特許異議申立
2022-700510
熱硬化性樹脂組成物、およびその利用
- 審判番号
- 2022-700510
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-207200外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6981522
- 請求日
- 2022年06月14日
- 審決日
- 2023年09月25日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】家入 健
- 【権利者代理人】秦 恵子
- 【異議申立人】弁理士法人 虎ノ門知的財産事務所
- 分類
- P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K) / P1651.161-YAA(H05K) / P1651.537-YAA(H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6981522号発明「熱硬化性樹脂組成物、およびその利用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6981522号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
特許第6981522号の請求項1、2、4、6ないし13に係る特許を維持する。
特許第6981522号の請求項3、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6981522号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、令和2年12月15日の出願であって、令和3年11月22日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月15日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがなされたものであり、以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
令和4年 6月14日 特許異議申立人 特許業務法人虎ノ門知的財産
事務所による請求項1ないし13に係る特許に
対する特許異議の申立て
令和4年 9月16日付け 取消理由通知
令和4年11月22日 特許権者による訂正請求書、意見書の提出
令和5年 1月13日 特許異議申立人による意見書の提出
令和5年 3月15日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和5年 5月15日 特許権者による訂正請求書、意見書の提出
なお、令和5年5月31日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知をし、意見書を提出する機会を与えたが提出されなかった。
また、先にした令和4年11月22日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和5年5月15日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6981522号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし13について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、」という記載を、「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と、」に訂正する(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2、4、6~13も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における「含む熱硬化性樹脂組成物であって、」という記載を、「含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2、4、6~13も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たすことを特徴とする」という記載を、「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含み、前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たすことを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2、4、6~13も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4の引用請求項を「請求項1~3のいずれか1項に記載の」から「請求項1又は2に記載の」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6の引用請求項を「請求項1~5のいずれか1項に記載の」から「請求項1、2、4のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7の引用請求項を「請求項1~6のいずれか1項に記載の」から「請求項1、2、4、6のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8の引用請求項を「請求項1~7のいずれか1項に記載の」から「請求項1、2、4、6、7のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10の引用請求項を「請求項1~7のいずれか1項に記載の」から「請求項1、2、4、6、7のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13における「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、」という記載を、「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と、」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13における「フィラー(C)とを含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、」という記載を、「フィラー(C)とを含む請求項1、2、4、6、7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含み、」に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13における「(イ)~(ハ)を満たすことを特徴とする」という記載を、「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含み、(イ)~(ハ)を満たすことを特徴とする」に訂正する。
2.訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし12について、請求項2ないし12は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1ないし3によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、訂正前の独立請求項である請求項13は、訂正事項12によって請求項1を引用するものとなったので、訂正事項1ないし3によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし13に対応する訂正後の請求項1ないし13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に係る発明において、「ポリイミド樹脂(A)」について「反応性官能基を有する」ことの限定を付加するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「ポリイミド樹脂(A)」について「反応性官能基を有する」ことの限定を付加することに関して、本件特許明細書の段落【0026】には
、「ポリイミド樹脂(A)は後述する硬化剤(B)と反応する反応性官能基を有する。・・」と記載されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1は上述のとおり、請求項1に係る発明において、「ポリイミド樹脂(A)」について「反応性官能基を有する」ことの限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項2
