量部に対して0.40~4.00重量部(ppw)の過酸化物の量で前記プロピレンコポリマーに添加される請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記長鎖分岐が、二官能性長鎖分岐剤の不存在下で前記プロピレンコポリマーに導入される請求項5から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)の回収された前記プロピレンポリマー組成物が、工程b)の回収された前記プロピレンポリマーと比較して、より低いメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する請求項5から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
(削除)」
第4 特許異議申立書に記載された申立理由の概要、証拠方法及び取消理由の概要
1 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。
申立理由1(甲第1号証による新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1~4、14、15に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1~4、14、15についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、下記の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証~甲第9号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それぞれ特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1、2についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由3(甲第3号証による新規性、進歩性)
本件訂正前の請求項1、4、14、15に係る発明は、下記の甲第3号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件訂正前の請求項1、4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、4、14、15についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由4(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)
本件訂正前の請求項2に係る発明は、下記の甲第3号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲第3号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、それぞれ本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項2、3についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
申立理由5(明確性)
本件訂正前の請求項1~15についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(具体的な理由の概要)
本件発明1~15の「長鎖プロピレンコポリマー」における「長鎖分岐」が全く定義されておらず、どのくらいの長さの分岐鎖を「長鎖」というのか不明であるし、甲第2号証に記載された「短鎖分岐ポリプロピレン」との境界や甲第3号証に記載された「分岐ポリプロピレン」との境界も明らかでない。
2 証拠方法
(1)特許異議申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証:特表2017-532425号公報
甲第2号証:特表2009-542872号公報
甲第3号証:特表2015-522701号公報
甲第4号証:特表2008-540815号公報
甲第5号証:特開2000-063419号公報
甲第6号証:特開2000-351879号公報
甲第7号証:特表2016-525597号公報
甲第8号証:特表2019-536856号公報
甲第9号証:特開2012-233195号公報
甲第10号証:特表2017-532422号公報
(以下、これらを「甲1」~「甲10」のようにいう。)
(2)令和5年11月15日の意見書(申立人)に添付して提出された証拠方法
参考資料1:米国特許第7799841号明細書
参考資料2:特開2015-193827号公報
参考資料3:特開2003-73426号公報
参考資料4:特開平8-176218号公報
参考資料5:特表2009-542873号公報
参考資料6:特表2009-543364号公報
(以下、これらを「参1」~「参6」のようにいう。)
3 取消理由の概要
令和5年6月28日付けで当審が通知した取消理由の概要は次のとおりである。
取消理由1(甲1による新規性・進歩性)
本件訂正前の請求項1、3、4、14、15に係る発明は、甲1に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1、3、4、14、15についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、申立理由1、2、4、5によっては、本件発明2、5~13についての特許を取り消すことはできないと判断する。
また、上記第2で述べたとおり、訂正により特許請求の範囲の請求項1、3、4、14、15は削除されたので、本件発明1、3、4、14、15についての特許に対する申立てを却下する。
