特許異議申立
2023-700018
蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法
- 審判番号
- 2023-700018
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-211778
- 登録番号
- 7099512
- 請求日
- 2023年01月11日
- 審決日
- 2024年02月19日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】村野 親
- 審判長/審判官
- 審判長 日比野 隆治
- 審判官 原 賢一
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1652.113-YAA(C23C) / P1652.121-YAA(C23C) / P1652.536-YAA(C23C) / P1652.537-YAA(C23C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第2条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7099512号発明「蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7099512号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、7、8〕、〔4~6〕、〔9~11〕、12、13、14について訂正することを認める。
特許第7099512号の請求項1~3、7、8、12、14に係る特許を維持する。
特許第7099512号の請求項13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7099512号の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和2年12月21日(優先権主張 同年2月5日)を出願日とする出願であり、令和4年7月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行され、その後、令和5年1月11日に、その請求項1~3、7、8、12~14に係る特許を対象として特許異議申立人村野親(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、同年4月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月6日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年7月20日に異議申立人より、意見書の提出がなされ、同年9月5日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年11月10日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、この訂正を「本件訂正」という。)があったものである。
なお、令和5年6月6日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「先の訂正」ということがある。)は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、先の訂正後、異議申立人に意見書の提出の機会が与えられたこと、本件訂正が、特許請求の範囲の訂正については、請求項13の削除のみの訂正であることを考慮し、本件訂正後には、異議申立人に意見書の提出の機会を与えていない。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
本件訂正は、本件明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、7、8〕、〔4~6〕、〔9~11〕、12、13、14について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(2)訂正事項2
明細書の【発明の名称】に「蒸着マスク中間体、蒸着マスク、マスク装置、および、蒸着マスクの製造方法」とあるのを、「蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1において、「マスク装置」に係る請求項13が削除され、特許請求の範囲に記載されている発明が、「蒸着マスク中間体」(請求項1~11)、「蒸着マスク」(請求項12)及び「蒸着マスクの製造方法」(請求項14)になったことに伴い、発明の名称を「蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法」とし、訂正後の特許請求の範囲の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正前の発明の名称から、「マスク装置」を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
本件訂正は、特許法第120条の5第4項及び同法同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~3、7、8〕、〔4~6〕、〔9~11〕、12、13、14について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1~3、7、8〕、〔4~6〕、〔9~11〕、12、13、14について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1~14に係る発明の内、特許異議申立ての対象となる発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおり特定されるものである。
「【請求項1】
帯状部と、
前記帯状部を囲む枠状部と、
前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、
前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる
蒸着マスク中間体。
【請求項2】
帯状部と、
前記帯状部を囲む枠状部と、
前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記周辺部および前記枠状部は、第1板厚を有し、
前記連結部は、前記帯状部の前記縁に沿うハーフエッチング線、および、前記帯状部の前記縁に沿って並ぶ複数のハーフエッチング部の少なくとも一方を含み、前記ハーフエッチング線および前記ハーフエッチング部は、前記第1板厚よりも薄い第2板厚を有する
蒸着マスク中間体。
【請求項3】
前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含み、
前記非連結部と前記枠状部との間には、スリットが位置する
請求項1または2に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項7】
前記周辺部および前記枠状部は、第1板厚を有し、
前記連結部は、複数の連結部のうちの1つであり、前記複数の連結部は、前記帯状部の前記縁に沿って間隔を空けて位置し、各連結部は前記第1板厚を有し、
前記帯状部の前記縁のうち前記連結部が接続した部分以外の部分に沿って、スリットが位置する
請求項1に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項8】
前記長辺は、前記枠状部に連結されない非連結部を含み、前記非連結部は、前記帯状部の幅方向において前記マスク部と隣り合う部分を含む
請求項7に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項12】
帯状を有した蒸着マスクであって、
一対の第1長辺と一対の第1短辺とを有した縁と、
複数のマスク孔を有したマスク部と、
前記マスク部を囲む周辺部と、を備え、
前記周辺部のうちで、前記蒸着マスクの長手方向における前記マスク部と前記第1短辺との間には、一方の前記第1長辺から他方の前記第1長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、
前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記第1長辺から他方の前記第1長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並び、
前記縁の少なくとも一部に位置する第1切断痕を備える
蒸着マスク。
【請求項13】(削除)
【請求項14】
帯状部、前記帯状部を囲む枠状部、および、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部を形成すること、および、
前記連結部を切断して、前記枠状部から前記帯状部を切り離すことによって蒸着マスクを得ること、を含み、
前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺を有した縁を備え、
前記帯状部は、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、
前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる
蒸着マスクの製造方法。」
第4 令和5年9月5日付けで通知した取消理由(決定の予告)、同年4月5日付けで通知した取消理由、及び異議申立人による特許異議の申立理由の概要
1 令和5年9月5日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
・特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)
先の訂正後の請求項13に係る発明は、後記3(5)に記載の甲第1号証~甲第3号証に記載された発明及び同甲第5号証~甲第8号証に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由1」という。)。
2 令和5年4月5日付けで通知した取消理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)
設定登録時の請求項13に係る発明は、後記3(5)に記載の甲第1号証~甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由2」という。)。
(2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)
設定登録時の請求項12、13に係る発明は、後記3(5)に記載の甲第1号証~甲第3号証に記載された発明及び同甲第4号証~甲第15号証に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由3」という。)。
3 異議申立人による特許異議の申立理由の概要
(1)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)
本件特許は、設定登録時の請求項1~3、7、8、12~14の記載が後記第5の3(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由1」とする。)。
(2)特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)
本件特許は、設定登録時の請求項1~3、7、8、12~14に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が後記第5の4(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由2」とする。)。
(3)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)
本件特許は、設定登録時の請求項1~3、7、8、12~14の記載が後記第5の5(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由3」とする。)。
(4)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)
設定登録時の請求項13に係る発明は、後記(5)に記載の甲第1号証~甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由4」という。)。
(5)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1~3、7、8、12~14に係る発明は、下記に記載の甲第4号証に記載された発明及び同甲第1号証~甲第3号証、甲第5号証~甲第13号証に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由5-1」という。)。
イ 設定登録時の請求項1~3、7、8、12~14に係る発明は、下記に記載の甲第1号証に記載された発明及び同甲第4号証~甲第15号証に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由5-2」という。)。
ウ 設定登録時の請求項1~3、7、8、12~14に係る発明は、下記に記載の甲第2号証に記載された発明及び同甲第4号証~甲第15号証に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由5-3」という。)。
エ 設定登録時の請求項1~3、7、8、12~14に係る発明は、下記に記載の甲第3号証に記載された発明及び同甲第4号証~甲第15号証に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由5-4」という。)。
記
甲第1号証:特開2012-233253号公報
甲第2号証:特開2019-214783号公報
甲第3号証:米国特許出願公開2018/0065143号明細書
甲第4号証:特開2018-115390号公報
甲第5号証:特開2005-5071号公報
甲第6号証:特開2005-5070号公報
甲第7号証:特開2006-322015号公報
甲第8号証:特開2006-310183号公報
甲第9号証:特開2018-109211号公報
甲第10号証:特開2002-313754号公報
甲第11号証:特開2019-164274号公報
甲第12号証:特開2019-104540号公報
甲第13号証:特開2013-100119号公報
甲第14号証:特開2017-166029号公報
甲第15号証:再公表特許WO2018/066325号
(以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。)
第5 当審の判断
当審は、上記取消理由1~3及び申立理由1~4、5-1~5-4のいずれにも理由がないと判断する。
以下、その理由について詳述する。
1 取消理由1、取消理由2、請求項13を対象とする取消理由3、請求項13を対象とする申立理由1~3、申立理由4、請求項13を対象とする申立理由5-1~5-4について(新規性欠如及び進歩性欠如)
上記第2の1(1)で述べたように、本件訂正により請求項13は削除されたから、取消理由1、取消理由2、請求項13を対象とする取消理由3には、理由がない。
また、請求項13を対象とする申立理由1~3、申立理由4、請求項13を対象とする申立理由5-1~5-4は、申立ての対象が存在しないものとなったため却下されるべきものである。
2 請求項12を対象とする取消理由3、申立理由5-1~5-4について(進歩性欠如)
(1)甲1~甲15に記載された事項
ア 甲1に記載された事項
(ア)「【請求項1】
パターンが形成された本体部と、
前記本体部の一側から延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部と、
前記少なくとも一つ以上のサイドクランピング部の最外郭のサイドクランピング部に隣接して配される斜めクランピング部と、を備え、
前記斜めクランピング部と前記最外郭のサイドクランピング部とがなす角度(θ)は、0°より大きく90°より小さい(0°<θ<90°)ことを特徴とする分割マスク。
・・・
【請求項17】
前記本体部と前記サイドクランピング部との間と、前記本体部と前記斜めクランピング部との間が、マスクフレーム組立体のフレームに溶接されることを特徴とする請求項1に記載の分割マスク。
【請求項18】
前記サイドクランピング部と前記斜めクランピング部とは、前記フレームに溶接された後で除去されることを特徴とする請求項17に記載の分割マスク。
【請求項19】
パターンが形成された本体部、前記本体部の一側から延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部、及び前記少なくとも一つ以上のサイドクランピング部の最外郭のサイドクランピング部に隣接して配される斜めクランピング部がそれぞれ備えられた複数の分割マスクと、前記複数の分割マスクが接合されるフレームと、を用意する段階と、
前記各分割マスクの前記サイドクランピング部と前記斜めクランピング部とを把持し、引張力を加えつつ前記本体部を前記フレームに溶接する段階と、を含むマスクフレーム組立体の組立方法。
【請求項20】
前記溶接が完了した後、前記サイドクランピング部と前記斜めクランピング部とを切断する段階をさらに含む請求項19に記載のマスクフレーム組立体の組立方法。」
(イ)「【0007】
