特許異議申立
2025-701048
無方向性電磁鋼板およびその製造方法
- 審判番号
- 2025-701048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-537545
- 登録番号
- 7675190
- 請求日
- 2025年11月06日
- 審決日
- 2026年02月06日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ポスコ カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
- 【異議申立人】前田 洋志
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 陽一
- 審判官 井上 猛
- 審判官 粟野 正明
- 分類
- P1652.537-Y (C22C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7675190号発明「無方向性電磁鋼板およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7675190号の請求項2~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7675190号(請求項の数12。以下、「本件特許」という。)は、2021年(令和3年)12月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2020年12月21日(KR)韓国)を国際出願日とする特許出願(特願2023-537545号)に係るものであって、令和7年4月30日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和7年5月12日である。)。
その後、令和7年11月6日に、本件特許の請求項2~12に係る特許に対して、特許異議申立人である前田洋志(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~2.0%およびCr:0.01~0.15%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たし、
鋼板の表面から鋼板の内部方向に鋼板全体厚さの1/50以下の厚さで形成されたCr濃化層および基材を含み、
前記Cr濃化層内の平均結晶粒径が基材内の平均結晶粒径の50~95%であり、
前記Cr濃化層内にはCrを基材に比べて多量含み、前記Cr濃化層内にはCrを0.15重量%を超えて含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[式1]
[Cr]>([Al]+[Mn])/[Si]/10
(式1において、[Cr]、[Al]、[Mn]および[Si]はそれぞれCr、Al、MnおよびSiの含有量(重量%)を示す。)
【請求項2】
P:0.005~0.08重量%、Sn:0.01~0.08重量%およびSb:0.005~0.05重量%のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
C:0.0040重量%以下、S:0.0040重量%以下、N:0.0040重量%以下、およびTi:0.0040重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
Mo:0.03重量%以下、B:0.0050重量%以下、V:0.0050重量%以下、Ca:0.0050重量%以下、Nb:0.0050重量%以下、およびMg:0.0050重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
鋼板の表面上に位置する絶縁層をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
200Hz~800Hz範囲での透磁率の周波数依存性(α)が-5以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
前記無方向性電磁鋼板の比抵抗は45μΩ・cm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~2.0%およびCr:0.01~0.15%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記式1を満たすスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含み、
前記冷延板を製造する段階での圧延最大速度が10m/s以上であり、鋼板表面温度を150℃以上で3分以上維持し、
前記最終焼鈍する段階は均熱温度後から700℃まで冷却速度10~40℃/sで冷却することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
[Cr]>([Al]+[Mn])/[Si]/10
(式1において、[Cr]、[Al]、[Mn]および[Si]はそれぞれCr、Al、MnおよびSiの含有量(重量%)を示す。)
【請求項9】