そして、取消理由1及び申立理由3の対象は存在しないものとなったので、以下申立理由1、2、4、5について検討する。
1 申立理由1、2について
申立理由1、2は、いずれも甲1による新規性又は甲1を主引用文献とする進歩性に関するものであるから、まとめて検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1には、「長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)であって、前記コポリマー内にエチレン、C4~C20-アルファオレフィン、およびそれらの任意の組み合わせから選択されるコモノマーと、0.1wt%から7.0wt%の範囲のコモノマー含有量とを有し、
a)ISO 1133に従って測定される前記b-PPのメルトフローレートMFR2(230℃)は1.5g/10minから6.0g/10minの範囲であり、
b)前記b-PPのF30溶融強度は18.0cNから50.0cNの範囲であり、ここで前記b-PPのF30溶融強度はISO 16790:2005に従って測定され、
c)EN 579に従って測定される前記b-PPの高温キシレン不溶成分(XHU)フラクションは2.5wt%未満であり、かつ
d)前記b-PPはフタル酸化合物を含まないことを特徴とする、
長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)。」が記載されており(請求項5)、その具体的な例として、【0146】の【表2】には、「IE5」として、MFR2が2.2g/10min、F30が23.1cN、v30が240mm/s、XHUが0.23wt%である長鎖分岐プロピレンコポリマーであって、その原料となる基本ポリマー粉末が「IE2」であるものが記載されている。
そして、「IE2」は、【0142】の【表1】によれば、エチレン含有量が4.7wt%、I(E)含有量が59.6%、XCSが7.9wt%、MFR2が0.35g/10min、Tm(DSC)が151℃のプロピレン・エチレンコポリマーである。
また、上記「v30」は、【0125】の記載によれば、「ISO 16790:2005」に従って測定された「v30溶融伸展性」である。
そうすると、甲1には、その請求項5及び【0146】の「IE5」に着目して整理すると、次の発明が記載されていると言える。
「長鎖分岐プロピレンコポリマー(IE5)であって、前記コポリマー内にエチレンから選択されるコモノマーを有し、
a)ISO 1133に従って測定される前記IE5のメルトフローレートMFR2(230℃)は2.2g/10minであり、
b)前記IE5のF30溶融強度は23.1cNであり、ここで前記IE5のF30溶融強度はISO 16790:2005に従って測定され、
c)EN 579に従って測定される前記b-PPの高温キシレン不溶成分(XHU)フラクションは0.23wt%であり、かつ
d)前記IE5はフタル酸化合物を含まず、
ISO 16790:2005に従って測定されたv30溶融伸展性が240mm/sであり、
その原料であるプロピレン・エチレンコポリマー(IE2)のエチレン含有量が4.7wt%、I(E)含有量が59.6%、XCSが7.9wt%、MFR2が0.35g/10min、Tm(DSC)が151℃である、
長鎖分岐プロピレンコポリマー(IE5)。」
(以下、この発明を「甲1発明」という。)
(2)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「長鎖分岐プロピレンコポリマー(IE5)」は、その【0143】に記載された製造方法によれば、原料であるIE2をブタジエンや過酸化物などの他の成分を加えて反応性修飾したものであるから、その生成物は「長鎖分岐プロピレンコポリマー」だけを含むものではなく、全体としては「組成物」であるといえる。よって、甲1発明の長鎖分岐プロピレンコポリマー(IE5)は、本件発明2の「長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物」に相当する。
甲1発明の「ISO 16790:2005」によって測定される「23.1cN」を有する「F30溶融強度」は、本件発明2の「ISO 16790:2005に準拠して決定される、5.0~30.0cN未満のF30溶融強度」に相当する。
甲1発明の「ISO 16790:2005に従って測定されたv30溶融伸展性が240mm/s」は、本件発明1の「ISO 16790:2005に準拠して決定される、190mm/s超のV30溶融伸展性」に相当する。
したがって、両者は
「長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物。」
である点において一致し、以下の点において相違する。
<相違点1>
本件発明2では、プロピレンポリマー組成物が
「a)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、115℃未満の結晶化温度Tcと、
b)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、155℃未満の融解温度Tmと、
c)ISO 16790:2005に準拠して決定される、5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
d)ISO 16790:2005に準拠して決定される、190mm/s超のV30溶融伸展性とを有し、
ISO 16152、第5版;2005-07-01に従って25℃で決定される、前記プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、3.0重量%未満の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する」
