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特許異議申立

2025-700485

金属基板およびこれを用いた蒸着用マスク

審判番号
2025-700485
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-026469
登録番号
7577701
請求日
2025年04月30日
審決日
2026年06月05日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
  • 【権利者代理人】小野 誠
  • 【権利者代理人】金山 賢教
  • 【権利者代理人】重森 一輝
  • 【権利者代理人】市川 祐輔
  • 【権利者代理人】岩瀬 吉和
  • 【異議申立人】藤江 桂子
審判長/審判官
  • 審判長 富永 泰規
  • 審判官 酒井 英夫
  • 審判官 粟野 正明
分類
P1651.113-YAA(C23C) / P1651.121-YAA(C23C) / P1651.537-YAA(C23C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7577701号発明「金属基板およびこれを用いた蒸着用マスク」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7577701号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12、13について訂正することを認める。 特許第7577701号の請求項1~7、10~13に係る特許を維持する。 特許第7577701号の請求項8、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7577701号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、2015年(平成27年) 8月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2015年 4月24日、2015年 4月30日、いずれもKR(大韓民国))を国際出願日とする国際出願(特願2017-555536号。以下「原出願」という。)の一部を令和 4年 2月24日に新たな特許出願(特願2022-26469号。以下「本願」という。)としたものであって、令和 6年10月25日にその特許権の設定登録がされ、同年11月 5日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和 7年 4月30日に、その請求項1~13(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である藤江 桂子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 本件特許異議の申立てにおけるその後の経緯は以下のとおりである。 令和 7年 9月12日付け 取消理由通知 同年12月16日 特許権者による訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)及び意見書の提出 令和 8年 4月 6日 申立人による意見書(以下、単に「意見書」という。)の提出 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨、及び訂正の内容 本件訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める、というものであり、本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当合議体が下線を付した。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に、 「 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の開口部の長軸方向の一地点から前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の開口部の短軸方向の一地点から前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さい、蒸着用マスク。」 と記載されているのを、 「 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である、蒸着用マスク。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~7、10、11も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、 「 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の開口部の長軸方向の一地点から前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第2面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の開口部の短軸方向の一地点から前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さい、蒸着用マスク。」 と記載されているのを、 「 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である、蒸着用マスク。」 に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~7、10、11も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に、 「 隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向または垂直方向の大きさの偏差は、2%~8%である、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。」 と記載されているのを、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、 「 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、2%~8%である、蒸着用マスク。」 に訂正する。 (6)訂正事項6 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項13に、 「 隣接する単位ホールの第2面穴の水平方向または垂直方向の大きさの偏差は、2%~8%である、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。」 と記載されているのを、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、 「 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第2面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、2%~8%である、蒸着用マスク。」 に訂正する。 (7)一群の請求項について 本件訂正前の請求項3~13は、訂正前の請求項1を直接引用するものであって、訂正事項1に係る請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1、3~13は、一群の請求項である。 また、本件訂正前の請求項3~13は、訂正前の請求項2を直接引用するものであって、訂正事項2に係る請求項2の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項2~13は、一群の請求項である。 そうすると、共通する訂正前の請求項3~13を有するこれらの一群の請求項は組み合わされて、本件訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、一群の請求項となる。 そして、本件訂正請求は、当該一群の請求項ごとに訂正を請求するものである。 なお、特許権者は、本件訂正後の請求項12、13については、当該請求項について訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 したがって、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~11〕、12、13をそれぞれ訂正単位とする訂正を請求するものである。 