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特許異議申立

2025-701117

高炉の操業方法及びバイオマス炭の粉砕物の製造方法

審判番号
2025-701117
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-145270
登録番号
7688264
請求日
2025年12月03日
審決日
2026年04月17日
公報発行日
2026年05月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本製鉄株式会社
  • 【権利者代理人】水野 勝文
  • 【権利者代理人】井出 真
  • 【権利者代理人】須澤 洋
  • 【異議申立人】吉田 敦子
審判長/審判官
  • 審判長 佐藤 陽一
  • 審判官 粟野 正明
  • 審判官 酒井 英夫
分類
P1651.121-Y (C21B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7688264号発明「高炉の操業方法及びバイオマス炭の粉砕物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7688264号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7688264号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2021-145270号。以下「本願」という。)は、令和 3年 9月 7日の出願であって、令和 7年 5月27日にその特許権の設定登録がされ、同年 6月 4日に特許掲載公報が発行されたものである。 本件は、その後、令和 7年12月 3日に、その請求項1~6(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である吉田 敦子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明を「本件発明1」~「本件発明6」といい、総称して「本件発明」ということがある。また、本願の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書等」という。 「【請求項1】 バイオマスの乾留物であるバイオマス炭を粉砕した粉砕物を羽口から吹き込みながら鉄原料を還元する高炉の操業方法において、 複数種類のバイオマス炭のそれぞれに対して低位発熱量に関するデータを取得するデータ取得ステップを有し、 バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定することを特徴とする高炉の操業方法。 【請求項2】 前記複数種類のバイオマス炭は、炭種が同じで、かつ、乾留条件が互いに異なる複数のバイオマス炭であり、 前記データ取得ステップにおいて低位発熱量に関するデータを取得した前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を特定する特定ステップを有し、 前記特定ステップで特定したバイオマス炭の製造条件にて製造されたバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定することを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業方法。 【請求項3】 前記複数種類のバイオマス炭は、炭種が互いに異なる複数のバイオマス炭であり、 前記データ取得ステップにおいて低位発熱量に関するデータを取得した前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭の炭種を、羽口から吹き込むべきバイオマス炭の炭種として決定することを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業方法。 【請求項4】 前記複数種類のバイオマス炭は、炭種が同じで、かつ、乾留条件が互いに異なる複数のバイオマス炭および、炭種が互いに異なる複数のバイオマス炭であり、 前記データ取得ステップは、 予め炭種が同じで、かつ、乾留条件が互いに異なる複数のバイオマス炭についてそれぞれ低位発熱量に関するデータを取得する第1取得ステップと、 予め炭種が互いに異なる複数のバイオマス炭についてそれぞれ低位発熱量に関するデータを取得する第2取得ステップと、を有し、 前記第1及び第2ステップにおいて低位発熱量を取得したバイオマス炭の中で最も低位発熱量が高いバイオマス炭を適正バイオマス炭と定義したとき、 前記適正バイオマス炭が前記第1取得ステップでデータ取得したバイオマス炭である場合には、このバイオマス炭の製造条件にて製造されたバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定し、 前記適正バイオマス炭が前記第2取得ステップでデータ取得したバイオマス炭である場合には、このバイオマス炭の炭種を、羽口から吹き込むべきバイオマス炭の炭種として決定することを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業方法。 【請求項5】 前記バイオマスは、木質系であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の高炉の操業方法。 【請求項6】 高炉の羽口から吹き込まれるバイオマス炭の粉砕物の製造方法であって、 複数種類のバイオマス炭のそれぞれに対して低位発熱量に関するデータを取得し、 バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として設定された製造条件のうち、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きくなるバイオマス炭の製造条件に基づきバイオマスを製造する製造ステップと、 前記製造ステップで得られたバイオマス炭を粉砕する粉砕ステップと、 を有することを特徴とするバイオマス炭の粉砕物の製造方法。」 なお、請求項6の「製造条件に基づきバイオマスを製造する」なる記載は、「製造条件に基づきバイオマス炭を製造する」の誤記と認める。以下、そのように読み替えて記載する。 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として下記2の甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものであることを主張している。 1 申立理由1(進歩性) (1)申立理由1-1 本件発明1~2は、甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された周知の事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由1-2 本件発明3~6は、甲1に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された周知の事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明3~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)申立理由1-3 本件発明3~6は、甲4に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された周知の事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明3~6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 甲1:国際公開第2011/052796号 