のに対し、甲1発明はc)のF30溶融強度及びd)のV30溶融伸展性の条件は満たすものの、a)の結晶化温度Tc、b)の融解温度Tm及び冷キシレン可溶(XCS)画分の量を満たすか否かが不明である点
(3)相違点についての判断
事案に鑑み、まず冷キシレン可溶(XCS)画分の量について検討する。
甲1発明は、長鎖分岐プロピレンコポリマー(IE5)の原料であるプロピレン・エチレンコポリマー(IE2)のXCS(低温キシレン可溶性成分)が7.9wt%であることが記載されている。甲1発明のXCSは、甲1の【0123】の記載から、「ISO 16152;第5版;2005-07-01に従って、25.0℃にてキシレンに可溶性のポリマーの量」であり、本件発明2の「ISO 16152、第5版;2005-07-01に従って25℃で決定される」「冷キシレン可溶(XCS)画分」と同じものである。
そして、「IE5」は「IE2」を原料として、プロピレン・エチレンコポリマーに長鎖分岐を導入する処理をしたものであるところ、プロピレンポリマーのXCSはポリマー中の非結晶領域の量であり、その量はプロピレン・エチレンコポリマーのプロピレン連鎖の立体規則性やエチレン部分の含有量が大きく影響することは技術常識である。そして、長鎖分岐を導入する処理は、ポリプロピレン成分の配列(プロピレン部分の立体規則性やエチレン部分の含有量)を変更するものではなく、過酸化物処理によって側鎖に同じプロピレン鎖を導入するだけのものであるから、長鎖分岐導入後のプロピレン・エチレンポリマー(IE5)のXCSは、元のプロピレン・エチレンコポリマー(IE2)のXCSと同程度の値を有すると考えられる。
このことは、本件明細書において、【0145】の【表4】に記載されたIE1及びIE2(長鎖分岐導入されたプロピレンポリマー)のXCSが1.0又は1.1重量%であり、その原料として用いられたプロピレンポリマーPP-1のXCSが0.9重量%(【0141】の【表3】)であることとも整合する。
そうすると、甲1発明の「プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づい」た「ISO 16152、第5版;2005-07-01に従って25℃で決定される」「冷キシレン可溶(XCS)画分」は、その原料である「IE2」と同程度の約7.9重量%であると認められるから、この点は実質的な相違点である。
したがって、本件発明2は甲1に記載された発明ではない。
次に、相違点1を本件発明2で特定される構成とすることが当業者にとって容易であるか否かについて検討する。
甲1には、甲1発明の長鎖分岐プロピレンコポリマーの原料となるプロピレンコポリマーのXCSが0.8wt%から15.0wt%であることが記載されている(請求項1)。
また、甲2には、ポリプロピレンにおいて、キシレン可溶部は0.5重量%~1.5重量%の範囲が好ましく、キシレン可溶部の量が多すぎると、食品包装等の用途には不向きとなることが記載されている(【0007】)。
そして、参1~参6には、冷キシレン可溶(XCS)画分が3.0重量%未満となるポリプロピレン組成物が記載されている。
しかし、甲1発明において、原料であるプロピレン・エチレンコポリマー(IE2)の冷キシレン可溶(XCS)画分を、甲1の請求項1に記載された「0.8wt%から15.0wt%」の範囲内で変更すると、コポリマーの構造を変更することになるから、コポリマーに固有の結晶化温度Tc、融解温度Tm、F30溶融強度、V30溶融伸展性等も、XCS画分の変更に伴って変動すると解するのが合理的であるし、また、それに際して、結晶化温度Tc、融解温度Tm、F30溶融強度、V30溶融伸展性等が本件発明2で特定される範囲を満たすことを裏付ける証拠もない。
ここで、甲1の【0142】の【表1】には、長鎖分岐プロピレン・エチレンコポリマーの原料となるプロピレン・エチレンコポリマーとして、XCSの値が「2.6」である「IE1」も記載されているが、このコポリマーのTm(本件発明2の融解温度Tmに相当)は165℃である。
そして、上記冷キシレン可溶画分について検討したのと同様の理由により、融解温度Tmもプロピレン・エチレンコポリマーのプロピレン連鎖の立体規則性やエチレン部分の含有量が大きく影響するものと認められ、長鎖分岐導入後のプロピレン・エチレンポリマーのTmは、元のプロピレン・エチレンコポリマーのTmと同程度の値を有すると考えられ、このことは本件明細書において、【0145】の【表4】に記載されたIE1及びIE2(長鎖分岐導入されたプロピレンポリマー)のTmが139℃であり、その原料として用いられたプロピレンポリマーPP-1のTmが140℃(【0141】の【表3】)であることとも整合する。
そうすると、甲1発明において、その冷キシレン可溶(XCS)画分を「3.0重量%未満」になるように変更した場合に、Tmの値が「155℃未満」になるとはいえないし、甲1には、F30溶融強度、V30溶融伸展性の値を維持したまま、Tc、Tm、XCS画分を調節して本件発明2の範囲内とする動機付けがあるともいえないから、甲1発明において、相違点1の構成を採用することは当業者に容易であるとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人は、令和5年11月15日に提出した意見書において、主に以下の点を主張する。
ア 甲1発明は、長鎖分岐プロピレンコポリマーが、XCSが0.8wt%から15.0wt%の範囲であるプロピレンコポリマーを原料として調製されたものであるから、甲1発明の冷キシレン可溶(XCS)画分は0.8wt%から3.0wt%の範囲で一致する蓋然性が高い。