訂正事項2は、請求項1に係る発明において、「硬化剤(B)」について「ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことの限定を付加するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「硬化剤(B)」について「ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことの限定を付加することに関して、訂正前の請求項3には「前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。」と記載されており、特に本件特許明細書の段落【0027】には、「硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の有する反応性官能基と反応可能な官能基を有するものであり、反応可能な官能基を複数有することが好ましい。」と記載され、さらに、段落【0033】、【0040】、【0041】には、硬化剤(B)として用いられるエポキシ化合物(B-1)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)のそれぞれについて「3官能以上」であることが好ましいことも記載され、段落【0044】には、硬化剤(B)として用いられるカルボジイミド基含有化合物(B-5)について「1分子中に平均3個以上のカルボジイミド基」を有するものが好ましいことも記載されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項2は上述のとおり、請求項1に係る発明において、「硬化剤(B)」について「ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことの限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ.訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1に係る発明において、「フィラー(C)」について「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して」「5~30質量部含」むことの限定を付加するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「フィラー(C)」について「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して」「5~30質量部含」むことの限定を付加することに関して、本件特許明細書の段落【0051】には「フィラー(C)の含有量は、前記バインダー樹脂成分100質量部に対して5~60質量部であることが好ましく、・・5~30質量部であることがさらに好ましく・・」と記載されている。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項3は上述のとおり、請求項1に係る発明において、フィラー(C)」について「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して」「5~30質量部含」むことの限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ.訂正事項4について
訂正事項4は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
オ.訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1項を引用する記載であったものを、上記訂正事項4による訂正によって請求項3が削除されたことに伴い、削除された請求項3を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項1又は2を引用する記載としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項5は上述のとおり、削除された請求項3の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
カ.訂正事項6について
訂正事項6は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
キ.訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項6が請求項1~5のいずれか1項を引用する記載であったものを、上記訂正事項4及び上記訂正事項6による訂正によってそれぞれ請求項3、請求項5が削除されたことに伴い、削除された請求項3、請求項5を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項1、2、4のいずれか1項を引用する記載としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項7は上述のとおり、削除された請求項3、請求項5の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ク.訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか1項を引用する記載であったものを、上記訂正事項4及び上記訂正事項6による訂正によってそれぞれ請求項3、請求項5が削除されたことに伴い、削除された請求項3、請求項5を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項1、2、4、6のいずれか1項を引用する記載としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項8は上述のとおり、削除された請求項3、請求項5の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ケ.訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項8が請求項1~7のいずれか1項を引用する記載であったものを、上記訂正事項4及び上記訂正事項6による訂正によってそれぞれ請求項3、請求項5が削除されたことに伴い、削除された請求項3、請求項5を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項1、2、4、6、7のいずれか1項を引用する記載としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項9は上述のとおり、削除された請求項3、請求項5の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
コ.訂正事項10について
訂正事項10は、訂正前の請求項10が請求項1~7のいずれか1項を引用する記載であったものを、上記訂正事項4及び上記訂正事項6による訂正によってそれぞれ請求項3、請求項5が削除されたことに伴い、削除された請求項3、請求項5を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項1、2、4、6、7のいずれか1項を引用する記載としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項10は上述のとおり、削除された請求項3、請求項5の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
サ.訂正事項11について
訂正事項11は、請求項13に係る発明において、「ポリイミド樹脂(A)」について「反応性官能基を有する」ことの限定を付加するものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「ポリイミド樹脂(A)」について「反応性官能基を有する」ことの限定を付加することに関して、本件特許明細書の段落【0026】には
、「ポリイミド樹脂(A)は後述する硬化剤(B)と反応する反応性官能基を有する。・・」と記載されている。
したがって、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項11は上述のとおり、請求項13に係る発明において、「ポリイミド樹脂(A)」について「反応性官能基を有する」ことの限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
シ.訂正事項12について
訂正事項12は、請求項13に係る発明において、「熱硬化性樹脂組成物」について「請求項1、2、4、6、7いずれか1項に記載」のものであることの限定、すなわち少なくとも、180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paであり、(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paであり、(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paであることを満たす熱硬化性樹脂組成物であることの限定を付加するとともに、「硬化剤(B)」について「ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことの限定を付加するものであるといえる。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「熱硬化性樹脂組成物」について「請求項1、2、4、6、7いずれか1項に記載」のものであることの限定の付加は、上記訂正事項1ないし3も踏まえると、訂正前の請求項1ないし3、4、6、7の各記載、本件特許明細書の段落【0051】の記載を根拠とするものであるということができる。また、「硬化剤(B)」について「ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことの限定を付加することに関して、訂正前の請求項3には「前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。」と記載されており、特に本件特許明細書の段落【0027】には、「硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の有する反応性官能基と反応可能な官能基を有するものであり、反応可能な官能基を複数有することが好ましい。」と記載され、さらに、段落【0033】、【0040】、【0041】には、硬化剤(B)として用いられるエポキシ化合物(B-1)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)のそれぞれについて「3官能以上」であることが好ましいことも記載され、段落【0044】には、硬化剤(B)として用いられるカルボジイミド基含有化合物(B-5)について「1分子中に平均3個以上のカルボジイミド基」を有するものが好ましいことも記載されている。