2 訂正の適否についての当合議体の判断 (1)訂正の目的、特許請求の範囲の拡張、変更の存否、及び新規事項の有無について ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的 訂正事項1に係る訂正は、請求項1において、「第1面穴」及び「第2面穴」が、それぞれ「楕円形状の第1開口部」及び「楕円形状の第2開口部」であることを特定するとともに、「前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含」むこと、「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致」すること、及び「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である」ことを特定することにより減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1に係る訂正は、請求項1において、「前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであ」ることを明らかにするとともに、「第1傾斜角」及び「第2傾斜角」が、それぞれ「前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす」角及び「前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす」角であることを明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の拡張、変更の存否 訂正事項1に係る訂正は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」、及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (ウ)新規事項の有無 本願の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の特に【0020】、【0024】、【0038】、【0066】~【0080】、及び図2~図4、図9、図10の記載を参照すれば、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 イ 訂正事項2について (ア)訂正の目的 訂正事項2に係る訂正は、請求項2において、「第1面穴」及び「第2面穴」が、それぞれ「楕円形状の第1開口部」及び「楕円形状の第2開口部」であることを特定するとともに、「前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含」むこと、「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致」すること、及び「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である」ことを特定することにより減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2に係る訂正は、請求項2において、「前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであ」ることを明らかにするとともに、「第1傾斜角」及び「第2傾斜角」が、それぞれ「前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第2面穴の長軸方向がなす」角及び「前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす」角であることを明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の拡張、変更の存否 訂正事項2に係る訂正は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」、及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (ウ)新規事項の有無 本件明細書等の特に【0020】、【0024】、【0038】、【0066】~【0080】、及び図2~図4、図9、図10の記載を参照すれば、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 訂正事項3、4について 訂正事項3、4に係る訂正は、本件訂正前の請求項8、9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、本件明細書等に記載した事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。 エ 訂正事項5について (ア)訂正の目的 訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項1又は2を引用する記載であったものを、請求項1又は2を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項5に係る訂正は、請求項12において、「第1面穴」及び「第2面穴」が、それぞれ「楕円形状の第1開口部」及び「楕円形状の第2開口部」であることを特定するとともに、「前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含」むこと、及び「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致」することを特定することにより減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 さらに、訂正事項5に係る訂正は、請求項12において、「前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであ」ることを明らかにするとともに、「第1傾斜角」及び「第2傾斜角」が、それぞれ「前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす」角及び「前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす」角であることを明らかにするものであり、加えて、「隣接する単位ホールの第1面穴の」「大きさの偏差」が「水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向」のものであることを明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の拡張、変更の存否 訂正事項5に係る訂正は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」、及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (ウ)新規事項の有無 本件明細書等の特に【0020】、【0024】、【0038】、【0066】~【0080】、及び図2~図4、図9、図10の記載を参照すれば、訂正事項5に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 オ 訂正事項6について (ア)訂正の目的 訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項13が訂正前の請求項1又は2を引用する記載であったものを、請求項1又は2を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項6に係る訂正は、請求項13において、「第1面穴」及び「第2面穴」が、それぞれ「楕円形状の第1開口部」及び「楕円形状の第2開口部」であることを特定するとともに、「前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含」むこと、「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致」することを特定することにより減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 さらに、訂正事項6に係る訂正は、請求項13において、「前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであ」ることを明らかにするとともに、「第1傾斜角」及び「第2傾斜角」が、それぞれ「前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第2面穴の長軸方向がなす」角及び「前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす」角であることを明らかにするものであり、加えて、「隣接する単位ホールの第2面穴の」「大きさの偏差」が「水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向」のものであることを明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の拡張、変更の存否 