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特許異議申立

2022-700413

セラミックス銅回路基板およびそれを用いた半導体装置

審判番号
2022-700413
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-509700
登録番号
6970738
請求日
2022年05月11日
審決日
2023年03月27日
公報発行日
2023年07月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社東芝
  • 【権利者代理人】日向寺 雅彦
  • 【権利者代理人】小崎 純一
  • 【権利者代理人】市川 浩
  • 【権利者】東芝マテリアル株式会社
  • 【権利者代理人】日向寺 雅彦
  • 【権利者代理人】小崎 純一
  • 【権利者代理人】市川 浩
  • 【異議申立人】末吉 直子
  • 【異議申立人代理人】加藤 圭
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 須原 宏光
分類
P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K) / P1651.536-YAA(H05K) / P1651.537-YAA(H05K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6970738号発明「セラミックス銅回路基板およびそれを用いた半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6970738号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について」)訂正することを認める。 特許第6970738号の請求項1ないし3、5ないし15に係る特許を維持する。 特許第6970738号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6970738号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2018年3月23日(優先権主張 2017年3月30日 日本)を国際出願日とする出願であって、令和3年11月2日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月24日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 4年 5月11日 特許異議申立人 末吉 直子による請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 4年 8月26日付け 取消理由通知 令和 4年10月19日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 5年 1月11日 特許異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年10月19日の訂正請求の趣旨は、特許6970738号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1ないし15について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「セラミックス基板と、 前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板と、 前記セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層と、 を備えたセラミックス銅回路基板において、 前記セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であり、 前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上250以下であることを特徴とするセラミックス銅回路基板。」 と記載されているのを、 「セラミックス基板と、 前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板と、 前記セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層と、 前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれかと、 前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層と、 を備えたセラミックス銅回路基板において、 前記セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であり、 前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含み、 前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であり、 10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であり、 前記表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、 前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下であり、 前記表面の最大高さRzは、5μm以下であることを特徴とするセラミックス銅回路基板。」 に訂正する。 (請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5ないし10、12ないし15も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、「前記銅回路板の表面」と記載されているのを、「前記表面」に訂正する。 (請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、5ないし10、12ないし15も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、「前記銅回路板の表面」と記載されているのを、「前記表面」に訂正する。 (請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5ないし10、12ないし15も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、「前記銅回路板の表面の算術平均粗さRa」、「前記表面の十点平均粗さRzjis」、「前記表面の最大高さRz」と記載されているのを、それぞれ、「前記表面の前記算術平均粗さRa」、「前記表面の前記十点平均粗さRzjis」、「前記表面の前記最大高さRz」に訂正する。 また、特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と記載されているのを、「請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」に訂正する。 (請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6ないし10、12ないし15も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、「前記銅回路板の表面」と記載されているのを、「前記表面」に訂正する。 また、特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と記載されているのを、「請求項1ないし請求項3、請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項7ないし10、12ないし15も同様に訂正する。) (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と記載されているのを、「請求項1ないし請求項3、誇求項5、請求項6のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」に訂正する。 (請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8ないし10、12ないし15も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と記載されているのを、「請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」に訂正する。 (請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10、12ないし15も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10に、「前記銅回路板の厚さは0.6mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。」と記載されているのを、「前記銅回路板の厚さは0.6mm以上であり、前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積をB(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。」に訂正する。 (請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12ないし15も同様に訂正する。) (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項11に、「前記セラミックス基板の反り量は0.1mm未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。」と記載されているのを、 「セラミックス基板と、 前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板と、 前記セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層と、 前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれかと、 前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層と、 を備えたセラミックス銅回路基板において、 前記セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であり、 前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含み、 10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であり、 前記銅回路板の厚さは0.6mm以上であり、 前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積B(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内であり、 前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であることを特徴とするセラミックス銅回路基板。」 に訂正する。 (請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12ないし15も同様に訂正する。) (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項12に、 「前記セラミックス基板の他方の面に設けられた銅板をさらに備え、 前記セラミックス基板には貫通孔が設けられ、 前記貫通孔を介して前記銅回路板と前記銅板が導通されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のセラミックス導回路基板。」と記載されているのを、 「 前記セラミックス基板には貫通孔が設けられ、 前記貫通孔を介して、前記銅回路板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、が導通されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5いし請求項11のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。」に訂正する。 (請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13ないし15も同様に訂正する。) (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13に、「前記銅板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上250以下であることを特徴とする請求項12記載のセラミックス銅回路基板。」と記載されているのを、「前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上250以下であることを特徴とする請求項12記載のセラミックス銅回路基板。」に訂正する。 (請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14、15も同様に訂正する。) (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項14に、「請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の前記セラミックス銅回路基板」と記載されているのを、「請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項13のいずれか1項に記載の前記セラミックス銅回路基板」に訂正する。 (請求項14の記載を引用する請求項15も同様に訂正する。) 2 訂正要件についての判断 (1)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1ないし15は、請求項2ないし15が、訂正の対象となる請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし15に対応する訂正後の請求項1ないし15も一群の請求項である。 