イ 甲1発明のIE2のXCSが7.9wt%であることを考慮しても、0.8wt%から15.0wt%の範囲のXCSを有するプロピレンコポリマーを原料とすることを開示した甲1に接した当業者であれば、XCSを3.0重量%未満の範囲に限定することを極めて容易に想到することができる。
ウ 甲2には、ポリプロピレン組成物についてキシレン可溶画分が多すぎる(1.5重量%超)と食品包装等の用途に不向きとなることが記載されているし、参1~参6に記載されるように、ポリプロピレン組成物において、XCSを3.0重量%未満に設定することは周知慣用技術に他ならない。
しかし、上記(3)で言及したように、甲1発明において、その冷キシレン可溶(XCS)画分を「3.0重量%未満」になるように変更した場合に、Tmの値が「155℃未満」になるとはいえないし、甲1には、F30溶融強度、V30溶融伸展性の値を維持したまま、Tc、Tm、XCS画分を調節して本件発明2の範囲内とする動機付けがあるともいえない。
よって、申立人の上記ア~ウの主張はいずれも採用することができない。
(5)申立理由1、2についてのまとめ
よって、本件発明2は、甲1に記載された発明ではないし、甲1、甲2、参1~参6の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、申立理由1、2によっては本件発明2についての特許を取り消すことはできない。
2 申立理由4について
(1)甲3に記載された発明
甲3には「分岐ポリプロピレン(b-PP)を少なくとも90重量%含むポリプロピレン組成物を提供する方法」について記載があり(請求項1)、そのポリプロピレン組成物が「5.8cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定される」ことも記載されている(請求項1)。
そして、その具体的な例として、【0120】には「3.39g/10分のMFR2(230℃)、700μmのd50、1,100μmのd90、159℃の溶融温度Tm、8.2cNのF30溶融張力、及び155mm/秒のv30溶融伸展性を有する線状プロピレンホモポリマー」である「l-PP3」が記載され、【0122】~【0125】には、「I-PP3」をブタジエン及び過酸化物の存在下で反応性押出に供することによって、MFR2が8.9g/10分、F30溶融張力が8.1cN、v30溶融伸展性が239mm/秒、OCSゲル指数が83である、分岐ポリプロピレンを含む組成物「IE5」を得たことが記載されている。
そうすると、IE5に着目すると、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「3.39g/10分のMFR2(230℃、2.16kg荷重)、700μmのd50、1,100μmのd90、159℃の溶融温度Tm(ISO3146/第3部/方法C2に従ってDSCにより測定)、8.2cNのF30溶融張力(ISO16790:2005)及び155mm/秒のv30溶融伸展性(ISO16790:2005)を有する線状プロピレンホモポリマー(I-PP3)を、ブタジエン及び過酸化物の存在下で反応性押出に供して得られた、分岐プロピレンホモポリマーを含む、MFR2が8.9g/10分、F30溶融張力(ISO16790:2005)が8.1cN、v30溶融伸展性(ISO16790:2005)が239mm/秒、OCSゲル指数が83である、ポリプロピレン組成物」
(2)対比
本件発明2と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「分岐プロピレンホモポリマーを含む」「ポリプロピレン組成物」は、本件発明2の「長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物」と「分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物」である限りにおいて一致する。
甲3発明の「F30溶融張力(ISO16790:2005)が8.1cN」は、本件発明2の「ISO 16790:2005に準拠して決定される、5.0~30.0cN未満のF30溶融強度」に相当する。
甲3発明の「v30溶融伸展性(ISO16790:2005)が239mm/秒」は、本件発明2の「ISO 16790:2005に準拠して決定される、190mm/s超のV30溶融伸展性」に相当する。
したがって、両者は
「分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物。」
である点において一致し、以下の点において相違する。
<相違点2>
本件発明2では、プロピレンポリマー組成物が
「a)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、115℃未満の結晶化温度Tcと、
b)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、155℃未満の融解温度Tmと、
c)ISO 16790:2005に準拠して決定される、5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
d)ISO 16790:2005に準拠して決定される、190mm/s超のV30溶融伸展性とを有し、
ISO 16152、第5版;2005-07-01に従って25℃で決定される、前記プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、3.0重量%未満の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する」
のに対し、甲3発明はc)のF30溶融強度及びd)のV30溶融伸展性の条件は満たすものの、a)の結晶化温度Tc、b)の融解温度Tm及び冷キシレン可溶(XCS)画分の量を満たすか否かが不明である点
