特許異議申立
2022-700516
曲げ加工性に優れた亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-700516
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-521248外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6983153
- 請求日
- 2022年06月14日
- 審決日
- 2023年04月10日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ポスコ カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
- 【異議申立人】吉田 敦子
- 分類
- P1652.113-YAA(C23C) / P1652.121-YAA(C23C) / P1652.537-YAA(C23C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6983153号発明「曲げ加工性に優れた亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6983153号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項10について訂正することを認める。
特許第6983153号の請求項1~9に係る特許を維持する。
特許第6983153号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6983153号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)10月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年10月26日、(KR)大韓民国 2016年10月26日、(KR)大韓民国)を国際出願日とする出願(特願2018-521248号。以下、「本願」という。)であって、令和 3年11月25日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月17日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 4年 6月14日付けで、特許異議申立人 吉田 敦子(以下、「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して特許異議の申立てがなされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 6月14日 :特許異議の申立て
11月11日付け:取消理由通知
令和 5年 2月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の
提出
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
令和 5年 2月17日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第6983153号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項10について訂正することを求める、というものである。
2 訂正事項
本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1に係る訂正について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、請求項10を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
訂正事項1に係る訂正は、請求項10を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて
上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(2)独立特許要件について
本件訂正に係る請求項10に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項10について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるので、本件特許の請求項1~16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明16」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
素地鋼板と、亜鉛合金めっき層と、を含む亜鉛合金めっき鋼板であって、
前記亜鉛合金めっき層は、微細組織として、Zn単相組織と、Zn-Al-Mg系金属間化合物と、を含み、
前記Zn単相組織は、下記関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が50%以上である、亜鉛合金めっき鋼板。
[関係式1]
f(%)=(Ibasal/Itotal)×100
(ここで、Itotalとは、Cu-Kαソースを用いてX線回折パターンを2θ 10°~100°まで測定したとき、すべてのZn単相の回折ピークを積分した値を意味し、Ibasalとは、基底面に関するZn単相の回折ピークを積分した値を意味する。)
【請求項2】
前記Zn単相組織は、前記関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が60%以上である、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項3】
前記Zn-Al-Mg系金属間化合物は、Zn/MgZn2の二元共晶組織、Zn/Alの二元共晶組織、MgZn2の単相組織、及びZn/Al/MgZn2の三元共晶組織からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項4】
前記亜鉛合金めっき層の表面で観察される前記Zn単相組織の面積分率が40%以下(0%を除く)である、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項5】
前記亜鉛合金めっき層の表面で観察されるZn/MgZn2の二元共晶組織とZn/Al/MgZn2の三元共晶組織の面積分率の合計が50%以上(100%を除く)である、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項6】
前記亜鉛合金めっき層の表面で観察されるMgZn2の単相組織の面積分率は10%以下(0%を含む)である、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項7】
前記亜鉛合金めっき層の板厚方向の断面で観察される前記Zn単相組織の平均粒径が15μm以下(0μmを除く)である、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項8】
前記亜鉛合金めっき層は、重量%で、Al:0.5~3%、Mg:0.5~3%、残部Zn及び不可避不純物を含む、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項9】
前記亜鉛合金めっき層は下記関係式2を満たす、請求項1に記載の亜鉛合金めっき鋼板。
[関係式2]
1.0<[Mg]/[Al]≦4.0
(ここで、[Mg]及び[Al]はそれぞれ、該当元素の重量%を意味する)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
Mg及びAlを含む亜鉛合金めっき浴を設ける段階と、
前記亜鉛合金めっき浴に素地鋼板を浸漬し、めっきを行って亜鉛合金めっき鋼板を得る段階と、
前記亜鉛合金めっき鋼板をガスワイピングしてめっき付着量を調整する段階と、
前記めっき付着量が調整された亜鉛合金めっき鋼板にリン酸塩水溶液の液滴を噴射して冷却した後、空冷する段階と、を含み、
前記液滴を噴射する際に、液滴噴射開始温度は410~420℃であり、液滴噴射終了温度は390~400℃であり、
前記リン酸塩水溶液の濃度は1~3重量%である、亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記液滴を噴射する際に、液滴噴射開始温度と液滴噴射終了温度の差は15℃以上である、請求項11に記載の亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記液滴を噴射する際に、前記液滴が亜鉛合金めっき鋼板との静電引力によって付着されるように帯電噴射する、請求項11に記載の亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記液滴を噴射する際に、液滴噴射量は50~100g/m2である、請求項11に記載の亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記リン酸塩水溶液は、リン酸水素アンモニウム((NH4)2HPO4)水溶液、リン酸水素アンモニウムナトリウム(NaNH4HPO4)水溶液、第1リン酸亜鉛(Zn(H2PO4)2)水溶液、及びリン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)水溶液からなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項11に記載の亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記亜鉛合金めっき浴は、重量%で、Al:0.5~3%、Mg:0.5~3%、残部Zn及び不可避不純物を含む、請求項11に記載の亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第5号証を提出し、以下の申立理由1-1~3により、本件訂正前の本件特許の請求項1~10に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(1)申立理由1-1(新規性)(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~8、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(新規性)(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~4、6、10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由2-1(進歩性)(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~8、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由2-2(進歩性)(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項4~6、8、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由2-3(進歩性)(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~4、6、10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由2-4(進歩性)(取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項4~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(7)申立理由3(明確性要件)(取消理由として採用)
本件訂正前の請求項10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(8)証拠方法