したがって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について a 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「セラミックス銅回路基板」の構成について、「前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれか」と「前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層」とを追加し限定するものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「銅回路板」について「少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むことを限定し、同「セラミックス基板」について「長辺における反り量は0.1mm未満であ」ることに限定するものである。 そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記銅回路板の表面」の前に「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」ことを付加し、さらに、訂正前の請求項1の「いずれの直線10mm以上においても」と「粒界の数が20以上250以下」の間に読点(「、」)を追加することで、同「粒界の数が20以上250以下」である場所について、「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上であることを限定するものである。 さらに、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「セラミック銅回路基板」について「前記表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下であり、前記表面の最大高さRzは、5μm以下である」ことを付加し限定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 (a)「裏銅板」、「裏銅回路板」、「別の接合層」について 裏銅板、別の接合層に関し、本件特許明細書の段落【0014】に「セラミックス基板2と銅回路板3は接合層4を介して接合されていることが好ましい。裏銅板5をセラミックス基板2に接合する場合も、裏銅板5とセラミックス基板2を接合層を介して接合することが好ましい。」と記載され、裏銅板回路、別の接合層に関し、同段落【0016】に「セラミックス銅回路基板は、表の銅回路板と裏の銅回路板が貫通孔を介して導通した構造を有することが好ましい。・・・。図3中、1はセラミックス銅回路基板である。2はセラミックス基板である。3は銅回路板(表銅板)である。4は接合層である。8は裏銅回路板である。」と記載され、図3によれば、「裏銅板回路8」が接合層を介して「セラミックス基板2」に接合されることが見て取れる。 (b)「少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分」について 本件特許明細書の段落【0010】に「銅回路板がパターン形状に加工されている場合は、いずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を撮影する。」と記載されている。 (c)「セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であり」について 本件特許明細書の段落【0015】に「セラミックス銅回路基板1において、セラミックス基板2の反り量は0.1mm未満であることが好ましい。セラミックス基板2の反り量は、以下の方法で測定される。セラミックス基板2の長辺において一端からもう一方の他端に仮想の直線を引く。子の直線と、この直線に対してセラミックス基板2が最も離れている点と、の間の距離を反り量とする。」と記載されている。 (d)「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても「、」粒界の数が20以上250以下である点について 本件特許明細書の段落【0010】に「銅回路板表面引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数は5以上250以下である。・・・。銅回路板表面の拡大写真を撮影する。・・・。銅回路板がパターン形状に加工されている場合は、いずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を撮影する。実施形態では、拡大写真にいずれの10mmの直線を引いても、その直線上における粒界の数は、5以上250以下である。・・・このため、いずれの直線10mm上においても、粒界の数は5以上250以下、さらには20以上150以下であることが好ましい。」との記載から、「10mm以上の長さを有する部分」を有する銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であることが記載されているといえる。 (e)「表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下であり、前記表面の最大高さRzは、5μm以下である」について 本件特許明細書の段落【0012】に「銅回路板表面では、算術平均粗さRaが0.4μm以下、十点平均粗さRzjisが4μm以下、最大高さRzが5μm以下であることが好ましい。」と記載されている。 (f)小括 以上(a)ないし(e)によれば、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項2について a 訂正の目的 訂正事項2は、訂正事項1により、訂正前の請求項1の「前記銅回路板の表面」の前に「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」ことが付加されたことに伴い、引用する請求項1の記載との整合を図るために、「前記銅回路板の表面」を「前記表面」と訂正したものである。 よって、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項2は引用する請求項1の記載との整合を図るものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 ウ 訂正事項3について a 訂正の目的 訂正事項3は、訂正事項1により、訂正前の請求項1の「前記銅回路板の表面」の前に「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」ことが付加されたことに伴い、引用する請求項1の記載との整合を図るために、「前記銅回路板の表面」を「前記表面」と訂正したものである。 よって、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項3は引用する請求項1の記載と整合を図るものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 エ 訂正事項4について a 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項4は請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 オ 訂正事項5について a 訂正の目的 訂正事項5は、訂正事項1により、訂正前の請求項1の「前記銅回路板の表面」の前に「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」ことが付加されたことに伴い、引用する請求項1の記載との整合を図るために、「前記銅回路板の表面」を「前記表面」と訂正したものである。 また、訂正事項5は、訂正事項1により訂正前の請求項1に「前記表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下、前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下、前記表面の最大高さRzは、5μm以下、である」ことが付加されたことに伴い、引用する請求項1の記載との整合を図るために、「算術平均粗さRa」、「十点平均粗さRzjis」及び「最大高さRz」を「前記算術平均粗さRa」、「前記十点平均粗さRzjis」及び「前記最大高さRz」と訂正したものである。 さらに、訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1ないし請求項4のいずれかを引用する記載であったものを、訂正事項4による訂正によって請求項4が削除されたことに伴い、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消するために、訂正前の請求項5の「請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」を「請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と訂正したものである。 よって、訂正事項5による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項5は引用する請求項1の記載との整合を図るとともに、不明瞭な点を解消するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 カ 訂正事項6 a 訂正の目的 訂正事項6は、訂正事項1により、訂正前の請求項1の「前記銅回路板の表面」の前に「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」ことが付加されたことに伴い、引用する請求項1の記載との整合を図るために、「前記銅回路板の表面」を「前記表面」と訂正したものである。 また、訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1ないし請求項5のいずれかを引用する記載であったものを、訂正事項4による訂正によって請求項4が削除されたことに伴い、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消するために、訂正前の請求項6の「請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」を「請求項1ないし請求項3、請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と訂正したものである。 よって、訂正事項6による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項6は引用する請求項1の記載との整合を図るものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 キ 訂正事項7 a 訂正の目的 訂正事項7は、訂正前の請求項7が請求項1ないし請求項6のいずれかを引用する記載であったものを、訂正事項4による訂正によって請求項4が削除されたことに伴い、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消するために、訂正前の請求項7の「請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」を「請求項1ないし請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と訂正したものである。 よって、訂正事項7による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項7は不明瞭な点を解消するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 ク 訂正事項8 a 訂正の目的 訂正事項8は、訂正前の請求項8が請求項1ないし請求項7のいずれかを引用する記載であったものを、訂正事項4による訂正によって請求項4が削除されたことに伴い、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消するために、訂正前の請求項8の「請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」を「請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と訂正したものである。 よって、訂正事項8による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項8は不明瞭な点を解消するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 ケ 訂正事項9 a 訂正の目的 訂正事項9は、訂正前の請求項10の「セラミックス銅回路基板」に、「前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積をB(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内である」との限定を付加するものである。 また、訂正事項9は、訂正前の請求項10が請求項1ないし請求項9のいずれかを引用する記載であったものを、訂正事項4による訂正によって請求項4が削除されたことに伴い、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消するために、訂正前の請求項10の「請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」を「請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板」と訂正したものである。 よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 銅回路板の合計、及び、裏銅板または裏銅回路板のいずれかの合計体積について、本件特許明細書の段落【0015】には「銅回路板3の合計体積をA(mm3)、裏銅板5の合計体積をB(mm3)とする。0.5≦A/B≦0.8の範囲内であっても、窒化珪素基板の反り量を0.1mm未満にすることができる。銅回路板3の合計体積A(mm3)は、表面側に接合された1つ以上の銅回路板3のそれぞれの体積の合計である。裏銅板5の合計体積をB(mm3)は、裏面側に接合された1つ以上の裏銅板5のそれぞれの体積の合計である。