特許異議申立
2025-700316
直接還元鉄の製造設備及び製造方法
- 審判番号
- 2025-700316
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-539817
- 登録番号
- 7555125
- 請求日
- 2025年03月18日
- 審決日
- 2025年09月12日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】合同会社KESS
- 【権利者代理人】原 晶子
- 【異議申立人】吉田 敦子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 佐藤 陽一
- 審判官 石川 雄太郎
- 分類
- P1652.121-Y (C21B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
結論
結 論
特許第7555125号の請求項1~4、8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7555125号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願(特願2021-539817号。以下「本願」という。)は、令和 2年 4月23日を国際出願日とする出願であって、令和 6年 9月12日にその特許権の設定登録がされ、同年 9月 24日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 7年 3月18日に、その請求項1~4、8に係る特許について、特許異議申立人である吉田 敦子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和 7年 5月20日付け手続補正指令書(方式)が通知され、同年 6月13日に手続補正書(方式)が提出され、同年 7月4日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1~4、8に係る発明は次のとおりのものである。なお、以下において、本願の請求項1~4、8に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明4」、「本件特許発明8」といい、総称して、「本件特許発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。
「 【請求項1】
竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造設備であって、
前記竪型還元炉から排出されたガスから二酸化炭素の一部又は全部を除去するCO2リムーバーと、
前記CO2リムーバーで分離されて回収された二酸化炭素を主成分とするガスに水素含有ガスを混合してメタンを生成させるメタン生成装置と、
前記竪型還元炉で製造された還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループと、を有し、
生成されたメタンは、前記直接還元鉄の製造設備で利用され、
前記竪型還元炉は、還元ゾーンとクーリングゾーンとを有し、
前記クーリングガスループは、クーリングガスの還元炉入口温度を下げることができ、結果として前記竪型還元炉へ導入するクーリングガスの流量を減じることができ、クーリングガス中の炭化水素含有ガスの濃度を調整でき、クーリングガスコンプレッサーの出側に設けられるクーリングガスアフタークーラーを有することを特徴とする直接還元鉄の製造設備。
【請求項2】
前記還元ゾーンと前記クーリングゾーンとは、互いに独立した炉として構成され、還元鉄を前記クーリングゾーンへ降下させるシュートと、クーリングガスを前記還元ゾーンへ通過させる還元ゾーン用ガスダクトとで繋がれていることを特徴とする請求項1に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項3】
前記クーリングゾーンに導入される少なくとも一部のクーリングガスの前記竪型還元炉の入口における温度が35℃以下で、且つ、クーリングガスの還元炉入口の炭化水素濃度が50%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の直接還元鉄の製造設備。
【請求項4】
還元ガスを製造するための改質器を備え、
前記竪型還元炉の前記クーリングゾーンから抜き出されたクーリングガスは、直接接触型水冷式クーリングガス冷却器を介することなく前記竪型還元炉に導入する還元ガス及び前記改質器の上流を流れるガスの少なくとも一方に混合されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の直接還元鉄の製造設備。」
「 【請求項8】
直接還元鉄の製造設備において還元ゾーンとクーリングゾーンとを有する竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造方法であって、
前記竪型還元炉から排出されたガスから二酸化炭素の一部又は全部を除去する工程と、
分離されて回収された二酸化炭素を主成分とするガスに水素含有ガスを混合してメタンを生成させる工程と、を有し、
生成されたメタンは、前記直接還元鉄の製造設備で利用され、
前記直接還元鉄の製造設備は、前記竪型還元炉で製造された還元鉄を冷却するクーリングガスループを有し、
前記クーリングガスループは、クーリングガスコンプレッサーの出側に設けられるクーリングガスアフタークーラーにより、クーリングガスの還元炉入口温度を下げることができ、結果として前記竪型還元炉へ導入するクーリングガスの流量を減じ、クーリングガス中の炭化水素含有ガスの濃度を調整することを特徴とする直接還元鉄の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第5号証(以下「甲1」~「甲5」という。)を提出し(下記2参照。)、以下の理由により、本件特許の請求項1~4、8に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(進歩性)