<相違点3>
「分岐プロピレンポリマー」が、本件発明2では「長鎖分岐プロピレンコポリマー」であるのに対し、甲3発明では「分岐プロピレンホモポリマー」である点
(3)相違点についての判断
相違点2について検討する。
甲3には、分岐ポリプロピレンは、少なくとも130℃の融点を有し、結晶化温度は好ましくは少なくとも110℃であることが記載されている(【0022】)。
また、甲2には、ポリプロピレンにおいて、キシレン可溶部は0.5重量%~1.5重量%の範囲が好ましく、キシレン可溶部の量が多すぎると、食品包装等の用途には不向きとなることが記載されている(【0007】)。
しかし、上記1(3)で述べたのと同様に、甲3発明において、ポリプロピレン組成物の冷キシレン可溶(XCS)画分を、甲2に記載されるような0.5重量%~1.5重量%の範囲に変更すると、ポリマーの構造を変更することになるから、ポリマーに固有の結晶化温度Tc、融解温度Tm、F30溶融強度、V30溶融伸展性等も、XCS画分の変更に伴って変動すると解するのが合理的であるし、TcやTmを甲3の【0022】の記載された範囲内で変更しようとしても、甲3の請求項1に記載された「5.8cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性」を有する範囲内で変更できるのであって、【0022】に記載された任意のTcやTmに調節できるわけではなく、またこれらの値が本件発明2の範囲に調節できたとしても、そのときに冷キシレン可溶(XCS)画分が3.0重量%未満になるとの証拠もない。
そして、甲3には、F30溶融強度、V30溶融伸展性の値を維持したまま、Tc、Tm、XCS画分を調節して本件発明2の範囲内とする動機付けがあるともいえないから、甲3発明において、相違点2の構成を採用することは当業者に容易であるとはいえない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は甲3及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、主に以下の点を主張する。
甲2には、ポリプロピレン組成物についてキシレン可溶画分が多すぎる(1.5重量%超)と食品包装等の用途に不向きとなることが記載されているから、甲3発明において、冷キシレン可溶(XCS)画分を0.5から1.5重量%の範囲にすることは容易に想到することであるし、冷キシレン可溶(XCS)画分を0.5から1.5重量%の範囲に限定したことにより予期し得ない効果や格別顕著な効果が得られたわけでもない。
しかし、上記(3)で言及したように、甲3発明において、冷キシレン可溶画分を変更した場合は、F30溶融強度、V30溶融伸展性、Tc、Tmも変動すると解するのが合理的であるし、甲3発明において、F30溶融強度、V30溶融伸展性の値を維持したまま、Tc、Tm、XCS画分を調節して本件発明2の範囲内とする動機付けがあるともいえない。
よって、申立人の主張は採用することができない。
(5)申立理由4についてのまとめ
よって、本件発明2は、甲3、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、申立理由4によっては本件発明2についての特許を取り消すことはできない。
3 申立理由5(明確性)について
本件明細書の【0004】には、「この目的は、ポリプロピレンを、例えば高溶融強度(HMS)プロセス等の反応器後の改質プロセスに供することにより達成することができる。このプロセスでは、ポリプロピレン材料に分岐が生じ、長鎖分岐ポリプロピレンが得られる。この長鎖分岐は、一般に溶融強度の向上につながる。」と記載されている。
また、【0145】の【表4】には、プロピレンポリマーに長鎖分岐を導入しなかった「CE1」のF30溶融強度が1.8cNであるのに対し、長鎖分岐を導入した「IE1」及び「IE2」のF30溶融強度はそれぞれ6.5cN、16.2cNであることが示されている。
すなわち、ポリプロピレン材料に分岐を生じさせ、長鎖分岐ポリプロピレンとすることで、溶融強度が向上するものであるところ、本件発明2ではポリプロピレンポリマー組成物の「F30溶融強度」が「5.0~30.0cN未満」の範囲に特定されているから、本件発明2の「長鎖分岐プロピレンポリマー」の「長鎖分岐」というのは、F30溶融強度が上記の範囲となるような長鎖分岐を意味するものと認められる。
したがって、本件発明2及びそれを直接又は間接的に引用する本件発明5~13の「長鎖分岐」の範囲は明確である。
よって、本件発明2、5~13についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていいない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由5によっては本件発明2、5~13についての特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
特許第7134370号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
上記第2のとおり、本件特許の請求項1、3、4、14、15は訂正により削除され、本件特許の請求項1、3、4、14、15に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
そして、申立人が主張する申立理由によっては、本件特許の請求項2、5~13についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2、5~13についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700257