一方、このような分割マスクをフレームに付着する時には、分割マスクを分割マスクの長手方向に引っ張る過程を経る。もし、分割マスクが引っ張られていない状態でフレームに結合されれば、分割マスクのボディーに凸凹なウェーブが発生し、これは、以後の蒸着工程でマスクと基板との間の密着性を低下させて、精密な蒸着を阻害する要因として作用する。したがって、分割マスクをフレームに付着する時には、分割マスクを分割マスクの長手方向に引っ張った後にフレームに付着する。
【0008】
最近の大型ディスプレイ装置の需要に対応するために分割マスクは、その長さが約1,840mmレベルに大型化しており、各分割マスク毎に長手方向にウェーブが生じる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施形態は、分割マスクのウェーブの発生を抑制できるように改善された分割マスクと、それを利用したマスクフレーム組立体の組立方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による分割マスクは、蒸着用パターンが形成されたスティック本体部と、前記本体部の長手方向の両側端部からそれぞれの外側に延びた複数のクランピング部を備え、前記クランピング部は、前記スティック本体部の長手方向に沿って延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部と、前記少なくも一つ以上のサイドクランピング部の最外郭のサイドクランピング部の近傍に前記スティック本体の長手方向と幅方向との間の斜め方向に沿って延びて配される斜めクランピング部と備え、前記斜めクランピング部と前記最外郭のサイドクランピング部とがなす角度(θ)は、0°より大きく90°より小さい(0°<θ<90°)。
・・・
【0013】
前記サイドクランピング部は、同一長に形成される。前記サイドクランピング部は、同一幅に形成される。」
(ウ)「【0031】
本発明の一実施形態による分割マスク100は、本体部110、サイドクランピング部120、及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dを備える。
【0032】
本体部110は、その内部にパターン111が形成されている。パターン111を通じて、蒸着物質は被蒸着体に蒸着される。本体部110は、フレーム(図4の300)に溶接されて蒸着作業に使われるフレーム組立体400を形成する部位であり、サイドクランピング部120及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dは、本体部110をフレーム300に溶接する時に引っ張り張力を付与するために形成された部位であって、組立過程中に除去される。接合部(図4の115)は、本体部110と、サイドクランピング部120及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dとの間の境界領域であって、フレーム300に溶接される領域である。
【0033】
複数の分割マスク100をフレーム300に結合させれば、図4に示したようなマスクフレーム組立体400が形成される。それぞれの分割マスク100は、フレーム300の開口301にパターン111が位置するように配された状態で、接合部115が溶接されることで固定され、サイドクランピング部120及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dは、点線で示したように溶接後に除去される。
・・・
【0043】
分割マスク100をフレーム300に溶接する時には、引張器(図示せず)で分割マスク100のサイドクランピング部120及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dを把持して引き寄せた状態で、前記接合部115をフレーム300に溶接するが、斜めクランピング部131a、131b、131c、131dは、サイドクランピング部121a、121b、122a、122bと所定の角度θ1、θ2、θ3、θ4を持つように形成されるところ、本体部110の長手方向(X軸方向)だけでなく、本体部110の幅方向(Y軸方向)にも引張力が印加される。したがって、本体部110の中央領域で本体部110が片寄ることを回避できる。本体部110が扁平に維持されるので、被蒸着体(図示せず)と分割マスク100との密着性を向上させて蒸着時に発生しうるシャドー不良を低減させる。
・・・
【0050】
前記分割マスク100は、細長いスティック状の部材であって、前記開口部301中に位置するパターン111が形成されており、本体部110とクランピング部120、131a、131b、131c、131dとの間の接合部115が、前述したようにフレーム300に溶接される。
【0051】
図5Aは、最初の分割マスク100をフレーム300に結合させる過程を示したものであって、まず該当分割マスク100の両端にあるサイドクランピング部120及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dを引張器(図示せず)で把持して、外側にぴんと引っ張る。これにより、分割マスク100には引張力Tが加えられるが、前述したように、斜めクランピング部131a、131b、131c、131dは、サイドクランピング部121a、121b、122a、122bと所定の角度を成して形成されるため、本体部110の長手方向(X軸方向)だけでなく幅方向(Y軸方向)に引張力が加えられる。これにより、分割マスク100の本体部110にはウェーブが著しく低減して、平坦度の非常に向上した状態になる。この状態で、前記接合部115をフレーム300に溶接して該分割マスク100を固定させる。
【0052】
そして、このように溶接が完了した後には、図5Bに示したように、接合部115外側のサイドクランピング部120及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dを切断して除去する。斜めクランピング部131a、131b、131c、131dは、サイドクランピング部121a、121b、122a、122bと所定の角度を成して形成されるので、そのまま置く場合、隣接した他の分割マスク100の斜めクランピング部131a、131b、131c、131dと互いに干渉する恐れがある。したがって、次の分割マスク100を溶接する前に、サイドクランピング部120及び斜めクランピング部131a、131b、131c、131dは切断して除去する。」
(エ)「【図1】
[図:0001411262000001.jpg]
【図5A】 【図5B】
[図:0001411262000002.jpg]
」
イ 甲2に記載された事項
(ア)「【請求項1】
複数のパターン孔が配列されたパターン部が配置されるパターニング領域と、
第1方向で前記パターニング領域の両端と隣接して配置される複数のボンディング領域と、を含み、
前記パターン部は、
第1パターン孔が設けられた第1パターン部と、
第2パターン孔が設けられ、前記第1方向で前記第1パターン部の両端と前記ボンディング領域との間に配置される複数の第2パターン部と、を含み、
前記第1パターン孔のうち互いに隣接する前記第1パターン孔間の最小距離と定義される第1距離より、前記第2パターン孔のうち互いに隣接する前記第2パターン孔間の最小距離と定義される第2距離のほうが大きい蒸着用マスク。」
(イ)「【0060】
蒸着用マスク20は、フレームセット10の上に安着される。本実施例によると、フレームセット10の支持台12、13のそれぞれの上面は、支持フレーム11の上面と同じ平面上に配置される。よって、蒸着用マスク20がフレームセット10の上に安定的に安着される。
【0061】
蒸着用マスク20は第1方向DR1に延長される。蒸着用マスク20は第2方向DR2に配列される。
【0062】
蒸着用マスク20のそれぞれは、マスクユニット21及び複数のカッティング部22を含む。
【0063】
マスクユニット21は第1方向DR1に延長される。マスクユニット21は、フレームセット10によって実質的に支持される部分である。つまり、マスクユニット21の第1方向DR1両端は、支持フレーム11の前記長辺の一部と重畳する。支持フレーム11の前記長辺の一部と重畳するマスクユニット21の領域は、溶接工程のようなボンディング工程を介して維持フレーム11の前記長辺の一部にボンディングされる。
【0064】
カッティング部22は、マスクユニット21の第1方向DR1の両端に隣接して配置される。例示的に、カッティング部22はマスクユニット21の第1方向DR1の両端に接続されてもよい。つまり、マスクユニット21は2つのカッティング部22の間に配置されてもよい。カッティング部22はフレームセット10と接触しない。
【0065】
本実施例によると、フレームセット10の上に安着される前の蒸着マスク20のそれぞれは、固定部材(図示せず)によって支持される。例示的に、固定部材(図示せず)はクランプ(Clamp)であってもよい。蒸着用マスク20のそれぞれの両端に配置されたカッティング部22のそれぞれが固定部材(図示せず)に固定されることで、蒸着用マスク20が支持される。また、固定部材(図示せず)はカッティング部22のそれぞれを固定すると共に蒸着用マスク20に引張力を加える。前記引張力の方向は第1方向DR1と平行する。
【0066】
本実施例によると、マスクユニット21と支持フレーム11との間のボンディング工程が完了した後、カッティング部22が切断される。図3では、カッティング部22が切断されたマスク組立体100Aが示されている。つまり、切断工程が完了したマスク組立体100Aはフレームセット10及びマスクユニット21のみを含む。以下、図5乃至図8において、蒸着用マスク20に関して詳細に後述する。」
(ウ)「
[図:0001411262000003.jpg]
[図:0001411262000004.jpg]
」
ウ 甲3に記載された事項(訳文は、(ア)は当審によるものであり、(イ)は異議申立人によるものである。)
(ア)「[0022] FIGS.3A,3B,3C and 3D illustrate views of stages in a method of manufacturing a mask frame assembly including a division mask according to an exemplary embodiment;」
([0022]図3A、図3B、図3C及び図3Dは、本実施形態による分割マスクを含むマスクフレーム組立体の製造方法を段階別に示す図である。)
(イ)「[0051] FIG.3A is a view illustrating a process of fixing a first division mask 100 to the frame 200. Referring to FIG.3A, the clamping portion 120 is held by a tensioning apparatus, and a tensile force T acts in a longitudinal direction of the division mask 100. In such an exemplary embodiment, the tensile force T may act not only in the longitudinal direction of the division mask 100 but also in a width direction of the division mask 100 due to the clamping portion 120 having a wider width than a width of the main body 100. Accordingly, wave generation may be substantially suppressed in the division mask 100, and the patterning accuracy may be improved.
[0052] Subsequently, the joint portion 130 is welded to the frame 200 to fix the first division mask 100 to the frame 200. For example, the joint portion 130 may be between the opening pattern 111 on the main body 110 and the dummy opening pattern 121 on the clamping portion 120.
[0053] FIG.3B is a view illustrating a process of removing the clamping portion 120. Referring to FIG.3B, the clamping portion 120 is cut off to be removed. If the clamping portion 120 were to remain (instead of being cut off), the clamping portion 120 would have interfered with an adjacent division mask 100, since the width of the clamping portion 120 is larger than the width of the main body 110.
([0051] 図3Aは、第1分割マスク100をフレーム200に固定する過程を示す図である。図3Aに示すように、クランプ部120はテンション装置によって保持され、分割マスク100の長手方向に張力Tが作用する。このような実施形態において、クランプ部120がメインボディ100の幅より広い幅を有することにより、張力Tは、分割マスク100の長手方向だけでなく、分割マスク100の幅方向にも作用する。これにより、分割マスク100では波の発生が大幅に抑制され、パターニング精度が向上する。
[0052] 続いて、ジョイント部130をフレーム200に溶接して、第1分割マスク100をフレーム200に固定する。例えば、ジョイント部130は、メインボディ 110の開口パターン111とクランプ部120のダミー開口パターン121との間にあってもよい。
[0053] 図3Bは、クランプ部120を除去する過程を示す図である。図3Bに示すように、クランプ部120は切断して除去される。クランプ部分120が(切断されずに)残っていた場合、クランプ部分120の幅はメインボディ110の幅よりも大きいため、クランプ部分120は隣接する分割マスク100と干渉しうる。)
(ウ)「
[図:0001411262000005.jpg]
[図:0001411262000006.jpg]
」
エ 甲4に記載された事項
(ア)「【請求項1】
複数の貫通孔が形成された蒸着マスクであって、
前記貫通孔が形成された第1面及び第2面と、
前記第1面及び前記第2面に接続され、前記蒸着マスクの長手方向における前記蒸着マスクの輪郭を画定する一対の長側面と、
前記第1面及び前記第2面に接続され、前記蒸着マスクの幅方向における前記蒸着マスクの輪郭を画定する一対の短側面と、を備え、
前記長側面は、前記第1面側に位置する第1端部と、前記第2面側に位置するとともに前記第1端部よりも内側に位置する第2端部とを含み、且つ内側へ凹んだ第1部分を有し、
前記貫通孔は、前記第1面側に形成された第1凹部と、前記第2面側に形成され、孔接続部において前記第1凹部に接続された第2凹部と、を含み、
前記長側面の前記第1部分の前記第1端部が、前記孔接続部よりも前記第1面側に位置する、蒸着マスク。」
(イ)「【0035】
(蒸着マスク)
・・・
【0036】
次に、貫通孔25に関連する蒸着マスク20の構成について説明する。図3及び図4に示すように、蒸着マスク20は、第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が形成された、少なくとも1つの有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。有効領域22は、蒸着マスク20のうち、有機EL基板92の表示領域に対面する領域である。
・・・
【0046】
図1に示すようにして蒸着マスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、蒸着マスク20の第1面20aが、有機EL基板92に対面し、蒸着マスク20の第2面20bが、蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置する。したがって、蒸着材料98は、次第に開口面積が小さくなっていく第2凹部35を通過して有機EL基板92に付着する。図6において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から有機EL基板92に向けて有機EL基板92の法線方向Nに沿って移動するだけでなく、有機EL基板92の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98の多くは、貫通孔25を通って有機EL基板92に到達するよりも前に、第2凹部35の壁面36に到達して付着する。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくし、これによって、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31の高さを小さくすることが好ましい。すなわち、蒸着マスク20を構成するための基材21として、蒸着マスク20の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みtを小さくすることが好ましいと言える。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の厚みtは、50μm以下に、例えば5μm以上且つ50μm以下に設定される。・・・」