したがって、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項12は上述のとおり、請求項13に係る発明において、「熱硬化性樹脂組成物」について「請求項1、2、4、6、7いずれか1項に記載」のものであることの限定を付加するとともに、「硬化剤(B)」について「ポリイミド樹脂(A)と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことの限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ス.訂正事項13について
訂正事項13は、請求項13に係る発明において、「フィラー(C)」について「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して」「5~30質量部含」むことの限定を付加するものである。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「フィラー(C)」について「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して」「5~30質量部含」むことの限定を付加することに関して、本件特許明細書の段落【0051】には「フィラー(C)の含有量は、前記バインダー樹脂成分100質量部に対して5~60質量部であることが好ましく、・・5~30質量部であることがさらに好ましく・・」と記載されている。
したがって、訂正事項13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項13は上述のとおり、請求項13に係る発明において、「フィラー(C)」について「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して」「5~30質量部含」むことの限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)独立特許要件について
訂正事項1ないし4、6、11ないし13については「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の請求項1ないし13の全請求項について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1ないし13に係る訂正事項1ないし4、6、11ないし13に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
第3 当審の判断
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(なお、下線は訂正された箇所を示す。)。
「【請求項1】
ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と、
エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(B)と、
フィラー(C)とを
含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含み、
前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含み、
前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たすことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。
【請求項2】
前記硬化物の、0~280℃における損失正接(tanδ)ピーク値が0.3以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記硬化剤(B)を0.1~20質量部含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記フィラー(C)は、フッ素フィラー、窒化ホウ素、液晶ポリマーおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種類、であることを特徴とする請求項1、2、4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
プリント配線板の層間接着用部材として用いられることを特徴とする、請求項1、2、4、6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1、2、4、6、7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物から形成された、熱硬化性接着シート。
【請求項9】
請求項8記載の熱硬化性接着シートと、剥離フィルムとを具備する、剥離フィルム付き熱硬化性カバーシート。
【請求項10】
銅箔と絶縁性フィルムとが、請求項1、2、4、6、7いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物である接着層を介して積層されている、銅張積層板。
【請求項11】
請求項8記載の熱硬化性接着シートを用いてなる、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11記載のプリント配線板を具備する、電子機器。
【請求項13】
ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と、
エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(B)と、
フィラー(C)とを含む請求項1、2、4、6、7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、
前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含み、
前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含み、
(イ)~(ハ)を満たすことを特徴とする硬化物。
(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」
2.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
令和5年3月15日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
請求項1、2、4、6ないし13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4、6ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用例:国際公開第2017/017923号(甲第2号証)
(2)引用例の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用例(国際公開第2017/017923号、甲第2号証)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「[請求項1] 下記一般式(I)で表されるビスマレイミド樹脂、硬化剤、及びフィラーを含有し、
前記フィラーの配合量が、樹脂成分100質量部に対して、10~200質量部であり、
80℃における複素粘度が1×103Pa・s~5×105Pa・sである樹脂組成物を、銅箔の表面の一部又は全部に積層してなる、樹脂付き銅箔。
[図:0001404744000001.jpg]
但し、式(I)中、Xは、脂肪族、脂環式、又は芳香族の炭化水素基であって、主鎖の炭素数が10~30である炭化水素基を示し、これらの基は、ヘテロ原子、置換基、又はシロキサン骨格を有していてもよく、Yは、脂肪族、脂環式、又は芳香族の炭化水素基を示し、これらの基は、ヘテロ原子、置換基、フェニルエーテル骨格、スルフォニル骨格、又はシロキサン骨格を有していてもよく、nは1~20の範囲の数を示す。
・・・・(中 略)・・・・
[請求項3] 前記フィラーが、シリカ及び/又はフッ素樹脂パウダーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂付き銅箔。」
イ.「[0015] 本実施形態に係る樹脂付き銅箔は、ビスマレイミド樹脂、硬化剤、及びフィラーを含有してなり、フィラーの配合量が、樹脂成分100質量部に対して、10~200質量部であり、80℃における複素粘度が1×103Pa・s~5×105Pa・sである樹脂組成物を、銅箔の表面の一部又は全部に積層してなるものである。」
