特許異議申立
2025-700036
堆積マスク並びに堆積マスクを製造及び使用する方法
- 審判番号
- 2025-700036
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-555594
- 登録番号
- 7508476
- 請求日
- 2024年12月26日
- 審決日
- 2025年12月02日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
- 【異議申立人】鈴木 多香子
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 佐藤 陽一
- 審判官 井上 猛
- 分類
- P1651.113-YAA(C23C) / P1651.121-YAA(C23C) / P1651.537-YAA(C23C) / P1651.536-YAA(C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7508476号発明「堆積マスク並びに堆積マスクを製造及び使用する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7508476号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3、8〕、2、4、5、6、7、〔9~13〕について訂正することを認める。
特許第7508476号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7508476号(請求項の数13。以下、「本件特許」という。)は、2020年(令和2年)2月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2019年3月15日(US)米国)を国際出願日とする特許出願(特願2021-555594号)に係るものであって、令和6年6月21日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和6年7月1日である。)。
その後、令和6年12月26日に、本件特許の請求項1~13に係る特許に対して、特許異議申立人である鈴木多香子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年12月26日提出 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)
令和7年 4月25日付け 取消理由通知書
7月29日提出 意見書、訂正請求書
8月19日提出 手続補正書(訂正請求書の補正)
8月29日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
10月 2日提出 意見書(申立人)
第2 訂正の請求について
1 請求の趣旨及び請求の理由(訂正の内容)
令和7年7月29日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、」
と記載されているのを、
「前記基板の前記中央部分を除去した後で、前記第1の保護層及び前記第2の保護層の露出部分を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の露出部分を除去した後の、」
に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3、8も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記マスク層を引張応力により堆積する、請求項1に記載の方法。」
と記載されているのを、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層 、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有し、
前記マスク層は引張応力を伴って堆積される、方法。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「前記第2の保護層上にスペーサ層を堆積することと;
前記スペーサ層をスペーサ要素にパターン化することと
をさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている、請求項1に記載の方法。」
と記載されているのを、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層 、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有し、
該方法が、
前記第2の保護層上にスペーサ層を堆積することと;
前記スペーサ層をスペーサ要素にパターン化することと
をさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている、方法。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「前記マスク層上且つ前記基板開口部中に支持マトリックスを形成することをさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記基板の前記周辺部分に接触している、請求項1に記載の方法。」
と記載されているのを、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層 、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有し、
該方法が、
前記マスク層上且つ前記基板開口部中に支持マトリックスを形成することをさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記基板の前記周辺部分に接触している、方法。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することと;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定することと
を含み、前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し、
前記基板上に前記マスク層を堆積することが:
前記基板上に第1の導電性マスク層を堆積することと;
前記第1の導電性マスク層上に絶縁体マスク層を堆積することと;
前記絶縁体マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積することと
を含む、方法。」
と記載されているのを、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積することと;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積することと;
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することと;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定することと
を含み、前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し、
前記第1の保護層上に前記マスク層を堆積することが:
前記第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積することと;
前記第1の導電性マスク層上に絶縁体マスク層を堆積することと;
前記絶縁体マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積することと
を含み、
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することが:
前記基板開口部において、前記第1の保護層、前記第1の導電性マスク層及び前記絶縁体マスク層を通るトレンチをパターン化することと;
前記基板開口部にわたって前記第1の保護層の露出部分を除去することと
を含む、方法。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に
「前記マスク層を通る前記マスク開口部をパターン化することが:
前記第2の導電性マスク層を通る第1のトレンチをパターン化することと;
前記基板開口部を介して、前記第1の導電性マスク層を通る第2のトレンチをパターン化することと
を含み、少なくとも前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ、又はそれらの組み合わせは前記絶縁体マスク層を通り、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチの交点は前記マスク開口部を形成する、請求項6に記載の方法。」
と記載されているのを、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することと;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定することと
を含み、前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し、
前記基板上に前記マスク層を堆積することが:
前記基板上に第1の導電性マスク層を堆積することと;
前記第1の導電性マスク層上に絶縁体マスク層を堆積することと;
前記絶縁体マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積することと
を含み、
前記マスク層を通る前記マスク開口部をパターン化することが:
前記第2の導電性マスク層を通る第1のトレンチをパターン化することと;
前記基板開口部を介して、前記第1の導電性マスク層を通る第2のトレンチをパターン化することと
を含み、少なくとも前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ、又はそれらの組み合わせは前記絶縁体マスク層を通り、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチの交点は前記マスク開口部を形成する、方法。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
ア 明細書の段落【0019】に
「マスク層104は、引張応力で形成することができ、これは、マスク層104で形成された堆積マスクの構造的完全性を助けることができる。」
と記載されているのを、
「マスク層104は、引張応力を伴って形成することができ、これは、マスク層104で形成された堆積マスクの構造的完全性を助けることができる。」
に訂正する。
イ 明細書の段落【0034】に
「第1の導電性マスク層204、絶縁体マスク層206、及び第2の導電性マスク層208のそれぞれは、マスク層204、206、208で形成された堆積マスクの構造的完全性を助けることができる引張応力で形成することができる。」
と記載されているのを、
「第1の導電性マスク層204、絶縁体マスク層206、及び第2の導電性マスク層208のそれぞれは、マスク層204、206、208で形成された堆積マスクの構造的完全性を助けることができる引張応力を伴って形成することができる。」
に訂正する。
ウ 明細書の段落【0062】に
「上記の方法のさらなる例では、マスク層は引張応力で堆積することができる。」
と記載されているのを、
「上記の方法のさらなる例では、マスク層は引張応力を伴って堆積することができる。」
に訂正する。
(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5、8について、請求項2~5、8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5、8は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、その一群の請求項ごとに請求がされたものである。
訂正前の請求項6~7について、請求項7は、請求項6を引用するものであり、上記の訂正事項5によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項6~7は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、その一群の請求項ごとに請求がされたものである。
訂正事項7に係る訂正は、願書に添付した明細書を訂正するものであるが、いずれも一群の請求項である、訂正前の請求項1~5、8、請求項6~7、請求項9~13に関係する訂正である。そして、本件訂正は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われている。
(9)別の訂正単位とする求めについて
特許権者は、訂正後の請求項2、4、5についての訂正が認められる場合には、これらの請求項については、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
また、特許権者は、訂正後の請求項7についての訂正が認められる場合には、この請求項については、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
2 訂正の適否についての当審における判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に対して、「前記基板の前記中央部分を除去した後で、」との記載を追加するとともに、訂正前の請求項1における「一部」との記載を「露出部分」とするものである。
イ この訂正は、訂正前の請求項1における「第1の保護層」及び「第2の保護層」の「除去」される「一部」について、「露出部分」に限定するとともに、その「除去」されるタイミングについて、「前記基板の前記中央部分を除去した後」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
ウ 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「訂正前明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「図1~図5は、いくつかの実施例による堆積マスクを形成するための処理フローを示している。図1は、基板100上での層の形成を示している。」(【0017】)