後述するようにセラミックス基板2に1つ以上の裏銅回路板が接合されている場合は、それぞれの裏銅回路板の体積の合計を、合計体積B(mm3)とする。」と記載されている。 また、訂正事項9は、不明瞭な点を解消するものでもある。 よって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 コ 訂正事項10について a 訂正の目的 訂正事項10は、訂正前の請求項11の記載が、請求項1ないし10のいずれかを引用する記載であったものを、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるものである。 また、訂正事項10は、訂正前の請求項1を引用する請求項11の「セラミックス銅回路基板」について、「前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれか」と「前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層」とを付加して限定し、さらに、「銅回路板」が「少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むと限定するものである。 そして、訂正事項10は、訂正前の請求項11が引用する請求項1の「前記銅回路板の表面」の前に「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」ことを付加し、さらに、同請求項1の「いずれの直線10mm以上においても」と「粒界の数が20以上250以下」の間に読点(「、」)を追加することで、同「粒界の数が20以上250以下」である場所について、「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上であることを限定するものである。 さらに、訂正事項10は、「銅回路板」の「厚さ」を「0.6mm以上」に限定し、また、「前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積をB(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内であ」ることを付加して限定し、また、「反り量」が「0.1mm未満」である場所が「セラミックス基板」の「長辺」であることを限定するものである。 よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項10は、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるものである。 また、限定された各構成について、 (a)上記「ア b(a)」で述べたように、「裏銅板」、「裏銅回路板」、「別の接合層」について、本件特許明細書の段落【0014】、【0016】、図3に記載され、 (b)上記「ア b(b)」で述べたように、「少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分」について、同段落【0010】に記載されており、 (c)上記「ア b(c)」で述べたように、セラミックス基板の「長辺」における反り量は0.1mm未満であることについて、同段落【0015】に記載されており、 (d)上記「ア b(d)」で述べたように、「10mm以上の長さを有する前記部分を含む」前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても「、」粒界の数が20以上250以下である点について、同段落【0010】の記載によれば、「10mm以上の長さを有する部分」を有する銅回路板表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であることが記載されているといえ、 (e)「銅回路板」の「厚さ」について、同段落【0015】に「銅回路板の厚さは、0.6mm以上であることが好ましい。・・・。放熱性を考慮すると、銅回路板の厚さは0.6mm以上であることが好ましい。」と記載され、 (f)上記「ケ b」で述べたように、銅回路板の合計、及び、裏銅板または裏銅回路板のいずれかの合計体積について、同段落【0015】に記載されている。 よって、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 サ 訂正事項11について a 訂正の目的 訂正事項11は、訂正事項1により、訂正前の請求項1に「セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板」が付加されたことに伴い、引用する請求項1の記載との整合を図るために、「前記セラミックス基板の他方の面に設けられた銅板をさらに備え」を削除し、「前記貫通孔を介して前記銅回路板と前記銅板が導通されている」を「前記貫通孔を介して、前記銅回路板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板のいずれかと、が導通されている」と訂正したものである。 また、訂正事項11は、訂正前の請求項12が請求項1ないし請求項11のいずれかを引用する記載であったものを、訂正事項4による訂正によって請求項4が削除されたことに伴い、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消するために、訂正前の請求項12の「請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載」を「請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項11のいずれか1項に記載」と訂正したものである。 さらに、訂正前の請求項12が引用する請求項1に「・・・を特徴とするセラミックス銅回路基板。」と記載され、本件特許明細書の段落【0001】に「実施形態は、おおむね、セラミックス銅回路基板およびそれを用いた半導体装置に関する。」と記載されていることから、訂正前の請求項12に記載された「セラミックス導回路基板」は「セラミックス銅回路基板」の誤記であることは明らかであり、訂正事項11は当該誤記を正すものである。 よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項11は、不明瞭な点を解消し、誤記を正すものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 シ 訂正事項12について a 訂正の目的 訂正事項12は、訂正事項1により、訂正前の請求項1に「セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板」が付加されたことに伴い、引用する請求項1の記載との整合を図るために、「前記銅板の表面」を「前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれか」と訂正したものである。 よって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項12は引用する請求項1の記載との整合を図るものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 ス 訂正事項13について a 訂正の目的 訂正事項13は、訂正前の請求項14が請求項1ないし請求項13のいずれかを引用する記載であったものを、訂正事項4による訂正によって請求項4が削除されたことに伴い、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消するために、訂正前の請求項14の「請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載」を「請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項13のいずれか1項に記載」と訂正したものである。 よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 b 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記aで述べたように、訂正事項13は、不明瞭な点を解消するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)独立特許要件について 上記「(2)アa」、「(2)エa」、「(2)ケa」、「(2)コa」で述べたように、訂正事項1、4、9、10は「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、上記「(2)サa」で述べたように、訂正事項11は「誤記の訂正」を目的とするところ、本件においては、全請求項について特許異議の申立てがされているから、対応する訂正後の請求項1、4、9ないし11に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし15に係る発明(以下「本件発明1ないし15」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(なお、下線は訂正された箇所を示す。)。 「【請求項1】 セラミックス基板と、 前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板と、 前記セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層と、 前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれかと、 前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層と、 を備えたセラミックス銅回路基板において、 前記セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であり、 前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含み、 前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であり、 10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であり、 前記表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、 前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下であり、 前記表面の最大高さRzは、5μm以下であることを特徴とするセラミックス銅回路基板。 【請求項2】 前記表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上150以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項3】 前記表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が80以上150以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 前記表面の前記算術平均粗さRaは、0.1μm以上0.4μm以下、 前記表面の前記十点平均粗さRzjisは、1.5μm以上4μm以下、 前記表面の前記最大高さRzは、1μm以上5μm以下、であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項6】 前記表面の粗さ曲線のスキューネスRskは0未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項7】 前記セラミックス基板は、酸化アルミニウム基板、窒化アルミニウム基板、及び窒化珪素基板のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項8】 前記接合層は、AgおよびTiを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項9】 前記銅回路板を厚さ方向に3等分したときに、前記銅回路板の前記接合層側の領域におけるAgが存在する面積の割合は、20%以上80%以下であることを特徴とする請求項8記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項10】 前記銅回路板の厚さは0.6mm以上であり、 前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積をB(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項11】 セラミックス基板と、 前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板と、 前記セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層と、 前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれかと、 前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層と、 を備えたセラミックス銅回路基板において、 前記セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であり、 前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含み、 10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であり、 前記銅回路板の厚さは0.6mm以上であり、 前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積をB(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内であり、 前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であることを特徴とするセラミックス銅回路基板。 【請求項12】 前記セラミックス基板には貫通孔が設けられ、 前記貫通孔を介して、前記銅回路板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、が導通されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項11のいずれか1項に記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項13】 前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上250以下であることを特徴とする請求項12記載のセラミックス銅回路基板。 