ウ.「[0024] 上記ビスマレイミド化合物は、市販の化合物を用いることもでき、好ましい例としては、DESIGNER MOLECURES Inc.製のBMI-3000(ダイマージアミン、ピロメリット酸二無水物及びマレイン酸無水物より合成)、BMI-1500、BMI-2550、BMI-1400、BMI-2310、BMI-3005等を好適に用いることができる。
・・・・(中 略)・・・・
[0026] 硬化剤としては、特に限定されないが、ラジカル開始剤、イミダゾール系硬化剤、及びカチオン系硬化剤より選択された1種を単独で用いることもでき、2種以上をブレンドして用いることもできる。」
エ.「[0035] フィラーの配合量は、樹脂成分100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましく、20~200質量部であることがより好ましい。
[0036] フィラーがフッ素樹脂パウダーである場合の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、40~200質量部であることが好ましく、60~180質量部であることがより好ましい。」
オ.「[0043] なお、上記樹脂組成物には、密着性を向上させる為、誘電率又は誘電正接に悪影響を与えない範囲でエポキシ樹脂をブレンドすることができる。
[0044] エポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を含有するものであればよく、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられる。」
カ.「[0053] 以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下において配合割合等は、特にことわらない限り質量基準とする。
[0054] 下記表1に示す配合に従い、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、及びフィラーを混合し、銅箔に積層する樹脂組成物を得た。
[0055] 表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
[0056]・ビスマレイミド樹脂:DESIGNER MOLECULES INC.製『BMI-3000CG』、50質量%トルエン溶液
・エポキシ樹脂:株式会社プリンテック製『VG3101L』、50質量%メチルエチルケトン溶液
・ラジカル系硬化剤:クメンハイドロパーオキサイド
・イミダゾール系硬化剤:四国化成工業株式会社製『2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール)』
・カチオン系硬化剤:テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート・シリカ:東洋化成株式会社製『WG1000』
・フッ素樹脂パウダー:株式会社喜多村製『KTL-500F』」
キ.「[0067]
[図:0001404744000002.jpg]
」
上記「ア.」ないし「キ.」から以下のことがいえる。
・上記「ア.」の[請求項1]、「イ.」の記載によれば、銅箔の表面に積層する樹脂組成物について記載され、当該樹脂組成物は、ビスマレイミド樹脂、硬化剤、及びフィラーを含有し、フィラーの配合量が、樹脂成分100質量部に対して、10~200質量部とされるものである。
・上記「ウ.」、「カ.」の記載によれば、ビスマレイミド樹脂としては、市販の化合物を用いることもでき、実施例では、DESIGNER MOLECULES INC.製のビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)が用いられてなるものである。
・上記「ア.」の[請求項3]、「エ.」の記載によれば、フィラーとしては、例えばフッ素樹脂パウダーが用いられ、その配合量は、樹脂成分100質量部に対して、40~200質量部であることが好ましいものである。
・上記「オ.」、「カ.」の記載によれば、密着性を向上させるために、樹脂組成物には分子内にエポキシ基を含有するエポキシ樹脂をブレンドすることができ、実施例では、株式会社プリンテック製のエポキシ樹脂(VG3101L)が用いられてなるものである。
・そして、上記「キ.」(表1)によれば、実施例2、5の樹脂組成物は、ビスマレイミド樹脂が95質量部、エポキシ樹脂が5質量部、フッ素樹脂パウダーからなるフィラーが60質量部であり、硬化剤としてラジカル系硬化剤が2質量部、イミダゾール系硬化剤あるいはカチオン系硬化剤が2質量部である。
ここで、上記「ウ.」の記載(特に段落[0026])によれば、ラジカル系硬化剤、イミダゾール系硬化剤あるいはカチオン系硬化剤はいずれも、少なくともビスマレイミド樹脂の硬化剤として用いられ得るものである。
以上のことから、特に実施例2、5で用いられてなる樹脂組成物に着目し、上記記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ダイマージアミン、ピロメリット酸二無水物及びマレイン酸無水物より合成したビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)と、
密着性を向上させるためにブレンドされる、分子内にエポキシ基を含有するエポキシ樹脂(VG3101L)と、
ラジカル系硬化剤と、
イミダゾール系硬化剤あるいはカチオン系硬化剤と、
フッ素樹脂パウダーからなるフィラーと、を含み、
前記ラジカル系硬化剤、前記イミダゾール系硬化剤あるいは前記カチオン系硬化剤はいずれも、少なくとも前記ビスマレイミド樹脂の硬化剤として用いられ、
前記ビスマレイミド樹脂が95質量部、前記エポキシ樹脂が5質量部、前記ラジカル系硬化剤が2質量部、前記イミダゾール系硬化剤あるいは前記カチオン系硬化剤が2質量部、前記フィラーが60質量部である、樹脂組成物。」
(3)取消理由についての当審の判断
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
a.引用発明における「ビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)」は、いわゆる付加型ポリイミド樹脂であって、ダイマージアミン、ピロメリット酸二無水物及びマレイン酸無水物より合成されてなるものであり、本件発明1でいうダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物である「ポリイミド樹脂(A)」に相当する。ここで、引用発明における「ビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)」にあっても、ラジカル系硬化剤、イミダゾール系硬化剤あるいはカチオン系硬化剤がその硬化剤として用いられることから、当該硬化剤と反応する反応性官能基(具体的にはマレイミド基)を有することは自明なことである。
したがって、本件発明1と引用発明とは、「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と」を含むものである点で一致する。
b.上記a.でも述べたように、引用発明における「ビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)」の硬化剤として用いられるのは、ラジカル系硬化剤、イミダゾール系硬化剤あるいはカチオン系硬化剤であり、これらは、本件発明1でいうポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含む「硬化剤(B)」に相当するといえるものの、当該「硬化剤(B)」として挙げられた「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)」のいずれにも該当しない。
また、引用発明は、分子内にエポキシ基を含有する「エポキシ樹脂(VG3101L)」を含むものであるが、かかる「エポキシ樹脂(VG3101L)」は、密着性を向上させるためにブレンドされるものであって、「ビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)」の硬化剤として用いられるものではなく、本件発明1でいう「硬化剤(B)」として挙げられた「エポキシ化合物(B-1)」に相当するものであるとはいえない。
したがって、本件発明1と引用発明とは、「硬化剤(B)と」を含み、「前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含」むものである点では共通する。
ただし、硬化剤(B)について、本件発明1では「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)からなる群より選ばれる少なくとも1種」であり、ポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を「1分子中に3個以上含」むことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違するといえる。
c.引用発明におけるフッ素樹脂パウダーからなる「フィラー」は、本件発明1でいう「フィラー(C)」に相当する。
ただし、フィラー(C)の含有量について、本件発明1ではポリイミド樹脂(A)100質量部に対して「5~30質量部」と特定するのに対し、引用発明では樹脂成分100質量部(ビスマレイミド樹脂95質量部)に対して60質量部、すなわちビスマレイミド100質量部に対して約63質量部である点で相違する。
d.そして、引用発明における「樹脂組成物」は、樹脂成分が熱硬化性樹脂であるビスマレイミド樹脂及びエポキシ樹脂からなるものであり、本件発明1でいう「熱硬化性樹脂組成物」に相当するものである。