・甲第1号証:Jiashun LU et al., The Experiment Investigation of Microstructure of Galvanized Zn-Al-Mg Coated Steel Sheets, GALVATECH 2013 & APGALVA 2013, p.653-658
・甲第2号証:YU Kang-cai et al., Microstructure of Hot-Dip Galvanized Zn-Al-Mg Alloy Coating, J. Shanghai Jiaotong Univ. (Sci.), 2012年, 第17巻, 第6号, p.663-667
・甲第3号証:ICDD(Inter Center for Diffraction Data; 国際回折データ・センター)が収集、公表しているデータベース内のPDF#04-0831のデータ
・甲第4号証:松下能孝, 結晶構造データベースと結晶学共通データ・フォーマットCIFについて 1.結晶構造データベース, Journal of Surface Analysis, 2013年, 第19巻, 第3号, pp.177-187
・甲第5号証:特表2014-501334号公報
2 令和 4年11月11日付けで通知した取消理由の概要
取消理由1(明確性要件)
本件訂正前の請求項10には、「前記亜鉛合金めっき鋼板の表面における黒点の単位面積当たりの個数が0.1個/cm2以下である」との記載があるが、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、黒点の個数の具体的な測定条件、測定する黒点の大きさ等については記載されておらず、また、黒点の個数を測定する条件によって、黒点の単位面積当たりの個数が変化することは明らかであるところ、黒点の単位面積当たりの個数は一義的に定まらない。
したがって、黒点の単位面積当たりの個数が特定できないから、本件訂正前の請求項10の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。
第5 本件明細書の記載事項
1 本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工性に優れた亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、曲げ加工性に優れた亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明の追加的な課題は、明細書全体にわたってその内容が記載されており、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であれば、本発明の明細書から本発明の追加的な課題を明確に理解するものである。」
(3)「【0027】
一例によると、本発明による亜鉛合金めっき鋼板は、表面外観にも非常に優れる。より具体的には、上記亜鉛合金めっき鋼板の表面における黒点(black spot)の単位面積当たりの個数が0.1個/cm2以下であることができる。」
(4)「【実施例】
【0041】
(実施例1)
めっき用試験片として厚さ0.8mm、幅100mm、及び長さ200mmの低炭素冷延鋼板(すなわち、素地鋼板)を設けた後、上記素地鋼板をアセトンに浸漬して超音波洗浄し、表面に存在する圧延油などの異物を除去した。その後、一般の溶融めっきの環境で鋼板の機械的特性を確保するために、750℃で還元雰囲気熱処理を行った後、下記表1の組成を有するめっき浴(めっき浴の温度:450℃)に浸漬して亜鉛合金めっき鋼板を製造した。続いて、製造されたそれぞれの亜鉛合金めっき鋼板をガスワイピングして、めっき付着量を片面当たり70g/m2に調節し、下記表1の条件で冷却を行った後、空冷した。一方、下記表1には示さなかったが、比較例5は、発明例1と同一のめっき浴を用いて製造された亜鉛合金めっき鋼板をガスワイピングして、めっき付着量を片面当たり70g/m2に調節した後、通常の冷却装置を用いて平均冷却速度12℃/secでめっき層が完全に凝固される時点(約300℃以下)まで冷却した。
【0042】
次に、FE-SEM(SUPRA-55VP、ZEISS)によって製造された亜鉛合金めっき鋼板の微細組織を観察してその結果を図1及び図2に示し、Zn単相組織の平均粒径を測定してその結果を表2に示した。
【0043】
その後、Zn単相組織の(0001)優先配向度(f)を下記関係式1に基づいて測定し、その結果を下記表2にともに示した。
[関係式1]
f(%)=(Ibasal/Itotal)×100
(ここで、Itotalとは、Cu-Kαソースを用いてX線回折パターンを2θ 10°~100°まで測定したとき、すべてのZn単相の回折ピークを積分した値を意味し、Ibasalとは、基底面に関するZn単相の回折ピークを積分した値を意味する。)
【0044】
続いて、製造された亜鉛合金めっき鋼板の曲げ加工性を評価してその結果を下記表2にともに示した。
【0045】
耐食性は、次のような方法により評価した。
それぞれの亜鉛合金めっき鋼板を塩水噴霧試験機(KS-C-0223に準ずる塩水噴霧規格試験)により腐食促進試験を行った後、めっき層の表面に赤錆発生面積が5%になるまでの経過時間を測定した。
【0046】
また、曲げ加工性は、次のような方法により評価した。
それぞれの亜鉛合金めっき鋼板を3T曲げ加工した後、曲げ加工頂部の長さ1mmをSEMで観察した後、画像分析システム(image analysis)を用いて曲げクラックの面積率を測定した。
【0047】
【表1】
[図:0001399350000001.jpg]
【0048】
【表2】
[図:0001399350000002.jpg]
【0049】
表2を参照すると、本発明が提供する条件を満たす発明例1及び2の場合には、曲げ加工性に両方とも優れていることが確認できる。
【0050】
これに対し、比較例1~5は、耐食性に優れているが、fの値が50%に達しないことから曲げ加工性が弱いことが確認できる。
【0051】
図1は、本発明の表面部の微細組織を観察した結果であって、(a)が発明例1、(b)が比較例5を示したものである。また、図2は、本発明の断面部の微細組織を観察した結果であって、(a)が発明例1、(b)が比較例5を示したものである。
【0052】
図3は本発明の発明例1のXRD(x-ray diffractometer)分析結果である。図3に示される「○」及び「●」に該当するピークは、すべてのZn単相の回折ピークに相当し、このうち「○」に該当するピークは基底面に関するZn単相の回折ピークに相当する。
【0053】
(実施例2)
めっき用試験片として厚さ0.8mm、幅100mm、及び長さ200mmの低炭素冷延鋼板(すなわち、素地鋼板)を設けた後、上記素地鋼板をアセトンに浸漬して超音波洗浄し、表面に存在する圧延油などの異物を除去した。その後、一般の溶融めっきの環境で鋼板の機械的特性を確保するために、750℃で還元雰囲気熱処理を行った後、下記表3の組成を有するめっき浴に浸漬して亜鉛合金めっき鋼板を製造した。続いて、製造されたそれぞれの亜鉛合金めっき鋼板をガスワイピングして、めっき付着量を片面当たり70g/m2に調節し、実施例1のうち発明例1と同一の条件で冷却を行った。
【0054】
次に、それぞれの亜鉛合金めっき鋼板の表面で観察される微細組織の相分率を測定し、黒点数を測定して、その結果をそれぞれ表3及び表4に示した。
【0055】
その後、摩擦特性試験(linear friction test)のために、ツールヘッド(tool head)で製造されたそれぞれの亜鉛合金めっき鋼板の表面に一定の圧力をかけた状態で、合計20回の摩擦を行った。この際、目標荷重は333.3kgf、圧力は3.736MPa、1回の摩擦時のツールヘッド(tool head)の移動距離は200mm、ツールヘッド(tool head)の移動速度は20mm/sであった。
【0056】
摩擦後に、それぞれの亜鉛合金めっき鋼板に対して剥離試験を行った。より具体的には、10Rで曲げ加工された個々の亜鉛合金めっき鋼板の曲げ加工部にセロハン粘着テープ(Nichiban社 NB-1)を密着させた後、これを瞬間的に剥離し、光学顕微鏡(50倍率)を用いてめっき層の欠陥数を測定した。測定結果、めっき層の欠陥数が5個/m2以下の場合を「○」、めっき層の欠陥数が5個/m2を超える場合を「×」と評価し、その結果を下記表4にともに示した。
【0057】
また、摩擦後に、それぞれの亜鉛合金めっき鋼板を塩水噴霧試験機に装入し、国際規格(ASTM B117-11)によって赤錆発生時間を測定した。この際、5%塩水(温度35℃、pH6.8)を用いており、時間当たりの2ml/80cm2の塩水を噴霧した。赤錆発生時間が500時間以上の場合を「○」、500時間未満の場合を「×」と評価し、その結果を下記表4にともに示した。
【0058】
【表3】
[図:0001399350000003.jpg]
【0059】
【表4】
[図:0001399350000004.jpg]
【0060】
表4を参照すると、本発明が提供する条件を満たす発明例A~Eの場合には、表面の外観及び耐スクラッチ性に両方とも優れていることが確認できる。
【0061】
これに対し、比較例A、比較例B、比較例D、及び比較例Eは、めっき層の表面で観察されるZn単相組織の面積分率が高すぎるため表面外観が劣位であり、比較例A~Gは、Zn/MgZn2の二元共晶組織とZn/Al/MgZn2の三元共晶組織の面積分率が低すぎるため耐スクラッチ性が劣位であった。」
(5)「【図3】
[図:0001399350000005.jpg]
」
第6 甲第1号証~甲第5号証の記載事項
1 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「The Experiment Investigation of Microstructure of Galvanized Zn-Al-Mg Coated Steel Sheets」(当審仮訳:Zn-Al-Mgめっき被覆鋼板の微細構造に関する実験的検討)(表題)に関して、以下の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を表すものであって、以下同様である。
(1)「Abstract: In this article,the effect of zinc alloy composition on microstructure of hot-dipped Zn-Al-Mg coating steel strip was investigated. By SEM and EDX, the surface and cross sectional microstructure of Zn-Al-Mg coating and the chemical composition and the microstructure of alloy layer was analyzed.・・・」(第653ページ要約欄)
(当審仮訳:要約:本研究では、Zn-Al-Mg溶融めっき鋼板の微細構造に及ぼすZn合金組成の影響を調べた。SEM及びEDXにより、Zn-Al-Mg皮膜の表面及び断面微細構造、合金層の化学組成と微細構造を分析した。・・・)
(2)「2 Experiments
2.1 Preparation of coating steel sheet
Hot dip galvanizing experiments was carried on the HDP SIMULATORS EU AV hot dip galvanizing simulator, simulating hot dip galvanizing line manufacturing conditions, using varied galvanizing liquid for experiments. The galvanizing liquid composition was showed in Table 1, temperature is 450℃, the steel sheets used in this research were normal commercial grade cold rolled steel.