甲2:Joel Orre et al.,“Understanding of Blast Furnace Performance with Biomass Introduction”, Minerals 2021年2月, Vol.11, No.157, p.1-14 及び抄訳 甲3:Lena Sundqvist et al.,“Low CO2 ironmaking in the blast furnace”, stahl und eisen, 2017年, Vol.137, Nr.9, p.29-37及び抄訳 甲4:Alexander Babich et al.,“Biomass use in the steel industry: back to the future?” stahl und eisen, 2013年, Vol.133, Nr.5, p.57-67及び抄訳 第4 当合議体の判断 当合議体は、以下に示すとおり、上記第3の申立理由1によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 申立理由1-1、1-2(進歩性)について (1)甲1の記載事項 本願の出願前に公知となった甲1には、「バイオマスの高炉利用方法」(発明の名称)に関し、以下の記載がある(なお、下線は当合議体が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。 ア 「[0001] 本発明は、バイオマスを乾留して製造したバイオマス炭を高炉で利用する際に、微粉炭として高炉の補助還元材として利用する、バイオマスの高炉利用方法に関する。 [背景技術] [0002] 竪型炉として代表的な高炉では、鉄鉱石又はスクラップなどの鉄源と、鉄鉱石還元材および熱源としてコークスとが原料として用いられる。高炉操業に適したコークスを製造するためには、高価で良質の原料炭(coal for coke making)を必要とする。そのため、現在、燃料用石炭を微粉砕した微粉炭を熱源として高炉の羽口から吹き込み、高価なコークス使用量を削減する高炉の操業方法が行なわれている。吹き込む微粉炭の量は、操業条件によっても異なるが、吹き込み量が多いほどコークス使用量を削減でき、コストダウンが可能となる。通常、銑鉄1トン当たり100~200kgの微粉炭を吹き込むと、ほぼ同量のコークス使用量が削減できる。ここで吹き込まれる微粉炭の粒度分布は、一般に粒径74μm以下のものが全微粉炭質量の60%~80%(これを微粉炭の粒度分布が74μm以下、60~80mass%と略して記載する。)範囲のものが工業的に用いられている。」 イ 「[0011] このように従来の技術では、微粉炭を用いる場合と同様にして、バイオマスを高炉吹き込み原料に用いることは困難である。 [0012] したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、バイオマスを微粉炭の代替として高炉吹き込み原料として用いる際に、バイオマスの燃焼性と発熱量を微粉炭と同程度に高めることが可能であり、気流輸送性を高めて従来の微粉炭吹き込み設備が利用できる、バイオマスの利用方法を提供することにある。 [課題を解決するための手段] [0013] このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。 (1)バイオマスを乾留してハードグローブ粉砕性指数(HGI)が45以上を示すバイオマス炭を製造し、 前記バイオマス炭と石炭の混合物を微粉砕し、粉砕物を生成し、 前記粉砕物を高炉の補助還元材として羽口から吹き込む、 バイオマスの高炉利用方法。 ・・・」 ウ 「[0014] 本発明によれば、バイオマスをバイオマス炭とすることで、バイオマス自体の発熱量を高めて高炉吹き込み原料として用いることができる。また、微粉炭を製造する石炭ミル(粉砕機)を用いてバイオマスを粉砕できるようになり、石炭ミルでの効率的な粉砕が可能となる。微粉砕されたバイオマスは、高炉への気流輸送を悪化させずに、微粉炭の吹き込み設備を用いて、高炉において効率的に利用することができる。また、バイオマスを高炉で有効利用することにより、製鉄プロセスにおけるCO2排出量削減に寄与することができる。 ・・・ [0016] 高炉の吹き込み原料(補助還元材)として石炭をローラーミル等で粉砕した微粉炭が利用されている。微粉炭の粒度は、高炉内での燃焼性から決定され、通常、粒径0.1mm以下のものを用いるのが一般的である。また、石炭の粉砕には通常、ローラーミルが使用されている。石炭の粉砕性を評価する指標としては、ハードグローブ法(JIS M 8801)で測定したハードグローブ粉砕性指数(Hardgrove grindability index)(HGI)が知られている。ハードグローブ粉砕性指数は、ハードグローブ試験機を用いて求めた石炭の粉砕性を示す数値である。HGIで表示される。装置の形状、寸法や測定方法はJIS M 8801に規定されている。粒径1mmの石炭50gを前記試験機にかけて粉砕し、微粉(約70μm)の発生程度により判定する。粉砕性100として選んだ標準石炭と比較した相対的な数値を示す。指数が高いほど、粉砕され易い。石炭ではほぼ30~120の値を示す。通常、石炭を粉砕し、高炉吹き込み用の微粉炭を製造する際にも、ハードグローブ法を用いて石炭を評価し、石炭のハードグローブ粉砕性指数(HGI)が45~90程度のものを微粉炭原料として使用している。 [0017] 本発明ではバイオマスを上記の微粉炭の代替として用いるために、バイオマスを乾留してバイオマス炭を製造する。バイオマスの乾留とは、バイオマスの炭化であり、空気(酸素)の供給を遮断または制限して加熱し、気体(木ガスとも呼ばれる)、液体(タール)、固体(炭)の生成物を得る技術を言う。バイオマスをバイオマス炭とすることで、石炭とともに微粉砕することが可能となり、この粉砕物を通常の微粉炭と同様に高炉の補助還元材として羽口から吹き込むことができる。従って、バイオマス炭についても石炭粉砕機にて粉砕する場合には上記の粉砕性の指標に準じたものでなければならず、バイオマス炭のハードグローブ粉砕性指数(HGI)は45以上とする必要がある。HGI45未満では石炭と共に粉砕することが困難である。一方でHGIが90を超えると過粉砕となる怖れがあり、バイオマス炭のHGIは90以下とすることが好ましい。より好ましいHGIは60以上、90以下である。」 エ 「[実施例1] [0028] 図1に示す設備を用いてバイオマスの乾留試験を行った。但し、ロータリーキルンの加熱方法は3分割の電気加熱とした。ロータリーキルンは内径15cm、長さ1.0m、傾斜角1度であり、乾留時間はロータリーキルン回転数を変更し調整した。バイオマスは3~10mmに粉砕分級した杉の廃木材、ヤシの幹とヤシの殻を用いた。使用したバイオマスの組成を表1に示す。 ・・・ [0030] ロータリーキルンへのバイオマス供給速度は1.0kg/hとし、乾留温度と乾留時間を変化させてNo.1~12のバイオマス炭を製造した。得られたバイオマス炭のHGIおよび発熱量を測定した。試験条件および結果を表2に示す。」 [0031] [表2] [図:0001435209000001.jpg] [0032] 表2によれば、450℃以上、30分以上で乾留することにより、HGIで45以上のバイオマス炭を得ることができ、石炭ミルでも容易に粉砕することが可能となった。 [実施例2] [0033] 実施例1で得られたNo.1~7、11のバイオマス炭に、HGIが86の石炭を、バイオマス炭:石炭=10:90の質量割合で混合し、HGIを測定した。混合物のHGIは78~83の範囲となり、混合状態でも石炭ミルでの粉砕に問題ないことが分かった。 [0034] この混合物をローラーミルで粒度分布74μm以下、80mass%以上に粉砕し、微粉炭吹き込み設備を用いて高炉の羽口から吹き込み試験を行った。吹き込み配管に詰まりを生じることもなく、通常の微粉炭吹き込みと同様の操業を行なうことができた。」 (2)甲1に記載された発明 ア 上記(1)エをみるに、甲1には、No.1~12のバイオマス炭を製造し、それぞれのバイオマス炭について低位発熱量及びHGIを測定すること、これらのバイオマス炭のうち、HGIが45以上を示すバイオマス炭であるNo.1~7、11と石炭とを混合した混合物を粉砕すること、粉砕物を高炉の羽口から吹き込んで操業を行うことが記載されている。 イ 上記(1)の摘記事項及びアの事項を総合勘案すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「バイオマスを乾留して製造した複数のバイオマス炭のそれぞれについて、低位発熱量及びハードグローブ粉砕性指数(HGI)を測定し、HGIが45以上を示すバイオマス炭と石炭の混合物を微粉砕して、粉砕物を生成し、前記粉砕物を高炉の補助還元材として羽口から吹き込む高炉の操業方法。」(以下「甲1発明1」という。) ウ また、甲1には、高炉の補助還元材として羽口から吹き込むための粉砕物の生成方法についても記載されているといえる。したがって、甲1には、次の発明も記載されていると認められる。 「高炉の補助還元材として羽口から吹き込むための粉砕物を生成する方法であって、バイオマスを乾留して製造した複数のバイオマス炭のそれぞれについて、低位発熱量及びハードグローブ粉砕性指数(HGI)を測定し、HGIが45以上を示すバイオマス炭と石炭の混合物を微粉砕して、粉砕物を生成する方法」(以下「甲1発明2」という。) (3)甲2の記載事項 本願の出願前に公知となった甲2には、「Understanding of Blast Furnace Performance with Biomass Introduction」(当合議体訳:「バイオマスの導入に伴う高炉性能の理解」)に関し、以下の記載がある。 ア 「The analysis and higher heating value (HV) of PC, TB1, TB2 and CC used in this study are shown in Table 1, where the PC and CC are carbonaceous materials with high C content and HV. The torrefied biomasses TB1 and TB2 have higher content of volatile matter (VM),lower content of total carbon and lower HV compared to the pyrolyzed CC. Comparing TB1 and TB2 it is seen that TB1 with higher torrefaction degree has higher HV, lower VM content and higher total carbon content. All used biomass is produced from Scandinavian wood. The used CC is commercial charcoal normally used for BBQ purposes. The TB is based on sawdust. Moisture content of the TB and CC is set to 1.2%, which represents assumed moisture content for biomass dried during milling.」(第3頁第6~14行) (当合議体訳)「本研究で使用した PC、TB1、TB2、CC の分析結果と高位発熱量 (HV) を表 1 に示す。ここで、PC と CC は炭素含有量と HV が高い炭素質材料である。焙焼バイオマス TB1 と TB2 は、熱分解 CC と比較して揮発性物質 (VM) の含有量が高く、全炭素含有量が低く、HV が低くなっている。TB1 と TB2 を比較すると、焙焼度が高い TB1 の方が HV が高く、VM 含有量が低く、全炭素含有量が高いことがわかる。使用したバイオマスはすべてスカンジナビア産の木材から作られている。使用した CC は通常バーベキュー用に使用される市販の木炭である。TB はおがくずをベースとしている。TB と CC の水分含有量は 1.2% に設定されている。これは、製粉中に乾燥させたバイオマスの想定水分含有量を表す。」 イ 「 [図:0001435209000002.jpg] 」 (当合議体訳)「表1 吹き込みおよび上部充填に使用した還元剤の分析結果。VM=揮発性物質、HHV=高位発熱量。」 ウ 「To study the impact of pre-treated biomass on the BF conditions seven simulated cases as described in Table 2 are evaluated. The calibrated reference case corresponds to BF operation with coke and injected PC as reduction agents. The other cases are designed to have the same coke consumption as the reference case and, instead, varying PC injection rate. The blast conditions are kept constant with the same blast temperature and O2-enrichment. The slag basicity is controlled as in the reference case by adjusting the limestone addition and the slag rate is allowed to vary.」(第6頁第17~25行) (当合議体訳)「前処理バイオマスが高炉条件に及ぼす影響を調べるため、表2に示す7つのシミュレーションケースを評価した。較正済みの基準ケースは、還元剤としてコークスと吹き込まれたPCを用いた高炉操業に対応する。他のケースは、基準ケースと同じコークス消費量で、PC吹き込み率を変化させるように設計されている。送風条件は、送風温度と酸素富化率を一定に保った。スラグ塩基度は、基準ケースと同様に石灰石の添加量を調整することで制御し、スラグの供給量は変化させた。」 エ 「 [図:0001435209000003.jpg] 」 (当合議体訳)「表2 ケースの説明 [図:0001435209000004.jpg] 」 オ 「When modelling different cases assuming a fixed production rate, the blast volume is determined by oxygen input required to supply reducing gas and heat to the BF while considering other oxygen sources. At a constant coke rate, but a varied total injection rate of PC and biomass, the required injection rate will be higher when HHV and Cfix are lower, as for TB1 and TB2. Conversely, the injection rate can be lowered when injecting CC with PC, as the HHV and Cfix are slightly higher than for PC.」