「図2は、基板100を通る基板開口部を画定するための基板100の中央部分の除去を示している。」(【0023】)
「図3は、スペーサ層108のスペーサ要素へのパターン化を示している。」(【0024】)
「図4は、第2の保護層106、マスク層104、及び第1の保護層102をパターン化して、層102、104、106を通るマスク開口部を形成することを示している。」(【0025】)
「図5は、第1の保護層102及び第2の保護層106の露出部分の除去を示している。」(【0026】)
訂正前明細書等の上記記載によれば、訂正前明細書等には、第1の保護層及び第2の保護層の露出部分を除去すること、また、第1の保護層及び第2の保護層の露出部分の除去が、基板の中央部分の除去の後に行われることが記載されていると認められるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項2について、引用形式の記載から独立形式の記載に改める訂正を含むものである。
この訂正は、請求項の記載について、訂正前の引用形式の記載を独立形式の記載に改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ(ア)訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2における「前記マスク層を引張応力により堆積する」との記載を、「前記マスク層は引張応力を伴って堆積される」とする訂正を含むものである。
(イ)a この訂正は、本件特許に係る外国語特許出願に係る国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「原文」という。)の記載に基づいて、誤訳を訂正するものであるから、誤訳の訂正を目的とするものに該当する。
b また、この訂正は、訂正前においては明瞭ではなかった「前記マスク層を引張応力により堆積する」との記載(取消理由通知書の第4の1(1)を参照)が、「前記マスク層は引張応力を伴って堆積される」ことを意味するものであることを明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(ウ)a 原文の請求項3には、「3. The method of claim 1, wherein the mask layer is deposited with a tensile stress.」との記載があるから、この訂正は、原文に記載した事項の範囲内においてするものである。
b また、訂正前明細書等には、「マスク層104の引張応力は、基板100を通る基板開口部を横切って延在するマスク層104の剛性を維持することができる。」(【0028】)との記載があり、当該記載によれば、マスク層は引張応力を備えており、その引張応力によって、基板開口部を横切って延在するマスク層の剛性を維持できることが理解できる。
そうすると、訂正前明細書等には、マスク層が引張応力を備えた(伴った)状態で堆積されることも記載されていると認められるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(エ)そして、この訂正は、上記(イ)bのとおり、訂正前においては明瞭ではなかった記載を明瞭にするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、4、6について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項4について、引用形式の記載から独立形式の記載に改めるものである。
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項5について、引用形式の記載から独立形式の記載に改めるものである。
訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項6を引用する請求項7について、引用形式の記載から独立形式の記載に改めるものである。
これらの訂正は、請求項の記載について、訂正前の引用形式の記載を独立形式の記載に改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。そして、これらの訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5について
ア(ア)訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項6における「基板上にマスク層を堆積することと;」との記載を、「基板上に第1の保護層を堆積することと; 前記第1の保護層上にマスク層を堆積することと; 前記マスク層上に第2の保護層を堆積することと;」とする訂正を含むものである。
(イ)この訂正は、訂正前の請求項6における「基板上にマスク層を堆積すること」について、「基板上に」、まず、「第1の保護層を堆積」し、次に、その「第1の保護層上にマスク層を堆積」し、さらに、その「マスク層上に第2の保護層を堆積する」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(ウ)訂正前明細書等には、以下の記載がある。
「第1の保護層102が基板100上に堆積される。」(【0018】)
「マスク層104は、第1の保護層102上に堆積される。」(【0019】)
「第2の保護層106は、マスク層104上に堆積される。」(【0020】)
訂正前明細書等の上記記載によれば、訂正前明細書等には、基板上に第1の保護層が堆積され、第1の保護層上にマスク層が堆積され、マスク層上に第2の保護層が堆積されることが記載されていると認められるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ(ア)訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項6における「前記基板上に前記マスク層を堆積することが:」との記載を、「前記第1の保護層上に前記マスク層を堆積することが:」とする訂正を含むものである。
この訂正は、訂正前の請求項6においては、「基板上に」「マスク層を堆積する」としていたものを、上記ア(ア)の訂正に伴って、「第1の保護層上に」「マスク層を堆積する」とするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、上記ア(ウ)を踏まえると、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項6における「前記基板上に第1の導電性マスク層を堆積することと;」との記載を、「前記第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積することと;」とする訂正を含むものである。
この訂正は、訂正前の請求項6においては、「基板上に第1の導電性マスク層を堆積する」としていたものを、上記ア(ア)の訂正に伴って、「第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積する」とするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正前明細書等には、以下の記載がある。
「第1の保護層202は、第1の保護層102について前述したように、基板200上に堆積される。」(【0033】)
「第1の導電性マスク層204は、第1の保護層202上に堆積される。絶縁体マスク層206は、第1の導電性マスク層204上に堆積される。第2の導電性マスク層208は、絶縁体マスク層206上に堆積される。」(【0034】)
「第2の保護層210は、第2の保護層106について前述したように、第2の導電性マスク層208上に堆積される。」(【0036】)
訂正前明細書等の上記記載によれば、訂正前明細書等には、第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積することが記載されていると認められるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ(ア)訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項6に対して、「前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することが: 前記基板開口部において、前記第1の保護層、前記第1の導電性マスク層及び前記絶縁体マスク層を通るトレンチをパターン化することと; 前記基板開口部にわたって前記第1の保護層の露出部分を除去することとを含む、」との記載を追加する訂正を含むものである。
(イ)この訂正は、訂正前の請求項6における「マスク層を通るマスク開口部をパターン化すること」について、「前記基板開口部において、前記第1の保護層、前記第1の導電性マスク層及び前記絶縁体マスク層を通るトレンチをパターン化すること」と、「前記基板開口部にわたって前記第1の保護層の露出部分を除去すること」とを含むものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(ウ)訂正前明細書等には、以下の記載がある。
「図16A及び図16Bは、第1の保護層202、第1の導電性マスク層204、及び絶縁体マスク層206のパターン化を示している。図16A及び図16Bのパターン化は、第1の保護層202、第1の導電性マスク層204、及び絶縁体マスク層206を通る断面A-Aに平行な(且つ断面B-Bに垂直な)方向トレンチを形成する。」(【0040】)
「図17A及び図17Bは、裏側処理中に、RIEなどの乾式異方性エッチングプロセスを使用することによるなど、第1の保護層202の露出部分の除去を示している。」(【0041】)
訂正前明細書等の上記記載によれば、図16A、図16B、図17A及び図17Bも考慮すると、訂正前明細書等には、基板開口部において、第1の保護層、第1の導電性マスク層及び絶縁体マスク層を通るトレンチをパターン化すること、基板開口部にわたって第1の保護層の露出部分を除去することが記載されていると認められるから、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項7について
訂正事項7に係る訂正は、上記(2)の訂正事項2による訂正に合わせて、願書に添付した明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、この訂正は、訂正前明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、請求項1~13に係る訂正事項1~7について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
3 まとめ
上記2のとおり、各訂正事項に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号、2号、3号又は4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。
また、訂正後の請求項2、4、5、7に係る訂正事項2、3、4、6は、上記2のとおり、いずれも認められるものであるところ、特許権者による別の訂正単位とする求めを踏まえ、結論のとおり、訂正後の請求項〔1、3、8〕、2、4、5、6、7、〔9~13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。)。下線は、訂正箇所を示す。
【請求項1】
堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層 、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記基板の前記中央部分を除去した後で、前記第1の保護層及び前記第2の保護層の露出部分を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の露出部分を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有する、
方法。
【請求項2】
堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層 、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有し、
前記マスク層は引張応力を伴って堆積される、方法。
【請求項3】
前記第1の保護層及び前記第2の保護層が、それぞれ独立して銅(Cu)、アルミニウム(Al)、又はタングステン(W)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層 、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有し、
該方法が、
前記第2の保護層上にスペーサ層を堆積することと;
前記スペーサ層をスペーサ要素にパターン化することと
をさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている、方法。
【請求項5】
堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層 、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有し、
該方法が、
前記マスク層上且つ前記基板開口部中に支持マトリックスを形成することをさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記基板の前記周辺部分に接触している、方法。
【請求項6】
堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積することと;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積することと;
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することと;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定することと
を含み、前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し、
前記第1の保護層上に前記マスク層を堆積することが:
前記第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積することと;
前記第1の導電性マスク層上に絶縁体マスク層を堆積することと;
前記絶縁体マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積することと
を含み、
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することが:
前記基板開口部において、前記第1の保護層、前記第1の導電性マスク層及び前記絶縁体マスク層を通るトレンチをパターン化することと;
前記基板開口部にわたって前記第1の保護層の露出部分を除去することと
を含む、方法。
【請求項7】
堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することと;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定することと
を含み、前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し、
前記基板上に前記マスク層を堆積することが:
前記基板上に第1の導電性マスク層を堆積することと;
前記第1の導電性マスク層上に絶縁体マスク層を堆積することと;
前記絶縁体マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積することと
を含み、
前記マスク層を通る前記マスク開口部をパターン化することが:
前記第2の導電性マスク層を通る第1のトレンチをパターン化することと;
前記基板開口部を介して、前記第1の導電性マスク層を通る第2のトレンチをパターン化することと
を含み、少なくとも前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ、又はそれらの組み合わせは前記絶縁体マスク層を通り、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチの交点は前記マスク開口部を形成する、方法。
【請求項8】
前記マスク層及び前記基板にキャリアフレームを取り付けることをさらに含み、前記キャリアフレームの外側フレームは、前記基板の前記周辺部分に外接する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
堆積マスクを含む半導体処理構造体であって、
前記堆積マスクが、
環状基板であって、前記環状基板を通る基板開口部を有する前記環状基板と;
前記環状基板上の、前記基板開口部を横切って延在しているマスク層であって、前記マスク層を通り、前記基板開口部内に位置合わせされているマスク開口部を有する前記マスク層と
を含み、
前記マスク層が:
前記環状基板上の第1の導電性マスク層であって、第1のトレンチが前記第1の導電性マスク層を通っている、前記第1の導電性マスク層と;
前記第1の導電性マスク層上の絶縁体マスク層と;
前記絶縁体マスク層上の第2の導電性マスク層であって、第2のトレンチが前記第2の導電性マスク層を通っている、前記第2の導電性マスク層と
を含み;少なくとも前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ、又はそれらの組み合わせが、前記絶縁体マスク層を通り、前記第1のトレンチと第2のトレンチの交点は、前記マスク開口部を形成しており、
前記第1の導電性マスク層が、半導体処理構造体の横方向に外側の部分に接触領域を含む、半導体処理構造体。
【請求項10】
前記堆積マスクが、環状基板の反対側の前記第2の導電性マスク層上にスペーサ要素をさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定されており、前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている、請求項9に記載の半導体処理構造体。
【請求項11】
前記堆積マスクが、前記第1の導電性マスク層上且つ前記基板開口部内に支持マトリックスをさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定されており、前記支持マトリックスが、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記環状基板に接触している、 請求項9に記載の半導体処理構造体。
【請求項12】
前記堆積マスクに取り付けられているキャリアフレームをさらに含み、前記キャリアフレームの外側フレームは、前記環状基板に外接している、請求項9に記載の半導体処理構造体。
【請求項13】
前記キャリアフレームが、前記第1の導電性マスク層の前記接触領域との電気的接続を確立する接点をさらに含む、請求項12に記載の半導体処理構造体。
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件特許の請求項1~13に係る特許は、下記(1)~(5)のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する(証拠方法は下記(6)を参照。以下、甲第1号証等を単に「甲1」等という。)。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項6に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件訂正前の請求項2、6、7及び9~13に係る発明については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項2、6、7及び9~13に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(4)申立理由4(明確性要件)
本件訂正前の請求項1~13に係る発明については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(5)申立理由5(実施可能要件)
本件訂正前の請求項2に係る発明については、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項2に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(6)証拠方法
・甲1 中国特許出願公開第108666448号明細書
・甲2 特開2002-47560号公報
・甲3 特開2009-108362号公報
・甲4 特開2002-175878号公報
・甲5 特開2005-235568号公報
・甲6 特開2014-58722号公報
2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(明確性要件)
上記1の申立理由4(明確性要件)(うち、「マスク層を引張応力により堆積する」ことに関するもの)と同旨
(2)取消理由2(サポート要件)
上記1の申立理由3(サポート要件)(うち、「マスク層を引張応力により堆積する」ことに関するもの)と同旨
(3)取消理由3(実施可能要件)
上記1の申立理由5(実施可能要件)と同旨
(4)取消理由4(進歩性)
上記1の申立理由2(進歩性)(うち、本件訂正前の請求項1、3、6、8に係る発明に対するもの)と同旨
第5 当審における判断
以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1(明確性要件)、申立理由4(明確性要件)(うち、「マスク層を引張応力により堆積する」ことに関するもの)
(1)取消理由通知書について
取消理由通知書では、本件訂正前の請求項2には、「マスク層を引張応力により堆積する」との記載があるが、本件訂正前の明細書の記載を考慮しても、技術的にみてどのようなことを意味しているのか明らかではないから、本件訂正前の請求項2に係る発明は、明確であるとはいえない旨、指摘した。
これに対して、前記第2のとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項2における「前記マスク層を引張応力により堆積する」との記載は、「前記マスク層は引張応力を伴って堆積される」と訂正され、その意味は明確となったから、本件発明2について、上記の点に関する明確性要件違反は解消した。
(2)まとめ
したがって、取消理由1(明確性要件)、申立理由4(明確性要件)(うち、「マスク層を引張応力により堆積する」ことに関するもの)によっては、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(サポート要件)、申立理由3(サポート要件)(うち、「マスク層を引張応力により堆積する」ことに関するもの)、取消理由3(実施可能要件)、申立理由5(実施可能要件)
(1)取消理由通知書について
取消理由通知書では、上記1(1)と同様の理由により、本件発明2は、実質的に本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、また、本件発明2について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない旨、指摘した。
これに対して、前記第2のとおり、本件訂正により、本件訂正前の請求項2における「前記マスク層を引張応力により堆積する」との記載は、「前記マスク層は引張応力を伴って堆積される」と訂正され、その意味は明確となったから、本件発明2について、上記の点に関するサポート要件違反、実施可能要件違反は解消した。
(2)まとめ
したがって、取消理由2(サポート要件)、申立理由3(サポート要件)(うち、「マスク層を引張応力により堆積する」ことに関するもの)、取消理由3(実施可能要件)、申立理由5(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由4(明確性要件)(上記1以外のもの)
(1)請求項1~13について
請求項1~13の記載は、前記第3のとおりのものであるところ、請求項1~13の記載に不明確なところはなく、いずれもその意味は明確であるから、本件発明1~13は、いずれも明確である。
(2)申立人の主張について
ア 申立人は、請求項1、6における「基板開口部」が、1つなのか、複数なのか、1つ又は複数のいずれでもよいのか、不明であるから、本件発明1~8は明確であるとはいえないと主張する(申立書71~72頁)。
しかしながら、本件発明1~8は、「基板開口部」の数を問わない発明であり、「基板開口部」の数にかかわらず、本件発明1~8が明確であることは、上記(1)のとおりである。
よって、申立人の主張は採用できない。
イ 申立人は、請求項9における「堆積マスクを含む半導体処理構造体」とは、半導体処理によって製造された堆積マスクであるのか、半導体処理に用いられる堆積マスクであるのか、両方を意味するのか、明確ではないから、本件発明9~13は明確であるとはいえないと主張する(申立書74~75頁)。
しかしながら、請求項9における「堆積マスクを含む半導体処理構造体」は、堆積マスクを含む半導体処理のための構造体を意味するものであり、本件明細書の記載(【0047】~【0055】、図21)を考慮すると、例えば、堆積マスクを含む基板キャリア装置を意味するものであると理解できる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
したがって、申立理由4(明確性要件)(上記1以外のもの)によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3(サポート要件)(上記2以外のもの)
(1)本件発明1~13について
ア 本件明細書の記載(【0003】、【0004】、【0028】)によれば、本件発明1~13が解決しようとする課題は、取り扱ったり輸送したりすることができる堆積マスクを提供することであると認められる。
イ 本件明細書の記載及び図面(【0003】、【0004】、【0028】、図19、20)によれば、上記アの課題は、堆積マスクにおいて、マスク層を機械的に支持するために、マスク層を基板の基板開口部を横切って延在させるとの手段によって、解決できることが理解できる。
ウ また、本件明細書及び図面には、上記イのほかに、請求項1~13における各発明特定事項についても記載されている(【0011】~【0013】、【0017】~【0055】、図1~21)。
エ 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、上記イの手段及びウで指摘した発明特定事項を備えた本件発明1~13は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記アの課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
したがって、本件発明1~13については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
(2)申立人の主張について
申立人は、本件発明が解決すべき課題は、基板上に堆積するパターン寸法が小さくなると、堆積マスクの開口部は、狭い幅と大きな深さという大きなアスペクト比を有することになり、堆積材料が堆積マスク上に堆積し、開口部の角にピンチオフを引き起こし、堆積材料が基板に到達することを妨げることであり、当該課題を解決するためには、堆積マスクの開口部は、小さいアスペクト比を有することが必要であるにもかかわらず、請求項6、7、9~13には、上記の課題を解決するための手段が反映されていないと主張する(申立書70~71頁)。
しかしながら、申立人の主張にかかわらず、本件発明1~13が解決しようとする課題の一つとして、上記(1)アのとおりの課題を認定することができるところ、当該課題は、上記(1)イの手段によって解決できるものである。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)まとめ
したがって、申立理由3(サポート要件)(上記2以外のもの)によっては、本件特許の請求項6、7、9~13に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由1(新規性)、取消理由4(進歩性)、申立理由2(進歩性)