[図:0001399350000006.jpg]
」(第653ページ右欄)
(当審仮訳:2 実験
2.1 被覆鋼板の準備
溶融亜鉛めっき実験を、HDP SIMULATORS EU AV 溶融亜鉛めっきシミュレータで行った。これは、実験用に様々な亜鉛めっき液を使用する、溶融亜鉛めっきラインの製造条件をシミュレートするものである。亜鉛めっき液組成を表1に示した。温度は450℃、本研究で使用した鋼板は通常の市販品の冷間圧延鋼材である。
表1:省略」
(3)「3 Experimental results
3.1 Microstructure of coating surface and cross-section
Fig.1 was cross-section microstructure of Zn-Al-Mg coated steel. In this figure, it could be seen that Z1M coating was mainly made up of coarse zinc grains and eutectic phase between zinc grains. The eutectic phase was rather tiny and because the aluminum content in the zinc liquid was rather low, reaction between zinc in the coating and steel base happened, zinc-steel alloy phase forming and growing into the coating. The microstructure of Z1A1M coating was similar to that of Z1M coating and the difference was that volume fraction of eutectic phase increased and coarse zinc grain became tiny, simultaneously there was not zinc-steel alloy phase in the interface between steel base and coating. Microstructure of Z2A2M coating was tinier than the former two coatings and granular bar-like zinc grains and eutectic phase distribute uniformly between other phases.」(第654ページ左欄~右欄)
(当審仮訳:3 実験結果
3.1 皮膜表面及び断面の微細構造
図1にZn-Al-Mg被覆鋼の断面組織を示す。この図では、Z1M皮膜は主に粗い亜鉛結晶粒と亜鉛結晶粒間の共晶相で構成されていることがわかる。共晶相はかなり小さく、亜鉛液中のアルミニウム含有量がかなり低いため、皮膜中の亜鉛と鋼基材との反応が起こり、皮膜中に亜鉛-鋼合金相が形成し成長した。Z1A1M皮膜の微細構造はZ1M皮膜のそれと類似しており、差異は共晶相の体積率が増加し、粗大な亜鉛結晶粒が微細になり、同時に鋼基材と皮膜の間の界面に亜鉛-鋼合金相がないことであった。Z2A2M皮膜の微細構造は前者の2つの皮膜よりも微細で、粒状の棒状亜鉛結晶粒と共晶相は他の相の間に均一に分布した。」
(4)「
[図:0001399350000007.jpg]
Fig.1 Cross section microstructure of Zn-Al-Mg coated steel sheet(Z1M)」(第654ページ)
(当審仮訳:図1 Zn-Al-Mg被覆鋼板の断面微細組織(Z1M))
(5)「3.2 Elements distribution in coating
Fig.3 was the elements distribution of Zn-Al-Mg coating cross-section. From the figure, it could be seen that magnesium of Z1M coating took on a net-like look and concentrate on the interface, surface and grain boundary, but aluminum only existed on the interface and magnesium and aluminum distributed uniform on the surface and interface, distribution of aluminum on the interface was rather continuous, but magnesium was continuous on the surface.」(第655ページ左欄)
(当審仮訳:3.2 皮膜の元素分布
図3にZn-Al-Mg皮膜断面の元素分布を示す。図から、Z1M皮膜のマグネシウムがネット状になり、界面、表面及び粒界に集中しているが、界面にはアルミニウムのみが存在し、マグネシウム及びアルミニウムは表面及び界面に均一に分布していることが分かる。界面におけるアルミニウムの分布はむしろ連続的であり、マグネシウムは表面で連続していた。」
(6)「
[図:0001399350000008.jpg]
Fig.3 Elements distribution of Zn-Al-Mg coating cross section」(第655ページ左欄)
(当審仮訳:図3 Zn-Al-Mg皮膜断面の元素分布)
(7)「Fig.4 was element distribution on the surface of Zn-Al-Mg coating consistent with cross-section element distribution, aluminum in Z1M and Z1A1M coating distributed along zinc grain boundary like net, in Z2A2M coating like plane. Corresponding with aluminum distribution, zinc distributed on the surface like granules and magnesium content was very low in the zinc grain, in the MgZn2, and Zn, Al eutectic certain content, additionally there were some amount of granular, spotted MgZn2 with high magnesium content.」(第655ページ右欄)
(当審仮訳:図4は、Zn-Al-Mg皮膜表面の元素分布を断面元素分布と一致させたものであり、Z1M及びZ1A1M皮膜においてアルミニウムは、亜鉛結晶粒界に沿ってネット状に分布し、Z2A2M皮膜においては、面状に分布している。アルミニウムの分布に対応して、亜鉛は顆粒のように表面に分布し、マグネシウム含有量は亜鉛結晶粒、MgZn2、Zn、Al共晶のある含有量では非常に低く、さらにマグネシウム含有量の高い粒状の斑点状MgZn2があった。」
(8)「
[図:0001399350000009.jpg]
Fig.4 ZAM coating surface component distribution of EPMA(Z2A2M)」(第655ページ右欄)
(当審仮訳:図4 EPMAによるZAM皮膜の表面成分分布(Z2A2M))
(9)「
[図:0001399350000010.jpg]
Fig.4 ZAM coating surface component distribution of EPMA(Z1A1M)」(第655ページ右欄)
(当審仮訳:図4 EPMAによるZAM皮膜の表面成分分布(Z1A1M))
(10)「
[図:0001399350000011.jpg]
Fig.4 ZAM coating surface component distribution of EPMA(Z1M)」(第655ページ右欄)
(当審仮訳:図4 EPMAによるZAM皮膜の表面成分分布(Z1M))
(11)「3.3 Coating phase composition
Fig. 5 was the phase composition of ZAM coating, seen from the figure, phase composition of three types of coatings was all zinc, aluminum and MgZn2, only different in phase content and in Z2A2M coating MgZn2 diffraction peak was stronger.」(第656ページ左欄)
(当審仮訳:3.3 皮膜の相組成
図5は、ZAM皮膜の相組成であり、図から見ると、3つのタイプの皮膜の相組成はすべて亜鉛、アルミニウム及びMgZn2であり、相含有量が異なるだけであり、Z2A2M皮膜ではMgZn2回折ピークがより強かった。」
(12)「
[図:0001399350000012.jpg]
Fig.5 The phase composition of ZAM coating」(第656ページ左欄)
(当審仮訳:図5 ZAM皮膜の相構成)
(13)「4 Results analysis
4.1 Effect of aluminum and magnesium content on coating microstructure and structure
When aluminum content was 0.2wt%, iron-aluminum alloy layer on the interface between coating and steel sheet could not prevent the growth of iron-zinc compound effectively and the forming of brittle iron-zinc compound would make coating deformability and compatibility bad severely. When aluminum content was 0.2wt% and 1wt%, there formed net aluminum rich region in the coating, but when aluminum content was 2wt%, there formed aluminum dendrite in the coating. Because the melting point of aluminum was high, aluminum dendrite formed before other parts solidified, so it has the effect of isolating zinc-rich phase in the coating and refining the coating grains. Despite content, aluminum all has the tendency to concentrate on the surface, because aluminum has perfect corrosion-resistant quality, this provided good corrosion-resistant performances for Zn-Al-Mg coating.
When magnesium content was 1wt%, it mainly distributed on the grain boundary and formed concentration in the alloy layer, grain boundary and surface, so there were large amount of block regions hardly has magnesium. When magnesium content was 2wt%, it distributed homogeneously in the coating and coating grain gained effective refining, expect fewer block regions magnesium concentrating on the surface. Adding magnesium formed magnesium and zinc eutectic phase and refined the grains.」(第657ページ左欄~第658ページ左欄)
(当審仮訳:4 結果分析
4.1 皮膜の微細構造及び組織におけるアルミニウムとマグネシウムの含有量の影響
アルミニウム含有量が0.2wt%の場合、皮膜と鋼板の界面の鉄-アルミニウム合金層は鉄-亜鉛化合物の成長を効果的に防止できず、脆性鉄-亜鉛化合物の形成は皮膜変形性と相溶性を著しく悪化させる。アルミニウム含有量が0.2wt%と1wt%の場合、皮膜中に純アルミニウムリッチ領域が形成したが、アルミニウム含有量が2wt%の場合、皮膜中にアルミニウムデンドライトが形成した。アルミニウムの融点が高いため、他の部分が凝固する前にアルミニウムデンドライトが形成され、皮膜中の亜鉛リッチ相を分離し、皮膜粒子を精製する効果がある。含有量にかかわらず、アルミニウムはすべて表面に集中する傾向があり、アルミニウムは完全な耐食性品質を有するので、これはZn-Al-Mg皮膜のための良好な耐食性性能を提供した。
マグネシウム含有量が1wt%の場合、主に粒界に分布し、合金層、粒界及び表面に濃縮を形成し、マグネシウムをほとんど含まないブロック領域が大量に存在した。マグネシウム含有量が2wt%の時、それは皮膜中に均一に分布し、皮膜粒子は効果的に微細化し、表面にマグネシウムが濃縮するブロック領域が少ないことを期待した。マグネシウムの添加はマグネシウムと亜鉛の共晶相を形成し、結晶粒を微細化した。」
(14)「4.2 Phase composition of Zn-Al-Mg coating
From the X-ray diffraction results, it could be seen that in the three coatings studied in this article they were all made up of zinc, aluminum and MgZn2 and the difference was in amount and phase composition. With aluminum and magnesium content increasing, volume fraction of aluminum-rich phase and MgZn2 eutectic phase increased continuously.