(第7頁下から19~24行) (当合議体訳)「一定の生産速度を仮定してさまざまなケースをモデル化する場合、他の酸素源を考慮しながら、高炉に還元ガスと熱を供給するために必要な酸素投入量によって送風量が決定される。一定のコークス率で、PCとバイオマスの総吹き込み速度が変化すると、TB1とTB2のようにHHVと固定炭素が低い場合、必要な吹き込み率は高くなる。逆に、PCとともにCCを吹き込む場合、HHVと固定炭素がPCよりもわずかに高いため、吹き込み率を下げることができる。」 (4)甲3の記載事項 本願の出願前に公知となった甲3には、「Low CO2 ironmaking in the blast furnace」(当合議体訳:「高炉における低CO2製鉄」)に関し、以下の記載がある。 ア 「Injection of alternative reducing agents. Alternative reducing agents for injection at both BF sites included injection of solid biomass and gases as pure H2, biogas and coke oven gas(COG).Figure 2 shows the characteristics of the solid biomass products and the gases used in the calculations and in figure 3 the analyzed cases are shown.」(第30頁右欄第23~29行) (当合議体訳)「代替還元剤の吹き込み。両高炉サイトで吹き込まれる代替還元剤には、固体バイオマス、及び、純粋な水素、バイオガス、コークス炉ガス(COG)などのガスが含まれる。図2は、計算で使用される固体バイオマス製品とガスの特性を示し、図3には分析されたケースが示される。」 イ 「 [図:0001435209000005.jpg] 2 Characteristics of injected solid biomass and gases used in modelling」 (当合議体訳)「 [図:0001435209000006.jpg] 図2 モデリングに使用された吹き込まれる固体バイオマスおよびガスの特性」 ウ 「Figure 4 shows the results from selected cases for solid biomass, when replacing a certain percentage of the injected reducing agents the rate of biomass will be higher in Lulea due to higher total injection rate. As can be seen the fossil CO2 emission can theoretically be reduced with up to almost 34% when injecting 100% torrefied sawdust at high rate. The estimated effect on the CO2 emission per kg of biomass product used is similar in both BFs as shown in figure 5. By adding 1kg of torrefied grot, torrefied sawdust or charcoal the CO2 emission can be reduced by approximately 1.4, 2.2 and 3.0kg, respectively.」(第31頁左欄第3~15行) (当合議体訳)「図4は、固体バイオマスに関する選択されたケースの結果を示す。吹き込む還元剤の一定割合を置き換えると、総吹き込み量が多いため、ルレオではバイオマスの割合が高くなる。見てのとおり、100%トレファイド鋸屑を高率で吹き込むと、化石由来のCO2排出量を理論的に最大34%近く削減できる。 図5に示すように、バイオマス製品1kgあたりのCO2排出量への影響は、両高炉でほぼ同じである。トレファイドグロット、トレファイド鋸屑、または木炭を1kg添加すると、CO2排出量をそれぞれ約1.4kg、2.2kg、3.0kg削減できる。」 (5)甲4の記載事項 本願の出願前に公知となった甲4には、「Biomass use in the steel industry: back to the future?」(当合議体訳:「鉄鋼業におけるバイオマスの利用:未来への回帰?」)に関し、以下の記載がある。 ア 「Use of biomass can contribute to mitigation of the CO2 emissions in the steel industry. An approach for sustainable use of biomass must consider diverse technological, economic, environmental and social aspects. This paper will focus primarily on biomass sources, resources, availability, processing steps and products as well as trading and costs. Afterwards three major options for the use of biomass in the steel industry are presented; injection, incorporation into the charging materials and reducing gas generation. Two technologies - an injection into the blast furnace and an introduction of self-reducing pellets and composites with embedded charcoal - are discussed in more detail.」(第57頁上段第1~7行) (当合議体訳)「バイオマスの利用は、鉄鋼業におけるCO2排出量の緩和に貢献することができる。持続可能なバイオマス利用へのアプローチは、多様な技術的、経済的、環境的および社会的側面を考慮しなければならない。本稿では主に、バイオマスの供給源、資源、利用可能性、加工工程および製品、ならびに取引とコストに焦点を当てる。その後、鉄鋼業におけるバイオマス利用の三つの主要な選択肢が提示される:吹き込み、装入材料への組み込み、還元ガスの生成。二つの技術-高炉への吹き込みと、木炭を組み込んだ自己還元ペレットおよび複合材の導入-については、より詳細に論じる。」 イ 「Chemical, physical and mechanical properties of raw biomass do not enable their high-efficiency use in the steel industry. It is beneficial to use pyrolysed biomass -charcoa1s; semi-charcoals or torrefied materials, figure 8 - which are characterized by improved-quality [30]: ・limited moisture absorption potential ・lower oxygen and higher carbon content ・higher calorific value ・higher apparent density ・better grindability(important for injection) ・better crushability (important for embedding) Pyrolysis can be defined as thermal decomposition in an oxygen-free or oxygen-poor atmosphere and at temperatures above 300℃[31]. Typically charcoal is produced at temperatures between 400 and.500℃, sometimes 600℃. The torrefaction process is a mild pyrolysis with maximum temperatures of 300-350℃.」