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の記載(請求項10、14、第1実施形態([0070]~[0125]、図1、3~10))によれば、特に、第1実施形態([0071]、[0078]、[0088]、[0091]、[0092](請求項14も参照)、[0094]、[0103]、[0112]、[0118]、図1、3~10)に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、甲1の訳文として、申立人が提出したものを用いた。
「マスクプレートの製造方法であって、
基板100が提供され、前記基板100は、第1表面120と第2表面130とを備え、
前記第1表面120上に犠牲層150を形成し、前記犠牲層150をパターニングし、前記犠牲層150内に複数のトレンチ(溝)151を形成し、
前記犠牲層150上にマスク材料層250が形成され、前記マスク材料層250も前記トレンチ(溝)151を埋め、ここで、前記マスク材料層250の材料は、窒化シリコン、酸化シリコン、窒素酸化シリコン、窒化シリコン炭素、多結晶シリコン又はアルミニウムであってもよく、
前記マスク材料層250上に保護フィルム165を形成し、前記保護フィルム165をパターニングし、後記パターン領域Iに対応する前記保護フィルム165を除去し、後記マスキング領域IIに対応する前記保護フィルム165を保護層160として保持し、
前記マスク材料層250は、パターン領域I及び前記パターン領域Iに隣接するマスキング領域IIを形成するようにパターニングされ、前記パターン領域Iには、前記マスク材料層250を貫通する少なくとも1つの貫通孔210が形成され、パターニング後の残りのマスク材料層250は、マスクパターン層200として機能し、前記トレンチ(溝)151内に配置された前記マスクパターン層200が環状突出部230を構成し、
前記基板100の第2表面130をエッチングして、前記基板100を貫通して前記パターン領域Iを露出する複数の第1開口部110を前記基板100内に形成し、前記パターン領域Iに対応する前記第1開口部110の各々を形成し、
前記基板100をマスクとして前記パターン領域Iの前記犠牲層150を除去し、残りの前記犠牲層150内に前記パターン領域Iを露出する複数の開口部180を形成し、各開口部180は前記パターン領域Iに対応し、前記環状突出部230は前記開口部180の側壁に隣接する、
マスクプレートの製造方法。」
イ また、甲1の記載(請求項11、15、第6実施形態([0186]~[0201]、図2、25~29))によれば、特に、第1実施形態を前提として([0127]、[0146]、[0166]、[0177]、[0187])、さらに金属膜を形成させた第6実施形態([0189]~[0192]、[0194]~[0196]、[0198]、[0199]、図2、25~29)に着目すると、甲1には、上記アの第1実施形態に基づく発明を前提として、さらに金属膜を形成させた第6実施形態に基づく、以下の発明が記載されていると認められる。なお、下線部は、上記アの第1実施形態に基づく発明からの変更箇所を示す。
「マスクプレートの製造方法であって、
基板100(700)が提供され、前記基板100(700)は、第1表面120と第2表面130とを備え、
前記第1表面120上に犠牲層150(750)を形成し、前記犠牲層150(750)をパターニングし、前記犠牲層150(750)内に複数のトレンチ(溝)151を形成し、
前記犠牲層150(750)の上部、前記トレンチ(溝)151の側壁及び底部に第1金属膜825を形成し、
前記第1金属膜825上にマスク材料層250(850)を形成し、前記マスク材料層250(850)も前記トレンチ(溝)151を充填し、前記マスク材料層250(850)上に第2金属膜835を形成し、ここで、前記マスク材料層250(850)の材料は、窒化シリコン、酸化シリコン、窒素酸化シリコン、窒化シリコン炭素、多結晶シリコン又はアルミニウムであってもよく、前記第1金属膜825の材質及び前記第2金属膜835の材質は、いずれも、Ni、Ag、Au、Cu、Pt、Cr、Mo、Ti、Ta、Sn、W及びAlのうちの1つ以上であってもよく、
前記第2金属膜835上に保護フィルム165(保護膜865)を形成し、前記保護フィルム165(保護膜865)をパターニングし、後記パターン領域Iに対応する前記保護フィルム165(保護膜865)を除去し、後記マスキング領域IIに対応する前記保護フィルム165(保護膜865)を保護層160(860)として保持し、
前記第2金属膜835をエッチングして、後記貫通孔210(810)に対応する領域のマスク材料層250(850)を露出させ、
前記マスク材料層250(850)は、パターン領域I及び前記パターン領域Iに隣接するマスキング領域IIを形成するようにパターニングされ、前記パターン領域Iには、前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され、パターニング後の残りのマスク材料層250(850)は、マスクパターン層200(800)として機能し、前記トレンチ(溝)151内に配置された前記マスクパターン層200(800)が環状突出部230(830)を構成し、
前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ、エッチング後の残りの第1金属膜825及び前記残りの第2金属膜835を金属層820として機能させ、
前記基板100(700)の第2表面130をエッチングして、前記基板100(700)を貫通して前記パターン領域Iを露出する複数の第1開口部110を前記基板100(700)内に形成し、前記パターン領域Iに対応する前記第1開口部110の各々を形成し、
前記基板100(700)をマスクとして前記パターン領域Iの前記犠牲層150(750)を除去し、残りの前記犠牲層150(750)内に前記パターン領域Iを露出する複数の開口部180を形成し、 各開口部180は前記パターン領域Iに対応し、前記環状突出部230(830)は前記開口部180の側壁に隣接する、
マスクプレートの製造方法。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「マスクプレート」は、甲1の記載([0003]、[0005]、[0020])によれば、蒸着プロセスに用いられるものであるから、本件発明1における「堆積マスク」に相当する。
そうすると、甲1発明における「マスクプレートの製造方法」は、本件発明1における「堆積マスクを形成するための方法」に相当する。
(イ)甲1発明における「基板100(700)」、「マスク材料層250(850)」は、それぞれ、本件発明1における「基板」、「マスク層」に相当する。
(ウ)甲1発明における「第1金属膜825」、「第2金属膜835」は、いずれも、マスクプレートにおける「金属層820として機能させ」るために形成するものであるところ、金属層は、甲1の記載([0060]、[0061]、[0188])によれば、マスクパターン層の機械的強度を向上させたり、マスクパターン層が洗浄液によって腐食されることを防止したりするものであるから、一種の保護の作用を有するものと解される。
そうすると、甲1発明における「第1金属膜825」、「第2金属膜835」は、それぞれ、本件発明1における「第1の保護層」、「第2の保護層」に相当する。
(エ)甲1の「本発明は、蒸着、フォトリソグラフィ及びエッチングなどの半導体プロセスを採用してマスクプレートを製造し」([0020])との記載によれば、甲1発明における「第1金属膜825」の形成、「マスク材料層250(850)」の形成、「第2金属膜835」の形成は、いずれも、蒸着によって行われるものと解される。
そうすると、上記(イ)、(ウ)を踏まえると、甲1発明において、「基板100(700)」の「第1表面120上に」、犠牲層150(750)を介して、「第1金属膜825を形成し」、「前記第1金属膜825上にマスク材料層250(850)を形成し」、「前記マスク材料層250(850)上に第2金属膜835を形成」することは、本件発明1において、「基板上に第1の保護層を堆積すること」、「前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること」、「前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること」に相当する。
(オ)甲1発明においては、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」ていること、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」ていること、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」ていることから、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成されるといえる。
そうすると、甲1発明において、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」ていること、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」ていること、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」ていることは、本件発明1において、「前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること」に相当する。
(カ)甲1発明においては、「前記基板100(700)の第2表面130をエッチングして、前記基板100(700)を貫通して前記パターン領域Iを露出する複数の第1開口部110を前記基板100(700)内に形成し、前記パターン領域Iに対応する前記第1開口部110の各々を形成し」ていることから、甲1の図1、2、10、29(図示を容易にするために1つの第1開口部のみを図示([0031]))も考慮すると、基板100(700)の中央部分をエッチングし、周辺部分を残すことで、基板100(700)を貫通する複数の第1開口部110を形成しているといえる。
そうすると、甲1発明において、「前記基板100(700)の第2表面130をエッチングして、前記基板100(700)を貫通して前記パターン領域Iを露出する複数の第1開口部110を前記基板100(700)内に形成し、前記パターン領域Iに対応する前記第1開口部110の各々を形成」することは、本件発明1において、「前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること」に相当する。
(キ)そして、上記(オ)、(カ)を踏まえ、甲1の図1、2、10、29も考慮すると、甲1発明においては、基板100(700)の中央部分をエッチングし、周辺部分を残すことで、基板100(700)を貫通する複数の第1開口部110を形成した時点で、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成された(上記(オ)参照)マスクパターン層200(800)が、基板100(700)を貫通する複数の第1開口部110(上記(カ)参照)を横切って延在した状態にあるといえるから、このような状態は、本件発明1において、「前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで、前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し」ていることに相当する。
(ク)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;
を含む、
方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1-1
本件発明1では、「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の露出部分を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有する」のに対して、甲1発明では、上記のような比を有するかどうか不明である点。
・相違点1-2
本件発明1では、「前記基板の前記中央部分を除去した後で、前記第1の保護層及び前記第2の保護層の露出部分を除去する」のに対して、甲1発明では、「前記基板100(700)の第2表面130をエッチングして、前記基板100(700)を貫通して前記パターン領域Iを露出する複数の第1開口部110を前記基板100(700)内に形成し、前記パターン領域Iに対応する前記第1開口部110の各々を形成し」、さらに、「前記基板100(700)をマスクとして前記パターン領域Iの前記犠牲層150(750)を除去し、残りの前記犠牲層150(750)内に前記パターン領域Iを露出する複数の開口部180を形成」するものの、その後、第1金属膜825及び第2金属膜835「の露出部分を除去する」ものではない点。
イ 相違点1-2の検討
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
(ア)まず、相違点1-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 本件発明1における「第1の保護層」「の露出部分」について、本件明細書の記載(【0023】~【0026】、【0029】~【0031】、図1~10)を考慮すると、第1の保護層のうち、基板の中央部分を除去することにより形成された基板開口部において露出した部分を意味するものと認められる。
また、同様に、本件発明1における「第2の保護層の露出部分」について、例えば、第2の保護層上にスペーサ層が形成される場合には、第2の保護層のうち、スペーサ層の所定の領域を除去することにより形成された部分(スペーサ層の開口部)において露出した部分を意味するものと認められる。
b これに対して、甲1発明は、基板100(700)内に第1開口部110を形成し、さらに、犠牲層150(750)内に開口部180を形成するものの、その後、「金属層820として機能させ」る「エッチング後の残りの第1金属膜825」(本件発明1における「第1の保護層」「の露出部分」に相当する。)を除去するものではなく、また、「金属層820として機能させ」る「残りの第2金属膜835」(本件発明1における「第2の保護層の露出部分」に相当する。)を除去するものではない。
c 以上によれば、相違点1-2は実質的な相違点である。
したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点1-2の容易想到性について検討する。