Solidification point of MgZn2 is higher than zinc, in the Zn-Al-Mg coating MgZn2 existed in two states and one is point-like pre-eutectic phase of MgZn2. The other state precipitated at the eutectic point as eutectic in solidification process and it might be binary eutectic of zinc and MgZn2 or ternary eutectic of aluminum, zinc and MgZn2.
Similar with MgZn2, aluminum-rich phase has two states in coatings and one is pre-eutectic phase such as aluminum dendrite and aluminum-rich phase in aluminum, zinc and MgZn2 ternary eutectic.」(第658ページ左欄)
(当審仮訳:4.2 Zn-Al-Mg皮膜の相組成
X線回折の結果から、この論文で調べた3つの皮膜では、それらはすべて亜鉛、アルミニウム及びMgZn2からなり、量と相組成に差があることが分かった。アルミニウムとマグネシウム含有量の増加と共に、アルミニウムリッチ相とMgZn2共晶相の体積率は連続的に増加した。
MgZn2の凝固点は亜鉛より高く、Zn-Al-Mg皮膜においてMgZn2は2つの状態で存在し、1つはMgZn2の点状の初晶であった。他の状態は凝固過程で共晶として共晶点に析出し、亜鉛及びMgZn2の二元共晶、又はアルミニウム、亜鉛及びMgZn2の三元共晶であった。
MgZn2と同様に、アルミニウム富化相は皮膜中に2つの状態を有し、1つはアルミニウム、亜鉛及びMgZn2三元共晶中のアルミニウムデンドライト及びアルミニウム富化相のような初晶である。」
2 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「Microstructure of Hot-Dip Galvanized Zn-Al-Mg Alloy Coating」(当審仮訳:溶融Zn-Al-Mg合金めっき皮膜の微細構造)(表題)に関して、以下の記載がある。
(1)「Abstract: The microstructure of hot-dip galvanized Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si alloy coating was studied in this article. X-ray diffraction analysis revealed the coating is composed by Zn, Al and MgZn2 phase. Optical microscope (OM) and scanning electron microscope (SEM) observations showed the coating is occupied by snowflake-like dendrite, double hexagonal organization and eutectic.・・・」(第663ページ要約欄)
(当審仮訳:要約:溶融Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Siめっき合金皮膜の微細構造を研究した。X線回折分析から、皮膜はZn、Al及びMgZn2相からなることが分かった。光学顕微鏡(OM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)観察は、皮膜が雪片状樹枝状晶、二重六方晶組織及び共晶によって占められていることを示した。・・・」
(2)「1 Experiments
1.1 Preparation
The substrate of the hot-dip coating is cold rolled sheet of interstitial free (IF) steel, which is mainly composed of w(C) = 0.0017% (w is mass fraction), w(Mn) = 0.24% and w(P) = 0.12%. The size of the substrate is 220 mm × 120 mm × 1 mm. Hot-dip experiments are done with the hot dip simulation equipment. The zinc-based liquid alloy, about 460 ℃, is composed of w(Al) = 11%, w(Mg) = 3%, w(Si) = 2% and the balance of Zn. The processes for the hot dip experiment are as follows: firstly, the substrate was annealed at 780 ℃ for 60 s, then insulated at 470 ℃ for 10 s; next the substrate was dipped into the melting alloy for 3 s; afterwards, the sample was moved from the molten and purged by air knife (N2) to control the thickness of the alloy melt; finally, the sample cooled down at the rate about -6 ℃/s. The whole processes were carried under H2 + N2 (volume fraction φ(H2) = 5%) atmosphere. The thickness of the alloy coating is about 10 μm.
1.2 Organization Analysis of the Coating
Phases of the coating were examined with X-ray diffraction (XRD) (Cu target, Ni filter). The microstructure of the coating surface was observed by optical microscope (OM) after having been polished and etching with a mixture of 1 mL HNO3 + 1 mL TNP + 98 mL alcohol, and surface and cross section were observed by scanning electron microscope (SEM) after being polished. The elements compositions of each organization were analyzed by energy dispersive spectroscopy (EDS). Further research on the dendrite structure was carried out by transmission electron microscopy (TEM) and electron diffraction pattern.」(第663ページ右欄~第664ページ左欄)
(当審仮訳:1. 実験
1.1 準備
溶融めっきの基材はIF鋼の冷延板であり、主としてw(C)=0.0017%(wは質量分率)、w(Mn)=0.24%及びw(P)=0.12%からなる。基材のサイズは220mm×120mm×1mmである。溶融シミュレーション装置を用いて溶融実験を行った。約460℃の亜鉛基液体合金は、w(Al)=11%、w(Mg)=3%、w(Si)=2%、残部Znからなる。最初に基板を780℃で60sアニールし、次に470℃で10s絶縁した。次に基板を溶融合金に3秒間浸漬した;その後、試料を溶融物から移動させ、エアナイフ(N2)によってパージして、合金溶融物の厚さを制御した。最終的に試料は約-6℃/sの速度で冷却された。全プロセスをH2+N2(体積率φ(H2)=5%)雰囲気下で行った。合金皮膜の厚さは約10μmである。
1.2 皮膜の組織分析
皮膜の相をX線回折(XRD)(Cuターゲット、Niフィルタ)で調査した。1mL HNO3+1mL TNP+98mLアルコールの混合物で研磨及びエッチングした後、皮膜表面の微細構造を光学顕微鏡(OM)で観察し、研磨後、表面及び断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。各組織の元素組成をエネルギー分散分光法(EDS)により分析した。透過型電子顕微鏡(TEM)と電子回折パターンにより樹枝状結晶構造を研究した。」
(3)「2 Results and Discussion
2.1 Phase Composition
Figure 1 shows the XRD pattern of the Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si coating. It reveals that the phases of the coating are only Zn, Al and MgZn2 phases, and the result is consistent with the reports [1-2,8-9].
In the X-ray diffractogram of the coating, one principal peak of the supersaturated phase at 2θ = 36.4°is much higher than other peaks, as shown in Fig. 1, which is from (0002) crystal planes of Zn phase.
It does not detect the presence of Mg2Si phase and Al-Fe because of their low percentage compositions and the low resolution of XRD. There should be a thin film of Fe-Al alloy (≦1μm) between the coating and substrate, and a small amount of Si existed by the way of Mg2Si phase [3,10], which is distributed in the outermost layer of the coating marginally, but it has minimal impact to the microstructure of the coating. Additionally, the film of the Fe-Al alloy is too thin to observe, so the influences of Si and Fe-Al film are not discussed in this paper.」(第664ページ左欄~右欄)
(当審仮訳:2 結果及び議論
2.1 相組成
図1は、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si皮膜のXRDパターンを示す。皮膜の相はZn、Al及びMgZn2相のみであり、結果は報告と一致した[1-2、8-9]。
皮膜のX線回折図において、2θ=36.4°における過飽和相の1つの主ピークは、図1に示すように、Zn相の(0002)結晶面からの他のピークよりもはるかに高い。
Mg2Si相とAl-Feは組成比が低く、XRDの分解能が低いので検出できない。皮膜と基板の間にFe-Al合金(≦1μm)の薄膜が存在し、及びMg2Si相により少量のSiが存在し[3、10]、皮膜の最外層に僅かに分布していたが、皮膜の微細構造にはほとんど影響しなかった。さらに、Fe-Al合金の膜は観察するには薄すぎるので、SiとFe-Al膜の影響は本論文では議論しない。」
(4)「
[図:0001399350000013.jpg]
Fig. 1 The phase composition of Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si coating」(第664ページ右欄)
(当審仮訳:図1 Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si皮膜の相構成)
(5)「2.2 Microstructure
The microstructures of Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si coating surface are shown in Fig. 2. It can be observed from Fig. 2(a) that there are three typical organizations in the coating: snowflake-like dendrites; double hexagonal organization (Fig. 2(b)); granular and lamellar eutectics. And the snowflake-like dendrites are the main structure of the coating, occupied the vast majority coating volume. The large magnification of the microstructure Fig. 2(c) shows that it’s not a single phase but a type of granular structure inside the dendrites. What is more, the angle between dendrite branches is precisely 60°, which is the typical dendrite morphology of the hexagonal close-packed (HCP) structure. It is reported that the dendrites are primary Al-rich phase [3,9] (Zn solid solution). However, Al phase has a face centered cubic (FCC) structure, whose dendrite branches are perpendicular to each other, which is inconsistent with the fact. We can conclude from the distribution of those typical structures that it was the dendrites nucleated first and grew up at the beginning of the solidification. At that time, the dendrite was a single phase of HCP crystal structure (shown in Fig. 3(a)), whose [0001] orientation was perpendicular to the substrate, and〈10 ̄10〉orientations were along to the dendrite growth direction.