(第61頁右欄下から10行~第62頁左欄第8行) (当合議体訳)「生のバイオマスの化学的、物理的および機械的特性は、鉄鋼業での高効率利用を可能にしない。熱分解されたバイオマス(木炭、半木炭、トレファイド材料)を使用することが有益であり、図8-これらは以下のような向上された品質によって特徴付けられる[30]: ・吸湿性の潜在能力が限定されている ・酸素含有量が低く、炭素含有量が高い ・発熱量が高い ・見かけ密度が高い ・粉砕性が良好(吹き込み用途で重要) ・砕壊性が良好(組み込み用途で重要) 熱分解は、酸素がないまたは酸素が少ない雰囲気で300℃以上の温度で行われる熱分解と定義できる。通常、木炭は400~500℃、時には600℃で製造される。焙焼プロセスは、最大300~350℃の穏やかな熱分解である。」 ウ 「Chemistry of torrefied biomass depends on both the torrefaction process conditions and raw biomass. At low and medium temperatures (a range of 200-350℃ was examined) the effect of pyrolysis parameters is small or negligible but at high temperatures increasing carbon content, decreasing oxygen content and rising calorific value become remarkable (TB-l, TB-m and TB-h in figure 10 correspond to “low”, “medium” and “high” torrefaction temperatures respectively)[33]. Characteristics of raw biomass (e.g. ash and volatile matter content) affect the quality of torrefied products as well. For example, change in LCV (Lower Calorific Value) depending on the torrefaction temperature might be different for softwood like pine(TB1 in in figure 10) and hardwood like beech (TB2 in figure 10) [34].」(第62頁右欄第9~24行) (当合議体訳)「トレファイドバイオマスの化学組成は、焙焼プロセスの条件と生のバイオマスの両方に依存する。低温および中温(200~350℃の範囲)では、熱分解パラメータの影響は小さいか無視できるが、高温では炭素含有量の増加、酸素含有量の減少、発熱量の上昇が顕著になる(図10のTB-l、TB-m、TB-hは、それぞれ「低温」、「中温」、「高温」の焙焼温度に対応)[33]。生のバイオマスの特性(例:灰分や揮発分含有量)は、トレファイド製品の品質にも影響する。例えば、焙焼温度によるLCV(低位発熱量)の変化は、松(図10のTB1)等の針葉樹とブナ(図10のTB2)等の広葉樹で異なる場合がある[34]。」 エ 「Figure 13 shows operation parameters of a modern blast furnace when injecting charcoals(CC) and torrefied biomass(TB), calculated using a mathematical model. Injection rate was kept at 200 kg/t HM. The flame temperature was controlled by oxygen enrichment of the blast. The sinter/pellets ratio was adjusted to keep slag basicity on a constant leve1[35].Composition of auxiliary reducing agents is given in figure 10. An analysis of figure 13 and figure 10 shows that injection of charcoal with low ash and high basicity (CC1) instead of PC decreases the slag volume and coke rate compared to the base case of operation with PCI; heat loss decreases and furnace productivity rises. Top gas volume and its calorific value decrease as well. When injecting charcoal with high ash content and relatively low basicity (CC2), main operation parameters including coke rate and productivity can worsen (depending on the reference PC characteristics) [3]. Injection of a high amount of TB characterized by very high VM, very low carbon content and correspondingly low calorific value, would strongly affect the BF operation; therefore only 50% of PC was replaced with TB by the calculations. Coke rate increases by 27.2 and 23.3% by using TB torrefied at about 200℃(TB2-l) and 300℃(TB2-h) respectively. Additional enrichment of the blast with oxygen enables keeping the furnace productivity on the initial level and decreasing in top gas temperature. A rise of CO content in top gas and its calorific value indicates a lowering of gas utilization rate. Slag volume and heat loss decreases while injecting TB [35]. The coke replacement ratio for charcoal and torrefied biomass calculated using another simulation model showed similar results[38; 39].」