(ウ)「【0061】
次に、金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する方法について、主に図13~図24を参照して説明する。以下に説明する蒸着マスク20の製造方法では、図13に示すように、金属板64を加工して、金属板64に、貫通孔25を含む複数の蒸着マスク部分を形成し(加工工程)、その後、蒸着マスク部分を金属板64から分離する(分離工程)ことによって、枚葉状の蒸着マスク20を得ることができる。
・・・
【0075】
図22Aは、上述のようにして蒸着マスク20を加工して貫通孔25を形成することによって得られた中間製品50を示す平面図である。中間製品50は、複数の蒸着マスク部分51と支持部分56とを備える。蒸着マスク20の製造工程における金属板64の搬送方向は、長手方向D1に一致する。
【0076】
蒸着マスク部分51は、金属板64のうち、分離されることによって蒸着マスク20となる部分である。図22Aに示すように、複数の蒸着マスク部分51は、幅方向D2に並んでいる。
【0077】
支持部分56は、平面視において複数の蒸着マスク部分51を囲むとともに蒸着マスク部分51に部分的に接続されている部分である。図22Aに示す例において、支持部分56は、金属板64のうち蒸着マスク部分51以外の部分である。図22Aに示すように、蒸着マスク部分51は、短側面27において接続箇所54を介して支持部分56に接続されている。
【0078】
図22Bは、図22Aの中間製品50のうち符号XXIIBが付された点線で囲われた領域を拡大して示す図である。上述の接続箇所54において、蒸着マスク部分51の短側面27は、支持部分56に向かって突出し、且つ支持部分56に接続されている複数の凸部53aを含んでいる。例えば、中間製品50のうち短側面27と支持部分56との間には、金属板64を貫通する複数の第2貫通部55bが、短側面27が延びる方向に沿って並んでいる。幅方向D2における第2貫通部55bの寸法Kは、例えば30μm以上であり、また、例えば100μm以下である。凸部53aは、短側面27が延びる方向において隣接する2つの第2貫通部55bの間に位置する。一方、蒸着マスク部分51の長側面26は、支持部分56に接続されていない。言い換えると、中間製品50のうち蒸着マスク部分51の長側面26と支持部分56との間には、金属板64を貫通する第1貫通部55aが、長側面26が延びる方向に沿って延びている。幅方向D2における第1貫通部55aの寸法Sは、例えば0.1mm以上であり、また、例えば5mm以下である。
・・・
【0085】
(分離工程)
・・・
【0086】
図23は、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離する分離工程を示す図である。上述のように、蒸着マスク部分51の長側面26と支持部分56とは接続されていない。このため、短側面27において蒸着マスク部分51と支持部分56との間の接続箇所54を破断させることにより、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離して蒸着マスク20を得ることができる。図24は、中間製品50から得られた蒸着マスク20を拡大して示す平面図である。」
(エ)「【0089】
蒸着マスク装置の製造方法
次に、蒸着マスク20とフレーム15とを組み合わせて蒸着マスク装置10を製造する方法について説明する。まず、フレーム15を準備する。続いて、図25に示すように、溶接などによって蒸着マスク20の第2面20bをフレーム15に固定する。例えば、まず、フレーム15と蒸着マスク20とを重ねた状態で、第1面20a側からカメラなどを用いて蒸着マスク20を撮影する。この際、蒸着マスク20には張力が付与されていてもよい。続いて、撮影によって得られた画像に基づいて、フレーム15に対する蒸着マスク20の位置を検出する。例えば、長手方向D1における蒸着マスク20の輪郭の位置を検出する。続いて、フレーム15に対する蒸着マスク20の位置が所定の位置になるよう、蒸着マスク20の位置を調整する。」
(オ)「【図22A】
[図:0001411262000007.jpg]
【図22B】
[図:0001411262000008.jpg]
【図23】
[図:0001411262000009.jpg]
【図24】
[図:0001411262000010.jpg]
【図25】
[図:0001411262000011.jpg]
」
オ 甲5に記載された事項
(ア)「【請求項1】
額縁状のフレームに固定して使用するメタルマスクであって、前記フレームに対して固定すべき領域よりも外側に位置するクランプ領域を備え、該クランプ領域の表裏の少なくとも一方の表面に粗面を形成したことを特徴とするメタルマスク。」
(イ)「【0008】
また、前記メタルマスクには、フレームに固定して使用する有効領域を取り囲む位置に易切断線を形成しておくことが好ましい。このように、有効領域を取り囲む位置に易切断線を設けておくと、このメタルマスクをフレームに固定した後、易切断線を利用して、その外側にあるクランプ領域を含む不要部分を容易に切断、除去することができる。」
(ウ)「【0012】
【発明の実施の形態】
以下、有機EL素子製造工程における蒸着に用いる多面付けのメタルマスクを例にとって本発明の好適な実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係るメタルマスク及びそれを取り付けるフレームの概略斜視図、図2はメタルマスクをフレームに固定した状態で示す概略斜視図、図3はメタルマスクの一部を拡大して示す概略平面図である。図1~図3において、1はメタルマスク、2はそのメタルマスク1を支持するための額縁状のフレームである。メタルマスク1は、インバー材、ステンレスなどの金属薄板で形成され、多数の微細なスリットを平行に並べて形成したパターン部3を複数個備えている。更に、図1に示すように、フレーム2に取り付ける前のメタルマスク1は、その4辺の側縁部分1bを適当なクランプでつかんで張力を加えた状態で、フレーム2の上に乗せてスポット溶接することができるよう、フレーム2よりも縦横両方向ともに大きいサイズに作っている。以下、クランプで把持される側縁部分1bをクランプ領域という。また、メタルマスク1は、そのメタルマスク1をフレーム2に固定して残す有効領域1aを取り囲む位置に易切断線4を形成している。この易切断線4は、メタルマスク1をこの易切断線4に沿って折り曲げることなどにより容易に切断しうるものであり、ハーフカット、ミシン目などで形成されている。易切断線4として、ハーフカットを用いる場合、パターン部3のエッチングと同時にハーフエッチングを行って形成することが好ましい。なお、易切断線4は、メタルマスク1に加える引張力には耐え得る強度は備えている。更に、メタルマスク1のクランプ領域1bの表裏の少なくとも一方の表面は、クランプで把持した時に滑りにくくするため粗面としている。粗面の形態は任意であり、例えば、多数の独立した突起或いは凹みを備えたもの、多数の平行な溝或いは凸条を備えたもの、多数の溝或いは凸状を交叉して配置したもの等を例示できる。粗面の形成方法は任意であるが、ハーフエッチングにより形成することが、パターン部3のエッチングと同時に形成できるので好ましい。粗面の表面粗さは、クランプに対して極力滑りを生じないように定めればよく、例えば、粗面をハーフエッチングで形成する場合には、ハーフエッチング深さがメタルマスクの厚さの60%程度とすることが好ましい。」
(エ)「
[図:0001411262000012.jpg]
」
カ 甲6に記載された事項
(ア)「【請求項1】
額縁状のフレームに溶接固定して使用するメタルマスクであって、表面に溶接固定すべき位置を案内するマークを付していることを特徴とするメタルマスク。」
(イ)「【0012】
【発明の実施の形態】
以下、有機EL素子製造工程における蒸着に用いる多面付けのメタルマスクを例にとって本発明の好適な実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係るメタルマスク及びそれを取り付けるフレームの概略斜視図、図2はメタルマスクをフレームに固定した状態で示す概略斜視図である。図1、図2において、1はメタルマスク、2はそのメタルマスク1を支持するための額縁状のフレームである。メタルマスク1は、インバー材、ステンレスなどの金属薄板で形成され、多数の微細なスリットを平行に並べて形成したパターン部3を複数個備えている。更に、図1に示すように、フレーム2に取り付ける前のメタルマスク1は、その4辺の側縁部分1bを適当なクランプでつかんで張力を加えた状態で、フレーム2の上に乗せてスポット溶接することができるよう、フレーム2よりも縦横両方向ともに大きいサイズに作っている。また、フレーム2に固定した後、4辺の不要な側縁部分1bを容易に除去してその内側の有効部分1aをフレーム2上に残すことができるよう、有効部分1aを取り囲む位置に、折り曲げることなどによって容易に切断することができるよう、ハーフカット、ミシン目などの易切断線4を形成している。なお、易切断線4は、メタルマスク1に加える引張力には耐え得る強度は備えている。フレーム2は、メタルマスク1の多数のパターン部3を形成した領域を包含する大きさの開口部5を備えた額縁状のものである。更に、フレーム2は張力を加えた状態のメタルマスク1を固定した後においても、そのメタルマスク1の張力によってたわんでメタルマスクにゆがみやたるみが生じることがないよう、また、保管時、蒸着機への取付時、蒸着操作時などの取り扱い時においても常にメタルマスク1を平坦な状態に保持しうるよう、大きい剛性を備えたものであり、その剛性を付与するため、フレーム2には十分な厚さ及び幅を持たせている。フレーム2の材料としては、通常、ステンレス、インバー材などの金属材が使用される。」
(ウ)「
[図:0001411262000013.jpg]
」
キ 甲7に記載された事項
(ア)「【請求項1】
メタルマスクを取り付けるための窓枠形状のフレームであって、多数の穴を形成した窓枠形状の薄板を複数枚積層して接合し、一体化したことを特徴とするメタルマスク用フレーム。」
(イ)「【0024】
メタルマスク12は、金属薄板製のもので、複数のマスク部15を縦横に並べて形成している。各マスク部15は、エッチング等によって形成した多数の微少な開口部を備えたものである。各マスク部15における開口部は、蒸着時に蒸気の通過を許容するためのものであり、その開口部の形状、配列は任意であり、例えば、細長いスリット状の開口部を平行に並べたもの、スロット状の開口部を縦方向に並べると共に平行にも並べたもの等を挙げることができる。フレーム13に取り付ける前のメタルマスク12は、フレーム13よりも縦横両方向ともに大きいサイズに作られており、フレーム13の外周縁にほぼ対応する位置に、折り曲げることで容易に切断可能な易切断線19をハーフエッチングなどによって形成している。なお、易切断線19は、メタルマスク12に加えるテンションには耐え得る強度を備えたものである。メタルマスク12の厚さ、マスク部15の寸法、それに形成した多数の微少な開口部の寸法等は特に限定するものではないが、代表的なものとして、メタルマスク12の厚さは30~200μm、マスク部15の寸法は長さが50~70mm、幅が30~50mm、開口部の幅が40~100μm、平行に配列された開口部間の無孔部分の幅が80~200μm等を例示できる。」
(ウ)「
[図:0001411262000014.jpg]
」
ク 甲8に記載された事項
(ア)「【請求項1】
窓枠形状のフレームに金属テープを、テンションを付加した状態で取り付ける方法であって、前記金属テープを前記フレームの金属テープ取り付け位置に配置する工程と、前記金属テープの両端近傍を把持し、前記フレームの金属テープ取り付け位置の近傍に反力を取ってテンションを付加し、その状態で前記フレームの反り量を測定し、反り量が所望の範囲内となるように前記金属テープに付加するテンションを調整する工程と、前記金属テープの両端近傍をそれぞれ前記フレームに固定する工程を有することを特徴とする金属テープの取り付け方法。」
(イ)「【0016】
メタルマスク11は、金属薄板製のもので、複数のマスク部12を縦横に並べて形成している。各マスク部12は、エッチング等によって形成した多数の微少な開口部を備えたものである。各マスク部12における開口部は、蒸着時に蒸気の通過を許容するためのものであり、その開口部の形状、配列は任意であり、例えば、細長いスリット状の開口部を平行に並べたもの、スロット状の開口部を縦方向に並べると共に平行にも並べたもの等を挙げることができる。フレーム13に取り付ける前のメタルマスク11は、フレーム13よりも縦横両方向ともに大きいサイズに作られており、フレーム13の外周縁にほぼ対応する位置に、折り曲げることで容易に切断可能な易切断線15をハーフエッチングなどによって形成している。なお、易切断線15は、メタルマスク11に加えるテンションには耐え得る強度を備えたものである。メタルマスク11の厚さ、マスク部12の寸法、それに形成した多数の微少な開口部の寸法等は特に限定するものではないが、代表的なものとして、メタルマスク11の厚さは30~200μm、マスク部12の寸法は長さが50~70mm、幅が30~50mm、開口部の幅が40~100μm、平行に配列された開口部間の無孔部分の幅が80~200μm等を例示できる。」
(ウ)「
[図:0001411262000015.jpg]
」
ケ 甲9に記載された事項
(ア)「【請求項1】
独立した多数の蒸着通孔を所定パターンで設けられるマスク本体と、マスク本体と一体に配設される枠体とを備える蒸着マスクにおいて、
前記枠体が、マスク本体と連結一体化される保持枠部と、当該保持枠部と一体に配設される補強枠部とを有することを
特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
前記請求項1に記載の蒸着マスクにおいて、
前記枠体における保持枠部と補強枠部との境界部分に、貫通孔もしくは凹部の少なくともいずれかが規則的もしくは不規則的に複数線状に並んだ配置とされる、又は、溝が線状に連続する配置とされる、切離し用加工部が設けられることを
特徴とする蒸着マスク。」
(イ)「【0012】
また、本発明の開示に係る蒸着マスクは、必要に応じて、前記枠体における保持枠部と補強枠部との境界部分に、貫通孔もしくは凹部の少なくともいずれかが規則的もしくは不規則的に複数線状に並んだ配置とされる、又は、溝が線状に連続する配置とされる、切離し用加工部が設けられるものである。
【0013】
このように本発明の開示によれば、枠体の保持枠部と補強枠部との境界部分に切り離し用加工部を設けて、補強枠部を保持枠部から切り離す際の加工対象位置とすることにより、蒸着装置側への枠体保持枠部及びマスク本体の位置決め、固定の後など、補強枠部による枠体の剛性確保が不要となった場合に、補強枠部の保持枠部からの切り離し加工が無理なく容易に行え、蒸着装置による蒸着工程にスムーズに移行できると共に、枠体として残る保持枠部の形状や保持枠部によるマスク本体の補強状態に影響を与えずに補強枠部を切り離すことができ、その後の蒸着工程を問題なく進められる。」
(ウ)「【0035】
この枠体3における保持枠部4と補強枠部5との境界部分には、線状に連続する溝3cと複数の貫通孔3dとを組み合わせた形状の切離し用加工部3bが設けられる。切離し用加工部3bの幅は、例えば、約2mmに設定される。
・・・
【0038】
切離し用加工部3bは、枠体3へのエッチングにより設ける他、機械加工やレーザ加工で不要部分を除去することにより設けることもできる。
なお、切離し用加工部3bは、貫通孔3dを切欠き部3eのある断面形状とするものに限られるものではなく、単純な四角形や円形断面の貫通孔としてもよい。また、切離し用加工部3bは、溝3cと貫通孔3dとを組み合わせた形状の他、貫通孔が所定間隔で併設されない溝が、線状に連続する配置として設けられる構成としてもかまわない。この他、切離し用加工部3bは、貫通孔もしくは凹部の少なくともいずれかが規則的もしくは不規則的に複数線状に並んだ配置として設けられる構成とすることもできる。」
(エ)「【0067】
こうしたマスク本体2と枠体3との組合せからなる蒸着マスク1を、蒸着釜等の蒸着を行う蒸着装置に対し、蒸着可能に設置する。設置に際しては、まず、蒸着マスク1を、蒸着装置に蒸着マスク支持用として設けられるフレーム50に対し適切に位置決めしてから固定する(図10、図11参照)。フレーム50は、例えば、インバー材など低熱膨張係数の材質からなる枠状部材であり、その厚さを10~25mmとして形成される。
この固定は、蒸着マスク1の枠体3における保持枠部4を、フレーム50にスポット溶接などの溶接により強固に且つ蒸着時の熱に耐えうる状態で一体化することでなされる。
・・・
【0070】
フレーム50への保持枠部固定後は、枠体3の保持枠部4の剛性を枠体3自体の構造で担保する、すなわち、保持枠部4をその外側の補強枠部5で補強する構成をそのまま維持する必要がなくなる。蒸着の工程において、蒸着マスク1は小さい方が都合がよいことから、補強目的で残す必要がなく、不要部分となった補強枠部5については、保持枠部4との境界に設けられた切離し用加工部3bで切断し、保持枠部4から分離除去する(図12参照)。