(1)申立理由1-1
本件特許発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲2、及び甲3に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2
本件特許発明2は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3
本件特許発明3は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4、及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由1-4
本件特許発明4は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4、及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由1-5
本件特許発明8は、甲1に記載された発明、並びに甲2、及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲1:HEINRICH, P, et al., Status report and potentials for development of HYL-III direct reduction technology, Metallurgical Plant and Technology, 1990, Vol. 2, p. 6-19及びその翻訳文
甲2:MUKHOPADHYAY, A, et al., Energy saving and CO2 reduction in ENERGIRON DRI production, Proceedings of the 6th International Congress on the Science and Technology of Ironmaking, 2012, Vol. 1 of 4, p. 302-312及びその翻訳文
甲3:特開2014-5510号公報
甲4:特開昭54-84816号公報
甲5:BECHARA, R, et al., Optimization of the iron ore direct reduction process through multiscale process modeling, Materials, 2018, Vol. 11, No. 7及びその翻訳文(当合議体注:著者名の“E”は“E”にアクサンテギュ)
第4 当合議体の判断
以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3の申立理由によっては、本件特許の請求項1~4、8に係る特許を取り消すことができないと判断する。
1 申立理由1-1(進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲1の第6、8頁、図1~2の記載、特に、図2のProcess scheme of HYL-III process reduction section without CO2 scrubbing(当審訳:CO2除去を行わないHYL-IIIプロセス還元部のプロセススキーム)を総合勘案すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
「HYL-III反応器で、ペレット、またはペレット及び塊鉱石の混合体を還元ガスでDRIに還元するDRIプラントであって、
前記HYL-III反応器の炉頂から排出され、浄化されたガスの約1/3をテールガスとしてプロセスから除去する圧力制御器付のバルブと、
前記HYL-III反応器で還元されたDRIを冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガス回路と、を有し、
前記HYL-III反応器は、還元ゾーンとクーリングゾーンとを有し、
前記クーリングガス回路は、HYL-III反応器から排出されたクーリングガスを40℃程度に冷却し、フィルタでダストを浄化し、コンプレッサで再圧縮し、アフタークーラで40℃に再冷却した後、天然ガスを加えて、HYL-III反応器のクーリングゾーンに再投入するDRIプラント。」(以下「甲1発明1」という。)
(2)本件特許発明1について
ア 甲1発明1との対比・判断
(ア)本件特許発明1と甲1発明1との対比
a 甲1発明1の「HYL-III反応器」は、甲1の図1より竪型であることが看取され、ペレット、またはペレット及び塊鉱石の混合体を還元ガスでDRIに還元するものであるから、本件特許発明1の「竪型還元炉」に相当する。
b 甲1発明1の「ペレット、またはペレット及び塊鉱石の混合体」は、酸化鉄を含むことが技術常識であるから、本件特許発明1の「酸化鉄原料」に相当する。
c 甲1発明1の「DRI」、「DRIプラント」は、本件特許発明1の「直接還元鉄」、「直接還元鉄の製造設備」に相当する。
d 甲1発明1の「HYL-III反応器で、ペレット、またはペレット及び塊鉱石の混合体を還元ガスでDRIに還元するDRIプラント」は、還元反応を目的として、ペレット、またはペレット及び塊鉱石の混合体を還元ガスに接触させていることが技術常識から明らかであり(図1の構造からも看取される。)、また、還元することで、DRIを製造していることも明らかであるから、上記a~cを踏まえると、本件特許発明1の「竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造設備」に相当する。
e 甲1発明1の「前記HYL-III反応器の炉頂から排出され、浄化されたガスの約1/3をテールガスとしてプロセスから除去する圧力制御器付のバルブ」と、本件特許発明1の「前記竪型還元炉から排出されたガスから二酸化炭素の一部又は全部を除去するCO2リムーバー」とは、上記aを踏まえると、竪型還元炉から排出されたガスの一部を除去する手段という点で共通する。