【請求項14】 請求項1ないし請求項3、請求項5ないし請求項13のいずれか1項に記載の前記セラミックス銅回路基板と、 前記銅回路板に接合層を介して実装された半導体素子と、 を備えたことを特徴とする半導体装置。 【請求項15】 前記銅回路板に接合されたワイヤボンディング又は金属端子をさらに備えたことを特徴とする請求項14記載の半導体装置。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和4年8月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1.(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 引用文献1:特開2011-124585号公報(甲第1号証) 引用文献2:国際公開第2014/054609号(甲第2号証) ●理由1(新規性)について ・請求項 1ないし3、7、8、10、14、15 ・引用文献 1 ●理由2(進歩性)について ・請求項 4ないし6 ・引用文献 1,2 ・請求項 11 ・引用文献 1 2 引用文献等の記載事項、引用発明 (1)引用文献1 ア 取消理由において引用した引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与した。 「【請求項1】 セラミックス基板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなり前記セラミックス基板の一面に接合された金属回路板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなり前記セラミックス基板の他面に接合された金属放熱板とから構成されたセラミックス配線基板において、 前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、前記金属放熱板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さく、 前記金属回路板の前記セラミックス基板との接合界面近傍における前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径は、前記金属回路板の前記銅又は前記銅合金の平均再結晶粒子径より小さく、その比が0.12~0.5であり、さらに前記金属回路板および金属放熱板の平均再結晶粒子径はいずれも100~400μmであることを特徴とするセラミックス配線基板。」 「【0006】 ところが、第1及び第2の従来例のように、銅からなる金属回路板の銅の平均結晶粒子径が300μm以上である場合、金属回路板の上面と下面との間の金属結晶粒界パスが短いことから、金属回路板をろう材を介してセラミック基板上へろう付けする際、ろう材の一部が金属回路板の金属結晶粒界を拡散して金属回路板の表面に流出してしまう。その結果、金属回路板の表面に半導体素子等の電子部品を半田等の接着材やボンディングワイヤを介して強固に接続させることを可能とするためにニッケル等の金属からなるメッキ層を被着させた場合、メッキ層が上記流出したろう材によって均一に被着しないという問題があった。 そのため、上記第1及び第2の従来例では、金属回路板に半導体素子等の電子部品を半田等の接着材を介して接続する際、接着材が金属回路板に広がらずに接着材と金属回路板との接合面積が狭いものとなり、接続の信頼性が悪くなると同時に半田等の接着材中に多数の空隙が形成され、この空隙によって半導体素子等の電子部品が作動時に発生する熱を金属回路板に効率よく伝達放散させることができなくなり、半導体素子等の電子部品自体の温度をその特性に熱劣化等が生じる高温としてしまう。 また、上記第1及び第2の従来例では、電子部品等の電極と金属回路板とを金属細線を介して接続する際、金属回路板はその表面に流出したろう材により表面平坦性が損なわれていることから確実な接続ができず、これによって半導体素子等の電子部品と金属回路板との電気的接続の信頼性が悪くなるという問題も有する。 ・・・(中略)・・・。 【0017】 本発明の実施の形態に係るセラミックス配線基板は、セラミックス基板と、銅又は銅を主成分とする銅合金からなり、上記セラミックス基板の両面にそれぞれ接合された金属回路板及び金属放熱板とから構成されているものである。この場合、上記金属回路板の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径は、上記金属放熱板の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さく、金属回路板の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径と、金属放熱板の銅又は銅合金の平均再結晶粒子径の比が0.1~1.0であることが望ましい。 【0018】 以下、さらに詳しく本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施の形態で用いられるセラミックス基板の材質としては、窒化珪素(Si3N4)基板が望ましい。この窒化珪素基板の詳細については、後述する。 ・・・(中略)・・・。 【0026】 次に、金属回路板の機能(a)~(c)並びに金属放熱板の機能(a)'及び(c)'と、銅の平均結晶粒子径との関係について考察する。まず、接合に介するろう材には、銀(Ag)-銅(Cu)-チタン(Ti)系の活性金属ろう材を用いることが多い。このろう材とセラミックス基板との濡れ性は、ろう材に含まれるTi量、ろう材粒子径及びセラミックス基板の表面粗さが関与している。一方、ろう材と銅との濡れ性は、銅の再結晶粒子径に依存する。ろう材が銅表面をぬれ拡がる場合には、主としてAg成分が再結晶粒子表面を移動する。この場合、再結晶粒子径が大きいほど、一度に移動する障害が少なく移動パスが大きくなる。このため、ろう材との濡れ性を確保するためには、金属板を構成する銅の再結晶粒子径を大きくすることが肝要であり、金属板を構成する銅の平均結晶粒子径が大きい方が金属板の上記濡れ性が高い。 一方、上記したように、金属放熱板の機能(a)'は金属回路板の機能(a)と等しいか又はより高いことが望ましい。従って、金属回路板の機能(a)と金属放熱板の機能(a)'との観点からは、上記金属回路板の銅の平均再結晶粒子径は、上記金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さいことが望ましい。また、金属回路板の機能(a)及び金属放熱板の機能(a)'の観点からは、上記第1及び第2の従来例からもわかるように、金属回路板及び金属放熱板は、銅の平均結晶粒子径が400μm以上又は断面における銅の平均結晶粒子径が300μm以上であることが望ましい。 ・・・(中略)・・・。 【0028】 以上の考察から、金属回路板の銅の平均再結晶粒子径は、金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径と等しいか又はそれより小さく、金属回路板の銅の平均再結晶粒子径と、金属放熱板の銅の平均再結晶粒子径の比が0.1~1.0であることが望ましい。この場合、金属回路板の銅の平均再結晶粒子径は、用いる圧延された銅板素材の調質及びセラミックス基板との接合時の接合温度等にもよるが、100~400μmであることが望ましい。 ・・・(中略)・・・。 【0032】 さて、セラミックス配線基板を作製するにあたっては、上記したように、DBC法や活性金属ろう付け法等を用いて、セラミックス基板と銅板とを600~900℃の温度で加熱しつつ接合することにより金属回路板及び金属放熱板を作製した後、金属回路板には、エッチング処理により回路パターンを形成している。銅の再結晶温度が200~250℃であるので、銅の結晶粒子は、上記加熱接合により大きくなり、上記加熱接合前後において、金属回路板及び金属放熱板を構成する銅の状態は大きく異なっている。 従って、金属回路板及び金属放熱板のそれぞれについて所望の銅の平均再結晶粒子径を得るためには、金属回路板又は金属放熱板としてセラミックス基板に接合する前の圧延された銅板の銅の初期結晶粒子径と、上記加熱接合時の接合温度と、加熱条件(加熱温度の制御方法)とが重要な要素である。 まず、金属回路板又は金属放熱板としてセラミックス基板に接合する前の圧延された銅板素材の銅の初期結晶粒子径は、上記銅板素材の調質の影響を受ける。ここで、調質とは、焼き入れや焼き鈍しなどの熱的操作や圧延などの機械的操作を行うことにより、結晶粒子を微細にして材質を調整し、靱性などを向上させることをいう。銅板素材の場合、硬度等に応じて以下に示す調質を有するものがある。 【0033】 調質記号 F 製造したまま、加工又は熱処理について特別の調整をしないもの。 O 完全に再結晶又は焼きなまししたもの。 1/4H 引張強さが1/8Hと1/2Hとの中間のもののように加工をしたもの。 1/2H 引張強さが1/4HとHとの中間のもののように加工をしたもの。 3/4H 引張強さが1/2HとHとの中間のもののように加工をしたもの。 H 引張強さが3/4HとEHとの中間のもののように加工をしたもの。 EH 引張強さがHとSHとの中間のもののように加工をしたもの。 SH 引張強さが最大になるように加工をしたもの。 以上説明した銅板素材のうち、F材は市場に流通しておらず、SH材、EH材の流通は少ない。一方、1/4H材及び1/2H材が最も流通し、次いで、3/4H材及びH材の順で流通しており、これらが汎用材といえる。なお、不純物が多く含まれていると銅の結晶粒子の成長を阻害するので、本発明の実施の形態では、純銅に近い無酸素銅板等のように不純物の少ない銅板を使用することが望ましい。 【0034】 また、金属回路板及び金属放熱板の素材としては、銅板に限らず、上記したように、銅合金板を用いることもできる。この場合、銅合金板としては、銅を主成分とし、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)又はスズ(Sn)等を添加したものが望ましい。銅合金を用いた場合には、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)又はスズ(Sn)により、純銅とは異なり、接合温度を上昇させても、銅合金の再結晶の成長が抑えられるので、再結晶粒子径は、微細となる。銅合金を用いた場合、銅のみの場合に比べて、耐熱性、耐腐食性に優れ、また高剛性を有している。特に、銅合金が高剛性であることにより、銅合金を用いたセラミックス配線基板も高剛性となり、半導体モジュール稼動時の冷熱サイクルに対して、セラミックス配線基板の厚さ方向の繰り返し変形(凹凸変形)の挙動が抑えられ、セラミックス基板と金属回路板の接合界面に発生する応力値を低減することができ、ひいては、セラミックス配線基板自体の耐久性が向上し、高寿命となる。 【0035】 次に、セラミックス基板は、上記したように、実装信頼性及び冷熱サイクル特性の観点から、特に厚さ方向に対する高靭性を有し、かつ、高強度であって、放熱性の観点から高熱伝導性を備えた窒化珪素(Si3N4)基板が好ましく、本発明者らが先に提案した窒化珪素基板を一例として以下に示す。 ・・・(中略)・・・。 【0038】 次に、セラミックス基板に上記した窒化珪素基板の何れかを用いた場合の金属回路板及び金属放熱板の厚さについて説明する。金属回路板及び金属放熱板の厚さは、いずれも0.4~3.0mmであることが望ましい。図2に、厚さ方向の熱伝導率が90W/m・Kである窒化珪素基板(厚さ0.32mm)を用いた場合の半導体モジュールの初期熱抵抗値(Rjc)の金属板の厚さに対する依存性の一例を示す。図2において、例えば、(0.4+0.3)とは、左側の数値が金属回路板の厚さ、右側の数値が金属放熱板の厚さを示している。 【0039】 図2からは、半導体モジュールの初期熱抵抗値は、金属放熱板の厚さより金属回路板の厚さを厚くした方がより低下しやすいことが分かる。また、図2では、金属回路板の厚さが0.4mm以上において、半導体モジュールの初期熱抵抗値が0.17℃/W以下に急激に低下していることが分かる。これは、以下に示す理由によると考えられる。即ち、半導体モジュールの低熱抵抗化においては、動作している半導体素子の温度を何度まで下げることができるかが重要である。厚さが厚い銅板は、銅板の垂直方向への熱拡散と面内方向への熱拡散とが行われるため、半導体素子からの熱を速やかに吸収する能力に優れている。これに対し、厚さが薄い銅板は、銅板の垂直方向への熱拡散だけが行われるため、セラミックス基板との接合界面で熱が滞留するという不具合が見られる。 以上のことから、金属回路板及び金属放熱板の厚さの下限は、いずれも0.4mmであることが望ましい。 ・・・(中略)・・・。 【0041】 次に、金属回路板の厚さと金属放熱板の厚さとの関係について説明する。半導体素子の下面と金属回路板の上面との密着性・接合性を保持する(ボイド率:5%以内)ために、金属回路板をセラミックス基板に接合した後のセラミックス配線基板の反り量は、100μm/inch以内に抑える必要がある。以下、その理由について説明する。まず、金属回路板をセラミックス基板に接合する場合、上記したように、セラミックス基板と金属回路板とを約500~1000℃の温度で加熱した後、冷却する。このとき、金属回路板に比べてセラミックス基板の方が収縮率が小さいので、金属回路板の方が大きく収縮し、セラミックス配線基板は、金属回路板側を内側として反ることになる。次に、回路パターンが形成された金属回路板の上面に半導体チップその他の電子部品を半田付けする場合にも、半田を溶融するため、電子部品と金属回路板とを加熱した後、冷却する。例えば、スズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系半田では、270℃程度まで加温する。この場合のセラミックス配線基板の変形は、最初に持っている反り形状を開放する様になり、逆反り、即ち、セラミックス基板側を内側として反ることになる。 ・・・(中略)・・・。 【0043】 次に、上記構成のセラミックス配線基板の製造方法について説明する。 活性金属ろう付け法の金属回路板及び金属放熱板をそれぞれ構成する銅の初期結晶粒子径は、例えば、10~100μmである。 ろう材の代表的なものには,銀(Ag)-銅(Cu)-チタン(Ti)系、銅(Cu)-スズ(Sn)-チタン(Ti)系、コバルト(Co)-チタン(Ti)系、ニッケル(Ni)-チタン(Ti)系、アルミニウム合金系等がある。