【0071】
この保持枠部4の除去において、あらかじめ枠体3に切離し用加工部3bを設けて、補強枠部5を保持枠部4から切り離す際の加工対象位置とすることで、切り離し加工が無理なく容易に行えると共に、枠体として残る保持枠部4の形状や保持枠部4によるマスク本体2の保持状態に影響を与えずに補強枠部5を切り離すことができ、蒸着装置による蒸着工程にスムーズに移行できる。
【0072】
加えて、加工対象となる切離し用加工部3bは、線状に連続配置される溝3cと、溝3cの連続方向へ所定間隔で複数穿設される貫通孔3dとの組合せ形状とされると共に、貫通孔3dには鋭角の切欠き部3eを設けた構造となっている。このため、この切離し用加工部3bを切断加工して補強枠部5を切り離す際に、切欠き部3eを起点として切離し用加工部3bに沿って切断面が無理なく生成され、保持枠部4側にバリ等が残りにくく、蒸着工程に付随する諸作業に悪影響を及ぼさないようにできる。」
(オ)「
[図:0001411262000016.jpg]
[図:0001411262000017.jpg]
[図:0001411262000018.jpg]
」
コ 甲10に記載された事項
(ア)「【請求項1】 表面が(110)面であるシリコンウェハーの切断予定線上に、エッチングにより貫通孔を開設して脆弱部を形成するシリコンウェハーのブレークパターンにおいて、
前記切断予定線を、前記(110)面上であって、該(110)面に直交する(111)第一面の面方向に設定し、
前記貫通孔を、(111)第一面によって長辺が構成され、この(111)第一面に交差すると共に(110)面に直交する(111)第二面によって短辺が構成される細長い平行四辺形の孔とし、
当該貫通孔を、前記切断予定線を中心にして千鳥状に配置したことを特徴とするシリコンウェハーのブレークパターン。」
(イ)「【0024】この様にしてシリコンウェハー10に平行四辺形の貫通孔14…を千鳥状に穿孔してブレークパターンを作製すると、隣り合う貫通孔14,14同士の間が脆弱部19となり、この脆弱部19の内であっても切断予定線L1に近い側のエッジ同士の間が最短距離となる。したがって、切断力が作用した場合には、図2(c)に示すように、脆弱部19のうちで最も弱い上記最短距離の線上から優先的に破断が発生し、ここで切断することができる。即ち、上記最短距離の線以外の部位から破断が発生することを抑制できる。これにより、切断位置の安定化を図ることができる。また、破断する位置が上記最短距離の線に集中してほぼ直線に円滑に破断するので、割れカスの発生を抑制することもできる。」
(ウ)「
[図:0001411262000019.jpg]
」
サ 甲11に記載された事項
(ア)「【0006】
本発明の目的は、横ミシン目線に沿って破断して上方領域を容易に除去でき、上方領域を除去した後に下方領域の上端部に摘み部を生じさせることができる熱収縮性筒状ラベル及び筒状ラベル付き容器を提供することである。」
(イ)「【0024】
上横ミシン目線31の貫通孔39と下横ミシン目線32の貫通孔39は、千鳥状に配置されている。換言すると、上横ミシン目線31の貫通孔39の下側に下横ミシン目線32の不切り部が位置し且つ上横ミシン目線31の不切り部の下側に下横ミシン目線32の貫通孔39が位置するように、上横ミシン目線31と下横ミシン目線32は横ずれして形成されている。特に、上横ミシン目線31の貫通孔39の下側に下横ミシン目線32の不切り部が位置し、且つ、上横ミシン目線31の貫通孔39の両端部の下側に下横ミシン目線32の貫通孔39の一方端部及び不切り部を挟んで隣接する貫通孔39の他方端部が位置するように、上横ミシン目線31と下横ミシン目線32が形成されていることが好ましい。
上横ミシン目線31の貫通孔39と下横ミシン目線32の貫通孔39を千鳥状に配置することにより、横ミシン目線3に沿って破断しやすくなるとともに、横貫通孔39を縦断する縦長貫通孔4を容易に形成できる。
なお、上横ミシン目線31の貫通孔39と下横ミシン目線32の貫通孔39が、縦方向に並ぶように配置されていてもよい(図示せず)。換言すると、上横ミシン目線31の貫通孔39の下側に下横ミシン目線32の貫通孔39が位置するように、上横ミシン目線31と下横ミシン目線32が形成されていてもよい。」
(ウ)「
[図:0001411262000020.jpg]
」
シ 甲12に記載された事項
(ア)「【請求項1】
接着層と、あらかじめ設定された開封誘導線となるミシン目が形成されたシートと、を有し、
パウチ容器の開封予定位置に貼り着けられ、前記ミシンに沿って前記シートを破断する際に前記パウチ容器を同時に破断可能とすることで開封誘導性を付与可能とされることを特徴とする開封誘導ラベル。」
(イ)「【0042】
図6は、本実施形態における開封誘導ラベルの他の例を示す平面図である。
ここで、ミシン目とは、断続的に設けられた切断線を意味し、図2に示す連続した破断線や、図6(a)に示すように、所定長さで向きが異なる短い切れ目が連続して設けられたミシン目4d,4eとされることができる。
【0043】
あるいは、ミシン目として、千鳥状の破断線、つまり、図6(b)に示すように、短い直線状の切り込み線が、ミシン目の長さ方向(図の左右方向)で隣り合う位置においてミシン目の幅方向(図の上下方向)に互い違いに配置されて、等しいピッチで上下する破断線とされ、これがミシン目の幅方向(図の上下方向)に複数設けられた状態の破断線4f、言い換えると、複数本の一の字がミシン目の幅方向(図の上下方向)に所定のピッチで配列され、この複数本の一の字にミシン目の長さ方向(図の左右方向)で隣接する位置には、ミシン目の幅方向(図の上下方向)に上記のピッチに対して半分だけずれた位置に同じ長さの一の字が千鳥足状に配列され、さらにミシン目の長さ方向(図の左右方向)で隣接する位置ににも同様にしてずれた位置に、複数本の一の字の配列が繰り返されている多数配列の破断線4fなどの形状を有することができる。」
(ウ)「
[図:0001411262000021.jpg]
」
ス 甲13に記載された事項
(ア)「【請求項1】
表側フィルムと裏側フィルムとに囲まれて形成された収容部に被包装物を収容する易開封性包装袋において、
一方の側のフィルムには、当該包装袋の幅方向に延びる、2本のミシン目が設けられ、
他方の側のフィルムには、当該包装袋の厚み方向の投影において、前記2本のミシン目の間に位置するように、前記幅方向に延びる1本のミシン目が設けられていることを特徴とする、易開封性包装袋。
【請求項2】
前記2本のミシン目が千鳥足状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の易開封性包装袋。」
(イ)「
[図:0001411262000022.jpg]
」
セ 甲14に記載された事項
(ア)「【0012】
ところで、蒸着マスクの製造コストを削減するため、はじめに、一つの有機EL表示装置に対応する複数の貫通孔を含む有効領域を、金属板に複数形成し、その後、金属板を複数に切断し、これによって、細長状の複数の蒸着マスクを一度に製造することが知られている。このため、金属板の幅方向の側縁において波打ち形状が現れている場合、切断された蒸着マスクの中には、その幅方向における一方の側縁に形成される波打ち形状が、他方の側縁に形成される波打ち形状よりも大きくなっている蒸着マスクが存在し得る。このような蒸着マスクは、張設しない状態では波打ち形状が形成されている一方の側縁が縮むため、蒸着マスクの法線方向に沿って見たときに蒸着マスクが湾曲する。この場合、蒸着マスクの当該一方の側縁が凹み、他方の側縁が凸となる。」
(イ)「【0081】
(蒸着マスク中間体)
ところで、上述した本実施の形態による蒸着マスク20は、一つの有機EL表示装置に対応する複数の貫通孔25を含む有効領域22を、後述する長尺金属板64に複数形成し、その後、長尺金属板64を複数に切断して得られる。これによって、細長状の複数の蒸着マスク20が一度に製造されるようになる。この場合、図11に示すように、複数の蒸着マスク20が割り付けられるように、長尺金属板64に複数の有効領域22A、22Bが形成された蒸着マスク中間体100を作製し、その後、長尺金属板64が切断されて、個々の蒸着マスク20A、20Bが得られる。」
(ウ)「
[図:0001411262000023.jpg]
」
ソ 甲15に記載された事項
(ア)「【0006】
蒸着マスクを効率的に製造する方法として、まず、複数の蒸着マスクに相当する面積を有する金属板を準備し、次に、複数の蒸着マスクに形成されるべき多数の貫通孔を金属板に形成し、その後、金属板から個々の蒸着マスクを抜き出す、という方法が知られている。例えば特許文献1においては、破断線に沿って金属板を切断することによって、金属板から蒸着マスクを抜き出している。特許文献1において、破断線は、蒸着マスクの長辺及び短辺に対応するパターンで金属板に形成されたミシン目である。」
(イ)「【0082】
図18は、上述のようにして蒸着マスク20を加工して貫通孔25を形成することによって得られた中間製品50を示す平面図である。中間製品50には、蒸着マスク20が割り付けられている。言い換えると、中間製品50は、複数の蒸着マスク部分51と支持部分56とを備える。図18において、符号T1は、蒸着マスク20の製造工程における金属板64の搬送方向を表し、符号T2は、搬送方向T1に直交する方向(以下、幅方向とも称する)を表す。搬送方向T1は、長尺状の金属板64の長手方向に一致する。
【0083】
蒸着マスク部分51は、金属板64のうち、分離されることによって蒸着マスク20となる部分である。蒸着マスク部分51は、蒸着マスク20の一対の長辺26及び一対の短辺27に対応する一対の長辺52及び一対の短辺53を含む。また、蒸着マスク部分51には、複数の貫通孔25が形成されている。例えば、蒸着マスク部分51は、複数の貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。
【0084】
図18に示すように、複数の蒸着マスク部分51は、長辺52に交差する方向に並んでいる。例えば、長辺52は搬送方向T1に平行であり、複数の蒸着マスク部分51が並ぶ方向は幅方向T2に平行である。
【0085】
支持部分56は、平面視において複数の蒸着マスク部分51を囲むとともに蒸着マスク部分51に部分的に接続されている部分である。図18に示す例において、支持部分56は、金属板64のうち蒸着マスク部分51以外の部分である。
【0086】
以下、蒸着マスク部分51と支持部分56との間の接続箇所54について説明する。図19は、図18の中間製品50のうち符号XIXが付された点線で囲われた領域を拡大して示す図である。図18及び図19に示す例において、蒸着マスク部分51の短辺53は、支持部分56に部分的に接続されている。例えば、図19に示すように、蒸着マスク部分51の短辺53は、支持部分56に向かって突出し、且つ支持部分56に接続されている複数の凸部53aを含んでいる。一方、蒸着マスク部分51の長辺52は、支持部分56に接続されていない。言い換えると、蒸着マスク部分51の長辺52と支持部分56との間には、長辺52の全域にわたって隙間55が存在している。また、隣り合う2つの蒸着マスク部分51の長辺52の間にも、支持部分56が存在していない。言い換えると、隣り合う2つの蒸着マスク部分51の長辺52の間には、長辺52の全域にわたって隙間55が存在している。
・・・
【0093】
図20は、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離する分離工程を示す図である。上述のように、蒸着マスク部分51の長辺52と支持部分56とは接続されていない。このため、短辺53において蒸着マスク部分51と支持部分56との間の接続箇所54を破断させることにより、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離して蒸着マスク20を得ることができる。図21は、中間製品50から得られた蒸着マスク20を拡大して示す平面図である。
【0094】
分離工程は、例えば、蒸着マスク部分51の短辺53のうち支持部分56に接続されている接続箇所54を破断させる破断工程を含む。この場合、図21に示すように、蒸着マスク20のうち接続箇所54が破断された箇所、例えば短辺53の凸部53aの先端が、破断面27bとなる。このように、蒸着マスク20の短辺27には部分的に破断面27bが存在する。図22は、図21の矢印XXIIの方向から蒸着マスク20の短辺27の凸部27aの破断面27bを見た場合を示す側面図である。
【0095】
破断工程においては、蒸着マスク部分51を支持部分56に対して例えば図22の上方向に引っ張ることによって、蒸着マスク部分51の短辺53と支持部分56との間の接続箇所54を破断させる。この場合、凸部27aの破断面27bには、図22に示すように、破断時に支持部分56から受けた力に起因するバリ27cが生じることがある。バリ27cは、破断時に支持部分56から受けた力の方向(図22においては下方向)に向かって延びている。破断面27bは、このようなバリ27cが存在する面として定義され得る。一方、蒸着マスク部分51の長辺52は支持部分56に接続されていないので、蒸着マスク20の長辺26には破断面が存在しない。」
(ウ)「【図18】
[図:0001411262000024.jpg]
【図19】
[図:0001411262000025.jpg]
【図20】
[図:0001411262000026.jpg]
」
(2)甲1~甲4に記載された発明及び甲4~甲15に記載された周知の技術的事項
ア 甲1に記載された発明
甲1の上記(1)ア(ア)の【請求項1】を引用する【請求項17】をさらに引用する【請求項18】には、「パターンが形成された本体部と、前記本体部の一側から延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部と、前記少なくとも一つ以上のサイドクランピング部の最外郭のサイドクランピング部に隣接して配される斜めクランピング部と、を備え、前記斜めクランピング部と前記最外郭のサイドクランピング部とがなす角度(θ)は、0°より大きく90°より小さく(0°<θ<90°)、前記本体部と前記サイドクランピング部との間と、前記本体部と前記斜めクランピング部との間が、マスクフレーム組立体のフレームに溶接され、その後、前記サイドクランピング部と前記斜めクランピング部は、除去される分割マスク。」が記載されている。
そして、同(ア)の【請求項20】の記載によれば、サイドクランピング部及び斜めクランピング部の除去は、「切断」により行われるものである。
また、同(ウ)の【0050】の記載によれば、分割マスクは、「細長いスティック状の部材」であり、また、同(イ)の【0010】の「前記スティック本体部の長手方向に沿って延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部」との記載によれば、サイドクランピング部は、細長いスティック状の部材である分割マスクの「長手方向に」形成されるものであるといえる。
以上を踏まえると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「パターンが形成された本体部と、前記本体部の一側から長手方向に延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部と、前記少なくとも一つ以上のサイドクランピング部の最外郭のサイドクランピング部に隣接して配される斜めクランピング部と、を備え、前記斜めクランピング部と前記最外郭のサイドクランピング部とがなす角度(θ)は、0°より大きく90°より小さく(0°<θ<90°)、前記本体部と前記サイドクランピング部との間と、前記本体部と前記斜めクランピング部との間が、マスクフレーム組立体のフレームに溶接され、その後、前記サイドクランピング部と前記斜めクランピング部とは、切断により除去される、細長いスティック状の部材である分割マスク。」
イ 甲2及び甲3に記載された発明
甲2の上記(1)イの記載によれば、甲2には、蒸着用マスクが記載され(甲2の上記(1)イ(ア)の【請求項1】等)、この蒸着用マスク20は、マスクユニット21及びマスクユニット21の長手方向両端に配置されるカッティング部22を含み(同(イ)の【0062】、【0064】)、マスクユニット21と支持フレーム11との間のボンディング工程が完了した後、カッティング部22が切断されるものである(同(イ)の【0066】)。
そして、この蒸着用マスク20は、具体的には、同(ウ)の【図5】で表されるものであるところ、この蒸着用マスク20と、上記アで述べた甲1発明及びその具体的な態様である、甲1の上記(1)ア(エ)の【図1】に記載される分割マスクと比較すると、前者の、【図5】より細長い形状であると見て取れる「蒸着用マスク20」、「マスクユニット21」及び「カッティング部22」は、それぞれ、後者の「細長いスティック状の部材である分割マスク」、「パターンが形成された本体部」及び「前記本体部の一側から長手方向に延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部」に対応するものである。また、甲1発明において、「前記本体部と前記サイドクランピング部との間」が、「マスクフレーム組立体のフレームに溶接され、その後、前記サイドクランピング部」は、「切断により除去される」のと同様に、甲2の蒸着用マスク20も、マスクユニット21と支持フレーム11との間のボンディング工程が完了した後、カッティング部22が切断されるものであるから、甲2には、蒸着用マスク20について、甲1発明と同様の発明が記載されているといえる。