ただし、本件発明1では「前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たす」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」
よって上記a.ないしd.によれば、本件発明1と引用発明とは、
「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
フィラー(C)とを
含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含む、熱硬化性樹脂組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
硬化剤(B)について、本件発明1では「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)からなる群より選ばれる少なくとも1種」であり、ポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を「1分子中に3個以上含」むことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点2]
フィラー(C)の含有量について、ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、本件発明1では「5~30質量部」と特定するのに対し、引用発明では約63質量部である点。
[相違点3]
本件発明1では「前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たす」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」
(イ)判断
そこで、まず上記相違点1について検討する。
引用発明においては、ビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)の硬化剤として用いられるのは「ラジカル系硬化剤、イミダゾール系硬化剤あるいはカチオン系硬化剤」であり、甲第2号証の段落[0026]には「硬化剤としては、特に限定されないが・・」と記載されているものの、「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)」のいずれかであり、しかもポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を「1分子中に3個以上含」むものを用い得ることについては記載も示唆もなく、引用発明において、ビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)の硬化剤として「ラジカル系硬化剤、イミダゾール系硬化剤あるいはカチオン系硬化剤」に代えて、あえて相違点1に係る硬化剤を用いるべき動機は見出せない。
なお、特許異議申立人が提出した甲第5号証(特開2020-169227号公報)の段落【0109】~【0110】には、「エポキシ樹脂(VG3101L)」の構造が記載され、1分子内に3個の反応性官能基であるエポキシ基含むことが示されているといえるが、そもそも引用発明においては、かかる「エポキシ樹脂(VG3101L)」は、ビスマレイミド樹脂(BMI-3000CG)の硬化剤として用いられるものではないことは上記「(ア)b.」でも述べたとおりである。
以上のことから、引用発明において相違点1に係る構成を導き出すことはできない。
よって、他の相違点(相違点2、3)について検討するまでもなく、本件発明1は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件発明2、4、6ないし13について
請求項2、4、6ないし13は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4、6ないし13は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、4、6ないし13は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.まとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1、2、4、6ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
3.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1-1)理由1(新規性)
請求項1ないし13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(1-2)理由2(新規性)
請求項1ないし7、13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし7、13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(1-3)理由3(進歩性)
請求項1ないし13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開2016-41797号公報
甲第2号証:国際公開第2017/017923号
(1-4)理由4(拡大先願)
請求項1ないし8、10ないし13に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1ないし8、10ないし13に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
記
先願:特願2020-154542号(特開2022-48627号公報
参照)(甲第3号証)
(1-5)理由5(サポート要件)
請求項1ないし13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1-6)理由6(明確性要件)
請求項1ないし13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)甲各号証の記載事項
(2-1)甲第1号証
上記甲第1号証には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
(B)活性エステル型硬化剤と、
(C)硬化促進剤と、
(D)テトラカルボン酸成分とダイマー酸ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂と、
(E)無機充填材と、
を必須成分とすることを特徴とする接着剤用樹脂組成物。」
イ.「【0015】
まず、接着剤用樹脂組成物の各成分について説明する。
本発明において、(A)エポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を含み、その分子量、分子構造は特に限定されるものではない。このエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。」
ウ.「【0053】
(実施例1)
(A)成分のエポキシ樹脂としてNC-3000(日本化薬(株)製、商品名;エポキシ当量 265~285g/eq)を9.2質量部、(B)成分の活性エステル型硬化剤としてHPC-8000-65T(DIC(株)製、商品名;活性エステル基当量 約223g/eq)を7.4質量部、(C)成分の硬化促進剤として2,4-ジアミノ-6-[2´-エチル-4´-メチルイミダゾリル-(1´)]-エチル-s-トリアジン(四国化成工業(株)製、商品名:2E4MZ-A;活性領域 147~167℃)を0.05質量部、(D)成分のテトラカルボン酸成分とダイマー酸ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂としてPIAD200(荒川化学工業(株)製、商品名)を66.7質量部、(E)成分の無機充填材としてデンカ溶融シリカFB-3SDX(電気化学工業(株)製、商品名;平均粒径 3.3μm)を16.7質量部、からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)及びメチルエチルケトンを加えて固形分40質量%の接着剤用樹脂組成物を調製した。
・・・・(中 略)・・・・
【0056】
(実施例2~3)
各成分の配合割合を表1の通りとした以外は、実施例1と同様にして接着剤シート及びカバーレイフィルムを得た。」
エ.「【0070】
[図:0001404744000003.jpg]
」
上記「ア.」ないし「エ.」から以下のことがいえる。
・上記「ア.」の記載によれば、接着剤用樹脂組成物について記載され、エポキシ樹脂と、活性エステル型硬化剤と、硬化促進剤と、テトラカルボン酸成分とダイマー酸ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂と、無機充填材と、を必須成分として含むものである。
・上記「イ.」の記載によれば、エポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものである。
・上記「ウ.」の記載、及び「エ.」(表1)によれば、実施例においては、日本化薬(株)製のエポキシ樹脂(NC-3000)、荒川化学工業(株)製のポリイミド樹脂(PIAD200)が用いられ、また無機充填材として溶融シリカが用いられている。そして、実施例2では、エポキシ樹脂が1.8質量部、活性エステル型硬化剤が1.5質量部、硬化促進剤が0.01質量部、ポリイミド樹脂が80.0質量部、無機充填材が16.7質量部である。