a 上記ア(ウ)のとおり、甲1発明における「第1金属膜825」及び「第2金属膜835」は、いずれも、マスクプレートにおける「金属層820として機能させ」るために形成するものであるところ、金属層は、マスクパターン層の機械的強度を向上させたり、マスクパターン層が洗浄液によって腐食されることを防止したりするものである。
そうすると、甲1発明においては、「エッチング後の残りの第1金属膜825」及び「残りの第2金属膜835」は、いずれも、マスクプレートにおける「金属層820として機能させ」るために残存させるべきものであるから、甲1発明において、「エッチング後の残りの第1金属膜825」及び「残りの第2金属膜835」を除去する動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害されているといえる。また、このことは、甲2~6の記載を考慮しても変わるものではない。
b この点、申立人は、甲1発明においては、貫通孔210(810)を形成する際に、第1金属膜825は、貫通孔210(810)の底部に露出する露出部分を全てエッチングにより除去し、第2金属膜835は、第2開口部170に露出する露出部分の一部をエッチングにより除去しているとの認識を前提として、甲2の記載(第1の開口窓と第2の開口窓との形成順序は、当業者が適宜決定できる設計事項である旨の記載)に基づいて、甲1発明において、基板100(700)内に第1開口部110を形成した後に、貫通孔210(810)を形成する、すなわち、第1金属膜825及び第2金属膜835の露出部分を除去することは、当業者であれば容易に想到することであると主張する(意見書4~12頁)。
しかしながら、甲1には、基板100(700)内に第1開口部110を形成した後に、貫通孔210(810)を形成することについては何ら記載されていないから、仮に、甲2に申立人が主張するような事項が記載されているとしても、そうであるからといって、甲1発明において、基板100(700)内に第1開口部110を形成した後に、貫通孔210(810)を形成することが動機付けられるとはいえない。
仮に、甲2の記載に基づいて、甲1発明において、基板100(700)内に第1開口部110を形成した後に、貫通孔210(810)を形成することができたとしても、この場合、基板100(700)内に第1開口部110を形成した時点では、貫通孔210(810)は形成されていないから、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成されたマスクパターン層200(800)が、基板100(700)を貫通する複数の第1開口部110を横切って延在した状態にあるといえず、本件発明1における「前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで、前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し」との発明特定事項を満たさないものとなり(上記ア(キ)を参照。)、新たな相違点となってしまう。
よって、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、甲1発明において、基板100(700)内に第1開口部110を形成し、さらに、犠牲層150(750)内に開口部180を形成した後に、「エッチング後の残りの第1金属膜825」及び「残りの第2金属膜835」を除去することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3、8について
本件発明3、8は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明3、8についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明においては、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、また、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」ているところ、第2金属膜835及び第1金属膜825の一部を除去しているといえるから、これらのことは、本件発明2における「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること」に相当する。
(イ)その余の点は、上記(2)アと同様であるから、本件発明2と甲1発明とは、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含む、
方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2-1
本件発明2では、「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有」するのに対して、甲1発明では、上記のような比を有するかどうか不明である点。
・相違点2-2
本件発明2では、「マスク層は引張応力を伴って堆積される」のに対して、甲1発明では、マスク材料層250(850)が「引張応力を伴って堆積される」かどうか不明である点。
イ 相違点2-2の検討
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
(ア)まず、相違点2-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1には、マスク材料層250(850)が引張応力を伴って堆積されることについては、何ら記載されていない。また、堆積マスクの分野における技術常識を考慮しても、甲1発明における「マスク材料層250(850)」が引張応力を伴って形成されているとは認められない。
以上によれば、相違点2-2は実質的な相違点である。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点2-2の容易想到性について検討する。
a 甲1には、マスク材料層250(850)が引張応力を伴って堆積されることについては何ら記載されていないから、甲1発明において、マスク材料層250(850)を引張応力を伴って堆積されるようにする動機付けがあるとはいえない。また、このことは、甲2~6の記載を考慮しても変わるものではない。
b この点、申立人は、訂正請求書において引用された参考例の記載(単結晶Siの上に形成した窒化シリコン膜に引張応力が生じる旨の記載)を前提として、甲1には、基板100(700)としてシリコン基板を採用できること、マスク材料層250(850)として窒化シリコンを採用できることが記載されており、これらの材料は、本件明細書に記載された材料と同じであるから、甲1発明においても、(基板100(700)としてシリコン基板を採用し、マスク材料層250(850)として窒化シリコンを採用すれば、)マスク材料層250(850)は引張応力を伴って堆積されることになると主張する(意見書16、18頁)。
しかしながら、仮に、申立人の主張を前提とするとしても、甲1発明は、基板100(700)がシリコン基板に特定されたものではなく、マスク材料層250(850)が窒化シリコンに特定されたものではないから、甲1発明において、マスク材料層250(850)が、必ず、引張応力を伴って堆積されるかどうかは不明である。
そして、甲1発明において、マスク材料層250(850)を引張応力を伴って堆積されるようにする動機付けがあるとはいえないことは、上記aのとおりである。
よって、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、甲1発明において、マスク材料層250(850)を引張応力を伴って堆積されるようにすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明においては、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、また、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」ているところ、第2金属膜835及び第1金属膜825の一部を除去しているといえるから、これらのことは、本件発明4における「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること」に相当する。
(イ)甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」と、本件発明4における「スペーサ層」とは、いずれも、「所定機能層」である限りで共通する。そして、上記(2)ア(ウ)を踏まえると、甲1発明において、「前記第2金属膜835上に保護フィルム165(保護膜865)を形成」することと、本件発明4において、「前記第2の保護層上にスペーサ層を堆積すること」とは、いずれも、「前記第2の保護層上に所定機能層を堆積すること」である限りで共通する。
(ウ)甲1発明における「保護層160(860)」と、本件発明4における「スペーサ要素」とは、いずれも、「所定機能要素」である限りで共通する。そして、上記(イ)を踏まえると、甲1発明において、「前記保護フィルム165(保護膜865)をパターニングし」、「マスキング領域IIに対応する前記保護フィルム165(保護膜865)を保護層160(860)として保持」することと、本件発明4において、「前記スペーサ層をスペーサ要素にパターン化すること」とは、いずれも、「前記所定機能層を所定機能要素にパターン化すること」である限りで共通する。
(エ)その余の点は、上記(2)アと同様であるから、本件発明4と甲1発明とは、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含み、
該方法が、
前記第2の保護層上に所定機能層を堆積することと;
前記所定機能層を所定機能要素にパターン化することと
をさらに含む、
方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点4-1
本件発明4では、「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有」するのに対して、甲1発明では、上記のような比を有するかどうか不明である点。
・相違点4-2
本件発明4では、所定機能層が「スペーサ層」、所定機能要素が「スペーサ要素」であるのに対して、甲1発明では、所定機能層が「保護フィルム165(保護膜865)」、所定機能要素が「保護層160(860)」である点。
・相違点4-3
本件発明4では、「前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている」のに対して、甲1発明では、貫通孔210(810)の「グループ間にスクライブライン領域が画定され、前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている」かどうか不明である点。
イ 相違点4-2、4-3の検討
事案に鑑み、相違点4-2、4-3をまとめて検討する。
(ア)まず、相違点4-2、4-3が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 甲1には、マスクプレートにおいて、スペーサ層やスペーサ要素を設けることについては、何ら記載されていない。
また、甲1には、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」ること、「前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている」ことについても、何ら記載されていない。
b この点、申立人は、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」、「保護層160(860)」は、マスクパターン層の表面と蒸着される表面との間の距離を保つ機能を備えているから、本件発明4における「スペーサ層」、「スペーサ要素」に相当すると主張する(申立書45頁)。
また、申立人は、本件発明4における「スクライブライン領域」は、マスク開口部のグループ間に画定されており、マスク開口部が形成されていない領域であるから、甲1発明における「マスキング領域II」は、本件発明4における「スクライブライン領域」に相当するとの認識を前提として、甲1発明において、「保護層160(860)」が「マスキング領域II」に対応して形成されていることは、本件発明1において、「前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている」ことに相当すると主張する(申立書45~46頁)。
しかしながら、甲1には、スペーサ層やスペーサ要素を設けることについては、何ら記載されていないことは、上記aのとおりである。また、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」、「保護層160(860)」が、実際に、マスクパターン層の表面と蒸着される表面との間の距離を保つ機能を備えているかどうかは不明であるから、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」、「保護層160(860)」が、本件発明4における「スペーサ層」、「スペーサ要素」に相当するといえるかどうかは不明である。
仮に、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」、「保護層160(860)」が、本件発明4における「スペーサ層」、「スペーサ要素」に相当するとしても、甲1発明における「マスキング領域II」が、貫通孔210(810)が形成されていない領域であるからといって、実際に、「スクライブライン領域」であるかどうかは不明である。
よって、申立人の主張はいずれにしろ採用できない。
c 以上によれば、相違点4-2、4-3は、いずれも、実質的な相違点であるか、あるいは、少なくとも、相違点4-3は実質的な相違点である。
したがって、相違点4-1について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点4-2、4-3の容易想到性について検討する。
a 甲1には、マスクプレートにおいて、スペーサ層やスペーサ要素を設けることについては何ら記載されていないから、甲1発明において、スペーサ層やスペーサ要素を設ける動機付けがあるとはいえない。