f 甲1発明1の「前記HYL-III反応器で還元されたDRIを冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガス回路」は、上記a及びcを踏まえると、本件特許発明1の「前記竪型還元炉で製造された還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループ」に相当する。
g 甲1発明1の「クーリングガスを40℃程度に冷却し、フィルタでダストを浄化し、コンプレッサで再圧縮し、アフタークーラで40℃に再冷却した後、天然ガスを加えて、HYL-III反応器のクーリングゾーンに再投入する」ことは、甲1の第8頁右欄第16~24行目より、500℃~550℃のクーリングゾーンに対して、40℃のクーリングガスを、天然ガスにより冷却効果を向上させた状態で再投入することで、クーリングガスのHYL-III反応器入口温度が下がることは自明であるから、本件特許発明1の「クーリングガスの還元炉入口温度を下げること」に相当する。
h 甲1発明1の「コンプレッサ」、「アフタークーラ」は、それぞれ本件特許発明1の「クーリングガスコンプレッサー」、「クーリングガスアフタークーラー」に相当し、甲1の図2から、「コンプレッサ」の出る側に、アフタークーラを設けていることが看取されるので、甲1発明1の当該構成は、本件特許発明1の「クーリングガスコンプレッサーの出側に設けられるクーリングガスアフタークーラーを有する」ことに相当する。
i 甲1発明1の「クーリングガスを」「天然ガスを加え」ることは、甲1の第8頁右欄第21~24行目を参酌すると、DRIの炭素含有量を制御するためのものでもあり、その目的を達成するために、目標の炭素含有量に合わせて、天然ガスの量を調整していることは自明であるから、本件特許発明1の「クーリングガス中の炭化水素含有ガスの濃度を調整でき」ることに相当する。
j そうすると、本件特許発明1と甲1発明1とは、
「竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造設備であって、
前記竪型還元炉から排出されたガスの一部を除去する手段と、
前記竪型還元炉で製造された還元鉄を冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガスループと、を有し、
前記竪型還元炉は、還元ゾーンとクーリングゾーンとを有し、
前記クーリングガスループは、クーリングガスの還元炉入口温度を下げることができ、クーリングガス中の炭化水素含有ガスの濃度を調整でき、クーリングガスコンプレッサーの出側に設けられるクーリングガスアフタークーラーを有する直接還元鉄の製造設備。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-1>
竪型還元炉から排出されたガスの一部を除去する手段が、本件特許発明1では、「前記竪型還元炉から排出されたガスから二酸化炭素の一部又は全部を除去するCO2リムーバー」であるのに対し、甲1発明1では、「前記HYL-III反応器の炉頂から排出され、浄化されたガスの約1/3をテールガスとしてプロセスから除去する圧力制御器付のバルブ」である点。
<相違点1-2>
本件特許発明1では、「前記CO2リムーバーで分離されて回収された二酸化炭素を主成分とするガスに水素含有ガスを混合してメタンを生成させるメタン生成装置」を有し、「生成されたメタンは、前記直接還元鉄の製造設備で利用され」ているのに対して、甲1発明1では、そのような特定事項を備えていない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1では、「前記クーリングガスループは、クーリングガスの還元炉入口温度を下げることができ、結果として前記竪型還元炉へ導入するクーリングガスの流量を減じることができ」るのに対して、甲1発明1では、クーリングガスのHYL-III反応器入口温度が下がることにより、結果としてクーリングガスの流量を減じることができるか否かが不明である点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず上記相違点1-1及び1-2についてまとめて検討を行う。
a 甲1には、浄化されたガスの約1/3は、還元中に発生した二酸化炭素と窒素をプロセスから除去するために、残留ガスとして還元ガス回路から排出すること、及び、排出された残留ガスには、二酸化炭素、水素、一酸化炭素が含まれること、が記載されている。
しかしながら、甲1には、排出された残留ガスから二酸化炭素を除去し(相違点1-1)、その除去された二酸化炭素に水素含有ガスを混合してメタンを生成し、生成したメタンをHYL-III反応器で利用すること(相違点1-2)については、何ら記載されていないから、上記相違点1-1及び1-2は、実質的な相違点である。
b 次に上記相違点1-1及び1-2の容易想到性について検討する。
(a)甲1の第14頁左欄下から第5行目~右欄下から第1行目には、HYL-IIIプロセスにCO2除去器を導入することでプラントの構成サイズを小さくし、エネルギーと水の消費率を低くするというメリットが記載されてはいるものの、甲1には、残留ガスから二酸化炭素を除去し、その除去された二酸化炭素に水素含有ガスを混合してメタンを生成し、生成したメタンをHYL-III反応器で利用することについては、何ら記載されていないから、甲1の記載からは、甲1発明1において、上記相違点1-1及び1-2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。
(b)また、甲2の第305頁第12行目~下から第3行目、第310頁第6行目~下から10行目、図3、5には、甲1発明1と同じDRIの製造プラントによるプロセスである、外部改質器付のエナジロン、及び、エナジロンZRプロセスにおいて、トップガスからCO2を化学的に除去することが記載されているだけでなく、甲2の第302頁の要約や第311頁の表6のように、CO2を副生成品として、食品・飲料などの食品加工産業へ商業販売することが記載されている。