The double-hexagonal organization (Fig. 2(b)) is divided into outer and inner two layers, and both contours have clear hexagonal borders. The inner part is a hexagon nuclei of MgZn2 (HCP), while the outer part is the external radial lamellar organization disintegrated from a single phase [6]. Or there would not be a hexagonal contour. That single phase also has an HCP structure as shown in Fig. 3(b). The orientation relationship between the two hexagons is the (1 ̄100) planes parallel to each other. It’s clearly that the outer hexagon grew up as the MgZn2 being heterogeneous nucleation. The diameters of these organizations are about 60 μm, which are much bigger than the thickness of the coating. The double-hexagonal organizations are dispersed in dendrites gap, as shown in Fig. 2(a).
The rest of the coating were the eutectics, including the granular (Fig. 2(d)) and the lamellar ones (Fig. 2(e)), composed by Zn, Al and MgZn2 phase. The dimensions of the lamellar and the granular are about 0.5 μm. These ternary eutectics were filling in the blank between the dendrites and the double-hexagonal organizations. It’s sure that the last solidification was the freezing of eutectics from its distribution.
Figure 2(f) is the cross section microstructure of the coating observed with SEM. The blocks arranged regularly are corresponding to the surface morphology of secondary dendrite arms. However, there should be a thin film of Fe-Al alloy between substrate and the coating [9-10], but it was too thin to observe due to the lower dip temperature and the shorter dipping time.」(第664ページ右欄~第665ページ右欄)
(当審仮訳:2.2 微細構造
Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si皮膜表面の微細構造を図2に示す。図2(a)から、皮膜には3つの典型的な組織;雪片状樹枝状晶;二重六角形の組織(図2(b));粒状及び層状共晶があることがわかる。そして、雪片状樹枝状晶が皮膜の主要構造であり、大部分の皮膜体積を占めた。図2(c)の微細構造を拡大してみると、単相ではなく樹枝状晶内部の粒状構造であることがわかる。さらに樹枝状晶枝間の角度は正確に60°であり、これは六方最密充填(HCP)構造の典型的な樹枝状晶形態である。樹枝状晶は一次Alリッチ相[3,9](Zn固溶体)であると報告されている。しかし、Al相は面心立方(FCC)構造を持ち、その樹枝状分枝は互いに垂直であり、事実と矛盾する。これらの典型的な組織の分布から、樹枝状晶が最初に核形成し、凝固の初期に成長したと結論できる。このとき、樹枝状晶はHCP結晶構造(図3(a)に示す)の単相であり、その{0001}方位は基材に垂直で、<10 ̄10>方位は樹枝状晶成長方向に沿っていた。
二重六角形の組織(図2(b))は外側と内側の2層に分かれており、どちらの輪郭も明確な六角形の境界を持っている。内部はMgZn2(HCP)の六角形核で、外部は単相から崩壊した外部放射状ラメラ組織であった[6]。または、六角形の輪郭はない。この単相も図3(b)に示すようにHCP構造をとる。二つの六角形間の配向関係は互いに平行な(1 ̄100)面である。外側の六角形が、不均一な核形成であるMgZn2として成長したことは明らかである。これらの組織の直径は約60μmであり、皮膜の厚さよりもはるかに大きい。図2(a)に示すように、二重六角形の組織は樹枝状晶の隙間に分散している。
皮膜の残りは、Zn、Al及びMgZn2相からなる粒状(図2(d))及び層状(図2(e))を含む共晶であった。ラメラおよび顆粒の寸法は約0.5μmである。これらの三元共晶は樹枝状晶と二重六方晶組織の間のブランクに充填されていた。最後の凝固は、その分布から共晶の凍結であることは間違いない。
図2(f)は、SEMで観察した皮膜の断面微細構造である。規則的に配列したブロックは二次デンドライト(樹枝状晶)アームの表面形態に対応していた。しかし、基板と皮膜との間にはFe-Al合金の薄膜が存在するはずである[9‐10]が、より低い浸漬温度とより短い浸漬時間のために観察するには薄すぎた。」
(6)「
[図:0001399350000014.jpg]
Fig. 2 The microstructure of the Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si coating 」(第664ページ)
(当審仮訳:図2 Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si皮膜の微細構造)
(7)「3 Conclusion
(1) There are three typical organizations on the coating: snowflake-like dendrite; double hexagonal structure; granular and lamellar eutectic. The snowflakelike dendrites are the main structure of the coating, occupied the vast majority volume of the coating. Solidification processes are: the dendrites structure was first nucleated and grown up, then the hexagonal nucleus (MgZn2) was formed close to the dendrites, and another phase of HCP grains grew up relying on the nucleus, afterwards the ternary eutectics solidified, at last the dendrites decomposed into granular eutectoid organizations. The coating was composed of Zn rich, Al rich and MgZn2 phase.
(2) The elemental composition of the dendrite is Zn and Al. The hexagonal nuclei is MgZn2 phase, and the eutectic is Zn/Al/MgZn2 ternary eutectic.」(第667ページ左欄)
(当審仮訳:3 結論
(1)皮膜には3つの典型的な組織がある。雪片状樹枝状晶;二重六方晶構造;粒状及び層状共晶である。雪片状樹枝状晶が皮膜の主要構造であり、皮膜の大部分を占めた。凝固過程は、樹枝状晶組織が最初に核形成し成長し、次に六方晶核(MgZn2)が樹枝状晶の近くに形成し、HCP結晶粒の他の相が核に依存して成長し、その後三元共晶が凝固し、樹枝状晶は最終的に粒状共析組織に分解した。皮膜はZnリッチ、Alリッチ及びMgZn2相からなっていた。
(2)樹枝状晶の元素組成はZnとAlである。六方晶核はMgZn2相で、共晶はZn/Al/MgZn2三元共晶であった。」
3 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、ICDD(Inter Center for Diffraction Data; 国際回折データ・センター)が収集、公表しているデータベース内のPDF#04-0831のデータに関して、以下の記載がある。
「PDF#04-0831: 信頼度マーク=星印(+); d=(未知); I=ディフラクトメータ
Zinc, syn
Zn (Bluish white)
X線=CuKa1 λ=1.5405 フィルター=Ni
角度補正= d値の切り捨て= I/Ic(RIR)=3.80
参照=Swanson, Tatge.
Natl. Bur. Stand. (U.S.), Circ. 539, I 16 (1953)
六方晶系 - 粉末回折法, P63/mmc (194) Z=2 融点=420$DE
格子=2.665x4.947 Pearson=hP2 (Mg)
計算密度=7.134 実測密度=7.050 分子量=65.38 体積=30.43
F(20)=55.1(.0182,20)
参照=ibid.
強いピーク:2.09/X 2.47/5 2.31/4 1.69/3 1.34/3 1.17/2 1.33/2 1.12/2 0.91/1 0.86/1
メモ: Sample from New Jersey Zinc Company, Sterling Hill, New Jersey, USA.
Pattern taken at 26 C.