また、仮に、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」、「保護層160(860)」が、本件発明4における「スペーサ層」、「スペーサ要素」に相当するとしても、甲1には、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」ること、「前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている」ことについても何ら記載されていないから、甲1発明において、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」るものとし、「前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている」ものとする動機付けがあるとはいえない。
そして、これらのことは、甲2~6の記載を考慮しても変わるものではない。
b 以上によれば、甲1発明において、スペーサ層やスペーサ要素を設けることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
仮に、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」、「保護層160(860)」が、本件発明4における「スペーサ層」、「スペーサ要素」に相当するとしても、甲1発明において、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」るものとし、「前記スペーサ要素は、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っている」ものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点4-1について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明においては、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、また、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」ているところ、第2金属膜835及び第1金属膜825の一部を除去しているといえるから、これらのことは、本件発明5における「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること」に相当する。
(エ)その余の点は、上記(2)アと同様であるから、本件発明5と甲1発明とは、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積すること;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること;
前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通るマスク開口部をパターン化すること;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること、ここで前記マスク層、前記第1の保護層及び前記第2の保護層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し;並びに
前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去すること;
を含む、
方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点5-1
本件発明5では、「前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部を除去した後の、前記マスク層を通る前記マスク開口部が、1:1以下である、前記マスク開口部それぞれの幅に対する前記マスク開口部それぞれの深さの比を有」するのに対して、甲1発明では、上記のような比を有するかどうか不明である点。
・相違点5-2
本件発明5では、「前記マスク層上且つ前記基板開口部中に支持マトリックスを形成することをさらに含み、前記マスク開口部のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記基板の前記周辺部分に接触している」のに対して、甲1発明では、マスク材料層250(850)「上且つ前記」第1開口部110「中に支持マトリックスを形成することをさらに含み、前記」貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され、前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記」基板100(700)「の前記周辺部分に接触している」かどうか不明である点。
イ 相違点5-2の検討
事案に鑑み、相違点5-2について検討する。
(ア)まず、相違点5-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 甲1には、マスクプレートにおいて、マスク材料層250(850)「上且つ前記」第1開口部110「中に支持マトリックスを形成する」ことについては、何ら記載されていない。
また、甲1には、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」ること、「前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記」基板100(700)「の前記周辺部分に接触している」ことについても、何ら記載されていない。
b(a)この点、申立人は、本件発明5において、複数の基板開口部を形成する場合、本件発明5における「基板開口部中」は、複数の基板開口部を一つの基板開口部とみなしたときの内部と解することができるとの認識を前提として、甲1発明における「マスキング領域II」は、本件発明5における「基板開口部中」に含まれるものであり、甲1発明における「基板100(700)」の「マスキング領域II」に対応した部分は、本件発明5における「支持マトリックス」に相当すると主張する(申立書46~47頁)。
しかしながら、甲1には、マスク材料層250(850)「上且つ前記」第1開口部110「中に支持マトリックスを形成すること」については何ら記載されていないことは、上記aのとおりである。また、甲1発明における「基板100(700)」の「マスキング領域II」に対応した部分が、実際に、「支持マトリックス」としての機能を備えているかどうかは不明であるから、甲1発明における「基板100(700)」の「マスキング領域II」に対応した部分が、本件発明5における「支持マトリックス」に相当するといえるかどうかは不明である。
(b)また、申立人は、本件発明5における「スクライブライン領域」は、マスク開口部のグループ間に画定されており、マスク開口部が形成されていない領域であるから、甲1発明における「マスキング領域II」は、本件発明5における「スクライブライン領域」に相当するとの認識を前提として、甲1発明における「基板100(700)」の「マスキング領域II」に対応した部分は、本件発明5における「スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿って」いることになり、また、「基板100(700)」の周辺に接触していると主張する(申立書47~48頁)。
しかしながら、甲1発明における「マスキング領域II」が、貫通孔210(810)が形成されていない領域であるからといって、実際に、「スクライブライン領域」であるかどうかは不明である。そして、甲1発明における「基板100(700)」の「マスキング領域II」に対応した部分が、本件発明5における「支持マトリックス」に相当するといえるかどうかは不明であることは、上記(a)のとおりである。
(c)よって、申立人の主張はいずれにしろ採用できない。
c 以上によれば、相違点5-2は実質的な相違点である。
したがって、相違点5-1について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点5-2の容易想到性について検討する。
a 甲1には、マスクプレートにおいて、マスク材料層250(850)「上且つ前記」第1開口部110「中に支持マトリックスを形成する」ことについては何ら記載されていないから、甲1発明において、マスク材料層250(850)「上且つ前記」第1開口部110「中に支持マトリックスを形成する」動機付けがあるとはいえない。
また、甲1には、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」ること、「前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記」基板100(700)「の前記周辺部分に接触している」ことについても、何ら記載されていないから、甲1発明において、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」るものとし、「前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記」基板100(700)「の前記周辺部分に接触している」ものとする動機付けがあるとはいえない。
そして、これらのことは、甲2~6の記載を考慮しても変わるものではない。
b 以上によれば、甲1発明において、マスク材料層250(850)「上且つ前記」第1開口部110「中に支持マトリックスを形成する」とともに、貫通孔210(810)「のグループ間にスクライブライン領域が画定され」るものとし、「前記支持マトリックスは、前記スクライブライン領域の少なくともいくつかに沿っており、前記」基板100(700)「の前記周辺部分に接触している」ものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点5-1について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明5は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(7)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲1発明とを対比する。
(ア)上記(2)ア(ア)と同様に、甲1発明における「マスクプレート」、「マスクプレートの製造方法」は、それぞれ、本件発明6における「堆積マスク」、「堆積マスクを形成するための方法」に相当する。
(イ)上記(2)ア(イ)と同様に、甲1発明における「基板100(700)」は、本件発明6における「基板」に相当する。
(ウ)甲1発明における「犠牲層150(750)」は、甲1の記載([0079])によれば、基板をエッチングする工程中にマスクパターン層を保護するものであるから、一種の保護の作用を有するものと解される。
そうすると、甲1発明における「犠牲層150(750)」は、本件発明6における「第1の保護層」に相当する。
また、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」は、「保護層160(860)として保持」するために形成するものであるところ、保護層は、甲1の記載([0104])によれば、第1開口部によって露出された犠牲層を除去するときやマスクプレートの使用中に、マスキング領域IIのマスクパターン層を保護するものであるから、一種の保護の作用を有するものと解される。
そうすると、甲1発明における「保護フィルム165(保護膜865)」は、本件発明6における「第2の保護層」に相当する。
(エ)甲1発明における「第1金属膜825」、「第2金属膜835」は、金属膜であるから、導電性を有していることは明らかであり、また、甲1の図2、29も考慮すると、いずれも、マスクパターン層200(800)と一体となって、マスクパターン層の一部として機能するものといえる。
そうすると、甲1発明における「第1金属膜825」、「第2金属膜835」は、それぞれ、本件発明6における「第1の導電性マスク層」、「第2の導電性マスク層」に相当する。
また、甲1発明における第1金属膜825上に形成される「マスク材料層250(850)」と、本件発明6における第1の導電性マスク層上に堆積される「絶縁体マスク層」とは、いずれも、「マスク層」である限りで共通する。
(オ)上記(2)ア(エ)と同様に、甲1発明における「犠牲層150(750)」の形成、「第1金属膜825」の形成、「マスク材料層250(850)」の形成、「第2金属膜835」の形成、「保護フィルム165(保護膜865)」の形成は、いずれも、蒸着によって行われるものと解される。
そうすると、上記(イ)~(エ)を踏まえると、甲1発明において、「基板100(700)」の「第1表面120上に犠牲層150(750)を形成し」、「前記犠牲層150(750)の上部」「に第1金属膜825を形成し」、「前記第1金属膜825上にマスク材料層250(850)を形成し」、「前記マスク材料層250(850)上に第2金属膜835を形成し」、「前記第2金属膜835上に保護フィルム165(保護膜865)を形成」することは、本件発明6において、「基板上に第1の保護層を堆積すること」、「前記第1の保護層上にマスク層を堆積すること」、「前記マスク層上に第2の保護層を堆積すること」に相当する。
そして、甲1発明において、「基板100(700)」の「第1表面120上に犠牲層150(750)を形成し」、「前記犠牲層150(750)の上部」「に第1金属膜825を形成し」、「前記第1金属膜825上にマスク材料層250(850)を形成し」、「前記マスク材料層250(850)上に第2金属膜835を形成し」、「前記第2金属膜835上に保護フィルム165(保護膜865)を形成」することと、本件発明6において、「前記第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積すること」、「前記第1の導電性マスク層上に絶縁体マスク層を堆積すること」、「前記絶縁体マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積すること」とは、いずれも、「前記第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積すること」、「前記第1の導電性マスク層上に」「マスク層を堆積すること」、「前記」「マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積すること」の限りで共通する。