(第64頁左欄第1行~右欄第20行) (当合議体訳)「図13は、木炭(CC)およびトレファイドバイオマス(TB)を吹き込んだ現代高炉の運転パラメータを示している(数値モデルによる計算結果)。吹き込み率は200kg/銑鉄トンに維持された。炎温度は、羽口風の酸素濃度を高めることで制御された。焼結鉱/ペレット比は、スラグの塩基度を一定に保つように調整された。補助還元剤の組成は図10に示されている。 図13および図10の分析から、低灰分・高塩基度の木炭(CC1)をPCの代わりに吹き込むと、PCIベースの運転と比較してスラグ量とコークス消費量が減少し、熱損失が減少し、炉の生産性が向上することが分かる。トップガス量とその発熱量も減少する。高灰分・比較的低塩基度の木炭(CC2)を吹き込むと、主な運転パラメータ(コークス消費量や生産性等)が悪化する場合がある(基準となるPCの特性による)[3]。非常に高い揮発分、非常に低い炭素含有量、そしてそれに伴う低い発熱量を特徴とするTBを大量に吹き込むと、高炉運転に強い影響を与えるため、計算ではPCの50%のみをTBで置換した。TBを約200℃(TB2-l)および300℃ (TB2-h)でトレファイドした場合、コークス消費量はそれぞれ27.2%および23.3%増加する。羽口風への酸素追加により、炉の生産性を初期レベルに維持し、トップガス温度を低下させることができる。トップガス中のCO濃度と発熱量の上昇は、ガス利用率の低下を示している。TB吹き込み時はスラグ量と熱損失が減少する[35]。別のシミュレーションモデルによる木炭およびトレファイドバイオマスのコークス代替率の計算でも、同様の結果が得られている[38;39]。」 オ 「 [図:0001435209000007.jpg] 」 (当合議体訳)「図10:吹き込み用の石炭(PC)、木炭(CC)、松材チップ(TB1)及びブナ材チップ(TB2)からのトレファイドバイオマスの化学分析と発熱量[35]」 カ 「 [図:0001435209000008.jpg] 」 (当合議体訳)「図13:高炉操業結果(選択された計算パラメータ)、[35]の後」 (6)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明1とを対比する。 (ア)甲1発明1の「バイオマスを乾留して製造した」「バイオマス炭」は、本件発明1の「バイオマスの乾留物であるバイオマス炭」に相当する。 (イ)甲1発明1の「バイオマス炭と石炭の混合物を微粉砕し」て生成した「粉砕物」には、バイオマス炭を微粉砕して生成された粉砕物が含まれることは明らかであり、該バイオマス炭を微粉砕して生成された粉砕物は、本件発明1の「バイオマス炭を粉砕した粉砕物」に相当する。 (ウ)「高炉」は鉄原料を還元して銑鉄を得るための設備であるから、甲1発明1の「粉砕物を高炉の補助還元材として羽口から吹き込む」ことは、本件発明1の「粉砕物を羽口から吹き込みながら鉄原料を還元する」ことに相当する。 (エ)甲1発明1の「複数のバイオマス炭のそれぞれについて、バイオマス炭の低位発熱量及びハードグローブ粉砕性指数(HGI)を測定」することは、本件発明1の「複数種類のバイオマス炭のそれぞれに対して低位発熱量に関するデータを取得するデータ取得ステップ」を有していることに相当する。 (オ)甲1発明1において、「複数のバイオマス炭のそれぞれについて、バイオマス炭の低位発熱量及びハードグローブ粉砕性指数(HGI)を測定し、HGIが45以上を示すバイオマス炭と石炭の混合物を微粉砕し、粉砕物を生成し、前記粉砕物を高炉の補助還元材として羽口から吹き込む」ことは、「複数種類のバイオマス炭の中から」「羽口から吹き込むべきバイオマス炭」を「決定」するものである限りにおいて、本件発明1と共通するものである。 (カ)そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、 「バイオマスの乾留物であるバイオマス炭を粉砕した粉砕物を羽口から吹き込みながら鉄原料を還元する高炉の操業方法において、 複数種類のバイオマス炭のそれぞれに対して低位発熱量に関するデータを取得するデータ取得ステップを有し、 複数種類のバイオマス炭中から羽口から吹き込むべきバイオマス炭を決定する高炉の操業方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」のに対し、甲1発明1はそのような特定をしていない点。 イ 相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 (ア)甲1発明1は、製造された複数のバイオマス炭のそれぞれについて低位発熱量を測定するものではある(甲1の表2参照)が、羽口から吹き込むバイオマス炭として、HGIが45以上のものを選択して用いることを前提としており、低位発熱量を羽口から吹き込むべきバイオマス炭を決定するための「管理指標」として用いるものではない。 甲1には、他に、該低位発熱量を羽口から吹き込むべきバイオマス炭を決定するための「管理指標」として用いることについての記載は見当たらないから、甲1の記載及び技術常識を勘案しても、甲1発明1において、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」ことが動機付けられるとはいえない。 (イ)また、甲1の上記表2をみるに、バイオマス炭No.1~12のうち最も低位発熱量の大きいバイオマス炭はNo.12のものである。しかし、該No.12のバイオマス炭のHGIは35であり、45未満であるから、甲1発明1においては選択することが適切ではないものである。 このことからも、甲1発明1において、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」ことが動機付けられるとはいえない。 (ウ)上記(3)によれば、甲2には、トレファイドバイオマスであるTB1、TB2及び木炭の高位発熱量が、それぞれ、28MJ/kg、23MJ/kg及び33MJ/kgであること、これらを高炉へ吹き込むことが記載されていると認められる。また、上記(4)によれば、甲3には、トレファイド鋸屑、木炭、トレファイド森林残渣の高位発熱量が、それぞれ、28.11MJ/kg、32.70MJ/kg、22.80MJ/kgであること、これらを高炉に吹き込むと、木炭が最もCO2排出を低減できることが記載されていると認められる。 これらによれば、甲2、3からは、木炭がトレファイドバイオマスよりも高位発熱量の高いものであること、及び、微粉炭に代えて木炭を高炉に吹き込む技術が周知であることは把握できるものの、このことにより、甲1発明1において、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」ことまでが動機付けられるとはいえない。 (エ)申立人は特許異議申立書において、低位発熱量が高くなるほど置換率が高くなることは、甲2~3に記載されるように周知である旨を主張している(第39頁第18~29行)。 しかし、上記(ウ)に示したとおり、甲2及び3のいずれにも、低位発熱量が高くなるほど置換率が高くなることについて特段の記載はなく、申立人が主張するような周知の事項を示しているとは認められない。 仮に、申立人が主張するように、低位発熱量が高くなるほど置換率が高くなることが周知であったとしても、このことが上記(ア)~(ウ)で示した判断を左右するものではない。 (オ)したがって、甲1発明1において、上記相違点1に係る「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」という発明特定事項を備えることを、甲2~3に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)本件発明2について 本件特許の請求項2は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。 