しかしながら、当該記載、及び、甲2のその他の記載を参酌しても、エナジロンZRプロセスにおいて、トップガスから除去したCO2を同一のプロセス内で有効活用することについての課題や効果の記載は見当たらないから、甲2の記載を参酌しても、甲1発明1において、竪型還元炉の炉頂から排出されたガスからCO2を化学的に除去し、除去したCO2を同一のプロセス内で有効活用することについて、当業者が当然追及するべき課題であるとはいえない。
また、甲2には、エナジロンZRプロセスにおいて、トップガスから除去したCO2に水素含有ガスを混合してメタンを生成し、生成したメタンをエナジロンZRプロセスで利用することについては、何ら記載されていない。
したがって、甲2の記載からは、甲1発明1において、上記相違点1-1及び1-2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。
(c)さらに、甲3の段落【0034】、図3には、高炉において、熱風炉の排ガスからCO2を分離回収し、該CO2に含水素物質を添加してCH4とCOに改質し、改質して得られたCH4とCOを還元ガスとして高炉に吹き込む高炉操業方法が記載されている。
しかしながら、甲3においては、CO2を分離回収する対象の排ガスは、熱風炉の排ガスであって、高炉の排ガスではなく、高炉の排ガスから分離回収したCO2を改質して得られたガスを高炉に吹き込むものではない。また、甲1は直接還元鉄の製造装置の分野であって熱風炉が存在せず、甲3は高炉の分野であって熱風炉が存在することから、技術分野が異なっており、具体的な前提となる構成も大きく異なっている。
したがって、甲3の記載からは、甲1発明1において、上記相違点1-1及び1-2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。
(d)これらの点に関し、申立人は、特許異議申立書の第37頁第18行~第38頁第26行において、甲2には、DRIの製造設備において、CO2排出量の削減を目的として、CO2リムーバーで分離されて回収された二酸化炭素を主成分とするガスの用途を拡大することが示唆されており、また、甲3にも、高炉プロセスにおいて、CO2発生量の削減及び分離したCO2の利用は課題として存在することから、甲1発明においても、CO2発生量の削減及び分離したCO2の利用は自明の課題であって、甲3に記載されたメタン生成装置を、甲1に記載された、DRIの製造設備のCO2リムーバーで分離されて回収された二酸化炭素を主成分とするガスに適用し、生成されたメタンを高炉の代わりにDRIの製造設備で利用することは当業者が容易に想到し得る旨主張している。
(e)しかしながら、甲2や甲3の記載からは、甲1発明1において、上記相違点1-1及び1-2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえないことは、上記のとおりであるから、上記(d)の主張は採用しない。
(f)また、申立人は、特許異議申立書の第37頁第31行~第38頁第4行において、甲2には、DRIの製造設備において、天然ガスの代わりに、高炉からのガスなどを使用することが示唆されている旨主張している。
(g)しかしながら、別の高炉からのガスを使用しても、甲1発明1において、上記相違点1-1及び1-2に係る特定事項を備えることとはならないから、上記(f)主張は採用しない。
(h)したがって、甲1発明1において、上記相違点1-1及び1-2に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、上記相違点1-3、及び本件特許発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲2、及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由1-1についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1-1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1-2(進歩性)について
(1)本件特許発明2と甲1発明1との対比・判断
ア 甲1発明1との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明2と甲1発明1とを対比すると、上記1(2)ア(ア)と同様に、本件特許発明2と甲1発明1とは、少なくとも、相違点1-1~1-3と同様の相違点で相違する。
(イ)判断
上記相違点1-1~1-3と同様の相違点について検討すると、少なくとも、上記相違点1-1及び1-2については、上記1(2)ア(イ)で検討したとおりであるから、さらに甲4の記載を考慮したとしても、同様の理由により、本件特許発明2は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(2)申立理由1-2についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1-2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由1-3(進歩性)について
(1)本件特許発明3と甲1発明1との対比・判断
ア 甲1発明1との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明3と甲1発明1とを対比すると、上記1(2)ア(ア)と同様に、本件特許発明3と甲1発明1とは、少なくとも、相違点1-1~1-3と同様の相違点で相違する。
(イ)判断