訂正事項6に係る訂正は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」、及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (ウ)新規事項の有無 本件明細書等の特に【0020】、【0024】、【0038】、【0066】~【0080】、及び図2~図4、図9、図10の記載を参照すれば、訂正事項6に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項6に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (2)独立特許要件について 本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 本件訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12、13について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2の3のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~13に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~13に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明13」といい、総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。 「【請求項1】 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である、蒸着用マスク。 【請求項2】 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である、蒸着用マスク。 【請求項3】 前記第1傾斜角は、20度~80度である、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。 【請求項4】 前記第2面穴の深さと前記金属板の厚さの比率は、1:(3~30)を満足する、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。 【請求項5】 前記第2面穴の深さと前記金属板の厚さの比率は、1:(3.5~10.5)を満足する、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。 【請求項6】 前記第2面穴の深さと前記金属板の厚さの比率は、1:(4.5~10.5)を満足する、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。 【請求項7】 前記第2面穴の深さは、0.1μm~7μmである、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。 【請求項8】(削除) 【請求項9】(削除) 【請求項10】 前記第1面および前記第2面のうち少なくとも1つの面の表面粗さ(Ra)は、2um以下である、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。 【請求項11】 前記非有効領域の最大厚さ(h2)は、前記有効領域の金属板の最大厚さ(h1)との関係において0.2×h<h<1.0×hを満足する、請求項1または2に記載の蒸着用マスク。 【請求項12】 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、2%~8%である、蒸着用マスク。 【請求項13】 第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、 前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、 前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、 前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、 前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、 前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さく、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さく、 前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し、 隣接する単位ホールの第2面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、2%~8%である、蒸着用マスク。」 第4 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記3の甲第1号証~甲第10号証を提出し、以下の理由により、本件訂正前の請求項1~13に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。 1 申立理由1(進歩性) (1)申立理由1-1(甲第1号証を主たる引用文献とするもの、取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1~13に記載された発明は、甲第1号証及び甲第2~6号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由1-2(甲第7号証を主たる引用文献とするもの、取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1~13に記載された発明は、甲第7号証及び甲第1~6、8、9号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(明確性、取消理由として採用) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8には、「前記第2面穴の幅と前記境界部の幅の差(C-A)は、0.2μm~14μmである」と記載されているが、本件特許の図3、4、6、7等からみて「第2面穴」の開口部及び「境界部」の形状は真円ではなく矩形状であり、請求項8におけるこれらの「幅」とはどの部分の長さを指すのかが不明である。 また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12、13には、第一面穴又は第二面穴の「水平方向または垂直方向」の大きさ(の偏差)が規定されているが、この「水平方向」、「垂直方向」とはどの方向を指すのか、不明である。 したがって、本件訂正前の請求項8、12、13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 (1)特許異議申立書とともに提出されたもの 甲第1号証:特許第5641462号公報 甲第2号証:米国特許出願公開第2013/0337588号明細書 甲第3号証:韓国公開特許第10-2009-0090545号公報 甲第4号証:特開2010-174305号公報 甲第5号証:特開平10-265940号公報 甲第6号証:特開2000-17422号公報 甲第7号証:特開2009-74160号公報 甲第8号証:特開2014-133934号公報 甲第9号証:特開2005-314787号公報 (2)令和 8年 4月 6日提出の意見書とともに提出されたもの 甲第10号証:特開2010-135269号公報 (以下、甲第1号証~甲第10号証を、それぞれ「甲1」~「甲10」という。) 第5 令和 7年 9月12日付け取消理由通知書により通知した取消理由の概要 当合議体は、上記第3の申立理由2を採用し、また、職権により、以下の取消理由1~3を通知した。 