前記熱延板を製造する段階の前にスラブを1100~1250℃に加熱する段階をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記熱延板を製造する段階の後、850~1150℃で熱延板焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記冷延板を製造する段階での圧下率は70~95%であることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記最終焼鈍する段階では800~1070℃で均熱することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
本件特許の請求項2~12に係る特許は、下記1のとおり、特許法113条4号に該当する(証拠方法は下記2を参照。以下、甲第1号証等を単に「甲1」等という。)。
1 申立理由1(サポート要件)
本件発明2~12については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項2~12に係る特許は、同法113条4号に該当する。
2 証拠方法
・甲1 本件特許に係る出願の審査段階における令和5年8月21日提出の手続補正書
・甲2 本件特許に係る出願の審査段階における令和6年9月20日付けの拒絶理由通知書
・甲3 本件特許に係る出願の審査段階における令和7年1月6日提出の手続補正書
・甲4 本件特許に係る出願の審査段階における令和7年1月6日提出の意見書
・甲5 国際公開第2018/131712号
・甲6 特開2018-178196号公報
・甲7 特願2017-80251号の審査段階における令和2年10月28日付けの拒絶理由通知書
・甲8 特願2017-80251号の審査段階における令和2年12月25日提出の手続補正書
・甲9 特開2022-74677号公報
・甲10 特願2020-184924号の審査段階における令和6年7月17日付けの拒絶理由通知書
・甲11 特願2020-184924号の審査段階における令和6年8月23日提出の手続補正書
第4 当審における判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項2~12に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(サポート要件)
(1)請求項2~7について
ア 本件明細書の記載(【0002】~【0004】、【0025】)によれば、本件発明1~7が解決しようとする課題は、「周波数に関わらず磁性に優れる(透磁率の周波数依存性が小さい)無方向性電磁鋼板を提供すること」であると認められる。
イ 本件明細書には、上記アの課題に関し、以下の記載がある。なお、下線は強調のために付与した。
「通常、電磁鋼板は製造過程でSi、Al、Mnのような比抵抗元素を多量添加し、結晶粒径を減少させて渦電流損失を低減する。一方、渦電流は周波数が上昇することにより鋼板の表面層のみを通過するので、表面層の比抵抗元素を高めたり、表面層の結晶粒径を小さく制御したりするすると、透磁率の周波数依存性を低下させて高周波鉄損を改善することができる。しかし、通常の製造法では厚さ方向に均一な鋼板が得られるので、透磁率の周波数依存性が必然的に大きくなり、CVDなどを用いて比抵抗元素を表面に拡散させる方法はコスト上昇が過度に大きいため商業的に用いにくい限界がある。」(【0003】)
「本発明の無方向性電磁鋼板によれば、鋼板に適正量のCrを添加し、Cr濃化層を形成することにより、透磁率の周波数依存性を顕著に減らすことができる。」(【0008】)
「本発明の無方向性鋼板にCr元素を適正量添加し、冷間圧延および最終焼鈍工程条件を調節して、鋼板内部にCr濃化層を形成することにより、周波数に関わらず磁性を改善する。」(【0011】)
ウ 上記イの記載を含む本件明細書及び図面の記載(【0003】、【0005】~【0008】、【0011】~【0034】、表1~3、図1)によれば、上記アの課題は、無方向性電磁鋼板において、成分を「重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~2.0%およびCr:0.01~0.15%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる」ものとするか、あるいは、さらに、以下の(ア)~(ウ)のいずれか一つ以上を満たすものとし、
(ア)「P:0.005~0.08重量%、Sn:0.01~0.08重量%およびSb:0.005~0.05重量%のうちの1種以上をさらに含む」、
(イ)「C:0.0040重量%以下、S:0.0040重量%以下、N:0.0040重量%以下、およびTi:0.0040重量%以下のうちの1種以上をさらに含む」、
(ウ)「Mo:0.03重量%以下、B:0.0050重量%以下、V:0.0050重量%以下、Ca:0.0050重量%以下、Nb:0.0050重量%以下、およびMg:0.0050重量%以下のうちの1種以上をさらに含む」、
「式1[Cr]>([Al]+[Mn])/[Si]/10(式1において、[Cr]、[Al]、[Mn]および[Si]はそれぞれCr、Al、MnおよびSiの含有量(重量%)を示す。)」を満たすものとし、「鋼板の表面から鋼板の内部方向に形成された、Crを基材に比べて多量に含むCr濃化層を含む」ものとする、との各要件を備えることによって、解決できることが理解できる。