Spectroscopic analysis shows faint traces of Pb, Cu, Mg, Si.
d(Å) I(f) I(v) h k l n^2 2θ θ 1/(2d 2π/d
2.473 53.0 45.0 0 0 2 36.296 18.148 0.2022 2.5407
2.308 40.0 36.0 1 0 0 38.992 19.496 0.2166 2.7224
2.091 100.0 100.0 1 0 1 43.231 21.616 0.2391 3.0049
1.687 28.0 35.0 1 0 2 54.336 27.168 0.2964 3.7245
1.342 25.0 39.0 1 0 3 70.056 35.028 0.3726 4.6820
1.332 21.0 33.0 1 1 0 70.660 35.330 0.3754 4.7171
1.237 2.0 3.0 0 0 4 77.027 38.514 0.4042 5.0794
1.172 23.0 41.0 1 1 2 82.102 41.051 0.4263 5.3570
1.153 5.0 9.0 2 0 0 83.765 41.882 0.4334 5.4456
1.123 17.0 32.0 2 0 1 86.557 43.279 0.4450 5.5920
1.090 3.0 6.0 1 0 4 89.920 44.960 0.4587 5.7639
1.045 5.0 10.0 2 0 2 94.900 47.450 0.4782 6.0092
0.945 8.0 18.0 2 0 3 109.128 54.564 0.5289 6.6461
0.909 6.0 14.0 1 0 5 115.798 57.899 0.5499 6.9099
0.906 11.0 25.0 1 1 4 116.385 58.192 0.5516 6.9320
0.872 5.0 12.0 2 1 0 124.048 62.024 0.5733 7.2038
0.858 9.0 22.0 2 1 1 127.487 63.743 0.5821 7.3154
0.843 2.0 5.0 2 0 4 131.841 65.920 0.5926 7.4472
0.824 1.0 3.0 0 0 6 138.211 69.106 0.6064 7.6206
0.822 9.0 23.0 2 1 2 138.947 69.474 0.6079 7.6391」
4 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、「結晶構造データベースと結晶学共通データ・フォーマットCIFについて 1.結晶構造データベース」(表題)に関し、以下の記載がある。
(1)「2-2. 粉末回折パターン
このデータベースは物質開発を行っている方々に最も身近な物でしょう.前述の“結晶構造のみ”のデータベースとは異なり,基本的に実験で得られた生データを収録した形に成っています.このデータベースの趣旨は,物質の粉末回折パターンは物質が有する結晶構造固有の物(指紋データ)ですので,既知のパターンを収集し,新規物質のパターンと照合する事により,ザックリとその物質の結晶構造を推測しようと言う物です.基本的にパターン・マッチングですので,データベースに収録されている物質のデータは各原子座標までの結晶構造が必ずしも明らかに成っている必要は無く,結晶構造が分かっていない物は,未知結晶構造物質のデータとして収録されます.故に物質を合成した後に得られた物質を先ず分析する手法が粉末回折法で,本データベースは基本,その結果の解釈・解析に用いられます.」(第182ページ左欄)
(2)「このデータベースは,現在,国際回折データ・センター(International Centre for Diffraction Data: ICDD)が中心と成ってデータを収集・公表している物で,別名ICDDデータとも呼ばれます.読者の皆さんも一度は御聞きに成られたり,使用された事が有られる方も多いのではないでしょうか?このデータベースは収集・公表機関の変遷が有り,昔は各収録データがカード形式でしたので,古くはASTM(American Society for Testing and Materials)カードもしくはJCPDS(Joint Committee for Powder Diffraction Standards)カードと呼ばれており,図書館などでカード・ファイルや書籍として保存されていました.[15]
本データベースに収録されるデータはその内容により,レベル1(PDF-1)からレベル4(PDF-4)と分類されます.具体的なデータの収録内容は,各面間隔:d値,最強回折ピーク強度との相対ピーク観測強度:I/Imax,物質名・鉱物名・化学式や測定条件や分かれば格子定数,空間群,各回折ピークの指数hklなどの結晶学的情報を含んだID情報がその基本データで,レベル1(PDF-1)と呼ばれるデータセットと成ります.レベル2(PDF-2)は,レベル1の内容に加えて,前述のNCDおよびICSDデータベースに収録されている結晶構造データから逆算された粉末回折パターン・データを含みます.その為,収録データ数が膨大と成り,CD-ROM(もしくはDVD-ROM)などの記録媒体にデータベースを収録し,コンピューター検索を容易にした物と成っています.そのレベル2データに生の回折パターンをも収録した物がレベル3(PDF-3)ですが,これは現在(2013年)に到っても公表されていません.その代わりに公表されたのが,レベル4(PDF-4)です.このレベルのデータセットは基本的にはレベル2データのアップデート版であるのですが,仕様がちょっと複雑で,以下の3つの派生型が公表・販売されています.
1.PDF-4+: 無機物系のみ
2.PDF-4 Organics:有機物のみ
3.PDF-4 Minerals:鉱物系のみ
PDF-4+は,無機化合物のみ(含む合金系)のデータを収録すると共に,後述するPauling Fileに収録されている結晶構造データから計算されたデータ・回折パターンが追加収録されています.[15, 16]」(第182ページ左欄~第182ページ右欄)
5 甲第5号証の記載事項
甲第5号証(特表2014-501334号公報)には、「高耐食溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
素地鋼板及び溶融亜鉛合金めっき層を含み、
前記溶融亜鉛合金めっき層の組成は重量%で、Al:1~3%、Mg:1.5~4.0%、残りはZn及び不可避な不純物を含み、Al+Mg:2.5~7.0%で、Al/(Al+Mg):0.38~0.48である、高耐食溶融亜鉛合金めっき鋼板。
・・・
【請求項3】
前記溶融亜鉛合金めっき層のめっき組織は、Zn-Al-MgZn2の三元共晶組織を基地組織とし、Zn-MgZn2の二元共晶組織が分散されためっき組織を含み、Zn単相組織は10%以下で含まれ、MgZn2組織を残部として含む、請求項1に記載の高耐食溶融亜鉛合金めっき鋼板。」
(2)「【0017】
上記Alの含量が1%未満では、耐食性の向上効果が不足し、Mg添加により酷くなるめっき浴表層部の酸化を防止する効果が不十分で、3%を超えると、素地鋼板のFe溶出が増加し、めっき層の溶接性及びリン酸塩処理性が低下するため、Al含量は1~3%であることが好ましい。
【0018】
上記Mgの含量が1.5%未満では、耐食性の向上効果が不十分で、4.0%を超えると、後述するめっき浴の温度範囲で、めっき浴の酸化性及びドロス発生が増大してめっき浴の管理が困難であるため、Mgの含量は1.5~4.0%であることが好ましい。
【0019】
上記アルミニウムとマグネシウムはともにめっき層の耐食性を向上させる元素であって、これらの元素の和が増加するほど、耐食性が向上する。しかし、めっき浴中のアルミニウムとマグネシウム重量%の和が2.5%未満では、耐食性の向上効果が不十分であり、7.0%を超えると、耐食性は向上するが、めっき層の硬度が上昇して加工クラック(Crack)の発生が促進され、溶接性、塗装性が劣化したり、処理方法の改善が必要であるという短所があるため、2.5~7.0%であることが好ましい。」
(3)「【0022】
図1の(a)は、めっき浴の組成がZn-2Al-2Mg、Mg+Al=4、Al/(Mg+Al)=0.5の場合であって、Zn-Al-MgZn2の三元共晶組織を基地とし、粗大なZn単相組織が形成されることを示す。図1の(b)は、Zn-3Al-2Mg、Mg+Al=5、Al/(Mg+Al)=0.6の場合であって、上記図1の(a)に比べて、アルミニウムが若干高くてZn-Alの二元共晶組織も形成されることを示す。一方、図1の(c)は、Zn-2Al-3Mg、Mg+Al=5、Al/(Mg+Al)=0.4の場合であって、Zn単相組織が10%未満観察され、めっき浴中のMgZn2の一部がめっき層中に不可避的に含まれており、Zn-Al-MgZn2の三元共晶組織を基地組織とし、Zn-MgZn2の二元共晶組織で構成されている。上記図1の(c)のめっき組織は、Al/(Mg+Al)が0.38~0.48のときに形成された。
【0023】
図1の(a)のようにZn初晶相が生成されたり、(b)のようにZn-Alの二元共晶組織が形成される場合に比べて、Al/(Mg+Al)が0.38~0.48を満たす(c)は、MgZn2が形成される場合の耐食性に優れ、めっき層中のMgがZnの緻密な腐食生成物であるシモンコライト(Simonkolleite、Zn5(OH)8Cl2)の形成を促進して耐食性を向上させる効果が得られる。」
(4)「【0049】
(実施例2)
一方、めっき浴の組成と、めっき組織の関係を通じて、溶融亜鉛合金めっき鋼板の耐食性を確認するため、実施例2を行った。
【0050】
実施例2は、鋼帯を連続的にめっきする溶融めっき設備において、厚さ0.8mmの低炭素冷間圧延鋼板を素地鋼板とし、次のような条件で溶融亜鉛合金めっきを施した。このとき、ガスワイピングは窒素ガスを用い、片面のめっき付着量が60g/m2であるめっき鋼板を製造した。塩水噴霧試験(KS-C-0223に準ずる塩水噴霧規格試験)によって、試片表面のさび発生面積が5%になるまでの経過時間を測定し、その結果を表2に示した。