1 取消理由1(明確性) 本件訂正前の請求項1~13に係る発明については、特許請求の範囲の記載が、下記(1)~(4)の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (1)本件明細書の記載を考慮しても、本件訂正前の請求項1、2、8の「第1面穴の幅」、「第2面穴の幅」、及び「境界部の幅」の定義は判然とせず、当該請求項1、2、8及びそれらの記載を直接又は間接的に引用する請求項3~7、9~13の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (2)本件明細書の記載を考慮しても、本件訂正前の請求項1、2の「長軸方向」、「短軸方向」、「開口部の長軸方向の一地点」、「開口部の短軸方向の一地点」、「境界部の一地点」、「第1傾斜角」、及び「第2傾斜角」は不明瞭であり、当該請求項1、2及びそれらの記載を直接又は間接的に引用する請求項3~13の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (3)本件明細書の記載を考慮しても、本件訂正前の請求項9のように「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心は、ずれるように配置する」場合において、「第1傾斜角」、「第2傾斜角」をどのように定義するのかは不明瞭であり、当該請求項9の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (4)本件明細書の記載を考慮しても、本件訂正前の請求項12、13の「水平方向」及び「垂直方向」は不明瞭であり、当該請求項12、13の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 2 取消理由2(新規性)、及び取消理由3(進歩性)(甲1を主たる引用文献とするもの) 本件訂正前の請求項1~8、11に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、又は甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件訂正前の請求項10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲5、甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第6 当合議体の判断 当合議体は、以下に述べるとおり、上記第3の各申立理由、及び上記第4の各取消理由のいずれの理由によっても、本件特許の請求項1~7、10~13に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由1(明確性)及び申立理由2(明確性)について (1)「第1面穴の幅」、「第2面穴の幅」、及び「境界部の幅」について ア 本件訂正により、独立請求項である請求項1、2、12、13において、「第1面穴」及び「第2面穴」が「楕円形状」の開口部であることが特定されるとともに、「第1面穴の幅」及び「第2面穴の幅」が、それぞれ「第1面穴」及び「第2面穴」の「長軸方向における最大長さ」であることが特定されたから、「第1面穴の幅」及び「第2面穴の幅」の意味は、明確である。 なお、申立人は、意見書の第8頁において、請求項1の「前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、」という発明特定事項は、立体形状の「第1面穴」を、二次元の「楕円形状の第1開口部」により特定するものであって、その意味するところが不明確である旨主張しているが、請求項1の上記発明特定事項は、「第1面の上に形成される第1面穴」を「第1面」に投影した「第1開口部」の形状が「楕円形状」であることを特定するものであることは、明らかであるから、このような主張は採用しない。「第2面穴」についても同様である。 イ 本件訂正により、訂正前の請求項8は削除されたから、「境界部の幅」に係る取消理由及び申立理由はなくなった。 (2)「長軸方向」、「短軸方向」、「開口部の長軸方向の一地点」、「開口部の短軸方向の一地点」、「境界部の一地点」、「第1傾斜角」、及び「第2傾斜角」について ア 本件訂正により、独立請求項である請求項1、2、12、13において、「第1面穴」及び「第2面穴」が「楕円形状」の開口部であることが特定されたから、その「長軸方向」及び「短軸方向」の意味は、明確である。 イ また、本件訂正により、独立請求項である請求項1、2、12、13において、「前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含」むこと、「第1傾斜角」が「前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす」角又は「前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第2面穴の長軸方向がなす」角であること、及び「第2傾斜角」が「前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす」角又は「前記金属板の表面に露出する前記第2面穴の前記第2開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす」角であることが特定されたから、「開口部の長軸方向の一地点」、「開口部の短軸方向の一地点」、「境界部の一地点」、「第1傾斜角」、及び「第2傾斜角」の意味は、明確である。 なお、申立人は、意見書の第8~9頁において、「第1開口部」の左側頂点、右側頂点、上側頂点及び下側頂点は一義的に定まらず、不明確であり、また、単位ホールの形状からみて「第1面側」から「第2開口部」を見ることができないから、「第1面側から見た場合にお」ける「第2開口部」という発明特定事項が意味するところが不明確である旨主張しているが、「左側」、「右側」、「上側」、及び「下側」は、区別のために便宜的に設定されたものにすぎないし、「第1面側から見た場合にお」ける「第2開口部」とは、蒸着マスクを第1面側から透視したと仮定した場合に見える「第2開口部」のことを意味していることは、明らかであるから、いずれにしても、このような主張は採用しない。「第2開口部」の左側頂点、右側頂点、上側頂点及び下側頂点についても同様である。 (3)「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心は、ずれるように配置する」場合における「第1傾斜角」、「第2傾斜角」について 本件訂正により、訂正前の請求項9は削除され、「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心は、ずれるように配置する」場合において「第1傾斜角」及び「第2傾斜角」を特定する記載はなくなったから、この点に係る取消理由はなくなった。 (4)「水平方向」及び「垂直方向」について 本件訂正により、独立請求項である請求項1、2、12、13において、「第1面穴」及び「第2面穴」が「楕円形状」の開口部であることが特定されるとともに、「水平方向」が「第1面穴」又は「第2面穴」の「長軸方向」であり、「垂直方向」が「第1面穴」又は「第2面穴」の「短軸方向」であることが特定されたから、「水平方向」及び「垂直方向」の意味は、明確である。 なお、申立人は、意見書の第10頁において、第1面穴の長軸方向の大きさとは、第1面上における長軸方向の大きさだけであるのか、あるいは、すべての深さの位置における長軸方向の大きさであるのか、不明である旨主張しているが、上記(1)アにおいて検討したのと同様に、「第1面穴の長軸方向の大きさ」とは、「第1面の上に形成される第1面穴」を「第1面」に投影した「楕円形状」である「第1開口部」の「長軸方向の大きさ」を意味することは、明らかであるから、このような主張は採用しない。短軸方向の大きさについても同様である。 (5)取消理由1及び申立理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1~7、10~13について、特許請求の範囲の請求項1~7、10~13の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえるから、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。 よって、取消理由1及び申立理由2によっては、本件特許の請求項1~7、10~13に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)及び申立理由1-1(進歩性)について (1)甲1に記載された事項 本願の優先権主張の日前に公知となった甲1には、「金属板、金属板の製造方法、および金属板を用いてマスクを製造する方法」に関して、以下の記載がある(なお、下線は当合議体が付したものであり、「…」は記載の省略を表す。以下同様。)。 