甲3についても、甲3の上記(1)ウの記載によれば、クランプ部120とメインボディ110を有する分割マスク100が記載され(甲3の上記(1)ウ(ウ)のFIG.1)、このクランプ部120は、分割マスク100がフレーム200に溶接された後、切断して除去されるもの(同(イ)の[0053])であるから、甲3にも、分割マスク100について、甲1発明と同様の発明が記載されているといえる。
ウ 甲4に記載された発明
甲4の上記(1)エ(ウ)には、同(オ)の【図22A】、【図22B】、【図23】、【図24】等に示される「中間製品」について、以下の内容が記載されている。
【0075】には、中間製品50は、複数の蒸着マスク部分51と支持部分56とを備えることが記載され、【0076】には、蒸着マスク部分51は、分離されることによって蒸着マスク20となる部分であり、複数の蒸着マスク部分51は、幅方向D2に並ぶものであることが記載され、【0077】には、支持部分56は、平面視において複数の蒸着マスク部分51を囲むとともに蒸着マスク部分51に部分的に接続されている部分であること、蒸着マスク部分51は、短側面27において接続箇所54を介して支持部分56に接続するものであることが記載され、【0078】には、接続箇所54において、中間製品50のうち短側面27と支持部分56との間には、金属板64を貫通する複数の第2貫通部55bが、短側面27が延びる方向に沿って並んでいること、蒸着マスク部分51の長側面26は、支持部分56に接続されていないことが記載され、【0086】には、短側面27において蒸着マスク部分51と支持部分56との間の接続箇所54を破断させることにより、蒸着マスク部分51を支持部分56から分離して蒸着マスク20を得ることができることが記載されている。
以上の「中間製品」に関する内容をまとめると、甲4には、「中間製品」に関する以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
「複数の蒸着マスク部分と支持部分とを備える中間製品であって、
蒸着マスク部分は、分離されることによって蒸着マスクとなる部分であり、複数の蒸着マスク部分は、幅方向D2に並ぶものであり、
支持部分は、平面視において複数の蒸着マスク部分を囲むとともに蒸着マスク部分に部分的に接続されている部分であり、蒸着マスク部分は、短側面において接続箇所を介して支持部分に接続するものであり、
接続箇所において、中間製品のうち短側面と支持部分との間には、金属板を貫通する複数の第2貫通部が、短側面が延びる方向に沿って並び、蒸着マスク部分の長側面は、支持部分に接続されておらず、
短側面において蒸着マスク部分と支持部分との間の接続箇所を破断させることにより、蒸着マスク部分を支持部分から分離して蒸着マスクを得る、
中間製品。」
エ 甲5~甲9に記載された周知の技術的事項
(ア)甲5の上記(1)オ~甲8の上記(1)クの記載によれば、甲5~甲8には、メタルマスクを、フレームにスポット溶接などの溶接により固定後、メタルマスクの不要部分の切断が容易なように、切断箇所に易切断線を設けること(甲5の上記(1)オ(イ)、甲6の上記(1)カ(イ)、甲7の上記(1)キ(イ)、甲8の上記(1)ク(イ))、易切断線は、複数のハーフカット、ミシン目などで形成されること(甲5の同(イ)、(ウ)、甲6の同(イ)、(ウ)、甲7の同(イ)、(ウ)、甲8の同(イ)、(ウ))、易切断線がハーフカットの場合には、ハーフエッチングにより形成されること(甲5の同(イ)、甲7の同(イ)、甲8の同(イ))が記載されている。
ここで、易切断線は、本件発明の脆弱部に相当する。
(イ)甲9の上記(1)ケの記載によれば、甲9には、蒸着マスク1の枠体3における保持枠部4を、フレーム50にスポット溶接などの溶接により一体化した(甲9の上記(1)ケ(エ)の【0067】)後、不要部分となった補強枠部5については、切り離し加工が無理なく容易に行える等のために(同(エ)の【0071】)、保持枠部4との境界に設けられた切離し用加工部3bで切断し、保持枠部4から分離除去すること(同(エ)の【0070】)、切離し用加工部は、貫通孔もしくは凹部の少なくともいずれかが規則的もしくは不規則的に複数線状に並んだ配置されるものであること(同(イ)の【0012】)、また、この切離し用加工部3bは、枠体3へのエッチングにより設けること(同(ウ)の【0038】)が記載されている。
ここで、切離し用加工部は、本件発明の脆弱部に相当し、切離し用加工部として複数設けられる凹部は、枠体3の厚みの途中までエッチングされたものであるから、複数のハーフエッチング部であるといえる。
(ウ)以上によれば、甲5~9に記載されるように、「蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクの不要部分を容易に切断するために、切断箇所に複数のハーフエッチング部を含む脆弱部を位置させること」は、周知の技術的事項であるといえる。
オ 甲10~甲13に記載された周知の技術的事項
甲10の上記(1)コ~甲13の上記(1)スの記載によれば、甲10~甲13には、切断箇所に予め脆弱部(甲10)又はミシン目(甲11、甲12、甲13)を設け、これらの脆弱部又はミシン目に設けられる複数の孔等の配置を切り離しを行う方向に沿って千鳥状に並ぶものとすることが記載されている。
ここで、甲10~甲13の「脆弱部又はミシン目」は、本件発明の「脆弱部」に対応するものであるから、甲10~甲13に記載されるように、「切断箇所に予め脆弱部を設け、この脆弱部に設けられる孔等の配置を切断を行う方向に沿って千鳥状に並ぶものとすること」は、周知の技術的事項であるといえる。
カ 甲4、甲14、甲15に記載された周知の技術的事項
甲4の上記(1)エ、甲14の上記(1)セ及び甲15の上記(1)ソには、金属板を用いて蒸着マスクを製造する際、金属板を加工して、金属板に、複数の蒸着マスク部分を形成し、中間製品又は中間体とし、その後、蒸着マスク部分を金属板から破断(甲4の上記(1)エ(ウ)、(オ)、甲15の上記(1)ソ(イ)、(ウ))又は切断(甲14の上記(1)セ(ア)、(イ))して、蒸着マスクを得ることが記載されている。
ここで、甲4及び甲15における「破断」は、「切断」ともいえるものであるから、甲4、甲14、甲15に記載されるように、「金属板を用いて蒸着マスクを製造する際、金属板を加工して、金属板に、複数の蒸着マスク部分を形成し、その後、蒸着マスク部分を金属板から切断して、蒸着マスクを得ること」は、周知の技術的事項であるといえる。
(3)甲1を主引用例として(取消理由3(甲1を主引用例とする場合)、申立理由5-2)
取消理由3(甲1を主引用例とする場合)、申立理由5-2は、甲1を主引用例とするものであるから、まとめて判断する。
事案にかんがみ、まず、「蒸着マスク」に係る本件発明12について判断し、その後、「蒸着マスクの製造方法」に係る本件発明14、「蒸着マスク中間体」に係る本件発明1~3、7、8について判断する。
ア 本件発明12について
(ア)対比
本件発明12と甲1発明を対比する。
a 甲1の上記(1)ア(イ)の【0007】等の記載によれば、甲1発明1の「分割マスク」は、蒸着に用いるものであるから、本件発明12の「蒸着マスク」に相当し、甲1発明での「細長いスティック状」は、「帯状」といえるものであるから、甲1発明の「細長いスティック状の部材である分割マスク」は、本件発明12の「帯状を有した蒸着マスク」に相当する。
b 甲1発明において、分割マスクが「細長いスティック状の部材である」ことは、概略、分割マスクが一対の長辺と一対の短辺を有する形状であることが理解でき、また甲1発明の分割マスクの具体的な構造を示す、甲1の上記(1)ア(エ)の【図1】も参照すれば、甲1発明の「本体部の一側から長手方向に延びた少なくとも一つ以上のサイドクランピング部」(【図1】における120、121)は、隣接するサイドクランピング部で整列し、これら隣接するサイドクランピング部の長手方向に直交する端の辺で、全体として分割マスクの短辺を形成しているといえるから、甲1発明の「細長いスティック状の部材である分割マスク」は、本件発明12の「一対の第1長辺と一対の第2短辺とを有した縁」に相当する構成を有するものであるといえる。
c 甲1発明の分割マスクの「パターンが形成された本体部」の「パターンが形成された」部分は、そのパターンが複数の孔で形成されるものであるから、本件発明12の「複数のマスク孔を有したマスク部」に相当し、甲1の上記(1)ア(エ)の【図1】を参照すれば、甲1発明の本体部の「パターンが形成された」部分の周囲にパターンが形成されていない部分を有し、この部分は、本件発明12の「周辺部」に相当するといえるから、甲1発明の「分割マスク」は、本件発明12の「複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部」に相当する構成を有しているといえる。
d そうすると、本件発明12と甲1発明は、「帯状を有した蒸着マスクであって、一対の第1長辺と一対の第1短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部と、を備える蒸着マスク。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点1>
本件発明12では、周辺部のうちで、蒸着マスクの長手方向におけるマスク部と第1短辺との間には、一方の第1長辺から他方の第1長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記第1長辺から他方の前記第1長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるのに対し、甲1発明では、このような構成が設けられているのか明らかでない点。
<相違点2>
本件発明12は、縁の少なくとも一部に位置する第1切断痕を備えているのに対し、甲1発明では、このような構成が設けられているのか明らかでない点。
(イ)判断
上記相違点1について、以下検討する。
本件発明12は、周辺部のうちで、蒸着マスクの長手方向におけるマスク部と第1短辺との間に、一方の第1長辺から他方の第1長辺に向けて延びる、千鳥状に並んでいる複数のハーフエッチング部で形成される脆弱部を有するものであるところ、特に、脆弱部を千鳥状に並んでいる複数のハーフエッチング部で形成する技術的な意義について、本件明細書及び図面には以下の記載がある。
「【0011】
上記蒸着マスク中間体において、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいてもよい。
【0012】
上記蒸着マスク中間体によれば、脆弱部が延びる方向において複数のエッチング部が直線状に等間隔で並ぶ場合に比べて、脆弱部が延びる方向において隣り合うエッチング部の間隔を長くすることが可能である。これにより、蒸着マスク中間体の搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じにくくなる。」
「【0080】
[試験例]
第1脆弱部11cの構造が互いに異なる試験例1から試験例4の蒸着マスク11Mを形成した。なお、以下に参照する図14から図17は、蒸着マスク11Mの表面11Fと対向する平面視における第1脆弱部11cの構造を示している。各第1脆弱部11cは、蒸着マスク11Mの表面11Fに位置している。
・・・
【0084】
[試験例4]
図17が示すように、試験例4では、試験例3と同様に、複数のハーフエッチング部11c3によって第1脆弱部11cを形成した。各ハーフエッチング部11c3の形状を試験例3のハーフエッチング部11c3と同一の形状に設定した。一方で、複数のハーフエッチング部11c3を千鳥状に配列した。この際に、幅方向DWにおいて互いに隣り合う2つのハーフエッチング部11c3について、長手方向DLにおいて、一方のハーフエッチング部11c3の位置に対する他方のハーフエッチング部11c3の位置をハーフエッチング部11c3の幅W分だけずらした。また、幅方向DWにおいて互いに隣り合う2つのハーフエッチング部11c3の間の間隔GWを試験例3と同一に設定した。
【0085】
[評価方法および評価方法]
各試験例の蒸着マスク11Mが有する表面11Fの一部をフレーム21に貼り付けることによって、マスク装置20を形成した。次いで、第1脆弱部11cに沿って各蒸着マスク11Mを切断した。蒸着マスク11Mが第1脆弱部11cに沿って切断されるまでに必要な折り曲げの回数を計数したところ、試験例1,3,4では、蒸着マスク11Mを2回折り曲げることによって、蒸着マスク11Mが第1脆弱部11cに沿って切断されることが認められた。これに対して、試験例2では、蒸着マスク11Mを4回折り曲げることによって、蒸着マスク11Mが第1脆弱部11cに沿って切断されることが認められた。このように、試験例1,3,4の蒸着マスク11Mによれば、試験例2の蒸着マスク11Mに比べて、少ない回数の折り曲げによって蒸着マスク11Mを切断することが可能であることが認められた。
【0086】
なお、試験例4の蒸着マスク11Mでは、試験例2,3の蒸着マスク11Mに比べて、長手方向DLにおけるハーフエッチング部11c3間の間隔が長いから、蒸着マスク中間体10の搬送時において第1脆弱部11cの意図しない切断が生じにくい。この点において、試験例4の蒸着マスク11Mは、試験例2,3の蒸着マスク11Mよりも好ましい。」
「【図14】
[図:0001411262000027.jpg]
【図15】
[図:0001411262000028.jpg]
【図16】
[図:0001411262000029.jpg]
【図17】
[図:0001411262000030.jpg]
」
以上の記載によれば、複数のハーフエッチング部を千鳥状に配列することにより、蒸着マスクを少ない回数の折り曲げによって切断することが可能である上に、複数のハーフエッチング部が直線状に等間隔で並ぶ場合に比べて、脆弱部が延びる方向において隣り合うエッチング部の間隔を長くすることが可能であるため、蒸着マスク中間体の搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じにくくなるという技術的な意義が理解できる。
そして、例えば、甲4の上記(1)エ(イ)の【0046】の「蒸着マスク20の厚みtは、50μm以下に、例えば5μm以上且つ50μm以下に設定される」との記載によれば、蒸着マスク、及び蒸着マスクを製造するための蒸着マスク中間体は極めて厚みが薄いものであり、強度が小さいといえるものである以上、蒸着マスク中間体に脆弱部を設ける場合には、脆弱部の意図しない切断を防ぐ必要があるといえる。
以上によれば、本件発明12において、脆弱部を千鳥状に並んでいる複数のハーフエッチング部で形成する技術的な意義は、蒸着マスク中間体の厚みが薄いということを前提とした上で、搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じるという、蒸着マスクに特有の問題に対処するために、脆弱部の構造を改良したものであるといえる。
一方、甲1発明の分割マスクは、「前記本体部と前記サイドクランピング部との間」「が、マスクフレーム組立体のフレームに溶接され、その後、前記サイドクランピング部」「は、切断により除去される」ものであるところ、上記(2)エで述べたように、甲5~甲9の記載によれば、「蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクの不要部分を容易に切断するために、切断箇所に複数のハーフエッチング部を含む脆弱部を位置させること」は、周知の技術的事項であるといえる。
そして、当業者であれば、甲1発明の分割マスクの切断箇所に、当業者が、通常考慮する切り離し加工の容易性等のために、上記周知の技術的事項を適用し、複数のハーフエッチング部を含む脆弱部を位置させることまでは、想到できる可能性はあるものの、甲1には、蒸着マスク中間体の厚みが薄いということを前提とした上で、搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じるという、蒸着マスクに特有の問題に対処することに関する何らの記載もないから、甲1発明には、脆弱部を設けた上で、その構造を改良し、千鳥状に並んでいる複数のハーフエッチング部で形成する動機付けがあるとはいえない。
ここで、上記(2)オで述べたように、甲10~甲13の記載によれば、「切断箇所に予め脆弱部を設け、この脆弱部に設けられる孔等の配置を切断を行う方向に沿って千鳥状に並ぶものとすること」自体は、周知の技術的事項であるといえるが、上述のように、そもそも、甲1発明には、脆弱部を設けた上で、その構造等を改良しようとする動機付けがあるとはいえないのであるから、当業者は、甲1発明に、この周知の技術的事項を採用しようとするとはいえない。また、この周知の技術的事項は、蒸着マスクを前提とするものではないから、仮に、当業者が、甲1発明において、分割マスク(蒸着マスク)に脆弱部を設けた上で、この脆弱部の構造を検討したとしても、蒸着マスクを前提としていない上記の周知の技術的事項を採用しようとするとはいえない。さらに、甲14、甲15には、上記相違点1に係る本件発明12の構成に関係する事項は記載されていない。
そうすると、甲1発明において、切断箇所に、脆弱部が位置するものとし、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の長辺から他方の長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるものとすることは、甲4~甲15に記載される周知の技術的事項を考慮したとしても、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