(カ)上記(2)ア(オ)と同様に、甲1発明において、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」ていること、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」ていること、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」ていることは、本件発明6において、「前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化すること」に相当する。
(キ)上記(2)ア(カ)と同様に、甲1発明において、「前記基板100(700)の第2表面130をエッチングして、前記基板100(700)を貫通して前記パターン領域Iを露出する複数の第1開口部110を前記基板100(700)内に形成し、前記パターン領域Iに対応する前記第1開口部110の各々を形成」することは、本件発明6において、「前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること」に相当する。
(ク)上記(2)ア(キ)と同様に、甲1発明において、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成されたマスクパターン層200(800)が、基板100(700)を貫通する複数の第1開口部110を横切って延在した状態にあることは、本件発明6において、「前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し」ていることに相当する。
(ケ)以上によれば、本件発明6と甲1発明とは、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上に第1の保護層を堆積することと;
前記第1の保護層上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層上に第2の保護層を堆積することと;
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することと;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定することと
を含み、前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し、
前記第1の保護層上に前記マスク層を堆積することが:
前記第1の保護層上に第1の導電性マスク層を堆積することと;
前記第1の導電性マスク層上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積することと
を含む、方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点6-1
第1の導電性マスク層上に堆積されるマスク層の材質が、本件発明6では、「絶縁体」であるのに対して、甲1発明では、「窒化シリコン、酸化シリコン、窒素酸化シリコン、窒化シリコン炭素、多結晶シリコン又はアルミニウムであってもよ」いものである点。
・相違点6-2
マスク層を通るマスク開口部をパターン化することが、本件発明6では、「前記基板開口部において、前記第1の保護層、前記第1の導電性マスク層及び前記絶縁体マスク層を通るトレンチをパターン化すること」と、「前記基板開口部にわたって前記第1の保護層の露出部分を除去すること」とを含むのに対して、甲1発明では、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」るものである点。
イ 相違点6-1、6-2の検討
事案に鑑み、相違点6-1、6-2をまとめて検討する。
(ア)まず、相違点6-1、6-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 甲1発明における第1金属膜825上に形成される「マスク材料層250(850)」の「材料」は、「窒化シリコン、酸化シリコン、窒素酸化シリコン、窒化シリコン炭素、多結晶シリコン又はアルミニウムであってもよ」いものであり、「絶縁体」に限られるものではない。
b(a)甲1発明は、貫通孔210(810)を形成する際に、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」るものであり、その後、基板100(700)内に第1開口部110を形成し、さらに、犠牲層150(750)内に開口部180を形成するものである。
(b)上記(a)のとおり、甲1発明は、基板100(700)内に第1開口部110が形成されていない状態で、貫通孔210(810)を形成するものであるから、(本件発明6のように、)基板100(700)内に形成された第1開口部110において、貫通孔210(810)を形成するものではない。
(c)また、甲1発明は、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を貫通する貫通孔210(810)を形成するものではあるものの、(本件発明6のように、)犠牲層150(750)も含めて、第1金属膜825、マスク材料層250(850)(それぞれ、本件発明6における「第1の保護層」、「第1の導電性マスク層」、「(絶縁体)マスク層」に相当する。)を貫通する貫通孔210(810)を形成するものではなく、また、そもそも、犠牲層150(750)、第1金属膜825、マスク材料層250(850)を通るトレンチ(溝)を形成するものでもない。
c 以上によれば、相違点6-1、6-2は、いずれも、実質的な相違点である。
したがって、本件発明6は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点6-2の容易想到性について検討する。
a 甲1には、貫通孔210(810)を形成する際に、基板100(700)内に形成された第1開口部110において、犠牲層150(750)、第1金属膜825、マスク材料層250(850)を通るトレンチを形成することについては、何ら記載されていないから、甲1発明において、そのようにする動機付けがあるとはいえない。また、このことは、甲2~6の記載を考慮しても変わるものではない。
b 以上によれば、甲1発明において、貫通孔210(810)を形成する際に、基板100(700)内に形成された第1開口部110において、犠牲層150(750)、第1金属膜825、マスク材料層250(850)を通るトレンチを形成することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点6-1について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明6は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(8)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲1発明とを対比する。
(ア)上記(2)ア(ア)と同様に、甲1発明における「マスクプレート」、「マスクプレートの製造方法」は、それぞれ、本件発明7における「堆積マスク」、「堆積マスクを形成するための方法」に相当する。
(イ)上記(2)ア(イ)と同様に、甲1発明における「基板100(700)」は、本件発明7における「基板」に相当する。
(ウ)甲1発明における「第1金属膜825」、「第2金属膜835」は、金属膜であるから、導電性を有していることは明らかであり、また、甲1の図2、29も考慮すると、いずれも、マスクパターン層200(800)と一体となって、マスクパターン層の一部として機能するものといえる。
そうすると、甲1発明における「第1金属膜825」、「第2金属膜835」は、それぞれ、本件発明7における「第1の導電性マスク層」、「第2の導電性マスク層」に相当する。
また、甲1発明における第1金属膜825上に形成される「マスク材料層250(850)」と、本件発明7における第1の導電性マスク層上に堆積される「絶縁体マスク層」とは、いずれも、「マスク層」である限りで共通する。
(エ)上記(2)ア(エ)と同様に、甲1発明における「第1金属膜825」の形成、「マスク材料層250(850)」の形成、「第2金属膜835」の形成は、いずれも、蒸着によって行われるものと解される。
そうすると、上記(イ)、(ウ)を踏まえると、甲1発明において、「基板100(700)」の「第1表面120上に」、犠牲層150(750)を介して、「第1金属膜825を形成し」、「前記第1金属膜825上にマスク材料層250(850)を形成し」、「前記マスク材料層250(850)上に第2金属膜835を形成」することは、本件発明7において、「基板上にマスク層を堆積すること」に相当する。
そして、甲1発明において、「基板100(700)」の「第1表面120上に」、犠牲層150(750)を介して、「第1金属膜825を形成し」、「前記第1金属膜825上にマスク材料層250(850)を形成し」、「前記マスク材料層250(850)上に第2金属膜835を形成」することと、本件発明7において、「前記基板上に第1の導電性マスク層を堆積すること」、「前記第1の導電性マスク層上に絶縁体マスク層を堆積すること」、「前記絶縁体マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積すること」とは、いずれも、「前記基板上に第1の導電性マスク層を堆積すること」、「前記第1の導電性マスク層上に」「マスク層を堆積すること」、「前記」「マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積すること」の限りで共通する。
(オ)上記(2)ア(オ)と同様に、甲1発明において、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」ていること、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」ていること、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」ていることは、本件発明7において、「前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化すること」に相当する。
(カ)上記(2)ア(カ)と同様に、甲1発明において、「前記基板100(700)の第2表面130をエッチングして、前記基板100(700)を貫通して前記パターン領域Iを露出する複数の第1開口部110を前記基板100(700)内に形成し、前記パターン領域Iに対応する前記第1開口部110の各々を形成」することは、本件発明7において、「前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定すること」に相当する。
(キ)上記(2)ア(キ)と同様に、甲1発明において、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成されたマスクパターン層200(800)が、基板100(700)を貫通する複数の第1開口部110を横切って延在した状態にあることは、本件発明7において、「前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し」ていることに相当する。
(ク)以上によれば、本件発明7と甲1発明とは、
「堆積マスクを形成するための方法であって:
基板上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層を通るマスク開口部をパターン化することと;
前記基板の中央部分を除去して、前記基板の周辺部分を通る基板開口部を画定することと
を含み、前記マスク層を通る前記マスク開口部を備えたマスク層は、前記基板開口部を横切って延在し、
前記基板上に前記マスク層を堆積することが:
前記基板上に第1の導電性マスク層を堆積することと;
前記第1の導電性マスク層上にマスク層を堆積することと;
前記マスク層上に第2の導電性マスク層を堆積することと
を含む、方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点7-1
第1の導電性マスク層上に堆積されるマスク層の材質が、本件発明7では、「絶縁体」であるのに対して、甲1発明では、「窒化シリコン、酸化シリコン、窒素酸化シリコン、窒化シリコン炭素、多結晶シリコン又はアルミニウムであってもよ」いものである点。
・相違点7-2
マスク層を通るマスク開口部をパターン化することが、本件発明7では、「前記第2の導電性マスク層を通る第1のトレンチをパターン化すること」と、「前記基板開口部を介して、前記第1の導電性マスク層を通る第2のトレンチをパターン化すること」とを含み、「少なくとも前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ、又はそれらの組み合わせは前記絶縁体マスク層を通り、前記第1のトレンチと前記第2のトレンチの交点は前記マスク開口部を形成する」のに対して、甲1発明では、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」るものである点。
イ 相違点7-1、7-2の検討
事案に鑑み、相違点7-1、7-2をまとめて検討する。
(ア)まず、相違点7-1、7-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a 甲1発明における第1金属膜825上に形成される「マスク材料層250(850)」の「材料」は、「窒化シリコン、酸化シリコン、窒素酸化シリコン、窒化シリコン炭素、多結晶シリコン又はアルミニウムであってもよ」いものであり、「絶縁体」に限られるものではない。
b(a)甲1発明は、貫通孔210(810)を形成する際に、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」るものであり、その後、基板100(700)内に第1開口部110を形成し、さらに、犠牲層150(750)内に開口部180を形成するものである。