ア「【請求項9】 複数の貫通孔が形成された蒸着マスクを製造する方法であって、 長手方向における板厚の平均値が所定値±3%の範囲内である長尺状の金属板を準備する工程と、 前記金属板上にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、 前記金属板のうち前記レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングし、前記金属板に、前記貫通孔を画成するようになる凹部を形成するエッチング工程と、を備え、 前記金属板における板厚のばらつきに関して、以下の条件(1),(2)が満たされている、 (1)長手方向における前記金属板の板厚の平均値をAとし、長手方向における前記金属板の板厚の標準偏差に3を掛けた値をBとするとき、(B/A)×100(%)が5%以下であること;および、 (2)幅方向における前記金属板の板厚の標準偏差に3を掛けた値をCとし、幅方向における前記金属板の板厚の標準偏差を算出するために幅方向に沿って前記金属板の板厚を測定する際に得られる、幅方向の中央部における前記金属板の板厚の値をXとするとき、(C/X)×100(%)が3%以下であること; 蒸着マスクの製造方法。 【請求項10】 前記金属板の板厚は、80μm以下である、請求項9に記載の蒸着マスクの製造方法。 … 【請求項13】 前記蒸着マスクは、前記蒸着マスクを用いて基板上に蒸着材料を蒸着させる際に、蒸着材料に対面する第1面と、前記基板に対面する第2面と、を有し、 前記レジストパターン形成工程によって形成される前記レジストパターンは、前記蒸着マスクの前記第1面に対応する前記金属板の第1面上に形成された第1レジストパターンと、前記蒸着マスクの前記第2面に対応する前記金属板の第2面上に形成された第2レジストパターンと、を含み、 前記エッチング工程によって形成される凹部は、前記金属板の前記第1面のうち前記第1レジストパターンによって覆われていない領域がエッチングされることによって形成される複数の第1凹部と、前記金属板の前記第2面のうち前記第2レジストパターンによって覆われていない領域がエッチングされることによって形成される複数の第2凹部と、を含み、 前記エッチング工程は、前記第1凹部と、当該第1凹部に対応する前記第2凹部とが接続されるよう実施され、 前記蒸着マスクの前記第2面から、前記第1凹部と前記第2凹部とが接続される接続部までの、前記金属板の法線方向に沿った方向における距離が6μm以下である、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。 【請求項14】 前記蒸着マスクは、複数の貫通孔が形成された有効領域と、前記有効領域の周囲に位置する周囲領域と、に区画され、 前記エッチング工程は、前記金属板の前記第1面が前記有効領域の全域にわたってエッチングされるように実施される、請求項13に記載の蒸着マスクの製造方法。」 イ「【0001】 本発明は、複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板に関する。また本発明は、金属板の製造方法に関する。また本発明は、複数の貫通孔が形成された蒸着マスクを、金属板を用いて製造する方法に関する。 … 【0005】 蒸着マスクを用いて蒸着材料を基板上に成膜する場合、基板だけでなく蒸着マスクにも蒸着材料が付着する。例えば、蒸着材料の中には、蒸着マスクの法線方向に対して大きく傾斜した方向に沿って基板に向かうものも存在するが、そのような蒸着材料は、基板に到達するよりも前に蒸着マスクの貫通孔の壁面に到達して付着する。…すなわち、蒸着マスクの貫通孔の壁面の近傍における蒸着が不安定になってしまうことが考えられる。… … 【0007】 上述のように蒸着マスクの貫通孔は、エッチングによって形成される。従って、エッチングの時間やエッチング液の種類などのエッチング条件を調整することによっても、蒸着マスクの貫通孔の壁面の高さを精密に制御可能である。… … 【0009】 本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、高い寸法精度で形成された貫通孔を備える蒸着マスクを製造するために用いられ得る金属板を提供することを目的とする。また本発明は、金属板の製造方法およびマスクの製造方法を提供することを目的とする。」 ウ「【0038】 (蒸着マスク) 次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20は、金属板21からなり、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。蒸着マスク20の金属板21は、規則的な配列で貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含んでいる。周囲領域23は、有効領域22を支持するための領域であり、基板へ蒸着されることを意図された蒸着材料が通過する領域ではない。…図1に示された例において、各有効領域22は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。 … 【0040】 図3に示すように、図示された例において、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。この金属板21に形成された貫通孔25の一例について、図3~図6を主に参照して更に詳述する。 【0041】 図4~図6に示すように、複数の貫通孔25は、蒸着マスク20の法線方向に沿った一方の側となる第1面20aと、蒸着マスク20の法線方向に沿った他方の側となる第2面20bと、の間を延びて、蒸着マスク20を貫通している。図示された例では、後に詳述するように、蒸着マスクの法線方向における一方の側となる金属板21の第1面21aの側から金属板21に第1凹部30がエッチングによって形成され、金属板21の法線方向における他方の側となる第2面21bの側から金属板21に第2凹部35が形成され、この第1凹部30および第2凹部35によって貫通孔25が形成されている。 … 【0043】 なお、図4~図6に示すように、第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されている。…接続部41は、蒸着マスク20の平面視において最も貫通孔25の面積が小さくなる貫通部42を画成する。 … 【0045】 一方、図4~図6に示すように、蒸着マスクの法線方向に沿った一方の側、すなわち、蒸着マスク20の第1面20aの側において、隣り合う二つの第1凹部30が接続されている。…すなわち、金属板21の第1面21aは、有効領域22の全域にわたってエッチングされている。このような第1凹部30によって形成される蒸着マスク20の第1面20aによれば、図2に示すように蒸着マスク20の第1面20aが蒸着材料98に対面するようにしてこの蒸着マスク20を用いた場合に、蒸着材料98の利用効率を効果的に改善することができる。 … 【0047】 …図4に矢印で示すように、蒸着材料98は、…ガラス基板92の法線方向に対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98の多くは、貫通孔25を通ってガラス基板92に到達するよりも前に、第1凹部30の壁面31に到達して付着する。…従って、蒸着材料の利用効率(成膜効率:ガラス基板92に付着する割合)を高めて高価な蒸着材料を節約し、且つ、高価な蒸着材料を用いた成膜を所望の領域内に安定してむらなく実施するためには、斜めに移動する蒸着材料98を可能な限りガラス基板92に到達させるように蒸着マスク20を構成することが重要になる。すなわち、蒸着マスク20のシート面に直交する図4~図6の断面において、貫通孔25の最小断面積を持つ部分となる接続部41と、第1凹部30の壁面31の他の任意の位置と、を通過する直線L1が、蒸着マスク20の法線方向に対してなす最小角度θ1(図4参照)を、十分に大きくすることが有利となる。 … 【0049】 角度θ1を大きくするためのその他の方法として、第1凹部30の輪郭を最適化することも考えられる。たとえば本実施の形態によれば、隣り合う二つの第1凹部30の壁面31が合流することにより、他の凹部と合流していない点線で示された壁面(輪郭)を有する凹部と比較して、この角度θ1を大幅に大きくすることができている(図4参照)。…」 エ「【0053】 図7において、蒸着マスク20の厚みが符号tで表されている。なお厚みtは、隣り合う二つの第1凹部30が合流することによって削り取られた部分を無視した場合の蒸着マスク20の厚みである。従って厚みtは、金属板21の厚みであると言うこともできる。また図7においては、貫通孔25の形状に関連するパラメータとして、蒸着マスク20の第2面20bから接続部41までの、蒸着マスク20の法線方向に沿った方向における距離が符号r1で表されている。さらに、蒸着マスク20の第2面20b上における第2凹部35の寸法が符号r2で表されている。寸法r2は、例えば、蒸着マスク20の長手方向に沿った方向における第2凹部35の大きさである。