以上のことから、特に実施例2に係る接着剤用樹脂組成物に着目し、上記記載を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、
活性エステル型硬化剤と、
硬化促進剤と、
テトラカルボン酸成分とダイマー酸ジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂(PIAD200)と、
溶融シリカからなる無機充填材と、を含み、
前記エポキシ樹脂が1.8質量部、前記活性エステル型硬化剤が1.5質量部、前記硬化促進剤が0.01質量部、前記ポリイミド樹脂が80.0質量部、前記無機充填材が16.7質量部である、接着剤用樹脂組成物。」
(2-2)甲第2号証
上記甲第2号証の記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりであり、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲2発明」という。)は上記引用発明と同じである。
(2-3)甲第3号証
上記甲第3号証に係る先願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
フッ素樹脂基板と、該フッ素樹脂基板上に設けられた接着層と、を備え、前記接着層が、(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、(B)芳香族マレイミド化合物と、無機充填剤と、を含有する樹脂組成物を含み、前記無機充填剤の含有量が、前記樹脂組成物中の固形分全量に対して10~50vol%の範囲である、高周波回路用のフッ素樹脂基板積層体。」
イ.「【0103】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物(硬化後の接着層)の比誘電率は特に限定されないが、・・(以下、略)」
ウ.「【0118】
[樹脂組成物]
(実施例1)
攪拌装置を備えた容器に、シリカスラリー(株式会社アドマテックス製、商品名「SC-2050KNK」)14g、トルエン106.6g、(A)成分67.4g、及び(B)成分9.0g、触媒(ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、日油株式会社製、商品名「パーブチルP」)1.9gを投入し、25℃で1時間攪拌して混合した。混合物を#200ナイロンメッシュを用いてろ過し、樹脂組成物を得た。
(実施例2)
実施例1と同様にして樹脂組成物中の固形分全量に対して30vol%になるようにシリカスラリーを投入して樹脂組成物を得た。
(実施例3)
実施例1と同様にして樹脂組成物中の固形分全量に対して40vol%になるようにシリカスラリーを投入して樹脂組成物を得た。
(実施例4)
実施例1と同様にして樹脂組成物中の固形分全量に対して50vol%になるようにシリカスラリーを投入して樹脂組成物を得た。」
エ.「【0120】
(A)成分:下記式(XII-3)で表される構造を有するマレイミド化合物(Designer Molecules Inc製、商品名「BMI-1500」)を(A)成分として用いた。
【0121】
[図:0001404744000004.jpg]
【0122】
(B)成分:芳香族マレイミド化合物である2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニルプロパン(大和化成工業株式会社製、商品名「BMI-4000」)を(B)成分として用いた。」
上記「ア.」ないし「エ.」から以下のことがいえる。
・上記「ア.」の記載によれば、フッ素樹脂基板上に設けられる接着層について記載され、接着層は、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、芳香族マレイミド化合物と、無機充填剤と、を含有する樹脂組成物を含むものである。ここで、上記「イ.」の記載によれば、接着層は、樹脂組成物の硬化物である。
・上記「ウ.」、「エ.」の記載によれば、実施例においては、Designer Moiecules Inc製のマレイミド化合物(BMI-1500)、大和化成工業株式会社製の芳香族マレイミド化合物である2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン(BMI-4000)が用いられ、無機充填剤としてシリカスラリーが用いられている。そして、実施例1では、マレイミド化合物が67.4g、芳香族マレイミド化合物が9.0g、無機充填剤が14g、さらに触媒が1.9gである。
以上のことから、特に実施例1に係るものにおける硬化前の樹脂組成物に着目し、上記記載を総合勘案すると、上記先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
「飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物(BMI-1500)と、
芳香族マレイミド化合物(BMI-4000)と、
シリカスラリーからなる無機充填剤と、
触媒と、を含み、
前記マレイミド化合物が67.4g、前記芳香族マレイミド化合物が9.0g、前記無機充填剤が14g、前記触媒が1.9gである、硬化物である接着層を形成するための樹脂組成物。」
(3)申立理由についての当審の判断
(3-1)理由1(新規性)及び理由3(進歩性)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a.甲1発明における「ポリイミド樹脂(PIAD200)」は、テトラカルボン酸成分とダイマー酸ジアミンとを反応させて得られるものである点で、本件発明1でいう「ポリイミド樹脂(A)」と共通するといえる。しかし、本件発明1でいう「ポリイミド樹脂(A)」は、そもそも本件発明1が「熱硬化性」樹脂組成物に係るものであることや、硬化剤(B)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有することからして、熱硬化性樹脂であると解されるものであるのに対し、甲1発明における「ポリイミド樹脂(PIAD200)」は熱可塑性樹脂である(特許権者が令和5年11月22日に意見書とともに提出した乙2号証(荒川化学工業株式会社、「熱可塑性ポリイミドワニス[PIAD]」を参照)。
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と」を含むものである点では共通するといえる。
ただし、ポリイミド樹脂(A)について、「反応性官能基を有する」ことを特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
b.甲1発明における「活性エステル型硬化剤」は、上述したように甲1発明における「ポリイミド樹脂(PIAD200)」が熱可塑性樹脂であることから、熱硬化性樹脂である「エポキシ樹脂」の硬化剤であると解され、また、本件発明1でいう「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)」のいずれにも該当しない。
そして、甲1発明は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する「エポキシ樹脂」を含むものてあるが、そもそも甲1発明は、甲第1号証の段落【0003】~【0007】の記載によれば、従来の接着剤用樹脂組成物が熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂とともにアクリロニトリルを含む共重合体を含有させていたものであるところ、良好な接着性や誘電特性等のものを得るために当該アクリロニトリルを含む共重合体に代えてポリイミド樹脂を含有させるようにした発明であり、甲1発明における「エポキシ樹脂」は、接着剤用樹脂組成物の主剤の1つとして含まれるものであり、硬化剤として含まれるものではないといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「硬化剤(B)と」を含むものである点では共通する。
しかしながら、硬化剤(B)について、本件発明1では「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)からなる群から選ばれる少なくとも1種」であり、「ポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違するということができる。
c.甲1発明における溶融シリカからなる「無機充填材」は、本件発明1でいう「フィラー(C)」に相当する。
ここで、甲1発明における「無機充填材」の含有量は、ポリイミド樹脂(PIAD200)が80.0質量部に対して無機充填材が16.7質量部であるから、ポリイミド樹脂(PIAD200)100質量部に対して16.7×(100/80.0)≒20.9質量部であり、本件発明1で特定するポリイミド樹脂(A)100質量部に対して「5~30質量部」の範囲に含まれる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「フィラー(C)と」を含み、「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含」むものである点で一致する。