【0051】
-連続還元炉条件:鋼板最高温度780℃、露点温度-40℃
-めっき浴組成:表1
-めっき浴温度及び浸漬時間:440℃、3秒
-めっき後の鋼板冷却速度:10℃/s(空気噴射)
【0052】
一方、めっき層の断面組織において、Zn単相が占める面積を表2に示し、他の金属相の場合は存在有無を○/×で表示した。」
【0053】
・・・
【表2-2】
[図:0001399350000015.jpg]
【0054】
表2から、本発明のめっき浴組成を満たすめっき層は、主にZn-MgZn2二元共晶組織とZn-Al-MgZn2三元共晶組織で構成され、このとき、耐食性が向上することが分かる。」
(5)「【図1】
[図:0001399350000016.jpg]
」
第7 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書の申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1-1、2-1、2-2(新規性・進歩性)
(1)甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証には、「Zn-Al-Mgめっき被覆鋼板の微細構造に関する実験的検討」に関する発明が記載されている(第653ページの表題)。
イ 上記アの発明に関し、甲第1号証には、「Zn-Al-Mgめっき被覆鋼板」が「Zn-Al-Mg溶融めっき鋼板」であること(第653ページの要約欄)、亜鉛めっき液組成がwt%で、96.0%Zn-2.0%Al-2.0%Mg、98.0%Zn-1%Al-1%Mg、98.8%Zn-0.2%Al-1%Mgの3種類であること(第653ページの表1)、これらの亜鉛めっき液で被覆された被覆鋼板の略称が、それぞれ、Z2A2M、Z1A1M、Z1Mであること(第654ページ左欄~右欄の「3 実験結果」)も記載されている。
ウ さらに、甲第1号証の図5には、上記3種類の被覆鋼板におけるZAM(Zn-Al-Mg)皮膜の相組成が示されており、図5から、3種類のZAM皮膜の相組成はすべて亜鉛、アルミニウム及びMgZn2を含むものであることが見て取れる(第656ページ左欄の「3.3 皮膜の相組成」)。
エ そうすると、甲第1号証には、以下の3つの発明(以下、「甲1発明Z2A2M」、「甲1発明Z1A1M」、「甲1発明Z1M」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明Z2A2M>
wt%で96.0%Zn-2.0%Al-2.0%Mgの亜鉛めっきで被覆された被覆鋼板であって、皮膜の相組成が以下の図で表される相を含むZn-Al-Mgめっき被覆鋼板。
[図:0001399350000017.jpg]
<甲1発明Z1A1M>
wt%で98.0%Zn-1%Al-1%Mgの亜鉛めっきで被覆された被覆鋼板であって、皮膜の相組成が以下の図で表される相を含むZn-Al-Mgめっき被覆鋼板。
[図:0001399350000018.jpg]
<甲1発明Z1M>
wt%で98.8%Zn-0.2%Al-1%Mgの亜鉛めっきで被覆された被覆鋼板であって、皮膜の相組成が以下の図で表される相を含むZn-Al-Mgめっき被覆鋼板。
[図:0001399350000019.jpg]
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明Z2A2Mとの対比・判断
(ア)対比
a 甲1発明Z2A2Mにおいて、「wt%で96.0%Zn-2.0%Al-2.0%Mg」は亜鉛合金の組成であるから、鋼板が被覆されるのは亜鉛合金である。
そして、甲1発明Z2A2Mにおける、「wt%で98.8%Zn-0.2%Al-1%Mgの亜鉛めっき液で被覆された被覆鋼板」は、下地である「鋼板」に対して、皮膜として「亜鉛合金めっき」層が被覆されたものであるから、本件発明1における、「素地鋼板と、亜鉛合金めっき層と、を含む亜鉛合金めっき鋼板」に相当する。
b ICDD(国際回折データセンター)のPDF(Powder Diffraction File)を参照すると、甲1発明Z2A2Mの皮膜の相組成において、「1-Zinc,syn(00-004-0831)」は、Zn相を意味し、「3-Magnesium zinc(03-065-0120)」は、MgZn2相を意味するから、甲1発明Z2A2Mにおける皮膜は、Zn相と、MgZn2相とを含むものである。また、本件発明1における「Zn-Al-Mg系金属間化合物」には、「MgZn2の単相組織」が含まれる(本件特許の請求項3)。
そうすると、甲1発明Z2A2Mにおける、「皮膜の相組成が以下の図で表される相を含む」は、本件発明1における、「亜鉛合金めっき層は、微細組織として、Zn単相組織と、Zn-Al-Mg系金属間化合物と、を含み」に相当する。
c 以上によれば、本件発明1と甲1発明Z2A2Mとは、以下の一致点1-1において一致するとともに、以下の相違点1-1で相違する。
<一致点1-1>
「素地鋼板と、亜鉛合金めっき層と、を含む亜鉛合金めっき鋼板であって、
前記亜鉛合金めっき層は、微細組織として、Zn単相組織と、Zn-Al-Mg系金属間化合物と、を含む、
亜鉛合金めっき鋼板。」である点。
<相違点1-1>
本件発明1は、亜鉛合金めっき層に含まれるZn単相組織について、「Zn単相組織は、下記関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が50%以上である
[関係式1]
f(%)=(Ibasal/Itotal)×100
(ここで、Itotalとは、Cu-Kαソースを用いてX線回折パターンを2θ 10°~100°まで測定したとき、すべてのZn単相の回折ピークを積分した値を意味し、Ibasalとは、基底面に関するZn単相の回折ピークを積分した値を意味する。)」のに対し、甲1発明Z2A2Mの「皮膜」に含まれる「Zn相」が、上記「関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が50%以上である」のか不明である点。
(イ)判断
a 甲1発明Z2A2Mは、皮膜の相組成がX線回折パターンで特定されているので、この図から「(0001)優先配向度(f)」が求められるかを検討する。
b 甲第1号証において、図5のX線回折パターンは、横約56mm、縦約29mmの長方形の中に示されており、バックグラウンドの補正は行われていない。また、X線回折パターンは、所々点線で表されていたり、角度を表す直線と重なったりするため、図5が正確なX線回折パターンを示しているとはいえない。
そして、図5において、バックグラウンドの補正が行われておらず、また、図5が正確な解析パターンを示しているとはいえない以上、図5から、正確な積分強度が求められるとはいえない。
c そうすると、図5から、「Ibasal」と「Itotal」のいずれの値も正確に求めることはできないから、甲1発明Z2A2Mの「皮膜」に含まれる「Zn相」が、上記「関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が50%以上である」かは不明である。
d よって、相違点1-1は実質的な相違点である。
e そして、甲第1号証には、「(0001)優先配向度(f)」を調整することが何ら記載されておらず、また、甲第3号証は、ZnのX線回折データ(甲第4号証は、甲第3号証中の「PDF#4」の説明)を示しているだけであるから、甲1発明Z2A2Mにおいて、「(0001)優先配向度(f)」を「50%以上」とすることが動機付けられるとはいえない。
f また、甲第5号証には、高耐食溶融亜鉛合金めっき鋼板において、溶融亜鉛合金めっき層のめっき組織が、Zn-Al-MgZn2の三元共晶組織を基地組織とし、Zn-MgZn2の二元共晶組織が分散されためっき組織を含み、Zn単相組織は10%以下で含まれ、MgZn2組織を残部として含むことが記載されているものの、「(0001)優先配向度(f)」を調整することは何ら記載されていないから、甲第5号証の記載から、甲1発明Z2A2Mにおいて、「(0001)優先配向度(f)」を「50%以上」とすることが動機付けられるとはいえない。
g したがって、甲1発明Z2A2Mにおいて、上記相違点1-1に係る特定事項を備えることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
イ 本件発明1と甲1発明Z1A1Mとの対比・判断
(ア)本件発明1と甲1発明Z1A1Mとを対比すると、上記一致点1-1において一致するとともに、上記相違点1-1で相違する。
(イ)上記相違点1-1についての判断は、上記ア(イ)の判断と同様である。
ウ 本件発明1と甲1発明Z1Mとの対比・判断
(ア)本件発明1と甲1発明Z1Mとを対比すると、上記一致点1-1において一致するとともに、上記相違点1-1で相違する。
(イ)上記相違点1-1についての判断は、上記ア(イ)の判断と同様である。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
オ 申立人の主張について
(ア)申立人は、特許異議申立書の第45~52ページにおいて、f値の計算方法について、「2θ 10°~80°間で赤▼印、黒▼印を付けたピークの積分強度を、XRDグラフを引き延ばした際のピークの面積により求め、次の式によりf値を算出した。
f値=赤▼の積分強度の総和/(黒▼の積分強度の総和+赤▼の積分強度の総和)」と述べ、「Zn2Al2Mg」皮膜のf値を約71%、「Zn1Al1Mg」皮膜のf値を約76%、「Zn0.2Al1Mg」皮膜のf値を約64%と算出している。(当審注:「Zn2Al2Mg」皮膜のf値の算出において、MgZn2のピーク(2のピーク)に赤▼を付している点は、他の皮膜のX線回折パターンとの対比から合理性がある。(赤▼を付しているピークに付されている番号「2」は、Znを表す「3」の誤記であると考えられる。))