(b)上記(a)のとおり、甲1発明は、基板100(700)内に第1開口部110が形成されていない状態で、貫通孔210(810)を形成するものであるから、(本件発明7のように、)基板100(700)内に形成された第1開口部110を介して、貫通孔210(810)を形成するものではなく、また、基板100(700)内に形成された第1開口部110を介して、第1金属膜825(本件発明7における「第1の導電性マスク層」に相当する。)を通るトレンチ(溝)を形成するものではない。
(c)また、本件発明7における第1のトレンチと第2のトレンチの「交点」について、トレンチ(溝)どうしの「交点」である以上、第1のトレンチと第2のトレンチは互いに所定の角度で交差しているものと認められる。
これに対して、甲1発明は、上記(a)のとおり、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を順に除去して、貫通孔210(810)を形成するものであるから、(本件発明7のように、)第2金属膜835(本件発明7における「第2の導電性マスク層」に相当する。)を通るトレンチと第1金属膜825を通るトレンチが互いに所定の角度で交差して交点を形成するものではなく、また、その交点が貫通孔を形成するものでもない。
c 以上によれば、相違点7-1、7-2は、いずれも、実質的な相違点である。
したがって、本件発明7は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点7-2の容易想到性について検討する。
a 甲1には、貫通孔210(810)を形成する際に、基板100(700)内に形成された第1開口部110を介して、第1金属膜825を通るトレンチを形成すること、また、第2金属膜835を通るトレンチと第1金属膜825を通るトレンチの交点が貫通孔を形成することについては、何ら記載されていないから、甲1発明において、そのようにする動機付けがあるとはいえない。また、このことは、甲2~6の記載を考慮しても変わるものではない。
b この点、申立人は、甲3には、開孔形状が角部を含む微細な貫通孔を精度良く形成することを目的として、蒸着マスクの金属板の第1面に形成した第1の溝と、第2面に形成した第2の溝とが直交するように形成し、第1の溝と第2の溝が交差する部分において貫通孔を形成することが記載されているから、蒸着用マスクプレートにおける貫通孔の精度を向上させることを意図した甲1発明において、甲3に記載された手段を適用することは、当業者であれば、容易に想到できることであると主張する(申立書52~56頁)。
しかしながら、上記(ア)b(a)のとおり、甲1発明は、基板100(700)内に第1開口部110が形成されていない状態で、貫通孔210(810)を形成するものであるから、基板100(700)側から第1金属膜825を通るトレンチ(溝)を形成することができないため、甲1発明において、甲3に記載された事項を適用することが、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(なお、これを実現するには、甲1発明において、まず、基板100(700)内に第1開口部110を形成し、さらに、犠牲層150(750)内に開口部180を形成し、その後、貫通孔210(810)を形成することとし、その上で、さらに、貫通孔210(810)を形成する際に、甲3に記載された手段を適用することになるが、このようなことは、いわゆる「容易の容易」であって、当業者が容易に想到することができたとはいえない。)
よって、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、甲1発明において、貫通孔210(810)を形成する際に、基板100(700)内に形成された第1開口部110を介して、第1金属膜825を通るトレンチを形成すること、また、第2金属膜835を通るトレンチと第1金属膜825を通るトレンチの交点が貫通孔を形成することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点7-1について検討するまでもなく、本件発明7は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明7は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(9)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲1発明により製造されたマスクプレート(以下、「甲1発明2」という。)とを対比する。
(ア)上記(2)ア(ア)と同様に、甲1発明2における「マスクプレート」は、本件発明9における「堆積マスク」に相当する。
(イ)上記(2)ア(イ)と同様に、甲1発明2における「基板100(700)」と、本件発明9における「環状基板」とは、いずれも、「基板」である限りで共通する。
(ウ)上記(8)ア(ウ)と同様に、甲1発明2における「第1金属膜825」、「第2金属膜835」は、それぞれ、本件発明9における「第1の導電性マスク層」、「第2の導電性マスク層」に相当する。
また、甲1発明2における第1金属膜825上に形成される「マスク材料層250(850)」と、本件発明9における第1の導電性マスク層上の「絶縁体マスク層」とは、いずれも、「マスク層」である限りで共通する。
(エ)上記(イ)、(ウ)を踏まえると、甲1発明2において、「基板100(700)」の「第1表面120上に」犠牲層150(750)を介して形成した「第1金属膜825」、「前記第1金属膜825上に」「形成し」た「マスク材料層250(850)」、「前記マスク材料層250(850)上に」「形成」した「第2金属膜835」と、本件発明9における「環状基板上の」「マスク層」とは、いずれも、「基板上の」「マスク層」である限りで共通する。
そして、甲1発明2における「基板100(700)」の「第1表面120上に」犠牲層150(750)を介して形成した「第1金属膜825」は、本件発明9における「環状基板上の第1の導電性マスク層」とは、いずれも、「基板上の第1の導電性マスク層」である限りで共通する。
また、甲1発明2における「前記第1金属膜825上に」「形成し」た「マスク材料層250(850)」と、本件発明9における「前記第1の導電性マスク層上の絶縁体マスク層」とは、いずれも、「前記第1の導電性マスク層上の」「マスク層」である限りで共通する。
また、甲1発明2における「前記マスク材料層250(850)上に」「形成」した「第2金属膜835」と、本件発明9における「前記絶縁体マスク層上の第2の導電性マスク層」とは、いずれも、「前記」「マスク層上の第2の導電性マスク層」である限りで共通する。
(オ)上記(2)ア(オ)と同様に、甲1発明2において、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」て、最終的に形成された「貫通孔210(810)」は、本件発明9における「マスク層を通」る「マスク開口部」に相当する。
(カ)上記(2)ア(カ)と同様に、甲1発明2において、「前記基板100(700)の第2表面130をエッチングして、」「前記基板100(700)内に形成し」た、「前記基板100(700)を貫通して前記パターン領域Iを露出する」、「前記パターン領域Iに対応する」「複数の第1開口部110」と、本件発明9における「環状基板を通る基板開口部」とは、上記(イ)を踏まえると、いずれも、「基板を通る基板開口部」である限りで共通する。
(キ)甲1発明2において、「貫通孔210(810)」が「前記パターン領域Iに」「形成され」ていること、「前記基板100(700)内に形成し」た「第1開口部110」が「前記パターン領域Iに対応する」ことは、上記(オ)、(カ)を踏まえると、本件発明9において、「マスク開口部」が「基板開口部内に位置合わせされている」ことに相当する。
(ク)上記(2)ア(キ)と同様に、甲1発明2において、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成されたマスクパターン層200(800)が、基板100(700)を貫通する複数の第1開口部110を横切って延在した状態にあることは、本件発明9において、「マスク層」が「前記基板開口部を横切って延在している」ことに相当する。
(ケ)上記(ア)を踏まえると、甲1発明における「マスクプレート」と、本件発明9における「堆積マスクを含む半導体処理構造体」とは、いずれも、「堆積マスクを含む」「構造体」である限りで共通する。
(コ)以上によれば、本件発明9と甲1発明2とは、
「堆積マスクを含む構造体であって、
前記堆積マスクが、
基板であって、前記基板を通る基板開口部を有する前記基板と;
前記基板上の、前記基板開口部を横切って延在しているマスク層であって、前記マスク層を通り、前記基板開口部内に位置合わせされているマスク開口部を有する前記マスク層と
を含み、
前記マスク層が:
前記基板上の第1の導電性マスク層と;
前記第1の導電性マスク層上のマスク層と;
前記マスク層上の第2の導電性マスク層と
を含む、構造体。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点9-1
堆積マスクを含む構造体が、本件発明9では、「堆積マスクを含む半導体処理構造体」であるのに対して、甲1発明2では、「マスクプレート」である点。
・相違点9-2
基板が、本件発明9では、「環状」基板であるのに対して、甲1発明2では、「環状」基板であるかどうか不明である点。
・相違点9-3
マスク層を通るマスク開口部について、本件発明9では、第1の導電性マスク層に「第1のトレンチが」「通って」おり、第2の導電性マスク層に「第2のトレンチが」「通って」おり、「少なくとも前記第1のトレンチ、前記第2のトレンチ、又はそれらの組み合わせが、前記絶縁体マスク層を通り、前記第1のトレンチと第2のトレンチの交点は、前記マスク開口部を形成して」いるのに対して、甲1発明2では、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」たものである点。
・相違点9-4
第1の導電性マスク層上のマスク層の材質が、本件発明9では、「絶縁体」であるのに対して、甲1発明2では、「窒化シリコン、酸化シリコン、窒素酸化シリコン、窒化シリコン炭素、多結晶シリコン又はアルミニウムであってもよ」いものである点。
・相違点9-5
本件発明9では、「前記第1の導電性マスク層が、半導体処理構造体の横方向に外側の部分に接触領域を含む」のに対して、甲1発明2では、第1金属膜825が上記のような「接触領域を含む」かどうか不明である点。
イ 相違点9-3の検討
事案に鑑み、相違点9-3について検討する。
(ア)まず、相違点9-3が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
a(a)甲1発明2は、貫通孔210(810)を形成する際に、「前記第2金属膜835をエッチングして」「マスク材料層250(850)を露出させ」、「前記マスク材料層250(850)は」「パターニングされ」、「前記マスク材料層250(850)を貫通する少なくとも1つの貫通孔210(810)が形成され」、「前記貫通孔210(810)の底部の第1金属膜825をエッチングし、前記犠牲層150(750)を露出させ」るものであり、その後、基板100(700)内に第1開口部110を形成し、さらに、犠牲層150(750)内に開口部180を形成するものである。
(b)本件発明9における第1のトレンチと第2のトレンチの「交点」について、トレンチ(溝)どうしの「交点」である以上、第1のトレンチと第2のトレンチは互いに所定の角度で交差しているものと認められる。
これに対して、甲1発明2は、上記(a)のとおり、第2金属膜835、マスク材料層250(850)、第1金属膜825を順に除去して、貫通孔210(810)を形成するものであるから、(本件発明9のように、)第2金属膜835(本件発明9における「第2の導電性マスク層」に相当する。)を通るトレンチと第1金属膜825を通るトレンチが互いに所定の角度で交差して交点を形成するものではなく、また、その交点が貫通孔を形成するものでもない。
b 以上によれば、相違点9-3は実質的な相違点である。
したがって、相違点9-1、9-2、9-4、9-5について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)次に、相違点9-3の容易想到性について検討する。
a 甲1には、貫通孔210(810)を形成する際に、第2金属膜835を通るトレンチと第1金属膜825を通るトレンチの交点が貫通孔を形成することについては、何ら記載されていないから、甲1発明2において、そのようにする動機付けがあるとはいえない。また、このことは、甲2~6の記載を考慮しても変わるものではない。
b この点、申立人は、上記(8)イ(イ)bと同様に主張するが(申立書61~62頁)、上記(8)イ(イ)bで述べたのと同様の理由により、申立人の主張は採用できない。
c 以上によれば、甲1発明2において、貫通孔210(810)を形成する際に、第2金属膜835を通るトレンチと第1金属膜825を通るトレンチの交点が貫通孔を形成するようにすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、相違点9-1、9-2、9-4、9-5について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明9は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(10)本件発明10~13について
本件発明10~13は、本件発明9を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明9の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(9)で述べたとおり、本件発明9が、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明10~13についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(11)まとめ
以上のとおり、本件発明6は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1~13は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1(新規性)、取消理由4(進歩性)、申立理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700036