d.そして、甲1発明における「接着剤用樹脂組成物」は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含むものであるものの、熱可塑性樹脂であるポリイミド樹脂(PIAD200)が80.0質量部であるのに対し、エポキシ樹脂はわずか1.8質量部であることから、接着剤用樹脂組成物全体としては熱可塑性に近い性質を有するものと解される。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「樹脂組成物」である点では共通する。
しかしながら、樹脂組成物について、本件発明1では「熱硬化性」であることを特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点で相違するといえる。
さらに、本件発明1では「前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たす」ことを特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」
したがって、上記a.ないしd.によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
フィラー(C)とを
含む樹脂組成物であって、
前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含む、樹脂組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点4]
ポリイミド樹脂(A)について、本件発明1ではポリイミド樹脂(A)が「反応性官能基を有する」ものであり、樹脂組成物が「熱硬化性」であることを特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点5]
硬化剤(B)について、本件発明1では「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)からなる群から選ばれる少なくとも1種」であり、「ポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含」むことを特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点6]
本件発明1では「前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たす」ことを特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点。
「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」
(イ)判断
上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
次に、事案に鑑み上記相違点5について検討する。
上述したように、甲1発明における「ポリイミド樹脂(PIAD200)」は熱可塑性樹脂であるといえるから、そもそも甲1発明においてかかるポリイミド樹脂(PIAD200)に対する硬化剤、しかも「エポキシ化合物(B-1)、マレイミド化合物(B-2)、イソシアネート基含有化合物(B-3)、金属キレート化合物(B-4)およびカルボジイミド基含有化合物(B-5)」のいずれかを選択して含ませるようにすることの動機がない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ.本件発明2、4、6ないし13について
請求項2、4、6ないし13は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4、6ないし13は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、4、6ないし13は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ.まとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1、2、4、6ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、本件請求項1、2、4、6ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということもできない。
(3-2)理由2(新規性)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記「2.(3)ア.(ア)」に記載したとおり、上記[相違点1]ないし[相違点3]において相違し、その余の点で一致する。
(イ)判断
上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
イ.本件発明2、4、6、7、13について
請求項2、4、6、7、13は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4、6、7、13は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、4、6、7、13は、甲第2号証に記載された発明ではない。
ウ.まとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1、2、4、6、7、13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3-3)理由4(拡大先願)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と先願発明とを対比する。
a.先願発明における「マレイミド化合物(BMI-1500)」は、先願明細書の段落【0121】に記載の構造式(上記「(2-3)」を参照)、さらには例えば特開2014-1289号公報の段落【0039】の記載から明らかなように、ダイマージアミンとテトラカルボン酸成分(4,4´-オキシジフタル酸二無水物)を含む成分より合成されてなるものであり、本件発明1でいうダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物である「ポリイミド樹脂(A)」に相当する。ここで、先願発明における「樹脂組成物」は、硬化させることで硬化物である接着層を得ることができるものであることから、先願発明における「マレイミド化合物(BMI-1500)」にあっても、硬化剤と反応する反応性官能基(具体的にはマレイミド基)を有するものと解される。
したがって、本件発明1と先願発明とは、「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と」を含むものである点で一致するといえる。
b.先願発明における「芳香族マレイミド化合物(BMI-4000)」は、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンであって、1分子内にマレイミド基を2個有するものであり、かかるマレイミド基はポリイミド樹脂の有する反応性官能基と反応可能な官能基であることから、本件発明1でいうポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含む「硬化剤(B)」として挙げられた「マレイミド化合物(B-2)」に相当するといえる。
したがって、本件発明1と先願発明とは、「マレイミド化合物(B-2)からなる硬化剤(B)と」を含み、「前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含」むものである点で共通する。
ただし、硬化剤(B)におけるポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基について、本件発明1では「1分子中に3個以上含」むことを特定するのに対し、先願発明では1分子中に2個である点で相違する。
c.先願発明におけるシリカスラリーからなる「無機充填剤」は、本件発明1でいう「フィラー(C)」に相当する。
ここで、先願発明における「無機充填剤」の含有量は、マレイミド化合物(BMI-1500)が67.4gに対して無機充填剤が14gであるから、マレイミド化合物(BMI-1500)100質量部に対して14×(100/67.4)≒20.8質量部であり、本件発明1で特定するポリイミド樹脂(A)100質量部に対して「5~30質量部」の範囲に含まれる。
したがって、本件発明1と先願発明とは、「フィラー(C)と」を含み、「前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含」むものである点で一致する。
d.そして、先願発明における「樹脂組成物」は、硬化物である接着層を形成するためのものであり、熱硬化性樹脂であると解されるマレイミド化合物(BMI-1500)を含むことから、本件発明1でいう「熱硬化性樹脂組成物」に相当するということができる。
ただし、本件発明1では「前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たす」ことを特定するのに対し、先願発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」
したがって上記a.ないしd.によれば、本件発明1と先願発明とは、
「ダイマージアミン(a-1)および、テトラカルボン酸無水物(a-2)を含むモノマー群の反応物生成物であり、反応性官能基を有するポリイミド樹脂(A)と、
マレイミド化合物(B-2)からなる硬化剤(B)と、
フィラー(C)とを
含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の前記反応性官能基と反応し得る反応性官能基を含み、