(ウ)異議申立人の主張について
a 異議申立人の主張の内容
異議申立人は、令和5年7月20日に提出された意見書において、本件発明12の脆弱部を千鳥状に並んでいる複数のハーフエッチング部で形成する点について、甲9の上記(1)ケ(イ)の【0012】の「また、本発明の開示に係る蒸着マスクは、必要に応じて、前記枠体における保持枠部と補強枠部との境界部分に、貫通孔もしくは凹部の少なくともいずれかが規則的もしくは不規則的に複数線状に並んだ配置とされる、又は、溝が線状に連続する配置とされる、切離し用加工部が設けられるものである。」との記載から容易に想到できる旨を主張している(2頁5~23行)。
そして、この点について、特許異議申立書では、「凹部が規則的に複数線状に並んだ配置には、以下に示すように、凹部の位置が同じくして規則的に複数線状に並んだ配置と、凹部の位置がずれて規則的に複数線状に並んだ配置という2つの概念しか想定できず、甲第9号証の上記記載がいずれの配置を特に意味しているとは認められないから、甲第9号証には以下の両方の配置が開示されていると当業者であれば認識する。
[図:0001411262000031.jpg]
」(96頁下から6行~97頁)としている。
b 異議申立人の主張に対する判断
上記aの異議申立人の主張は、「貫通孔もしくは凹部の少なくともいずれかが規則的もしくは不規則的に複数線状に並んだ配置」の記載における「複数」が「線状」に係るものであることを前提としている。
しかしながら、上記の記載において、「規則的」と同じく「不規則的」も「線状に並んだ配置」に係っていることや、「複数線」とは言わず、「複数線状」と言っていることから、「複数」は、単に「貫通孔もしくは凹部」の数を意味するもの、すなわち、上記の記載は、「貫通孔もしくは凹部が、複数、線状に並んだ配置」の意味であると解するのが妥当であるといえる。
そうすると、上記aにおける異議申立人の主張は、前提に誤りがあるため、甲9の上記の記載からは、複数の線の存在を前提とした上記aの模式図に示された2つの配置しか想定できず、甲9にはその両方の配置が開示されているとする旨の上記aにおける異議申立人の主張は、採用することができない。
(エ)小括
以上のとおり、上記相違点1に係る本件発明12の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲1発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明14について
本件発明14は、「帯状部、前記帯状部を囲む枠状部、および、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部を形成すること、および、前記連結部を切断して、前記枠状部から前記帯状部を切り離すことによって蒸着マスクを得ること、を含」む「蒸着マスクの製造方法」であるところ、上記の「蒸着マスク」については、「前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺を有した縁を備え、
前記帯状部は、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、
前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、
前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、
前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる」ものであることが特定されている。
そして、この「蒸着マスク」における「前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる」との構成は、上記ア(ア)で本件発明12と甲1発明を対比した際の相違点1に係る本件発明12の構成と実質的に同じものである。
これによれば、甲1発明を、本件発明14の蒸着マスクの製造方法に対応する分割マスクの製造方法の発明(これも便宜上、以下、「甲1発明」という。)と認定し直して、本件発明14と対比しても、本件発明14と甲1発明との間には、少なくとも、上記ア(ア)で述べた相違点1と同じ相違点が存在することになる。
そして、この相違点に係る本件発明14の「前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる」との構成が、当業者にとり容易に想到し得たものでないことは、上記ア(イ)で述べたとおりである。
そうすると、上記の相違点に係る本件発明14の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明14と甲1発明との間に、さらに他の相違点があるとしても、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は、甲1発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1に、本件発明1の「蒸着マスク中間体」に対応するもの、すなわち、甲1発明の分割マスクを製造する際の前段階のものに関する具体的な記載は何もないから、甲1において、本件発明1と対比する対象は、甲1発明しかない。
そして、本件発明1と甲1発明を対比すると、本件発明1の「蒸着マスク中間体」に関する全ての構成が、甲1発明との間で相違点となる。
ここで、上記(2)カで述べたように、甲4、甲14、甲15によれば、「金属板を用いて蒸着マスクを製造する際、金属板を加工して、金属板に、複数の蒸着マスク部分を形成し、中間製品又は中間体とし、その後、蒸着マスク部分を金属板から切断して、蒸着マスクを得ること」、すなわち、例えば甲4の上記(1)エ(オ)の【図22A】、【図23】、甲15の上記(1)ソ(ウ)の【図18】、【図20】に示される蒸着マスクの中間製品等を形成することは、周知の技術的事項であるといえるが、この中間製品等には、本件発明1の「前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置」する構成を有していない。
そうすると、仮に、甲1発明に、上記の周知の技術的事項を組み合わせたとしても、本件発明1の構成には至らない。
また、蒸着マスクに対しては、上記ア(イ)で述べたように、甲5~甲9によれば、「蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクの不要部分を容易に切断するために、切断箇所に複数のハーフエッチング部を含む脆弱部を位置させること」は、周知の技術的事項であるといえるものの、甲1は、そもそも「蒸着マスク中間体」に対応するもの、すなわち、甲1発明の分割マスクを製造する際の前段階のものに関する具体的な記載は何もなく、「蒸着マスク中間体」に何ら着目するものではないから、甲1発明には、甲1発明の分割マスクを蒸着マスク中間体とした上で、本件発明1に係る脆弱部を、蒸着マスク中間体に設けようとする動機付けがあるとはいえない。さらに、甲10~甲13には、蒸着マスク中間体に関する事項は記載されていない。
そうすると、少なくとも、本件発明1の「蒸着マスク中間体」における「前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置」する構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1と甲1発明との間に、さらに他の相違点があるとしても、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明2について
本件発明2は、「帯状部と、前記帯状部を囲む枠状部と、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置」する「蒸着マスク中間体」との構成を有する点で、本件発明1と共通するものであり、上記ウで当業者が容易に想到し得るものではないとした、本件発明1の「蒸着マスク中間体」における「前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置」する構成と同じ構成を含むものである。
そうすると、上記ウで述べたのと同様の理由により、本件発明2は、甲1発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明3、7、8について
本件発明3、7、8は、本件発明1又は2を引用し、これらを、さらに限定するものであるところ、本件発明1又は2が、甲1発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3、7、8も同様に、甲1発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)甲2、3を主引用例として(取消理由3(甲2、甲3を主引用例とする場合)、申立理由5-3、申立理由5-4)
取消理由3(甲2、甲3を主引用例とする場合)、申立理由5-3、申立理由5-4は、甲2、3を主引用例とするものであるから、まとめて判断する。
事案にかんがみ、まず、「蒸着マスク」に係る本件発明12について判断し、その後、「蒸着マスクの製造方法」に係る本件発明14、「蒸着マスク中間体」に係る本件発明1~3、7、8について判断する。
ア 本件発明12、14について
上記(2)イで述べたように、甲2には、「蒸着用マスク20」について、甲3には、「分割マスク100」について、甲1発明と同様の発明(以下、便宜上、「甲2発明」、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
そうすると、本件発明12と、甲2発明又は甲3発明を対比すると、本件発明12と、甲2発明又は甲3発明は、上記(3)ア(ア)で述べた相違点1及び相違点2の点で相違することになる。
そして、この相違点1について検討すると、上記(3)ア(イ)で述べたように、本件発明12において、「複数のハーフエッチング部を千鳥状に配列すること」には、蒸着マスクを少ない回数の折り曲げによって切断することが可能である上に、複数のハーフエッチング部が直線状に等間隔で並ぶ場合に比べて、脆弱部が延びる方向において隣り合うエッチング部の間隔を長くすることが可能であるため、蒸着マスク中間体の搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じにくくなるという技術的な意義があると理解できるところ、甲2、甲3には、蒸着マスク中間体の厚みが薄いということを前提とした上で、搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じるという、蒸着マスクに特有の問題に対処することに関する何らの記載もない点で甲1と同じであるから、上記(3)ア(イ)で述べたのと同様の理由により、甲2発明又は甲3発明において、切断箇所に、脆弱部が位置するものとし、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の長辺から他方の長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるものとすることは、甲4~甲15に記載される周知の技術的事項を考慮したとしても、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
そうすると、上記相違点1に係る本件発明12の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲2発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項、又は甲3発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明14も、上記(3)イで述べたのと同様の理由により、甲2発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項、又は甲3発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明1、2について
本件発明1と甲2発明又は甲3発明を対比する。
甲2又は甲3には、本件発明1の「蒸着マスク中間体」に対応するもの、すなわち、甲2発明の蒸着用マスク、又は甲3発明の分割マスクを製造する際の前段階のものに関する具体的な記載は何もないから、甲1と同様に、甲2又は甲3において、本件発明1の「蒸着マスク中間体」と対比する対象は、甲2発明の「蒸着マスク」又は甲3発明の「分割マスク」しかない。
これによれば、本件発明1と甲2発明又は甲3発明を対比すると、本件発明1の「蒸着マスク中間体」に関する全ての構成が、甲2発明又は甲3発明との間で相違点となる。
そして、上記(3)ウで述べたのと同様の理由により、仮に、甲2発明又は甲3発明に、甲4、甲14、甲15に記載される「金属板を用いて蒸着マスクを製造する際、金属板を加工して、金属板に、複数の蒸着マスク部分を形成し、中間製品又は中間体とし、その後、蒸着マスク部分を金属板から切断して、蒸着マスクを得ること」、すなわち、例えば甲4の上記(1)エ(オ)の【図22A】、【図23】、甲15の上記(1)ソ(ウ)の【図18】、【図20】に示される蒸着マスクの中間製品等を形成するという周知の技術的事項を組み合わせたとしても、本件発明1の構成には至らない。
また、甲2又は甲3には、甲1と同様に、そもそも「蒸着マスク中間体」に対応するもの、すなわち、甲2発明の蒸着マスク又は甲3発明の分割マスクを製造する際の前段階のものに関する具体的な記載は何もないのであるから、甲5~甲9に記載されるように、「蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクの不要部分を容易に切断するために、切断箇所に複数のハーフエッチング部を含む脆弱部を位置させること」が、周知の技術的事項であるとしても、甲2発明又は甲3発明には、甲2発明の蒸着マスク又は甲3発明の分割マスクを、蒸着マスク中間体とした上で、本件発明1に係る脆弱部を、蒸着マスク中間体に設けようとする動機付けがあるとはいえない。さらに、甲10~甲13には、蒸着マスク中間体に関する事項は記載されていない。
そうすると、少なくとも、本件発明1の「蒸着マスク中間体」における「前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置」する構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1と、甲2発明又は甲3発明との間に、さらに他の相違点があるとしても、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項、又は甲3発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2についても、上記(3)エで述べたのと同様の理由により、甲2発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項、又は甲3発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明3、7、8について
本件発明3、7、8は、本件発明1又は2を引用し、これらを、さらに限定するものであるところ、本件発明1又は2が、甲2発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項、又は甲3発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3、7、8も同様に、甲2発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項、又は甲3発明及び甲4~甲15に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)甲4を主引用例として(申立理由5-1)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明を対比する。
a 甲4発明の「中間製品」を示す甲4の上記(1)エ(オ)の【図22A】も参照すると、甲4発明の「蒸着マスク部分」、「支持部分」、「中間製品」は、それぞれ、本件発明1の「帯状部」、「枠状部」、「蒸着マスク中間体」に相当する。
そして、甲4発明の「平面視において複数の蒸着マスク部分を囲む」「支持部分」は、本件発明1の「前記帯状部を囲む枠状部」に相当し、甲4発明の「蒸着マスク部分に部分的に接続されている部分であり」、「短側面と支持部分との間には、金属板を貫通する複数の第2貫通部が、短側面が延びる方向に沿って並び」、「破断させることにより、蒸着マスク部分を支持部分から分離」する「蒸着マスク部分と支持部分との間の接続箇所」は、本件発明1の「前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部」に相当する。
そうすると、甲4発明の「複数の蒸着マスク部分と支持部分とを備える中間製品であって」、「支持部分は、平面視において複数の蒸着マスク部分を囲むとともに」、「蒸着マスク部分に部分的に接続されている部分であり」、「蒸着マスク部分と支持部分との間の接続箇所」は、「短側面と支持部分との間には、金属板を貫通する複数の第2貫通部が、短側面が延びる方向に沿って並び」、「破断させることにより、蒸着マスク部分を支持部分から分離」するものである中間製品は、本件発明1の「帯状部と、前記帯状部を囲む枠状部と、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え」る「蒸着マスク中間体」に相当する。