エ 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、上記ウの各要件を備えた本件発明1~7は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記アの課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
したがって、本件発明1~7については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
(2)請求項8~12について
ア 本件明細書の記載(【0002】~【0004】、【0025】)によれば、本件発明8~12が解決しようとする課題は、「周波数に関わらず磁性に優れる(透磁率の周波数依存性が小さい)無方向性電磁鋼板の製造方法を提供すること」であると認められる。
イ 本件明細書には、上記アの課題に関し、以下の記載がある。なお、下線は強調のために付与した。
「通常、電磁鋼板は製造過程でSi、Al、Mnのような比抵抗元素を多量添加し、結晶粒径を減少させて渦電流損失を低減する。一方、渦電流は周波数が上昇することにより鋼板の表面層のみを通過するので、表面層の比抵抗元素を高めたり、表面層の結晶粒径を小さく制御したりするすると、透磁率の周波数依存性を低下させて高周波鉄損を改善することができる。しかし、通常の製造法では厚さ方向に均一な鋼板が得られるので、透磁率の周波数依存性が必然的に大きくなり、CVDなどを用いて比抵抗元素を表面に拡散させる方法はコスト上昇が過度に大きいため商業的に用いにくい限界がある。」(【0003】)
「本発明の無方向性電磁鋼板によれば、鋼板に適正量のCrを添加し、Cr濃化層を形成することにより、透磁率の周波数依存性を顕著に減らすことができる。」(【0008】)
「本発明の無方向性鋼板にCr元素を適正量添加し、冷間圧延および最終焼鈍工程条件を調節して、鋼板内部にCr濃化層を形成することにより、周波数に関わらず磁性を改善する。」(【0011】)
「次に、熱延板を酸洗して所定の板の厚さになるように冷間圧延する。熱延板の厚さによって異なるように適用できるが、70~95%の圧下率を適用して最終厚さが0.2~0.65mmになるように冷間圧延する。圧下率を合わせるために1回冷間圧延または中間焼鈍を間に置いた2回以上の冷間圧延を行い得る。
冷延板を製造する段階では圧延最大速度が10m/s以上であり得る。圧延最大速度が小さいと、Crが鋼板表面に拡散する速度が遅くてCr濃化層が適切に形成されない。より具体的には、圧延最大速度は10~20m/sであり得る。
冷延板を製造する段階で鋼板表面温度を150℃以上で3分以上維持する。鋼板温度は熱延板を製造する段階または熱延板焼鈍する段階の残熱であるかまたは外部から熱が供給される方式で上げることができる。鋼板表面温度が150℃以上の時間を適切に確保できないと、Crが鋼板表面に拡散する速度が遅くてCr濃化層が適切に形成されない。より具体的には、鋼板表面温度を150℃以上で3~7分間維持する。」(【0028】)
「最終冷間圧延された冷延板は最終焼鈍を実施する。最終焼鈍する段階では800~1070℃で均熱する。均熱温度が低すぎると再結晶が十分に発生されなく、均熱温度が高すぎると結晶粒径が過度に大きくなって高周波鉄損が劣る。
均熱後冷却時、均熱温度後から700℃まで冷却速度10~40℃/sで冷却する。冷却速度が過度に速いとCrが表面層に濃化される時間が不足し、冷却速度が過度に遅いと結晶粒径が過度に成長して高周波鉄損が劣る。より具体的には15~35℃/sの速度で冷却する。」(【0029】)
ウ 上記イの記載を含む本件明細書及び図面の記載(【0003】、【0005】~【0008】、【0011】~【0034】、表1~3、図1)によれば、上記アの課題は、無方向性電磁鋼板の製造方法において、「少なくとも、重量%で、Si:2.5~3.8%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~2.0%およびCr:0.01~0.15%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、式1[Cr]>([Al]+[Mn])/[Si]/10(式1において、[Cr]、[Al]、[Mn]および[Si]はそれぞれCr、Al、MnおよびSiの含有量(重量%)を示す。)を満たすスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階」、「熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階」、「冷延板を最終焼鈍する段階」の各段階を含むものとし、「冷延板を製造する段階」では、「圧延最大速度」を「10m/s以上」とするとともに、「鋼板表面温度を150℃以上で3分以上維持する」こととし、「最終焼鈍する段階」では、「均熱温度後から700℃まで冷却速度10~40℃/sで冷却する」こととする、との各要件を備えることによって、「鋼板の表面から鋼板の内部方向に、Crを基材に比べて多量に含むCr濃化層が形成される」ことで、解決できることが理解できる。