… 【0054】 上述のように、蒸着材料のうち貫通孔の壁面に付着するものの比率を低くし、これによって蒸着の精度を向上させるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることが有効である。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の厚み(すなわち金属板21の板厚)tは、80μm以下に、例えば10~80μmの範囲内や20~80μmの範囲内に設定される。… また上述のように、本実施の形態における第2凹部35の寸法r2は従来よりも小さい。このため、蒸着マスク20の第2面20bから接続部41までの距離r1が寸法r2に比べて比較的に大きいものであると、第2凹部35の壁面36に付着してしまう蒸着材料の比率が高くなってしまうと考えられる。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の第2面20bから接続部41までの距離r1は、0~6μmの範囲内すなわち6μm以下に設定される。…」 オ「【図3】 [図:0001439193000001.jpg] 【図4】 [図:0001439193000002.jpg] 【図5】 [図:0001439193000003.jpg] 」 カ「【図7】 [図:0001439193000004.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 ア 上記(1)アの請求項14の方法により製造される蒸着マスクに着目すると、甲1には、以下の蒸着マスクが記載されていると認められる。 「複数の貫通孔が形成された蒸着マスクであって、 前記貫通孔は、長尺状の金属板の第1面側に複数の第1凹部をエッチングにより形成し、前記金属板の第2面側に複数の第2凹部をエッチングにより形成し、前記第1凹部と、当該第1凹部に対応する前記第2凹部とを接続させることにより形成され、 前記第2面から、前記第1凹部と前記第2凹部とが接続される接続部までの、前記金属板の法線方向に沿った方向における距離が6μm以下であり、 前記蒸着マスクは、複数の貫通孔が形成された有効領域と、前記有効領域の周囲に位置する周囲領域と、に区画され、 前記金属板の前記第1面の前記有効領域の全域にわたってエッチングされている、 蒸着マスク。」 イ 上記(1)ウ、オの記載に着目すると、甲1には、上記アの蒸着マスクの図3~図5における符号との対応について、以下が記載されていることが把握される。 「蒸着マスク20は、金属板21からなり、規則的な配列で貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含んでおり、 金属板21の第1面21aの側から金属板21に第1凹部30がエッチングによって形成され、金属板21の法線方向における他方の側となる第2面21bの側から金属板21に第2凹部35が形成され、この第1凹部30および第2凹部35によって貫通孔25が形成されており、 第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されており、接続部41は、蒸着マスク20の平面視において最も貫通孔25の面積が小さくなる貫通部42を画成し、 金属板21の第1面21aは、有効領域22の全域にわたってエッチングされている。」 ウ 上記イを踏まえると、上記(1)オの甲1の特に図3~図5から、以下の点が看取される。 「第1凹部30、第2凹部35の第1面21a、第2面21b上における形状、及び貫通部42の形状は、いずれも略長方形状であり、 第1凹部30の第1面21a上における形状の縦及び横の長さは、第2凹部35の第2面21b上における形状の縦及び横の長さより大きく、第2凹部35の第2面21b上における形状の縦及び横の長さは、貫通部42の形状の縦及び横の長さより大きい。」 エ さらに、上記(1)エ、カから、甲1には、上記アの蒸着マスクについて、以下の事項が記載されていることが把握される。 「蒸着マスクの厚みtは20~80μmであり、蒸着マスク20の第2面20bから接続部41までの距離r1は6μm以下(=前記第1凹部と前記第2凹部とが接続される接続部までの、前記金属板の法線方向に沿った方向における距離が6μm以下)である。」 オ 上記ア~エを総合すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「複数の貫通孔が形成された蒸着マスクであって、 前記貫通孔は、厚み20~80μmの長尺状の金属板の第1面側に複数の第1凹部をエッチングにより形成し、前記金属板の第2面側に複数の第2凹部をエッチングにより形成し、前記第1凹部と、当該第1凹部に対応する前記第2凹部とを接続させることにより形成され、 前記第1凹部の第1面上における形状、前記第2凹部の第2面上における形状、及び前記接続による周状の接続部により画成される貫通部の形状は、いずれも略長方形状であり、 前記第1凹部の第1面上における形状の縦及び横の長さは、前記第2凹部の第2面上における形状の縦及び横の長さより大きく、前記第2凹部の第2面上における形状の縦及び横の長さは、前記貫通部の形状の縦及び横の長さより大きく、 前記第2面から、前記第1凹部と前記第2凹部とが接続される接続部までの、前記金属板の法線方向に沿った方向における距離が6μm以下であり、 前記蒸着マスクは、複数の貫通孔が形成された有効領域と、前記有効領域の周囲に位置する周囲領域と、に区画され、 前記金属板の前記第1面の前記有効領域の全域にわたってエッチングされている、 蒸着マスク。」(以下「甲1発明」という。) (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「長尺上の金属板」は、第1面及び前記第1面と反対となる第2面を含むものであるから、本件発明1の「第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板」に相当する。 (イ)甲1発明の「金属板」の「第1面側」に「形成」された「第1凹部」、「第2面側」に「形成」された「第2凹部」、及び「前記第1凹部と、当該第1凹部に対応する前記第2凹部とを接続させることにより形成され」た「接続部」は、それぞれ本件発明1の「前記第1面の上に形成される第1面穴」、「前記第2面の上に形成される第2面穴」、及び「前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部」に相当する。 そして、これらの点を踏まえると、甲1発明の「第1凹部」、「第2凹部」、及び「接続部」により画成される「貫通部」は、本件発明1の「単位ホール」に相当する。 (ウ)甲1発明の「複数の貫通孔が形成された有効領域」、及び「前記有効領域の周囲に位置する周囲領域」は、それぞれ本件発明1の「有効領域」、及び「非有効領域」に相当する。 (エ)甲1発明の「有効領域」においては、金属板の第1面が全域にわたってエッチングされていることから、有効領域の最大厚さは、当然に周囲領域(非有効領域に相当)の最大厚さより小さい。 したがって、甲1発明の「前記金属板の前記第1面の前記有効領域の全域にわたってエッチングされている」点は、本件発明1の「前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さ」い点に相当する。 (オ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含み、 前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さい、蒸着用マスク。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さ」いのに対して、甲1発明は、「前記第1凹部の第1面上における形状、前記第2凹部の第2面上における形状、及び前記接続による周状の接続部により画成される貫通部の形状は、いずれも略長方形状」であって「楕円形状」ではなく、上記「第1凹部」及び「第2凹部」の幅、並びに本件発明1の「第1傾斜角」及び「第2傾斜角」に相当する角の大きさが不明である点。 <相違点2> 本件発明1は、「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し」ているのに対して、甲1発明は、「第1凹部」の中心と「第2凹部」の中心が一致しているか否かが不明である点。 <相違点3> 本件発明1は、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である」のに対して、甲1発明は、そのような大きさの偏差が不明である点。 イ 相違点についての検討 (ア)事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。 