そして、上記(6)のとおり、本件発明1が甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、本件発明2も、甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (8)本件発明3~5について ア 本件特許の請求項3~5は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明3~5は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。 そして、上記(6)のとおり、本件発明1が甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、本件発明3~5も、甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ また、上記(5)ウ、オによれば、甲4には、木炭(CC1、CC2)、及び、トレファイドバイオマス(TB1-l、TB1-m、TB1-h、TB2-l、TB2-m、TB2-h)について、低位発熱量(LCV)を測定することが記載されていると認められるが、該甲4にはバイオマス炭の低位発熱量を「管理指標」として、羽口から吹き込むべきバイオマス炭を決定することについて記載はないから、甲4の記載を参酌しても、甲1発明1において、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」ことが動機付けられるとはいえない。 ウ したがって、甲1発明1において、上記相違点1に係る「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」という発明特定事項を備えることを、甲2~3に記載された事項、及び、甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 以上のとおりであるから、本件発明3~5は、甲1に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (9)本件発明6について ア 対比 上記(6)アの検討を踏まえて本件発明6と甲1発明2とを対比すると、両者は、 「高炉の羽口から吹き込まれるバイオマス炭の粉砕物の製造方法であって、 複数種類のバイオマス炭のそれぞれに対して低位発熱量を低位発熱量に関するデータを取得し、 バイオマス炭を粉砕する粉砕ステップと、 を有することを特徴とするバイオマス炭の粉砕物の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明6は、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として設定された製造条件のうち、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭の製造条件に基づきバイオマス炭を製造する製造ステップ」を備えているのに対し、甲1発明2はそのような特定をしていない点。 イ 相違点についての判断 相違点2について検討するに、該相違点2は、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として」おり、この点で上記相違点1と同様なものであるから、上記(6)イに示したのと同様に、甲1発明2において、上記相違点2に係る「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として設定された製造上条件のうち、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭の製造条件に基づきバイオマス炭を製造する製造ステップ」という発明特定事項を備えることについて、甲2~3に記載された事項及び甲4に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、本件発明6は、甲1に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (10)小括 以上のとおり、本件発明1~2は、甲1に記載された発明、及び、甲2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、本件発明3~6は、甲1に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 申立理由1-3(進歩性)について (1)甲4に載された発明 ア 上記1(5)イによれば、甲4には、木炭、半木炭、トレファイド材料は、酸素がないまたは酸素が少ない雰囲気で熱分解されたバイオマスであることが記載されている。 イ 上記1(5)ウ、オによれば、甲4には、木炭(CC1、CC2)、及び、トレファイドバイオマス(TB1-l、TB1-m、TB1-h、TB2-l、TB2-m、TB2-h)について、低位発熱量(LCV)を測定することが記載されている。 ウ 上記1(5)エ、カによれば、微粉炭(PC)に代えて、低灰分・高塩基度の木炭(CC1)を高炉に吹き込む操業を行うことで、スラグ量、コークス消費量、熱損失、トップガス量とその発熱量が減少し、炉の生産性が向上することが数値モデルにより推定されることが記載されている。また、微粉炭(PC)の50%をトレファイドバイオマス(TB2-l、TB2-h)に置き換えて高炉に吹き込む操業を行うことで、コークス消費量は増加するが、炉の生産性を維持し、トップガス温度を低下させ、スラグ量と熱損失が減少することも記載されている。 エ 上記ア~ウの事項を総合勘案するに、甲4には以下の発明が記載されていると認められる。 「バイオマスを酸素がないまたは酸素が少ない雰囲気で熱分解して製造され、低位発熱量が測定された木炭(CC1、CC2)、及び、トレファイドバイオマス(TB1-l、TB1-m、TB1-h、TB2-l、TB2-m、TB2-h)のうち、微粉炭に代えて木炭(CC1)を高炉に吹き込む操業を行う、または、微粉炭の50%をトレファイドバイオマス(TB2-lまたはTB2-h)に代えたものを高炉に吹き込む操業を行う方法。」(以下「甲4発明1」という。) 「高炉に吹き込むための木炭(CC1、CC2)、及び、トレファイドバイオマス(TB1-l、TB1-m、TB1-h、TB2-l、TB2-m、TB2-h)を、バイオマスを酸素がないまたは酸素が少ない雰囲気で熱分解して製造する方法であって、製造された木炭及びトレファイドバイオマスの低位発熱量を測定する工程を有する、木炭及びトレファイドバイオマスを製造する方法。」(以下「甲4発明2」という。) (3)本件発明1について 申立理由1-3は、本件発明3~6に対するものであるが、そのうち本件発明3~5は、請求項1を直接または間接的に引用するものであるから、まず、本件発明3~5の前提となる本件発明1について検討する。 ア 対比 本件発明1と甲4発明1とを対比する。 (ア)甲4発明1における、「木炭(CC1、CC2)」は、バイオマスである木を炭化したものであり、「トレファイドバイオマス(TB1-l、TB1-m、TB1-h、TB2-l、TB2-m、TB2-h)」は、酸素がないまたは酸素が少ない雰囲気で熱分解されたバイオマスである。したがって、甲4発明1の「木炭(CC1、CC2)」及び「トレファイドバイオマス(TB1-l、TB1-m、TB1-h、TB2-l、TB2-m、TB2-h)」は、熱分解されたバイオマスである限りにおいて、本件発明1の「バイオマスの乾留物であるバイオマス炭」と共通する。 (イ)「高炉」は鉄原料を還元して銑鉄を得るための設備であることは明らかであるから、甲4発明1の「微粉炭に代えて木炭(CC1)を高炉に吹き込む」こと、及び、「微粉炭の50%をトレファイドバイオマス(TB2-lまたはTB2-h)に代えたものを高炉に吹き込む」ことは、熱分解されたバイオマスを羽口から吹き込みながら鉄原料を還元することである限りにおいて、本件発明1の「バイオマス炭を」「羽口から吹き込みながら鉄原料を還元する」ことと共通する。 (ウ)甲4発明1においては、「木炭(CC1、CC2)、及び、トレファイドバイオマス(TB1-l、TB1-m、TB1-h、TB2-l、TB2-m、TB2-h)」の「低位発熱量が測定され」ており、複数種類のバイオマス炭の低位発熱量を測定するステップを備えることは明らかである。したがって、甲4発明1は、複数種類の熱分解されたバイオマスのそれぞれに対して低位発熱量に関するデータを取得するデータ取得ステップを有するものである限りにおいて、本件発明1の「複数種類のバイオマス炭のそれぞれに対して低位発熱量に関するデータを取得するデータ取得ステップ」を有することと共通する。 (エ)甲4発明1の「高炉に吹き込む操業を行う方法」は、本件発明1の「高炉の操業方法」に相当する。 (オ)そうすると、本件発明1と甲4発明1とは、 「熱分解されたバイオマスを羽口から吹き込みながら鉄原料を還元する高炉の操業方法において、 複数種類の熱分解されたバイオマスのそれぞれに対して低位発熱量に関するデータを取得するデータ取得ステップを有する高炉の操業方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本件発明1は、「バイオマスの乾留物であるバイオマス炭を粉砕した粉砕物」を羽口から吹き込むものであるのに対し、甲4発明1は、そのような特定をしていない点。 <相違点4> 本件発明1は、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」のに対し、甲4発明1はそのような特定をしていない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、上記相違点4について検討する。 (ア)甲4発明1は、複数の熱処理されたバイオマスのそれぞれについて低位発熱量を測定するものではあるが、羽口から吹き込むバイオマス炭を低位発熱量に基づいて選択する、すなわち、低位発熱量を、高炉に吹き込むべき物質を決定するための「管理指標」として用いるものではない。 甲4には、他に該低位発熱量を羽口から吹き込むべきバイオマス炭を決定するための「管理指標」として用いることについての記載は見当たらないから、甲4の記載及び技術常識を勘案しても、甲4発明1において、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」ことが動機付けられるとはいえない。 (イ)また、上記1(6)イ(ウ)によれば、甲2、3からは、木炭がトレファイドバイオマスよりも高位発熱量の高いものであること、及び、微粉炭に代えて木炭を高炉に吹き込む技術が周知であることは把握できるが、このことにより、甲4発明1において、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」ことが動機付けられるとはいえない。 (ウ)さらに、上記1(1)エによれば、甲1には、複数のバイオマス炭について低位発熱量を測定することは記載されているものの、高炉の羽口から吹き込むバイオマス炭は、HGIの値を基準として選択されているから、このことにより、甲4発明1において、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」ことが動機付けられるものではない。 (エ)申立人は特許異議申立書において、低位発熱量が高くなるほど置換率が高くなることは、甲2~3に記載されるように周知である旨を主張している(第47頁第20~23行)。 しかし、上記1(6)イ(ウ)に示したとおり、甲2及び3のいずれにも、低位発熱量が高くなるほど置換率が高くなることについて特段の記載はなく、申立人が主張するような周知の事項を示していると認めることはできない。 仮に、申立人が主張するように、低位発熱量が高くなるほど置換率が高くなることが周知であったとしても、このことが、上記(ア)~(ウ)で示した判断を左右するものではない。 (オ)したがって、甲4発明1において、上記相違点4に係る「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」という発明特定事項を備えることについて、甲2~3に記載された事項及び甲1に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明3~5について 本件特許の請求項3~5は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明3~5は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。 そして、上記(3)のとおり、本件発明1が甲4に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、本件発明3~5も、甲4に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明6について ア 対比 上記(3)アの検討を踏まえて本件発明6と甲4発明2とを対比すると、両者は、 「高炉の羽口から吹き込まれる熱分解されたバイオマスの製造方法であって、 複数種類の熱分解されたバイオマスのそれぞれに対して低位発熱量を低位発熱量に関するデータを取得する 熱処理されたバイオマスの製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5> 本件発明6は、「バイオマス炭を粉砕した粉砕物を羽口から吹き込」むものであり、「得られたバイオマス炭を粉砕するステップ」を有しているのに対し、甲4発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点6> 本件発明6は、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭として決定する」のに対し、甲4発明2はそのような特定をしていない点。 <相違点7> 本件発明6は、「複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭を前記羽口から吹き込むべきバイオマス炭の製造条件に基づきバイオマス炭を製造する製造ステップ」を有しているのに対し、甲4発明2はそのような特定をしていない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点6について検討するに、該相違点6は、「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として」おり、この点で上記相違点4と同様なものであるから、上記(3)イに示したのと同様に、甲4発明2において、上記相違点6に係る「バイオマス炭の低位発熱量を管理指標として設定された製造条件のうち、前記複数種類のバイオマス炭の中から低位発熱量が最も大きいバイオマス炭の製造条件に基づきバイオマスを製造する製造ステップ」という発明特定事項を備えることについて、甲2~3に記載された事項及び甲1に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、相違点5、7について検討するまでもなく、本件発明6は、甲4に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)小括 以上のとおり、本件発明3~6は、甲4に記載された発明、並びに、甲2~3に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701117

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