これらの中では、銀(Ag)-銅(Cu)-チタン(Ti)系のろう材が最も多く使われるが、これはいわゆる銀ろうにチタンを添加したものである。チタン量は、多量に添加すると、ろう材そのものが脆化するので、1~3質量%の範囲が一般的である。 ・・・(中略)・・・ 【0046】 次に、金属回路板と金属放熱板を載置した窒化珪素基板を所定温度と時間にわたって熱処理した後、冷却することにより、窒化珪素基板に金属回路板と金属放熱板を強固にろう材層を介して接合する。この場合、ろう材が窒化珪素基板と銅からなる金属回路板及び金属放熱板を十分に濡らし、また、回路パターンつぶれが発生しないようにするため、さらに両者の熱膨張係数の違いからくる残留応力による耐熱衝撃性の低下を防止するために、接合温度は、700~800℃、また、冷却速度は、保持温度から400℃までの降温が2℃/min以下であることが好ましい。また、雰囲気については真空中で処理を行うことが活性金属粉末及び銅粉末、銅板が酸化されることなく良好な接合状態を得ることができ、特に10-2Pa以下の真空度で接合することが望ましい。さらに接合時に適度な荷重をかけることで銅からなる金属回路板及び金属放熱板とろう材、窒化珪素基板とろう材がそれぞれより確実に接触でき、良好な接合状態が得られる。重さとしては20~150g/cm2の荷重を採用することができる。保持時間は、接合体をセットするカーボン製治具の形状及び積載量により調整する必要があり、5~30分が望ましい。 【0047】 (実施例) 以下、本発明の実施例について説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。 図1は、本発明の実施例に係るセラミックス配線基板1を適用した電力装置2の構成の一例を示す断面図である。セラミックス配線基板1は、窒化珪素基板からなるセラミックス基板11の上面に図示せぬろう材を介して接合された金属回路板12と、下面に図示せぬろう材を介して接合された金属放熱板13とから構成されている。このセラミックス配線基板1の金属回路板12の上面にMOSFET等からなる半導体素子14が半田15により接合されて半導体モジュール3が構成されている。 【0048】 この半導体モジュール3は、複数のケース端子22が設けられた樹脂ケース21の内部に収納されている。半導体素子14の図示せぬ各端子と金属回路板12に形成された対応する図示せぬ端子との間、半導体素子14の図示せぬ各端子とケース端子22との間及び金属回路板12に形成された図示せぬ端子とケース端子22との間は、それぞれ金等からなるワイヤ16を用いてワイヤーボンディングにより電気的に接続されている。このように構成された樹脂ケース21の内部には、シリコンゲル樹脂等が充填され、樹脂製の蓋23により封止されている。なお、金属放熱板13の下面には、銅又は銅を主成分とする銅合金、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の低熱膨張材からなる放熱ベース板31を半田32、接着剤、あるいはボルト等の締結部材により結合しても良い。図1に示す放熱ベース板31には、ボルト締結穴33が形成されている。 ・・・(中略)・・・。 【0050】 次に、本発明の実施例に係るセラミックス配線基板の評価方法について説明する。 初期結晶粒子径及び再結晶粒子径としては、キーエンス社製の超深度レーザ顕微鏡を用いて、金属板の2×2mmの視野において無作為に選択した粒子20個の最長径を測定した平均値を用いた。一方、金属回路板とセラミックス基板との接合界面のボイド率は、日立建機社製の超音波探査映像装置Mi-Scopeを用いて、上記接合界面の白黒の256階調の評価画像についてしきい値を92として2値化処理を行い、反射法にて評価面積(黒色部)に対する白色部の割合を測定することにより得た。 ・・・(中略)・・・。 【0052】 次に、金属回路板及び金属放熱板の調質の種類、厚さ、接合温度をパラメータとしてセラミックス配線基板を製造した場合の実施例1~16の製造条件及び製造結果を表1に示す。 【0053】 【表1】 [図:0001399346000001.jpg] 【0054】 以下、表1について説明する。まず、左から2番目及び3番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板に用いる銅板素材及び銅合金板素材のそれぞれの調質の種類及び加工度を意味している。即ち、「0%」は加工度0%のO材、「5%」は加工度5%の1/4H材、「10%」は加工度10%の1/2H材、「20%」は加工度20%のH材を意味している。 次に、左から4番目及び5番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板に用いる銅板素材及び銅合金板素材のそれぞれの厚さをミリメートル単位で表している。また、左から6番目及び7番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板としてセラミックス基板に接合する前の圧延された銅板素材又は銅合金板素材の銅又は銅合金の初期結晶粒子径を上記した評価方法で測定し、マイクロメートル単位で表している。 【0055】 次に、左から8番目の列「接合温度(℃)」における各数値は、金属回路板及び金属放熱板をセラミックス基板に接合する際の接合温度を摂氏で表している。また、左から9番目及び10番目の列「金属回路板」及び「金属放熱板」における各数値は、セラミックス基板に金属回路板及び金属放熱板を熱処理して接合することにより金属回路板及び金属放熱板のそれぞれにおいて再結晶した銅又は銅合金の粒子径をマイクロメートル単位で表している。また、左から11番目の列「金属回路板/金属放熱板」における各数値は、対応する「金属回路板」の平均再結晶粒子径と「金属放熱板」の平均再結晶粒子径との比を表している。さらに、最右列「Da/Db」における各数値は、金属回路板とセラミックス基板との接合界面近傍における接合処理後の銅の再結晶粒子径Daと金属回路板の接合処理後の銅の再結晶粒子径Dbとの比を意味している。なお、表1には記載していないが、金属放熱板とセラミックス基板との接合界面近傍における接合処理後の銅の再結晶粒子径と金属放熱板の接合処理後の銅の再結晶粒子径との比についても、Da/Dbと同様な傾向であった。 【0056】 また、実施例1~4は金属回路板及び金属放熱板の調質の種類に注目して、実施例5~10は金属回路板及び金属放熱板の厚さに注目して、実施例11及び12は上記接合温度に注目して、それぞれセラミックス配線基板を製造した場合の製造条件及び製造結果を示している。さらに、実施例13~16は金属板の素材として銅合金板素材を用いてセラミックス配線基板を製造した場合の製造条件及び製造結果を示している。実施例13及び14は何れも銅合金板素材として銅(Cu)-ジルコニウム(Zr)(0.15%)系合金を用いた場合、実施例15及び16は何れも銅合金板素材として銅(Cu)-スズ(Sn)(0.1%)系合金を用いた場合である。 表2には、上記した表1に示す実施例1~16の製造条件及び製造結果に対応した評価結果を示す。 ・・・(中略)・・・。 【0065】 表1において、実施例5は、0.4mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が32μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、0.3mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度760℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;245μm、金属放熱板の再結晶粒子径;358μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.68、Da/Db;0.22がそれぞれ得られた。また、表2に示すように、金属回路板のはんだ濡れ性;良好、金属放熱板のはんだ濡れ性;良好、金属回路板とセラミックス基板との接合界面ボイド率;1.4%、金属放熱板とセラミックス基板のとの接合界面ボイド率;1.2%、熱抵抗;0.170℃/W、冷熱サイクル特性;3000サイクルより大がそれぞれ得られた。 ・・・(中略)・・・。 【0071】 表1において、実施例11は、0.6mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が31μmであって、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板と、0.5mmの厚さを有し、初期結晶粒子径が39μmであって、加工度0%のO材からなる金属放熱板を接合温度500℃でセラミックス基板の両面に接合した。その結果、表1に示すように、熱処理後の金属回路板の再結晶粒子径;120μm、金属放熱板の再結晶粒子径;160μm、金属回路板の再結晶粒子径と金属放熱板の再結晶粒子径の比;0.75、Da/Db;0.22がそれぞれ得られた。また、表2に示すように、金属回路板のはんだ濡れ性;良好、金属放熱板のはんだ濡れ性;良好、金属回路板とセラミックス基板との接合界面ボイド率;2.2%、金属放熱板とセラミックス基板のとの接合界面ボイド率;2.5%、熱抵抗;0.145℃/W、冷熱サイクル特性;3000サイクルより大がそれぞれ得られた。 ・・・(中略)・・・。 【0088】 ここで、図4に加工度10%の1/2H材からなる金属回路板の表面において再結晶化した銅の再結晶粒子の光学顕微鏡観察写真の一例を示す。また、図5に加工度0%のO材からなる金属放熱板の表面において再結晶化した銅の再結晶粒子の光学顕微鏡観察写真の一例を示す。図4と図5を比較して分かるように、金属回路板の銅の再結晶粒子に比べて金属放熱板の銅の再結晶粒子の方がサイズが大きい。さらに、図6にセラミックス基板と銅板との接合界面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。図6からは、接合界面近傍に存在する銅の再結晶粒子よりも接合界面から離れた位置に存在する銅の再結晶粒子の方がサイズが大きいことが分かる。これは、上記したように、例えば、金属回路板及び金属放熱板とセラミックス基板との接合に活性金属ろう付け法を用いた場合、ろう材を構成する銀(Ag)成分が銅(Cu)/銀(Ag)-銅(Cu)界面において、銅結晶に固溶しているため、この銀(Ag)成分が銅の再結晶を遅らせ、金属回路板及び金属放熱板のセラミックス基板との接合界面近傍における銅の平均再結晶粒子径は、他の部分における銅の平均再結晶粒子径よりも小さくなるためである。」 図1 [図:0001399346000002.jpg] 図4 [図:0001399346000003.jpg] イ 引用文献1の上記記載事項により、次のことがいえる。 (ア)【請求項1】、段落【0017】によれば、引用文献1記載された「セラミックス配線基板」は、セラミックス基板と、銅からなり、セラミックス基板の両面にそれぞれ接合された金属回路板及び金属放熱板を備える。 また、段落【0018】、【0035】によれば、セラミックス基板は、窒化珪素基板である。 そして、段落【0026】、【0043】、【0046】によれば、「セラミックス配線基板」は、窒化珪素基板に金属回路板及び金属放熱板を接合する銀(Ag)-Cu(銅)-チタン(Ti)系のろう材を備える。 よって、引用文献1には、窒化珪素基板であるセラミックス基板と、銅からなり、セラミックス基板の両面にそれぞれ接合された金属回路板及び金属放熱板と、セラミックス基板に金属回路板及び金属放熱板を接合する銀(Ag)-Cu(銅)-チタン(Ti)系のろう材とを備えたセラミックス配線基板が記載されているといえる。 (イ)段落【0052】、【0054】、【0056】の各記載によれば、表1に示された実施例11の「金属回路板」は「銅板素材」を用いていることは明らかである。 また、段落【0071】、表1によれば、実施例11において、金属回路板は0.6mmの厚さであり、金属回路板の再結晶粒子径は120μmである。 そして、段落【0050】、段落【0055】の各記載によれば、実施例11における「再結晶粒子径」とは、金属回路板の2×2mmの視野において無作為に選択された再結晶した銅粒子20個の最長径の平均値である。 (ウ)よって、引用文献1の実施例11に着目すると、上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「窒化珪素基板であるセラミックス基板と、銅からなり、セラミックス基板の両面にそれぞれ接合された金属回路板及び金属放熱板と、セラミックス基板に金属回路板及び金属放熱板を接合する銀(Ag)-Cu(銅)-チタン(Ti)系のろう材とを備えたセラミックス配線基板において、 金属回路板は、銅板素材を用いており、厚さが0.6mmであり、 金属回路板の2×2mmの視野において無作為に選択された再結晶した銅粒子20個の最長径の平均値である再結晶粒子径は120μmであるセラミックス配線基板。」 (2)引用文献2 ア 取消理由において引用した引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与した。 「[0011] 本発明は、このような問題に対応するためのものであり、放熱性のよい半導体回路基板を提供するためのものである。 課題を解決するための手段 [0012] 本発明の半導体回路基板は、絶縁性基板上に導体部を設けた半導体回路基板において、導体部の半導体素子搭載部の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.3μm以下であり、十点平均粗さRzjisで2.5μm以下であり、最大高さRzで2.0μm以下であり、かつ算術平均うねりWaが0.5μm以下であることを特徴とするものである。 ・・・(中略)・・・。 [0017] 本発明の半導体回路基板は導体部の半導体素子搭載部の平坦性を大幅に向上させているので放熱性に優れている。また、半導体素子を搭載した半導体装置において、放熱性を向上させることができる。また、半導体素子を搭載する際に、接合材を使用する場合や接合材を使用しない場合のどちらにも対応できる。 ・・・(中略)・・・。 [0020] 図1に本発明の半導体回路基板の一実施例を示す。図1中、符号1は半導体回路基板であり、2は絶縁性基板であり、3は導体部であり、4は導体部(裏導体部)であり、5は絶縁性基板と導体部との接合層である。 [0021] まず、絶縁性基板は両面に設ける導体部3と導体部4との間の絶縁性が確保できるものであれば特に限定されるものではないが、絶縁性基板は、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板および絶縁樹脂基板のいずれか1種から構成されることが好ましい。アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板および絶縁樹脂基板はいずれも優れた絶縁性を有することから、基板厚さが1.5mm以下と薄型化しても使用可能である。この中では窒化珪素基板が好ましい。窒化珪素基板は、例えば特許第3797905号公報(特許文献2)に示すように、3点曲げ強度が500MPa以上であり、かつ熱伝導率が50W/m・K以上であるという強度および熱伝導率に優れたものが開発されている。窒化珪素基板であれば、後述するSiC素子のように使用温度が200℃以上の高温になったとしても優れた耐久性を示す。また、200℃以上の高温下で使用するのであれば、窒化珪素基板に限らず、アルミナ基板や窒化アルミニウム基板と言ったセラミックス基板であれば耐熱性に優れているので好ましい。 [0022] また、導体部が、銅、銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金のいずれか1種からなることが好ましい。これらの金属は導電性に優れていることから好ましい。また、熱伝導率も高いことから放熱性にも優れている。また、導体部は銅、銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金のいずれか1種からなる金属板であることが好ましい。また、導体部3および導体部4は接合層5を介して絶縁性基板2と接合されていることが好ましい。導体部は接合層を介さずに絶縁性基板に接合してもよい。前述のように絶縁性基板としてセラミックス基板を使用すれば、ろう材を使用した活性金属接合法や、ろう材を使用しない直接接合法などの接合方法を適用することができる。 ・・・(中略)・・・。 [0025] 導体部の半導体素子搭載部の表面粗さが算術平均粗さRaで0.3μm以下であり、十点平均粗さRzjisで2.5μm以下であり、最大高さRzで2.0μm以下であり、かつ算術平均うねりWaが0.5μm以下であるということは、導体部の半導体素子搭載部の平坦性が非常に優れていることを意味する。 ・・・(中略)・・・。 [0053] また、必要に応じ、エッチング加工やプレス加工により、導電部に回路形状を付与するものとする。また、エッチング加工により、導体部の側面端部形状および接合層のはみ出し領域(幅)を調整するものとする。 [0054] また、導体部を接合した絶縁性基板を調製した後、半導体素子搭載部の平坦性を向上させる研磨加工を行う。平坦性を向上させる研磨加工は、エッチング加工またはプレス加工である。算術平均粗さRaで0.3μm以下であり、十点平均粗さRzjisで2.5μm以下であり、最大高さRzで2.0μm以下であり、かつ算術平均うねりWaで0.5μm以下である平坦面を得るための研磨加工は、前述の回路形状を付与するためのエッチング加工やプレス加工とは異なる条件となる。 ・・・(中略)・・・。 [0057] エッチング加工の場合、エッチング液や浸漬あるいは流動時間等の処理条件を導体部の材質と必要とする平坦性に応じて選定する。また、プレス加工の場合は、プレス金型の表面を目的とする平坦面として導体部に真空中にて700~860℃で加熱しながら加圧するプレス加工を行うものである。また、導体部の半導体素子搭載部のみを平坦面とすることにより、半導体素子を搭載する箇所を識別し易くなるマーキング効果も得ることができる。なお、平坦面とするのは、導体部の半導体素子搭載部のみでよいが、導体部の全面を平坦面としてもよいことは言うまでもない。」 「[請求項1] 絶縁性基板上に導体部を設けた半導体回路基板において、導体部の半導体素子搭載部の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.3μm以下であり、十点平均粗さRzjisで2.5μm以下であり、最大高さRzで2.0μm以下であり、かつ算術平均うねりWaが0.5μm以下であることを特徴とする半導体回路基板。」 図1 [図:0001399346000004.jpg] イ 上記アの記載事項によれば、引用文献2には以下の技術事項(以下、「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されている。 「窒化珪素基板から構成された絶縁性基板と、銅からなる導体部と、絶縁性基板と導体部との接合とを備えた半導体回路基板において、平坦性が向上し放熱性に優れた半導体回路基板を提供するために、導体部の材質と必要とする平坦性に応じて選定するエッチング液を用いてエッチング加工を行い、導体部の表面粗さを、算術平均粗さRaで0.3μm以下、十点平均粗さRzjisで2.5μm以下、最大高さRzで2.0μm以下とすること。」 3 取消理由に対する当審の判断 (1)理由1(新規性)について ア 本件発明1 (ア)本件発明1と引用発明との対比 a 引用発明の「窒化珪素基板であるセラミックス基板」は、本件発明1の「セラミックス基板」に相当する。 また、引用発明の「銅からなり、セラミックス基板の両面にそれぞれ接合された金属回路板及び金属放熱板」は、本件発明1の「前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板」及び「セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板」に相当する。 そして、引用発明の「セラミックス基板に金属回路板及び金属放熱板を接合する銀(Ag)-Cu(銅)-チタン(Ti)系のろう材」は、本件発明1の「セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層」及び「セラミックス基板と、前記裏銅板」「と、の間に設けられた別の接合層」に相当する。 してみると、引用発明の「セラミックス基板」、「金属回路板」、「金属放熱板」及び「ろう材」とを備える「セラミックス配線基板」は、本件発明1の「セラミックス銅回路基板」に相当する。 b 本件発明1は「セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 c 本件発明1は「前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 d 本件発明1は「前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 e 本件発明1は「10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 f 本件発明1は「前記表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下であり、前記表面の最大高さRzは、5μm以下である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 (イ)一致点・相違点 上記aないしfによれば、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「セラミックス基板と、 前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板と、 前記セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層と、 前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれかと、 前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層と、 を備えたセラミックス銅回路基板。」 (相違点1) 本件発明1は「セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点2) 本件発明1は「前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点3) 本件発明1は「前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点4) 本件発明1は「10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点5) 本件発明1は「前記表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下であり、前記表面の最大高さRzは、5μm以下である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (ウ)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4について判断する。 a 引用文献1の段落【0088】によれば、図4は加工度10%の1/2H材からなる金属回路板の表面において再結晶化した銅の再結晶粒子の光学顕微鏡観察写真の一例を示しており、該写真の図4の右下には1目盛500μmであることが示されているところ、写真上では再結晶粒子の最長径は大きくても300μm程度であり、加工度10%の1/2H材からなる金属回路板を有する実施例11に着目した引用発明の再結晶粒子径は120μmであることから、引用発明の金属回路板の表面における銅の再結晶粒子も、図4に示された銅の再結晶粒子と同様な粒子構造であるといえる。 b しかし、引用文献1の図4によれば、金属回路板表面上の再結晶粒子個々の形状は均一ではなく様々な異なる形状であり、同一の形状を有する粒子も見当たらない。また、そのサイズもバラバラであり統一性も見て取れない。さらに、再結晶粒子の配置も規則性をもった配列ではなく、ランダムに密集した状態である。 また、引用発明の「再結晶粒子径」は「金属回路板の2×2mmの視野において無作為に選択された再結晶した銅粒子20個の最長径の平均値」に過ぎず、再結晶粒子の個々の形状や粒子の配置との関係性もないことから、「再結晶粒子径」の数値自体から引用発明における金属回路板の2×2mm全体における形状及び配置状況を含めた粒子構造は正確に把握できない。 してみると、金属回路板の表面に引かれた直線における粒界の数を、単に「再結晶粒子径」により直線の長さを除すことによって得ることができるとは限らないと解される。 さらに、特許異議申立人は、金属回路板の表面に引かれた直線における粒界の数を、直線の長さを「再結晶粒子径」で除すことにより得られることを裏付ける証拠を何等提出していない。 c また、引用発明の「再結晶粒子径」「120μm」で金属回路板の表面に引く直線の長さ10mmを割った値が83であったとしても、上記bで述べたように、引用発明における金属回路板の表面における粒子構造は正確に把握できないことから、引用発明の金属回路板の表面に引いた「いずれの」直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下の範囲内にあるとは必ずしもいえず、これを裏付ける根拠も見当たらない。 したがって、相違点4は実質的な相違である。 d 特許異議申立人は、令和5年1月11日に提出した意見書において、特許権者が主張とおりだとすると、本件特許発明においても、たった5本の直線だけから求められた粒界の数が、銅回路の表面に引いたいかなる直線10mm上の粒界の数を代表しているとは到底いえないことになる。また、意見書16頁における主張は特許権者自身が、本件特許発明においても、結晶粒子の形状は様々であることを認めているものである。さらに、本件特許発明において、直線10mmを粒界の数で除して求めた結晶粒子のおよその大きさは40μm~500μm(10mm/250~10mm/20)となり、特許権者が主張する「平均粒子径が少なく見積もっても500μmと大きい場合」には該当しないから、直線が横切る粒界の数の粒子形状への依存性を無視できないことを特許権者自身が認めているに他ならない。したがって、特許権者が主張するような関係があるのだとすると、やはり、本件特許発明において、たった5本の直線だけから求められた粒界の数が、銅回路の表面に引いたいかなる直線10mm上の粒界の数を代表しているとは到底いえない旨主張する(2頁22行ないし4頁2行を参照)。 e しかし、特許異議申立人の主張は本件発明1についての記載要件(特に実施可能要件あるいはサポート要件)に係る主張に過ぎない。 さらに、上記bで述べたように、特許異議申立人は、直線の長さを最長径のみを用いて得られた粒子径で除して直線上における粒界の数が得られることを裏付ける証拠は何等提出していない。 してみると、特許異議申立人の主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、相違点4は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明と同一ではない。 イ 本件発明2、3、7、8、10、14、15について 本件発明2、3、7、8、10、14、15は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様な理由により、本件発明2、3、7、8、10、14、15は、引用発明と同一ではない。 (2)理由2(進歩性)について ア 本件発明4 上記「第2」で述べたように、令和4年10月19日に提出された訂正請求書の訂正請求により請求項4は削除されたため、請求項4に係る発明に対する特許法第29条第2項による取消理由は解消された。 イ 本件発明5 (ア)本件発明5と引用発明との対比 請求項5は請求項1を引用するところ、記「(1)ア(ア)」で検討した点も踏まえれば、本件発明5と引用発明とは、上記相違点1ないし相違点4に加え以下の相違点6を有し、余の点で一致する。 (相違点1) 本件発明5は「セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点2) 本件発明5は「前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点3) 本件発明5は「前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点4) 本件発明5は「10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点6) 本件発明5は「前記表面の前記算術平均粗さRaは、0.1μm以上0.4μm以下、前記表面の前記十点平均粗さRzjisは、1.5μm以上4μm以下、前記表面の前記最大高さRzは、1μm以上5μm以下、である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (ウ)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4について判断する。 