上記相違点1-1~1-3と同様の相違点について検討すると、少なくとも、上記相違点1-1及び1-2については、上記1(2)ア(イ)で検討したとおりであるから、さらに甲4及び甲5の記載を考慮したとしても、同様の理由により、本件特許発明3は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4、及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(2)申立理由1-3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1-3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由1-4(進歩性)について
(1)本件特許発明4と甲1発明1との対比・判断
ア 甲1発明1との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明4と甲1発明1とを対比すると、上記1(2)ア(ア)と同様に、本件特許発明4と甲1発明1とは、少なくとも、相違点1-1~1-3と同様の相違点で相違する。
(イ)判断
上記相違点1-1~1-3と同様の相違点について検討すると、少なくとも、上記相違点1-1及び1-2については、上記1(2)ア(イ)で検討したとおりであるから、さらに甲4及び甲5の記載を考慮したとしても、同様の理由により、本件特許発明4は、甲1に記載された発明並びに甲2、甲3、甲4、及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(2)申立理由1-4についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1-4によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由1-5(進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
本願の出願前に公知となった甲1の第6、8頁、図1~2の記載、特に、図2のProcess scheme of HYL-III process reduction section without CO2 scrubbing(当審訳:CO2除去を行わないHYL-IIIプロセス還元部のプロセススキーム)を総合勘案すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
「DRIプラントにおいて還元ゾーンとクーリングゾーンとを有するHYL-III反応器で、ペレット、またはペレット及び塊鉱石の混合体を還元ガスでDRIに還元するDRIの還元方法であって、
前記HYL-III反応器の炉頂から排出され、浄化されたガスの約1/3をテールガスとしてプロセスから除去する工程を有し、
前記DRIプラントは、前記HYL-III反応器で還元されたDRIを冷却するクーリングガスを循環させるクーリングガス回路を有し、
前記クーリングガス回路は、HYL-III反応器から排出されたクーリングガスを40℃程度に冷却し、フィルタでダストを浄化し、コンプレッサで再圧縮し、アフタークーラで40℃に再冷却した後、天然ガスを加えて、HYL-III反応器のクーリングゾーンに再投入するDRIの還元方法。」(以下「甲1発明2」という。)
(2)本件特許発明8について
ア 甲1発明2との対比・判断
(ア)本件特許発明8と甲1発明2との対比
本件特許発明1と甲1発明1との対比と同様に、本件特許発明8と甲1発明2とは、
「直接還元鉄の製造設備において還元ゾーンとクーリングゾーンとを有する竪型還元炉で酸化鉄原料と還元ガスとを接触させて直接還元鉄を製造する直接還元鉄の製造方法であって、
竪型還元炉から排出されたガスの一部を除去する工程
を有し、
前記直接還元鉄の製造設備は、前記竪型還元炉で製造された還元鉄を冷却するクーリングガスループを有し、
前記クーリングガスループは、クーリングガスコンプレッサーの出側に設けられるクーリングガスアフタークーラーにより、クーリングガスの還元炉入口温度を下げることができ、クーリングガス中の炭化水素含有ガスの濃度を調整する直接還元鉄の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-1>
竪型還元炉から排出されたガスの一部を除去する工程が、本件特許発明8では、「前記竪型還元炉から排出されたガスから二酸化炭素の一部又は全部を除去する工程」であるのに対し、甲1発明2では、「前記HYL-III反応器の炉頂から排出され、浄化されたガスの約1/3をテールガスとしてプロセスから除去する工程」である点。
<相違点2-2>
本件特許発明8では、「分離されて回収された二酸化炭素を主成分とするガスに水素含有ガスを混合してメタンを生成させる工程」を有し、「生成されたメタンは、前記直接還元鉄の製造設備で利用され」ているのに対して、甲1発明2では、そのような特定事項を備えていない点。
<相違点2-3>
本件特許発明8では、「前記クーリングガスループは、クーリングガスコンプレッサーの出側に設けられるクーリングガスアフタークーラーにより、クーリングガスの還元炉入口温度を下げることができ、結果として前記竪型還元炉へ導入するクーリングガスの流量を減じ」ているのに対して、甲1発明2では、クーリングガスのHYL-III反応器入口温度が下がることにより、結果としてクーリングガスの流量を減じるか否かが不明である点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず上記相違点2-1及び2-2についてまとめて検討を行う。
上記相違点2-1及び2-2については、上記1(2)ア(イ)で検討を行った相違点1-1及び1-2とそれぞれ同様の相違点であるところ、相違点1-1及び1-2の判断については、上記1(2)ア(イ)で述べたとおりであり、上記相違点2-1及び2-2についても同様の判断であるから、本件特許発明8は、甲1に記載された発明、並びに甲2、及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(3)申立理由1-5についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1-5によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700316