エ 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、上記ウの各要件を備えた本件発明8~12は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記アの課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
したがって、本件発明8~12については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明2~7に関し、Crを濃化(拡散)させて「Cr濃化層」を形成した場合、(表面に偏析(濃化)することが知られている(甲5))SnやSbも濃化する蓋然性が高く、その際に、どのような相互作用が生じるかは不明であり、少なくとも、本件明細書において実施例によって具体的に裏付けられていないと主張する。
しかしながら、本件発明1については、本件明細書において実施例(【0030】~【0034】、表1~3)によって具体的に裏付けられており、上記(1)ウの各要件(特に、「鋼板の表面から鋼板の内部方向に形成された、Crを基材に比べて多量に含むCr濃化層を含む」との要件)を備えた本件発明1が、上記(1)アの課題を解決できると認識できる範囲のものであることは、上記(1)のとおりである。
そして、請求項2~4で特定される各成分については、本件明細書に、「本発明の無方向性電磁鋼板は、P:0.005~0.08重量%、Sn:0.01~0.08重量%およびSb:0.005~0.05重量%のうちの1種以上をさらに含み得る。」(【0017】)、「前述した元素の他にも炭素(C)、硫黄(S)、窒素(N)、チタン(Ti)などの不可避的に混入される不純物が含まれ得る。」(【0021】)、「本発明の無方向性電磁鋼板は、Mo:0.03重量%以下、B:0.0050重量%以下、V:0.0050重量%以下、Ca:0.0050重量%以下、Nb:0.0050重量%以下、およびMg:0.0050重量%以下のうちの1種以上をさらに含み得る。」(【0020】)と記載されている。
そうすると、仮に、Cr濃化層にSnやSbも濃化したとしても、本件明細書の記載(【0003】、【0016】、【0022】)によれば、比抵抗を高める元素であるCrが濃化した層であるCr濃化層が存在すれば、透磁率の周波数依存性を小さくできることが理解できるから、当業者であれば、上記(1)ウの各要件(特に、「鋼板の表面から鋼板の内部方向に形成された、Crを基材に比べて多量に含むCr濃化層を含む」との要件)を備えた本件発明2~7についても、本件発明1と同様に、上記(1)アの課題を解決できると認識できる範囲のものであると理解できるといえる。
よって、申立人の主張は採用できない。
イ 申立人は、本件明細書の記載(【0004】、【0023】、【0024】)を踏まえると、「周波数に関わらず磁性に優れる」との課題を解決するためには、無方向性電磁鋼板に形成される「Cr濃化層」の形態を、本件発明1のごとく、「前記Cr濃化層内にはCrを基材に比べて多量含み、前記Cr濃化層内にはCrを0.15重量%を超えて含む」ようにすることが必要であるところ、本件発明8~12では、得られる無方向性電磁鋼板に形成される「Cr濃化層」の形態を特定しておらず、また、「Cr濃化層」の形成に影響を及ぼすと解される無方向性電磁鋼板を得る際の一部の製造条件(例えば、熱延板焼鈍や最終焼鈍における保持時間、加熱速度、冷却速度などの条件)も特定していないから、本件発明8~12において特定されていない製造条件によっては、「Cr濃化層」の形態が、「前記Cr濃化層内にはCrを基材に比べて多量含み、前記Cr濃化層内にはCrを0.15重量%を超えて含む」ものとはならず、その場合にも、「周波数に関わらず磁性に優れる」との課題が解決されるかどうか明らかではないと主張する。
しかしながら、本件発明8~12については、上記(2)で述べたとおり、上記(2)アの課題は、無方向性電磁鋼板の製造方法において、上記(2)ウの各要件を備えることによって、「鋼板の表面から鋼板の内部方向に、Crを基材に比べて多量に含むCr濃化層が形成される」ことで、解決できることが理解できる。すなわち、当業者であれば、無方向性電磁鋼板の製造方法において、上記(2)ウの各要件を備えていれば、「鋼板の表面から鋼板の内部方向に、Crを基材に比べて多量に含むCr濃化層が形成される」ことが理解でき、上記(2)アの課題が解決できることが理解できる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明2~12については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
したがって、申立理由1(サポート要件)によっては、本件特許の請求項2~12に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項2~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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