上記「(1)ア(ウ)」で述べたように、相違点4は実質的な相違であり、引用文献1には、再結晶粒子径が120μmであることが記載されていることをもって当該相違点4に係る構成を導き出すこともできない。 ここで、上記「2(2)イ」で述べたように、引用文献2に記載された技術事項には「窒化珪素基板から構成された絶縁性基板と、銅からなる導体部と、絶縁性基板と導体部との接合とを備えた半導体回路基板において、平坦性が向上し放熱性に優れた半導体回路基板を提供するために、導体部の材質と必要とする平坦性に応じて選定するエッチング液を用いてエッチング加工を行い、導体部の表面粗さを、算術平均粗さRaで0.3μm以下、十点平均粗さRzjisで2.5μm以下、最大高さRzで2.0μm以下とすること」が記載されている。 しかしながら、引用文献2に記載された技術事項には「銅からなる導体部」の表面における粒界の数について何等記載されていないから、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を採用したとしても、相違点4に係る構成を導き出すことはできない。 よって、相違点4に係る構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (エ)小括 以上から、相違点1ないし3、6について検討するまでもなく、本件発明5は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 本件発明6 (ア)本件発明6と引用発明との対比 請求項6は請求項1を引用するところ、記「(1)ア(ア)」で検討した点も踏まえれば、本件発明6と引用発明とは、相違点1ないし相違点5に加え以下の相違点7を有し、余の点で一致する。 (相違点1) 本件発明6は「セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点2) 本件発明6は「前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点3) 本件発明6は「前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点4) 本件発明6は「10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点5) 本件発明6は「前記表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下であり、前記表面の十点平均粗さRzjisは、4μm以下であり、前記表面の最大高さRzは、5μm以下である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点7) 本件発明6は「前記表面の粗さ曲線のスキューネスRskは0未満である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (ウ)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4について判断する。 上記「記「(1)ア(ウ)」で述べたように、相違点4は実質的な相違であり、引用文献1には、再結晶粒子径が120μmであることが記載されていることをもって当該相違点4に係る構成を導き出すこともできない。 そして、上記「イ(ウ)」で述べたように、引用文献2に記載された技術事項には「銅からなる導体部」の表面における粒界の数について何等記載されていないから、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を採用したとしても、相違点4に係る構成を導き出すことはできない。 よって、相違点4に係る構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (エ)小括 以上から、相違点1ないし3、5、7について検討するまでもなく、本件発明6は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 エ 本件発明11 (ア)本件発明11と引用発明との対比 上記「第2 2(2)コ」で述べたように、本件訂正により、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項11は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改められ、さらなる限定が付加された。 そこで、本件発明11と引用発明とを対比する。 a 引用発明の「窒化珪素基板であるセラミックス基板」は、本件発明11の「セラミックス基板」に相当する。 また、引用発明の「銅からなり、セラミックス基板の両面にそれぞれ接合された金属回路板及び金属放熱板」は、本件発明11の「前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板」及び「セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板」に相当する。 そして、引用発明の「セラミックス基板に金属回路板及び金属放熱板を接合する銀(Ag)-Cu(銅)-チタン(Ti)系のろう材」は、本件発明11の「セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層」及び「セラミックス基板と、前記裏銅板」「と、の間に設けられた別の接合層」に相当する。 してみると、引用発明の「セラミックス基板」、「金属回路板」、「金属放熱板」及び「ろう材」とを備える「セラミックス配線基板」は、本件発明11の「セラミックス銅回路基板」に相当する。 b 本件発明11は「セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 c 本件発明11は「前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 d 本件発明11は「10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 e 本件発明11は「前記銅回路板の厚さは0.6mm以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 f 本件発明11は「前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積をB(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 g 本件発明11は「前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 (イ)一致点・相違点 上記aないしgによれば、本件発明11と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「セラミックス基板と、 前記セラミックス基板の一方の面に設けられた銅回路板と、 前記セラミックス基板と前記銅回路板との間に設けられた接合層と、 前記セラミックス基板の他方の面に設けられた裏銅板または裏銅回路板のいずれかと、 前記セラミックス基板と、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかと、の間に設けられた別の接合層と、 を備えたセラミックス銅回路基板。」 (相違点8) 本件発明11は「セラミックス基板の厚さに対する前記銅回路板の厚さの比が1.25以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点9) 本件発明11は「前記銅回路板は、少なくともいずれかの方向において10mm以上の長さを有する部分を含」むのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点10) 本件発明11は「10mm以上の長さを有する前記部分を含む前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点11) 本件発明11は「前記銅回路板の厚さは0.6mm以上であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点12) 本件発明11は「前記銅回路板の合計体積をA(mm3)、前記裏銅板または前記裏銅回路板の前記いずれかの合計体積をB(mm3)としたとき、0.5≦A/B≦0.8の範囲内であ」るのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (相違点13) 本件発明11は「前記セラミックス基板の長辺における反り量は0.1mm未満である」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (ウ)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点10について判断する。 相違点10は相違点4と同じであるから、 上記「記「(1)ア(ウ)」で述べたように、相違点10は実質的な相違であり、引用文献1には、再結晶粒子径が120μmであることが記載されていることをもって当該相違点4に係る構成を導き出すこともできない。 そして、上記「イ(ウ)」で述べたように、引用文献2に記載された技術事項には「銅からなる導体部」の表面における粒界の数について何等記載されていないから、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を採用したとしても、相違点10に係る構成を導き出すことはできない。 よって、相違点10に係る構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (エ)小括 以上から、相違点8、9、11ないし13について検討するまでもなく、本件発明11は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2、3、7、8、10、14、15は、引用文献1に記載された発明と同一ではないから、請求項1、2、3、7、8、10、14、15に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。 また、本件発明4ないし6、11は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから,請求項4ないし6、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 訂正前の請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議申立理由の概要 (1)申立理由2(進歩性) 請求項1ないし3、7、8ないし10、11、14及び15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、請求項4ないし6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された技術事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし11、14及び15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由3(明確性) 請求項1ないし15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備なため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものである。 (3)申立理由4(実施可能要件) 本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項1ないし15に係る発明について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 (4)申立理由5(サポート要件) 請求項1ないし15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備なため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものである。 2 提出された証拠 特許異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。 (1)異議申立書に添付された文献 甲第1号証:特開2011-124585号公報 甲第2号証:国際公開第2014/054609号 (2)令和5年1月11日提出の意見書に添付された文献 甲第3号証:国際公開第2017/006661号 甲第4号証:特開2009-117614号公報 甲第5号証:特開2006-240955号公報 甲第6号証:特開2015-126168号公報 3 甲1号証、甲第2号証の記載事項 甲第1号証、甲第2号証は取消理由通知において引用した引用文献1、引用文献2であり、甲第1号証、甲第2号証に記載された事項は、「第4 2」の「(1)」及び「(2)」で述べたとおりであり、また、甲第1号証には、上記「第4 2(1)ウ」で述べた「引用発明」と同じ構成である発明(以下、「甲1発明」)が記載されている。 4 申立理由に対する当審の判断 (1)申立理由2(進歩性)について ア 本件発明1について (ア)上記「第4 3(1)ア(イ)」で述べたように、本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1と甲1発明とは、相違点1ないし相違点5の各点で相違し、余の点で一致する。 (イ)そこで、事情に鑑み、相違点4について検討すると、上記「第4 3(1)ア(ウ)」で述べたように相違点4は実質的な相違であり、引用文献1には、再結晶粒子径が120μmであることが記載されていることをもって当該相違点4に係る構成を導き出すこともできない。 (ウ)ここで、取消理由通知で引用された引用文献2である甲第2号証には、上記「第4 2(2)イ」で述べたように、「窒化珪素基板から構成された絶縁性基板と、銅からなる導体部と、絶縁性基板と導体部との接合とを備えた半導体回路基板において、平坦性が向上し放熱性に優れた半導体回路基板を提供するために、導体部の材質と必要とする平坦性に応じて選定するエッチング液を用いてエッチング加工を行い、導体部の表面粗さを、算術平均粗さRaで0.3μm以下、十点平均粗さRzjisで2.5μm以下、最大高さRzで2.0μm以下とすること」の技術が記載されているものの、甲第2号証には「銅からなる導体部」の表面における粒界の数について何ら記載されていない。 