前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5~30質量部含む、熱硬化性樹脂組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点7]
硬化剤(B)におけるポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応し得る反応性官能基について、本件発明1では「1分子中に3個以上含」むことを特定するのに対し、先願発明では1分子中に2個である点。
[相違点8]
本件発明1では「前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)~(ハ)を満たす」ことを特定するのに対し、先願発明ではそのような特定を有していない点。
「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」
(イ)判断
上記のとおり、相違するところがあるから、本件発明1は、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。
イ.本件発明2、4、6ないし8、10ないし13について
請求項2、4、6ないし8、10ないし13は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4、6ないし8、10ないし13は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、4、6ないし8、10ないし13は、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。
ウ.まとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1、2、4、6ないし8、10ないし13に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3-4)理由5(サポート要件)について
特許異議申立人は、次のようなサポート要件についての理由(記載不備)を主張している。
ア.本件発明1では、熱硬化性樹脂組成物の硬化物に関して「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」(構成要件E)との条件を満たすと特定されている一方で、硬化剤(B)の含有量やフィラー(C)の含有量などの組成物における含有比率が特定されていない。そして、熱硬化性樹脂組成物における硬化剤(B)の含有量やフィラー(C)の含有量などを、本件特許明細書に記載された条件から変更すると、硬化物の貯蔵弾性率も変化するため、本件発明1は、上記構成要件Eを満たさない範囲を含む蓋然性が高い。したがって、硬化剤(B)の含有量やフィラー(C)の含有量を特定していない本件発明1は発明の課題を解決できない範囲も包含するといえる。
よって、本件発明1及びその従属項である本件発明2~12は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。また、本件発明13も同様の理由で、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
イ.本件発明13では「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」(構成要件X)との条件を満たすと特定されている一方で、本件特許発明1とは異なり加熱温度や加熱時間などの硬化物の成膜条件が特定されていない。そして、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の成膜条件を本件特許明細書に記載された条件から変更すると、硬化物の貯蔵弾性率も変化するため、本件発明13は、上記構成要件Xを満たさない範囲を含む蓋然性が高い。すなわち、硬化物の成膜条件を特定していない本件発明13は発明の課題を解決できない範囲を包含するといえる。
よって、本件発明13は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
そこで、上記主張について検討する。
「ア.」の主張について
本件発明1において、まず、フィラー(C)の含有量については、本件特許明細書の段落【0051】にさらに好ましいとされる範囲の記載を根拠にした本件訂正請求による訂正により、「ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して」「5~30質量部」であることの限定(特定)がなされた。
一方、硬化剤(B)についてはその含有量の特定はなされていないが、本件発明1は上記構成要件Eを満たすことを課題解決手段の1つとするものであり、仮に、その含有量を本件特許明細書の段落【0046】に記載された好ましいとされる範囲外の量としたときに上記構成要件Eを満たさない場合、そのようなものは当然、本件発明1の範囲外ということになるにすぎない。
以上のことを踏まえると、本件発明1において硬化剤(B)の含有量についての特定がされていないからといって、本件発明1が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとまではいえない。
「イ.」の主張について
本件訂正請求による訂正により、本件発明13の熱硬化性樹脂組成物の「硬化物」は、請求項1、2、4、6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の「硬化物」であることの限定(特定)がなされた。そのため、本件発明13の「硬化物」は、請求項1に記載のとおり、熱硬化性樹脂組成物を「180℃で60分加熱」した際に「「(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×106~1.0×1011Paである。(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×109Paである。(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×103~1.0×109Paである。」ことを満たすものであることが特定されているといえることから、本件発明13が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるとはいえない。
よって、特許異議申立人のサポート要件についての主張はいずれも採用することはできず、本件請求項1、2、4、6ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
(3-5)理由6(明確性要件)について
特許異議申立人は、次のような明確性要件についての理由(記載不備)を主張している。
本件発明1におけるポリイミド樹脂(A)は、本件特許明細書の段落【0026】の記載によれば、末端にマレイミド基を有するポリイミド樹脂を包含することから、例えば甲第2号証(なお、特許異議申立書には「甲第1号証」と記載されているが誤りである。)におけるDESIGNER MOLECURES Inc製の「BMI-3000CG」を包含する。また、本件発明1における硬化剤(B)であるマレイミド基含有化合物(B-2)は、本件特許明細書の段落【0035】の記載によれば、ポリイミド樹脂(A)と同様に、甲第2号証におけるDESIGNER MOLECURES Inc製の「BMI-3000CG」を包含する。すなわち、ポリイミド樹脂(A)とマレイミド化合物(B-2)とが重複する範囲を包含しているため、上記甲第2号証におけるDESIGNER MOLECURES Inc製の「BMI-3000CG」などの成分がポリイミド樹脂(A)とマレイミド化合物(B-2)のいずれに相当するかが明確でない。
よって、本件発明1及びその従属項である本件発明2~12は不明確である。また、本件発明13も同様の理由で不明確である。
そこで、上記主張について検討する。
甲第2号証におけるDESIGNER MOLECURES Inc製のビスマレイミド樹脂「BMI-3000CG」は、甲第2号証の段落[0024]~[0026]の記載、[0067]の表1などからして樹脂組成物における主剤として用いられるものであることは明らかであり、本件発明1における「硬化剤」としてのマレイミド基含有化合物に含まれるものではない。そして、そもそも本件発明1における「ポリイミド樹脂(A)」は主剤として用いられるものであり、一方、「マレイミド基含有化合物(B-2)」は硬化剤として用いられるものであることも明らかであって不明確なところはない。
よって、特許異議申立人の明確性要件についての主張は採用することはできず、本件請求項1、2、4、6ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
第4 むすび
以上のとおり、本件請求項1、2、4、6ないし13に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件請求項1、2、4、6ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項3、5に係る特許については訂正により削除され、本件特許の請求項3、5に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについてはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700510