a 甲1の記載事項や、本願の優先権主張の日当時の技術常識を考慮しても、甲1発明において、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差」に対応する値が、「1%~10%である」と認められる根拠を見出せないから、上記相違点3は実質的な相違点である。 b 次に相違点3の容易想到性について検討する。 (a)甲1の【0101】~【0118】には、金属板21からなる蒸着マスク20に多数形成された貫通孔25の寸法が場所に依存してばらつくことを抑制すること、例えば、上記寸法のばらつきを「2.0μm以下」に抑制すること(【0117】)が記載されている。 (b)そうすると、甲1発明において、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差」に対応する値に上限値を設定する動機付けはあるといえる。 (c)一方で、甲1の記載事項や、本願の優先権主張の日当時の技術常識を考慮しても、甲1発明において、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差」に対応する値の下限値を設定する動機付けがあるとはいえない。 (d)そして、上記(c)の判断は、甲2~甲10の記載事項を考慮しても、変わるものではない。 (e)したがって、甲1発明において、上記相違点3に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (イ)なお、本件明細書の【0024】に「すべてのホールの大きさが同一に具現される場合には蒸着後のOLEDパネルでのモアレ(Morie)の発生率が高まるようにな」る旨の記載があることからすると、本件発明1において、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差」の下限値が設定されていることによる効果は、甲1発明の効果及び本願の優先権主張の日当時の技術常識からみて予測可能な範囲を超える顕著なものと認められる。 ウ 小括 よって、上記相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、同様に、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明2、12、13について ア 対比 本件発明2、12、13と、甲1発明とをそれぞれ対比すると、上記(3)アにおいて検討したのと同様であるから、本件発明2、12、13と甲1発明とは、少なくとも次の点で相違する。 <相違点3-2> 本件発明2は、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である」のに対して、甲1発明は、そのような大きさの偏差が不明である点。 <相違点3-12> 本件発明12は、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、2%~8%である」のに対して、甲1発明は、そのような大きさの偏差が不明である点。 <相違点3-13> 本件発明13は、「隣接する単位ホールの第2面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、2%~8%である」のに対して、甲1発明は、そのような大きさの偏差が不明である点。 イ 相違点についての検討 (ア)上記相違点3-2、相違点3-12、及び相違点3-13についてまとめて検討するに、いずれについても、上記(3)イにおいて検討したのと同様である。 (イ)したがって、上記相違点3-2、相違点3-12、及び相違点3-13は、いずれも実質的な相違点である。また、甲1発明において、上記相違点3-2、相違点3-12、又は相違点3-13に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)なお、本件明細書の【0024】に「すべてのホールの大きさが同一に具現される場合には蒸着後のOLEDパネルでのモアレ(Morie)の発生率が高まるようにな」る旨の記載があることからすると、本件発明2、12、13において、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差」の下限値が設定されていることによる効果は、甲1発明の効果及び本願の優先権主張の日当時の技術常識からみて予測可能な範囲を超える顕著なものと認められる。 ウ 小括 よって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明2、12、13は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、同様に、本件発明2、12、13は、甲1に記載された発明に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件発明3~7、10、11について 本件発明3~7、10、11は、本件発明1又は2の発明特定事項をすべて備えたものであるから、上記(3)ウ及び上記(4)ウのとおり、本件発明1、2が甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)取消理由2、取消理由3及び申立理由1-1についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1~7、10~13は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、取消理由2、取消理由3及び申立理由1-1によっては、本件特許の請求項1~7、10~13に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1-2(進歩性)について (1)甲7に記載された発明 本願の優先権主張の日前に公知となった甲7(発明の名称:蒸着マスクおよび蒸着マスクの製造方法)の【請求項1】~【請求項10】、【0034】、【0036】~【0049】、【0079】~【0080】及び図1~図7、図15、図16の記載を総合勘案し、特に、請求項1、4~6、10の記載、及び図15、16に示された「変形例3」の記載に着目すると、甲7には、次の発明が記載されていると認められる。 「第1面および前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記第1面と前記第2面との間を延びる貫通孔が形成され、フレームが取り付けられる周縁部を備えた金属製シートを備え、 前記金属製シートの前記第1面側に、線状に延びる溝が形成され、 前記金属製シートの前記第2面側に、穴が形成されており、 前記溝と前記穴とは通じており、前記溝と前記穴とによって前記金属製シートを貫通する貫通孔が形成されている、蒸着マスクであって、 前記溝の壁面と前記穴の壁面との接続部によって囲まれる領域は、前記金属製シートのシート面に直交する方向からの視野において、長方形状を有し、前記接続部によって囲まれる領域の長手方向は、前記線状の溝の長手方向に沿って延びており、 直線状に延びる前記溝が、互いに平行に複数設けられており、 前記穴が、前記溝の長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられており、 前記溝は、前記第1面側に形成された複数の穴によって形成されており、前記複数の穴のうちの前記溝の前記長手方向に沿って隣り合う二つの穴は前記第1面において接続されており、前記第2面側に形成された穴は、前記第1面側に形成され前記溝を構成する穴と長手方向に沿った中心位置が長手方向において一致するように対面する位置に配置されている、 蒸着マスク。」(以下「甲7発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲7発明とを対比する。 (ア)甲7発明の「第1面および前記第1面とは反対側の第2面を有」する「金属製シート」は、本件発明1の「第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板」に相当する。 (イ)甲7発明の「金属製シート」の「第1面側」に、「前記第1面側に形成された複数の穴によって形成されており、前記複数の穴のうちの前記溝の前記長手方向に沿って隣り合う二つの穴は前記第1面において接続されて」いる「溝」は、本件発明1の「前記第1面の上に形成される第1面穴」に相当する。 (ウ)甲7発明の「金属製シート」の「第2面側に形成された穴」であって、「前記溝の長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられており」、「前記第1面側に形成され前記溝を構成する穴と長手方向に沿った中心位置が長手方向において一致するように対面する位置に配置されている」「穴」は、本件発明1の「前記第2面の上に形成される第2面穴」に相当する。 (エ)上記(イ)、(ウ)を踏まえると、甲7発明において、「前記溝と前記穴と」が「通じて」いる部分は、本件発明1の「前記第1面穴と前記第2面穴を連通する境界部」に相当する。 (オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、甲7発明において、「前記溝と前記穴とによって前記金属製シートを貫通する」ように形成される「貫通孔」は、本件発明1の「複数の単位ホール」に相当する。 (カ)甲7発明の「金属製シート」における「貫通孔」が形成される領域、及び「フレームが取り付けられる周縁部」は、それぞれ本件発明1の「前記単位ホールが配置される有効領域」、及び「前記有効領域の外側の非有効領域」に相当する。 (キ)そうすると、本件発明1と甲7発明とは、 「第1面および前記第1面と反対となる第2面を含む金属板を含み、 前記金属板は、前記第1面の上に形成される第1面穴、前記第2面の上に形成される第2面穴および前記第1面穴および前記第2面穴を連通する境界部を含む複数の単位ホールを含み、 前記金属板は、前記単位ホールが配置される有効領域および前記有効領域の外側の非有効領域を含む、蒸着用マスク。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点4> 本件発明1は、「前記第1面穴は、楕円形状の第1開口部であり、前記第2面穴は、楕円形状の第2開口部であり、前記楕円形状の第1開口部および前記楕円形状の第2開口部は、前記金属板の前記第1面側から見た場合において、それぞれ長軸と交わる左側頂点と右側頂点を含み、それぞれ短軸と交わる上側頂点と下側頂点を含み、前記第1面穴の幅、及び、前記第2面穴の幅は、それぞれ前記長軸方向における最大長さであり、前記第1面穴の幅は、前記第2面穴の幅より大きく、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の長軸方向の一地点である前記左側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記第1面穴の長軸方向がなす第1傾斜角の大きさは、前記金属板の表面に露出する前記第1面穴の前記第1開口部の短軸方向の一地点である前記上側頂点から最短距離となる前記境界部の一地点を連結する仮想の線と前記短軸方向がなす第2傾斜角の大きさより小さ」いのに対して、甲7発明は、「直線状に延びる」「溝」が設けられ、「前記溝の壁面と前記穴の壁面との接続部によって囲まれる領域は、前記金属製シートのシート面に直交する方向からの視野において、長方形状を有」するものであって、上記「溝」及び「穴」の幅、並びに本件発明1の「第1傾斜角」及び「第2傾斜角」に相当する角の大きさが不明である点。 <相違点5> 本件発明1は、「前記第1面穴の中心と前記第2面穴の中心とが一致し」ているのに対して、甲7発明は、「前記第2面側に形成された穴は、前記第1面側に形成され前記溝を構成する穴と長手方向に沿った中心位置が長手方向において一致するように対面する位置に配置されている」ものではあるものの、上記「溝」と「穴」の中心が一致しているか否かが不明である点。 <相違点6> 本件発明1は、「前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さ」いのに対して、甲7発明は、「金属製シート」における「貫通孔」が形成される領域の最大厚さが「フレームが取り付けられる周縁部」の最大厚さより小さいか否かが不明である点。 <相違点7> 本件発明1は、「隣接する単位ホールの第1面穴の水平方向である長軸方向または垂直方向である短軸方向の大きさの偏差は、1%~10%である」のに対して、甲7発明は、そのような大きさの偏差が不明である点。 イ 相違点についての検討 (ア)事案に鑑み、まず、上記相違点6について検討する。 a 甲7の記載事項や、本願の優先権主張の日当時の技術常識を考慮しても、甲7発明において、「金属製シート」における「貫通孔」が形成される領域の最大厚さが「フレームが取り付けられる周縁部」の最大厚さより小さいか否かは、不明であると言わざるを得ないから、上記相違点6は実質的な相違点である。 b 次に相違点6の容易想到性について検討する。 (a)甲7の【0048】には、「蒸着マスク20の強度を考慮すると、隣り合う溝26の壁面26a同士は接続されていないことが好ましく、平坦な第1面34a(20a)において隣り合う溝26の間に5μm以上の平坦な面が形成されていることがさらに好ましい。」との記載がある。 (b)そうすると、甲7発明において、「金属製シート」における「貫通孔」が形成される領域に含まれる、隣り合う溝の間の領域を薄くして、「フレームが取り付けられる周縁部」の最大厚さより小さくすることには、阻害要因が存在すると言わざるを得ず、そのように厚さを設定する動機付けがあるとはいえない。 (c)そして、上記(b)の判断は、甲1~甲6、甲8~甲10の記載事項を考慮しても、変わるものではない。 (d)したがって、甲7発明において、上記相違点6に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 よって、上記相違点4、5、7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7に記載された発明であるとはいえない。 また、同様に、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~甲6、甲8、甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2、12、13について ア 対比 本件発明2、12、13と、甲7発明とをそれぞれ対比すると、上記(2)アにおいて検討したのと同様であるから、本件発明2、12、13と甲7発明とは、少なくとも次の点で相違する。 <相違点8> 本件発明2、12、13は、「前記有効領域の最大厚さが前記非有効領域の最大厚さより小さ」いのに対して、甲7発明は、「金属製シート」における「貫通孔」が形成される領域の最大厚さが「フレームが取り付けられる周縁部」の最大厚さより小さいか否かが不明である点。 イ 相違点についての検討 (ア)上記相違点8について検討するに、上記(2)イにおいて検討したのと同様である。 (イ)したがって、上記相違点8は、実質的な相違点である。また、甲7発明において、上記相違点8に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 よって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明2、12、13は、甲7に記載された発明であるとはいえない。 また、同様に、本件発明2、12、13は、甲7に記載された発明及び甲1~甲6、甲8、甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明3~7、10、11について 本件発明3~7、10、11は、本件発明1又は2の発明特定事項をすべて備えたものであるから、上記(2)ウ及び上記(3)ウのとおり、本件発明1、2が甲7に記載された発明であるとはいえず、また、甲7に記載された発明及び甲1~甲6、甲8、甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、甲7に記載された発明であるとはいえず、また、甲7に記載された発明及び甲1~甲6、甲8、甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由1-2についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1~7、10~13は、甲7に記載された発明及び甲1~甲6、甲8、甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立理由1-2によっては、本件特許の請求項1~7、10~13に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、令和 7年 9月12日付け取消理由通知書に記載した取消理由、及び申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~7、10~13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~7、10~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正によって特許異議の申立てがされた請求項8、9は削除され、特許異議の申立ての対象となる請求項8、9は存在しないものとなったから、請求項8、9に係る特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700485

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