b 甲4発明の「蒸着マスク部分」には、「短側面」や「蒸着マスク部分の長側面」の特定もあることから、甲4発明の「蒸着マスク部分」は、本件発明1の「一対の長辺と一対の短辺とを有した縁」に相当する構成を有するものである。
また、甲4発明の「蒸着マスク部分」が支持部分から分離した後の「蒸着マスク」について、甲4の上記(1)エ(イ)の【0036】には、「蒸着マスク20は、第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が形成された、少なくとも1つの有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。」と記載されていることから、甲4発明の「蒸着マスク部分」は、「第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が形成された、少なくとも1つの有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む」ものであり、これは、本件発明1の「複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部」に相当する。
そうすると、甲4発明の「蒸着マスク部分」は、本件発明1の「前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え」に相当する構成を有するものである。
c 以上によれば、本件発明1と甲4発明は、「帯状部と、前記帯状部を囲む枠状部と、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備える、蒸着マスク中間体。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点3>
蒸着マスク中間体について、本件発明1では、周辺部のうちで、帯状部の長手方向におけるマスク部と短辺との間には、一方の長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるのに対し、甲4発明では、このような構成を有していない点。
(イ)相違点3に対する判断
a 甲4の上記(1)エ(エ)の【0089】の「蒸着マスク20とフレーム15とを組み合わせて蒸着マスク装置10を製造する方法について説明する。まず、フレーム15を準備する。続いて、図25に示すように、溶接などによって蒸着マスク20の第2面20bをフレーム15に固定する。」との記載によれば、甲4発明における「中間製品」において、蒸着マスク部分は支持部分から分離され蒸着マスクとされた後、蒸着マスクは、同(オ)の【図25】に示されるようにフレームに固定され、同図で10として表される蒸着マスク装置を形成するものである。
そして、本件発明1における「脆弱部」とは、甲4の同(オ)の【図25】でいえば、蒸着マスクがフレームに取り付けられた後、フレームより外側の端部を取り除くために、蒸着マスクのフレーム上に位置する部分に設けられるものであるところ、そもそも甲4には、蒸着マスク装置において、蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクのフレームより外側の端部を取り除くことが記載されていないことから、甲4発明には、蒸着マスク装置において、蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクのフレームより外側の端部を取り除くための脆弱部を設ける動機付けがあるとはいえない。
ここで、上記(2)エで述べたように、甲5~甲9の記載によれば、「蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクの不要部分を容易に切断するために、切断箇所に複数のハーフエッチング部を含む脆弱部を位置させること」は、周知の技術的事項であるといえるが、上述のように、甲4には、蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクのフレームより外側の端部を取り除くための脆弱部を設ける動機付けがあるとはいえないし、ましてや、中間製品の段階のものに脆弱部を設ける動機付けがあるとはいえないのであるから、上記周知事項を考慮したとしても、甲4発明において、「中間製品」における蒸着マスク部分の支持部分との切断箇所よりも内側に脆弱部を設けること、すなわち、上記相違点3における本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
b しかも、甲4発明における「中間製品」から蒸着マスク部分を分離する際には、蒸着マスク部分と支持部分との間の接続箇所を破断させることにより、蒸着マスク部分を支持部分から分離して蒸着マスクを得ることになるが、この接続箇所より蒸着マスクの内側に脆弱部があっては、「中間製品」から蒸着マスク部分を接続箇所で分離する際に、この脆弱部で破断が生じる恐れがあるから、甲4発明において、蒸着マスク部分における接続箇所に加えて、切断箇所より蒸着マスクの内側に脆弱部を設ける、すなわち、上記相違点3における本件発明1の構成を採用する動機付けあるとはいえず、この観点からも、甲4発明において、上記相違点3における本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
c さらに、蒸着マスク中間体について、周辺部のうちで、帯状部の長手方向におけるマスク部と短辺との間に、一方の長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部を設けることに関し、甲1~甲3、甲10~甲13にも、何らの記載はない。
(ウ)小括
以上のとおり、甲4発明の蒸着マスク中間体の蒸着マスク部分に相当する構成において、周辺部のうちで、帯状部の長手方向におけるマスク部と短辺との間に、一方の長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部を設けることは、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点3における本件発明1の「前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる」との脆弱部の構造の容易想到性を検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲1~甲3、甲5~甲13に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、「帯状部と、前記帯状部を囲む枠状部と、前記帯状部と前記枠状部との間に位置し、前記帯状部を前記枠状部に連結する連結部と、を備え、前記帯状部は、一対の長辺と一対の短辺とを有した縁と、複数のマスク孔を有したマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部とを備え、前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置」する「蒸着マスク中間体」との構成を有する点で、本件発明1と共通するものである。
そして、本件発明2も、上記アで述べた相違点3に係る「前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置」との構成を含むものであるが、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由により、この構成については、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
そうすると、甲4発明の蒸着マスク中間体の蒸着マスク部分に相当する構成において、少なくとも、周辺部のうちで、帯状部の長手方向におけるマスク部と短辺との間に、一方の長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部を設けることは、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明2の他の構成について検討するまでもなく、本件発明2は、甲4発明及び甲1~甲3、甲5~甲13に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明3、7、8について
本件発明3、7、8は、本件発明1又は2を引用し、さらに限定するものであるところ、本件発明1又は2が、甲4発明及び甲1~甲3、甲5~甲13に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明3、7、8も同様に、甲4発明及び甲1~甲3、甲5~甲13に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明12について
本件発明12は、「蒸着マスク」に係るものであり、本件発明1における「蒸着マスク中間体」における枠状部から分離する「帯状部」に対応するものである。
一方、甲4発明も「中間製品」から蒸着マスク部分を分離し、「蒸着マスク」を製造するものであり、本件発明12の「蒸着マスク」は、甲4発明の「中間製品」の支持部分から分離される「蒸着マスク」が対応することになる。
そして、甲4発明の「中間製品」から分離された蒸着マスク部分を「蒸着マスク」の発明(これも便宜上、以下、「甲4発明」という。)として認定し直したものを示す、甲4の上記(1)エ(オ)の【図25】を見ても、蒸着マスクには、本件発明12の「脆弱部」に相当するものが何ら記載されていないから、少なくとも、甲4発明は、本件発明12の「周辺部のうちで、蒸着マスクの長手方向におけるマスク部と第1短辺との間には、一方の第1長辺から他方の第1長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し、前記脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記第1長辺から他方の前記第1長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並び」との構成を有していない点で、本件発明12と相違している。
ここで、上記相違点の内、「周辺部のうちで、蒸着マスクの長手方向におけるマスク部と第1短辺との間には、一方の第1長辺から他方の第1長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置し」の点については、上記ア(イ)aで述べたように、甲4には、蒸着マスク装置において、蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクのフレームより外側の端部を取り除くことが記載されていないことから、甲4発明には、蒸着マスク装置において、蒸着マスクをフレームに取り付けた後、蒸着マスクのフレームより外側の端部を取り除くための脆弱部を設ける動機付けがあるとはいえない。
しかも、本件発明12は、さらに、「脆弱部」の構造が、「脆弱部は、複数のハーフエッチング部を含み、前記複数のハーフエッチング部は、一方の前記第1長辺から他方の前記第1長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並び」との構成を有するものであるが、上記(3)ア(イ)で述べたように、この構成は、甲1~甲15に記載の事項から、当業者が容易に想到し得たものではないから、この点でも、上記の相違に係る本件発明12の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
以上のとおり、上記の相違点に係る本件発明12の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから、本件発明12は、甲4発明及び甲1~甲3、甲5~甲13に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明14について
上記(3)イで述べたように、本件発明14と本件発明12で共通する構成を考慮すると、本件発明14と甲4発明との間には、少なくとも、上記エで述べた、本件発明12と甲4発明との間の相違点と同じ相違点が存在することになる。
そして、この相違点に係る本件発明14の構成が、当業者にとり容易に想到し得たものでないことは、上記エで述べたとおりである。
そうすると、上記の相違点に係る本件発明14の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明14と甲4発明との間に、さらに他の相違点があるとしても、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は、甲4発明及び甲1~甲3、甲5~甲13に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)請求項12を対象とする取消理由3、申立理由5-1~5-4に関するまとめ
以上のとおり、本件発明1~3、7、8、12、14について、請求項12を対象とする取消理由3、申立理由5-1~5-4には理由がない。
3 申立理由1について(サポート要件違反)
(1)申立理由1の概要
サポート要件の判断における規範は、「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。」ところ、本件発明の課題は、「蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とすることを可能」とすることであり、その解決手段は、複数のハーフエッチング部を千鳥状に構成することである(本件明細書の【0006】、【0010】、【0031】)。
そして、課題と解決手段との実質的な対応関係が以下の2点で不明である。
ア 本件発明1~3、7~8、12、14は、課題解決手段として、複数のハーフエッチング部は、一方の長辺から他方の長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるという構成を有する。
ここで、本件明細書の試験例4には、幅方向DWにおいて互いに隣り合う2つのハーフエッチング部11c3について、長手方向DLにおいて、一方のハーフエッチング部11c3の位置に対する他方のハーフエッチング部11c3の位置をハーフエッチング部11c3の幅W分だけずらして、千鳥状としたことが開示されており、試験例4の蒸着マスク11Mによれば、試験例2の蒸着マスク11Mに比べて、少ない回数の折り曲げによって蒸着マスク11Mを切断することが可能であったことが開示されている。
※ 試験例4:一方のハーフエッチング部11c3の位置に対する他方のハーフエッチング部11c3の位置をハーフエッチング部11c3の幅W分だけずらした例
[図:0001411262000032.jpg]
試験例4では、破線で示す直線部分が、最も多くのハーフエッチング部11c3を横断する部分となり、強度の弱い部分となる。当業者からすれば、折り曲げの際に、破線で示す直線部分に折り曲げの力が集中しやすく、折り曲げによる応力が集中しやすいことは自明である。
以下に示す試験例3は試験例4をより単純化した例であり、破線で示す直線部分が多くのハーフエッチング部11c3を横断しており、応力集中が生じやすい。試験例3と試験例4がともに2回の折り曲げで切断できたことが示されているが、これは、折り曲げには、破線で示す直線部分におけるハーフエッチング部の密度(数)が重要であるといういわば当業者にとって自明なことを示しているにすぎない。
[図:0001411262000033.jpg]
つまり、千鳥状にハーフエッチング部を構成した試験例4で生じている折り曲げによる応力の集中とそれによる切断のしやすさというのは、千鳥状にハーフエッチング部を構成したこととは一切関係ない。
したがって、当業者からすれば、「蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とする」という課題と、ハーフエッチング部を千鳥状に構成するという解決手段との実質的な対応関係は、到底理解できない。
イ 本件発明1~3、7、8、12、14は、課題解決手段として、複数のハーフエッチング部は、一方の長辺から他方の長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるという構成を有するものであるが、ハーフエッチング部を千鳥状に構成すると、折り曲げ部分におけるハーフエッチング部の密度(数)が低下し、むしろ切断を困難にすることがある。
本件発明は、ハーフエッチング部の千鳥状の配列について何ら具体的に特定しておらず、例えば以下のように、二列のハーフエッチング部の配列があり、一方のハーフエッチング部11c3の配列位置に対する他方のハーフエッチング部11c3のDL方向の配列位置を相当程度離したパターンも当然に包含する。
[図:0001411262000034.jpg]
しかし、このようなパターンの場合には、折り曲げ部分を破線で描くと明らかなように、すべてのハーフエッチング部を横断する一つの直線が描けない。言い換えると、千鳥状にハーフエッチング部を形成したとしても、その距離がDL方向に相当程度離間している場合には、明らかに破断に寄与しないハーフエッチング部が約半数生じるし、かけようとする曲げ応力も分散してしまう。
このような場合、約半数のハーフエッチング部が切断に寄与せず、かけようとする曲げ応力も分散してしまうのであるから、当業者からすれば、ハーフエッチング部を千鳥状に構成することによって、むしろ切断が困難となることが明らかである。
したがって、このようなパターンを包含する本件発明は、「端部を取り除く作業を容易とする」という課題とその解決手段との実質的な対応関係を理解できるものではない。