また、令和5年1月11日提出の意見書に添付された、甲第3号証には、セラミックス金属回路基板において、セラミックス基板上に配置した表金属板の縦×横×厚さ(mm)を、20×15×0.3、35×15×0.5、35×15×0.8、又は35×15×0.3とする技術(段落[0083]、[0084]表1を参照)、甲第4号証には、セラミックス回路基板において、窒化珪素セラミックス基板の下面に48mm角の無酸素銅製の金属放熱板3を、上面に10mm角で無酸素銅製の金属回路板パターン4を4個、ろう付接合した技術(段落【0001】、【0027】、図4を参照)、甲第5号証には、セラミック回路基板において、窒素珪素板のろう材ペーストを全面に塗布した主面に、大きさ60mm×35mm、厚み0.3mmの無酸素銅板を、反対側の主面には大きさ60mm×35mm、厚み0.25mmの無酸素銅板を接触配置した技術(段落【0001】、【0052】、【0053】を参照)、甲第6号証には、セラミック基板において、AlN(窒化アルミニウム)製のセラミック基材の両面に、厚さ0.4mmのアルミニウムの導体層21及び導体層22を積層する技術(【0013】を参照。)、がそれぞれ記載されているものの、各甲号証には、回路板の表面における粒界の数に関わる記載は見当たらない。 してみると、甲1発明に、甲第2号証ないし甲第6号証に記載された技術を採用したとしても、相違点4に係る構成を導き出すことはできない。 よって、相違点4に係る構成は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (エ)したがって、相違点1ないし3、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 イ 本件発明4について 上記「第2」で述べたように、令和4年10月19日に提出された訂正請求書の訂正請求により請求項4は削除されたため、請求項4に係る発明に対する特許法第29条第2項による取消理由は解消された。 ウ 本件発明11について (ア)上記「第2 2(2)コ」で述べたように、本件訂正により、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項11は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改められ、さらなる限定が付加された。 そこで、本件発明11と甲1発明とを対比すると、上記「第4 3(2)エ」の「(ア)」及び「(イ)」で述べたように、本件発明1と甲1発明とは、相違点8ないし相違点13の各点で相違し、余の点で一致する。 (イ)ここで、事情に鑑み、相違点10について検討すると、上記「第4 3(2)エ(ウ)」で述べたように、相違点10は相違点4と同じであって、「第4 3(1)ア(ウ)」で述べたように実質的な相違であり、引用文献1には、再結晶粒子径が120μmであることが記載されていることをもって当該相違点4に係る構成を導き出すこともできない。 そして、上記「ア(ウ)」で述べたように、相違点10に係る構成は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)したがって、相違点8、9、11ないし13について検討するまでもなく、本件発明11は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 本件発明2、3、5ないし10、14、15について 本件発明2、3、5ないし10、14、15は、本件発明1の相違点4に係る構成を含む発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様な理由により、本件発明2、3、5ないし10、14、15は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 エ まとめ 以上から、本件発明1ないし11、14、15は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、請求項1ないし11、14、15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (2)申立理由3(明確性)について ア 特許異議申立人は、異議申立書において、本件発明1における「前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上250以下である」との要件について、銅回路板の表面に何本の直線を引いて粒界の数を測定すればよいか、本件明細書等の記載及び技術常識を考慮しても当業者は理解できない。そして、銅回路板の表面における結晶粒の大きさは必ずしも均一ではない(結晶粒の大きさにはばらつきがある)場合、粒界の数を測定する際の直線の本数によって測定値が変化することが明らかであるから、引くべき直線の本数が分からない当業者は、本件発明1で特定される粒界の数を一義に決定することができない旨主張する(24頁24行ないし25頁5行を参照)。 イ しかしながら、本件発明1に「銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下」と記載されているところ、「直線」の本数については何ら規定されていない。 しかし、「いずれの直線」との記載からすれば、「銅回路板の表面」に引かれる直線は複数本であれば足り、本件特許明細書の段落【0030】に「粒界の数のカウントでは、銅板表面の拡大写真を撮影した。拡大写真において、無作為に直線10mmを引き、その直線上にある粒界の数を調べた。この作業を5箇所分(無作為の直線10mmを5本分)測定」(下線は当審が付与)との記載とも整合する。 してみれば、「銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても、粒界の数が20以上250以下」とは、銅回路板の表面に引いた複数の直線」10mm上において粒界の数が20以上250以下であることは明らかであり、当業者であれば理解できるといえる。 ウ よって、特許異議申立人の上記主張は採用できず、請求項1に係る特許、請求項11に係る特許、請求項1を引用する請求項2ないし10、12ないし15、及び請求項11を引用する請求項12ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 (3)申立理由4(実施可能要件)について ア 特許異議申立人は、異議申立書において、本件明細書に記載の実施例1~7は、銅回路板の表面に5本の直線を引いたときに、「直線10mm上においても粒界の数」が偶々表3に示される結果となったに過ぎず、銅回路板の表面における結晶粒の大きさは必ずしも均一ではない場合には、これらの結果をもって、本件発明1における「前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上250以下である」との要件を満たすセラミックス銅回路基板を実際に作ることができたとは当業者は認識できない。また、本件明細書全体をみても、本件発明1における「前記銅回路板の表面に引いたいずれの直線10mm上においても粒界の数が20以上250以下である」との要件を満たすセラミックス銅回路基板を実際に作れたことを示す記載はないし、本件出願時の技術常識に基づいて、本件発明1における当該要件を満たすセラミックス銅回路基板を作れるといった事情も存在しない。よって、当業者は本件発明1におけるセラミックス銅回路基板をどのように作るか理解できず、本件発明1及びそれを引用する本件発明2~15には、実施可能要件違反の不備がある旨主張する(25頁20行ないし26頁5行を参照)。 イ ここで、本件特許明細書の段落【0011】に「銅板の厚さを調整する圧延工程で結晶サイズを調整することで、粒界の数を調整しても良い。セラミックス銅回路基板の製造工程中の熱処理工程を利用して、粒界の数を調整しても良い。銅の再結晶温度は約220℃である。後述するように、セラミックス基板と銅板は、例えば活性金属接合法を用いて接合される。活性金属接合法では、セラミックス基板と銅板が700~900℃で加熱される。この工程で銅板が再結晶化される。再結晶化されると銅結晶粒子が大きくなる。この現象を利用して、粒界の数を調整することもできる。」と、同【0028】に「セラミックス基板と銅板を活性金属接合法により接合した。・・・。セラミックス基板の両面に活性金属ペーストを塗布し、銅板を配置して加熱接合工程を行った。接合温度は780~850℃の範囲に保持し、圧力は1×10-2Pa以下とした。接合時間を変えることにより、銅板表面の粒界の数を調整した。」との記載からすれば、粒界の数は、銅板の厚さを調整する圧延工程における結晶サイズを調整したり、活性金属接合法における加熱条件を変更することにより、銅板表面の粒界の数を調整できることは明らかである。 また、本件特許明細書(同段落【0026】ないし【0031】、表3を参照)には、第1~第3の窒化珪素基板と銅板を用意し、セラミックス基板の両面に活性金属ペーストを塗布し、銅板を配置して、接合温度を780~850℃の範囲に保持し、圧力を1×10-2Pa以下として加熱接合工程を行い、接合時間を変えて銅板表面の粒界の数を調整して得た実施例1ないし7について、銅板表面の拡大写真を撮影し、拡大写真において、無作為に直線10mmを引き、その直線上にある粒界の数を調べ、5箇所分(無作為の直線10mmを5本分)測定し、その最大値と最小値を表3に示したことが記載されている。 そして、表4の「直線10mmあたりの粒界の数」の項を参照すれば、銅板の表面に引いた5本の直線いずれにおいても、直線上の粒界の数が20以上250以下の範囲であることが見て取れる。 してみると、本件特許明細書の上記記載からすれば、発明の詳細な説明には本件発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 ウ よって、特許異議申立人の主張は採用できず、請求項1に係る特許、請求項11に係る特許、請求項1を引用する請求項2ないし10、12ないし15、及び請求項11を引用する請求項12ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 (4)申立理由5(サポート要件)について ア 特許異議申立人は、異議申立書において、本件明細書においては、本件発明1によって、「信頼性と、半導体素子などの接合性を両立させ」るという課題(【0004】)を解決できることの実験的な裏付けは一切ないことになる。また、本件明細書にそのような裏付けがなくても、本件発明1によって課題を解決できると当業者が認識できる技術常識が本件出願時に存在していたとも認められない旨主張する(26頁18ないし21行を参照)。 イ ここで、「粒界の数」について、本件特許明細書の段落【0010】に「銅回路板3は、半導体素子、ワイヤボンディング、金属端子などが・・・ハンダなどの接合層を介して互いに接合される。銅回路板3の表面に粒界があると、接合層に対してアンカー効果が得られる。接合層とのぬれ性も改善される。直線10mmでの粒界の数が5未満では、粒界の数が少なく十分では無い。粒界の数が少ないと、銅結晶粒子が大きく、接合層と銅結晶粒子表面との接触割合が多い。半導体素子のジャンクション温度が高くなると、銅板の熱膨張が大きくなる。粒界が少ないと、アンカー効果が不足するため、銅回路板表面と接合層のはがれが起き易くなる。直線10mmでの粒界の数が250を超えると、粒界の数が多すぎる。粒界の数が増えると、・・・粒界が多くなりすぎて放熱性が低下する。このため、いずれの直線10mm上においても、粒界の数は5以上250以下、さらには20以上150以下であることが好ましい。・・・。銅回路板3表面のどこに直線10mmを引いても粒界の数が上記範囲内にあることで、銅回路板3のどこに半導体素子などを接合しても、優れた信頼性を得ることができる。」と記載されている。 そして、本件特許明細書の段落【0034】、【0035】、表5には、実施例1ないし7、比較例1及び比較例2(段落【0026】ないし【0031】、表4を参照)のセラミックス銅回路基板に、半導体素子および金属端子を接合し、半導体装置を作製し、接合性の試験として2種類のTCT試験を行い、第1の条件では、-30℃×30分→室温×10分→125℃×30分→室温×10分を1サイクルとして、2000サイクル後の導通不良の発生率を調べ、第2の条件では、-40℃×30分→室温×10分→175℃×30分→室温×10分を1サイクルとして、2000サイクル後の導通不良の発生率を調べたことが記載されており、表4によれば、「TCT試験後の導通不良率(%)」の「第2の条件」において、実施例1ないし7が0%であるのに対し、比較例1及び比較例2がそれぞれ8%、2%であることが見て取れる。 そして、同落【0036】の「表から分かる通り、第1の条件(高温側が125℃)では実施例および比較例ともに導通不良は発生しなかった。これに対し、第2の条件(高温側が175℃)では、導通不良の発生率に差が生じた。これは、銅板表面の粒界の数を制御することにより、ハンダのぬれ性や接合強度が向上したためである。・・・・・。これに対し、比較例1のように、粒界が少ないと、第2の条件では導通不良が多かった。これは熱膨張により銅板表面のゆがむ量が大きくなったためである。比較例2のように粒界の数が多すぎること、放熱性が低下する。放熱性が低下すると、熱が放出され難くなる。第2の条件において比較例2の導通不良率が実施例よりも高いのは、熱が放出され難くなり、半導体素子と銅回路板の間の接合層に熱応力が発生したためである。」との記載も踏まえれば、実施例1ないし7は、「信頼性と、半導体素子などの接合性を両立させ」るという課題(【0004】)を解決できることの十分な裏付けであるといえる。 してみれば、本件特許明細書に上記課題を解決できることの実験的な裏付けは一切ないとはいえない。 ウ よって、特許異議申立人の主張は採用できず、請求項1に係る特許、請求項11に係る特許、請求項1を引用する請求項2ないし10、12ないし15、及び請求項11を引用する請求項12ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3、5ないし15に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1ないし3、5ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項4に係る特許は、上記のとおり訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700413

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