そして、本件特許の図3には、80~100°の範囲に「●」のピークがあるため、甲第1号証の不足分を、甲第2号証及び甲第3号証(甲第4号証)の記載事項を用いて補い、最終的に、10°~100°まで測定したときのf値を、「Zn2Al2Mg」皮膜で69.86%~70.94%、「Zn1Al1Mg」皮膜で74.66%~75.70%、「Zn0.2Al1Mg」皮膜で61.89%~63.64%となると結論づけている。
(当審注:「赤▼」は赤で塗りつぶした▼、「黒▼」は黒で塗りつぶした▼を意味する。)
(イ)しかしながら、申立人は、2θ 10°~80°間におけるf値の計算方法について、「XRDグラフを引き延ばした際のピークの面積により求め」ることしか説明しておらず、具体的な手順は説明していない。例えば、拡大した線のどの部分(内側、中央、外側)をなぞった面積を求めたのか、その面積が実際の積分強度を示しているのかについては、説明していない。
そうすると、特許異議申立書に記載された手順によって算出されたf値が実際のf値を示しているのかは不明と言わざるを得ない。そして、そのような不正確な前提に基づく、80~100°の範囲の算出結果も不正確なものといえる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)本件発明2~9について
本件請求項2~9は、本件発明1の記載を引用するものであり、本件発明2~8は本件発明1の発明特定事項を全て備えたものであるところ、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明2~8についても同様に、甲第1号証に記載された発明とはいえない。
また、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~8についても同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明4~6、8、9についても同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証~甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由1-1、2-1、2-2のまとめ
以上のとおり、申立理由1-1、2-1、2-2よっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1-2、2-3、2-4(新規性・進歩性)
(1)甲第2号証に記載された発明
ア 甲第2号証には、「溶融Zn-Al-Mg合金めっき皮膜の微細構造」に関する発明が記載されている(第663ページの表題)。
イ 上記アの発明に関し、甲第2号証には、「溶融めっきの基材はIF鋼の冷延板」であること(第663ページの「1.1 準備」)、「皮膜の相をX線回折(XRD)(Cuターゲット、Niフィルタ)で調査した」(第663ページの「1.2 皮膜の組織分析))結果、「Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si皮膜」「の相はZn、Al及びMgZn2相のみであ」ること(第664ページの「2.1 相組成」、図1)も記載されている。
ウ そうすると、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき皮膜で被覆されたIF鋼の冷延板であって、皮膜の相は、Zn、Al及びMgZn2相のみであり、X線回折パターンが以下の図で表される冷延板。
[図:0001399350000020.jpg]
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア)対比
a 甲2発明における、「IF鋼の冷延板」は、溶融めっきの基材であるから、本件発明1における、「素地鋼板」に相当する。
b 甲2発明における、「Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき皮膜」は、本件発明1における、「亜鉛合金めっき層」に相当する。
c 本件発明1において、「Zn-Al-Mg系金属間化合物」には、「MgZn2の単相組織」が含まれる(本件特許の請求項3)から、甲2発明における、「Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si皮膜」「の相はZn、Al及びMgZn2相のみであ」ることは、本件発明1における、「亜鉛合金めっき層は、微細組織として、Zn単相組織と、Zn-Al-Mg系金属間化合物と、を含み、」に相当する。
d そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点2-1において一致するとともに、以下の相違点2-1で相違する。
<一致点2-1>
「素地鋼板と、亜鉛合金めっき層と、を含む亜鉛合金めっき鋼板であって、
前記亜鉛合金めっき層は、微細組織として、Zn単相組織と、Zn-Al-Mg系金属間化合物と、を含む、
亜鉛合金めっき鋼板。」である点。
<相違点2-1>
本件発明1は、亜鉛合金めっき層に含まれるZn単相組織について、「Zn単相組織は、下記関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が50%以上である
[関係式1]
f(%)=(Ibasal/Itotal)×100
(ここで、Itotalとは、Cu-Kαソースを用いてX線回折パターンを2θ 10°~100°まで測定したとき、すべてのZn単相の回折ピークを積分した値を意味し、Ibasalとは、基底面に関するZn単相の回折ピークを積分した値を意味する。)」のに対し、甲2発明の「皮膜」に含まれる「Zn」の「相」が、上記「関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が50%以上である」のか不明である点。
(イ)判断
a 甲2発明は、皮膜の相がX線回折パターンで特定されているので、この図から「(0001)優先配向度(f)」が求められるかを検討する。
b 甲第2号証において、図1のX線回折パターンは、横軸約55mm、縦軸約42mmの中に示されており、バックグラウンドの補正は行われていない。
そして、図1において、バックグラウンドの補正が行われておらず、また、縮小図を拡大したときに、拡大したグラフが、測定データを正確に反映したグラフとなるかは不明であるから、図1から、正確な積分強度が求められるとはいえない。
c そうすると、図1から、「Ibasal」と「Itotal」のいずれの値も正確に求めることはできないから、甲2発明の「皮膜」に含まれる「Zn」の「相」が、上記「関係式1で表される(0001)優先配向度(f)が50%以上である」かは不明である。
d よって、相違点2-1は実質的な相違点である。
e そして、甲第2号証には、「(0001)優先配向度(f)」を調整することが何ら記載されていないから、甲2発明において、「(0001)優先配向度(f)」を「50%以上」とすることが動機付けられるとはいえない。
f また、甲第5号証には、高耐食溶融亜鉛合金めっき鋼板において、溶融亜鉛合金めっき層のめっき組織が、Zn-Al-MgZn2の三元共晶組織を基地組織とし、Zn-MgZn2の二元共晶組織が分散されためっき組織を含み、Zn単相組織は10%以下で含まれ、MgZn2組織を残部として含むことが記載されているものの、「(0001)優先配向度(f)」を調整することは何ら記載されていないから、甲第5号証の記載から、甲2発明において、「(0001)優先配向度(f)」を「50%以上」とすることが動機付けられるとはいえない。
g したがって、甲2発明において、上記相違点2-1に係る特定事項を備えることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
イ 小括
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明とはいえないし、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ウ 申立人の主張について
上記1(2)オと同様に理由により、申立人の主張は採用できない。
(3)本件発明2~6について
本件請求項2~4、6は、本件発明1の記載を引用するものであり、本件発明2~4、6は本件発明1の発明特定事項を全て備えたものであるところ、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明とはいえない以上、本件発明2~4、6についても同様に、甲第1号証に記載された発明とはいえない。
また、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~6についても同様に、甲第2号証に記載された発明、あるいは、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由1-2、2-3、2-4のまとめ
以上のとおり、申立理由1-2、2-3、2-4よっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3及び取消理由1(明確性要件)
上記第2及び第3で述べたとおり、本件訂正により請求項10が削除されたため、請求項10に係る特許に対する申立理由3及び取消理由1は、それらの対象となる請求項が存在しないものとなった。
第8 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書の申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件訂正後の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項10が本件訂正により削除されたことにより、申立人による請求項10に係る特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700516