(2)申立理由1に対する判断
ア 上記(1)アの理由に対して
(ア)申立理由1では、本件発明の課題を、「蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とすることを可能」とすることとし、その課題を解決するには、複数のハーフエッチング部を千鳥状に構成する必要があることを前提としている。
しかしながら、本件発明において、「蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とすることを可能」とするとの課題は、本件明細書の【0007】に、「上記課題を解決するための蒸着マスク中間体は、・・・前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置する。」と、【0008】に、「上記課題を解決するための蒸着マスクは、・・・前記周辺部のうちで、前記蒸着マスクの長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置する。」と、【0009】に、「上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、・・・前記周辺部のうちで、前記帯状部の長手方向における前記マスク部と前記短辺との間には、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向けて延びる形状を有した脆弱部が位置する。」と、【0010】に、「上記蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法によれば、脆弱部を切断することによって、帯状部のうち、短辺を含む両端部を、帯状部のうちでマスク部を含む部分から切り離すことが可能である。そのため、帯状部から形成された蒸着マスクをフレームに取り付けた後に、蒸着マスクの端部を取り除くことが容易である。」と記載されるように、蒸着マスク中間体又は蒸着マスクにおいて、帯状部のうち、短辺を含む両端部を、帯状部のうちでマスク部を含む部分から切り離す位置に、「脆弱部」を設けることにより達成されるものである。
そして、本件発明1~3、7、8、12、14の「蒸着マスク中間体」、「蒸着マスク」又は「蒸着マスクの製造方法」に係るいずれの発明においても、上記の「脆弱部」が特定されているのであるから、本件発明1~3、7、8、12、14は、本件明細書に記載される発明の課題を解決できるもの、すなわち、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
そうすると、上記(1)におけるサポート要件の判断における規範に照らせば、本件発明1~3、7、8、12、14に対応する特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合している。
(イ)上記(ア)で述べたように、本件発明1~3、7、8、12、14に対応する特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合しているから、上記(1)アの理由は、サポート要件の判断を左右するものではないが、念のため、検討する。
上記(1)アの理由では、「千鳥状にハーフエッチング部を構成した試験例4で生じている折り曲げによる応力の集中とそれによる切断のしやすさというのは、千鳥状にハーフエッチング部を構成したこととは一切関係ない。したがって、当業者からすれば、「蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とする」という課題と、ハーフエッチング部を千鳥状に構成するという解決手段との実質的な対応関係は、到底理解できない。」としているが、上記(ア)で述べたように、「蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とする」ことには、「ハーフエッチング部を千鳥状」にすることを含め、蒸着マスクに「脆弱部」を設けることが対応している。すなわち、蒸着マスクに何らの「脆弱部」が設けられていない場合に比べて、「ハーフエッチング部を千鳥状」にした脆弱部が設けられた方が、蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とすることができることは、当業者にとり明らかである。
なお、「ハーフエッチング部を千鳥状」にした技術的な意義は、上記2(3)ア(イ)で述べたように、「蒸着マスクを少ない回数の折り曲げによって切断することが可能である上に、複数のハーフエッチング部が直線状に等間隔で並ぶ場合に比べて、脆弱部が延びる方向において隣り合うエッチング部の間隔を長くすることが可能であるため、蒸着マスク中間体の搬送時において、脆弱部の意図しない切断が生じにくくなる」ことであるから、複数のハーフエッチング部が直線状に等間隔で並ぶ場合(上記(1)アにおける試験例3)に比べて、ハーフエッチング部が千鳥状に並ぶ場合(上記(1)アにおける試験例4)が、より切断し易くなければならないというものではない。
以上によれば、上記(1)アの理由は、妥当なものではない。
イ 上記(1)イの理由に対して
上記ア(ア)で述べたように、本件発明1~3、7、8、12、14に対応する特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合しているから、上記(1)イの理由は、サポート要件の判断を左右するものではないが、念のため、検討する。
上記ア(イ)で述べたように、蒸着マスクに何らの「脆弱部」が設けられていない場合に比べて、「ハーフエッチング部を千鳥状」にした脆弱部が設けられた方が、蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とすることができることは、当業者にとり明らかであるから、千鳥状における二列のハーフエッチング部の間に間隔があったとしても、上記(1)イにあるように「ハーフエッチング部を千鳥状に構成すると、折り曲げ部分におけるハーフエッチング部の密度(数)が低下し、むしろ切断を困難にすることがある。」とはいえない。仮に、ハーフエッチング部を千鳥状に構成すると、むしろ切断が困難になるのであれば、そのような構造は、「脆弱部」の範疇に含まれないものであるから、本件発明が対象とするものではない。
以上によれば、上記(1)イの理由は、妥当なものではない。
(3)申立理由1に関するまとめ
以上のとおり、本件特許は、請求項1~3、7、8、12、14の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由1には、理由がない。
4 申立理由2について(実施可能要件違反)
(1)申立理由2の概要
実施可能要件の判断における規範は、「発明の詳細な説明の記載については、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」との要件、いわゆる実施可能要件に適合することが求められている。この規定にいう「実施」とは、特許法2条3項1号における実施を言う。したがって、物の発明について実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうのであるから、物の発明について実施可能要件を満たすというためには、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を生産、使用することができる程度のものでなければならないと解される。」というものであるところ、本件発明1~3、7、8、12、14は、課題解決手段として、複数のハーフエッチング部は、一方の長辺から他方の長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるという構成を有している。
しかし、当業者からすれば、ハーフエッチング部を千鳥状に構成することのみによって、直ちに、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とするという課題が解決できると認められない。
つまり、言い換えれば、ハーフエッチング部を千鳥状に構成することのみによって、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とするという使用ができるとは認められない。
そして、本件発明1~3、7、8、12、14では、ハーフエッチングの深さや形状、ハーフエッチングの「複数」の程度(形成頻度)など、或いは、「千鳥状」に配列されたハーフエッチング部のDL方向の列間の離間距離など、蒸着マスクの端部を取り除く作業を実現するための具体的な構成は明確ではない。また、本件明細書の試験例4(【図17】)に具体的に記載されるもののほか、通常想定される様々な千鳥状の態様を包含する記載となっているが、本件明細書の試験例4(【図17】)に具体的に記載されるもの以外の場合に、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とする使用ができることは、本件明細書の記載を鑑みても、理解できない。
(2)申立理由2に対する判断
上記(1)における理由で、「ハーフエッチング部を千鳥状に構成することのみによって、直ちに、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とするという課題が解決できると認められない。」としているが、実施可能要件の判断では、上記(1)における規範にあるとおり、本件明細書の発明の詳細な説明に、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明の蒸着マスクや蒸着マスク中間体を生産、使用することができる程度の記載があるか否かで判断すべきであって、ハーフエッチング部を千鳥状に構成することが、発明の課題を解決できるものであるか否かの判断は、実施可能要件の判断を左右するものではない。
ここで、本件発明は、蒸着マスクや蒸着マスク中間体に、脆弱部を設けることが技術的な特徴であるところ、本件明細書の【0075】に、この脆弱部は、蒸着マスクがフレームに取り付けられた後、蒸着マスクのうちで短辺寄りの部分を除去するために設けられるものであることが記載されていると共に、【0080】~【0086】及び【図14】~【図17】には、[試験例1]~[試験例4]として脆弱部の具体例が記載され、フレームに貼り付けた後、2回又は3回の折り曲げにより切断することが記載されている(【0085】)。
そして、これらの記載等をもとに、蒸着マスクや蒸着マスク中間体に、脆弱部を設けることや、脆弱部を切断することが十分可能であることから、本件発明における蒸着マスクや蒸着マスク中間体を生産することや、それらを使用することに、過度の試行錯誤が必要であるとはいえない。
そうすると、上記(1)における規範に照らせば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明に係る物を生産、使用することができる程度のものであるから、実施可能要件に適合している。
なお、上記(1)の理由では、「本件発明1~3、7、8、12、14では、ハーフエッチングの深さや形状、ハーフエッチングの「複数」の程度(形成頻度)など、或いは、「千鳥状」に配列されたハーフエッチング部のDL方向の列間の離間距離など、蒸着マスクの端部を取り除く作業を実現するための具体的な構成は明確ではない。また、本件明細書の試験例4(【図17】)に具体的に記載されるもののほか、通常想定される様々な千鳥状の態様を包含する記載となっているが、本件明細書の試験例4(【図17】)に具体的に記載されるもの以外の場合に、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とする使用ができることは、本件明細書の記載を鑑みても、理解できない。」としているが、ハーフエッチング部を千鳥状にしたものは、「脆弱部」の態様の範囲内にあるものである以上、通常想定される様々な千鳥状の態様毎によって、蒸着マスクの端部を取り除く作業の容易性に多少の差が出るとしても、蒸着マスクの端部を取り除く作業が容易になることには変わりはない。
以上によれば、上記(1)の理由は、妥当なものではない。
(3)申立理由2に関するまとめ
以上のとおり、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由2には、理由がない。
5 申立理由3について(明確性要件違反)
(1)申立理由3の概要
明確性要件の判断の規範は、「特許請求の範囲の記載、本件明細書の記載及び出願当時の技術常識を踏まえ、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の損害を被らせない程度に明確に記載されているかという観点から判断されるべきである。」というものであるところ、本件発明1~3、7、8、12、14は、課題解決手段として、複数のハーフエッチング部は、一方の長辺から他方の長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいるという構成を有する。
しかし、当業者からすれば、ハーフエッチング部を千鳥状に構成することのみによって、直ちに、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とするという課題が解決できると認められない。
そして、本件発明1~3、7、8、12、14には、ハーフエッチングの深さや形状、ハーフエッチングの「複数」の程度(形成頻度)など、或いは、「千鳥状」に配列されたハーフエッチング部のDL方向の列間の離間距離など、蒸着マスクの端部を取り除く作業を実現するための具体的な構成は明確ではない。
そうすると、どの程度にハーフエッチング部を千鳥状に構成したものまでが本件特許請求の範囲に含まれるのかという点について、本件特許の特許請求の範囲は、技術常識を踏まえても第三者に不測の損害を被らせない程度に明確に記載されているとはいえない。
(2)申立理由3に対する判断
上記(1)における理由で、「ハーフエッチング部を千鳥状に構成することのみによって、直ちに、蒸着マスクをフレームに固定した後における蒸着マスクの端部を取り除く作業を容易とするという課題が解決できると認められない。」としているが、明確性要件の判断では、上記(1)における規範にあるとおり、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の損害を被らせない程度に明確に記載されているか否かで判断すべきであって、ハーフエッチング部を千鳥状に構成することが、発明の課題を解決できるものであるか否かの判断は、明確性要件の判断を左右するものではない。
ここで、本件発明1~3、7、8、12、14には、「脆弱部」、「複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる」等の記載があるが、これらの記載は、記載上特に不明確な点はなく、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の損害を被らせるものではないから、上記(1)の規範に照らせば、本件発明1~3、7、8、12、14は、明確である。
なお、上記(1)の理由では、「本件発明1~3、7、8、12、14には、ハーフエッチングの深さや形状、ハーフエッチングの「複数」の程度(形成頻度)など、或いは、「千鳥状」に配列されたハーフエッチング部のDL方向の列間の離間距離など、蒸着マスクの端部を取り除く作業を実現するための具体的な構成は明確ではない。そうすると、どの程度にハーフエッチング部を千鳥状に構成したものまでが本件特許請求の範囲に含まれるのかという点については、本件特許の特許請求の範囲は、技術常識を踏まえても第三者に不測の損害を被らせない程度に明確に記載されているとはいえない。」としているが、蒸着マスクの端部を取り除く作業を実現するため、どの程度にハーフエッチング部を千鳥状に構成したものまでが本件特許請求の範囲に含まれるのかという点は、サポート要件で判断すべき事項であり、明確性要件の点で、「脆弱部」、「複数のハーフエッチング部は、一方の前記長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って千鳥状に並んでいる」等の記載が明確である以上、蒸着マスクの端部を取り除く作業を実現するための具体的な構成をさらに追加しなければ、本件発明1~3、7、8、12、14が明確にならないというものではない。
以上によれば、上記(1)の理由は、妥当なものではない。
(3)申立理由3に関するまとめ
以上のとおり、本件特許は、請求項1~3、7、8、12、14の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由3には、理由がない。
第6 むすび
上記第5で検討したとおり、本件特許1~3、7、8、12、14は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号並びに同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由1~3及び上記申立理由1~3、5-1~5-4では、本件特許1~3、7、8、12、14を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~3、7、8、12、14を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許13は、本件訂正により削除され、本件特許13に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700018